JP3326319B2 - 偏波モード分散の測定方法およびその装置 - Google Patents

偏波モード分散の測定方法およびその装置

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JP3326319B2 JP35048595A JP35048595A JP3326319B2 JP 3326319 B2 JP3326319 B2 JP 3326319B2 JP 35048595 A JP35048595 A JP 35048595A JP 35048595 A JP35048595 A JP 35048595A JP 3326319 B2 JP3326319 B2 JP 3326319B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信の分野にお
いて光ファイバの伝送特性を制限する、偏波モード分散
を正確に測定するための偏波モード分散の測定方法およ
びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ増幅器や、分散制御シングル
モード光ファイバ技術等の発達により、長距離大容量の
光通信を行う場合、従来問題にならなかった偏波モード
分散が、光ファイバの伝送特性を制限する重要なパラメ
ータの1つとして注目されることになった。このような
背景の元で、現在光伝送媒質である光ファイバの偏波モ
ード分散を正確に測定することが重要な問題の1つにな
っている。なお、本明細書中の説明では多種の文献(図
書を含む)を引用するが、これらの文献の一覧は予め表
1〜表3に示しておく。
【0003】
【表1】
【0004】
【表2】
【0005】
【表3】
【0006】文献〔4〕には、偏波モード分散が生じる
原因として、(i)光ファイバ自身が有している原因
(intrinsic causes)と、(ii)光ファイバの敷設条件
下の条件により生じる原因(extrinsic causes)、とし
て総計5つの原因を挙げている。ところが、実際は光フ
ァイバの長手方向に沿ってこれらの原因がランダムに分
布しており、この状況はランダム・モード結合と呼ばれ
ている。このような場合には、周波数的に安定して存在
する固有偏光状態が存在しないことが知られており、長
尺光ファイバの偏波モード分散の解析は、正にランダム
なモード結合のために困難になっている。
【0007】文献〔3〕には、上述のような状況におけ
る偏波モード分散の解析手段として、主偏光状態(prin
cipal states of polarization)の概念が述べられてい
る。この文献でC.D.Poole とR.E.Wagnerは、偏
波依存損失(PDL:polarization dependent losses
)がない、もしくは無視できるような光の伝送媒質に
対して、合理的に偏波モード分散を決定する方法を提案
した。この文献においてPoole とWagnerが示した解析方
法は、別の観点から考察する場合、周波数領域での偏波
モード分散の測定方法とも解釈できる。実際Poole らの
アイデアに基づいて、具体的な偏波モード分散測定方法
がB.L.Heffner により報告されている(文献
〔5〕)。この方法はジョーンズ行列法(Jones matrix
eigenanalysis)と呼ばれており、N.Gisin が行った
報告によれば、干渉法(interferometric)、固定アナ
ライザ法(fixed analyzer)と並び、偏波モード分散の
代表的な測定法の1つとして考えられるようになってい
る(文献〔6〕)。
【0008】次に、Poole とWagnerの論文(文献
〔3〕)に沿って、主偏光状態および偏波モード分散の
測定法の原理を示し、この測定法の問題点を考察する。
文献〔1〕,〔7〕,〔8〕およびその参考文献にある
ように、光伝送媒質の偏光状態を記述するジョーンズベ
クトルおよびその変化は、複素2成分を有するスピノー
ル量(文献〔20〕)として振る舞う。このことは、光の
伝送媒質の偏波依存損失が無視できる場合、光伝送媒質
の偏光特性を記述するジョーンズ行列は偏光状態空間に
おいてジョーンズベクトルをユニタリー変換する行列と
解釈できる。したがって、この場合のジョーンズ行列は
一般に以下の形式の2行2列のユニタリー行列の形に書
ける(文献〔3〕)。なお、*印は複素共役を示す。
【0009】
【数6】
【0010】この表記において一般の光伝送損失はない
ものとしたが、文献〔2〕に示しているように、光伝送
損失が無視できない場合にも容易に拡張することがで
き、本質的に同等の結果を与える。ジョーンズ行列によ
る計算の手順に従うと、入射および出射偏光状態を表す
ジョーンズベクトルをξin,ξout とおいた場合、これ
らは光の角周波数をωとすると、
【0011】 еizξout (ω)=U(ω)ξin・・・・・(1)
【0012】 ξin=U+ (ω)еizξout (ω)・・・・・(2)
【0013】という関係を有する。ここで、z=ρ
(ω)であり、Uの右肩の+はエルミート共役を表す。
ρは光伝送媒質を通過することにより得られる絶対位相
の変化である。式(1)の両辺を微分して式(2)で示
される関係を用いると、以下の関係式を得る。
【0014】 dξout /dω=(dU(ω)/dω)ξin−i(dρ/dω)Uξin・・・ ・・(3)
【0015】ここで以下のように入射偏光状態を固定し
た。
【0016】dξin/dω=0・・・・・(4)
【0017】Poole とWagnerが示しているように、主偏
光状態は
【0018】dξout /dω=0・・・・・(5)
【0019】であることを要求する(文献〔2〕)。し
たがって、(3)式より、以下に示す固有値方程式を得
る。
【0020】 (dU/dω−i(dρ/dω)U)ξin=0・・・・・(6)
【0021】この式を解くと、固有値
【0022】 dρ±/dω=±√(|du1 /dω|2 +|du2 /dω|2 )(複合同順 )・・・・・(7)
【0023】に対応して固有ジョーンズベクトルを得
る。したがって、この固有値に対応する固有ジョーンズ
ベクトルは周波数の微小変化に対して安定であることが
分かる。これらのジョーンズベクトルが示す偏光状態を
入力側の主偏光状態という。出力側の主偏光状態は式
(1)を用いることにより得られるが、条件(5)式が
成立するためには陰に以下の条件を仮定する必要があ
る。
【0024】 dn i /dωn =O(еn ),(n≧2,i=1,2)・・・・・(8)
【0025】 (dui /dω)(duj /dω)=O(е2 ),(i,j≧1,2)・・・ ・・(8′)
【0026】ここでOはランダウの記号で、微小量は2
次以上は無視できる。この条件を満たす限り、主偏光状
態は出力の偏光状態が周波数的に安定して存在するよう
な偏光状態であり、この意味で固有偏光状態(文献
〔1〕)の一般的な拡張となっている。Poole らによる
と、偏波モード分散Δτは主偏光状態間の群遅延時間差
として定義するのが妥当であり、これは計算により以下
のように与えられる(文献〔3〕)。
【0027】 Δτ=|(dρ+ /dω)−(dρ- /dω)|=2√(|du1 /dω|2 +|du2 /dω|2 )・・・・・(9)
【0028】以上が主偏光状態を用いた偏波モード分散
の考え方であり、ジョーンズ行列法による偏波モード分
散測定の基礎をなすアイデアである。ただし、以上の議
論は条件(5)式を満たす範囲でしか適用できない。O
(е2 )=0という条件が成り立たない場合には、これ
らの議論は成立しなくなる。この意味で上記の議論は一
次微小量近似(the first order approximation )の議
論と呼ばれる(文献〔3〕)。
【0029】一般に、この偏波モード分散の測定方法と
等価な方法として知られている方法を以下に示す。文献
〔8〕では、偏光状態のポアンカレ球表示(文献〔2
0〕)を行い、光伝送媒質の有する複屈折の周波数依存
性により出力のストークスベクトルが変動する姿態か
ら、偏波モード分散を評価する方法を示している。規格
化ストークスパラメータs1 ,s2 ,s3 で張られる空
間を偏光状態空間と呼び、この空間の中におけるベクト
ル量を規格化ストークスベクトルと呼ぶ。完全偏光を取
り扱う場合、ジョーンズベクトルと規格化ストークスベ
クトルは同じ概念の表現の違いである。このことは、
「主偏光状態の概念をストークスベクトルを用いて行う
ことが可能である」ということを示唆しており、実際に
Eickhoffらによる報告(文献
〔9〕)、Poole らによる
報告(文献〔2〕)において主偏光状態をベクトル場で
議論することが行われている。
【0030】以下に、規格化ストークスベクトルを用い
た主偏光状態の議論を行い、ベクトル場において偏波モ
ード分散の測定がどのように行われているかを考察す
る。W.Eickhoffらは、複屈折を有する光伝送媒質を通
過した後の出力光の偏光状態が周波数の変化に対してど
のように変動するかを調べた。彼らは、複屈折により偏
光状態が空間的に(光が、光ファイバを伝播するうち
に)変化する状態を表すUlrichの定式化(文献〔10〕,
〔11〕)を用いて、この方程式との類推から、直感的に
以下のような方程式を提案し、実験による裏付けを得た
(文献〔2〕)。
【0031】ds/dω=Ω×s・・・・・(10)
【0032】この式において、sは規格化ストークスベ
クトルを表しており、ωは光の角周波数を表す。また、
ΩはPoole らにより偏波分散ベクトル(polarization d
ispersion vector)と名付けられた、偏光状態空間内の
ベクトルであり、その大きさは媒質の偏波モード分散に
等しく向きはポアンカレ球上で主偏光状態を指す(文献
〔12〕)。Eickhoffらは、モード結合のない一様な複屈
折の場合のみを議論したが、後に一次微小量近似と結合
させることにより、方程式(10)がモード結合のある一
般の場合でも成立することがPoole らにより示された
(文献〔2〕)。この方程式から、Ωが周波数の変化に
対して一定であれば、光の周波数を変化させるにつれて
ストークスベクトルはΩを回転の中心とし、かつ、Ωの
大きさを角速度とする歳差運動を行うことが分かる。実
際に測定された軌道を、図4に示す。
【0033】前出の主偏光状態の概念は、このような幾
何学的な描像の元で次のように表現できる。「ある角周
波数ω0 における媒質の複屈折を考える場合、それがど
のようなΩを与えようと、ω0 の近傍の一次の微小な角
周波数幅Δωの間ではΩは一定である。このため、Ωと
平行なストークスベクトルは一次微小量近似の元で周波
数的に安定に存在し、これを主偏光状態と呼ぶ。」した
がって、一次微小量近似の満たすべき条件は以下のよう
に記述できる(文献〔2〕)。
【0034】dΩ/dω=0・・・・・(11)
【0035】一様な複屈折を有する光伝送媒質(例え
ば、偏波保持光ファイバ)を例にとって、以上の議論を
考えてみる。偏波保持光ファイバの主軸が、実験室系の
座標であるx軸、y軸から角度φB だけ傾いているとす
る。具体的には偏波保持光ファイバの複屈折の大きさを
Δnとすると、偏波分散ベクトルΩは以下のように表さ
れる(文献
〔9〕)。
【0036】
【数7】
【0037】ここでLはファイバ長であり、cは真空中
の光の速さである。したがって、方程式(10)に従え
ば、周波数の変化とともにストークスベクトル(の先
端)は図5に示すような円軌道を描くことになる。上記
の主偏光状態の議論において、Poole とWagnerが示した
事実は以下のようにまとめられる。(i)一般に出力光
のΩの向きと大きさは周波数に依存する。(ii)しか
し、周波数の一次の微小変化においてΩは変化を受けな
い。以上の議論のうち、特に(ii)の事実が「一次微小
量近似」に対応する。主偏光状態は、周波数の範囲が条
件(ii)を満たしている場合にしか安定して依存しな
い。
【0038】
【発明が解決しようとする課題】既出の通り、主偏光状
態の考え方を利用した偏波モード分散の測定方法につい
ては、B.L.Heffner により具体的な測定装置のアイ
デアが発表されている(文献〔5〕)。この方法の概略
を以下に説明する。被測定光伝送媒質に対してある角周
波数ωの光を入射し、ジョーンズ行列の各成分を決定す
る。ジョーンズ行列の成分の有する自由度は3であるた
め3種類の異なった偏光状態の入射光を入れ、出射側の
光の応答から計算によりジョーンズ行列の各成分を決定
する(文献〔13〕)。
【0039】この作業を、2つの隣合った角周波数ω0
とω0 +Δωで行い、固有値方程式(6)に対応する方
程式を差分近似で解くことにより、媒質の偏波モード分
散を測定する。測定から偏波モード分散をできるだけ正
確に評価するためには、一次微小量近似が成立する範囲
でΔωをできるだけ大きくとる必要がある。したがっ
て、一次微小量近似が成立する範囲で十分大きな角周波
数刻み幅(微小周波数区間)Δωが、偏波モード分散測
定における最適な角周波数刻み幅となる(文献〔1
4〕)。
【0040】この方法における問題点は、HP社の偏波
アナライザのカタログ(文献〔14〕)やAso らによる報
告で示されたように(文献〔15〕,〔16〕)、一次微小
量近似が成立しない程度に角周波数の幅Δωを大きくと
ると、偏波モード分散を誤って評価してしまうことにな
る。
【0041】この問題を回避するために通常採用されて
いる方法を次に示す(文献〔13〕,〔17〕)。角周波数
をω0 からω0 +Δωまで連続的に変化させながら、出
力光の偏光状態をポアンカレ球上で観測する。方程式
(10),(11)を基礎にすると、一次微小量近似が成立
する範囲では、出力光の偏光状態はポアンカレ球上で図
4に示したような円軌道を描く。円軌道から外れるとこ
ろが一次微小量近似が成立するΔωの最大値である。こ
のようにして、周波数刻み幅が最適であるか否かを評価
するのである。
【0042】この方法を用いる際の問題点は、このよう
にして決定したΔωを用いてジョーンズ行列法で偏波モ
ード分散を測定した場合に、測定結果が正しいという保
証がないことにある。実際に、Heffner による報告で
は、R.C.Jones の原論文に従った方法(文献〔1
3〕)で行列の決定を行っているため、測定された伝送
媒質の偏波依存損失が少しでもあれば、ジョーンズ行列
を(数1)に示すようなユニタリー行列の形になるよう
に測定できない(文献〔5〕)。また、行列の各成分を
独立に測定するために、測定に対する誤差が僅かでもあ
れば、その結果が直接行列に影響するため、求められた
行列がユニタリー形式になっていないことも十分考えら
れる。
【0043】このため、固有値方程式(6)に対応する
別の方程式を解くことにより、偏波モード分散を評価し
ている。さらに、Heffner はこの別の方程式を効率良く
解くために指数関数近似(the exponential approximat
ion )と呼ばれる、一次微小量近似とは関係のない近似
を用いている。これらの理由から、Heffner が示した偏
波モード分散の測定法は、Poole and Wagnerによる主偏
光状態の理論を完全に満たした測定法であるか否かの議
論を残すことになる。このような事情から、Aso らは80
kmの分散シフト光ファイバを用いて、指数関数近似が成
立する範囲と一次微小量近似が成立する範囲を調べた。
この結果、長尺の単一モード光ファイバにおいては、2
つの近似がほぼ一致していることを確認した(文献〔1
5〕,〔16〕)。しかし、このことが一般の光伝送媒質
に対して成り立つという保証はない。
【0044】このような理由から別の可能性として、As
o らは大域的測定(global measurements )と局所的測
定(local measurements)の比較というアイデアを提案
した(文献〔16〕)。しかし、この方法ではΔωの最適
刻み幅を決定するのに時間がかかる上に、局所的測定か
らくる制限が厳しく、偏波モード分散が比較的大きな
(>5ps)伝送媒質の評価には使用できない欠点があ
る。
【0045】これまで述べてきた問題点は、以下の事柄
に起因していると考えられる。(a)文献〔3〕に記載
されているオリジナルの考え方に忠実に沿った測定系を
組まなかったこと。(b)ジョーンズ行列の計算により
示された主偏光状態の考え方を、実測可能なストークス
ベクトルの考え方に置き換える場合に、両者の考え方の
関係が明白でなかったこと。つまり、光伝送媒質を通過
する光の出射端での偏光状態をジョーンズベクトルで記
述すると、光伝送媒質の入射光の偏光状態を示す2成分
のジョーンズベクトルに、2行2列のジョーンズ行列を
掛け合わせたベクトルとして得られる。一方、光伝送媒
質の出射端での偏光状態を記述するストークスベクトル
は、光伝送媒質の入射光の偏光状態を記述する4成分の
ストークスベクトルに4行4列のミューラー行列を掛け
合わせたベクトルとして得られる。光伝送媒質の偏波モ
ード分散は光伝送媒質を通過する光の角周波数ωの変化
に対する偏光状態の変化に関連し、この角周波数ωの変
化に対する偏光状態の変化は、光伝送媒質の出射端での
偏光状態をストークスベクトルを用いて記述する手法で
は、前記方程式(10)によって与えられることがすでに
知られている。光伝送媒質の出射端での偏光状態をジョ
ーンズベクトルで記述する手法を用いる場合には、前記
(10)式のds/dωに対応する物理量は出射端での偏
光状態を記述するジョーンズベクトルξを角周波数ωで
微分してなる(dξ/dω)で表されるが、この角周波
数の変化に対するジョーンズベクトルの変化を示す方程
式を、前記ストークスベクトルの方程式(10)に対応す
る方程式として、どのように表現できるかが明らかでな
かった。(c)偏波分散ベクトルΩを成分毎に直接に測
定する方法がなかった。
【0046】ジョーンズベクトルを用いて光伝送媒質の
偏光状態を記述する手法は、入射光の偏光状態を示す2
成分のジョーンズベクトルに2行2列のジョーンズ行列
を掛け合わせることによって得られ、入射光の4成分の
ストークスベクトルに4行4列のミューラー行列を掛け
合わせて光伝送媒質の偏光状態をストークスベクトルを
用いて記述する手法に比べ光伝送媒質の偏光状態の評価
手法を簡易化できることになる。このことから、角周波
数ωの変化に対するジョーンズベクトルの変化の状態を
表す方程式が得られれば好都合となるが、たとえその方
程式が得られたとしても、ジョーンズベクトルは電界の
次元をもっているため、光伝送媒質に光を入射して実際
にジョーンズベクトルを測定できないという問題があ
り、従来においては、光伝送媒質の偏波モード分散をジ
ョーンズベクトルを用いて実際に実測して求めるという
ことは不可能であった。
【0047】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものであり、その目的は、ストークスベクトルを用い
て表される前記方程式(10)の関係が、ジョーンズベク
トルを用いてどのように表現できるかを明確化し、さら
に、光伝送媒質の偏光状態を記述するジョーンズベクト
ルを光強度の量として実測可能なストークスベクトルを
用いて表し、ジョーンズ行列の理論に忠実な測定系を組
むことができるようにし、このことにより、指数関数近
似等を用いることなく、一次微小量近似のみを考えるこ
とで、偏波分散ベクトルΩを直接測定して、この偏波分
散ベクトルΩから光伝送媒質の偏波モード分散を簡易、
かつ、正確に、高信頼性の下で測定することが可能な偏
波モード分散の測定方法およびその装置を提供すること
にある。
【0048】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、次のような手段を講じている。すなわち、
偏波モード分散の測定方法の第1の発明は、被測定対象
の光伝送媒質の入射端に3種類の異なった偏光状態の光
を入射し、光伝送媒質通過後の各光の偏光状態の変化を
ストークスベクトルとして測定し、測定した各ストーク
スベクトルを規格化処理して規格化ストークスベクトル
を算出し、これらの規格化ストークスベクトルを用いて
前記光伝送媒質の偏光特性を記述するジョーンズ行列U
の各成分を求める一連の手続を、光伝送媒質の入射端に
角周波数ωとこのωから微小周波数区間Δωだけ離れた
角周波数ω+Δωの2つの角周波数の光を入射して行
い、次に、角周波数ωの光に対する測定によって得られ
るジョーンズ行列U(ω)および角周波数ω+Δωの光
の場合における測定によって得られるジョーンズ行列U
(ω+Δω)を用いて差分近似を行い2行2列の行列H
をH≡2i(dU/dω)U+ として算出し、この行列
Hの成分から偏波分散ベクトルΩを求め、次に偏波分散
ベクトルΩの絶対値を求めて偏波モード分散を評価する
構成をもって、課題を解決する手段としている。
【0049】また、偏波モード分散の測定方法の第2の
発明は、前記第1の発明の偏波分散の評価を行う際に、
別途被測定対象の光伝送媒質通過後の光の偏光度を測定
して十分完全偏光に近いことを確認するとともに、請求
項1記載の行列Hの第1行第1列の成分h1 の虚数部I
m [h1 ]と実数部Re [h1 ]の比Im [h1 ]/R
e [h1 ]が1よりも十分小さいことを確認すること
で、偏波モード分散の測定精度を評価する構成をもって
課題を解決する手段としている。
【0050】さらに、偏波モード分散の測定方法の第3
の発明は、前記第1又は第2の発明における規格化スト
ークスベクトルの算出は光伝送媒質通過後の各偏光状態
の光を、検光子を通さない基本光と、異なる偏波面の検
光子を通した3種類の偏波光とに区分し、基本光の実測
ストークスベクトルをS0 ,偏波の異なる3種類の偏波
光の実測ストークスベクトルをS1 ,S2 ,S3 とした
とき、規格化ストークスベクトルs1 ,s2 ,s3 をs
1 =S1 /S0 ,s2 =S2 /S0 ,s3 =S3 /S0
の演算により算出する構成をもって課題を解決する手段
としている。
【0051】さらに、偏波モード分散の測定方法の第4
の発明は、前記第1又は第2又は第3の発明において、
光伝送媒質の出射端で測定されるストークスベクトルを
単位長さに規格化し、この規格化ストークスベクトルを
用いて被測定対象の光伝送媒質の偏光特性を記述するジ
ョーンズ行列をユニタリー形式で求め、角周波数ωの光
によって得られるユニタリー形式のジョーンズ行列U
(ω)と角周波数ω+Δωの光によって得られるユニタ
リー形式のジョーンズ行列U(ω+Δω)を用いて差分
近似による行列Hを算出する構成をもって課題を解決す
る手段としている。
【0052】さらに、偏波モード分散の測定方法の第5
の発明は、前記第4の発明において、単位長さの再規格
化ストークスベクトルsi (i=1,2,3)は規格化
ストークスベクトルをs1 ,s2 ,s3 としたとき、s
i /√(s1 2+s2 2+s3 2)⇒si の演算(ただしi=
1,2,3)により算出する構成をもって課題を解決す
る手段としている。
【0053】偏波モード分散の測定方法の第6の発明
は、前記第1乃至第5のいずれかの発明の構成の下で、
光の偏光状態を記述する規格化ジョーンズベクトルξ
を、光伝送媒質の出射端で測定されて規格化又は単位長
さに再規格化された3成分のストークスベクトルs1
2 ,s3 を用い、γを任意位相因子とし、s1 →−1
の極限においてξ=(−1,0)となる操作を行うこと
によって、(数8)の式によって表し、
【0054】
【数8】
【0055】この関係式を用いることによって偏波モー
ド分散を測定することを課題解決の手段としている。
【0056】偏波モード分散の測定方法の第7の発明
は、前記第6の発明の構成の下で、光伝送媒質の入射端
から入射される3種類の偏光状態A,B,Cをジョーン
ズベクトルの表現で(数9)のように表現し、
【0057】
【数9】
【0058】光伝送媒質の出射端で測定算出される規格
化又は単位長さに再規格化されたストークスベクトルを
(数10)の如く表し、
【0059】
【数10】
【0060】ジョーンズベクトルとストークスベクトル
の関係より、入射光の偏光状態A,Bに関して次の4つ
の関係式を成立させ、 [(1+s1 A )/√{2(1+s1 A )}]exp
(iγA )=u1 ξ1 A +u2 ξ2 A , [(1+s1 B )/√{2(1+s1 B )}]exp
(iγB )=u1 ξ1 B +u2 ξ2 B , [(s2 A +is3 A )/√{2(1+s1 A )}]e
xp(iγA )=u1 *ξ2 A −u2 * ξ1 A , [(s2 B +is3 B )/√{2(1+s1 A )}]e
xp(iγB )=u1 *ξ2 B −u2 * ξ1 B これらの方程式に以下の束縛条件があることを利用し、 |u1 2 +|u2 2 =1, |ξ1 A 2 +|ξ2 A 2 =1, |ξ1 B 2 +|ξ2 B 2 =1 さらに、γ=γA +γB で定義する変数γを用いてγB
をγA で書き換えることにより、他の位相因子の全てを
γA を未知数として含む関数として表し、2行2列のユ
ニタリー形成のジョーンズ行列を(数11)の如く求め、
【0061】
【数11】
【0062】次に、前記4つの関係式中の6つの変数の
内の残りの変数γA を求めるために、上記(数11)の式
で表される行列のもとで偏光状態Cの光を光伝送媒質に
通過させた場合に成り立つ(数12)の関係
【0063】
【数12】
【0064】を用いることにより、γC とγA を求め、
これによりジョーンズ行列の全ての成分を決定したユニ
タリー形式のジョーンズ行列を求める構成を課題解決の
手段としている。
【0065】偏波モード分散の測定方法の第8の発明
は、前記第1〜第7のいずれかの発明の構成の下で、差
分近似を行うことによって得られる行列Hの第1行第1
列の成分h1 の虚数部Im [h1 ]と実数部R
e [h1 ]の比Im [h1 ]/Re [h1 ]の絶対値の
値が、0より大きく1より小さい範囲で与えられる、一
次微小量近似成立の基準値η以下となるように、微小周
波数区間Δωを決定することにより、偏波モード分散の
測定誤差を評価する構成をもって課題を解決する手段と
している。
【0066】偏波モード分散の測定装置の第1の発明
は、被測定対象の光伝送媒質の入射端に少くとも3種類
の偏光状態を入射可能な光入射手段と、光伝送媒質の出
射端で前記3種類の偏光状態の入射光に対応する出射偏
光をストークスベクトル量として測定する出射光測定手
段と、この出射光測定手段で得られたストークスベクト
ルを用いることにより、光伝送媒質の光の偏光特性を記
述するジョーンズ行列をユニタリー形式で求めるジョー
ンズ行列算出演算部と、3種類の偏光状態の角周波数ω
の入射光を光伝送媒質に通過させることによって得られ
るユニタリー形式のジョーンズ行列U(ω)と同じ3種
類の偏光状態の微小周波数区間Δωだけ離れた角周波数
ω+Δωの入射光を光伝送媒質に通過させることによっ
て得られるユニタリー形式のジョーンズ行列U(ω+Δ
ω)を用いて差分近似を行い2行2列の行列HをH≡2
i(dU/dω)U+ として算出する差分近似演算部
と、この差分近似演算部により求められる行列Hの成分
により偏波分散ベクトルを求める偏波分散ベクトル算出
部と、この算出された偏波分散ベクトルΩの絶対値を求
めて偏波モード分散Δτ(Δτ=|Ω|)を算出する偏
波モード分散算出部とを有する構成をもって課題を解決
する手段としている。
【0067】偏波モード分散の測定装置の第2の発明
は、前記偏波モード分散測定装置の第1の発明のジョー
ンズ行列算出演算部には出射光測定手段で測定・評価さ
れた検光子を通さない基本光の実測ストークスベクトル
0 と検光子を通して偏波の異なる3種類の偏波光の実
測ストークスベクトルS1 ,S2 ,S3 とに基づき、規
格化ストークスベクトルs1 ,s2 ,s3 をs1 =S1
/S0 ,s2 =S2 /S0 ,s3 =S3 /S0 の演算に
より算出する第1の規格部が設けられている構成をもっ
て課題を解決する手段としている。
【0068】偏波モード分散の測定装置の第3の発明
は、前記偏波モード分散測定装置の第2の発明の構成の
下で、ジョーンズ行列算出演算部には第1の規格部によ
り算出された規格化ストークスベクトルs1 ,s2 ,s
3 に基づき単位長さの規格化ストークスベクトルs
i (i=1,2,3)をsi /√(s1 2+s2 2+s3 2
⇒s i の演算(ただしi=1,2,3)により算出する
第2の規格部が設けられている構成をもって課題を解決
する手段としている。
【0069】偏波モード分散の測定装置の第4の発明
は、前記第1又は第2又は第3の偏波モード分散の測定
装置の発明の構成の下で、差分近似演算部により求めら
れる行列Hの第1行第1列成分のh1 の虚数部Im [h
1 ]と実数部Re [h1 ]の比Im [h1 ]/Re [h
1 ]の絶対値の値が0より大きく1よりも小さい範囲で
予め与えられる一次微小量近似成立の基準値η以下とな
るようにΔωの微小周波数区間を自動決定する角周波数
刻み幅自動設定部を有する構成をもって課題を解決する
手段としている。
【0070】本発明に関し、始めにPoole らによる主偏
光状態の理論を書き換える作業を行い、その後偏波分散
ベクトルΩを直接に測定する方法を示す。ここでは前述
した式(1),(2)の代わりに、任意位相因子も含め
たジョーンズベクトルを取扱いこれをΨとおく。このと
き、光伝送媒質を記述する2行2列のジョーンズベクト
ル行列をUとすると、以下の関係式が成り立つ。
【0071】 Ψout (ω)=U(ω)Ψin・・・・・(12)
【0072】 Ψin=U+ (ω)Ψout (ω)・・・・・(13)
【0073】式(12)の両辺を微分して式(13)の関係
式を用いると、出射偏光状態について本発明において特
徴的な次の方程式を得る。
【0074】 i(dΨout /dω)=(1/2)H(ω)Ψout ・・・・・(14)
【0075】ここで本発明において明らかにされた右辺
の行列は
【0076】 H≡2i(dU/dω)U+ ・・・・・(15)
【0077】により定義され、この行列はエルミート行
列である。前述した(数6)の式を用いると具体的な形
が求まり、行列Hは(数13)のように表せ、
【0078】
【数13】
【0079】ここで、
【0080】 h1 =2i(u1 * (du1 /dω)+u2 * (du2 /dω))∈Re ・・ ・・・(16a)
【0081】 h2 =2i(u1 (du2 /dω)−u2 (du1 /dω))・・・・・(16 b)
【0082】と書ける。ここでh1 は理論的には実関数
である。方程式(14)の解を求めるために、以下に示す
固有値方程式を解くことを考える。
【0083】1/2Hξ=εξ・・・・・(17)
【0084】このとき、計算により固有値εおよび固有
ベクトルξは以下の式(18),(19)および(数14)の
ように与えられることが分かる。
【0085】 ε+ =√(|du1 /dω|2 +|du2 /dω|2 )・・・・・(18)
【0086】 ε- =−√(|du1 /dω|2 +|du2 /dω|2 )・・・・・(19)
【0087】
【数14】
【0088】ここで、条件式(8)を採用すると、
【0089】 dε±/dω=dh1 /dω=dh2 /dω=0・・・・・(20)
【0090】であることが証明できる。すなわちこの場
【0091】 dξ1 /dω=dξ2 /dω=0・・・・・(21)
【0092】の条件を満たしており、これらが主偏光状
態であることが分かる。このことから式(8)で与えら
れる条件が一次微小量近似を表していることが分かる。
また、式(9)から、偏波モード分散Δτは固有値
ε+ ,ε- の間の差として計算した以下の量と一致する
ことが示せる。
【0093】 Δτ=|ε+ −ε- |=2√(|du1 /dω|2 +|du2 /dω|2 )・ ・・・・(22)
【0094】以上の結果を用いると、方程式(14)の一
般解は、以下に示す2つの解Ψ+ ,Ψ-
【0095】
【数15】
【0096】の線形結合で書き下せることになる。ここ
でΔφは
【0097】 d(Δφ)/dω=2√(|du1 /dω|2 +|du2 /dω|2 )・・・ ・・(23)
【0098】を満たす位相因子である。形式的には異な
るが、以上の結果は正にPoole とWagnerによる偏波モー
ド分散の理論と同じ内容を含んでいる。このような定式
化に基づけば、前述のストークスベクトルの方程式(1
0)との関係が明確になる。
【0099】ジョーンズ行列を偏光状態空間内でのスピ
ノール量として扱う場合、ストークスベクトルSとジョ
ーンズベクトルΨの間には、S=Θ(Ψ+ σΨ)という
関係がある。ここでσは
【0100】
【数16】
【0101】で表されるパウリ行列である。またΘは3
次元の座標変換を与える直交行列であり、
【0102】
【数17】
【0103】で定義される行列である(文献〔5〕)。
このように、スピノール場からベクトル場への変換を利
用して式(14)を書き直すとベクトル場の方程式として
方程式(10)が得られる(文献〔20〕)。ここで、計算
により偏波分散ベクトルΩは以下のように書けることが
導ける。ただしRe は実数部、Im は虚数部を示す。
【0104】
【数18】
【0105】式(20)を考慮すると、この表現は当然に
式(10)の条件を満たしていることが分かる。したがっ
て、被測定光伝送媒質のジョーンズ行列を(数6)に示
すようなユニタリー行列の形式で評価できれば、h1
2 を計算から導きΩが評価できる。さらにこのとき
【0106】 Δτ=|Ω|=√(h1 2+|h2 2 )・・・・・(24)
【0107】という関係から偏波モード分散Δτを同時
に測定できる。この結果は、式(18),(19)および
(数14)の関係から式(22)で表した表現と一致するこ
とが分かる。実際に測定を行う場合には請求項1に示し
たように以下の差分近似を用いて行列Hを評価する。
【0108】 dui /dω={ui (ω+Δω)−ui (ω)}/Δω,(i=1,2)・ ・・・・(25)
【0109】この近似が十分成り立つような小さいΔω
を選べば、式(16a)に示したh1の値は実数になる。
現実的には測定誤差が生じるために、h1 の値は実数部
eと虚数部Im をもち、
【0110】 |Im [h1 ]/R2 [h1 ]|≪1・・・・・(26)
【0111】となるが、
【0112】 |Im [h1 ]/Re [h1 ]|≦η<1・・・・・(27)
【0113】を満たす適当なηを選ぶことにより、周波
数刻み幅(微小周波数区間)Δωが適切か否かの判定条
件になる。このようにして一次微小量近似の判定を行う
利点は、隣り合った角周波数2値における情報だけで、
一次微小量近似が成立しているか否かが分かることにな
る。
【0114】例えば、条件式(11)を実験から求めるた
めには、最低でも3つの角周波数(波長)での測定が必
要になる。しかし、偏波分散ベクトルの成分ui (i=
1,2)が図3に示すような波長依存性を持っている場
合に、Δωに対応する波長刻み幅をΔλ=0.6 nmとして
差分近似を行えば、条件式(8)を考える限りにおいて
明らかにΩの周波数(波長)微分量は0にはならない。
ところが、各々の区間(波長1550nm−1550.6nmの区間、
および1550.6nm−1551.2nmの区間)ではui の傾きはほ
ぼ一定であるために、これらの区間で差分近似により評
価された各々のΩの値は一次微小量近似を満たしてい
る。偏波モード分散の測定に必要なのは、1つの区間
(例えば波長1550nm−1550.6nmの区間)におけるΩの値
であるため、3つの角周波数(波長)での測定を用い条
件式(12)を用いて一次微小量近似を評価する方法で
は、装置の測定能力に不当な制限を加えることになる。
上記の例においては、測定に用いる波長可変光源の発振
精度がΔλ=0.6 nm以上しかなければ致命的である。
【0115】このような理由により、条件式(12)の代
わりに条件式(27)を用いることにより、偏波モード分
散測定の能力を向上させることが可能である。
【0116】次に、本発明におけるジョーンズ行列の実
測に関する議論を行う。前述の通り、通常では光伝送媒
質のジョーンズ行列を測定する際に、文献〔5〕に示さ
れている測定法を用いて行列の成分を決定する方法がと
られている。しかし、この測定法による測定結果はPD
Lや測定誤差に対して不安定であるため、ほんの僅かな
PDLや測定誤差があれば、測定により求められた行列
の形がユニタリー形式にならない。しかし、光伝送媒質
を通過した後の光が十分な偏光度を有しており、かつ、
媒質のPDLが十分小さく殆ど無視できるような場合に
は、一般に光伝送媒質の偏光特性を理解する上におい
て、測定により求められたジョーンズ行列の形がユニタ
リー形式である方が望ましい。
【0117】偏波モード分散を正確に測定する上では、
特にこれまで述べてきた「主偏光状態」の理論がジョー
ンズ行列のユニタリー性を基礎にしているため、上記の
ことが根本的な課題になる。本発明では、この問題を解
決する手段として、ジョーンズベクトルの成分を実測値
から求める方法を提供し、このことを利用することによ
りジョーンズ行列をユニタリー形式になるように決定す
るもので、以下にその方法を述べる。
【0118】光の偏光状態を記述する代表的な方法とし
て、ジョーンズベクトルおよびストークスベクトルによ
る偏光状態の表現が知られている(文献〔1〕)。偏光
状態が光伝送媒質の複屈折により変化を起こす場合に
は、これらのベクトルに対して、ジョーンズ行列、およ
びミューラー行列として知られる行列を作用させる手法
が用いられる(文献〔1〕)。竹中は1972年にこれらの
一次変換の幾何学的な関係を考察した(文献〔1〕)。
この結果、これらの変換は各々幾何学的には複素二次元
ベクトル空間における回転群(数学記号では、SL(2,
C))の表現、および実三次元空間における回転群(数
学記号ではO(3))の表現に相当することが示されて
いる。このためジョーンズベクトルとストークスベクト
ルはスピノールとベクトルの間の変換で結び付いてお
り、この変換は同型写像である。
【0119】他方、完全偏光の場合には光学の理論から
は光の偏光状態を記述するジョーンズベクトル
【0120】
【数19】
【0121】に対応して、規格化ストークスベクトルは
【0122】
【数20】
【0123】の形で表せることが知られている。ここで
物理的にΨi (i=1,2)は直交する光の電場の複素
振幅を表す。ストークスベクトルは光の強度の次元を有
するために、実測可能な物理量である(文献〔1〕)。
これに対して、ジョーンズベクトルは電場の次元を有す
るため、実測を行うためには光の強度との関係をつける
必要がある。実測可能な規格化ストークスベクトルs=
(s1 ,s2 ,s3 )に対して、このストークスベクト
ルに対応する偏光状態を表すジョーンズベクトルξは、
(数19),(数20)の関係を用いることにより以下の
(数21),(数22)のような2つの解を有し、任意位相
因子を用いても不定性が残る。
【0124】
【数21】
【0125】
【数22】
【0126】ここではγは任意位相因子である。このよ
うな事情に対し、ジョーンズベクトルとの対応を考える
場合、正確にジョーンズベクトルを表しているのは(数
22)の方である。実際には(数22)はs1 =−1の場合
を含んでいないが、s1 →−1の極限をとる場合には、
1 2+s2 2+s3 2=1の関係からs2 →0,s3 →0と
なり、
【0127】
【数23】
【0128】となるため、この極限操作を前提とすれ
ば、規格化ストークスベクトルのジョーンズベクトルに
よる表現は(数22)で書き下せることになる。このこと
を利用して次の手順を用いれば、光伝送媒質のジョーン
ズ行列をユニタリー行列の形式で測定することが可能で
ある。すなわち、被測定光伝送媒質に対して3種類の異
なった入射偏光状態の光を入れ、各々に対する出射偏光
状態を実測可能な物理量であるストークスベクトルとし
て測定し、測定結果を演算処理することにより、光伝送
媒質のジョーンズ行列をユニタリー行列の形で求めるこ
とができる。具体的には、3種類の入射偏光状態の光
A,B,Cをジョーンズベクトルの表現により、前記
(数9)の如くおき、(数6)のようなユニタリー形式
で光伝送媒質のジョーンズ行列を記述する。
【0129】また、上記光伝送媒質を通過後に測定され
た光のストークスベクトルを単位長さに規格化した量で
(数10)のように表すと、(数22),(数23)に示した
ジョーンズベクトルと規格化ストークスベクトルの関係
を用いることにより、入射光A,Bとそれらの応答に対
応する規格化ストークスベクトルの成分の量の間には以
下の4つの関係式が成り立つ。
【0130】[(1+s1 A )/√{2(1+
1 A )}]exp(iγA )=u1 ξ1 A+u2 ξ2
A , [(1+s1 B )/√{2(1+s1 B )}]exp
(iγB )=u1 ξ1 B +u2 ξ2 B , [(s2 A +is3 A )/√{2(1+s1 A )}]e
xp(iγA )=u1 *ξ2 A −u2 * ξ1 A , [(s2 B +is3 B )/√{2(1+s1 A )}]e
xp(iγB )=u1 *ξ2 B −u2 * ξ1 B
【0131】この式で入射のジョーンズベクトルξは事
前に決定することが可能であり、出射端の規格化ストー
クスベクトルsは測定により知ることができるため、こ
れらは既知の物理量として取り扱う。上記の方程式系は
実部と虚部を考えると8つの方程式であり、求める変数
の数が行列要素u1 ,u2 の実部と虚部、およびγA
γB で合計6つであることを考えると6つの変数の全て
が決まりそうであるが、これらの式には
【0132】|u1 2 +|u2 2 =1,|ξ1 A
2 +|ξ2 A 2 =1,|ξ1 B 2 +|ξ2 B 2
1.という3つの束縛条件があるために、方程式の自由
度は8−3=5である。したがって、変数が1つ決定で
きない。このために、γ≡γA +γB で定義する変数を
用いてγB を書き換えることにより、他の変数を全てγ
A の関数として表し、求めるべきジョーンズ行列を(数
11)のように求めることが可能である。この行列はユニ
タリー行列である。残った変数をγA を求めるために、
この行列で表される入射光Cを通過させることを考え
る。このとき、(数12)の関係が成り立つため、この関
係からγC とγA を求めることが可能となることによ
り、ジョーンズ行列の全ての成分を決定できる。このよ
うにして決定したジョーンズ行列はユニタリー行列であ
る。
【0133】予め光伝送媒質の偏光依存損失を測定し、
媒質の偏光依存損失が十分小さいことを確認した後、波
長幅の狭い光源から出射される光を光伝送媒質入射し、
光伝送媒質によりデポラライズされないことを確認す
る。これらの条件を確認した上で、上記のような手順に
従い光伝送媒質のジョーンズ行列がユニタリー行列の形
で求められる。
【0134】このジョーンズ行列の測定を微小周波数幅
(微小周波数区間)Δωを有する2つの角周波数ω,ω
+Δωにおいて行い、被測定伝送媒質におけるジョーン
ズ行列Uおよびその角周波数微分であるdU/dωを評
価する。つまり、角周波数ωによって得られるジョーン
ズ行列U(ω)と、角周波数ω+Δωによって得られる
ジョーンズ行列U(ω+Δω)との差分近似を行う。上
記被測定光伝送媒質におけるジョーンズ行列がユニタリ
ー行列の形式で得られるならば、この差分近似によって
得られる行列HをH≡2i(dU/dω)U+ で定義
し、この定義される行列Hの評価を行うことにより、前
記した如く、行列Hは(数13)の形で表現される。この
行列Hの行列成分は文献〔2〕に記されている偏波分散
ベクトルΩと密接な関係を持っており、具体的には偏波
分散ベクトルΩを、
【0135】
【数24】
【0136】で表した場合に、h1 =Ω1 ,h2 =Ω2
−iΩ3 という関係があることが証明される。この事実
を用いることにより、Ωは(数18)で表せるため、この
関係式を用いることによりジョーンズ行列の測定結果か
ら直接偏波分散ベクトルΩの評価を行い、偏波モード分
散の値ΔτをΔτ=|Ω|=√(h1 2+|h2 2 )の
演算により測定評価する。
【0137】なお、前記の差分近似を用いる場合、微分
の2次以上の効果が影響する程Δωの幅が大きければ、
計算により求められたh1 の値の虚数部が無視できなく
なる。このことを利用して、差分近似を用いて求められ
たh1 の虚数部Im と実数部Re の比について、|Im
[h1 ]/Re [h2 ]|≦η<1の条件を満たす1よ
りも小さな適当な値ηを考え、この条件を満たすことを
確認することにより一次微小量近似(the first order
approximation )が成立しているか否かを判定する。こ
の評価に基づき偏波モード分散の測定精度を向上させ
る。
【0138】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態例を図面
に基づいて説明する。図1には被測定対象の光伝送媒質
1の偏波モード分散の測定を行う偏波モード分散測定装
置の一実施形態例の要部構成が示されている。この実施
形態例の偏波モード分散測定装置は、光入射手段として
の入射側装置2と、出射側装置3とを有しており、入射
側装置2は波長可変光源4と偏光子および位相子からな
る偏光制御装置5を有して構成されており、波長可変光
源4は偏波モード分散測定の入射光の波長、つまり、角
周波数ωを可変制御する機能を備えている。偏光制御装
置5は波長可変光源4から出力された入射光の入射偏光
状態を制御するもので、少くとも3種類の異なる偏光状
態を作製制御する機能を有しており、この偏光制御装置
5で制御された偏光状態の光が光伝送媒質1の入射端に
入射されるのである。
【0139】出射側装置3は測定器本体6内に設けられ
る出射光測定手段11と、ジョーンズ行列算出演算部12
と、差分近似演算部13と、偏波分散ベクトル算出部14
と、偏波モード分散算出部15と、角周波数刻み幅設定部
16と、測定精度評価部17とを有して構成されている。
【0140】出射光測定手段11は、検光子7a〜7c
と、4分の1波長板8と、光強度検出部9o ,9a 〜9
c と、光電変換器10o ,10a 〜10c とを有して構成され
ている。被測定対象の光伝送媒質1を通った光は、出射
端で、4方向S0 〜S3 に分岐される。検光子7aは測
定器の座標系に対して水平方向を向いた検光子で、分岐
光S1 を水平方向に検光し、x偏波を作り出す。検光子
7bは測定器の座標系に対して垂直方向を向いた検光子
であり、分岐光S2 を垂直方向に検光し、y偏波を作り
出す。検光子7cは測定器の座標系に対して45度の方向
を向いた検光子であり、分岐光S3 を45度の方向に検光
する。4分の1波長板8は測定器の座標系に対してし主
軸が水平方向を向いた4分の1波長板であり、検光子7
cで検光された分岐光S3 をこの4分の1波長板8を通
して後段へ出力する。
【0141】光強度検出器9o は、分岐光S0 の光強度
をストークスベクトルS0 として検出する。同様に、光
強度検出器9a は検光子7aを通過して入射する分岐光
1の光強度をストークスベクトルベクトルS1 として
検出する。同様に、検光子9b は分岐光S2 の光強度を
ストークスベクトルS2 として検出する。同じく光強度
検出器9c は検光子7c、4分の1波長板8を介して入
射してくる分岐光S3の光強度をストークスベクトルS
3 として検出する。そして、これら、光強度検出器
o ,9a 〜9c で検出された各分岐光の光強度(スト
ークスベクトル)は、対応する光電変換器10o ,10a
10c によって光強度の信号から電気信号に変換されてジ
ョーンズ行列算出演算部12に供給される。
【0142】ジョーンズ行列算出演算部12は、ベクトル
規格化部18を備えている。このベクトル規格化部18は、
第1の規格化部20と第2の再規格化部21とを備えてお
り、第1の規格化部20は、ストークスベクトルS1 〜S
3 を、ストークスベクトルS0を基準として、次の(2
8)式の演算によって規格化する。
【0143】 Si/S0 ⇒si ,(i=1,2,3)・・・・・(28)
【0144】第2の再規格化部21は、前記(28)式によ
って規格化されたストークスベクトルs1 ,s2 ,s3
を、次の(29)式によって単位長さに再規格化する。
【0145】 si /{√(s1 2+s2 2+s3 2)}⇒si ・・・・・(29)
【0146】そして、ジョーンズ行列算出演算部12は、
この再規格化されたストークスベクトルs1 ,s2 ,s
3 を用いて、光伝送媒質1の偏光状態を記述するジョー
ンズ行列を算出する。このジョーンズ行列の算出の手法
は、記述したように3種類の入射偏光状態の光A,B,
Cをジョーンズベクトルの表現により、前記(数9)の
如く表し、(数6)のようなユニタリー形式で光伝送媒
質1のジョーンズ行列を記述し、前記単位長さに規格化
(再規格化)されたストークスベクトルを用いて、ジョ
ーンズ行列の全ての成分を決定した(数11)のように、
光伝送媒質1の偏光状態を記述するジョーンズ行列をユ
ニタリー形式で算出する。このようなジョーンズ行列の
算出手続により、ジョーンズ行列算出演算部12は、光伝
送媒質1の入射端に角周波数ωの3種の偏光状態の入射
光が入射され、光伝送媒質の通過後出射光のストークス
ベクトル量としての測定結果により求められるジョーン
ズ行列U(ω)と、同様に、光伝送媒質1の入射端に、
微小周波数区間Δωだけ離れた角周波数ω+Δωの3種
類の偏光状態の入射光が入射され出射端でのストークス
ベクトルの測定結果によりジョーンズベクトルU(ω+
Δω)をそれぞれ算出する。
【0147】差分近似演算部13は、ジョーンズ行列算出
演算部12で算出される2つのジョーンズ行列U(ω),
U(ω+Δω)の差分近似を行い、2行2列の行列Hを
前記(15)式で算出し、(数13)のように表される行列
Hを算出評価する。
【0148】偏波分散ベクトル算出部14は、前記算出さ
れた行列Hに基づき、偏波分散ベクトルΩを(数18)の
如く算出する。
【0149】偏波モード分散演算部15は、前記偏波分散
ベクトル算出部14で求められた偏波分散ベクトルΩの絶
対値を演算して、(24)式により、被測定対象の光伝送
媒質1の偏波分散Δτを算出測定する。
【0150】角周波数刻み幅自動設定部16は、前記差分
近似演算部13の差分近似演算により求められる行列H
の、第1行第1列の成分h1 の虚数部Im [h1 ]と実
数部Re [h1 ]の比Im [h1 ]/Re [h1 ]の絶
対値を算出し、この比の絶対値を、0より大きく1より
も小さい値で、予め与えられる一次微小量近似成立の基
準値η以下となっているか否かを判断し、求めた比の絶
対値がηよりも大のときには、予め与えられた一定量だ
け、あるいは比例演算等により求められるηからのずれ
量の大きさに応じた分だけ微小周波数区間Δωの値を小
さくなる方向に設定し、この設定値を波長可変光源4側
にフィードバックする。このフィードバックを受けて、
波長可変光源4は光伝送媒質1に入射する角周波数ωの
光と角周波数ω+Δωの2つの光の微小周波数区間Δω
を狭くする。この繰り返しにより、一次微小量近似が成
立する最適な微小周波数区間Δωが自動設定される。
【0151】測定精度評価部17は、前記角周波数刻み幅
自動設定部16と同様に、行列Hの第1行第1列の成分h
1 の虚数部と実数部の比の絶対値を算出し、この算出値
が1よりも十分小さいことを確認することで、偏波モー
ド分散の測定精度を評価する。すなわち、算出した比の
絶対値の値が1よりも十分小さいときに、偏波モード分
散の測定精度は良好と判定する。
【0152】本実施形態例の偏波モード分散測定の装置
は上記のように構成されており、次に、この装置を用い
た光伝送媒質1の偏波モード分散の測定例を以下に示
す。
【0153】本実施形態例では、偏波モード分散の測定
を行う前に、被測定対象の光伝送媒質1の光通過後の光
の偏光度を測定し、十分完全偏光に近いことを確認した
後に、以下の偏波モード分散の測定を行う。まず、光伝
送媒質のジョーンズ行列の評価(実測による算出)を行
うために、測定器の有する固有の座標軸のもとで、偏光
制御装置5の偏光子を用いてx方向の直線偏光、y方向
の直線偏光、およびx−y軸から45度傾いた3種類の直
線偏光A,B,Cを作り出す。この入射光A,B,Cの
入射偏光状態は、ジョーンズベクトルξの表現により
(数25)となる。
【0154】
【数25】
【0155】各々の入射光A,B,Cに対して、光伝送
媒質の出射端における測定から得られるストークスベク
トルを規格化して(数10)の如く表し、単位長さに再規
格化された(数26)に示すストークスベクトル
【0156】
【数26】
【0157】に対応して、ジョーンズベクトルをこれら
の成分を用いて(数22)のように書き下す。ここでγは
任意位相因子である。(数6)で記述される光伝送媒質
1に対して(数25)で示した各々の入射偏光を入れた場
合に、出力の偏光状態は以下のように与えられる。
【0158】(A)x偏波
【0159】
【数27】
【0160】(B)y偏波
【0161】
【数28】
【0162】(C)45度直線偏波
【0163】
【数29】
【0164】以下、このことを元にして光伝送媒質1の
偏光特性を記述するジョーンズ行列の各成分を決定す
る。(数28),(数29)から以下の方程式系を得る。
【0165】 [(1+s1 A )/√{2(1+s1 A )}]exp (iγA )=u1 ・・・・ ・(30a)
【0166】 [(1+s1 B )/√{2(1+s1 B )}]exp (iγB )=u2 ・・・・ ・(30b)
【0167】 [(s2 A +i s3 A )/√{2(1+s1 A )}]exp (iγA )=−u2 * ・・・・・(30c)
【0168】 [(s2 B +i s3 B )/√{2(1+s1 B )}]exp (iγB )=u1 * ・・・・・(30d)
【0169】式(30a)および(30b)より、|u1
=√{(1+s1 A )/2},|u2 |=√{(1+s
1 B )/2}という関係式を得ることができ、これらを
式(30c),(30d)に代入することにより、
【0170】 u1 * /|u1 |=exp (−iγA )=[(s2 B +is3 B )/√{(1+ s1 A )(1+s1 B )}]exp (iγB )・・・・・(31)
【0171】および、
【0172】 u2 * /|u2 |=exp (−iγB )=−[(s2 A +is3 A )/√{(1 +s1 A )(1+s1 B )}]exp (iγA )・・・・・(32)
【0173】という関係式を各々得ることになる。そこ
で、式(31),(32)の相加平均をとると、
【0174】 exp [−i(γA +γB )]=(1/2)[(s2 B +is3 B )/√{(1 +s1 A )(1+s1 B )}−(s2 A +is3 A )/√{(1+s1 A )(1 +s1 B )}]・・・・・(33)
【0175】となる。実際の評価では、右辺は測定値の
みから決定されるために誤差を含み、大きさが1になる
とは限らないため以下のように規格化された値を採用
し、γの値を求める。
【0176】 exp (iγ)≡exp [−i(γA +γB )]={(s2 B −s2 A )+i(s 3 B −s3 A )}/√{(s2 B −s2 A 2 +(s3 B −s3 A 2 }・・・ ・・(34)
【0177】ここで、γ=γA +γB で定義された量を
用いることにより、ジョーンズ行列は以下の(数30)の
ようにγA の関数として表すことができる。
【0178】
【数30】
【0179】ところで、この行列の行列式は
【0180】 det U=1+(1/2)(s1 A +s1 B )・・・・・(35)
【0181】であるため理論的には1になるが、実験誤
差(ストークスベクトルの測定誤差)を考えれば1にな
らないので、実験誤差が生じても1になるようにこの値
で行列を規格化した(数31)を用いる方が適当である。
【0182】
【数31】
【0183】これにより、ジョーンズ行列をγA の関数
としてユニタリー形式に書けることが示せた。この伝送
媒質にξc を入射すると、(数32)なる関係式を得る。
【0184】
【数32】
【0185】したがって、x=exp (iγA ),y=ex
p (iγC ),とおいて以下の方程式を解きxを求める
ことにより、ジョーンズ行列の全ての成分が求まる。
【0186】 √(1+s1 C )y={1/√(2+s1 A +s1 B )}[{√(1+s1 A )}x+{√(1+s1 B )}exp (−iγ)/x]・・・・・(36a)
【0187】 {(s2 C +is3 C )/√(1+s1 C )}y={1/√(2+s1 A +s 1 B )}[{√(1+s1 A )}1/x−{√(1+s1 B )}exp (iγ)x ]・・・・・(36b)
【0188】ただし、実験誤差のためにx,yの値の大
きさが1にならないことがある。このため方程式(36
a),(36b)で得られる解を規格化して
【0189】 exp (iγA )=x/|x|・・・・・(37)
【0190】とした値を(数31)に代入する方が適切で
ある。
【0191】入射偏光状態として、ここで用いた以外の
3種類の異なる偏光状態を用いた場合にも、同様の議論
を経てジョーンズ行列を求めることが可能である。
【0192】予め、光伝送媒質の偏波依存損失と光を透
過した後の偏光度を測定することにより、偏波依存損失
が十分小さく、かつ、偏光度が十分大きい場合に限っ
て、以上の測定を行うことでジョーンズ行列をユニタリ
ー行列の形式で実測できる。ジョーンズ行列をこのよう
な形式で測定することにより、Poole らによる主偏光状
態の理論(文献〔3〕)にも、麻生らによる波長掃引法
の公式(文献〔18〕)にも適用できるため、偏波モード
分散の測定以外の応用も広がるものと考えられる。上記
のようにして光伝送媒質1の偏光特性を記述するジョー
ンズ行列を、微小角周波数Δωだけ離れた2つの異った
角周波数ωと、ω+Δωの入射光に基づいて求めた後、
主偏光状態の理論に基づいた偏波モード分散の測定を行
う場合には、角周波数ωの光入射によって得られるジョ
ーンズ行列U(ω)と、角周波数ω+Δωの光入射によ
って得られるジョーンズ行列U(ω+Δω)との差分近
似を行い、この差分近似により得られる行列Hから前述
したように偏波分散ベクトルΩを求め、この絶対値|Ω
|を算出することにより目的とする偏波モード分散Δτ
が算出される。
【0193】次にモード結合を有する光伝送媒質の例と
して、図2に示す2本の偏波保持光ファイバ22,23を主
軸間の角度不整合θで接続したモデルを考える。この例
では、偏波保持光ファイバ22は主軸間の位相差がΔφ1
のものを使用しており、偏波保持光ファイバ23は主軸間
の位相差がΔφ2 のものを使用している。なお、図2の
x軸とy軸は測定器本体6の座標系を示している。この
具体例に基づいて、数値シミュレーションを行い、実測
の偏波モード分散測定について述べる。この場合、2本
の光ファイバ各々の固有偏光状態間の位相差をΔφ1
Δφ2 とおくと、
【0194】 〔+〕≡Δφ1 +Δφ2 ,〔−〕≡Δφ1 −Δφ2 ・・・・・(38)
【0195】で示された位相因子を用いて、ジョーンズ
行列の成分は
【0196】 u1 =е-i[+] cos2θ+е-i[-] sin2θ・・・・・(39a)
【0197】 u2 =−(еi[+]+еi[-])sin θcos θ・・・・・(39b)
【0198】と計算できる。式(15)を用いて計算した
行列Hは(数13)の形をしており、
【0199】 h1 =Δτ2 cos 2θ+Δτ1 (cos22θ+cos Δφ2 sin22θ)・・・・・ (40)
【0200】 Re [h2 ]=Δτ2 sin 2θ+Δτ1 sin 2θcos 2θ(1−cos Δφ2 si n 2 2θ)・・・・・(41)
【0201】 Im [h2 ]=−Δτ1 sin 2θsin Δφ2 ・・・・・(42)
【0202】である。ここで、
【0203】 Δτ1 =d(Δφ1 )/dω,Δτ2 =d(Δφ2 )/dω・・・・・(43)
【0204】である。実際の測定において、これらの量
が一次微小量近似の範囲内で正確に評価されているか否
かを調べるために、式(8)で示されている条件を考え
る。この条件を満たせば、自動的に偏波モード分散の評
価が一次微小量近似の範囲内で行われていることにな
る。実際に評価においては、中心角周波数ω0 と、これ
よりΔω離れた角周波数からジョーンズ行列を求め、
【0205】 H(ω0 )=2i[{U(ω0 +Δω)−U(ω0 )}/Δω]U+ (ω0 ) ・・・・・(44)
【0206】という差分近似を用いることにより評価を
行う。したがって、条件式(27)から導かれる帰結とし
て、
【0207】 |Im [h1 ]/Re [h1 ]|≦ η・・・・・(45)
【0208】とし、この条件を一次微小量近似の必要条
件として考えればよい。この条件を満たす場合に行列H
はエルミートになり、偏波モード分散を式(24)の形式
で評価できる。また、偏波分散ベクトルも3次元実ベク
トルとして求めることができる。
【0209】
【実施例】次に、図2に示す主軸間の角度不整合を有す
る2本の偏波保持光ファイバ22,23を接続した系を実際
に測定する具体例について数値例を挙げながら説明す
る。2本の偏波保持ファイバ22,23の仕様は、各々波長
1550nmにおけるビート長がLB=0.03 mで等しく、ファイ
バ長はL1 =1.708m、L2 =1.138mとする。これら2本
のファイバは、各々コアの両側に付けられた応力付与母
材による複屈折により偏波保持ファイバの役割を果た
す、PANDAファイバと呼ばれる偏波保持光ファイバ
とする。偏波保持ファイバ接続時の角度不整合はθ=30
度(deg.)とする。このとき、理想的なジョーンズ行列
は理論上、(数33)のように与えられ、その成分は以下
のように与えられるはずである。
【0210】
【数33】
【0211】 u1 (ω)=0.25{exp (−2.500 ×10- 11iω)+3exp (−12.500×10- 12 iω)}・・・・・(46)
【0212】 u2 (ω)=0.433 {exp (2.500 ×10- 12iω)−exp (12.500×10- 12i ω)}・・・・・(47)
【0213】実際に測定する際には測定誤差が生じ、そ
の測定誤差には、以下のような事象が考えられる。
(イ)指定する入射偏光状態が正確に媒質に入っている
かどうかに起因する誤差。(ロ)PDLの影響による誤
差。ここでは、各々の誤差の重ね合わせとして、測定値
の相対誤差が10%以下である測定系を組んだ場合につい
て考える。実験の前に予めPLDおよび媒質を通過した
後の光の偏光度を測定し、各々0.01dB/km、90%以上で
あることを確認した。通常偏光度が100 %でない場合に
はストークスベクトルの第0成分(文献〔I〕)を用い
て規格化するとするとs1 2+s2 2+s3 2<1なる関係が
あり、完全偏光の条件(完全偏光では理論上、s1 2+s
2 2+s3 2=1となる)が崩れる。このため、95%の偏光
度であれば十分完全偏光であるとして以下のように再規
格化を行う。si /√(s1 2+s2 2+s3 2)⇒si
(i=1,2,3)
【0214】この再規格化により、十分完全偏光である
と見なせる例えば95%以上の偏光度においても、s1 2
2 2+s3 2=1を満たす。波長1550nmの光源を用いて、
(数25)で指定する偏光状態の光を入射させることを考
える。このとき、式(46),(数33)は(数34)とな
る。
【0215】
【数34】
【0216】この行列を測定することを考える。入射偏
光を(数25)のように指定すれば、出力の偏光状態とし
て得られるべき再規格化されたストークスパラメータは
(数10)である、上記の例では具体的に(数35)なる理
論値が計算される。
【0217】
【数35】
【0218】実際の測定においてストークスパラメータ
を求める場合、得られた結果は誤差を含む。相対誤差10
%以内で、以下の(数36)のような再規格化されたスト
ークスベクトルが得られたとして、このデータからのジ
ョーンズ行列の評価を行う。
【0219】
【数36】
【0220】ここでsB の大きさは明らかに1を越えて
いるが、有効数字が少数第2桁までしかないことに起因
するものであり、本質的な問題ではないと考える。この
測定から(数22)を用いることにより、式(34)から任
意位相因子γが
【0221】 exp (iγ)=−0.1455+0.9894i・・・・・(48)
【0222】と計算できる。これを用いると(数30)の
行列は以下の(数37)のように書ける。
【0223】
【数37】
【0224】また、γA を求めるための方程式(37)は
【0225】 0.7550y=−0.7089{(0.0544+0.3702i)/x+1.3602x}・・・・・(49 )
【0226】 −(0.4636+1.0994i)y=0.7089[1.3602/x+(0.0544−0.3702i)x] ・・・・・(50)
【0227】となる。この方程式を解くことにより、
【0228】x=0.5845+0.8283i・・・・・(51)
【0229】 y=−(0.4372+0.9014i)・・・・・(52)
【0230】なる解を得る。この実験誤差のため、xの
大きさは
【0231】|x|=1.0138・・・・・(53)
【0232】であり1よりも大きいため、ジョーンズ行
列の大きさを1にするために規格化を行い
【0233】 exp (iγA )=x/|x|=±(0.5765+0.8171i)・・・・・(54)
【0234】を得る。負号をとれば(数38)を得る。
【0235】
【数38】
【0236】この結果は、(数34)で与えられる理論値
と比較して相対誤差5%以内で一致している。以上の手
順に基づいて式(46),(47)で与えられる系のPMD
を求めることにする。なお、式(54)において正号を採
用したとしても、位相差がπ異なる(符号が異なる)だ
けでありジョーンズ行列の表現として等価な結果を与え
る。次に、以上の手法を用いて光伝送媒質の偏波モード
分散を決定する。波長λ0 =1550nm、Δλ=2.0 nmとし
て考察を行う。この場合の角周波数差Δωは、Δω=−
1.567 ×1012rad./sec.である。(数25)に対応する3
種類の入射偏光状態を入れた場合に得られる出力のスト
ークスベクトルは、再規格化した表現で(数39)のよう
に与えられる。
【0237】
【数39】
【0238】実際の測定において、相対誤差10%の範囲
内で以下のような(数40)の測定結果を得たとする。
【0239】
【数40】
【0240】この場合に、先述の議論より評価されるジ
ョーンズ行列は(数41)により与えられる。
【0241】
【数41】
【0242】これにより差分近似を行うと(数42)なる
関係が得られる。
【0243】
【数42】
【0244】この行列を用いて、(数43)の関係を得、
【0245】
【数43】
【0246】という結果を得る。この式により、
【0247】 h1 (ω0 )=(0.0644+0.8273i)×10- 12・・・・・(55)
【0248】 h2 (ω0 )=(1.0044+0.6436i)×10- 12・・・・・(56)
【0249】となるが、h1 は実数値をとることからh
1 (ω0 )=0.0644×10- 12とおく。これより偏波分散
ベクトルは(数44)により得られる。
【0250】
【数44】
【0251】これにより偏波モード分散Δτの値はΔτ
=|Ω|=1.195 psのように得られる。この値は、理論
値Δτ=4.359 psと比べると、正確な測定を行っている
とは言い難い。この原因は式(55)から理解できるもの
であり、|Im [h1 ]/Re [h1 ]|=12.844>1.
000 であることは、差分近似を行ったときに式(8)の
条件を満足していないことに起因する。そこで、|Im
[h1 ]/Re [h1]|の値が0より大きく、かつ、
1より十分小さい値となるようにΔλ=0.2 nmとしてΔ
ωの微小周波数区間を設定した場合に、ストークスベク
トルの測定誤差が10%以内として求めた値を考えると、
理想的には再規格化した(数45)の値が得られるはずだ
が、
【0252】
【数45】
【0253】実測では(数46)の結果を得た。
【0254】
【数46】
【0255】この結果より求められるジョーンズ行列は
(数47)となる。
【0256】
【数47】
【0257】よって(数38)を用いるとh1 (ω0 )=
(3.9949+0.86399 i)×10- 12,h2 (ω0 )=(1.
9190+1.2793i)×10- 12となるため、式(27)で一次
微小量近似成立の基準値ηをη=0.25とすれば、|Im
[h1 ]/Re [h1 ]|=0.2163≦0.25となり、Δω
は一次微小量近似が成立するための刻み幅の必要条件を
満たしている。実際にこのときΩ(ω0 )は(数48)と
なり、
【0258】
【数48】
【0259】これより計算される偏波モード分散はΔτ
=4.613 psであり、理論値との相対誤差は5.83%にな
る。このように、モード結合が存在する場合にも適切な
刻み幅Δωを選ぶことにより、精度良く偏波モード分散
の測定が可能である。
【0260】
【発明の効果】本発明は、光伝送媒質の偏光状態を記述
するジョーンズベクトルを実測可能なストークスベクト
ルを用いて表現し、かつ、光伝送媒質の偏光特性を記述
するジョーンズ行列をユニタリー形式で表現できるよう
にしたので、被測定対象の光伝送媒質に3種類の偏光状
態の入射光を通過させ、その出射側で光強度をストーク
スベクトルとして測定することで、光伝送媒質の偏光状
態を記述するジョーンズベクトルおよび光伝送媒質の偏
光特性を記述するジョーンズ行列を実測評価することが
可能となった。
【0261】また、本発明は、従来不明確とされていた
ジョーンズベクトルの角周波数に対する変化状態(dξ
/dω)を、角周波数ωの入射によって得られるジョー
ンズ行列U(ω)と、微小周波数区間Δωだけ離れた角
周波数ω+Δωの光入射によって得られるジョーンズ行
列U(ω+Δω)との差分近似によって得られる2行2
列の行列Hを用いてi(dξ/dω)=Hξという関係
によって表現できることを明確化したので、この行列H
の成分によって分散ベクトルを算出すること、つまり、
分散ベクトルを実測することが可能となり、この分散ベ
クトルの絶対値を算出することにより、目的とする偏波
モード分散を算出測定することが可能となった。このよ
うに、本発明は、光伝送媒質の偏光状態を記述するジョ
ーンズベクトルを実測可能なストークスベクトルを用い
て表し、かつ、ジョーンズベクトルの角周波数に対する
変化状態を行列Hを用いて表すようにしたので、従来に
おいては困難であった文献〔3〕に記載されているオリ
ジナルの考え方に忠実に沿った偏波モード分散測定系を
組むことが可能となった。
【0262】さらに、本発明では、光伝送媒質の出射側
で測定・評価される規格化ストークスベクトルを単位長
さに再規格化し、その再規格化したストークスベクトル
を用いてジョーンズベクトルとジョーンズ行列を表して
いるので、規格化ストークスベクトルの測定・評価によ
る誤差等が生じて完全偏光状態から外れたり、偏波依存
損失が生じたとしても、例えば、偏光度が90%以上とい
う如く完全偏光に近い状態にあり、偏波依存損失も無視
できる程度に小さい場合には、完全偏光の状態と等価に
取り扱うことが可能となり、ジョーンズ行列をユニタリ
ー形成で表現できるという優れた効果を奏することがで
きる。
【0263】さらに、本発明では、前記の如く、行列H
を導入したことで、その行列Hの第1行第1列の成分h
1 の虚数部Im [h1 ]と実数部Re [h1 ]の比の絶
対値を算出することにより、その比の絶対値が一次微小
量近似成立の基準値η以下であることを確認することに
より、偏波モード分散測定が一次微小量近似成立の条件
を満たして測定されていることが確認でき、前記虚数部
m [h1 ]と実数部Re [h1 ]との比の絶対値がη
よりも大きいときには、その値がη以下となるように角
周波数の微小周波数区間Δωを自動設定でき、また、虚
数部Im [h1]と実数部Re [h1 ]の比の絶対値が
0よりも大きく、かつ、1よりも小さいことを確認して
偏波モード分散測定の精度を評価できるので、偏波モー
ド分散の高精度、かつ、高信頼性の測定が可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る偏波モード分散測定装置の一実施
形態例の要部構成図である。
【図2】本実施形態例における偏波モード分散測定の対
象となる光伝送媒質の一例を示す説明図である。
【図3】ジョーンズ行列の成分ui の波長依存性を示す
説明図である。
【図4】周波数を変化させた場合に、ポアンカレ球上で
見られるストークスベクトルの変化状態の説明図である
(文献〔2〕より引用)。
【図5】偏波分散ベクトルΩの角周波数ωに対する変化
状態がdΩ/dω=0で記述される偏波分散ベクトルを
有する光伝送媒質に対して、出力光の偏波状態が角周波
数の変化と共に変化する状態を描く円軌道(文献〔19〕
Fig.4より一部転載)を示す説明図である(R.Ulrich a
nd A.Simon, “Polarization Optics of TwistedSingle
-Mode Fibers”Appl.Opt.,vol.18,No.13,(1979),pp.224
1-2251. より引用)。
【符号の説明】
1 光伝送媒質 2 入射側装置 11 出射光測定手段 12 ジョーンズ行列算出演算部 13 差分近似演算部 14 偏波分散ベクトル算出部 15 偏波モード分散算出部 16 角周波数刻み幅自動設定部 18 ベクトル規格化部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−273082(JP,A) 特開 平6−34446(JP,A) 特開 平6−34447(JP,A) 特開 平5−209791(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01M 11/00 - 11/08 G01J 4/00 - 4/04

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被測定対象の光伝送媒質の入射端に3種
    類の異なった偏光状態の光を入射し、光伝送媒質通過後
    の各光の偏光状態の変化をストークスベクトルとして測
    定し、測定した各ストークスベクトルを規格化処理して
    規格化ストークスベクトルを算出し、これらの規格化ス
    トークスベクトルを用いて前記光伝送媒質の偏光特性を
    記述するジョーンズ行列Uの各成分を求める一連の手続
    を、光伝送媒質の入射端に角周波数ωとこのωから微小
    周波数区間Δωだけ離れた角周波数ω+Δωの2つの角
    周波数の光を入射して行い、次に、角周波数ωの光に対
    する測定によって得られるジョーンズ行列U(ω)およ
    び角周波数ω+Δωの光の場合における測定によって得
    られるジョーンズ行列U(ω+Δω)を用いて差分近似
    を行い2行2列の行列HをH≡2i(dU/dω)U+
    として算出し、この行列Hの成分から偏波分散ベクトル
    Ωを求め、次に偏波分散ベクトルΩの絶対値を求めて偏
    波モード分散を評価することを特徴とする偏波モード分
    散の測定方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の偏波分散の評価を行う際
    に、別途被測定対象の光伝送媒質通過後の光の偏光度を
    測定して十分完全偏光に近いことを確認するとともに、
    請求項1記載の行列Hの第1行第1列の成分h1 の虚数
    部Im [h1]と実数部Re [h1 ]の比Im [h1
    /Re [h1 ]が1よりも十分小さいことを確認するこ
    とで、偏波モード分散の測定精度を評価する請求項1記
    載の偏波モード分散の評価方法。
  3. 【請求項3】 光伝送媒質通過後の各偏光状態の光を、
    検光子を通さない基本光と、異なる偏波面の検光子を通
    した3種類の偏波光とに区分し、基本光の実測ストーク
    スベクトルをS0 ,偏波の異なる3種類の偏波光の実測
    ストークスベクトルをS1 ,S2 ,S3 としたとき、規
    格化ストークスベクトルs1 ,s2 ,s3 をs1 =S1
    /S0 ,s2 =S2 /S0 ,s3 =S3 /S0 の演算に
    より算出する請求項1又は請求項2記載の偏波モード分
    散の測定方法。
  4. 【請求項4】 光伝送媒質の出射端で測定されるストー
    クスベクトルを単位長さに規格化し、この規格化ストー
    クスベクトルを用いて被測定対象の光伝送媒質の偏光特
    性を記述するジョーンズ行列をユニタリー形式で求め、
    角周波数ωの光によって得られるユニタリー形式のジョ
    ーンズ行列U(ω)と角周波数ω+Δωの光によって得
    られるユニタリー形式のジョーンズ行列U(ω+Δω)
    を用いて差分近似による行列Hを算出することを特徴と
    する請求項1又は請求項2又は請求項3記載の偏波モー
    ド分散の測定方法。
  5. 【請求項5】 単位長さの再規格化ストークスベクトル
    i (i=1,2,3)は規格化ストークスベクトルを
    1 ,s2 ,s3 としたとき、si /√(s1 2+s2 2
    3 2)⇒si の演算(ただしi=1,2,3)により算
    出する請求項4記載の偏波モード分散の測定方法。
  6. 【請求項6】 光の偏光状態を記述する規格化ジョーン
    ズベクトルξを、光伝送媒質の出射端で測定されて規格
    化又は単位長さに規格化された3成分のストークスベク
    トルs1 ,s2 ,s3 を用い、γを任意位相因子とし、
    1 →−1の極限操作を行うことによって、(数1)の
    式によって表し、 【数1】 この関係式を用いることによって偏波モード分散を測定
    する請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の偏波
    モード分散の測定方法。
  7. 【請求項7】 光伝送媒質の入射端から入射される3種
    類の偏光状態A,B,Cをジョーンズベクトルの表現で
    (数2)のように表現し、 【数2】 光伝送媒質の出射端で測定算出される規格化又は単位長
    さに再規格化されたストークスベクトルを(数3)の如
    く表し、 【数3】 ジョーンズベクトルとストークスベクトルの関係より、
    入射光の偏光状態A,Bに関して次の4つの関係式を成
    立させ、 [(1+s1 A )/√{2(1+s1 A )}]exp
    (iγA )=u1 ξ1 A +u2 ξ2 A , [(1+s1 B )/√{2(1+s1 B )}]exp
    (iγB )=u1 ξ1 B +u2 ξ2 B , [(s2 A +is3 A )/√{2(1+s1 A )}]e
    xp(iγA )=u1 *ξ2 A −u2 * ξ1 A , [(s2 B +is3 B )/√{2(1+s1 A )}]e
    xp(iγB )=u1 *ξ2 B −u2 * ξ1 B これらの方程式に以下の束縛条件があることを利用し、 |u1 2 +|u2 2 =1, |ξ1 A 2 +|ξ2 A 2 =1, |ξ1 B 2 +|ξ2 B 2 =1 さらに、γ=γA +γB で定義する変数γを用いてγB
    をγA で書き換えることにより、他の位相因子の全てを
    γA を未知数として含む関数として表し、2行2列のユ
    ニタリー形式のジョーンズ行列を(数4)の如く求め、 【数4】 次に、前記4つの関係式中の6つの変数の内の残りの変
    数γA を求めるために、上記(数4)の式で表される行
    列のもとで偏光状態Cの光を光伝送媒質に通過させた場
    合に成り立つ(数5)の関係 【数5】 を用いることにより、γC とγA を求め、これによりジ
    ョーンズ行列の全ての成分を決定したユニタリー形式の
    ジョーンズ行列を求めることを特徴とする請求項6記載
    の偏波モード分散の測定方法。
  8. 【請求項8】 差分近似を行うことによって得られる行
    列Hの第1行第1列の成分h1 の虚数部Im [h1 ]と
    実数部Re [h1 ]の比Im [h1 ]/Re[h1 ]の
    絶対値の値が、0より大きく1より小さい範囲で与えら
    れる、一次微小量近似成立の基準値η以下となるよう
    に、微小周波数区間Δωを決定することにより、偏波モ
    ード分散の測定誤差を評価することを特徴とする請求項
    1乃至請求項7のいずれか1つに記載の偏波モード分散
    の測定方法。
  9. 【請求項9】 被測定対象の光伝送媒質の入射端に少く
    とも3種類の偏光状態を入射可能な光入射手段と、光伝
    送媒質の出射端で前記3種類の偏光状態の入射光に対応
    する出射偏光をストークスベクトル量として測定する出
    射光測定手段と、この出射光測定手段で得られたストー
    クスベクトルを用いることにより、光伝送媒質の光の偏
    光特性を記述するジョーンズ行列をユニタリー形式で求
    めるジョーンズ行列算出演算部と、3種類の偏光状態の
    角周波数ωの入射光を光伝送媒質に通過させることによ
    って得られるユニタリー形式のジョーンズ行列U(ω)
    と同じ3種類の偏光状態の微小周波数区間Δωだけ離れ
    た角周波数ω+Δωの入射光を光伝送媒質に通過させる
    ことによって得られるユニタリー形式のジョーンズ行列
    U(ω+Δω)を用いて差分近似を行い2行2列の行列
    HをH≡2i(dU/dω)U+ として算出する差分近
    似演算部と、この差分近似演算部により求められる行列
    Hの成分により偏波分散ベクトルを求める偏波分散ベク
    トル算出部と、この算出された偏波分散ベクトルΩの絶
    対値を求めて偏波モード分散Δτ(Δτ=|Ω|)を算
    出する偏波モード分散算出部とを有することを特徴とす
    る偏波モード分散の測定装置。
  10. 【請求項10】 ジョーンズ行列算出演算部には出射光測
    定手段で測定・評価された検光子を通さない基本光の実
    測ストークスベクトルS0 と検光子を通して偏波の異な
    る3種類の偏波光の実測ストークスベクトルS1
    2 ,S3 とに基づき、規格化ストークスベクトル
    1 ,s2 ,s3 をs1 =S1 /S0 ,s2 =S2 /S
    0 ,s3 =S3 /S0 の演算により算出する第1の規格
    部が設けられていることを特徴とする請求項9記載の偏
    波モード分散の測定装置。
  11. 【請求項11】 ジョーンズ行列算出演算部には第1の規
    格部により算出された規格化ストークスベクトルs1
    2 ,s3 に基づき単位長さの再規格化ストークスベク
    トルsi (i=1,2,3)をsi /√(s1 2+s2 2
    3 2)⇒siの演算(ただしi=1,2,3)により算
    出する第2の再規格部が設けられていることを特徴とす
    る請求項10記載の偏波モード分散の測定装置。
  12. 【請求項12】 差分近似演算部により求められる行列H
    の第1行第1列成分のh1 の虚数部Im [h1 ]と実数
    部Re [h1 ]の比Im [h1 ]/Re [h1 ]の絶対
    値の値が0より大きく1よりも小さい範囲で予め与えら
    れる一次微小量近似成立の基準値η以下となるようにΔ
    ωの微小周波数区間を自動決定する角周波数刻み幅自動
    設定部を有することを特徴とする請求項9又は請求項10
    又は請求項11記載の偏波モード分散の測定装置。
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