JP3322918B2 - ポリビニルアルコール系樹脂の水性分散液 - Google Patents

ポリビニルアルコール系樹脂の水性分散液

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、紙加工、接着剤、糊剤
等の多用途に利用可能なポリビニルアルコール系樹脂の
水性分散液に関し、更に詳しくは、高濃度においても良
好な流動性を有するポリビニルアルコール系樹脂の水性
分散液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリビニルアルコール系樹脂は、
その水溶性、接着性を利用して種々の分野、例えば接着
剤、フィルム、シートなどの成型物の他、分散剤、繊維
用糊剤等の用途の分野に広く用いられている。そして、
近年その接着強度、フィルム強度、紙加工時のバリヤー
性等の改良のため、比較的重合度の高いポリビニルアル
コール系樹脂が多用される傾向にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】かかる用途においてポ
リビニルアルコール系樹脂は、水溶液として用いられる
ことが多いが、重合度が高くなるにつれてポリビニルア
ルコール系樹脂の粘度は非常に高くなり、例えば、平均
重合度3000、平均ケン化度99モル%のポリビニル
アルコール系樹脂4重量%の水溶液の場合、粘度(B型
粘度計にて測定)は、約100cps(20℃)にも達
し、その取り扱いや塗工操作等に著しい障害が起こり易
い。又、上記のポリビニルアルコール系樹脂水溶液の場
合、水溶液自体を得ることが困難であるうえ、貯蔵安定
性や特に低温での流動安定性が不良である等の問題が生
じている。これらの問題を解決すべく、ポリビニルアル
コール系樹脂を変性したり、水溶液の濃度を下げたり、
あるいは、高温で貯蔵する等の工夫が試みられている
が、満足できる解決策がないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
かかる問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、結晶化
度30%以上、平均重合度3000以上、平均粒径50
μ以下のポリビニルアルコール系樹脂微粒子を0.1重
量%以上の濃度で水に分散させた水性分散液は、ポリビ
ニルアルコール系樹脂が高重合度、高濃度であっても塗
工性良好な流動性を示し、保存安定性にも優れ、分散液
の調整も容易であり、しかもポリビニルアルコール系樹
脂水溶液を用いた場合と同様の物性が期待でき、接着剤
や紙加工用途等に好適である等の顕著な効果が得られる
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】以下、本発明について詳述する。本発明で
用いるポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリ酢酸ビニ
ルをケン化して得られるもので、更には、酢酸ビニルを
主成分としてこれと重合可能な単量体の共重合体ケン化
物が挙げられる。該単量体としては、例えばアクリル
酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレ
イン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、モ
ノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル等のニ
トリル類、アクリルアミド、メタアクリルアミド等のア
ミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタ
アリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸等のオレフ
ィンスルホン酸あるいはその塩、エチレン、プロピレ
ン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−
オクタデセン等のオレフィン類、アルキルビニルエーテ
ル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、オキシアルキレン類等の共重合体
ケン化物が挙げられ、また、かかる樹脂をグラフト変
性、又はブロック共重合した樹脂も含まれるが、これら
に限定されるものではない。
【0006】本発明に用いるポリビニルアルコール系樹
脂は、上記のいずれであっても良いが、結晶化度30%
以上、平均重合度3000以上、平均粒子径50μ以下
のものが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂の結
晶化度が30%未満では、水分散性が著しく低下し、良
好な流動性が得られず不適当である。通常、工業的に製
造された平均重合度3000を越えるポリビニルアルコ
ール系樹脂の結晶化度は0〜25%程度であるので、本
発明では熱処理等の処理を施してかかる範囲内に結晶化
度を調整しなければならない。なお、本発明に言う結晶
化度とは、示差走査型熱量計による結晶融解熱測定値
(x)を、式(x/1.64)×100(%)に代入し
算出した値である。[1.64;ポリビニルアルコール
系樹脂の融解潜熱(kcal/mol)R.K.Tub
bs,J.Polym.Sci.,A3,418(19
65)より]
【0007】また、平均重合度が3000未満になる
と、水溶液でも使用可能であるので本発明の効果を期待
する意味がなく、ポリビニルアルコール系樹脂塗布成型
膜のバリヤー性や接着性等も低下し、要求されるポリビ
ニルアルコール系樹脂の特性が得られない。更に、ポリ
ビニルアルコール系樹脂の平均粒子径が50μを越える
とポリビニルアルコール系樹脂水分散液の安定性が低下
し、ブロッキング、ゲル化等が起こり易くなるとともに
製膜時の均質性が劣り、薄くて均一な膜生成性が損なわ
れる恐れが生じてくる。上記の中でも、結晶化度35%
以上、平均重合度3500以上、平均粒子径30μ以下
の時、本発明の効果が最大限に発揮される。本発明に用
いるポリビニルアルコール系樹脂は、上記条件を満足し
ていれば良く、平均ケン化度は特に限定されないが水分
散性を考慮すれば、90モル%以上が好ましく、さらに
好ましくは95モル以上のものが好適に用いられる。
【0008】本発明に用いるポリビニルアルコール系樹
脂微粒子は、通常の工業的製法で得られるポリビニルア
ルコール系樹脂を前記した様に特定の結晶化度に調整す
ることと、微粒子化することが必要となる。結晶化度の
調整と粒度調整とは同時に行っても、別々に行ってもよ
い。例えば、上記のポリビニルアルコール系樹脂の粗粒
を機械的粉砕法により微粒子化する方法やケン化触媒を
含むポリ酢酸ビニル系樹脂のアルコール溶液を噴霧・乾
燥処理するというケン化と微粒子化を同時に行う方法等
がある。前者の方法においては、常法に従ってポリ酢酸
ビニル樹脂あるいは前述の酢酸ビニルと共重合可能な単
量体との共重合体をケン化してポリビニルアルコール系
樹脂の微粒子を得るのである。
【0009】具体的には、以下の通りである。単量体と
酢酸ビニルとを共重合するに当たっては、特に制限はな
く公知の重合方法が任意に用いられるが普通メタノール
やエタノール等のアルコールを溶媒とする溶液重合が実
施される。かかる方法に於いて単量体の仕込み方法とし
ては、まず酢酸ビニルの全量と前記単量体の一部を仕込
み、重合を開始し、残りの単量体を重合期間中に連続的
に又は分割的に添加する方法、両者を一括仕込みする方
法等任意の手段を用いることができる。共重合反応は、
アゾビスブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベン
ゾイル、過酸化ラウロイルなどの公知のラジカル重合触
媒を用いて行われる。また、反応温度は50℃〜沸点程
度の範囲から選択される。上記のごとく得られる酢酸ビ
ニル系共重合体あるいはポリ酢酸ビニルは、次にケン化
される。ケン化に当たっては、該共重合体あるいはポリ
酢酸ビニルをアルコールに溶解しアルカリ触媒の存在下
にケン化が行われる。アルコールとしては、メタノー
ル、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコー
ル中の共重合体あるいはポリ酢酸ビニルの濃度は、通常
20〜70重量%の範囲から選ばれる。
【0010】ケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエ
チラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸
化物やアルコラートのごときアルカリ触媒を用いること
が通常であるが、硫酸等の酸触媒も使用可能である。か
かる触媒の使用量は、酢酸ビニルに対して5〜200ミ
リモル当量にすることが必要である。また、ケン化温度
は、特に制限はないが、通常20〜60℃が好ましく、
さらに好ましく30〜50℃の範囲が適している。反応
は、通常数分〜2,3時間にわたって行われる。かくし
て得られたポリビニルアルコール系樹脂は、200〜3
00μ程度の粗粒として得られるので、次に機械的な粉
砕によって微粒子化される。さらに必要に応じて熱処理
等を行うことも可能である。
【0011】粉砕方法に特に制限はなく任意の方法が採
用され、例えばロールミル、スタンプミル、エッジラン
ナー、切断・せん断ミル、ロッドミル、自生粉砕機、ロ
ーラミル、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ゲージミ
ル、ピンミル、ディスインテグレーター、スクリーンミ
ル、ターボ型ミル、遠心分級ミル等)、ボールミル(転
動ミル、振動ボールミル、遊星ミル)、撹拌ミル(タワ
ーミル、撹拌槽型ミル、流通管型ミル、アニュラーミ
ル)、ジェットミル、せん断ミル、圧縮摩砕型粉砕機、
コロイドミル等が用いられる。後者の方法(噴霧・乾燥
処理)においては、ポリ酢酸ビニルと前記のアルコール
及びケン化触媒とのペースト物をディスクタイプあるい
はノズルタイプの噴霧装置より50〜200℃の空気中
にスプレー噴霧することによりポリビニルアルコール系
樹脂の微粒子を得ることができる。必要に応じて、再ケ
ン化を行いケン化度を調整することも可能である。かく
して本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂微粒子
が得られるのである。
【0012】ポリビニルアルコール系樹脂微粒子の製造
方法は、上記の方法に限定されるものではないが、本発
明においては、上記の噴霧・乾燥処理による方法(スプ
レードライ法)がケン化及び微粒子化が同時に行え、か
つ球状の均一な粒子が得られるのでより効果的である。
本発明のポリビニルアルコール系樹脂の水性分散液は、
上記の如くして得られたポリビニルアルコール系樹脂微
粒子を0.1重量%以上の濃度で水に分散させたもの
で、該微粒子濃度が0.1重量%未満では、接着剤、紙
加工、糊剤等の用途において目的とする物性が得難くな
る。該分散液の調整法としては、公知の方法が用いら
れ、通常は、50℃以下の水に撹拌下で該微粒子を添加
する方法が採用される。また、上記の分散液には、必要
に応じて各種の保護コロイド類、界面活性剤、消泡剤、
防腐剤等適宜他の助剤を添加することもできる。
【0013】かくして得られたポリビニルアルコール系
樹脂の水性分散液は、非常に有用なものであり、種々の
用途が考えられ、例えば、繊維,フイルム,シート,パ
イプ,チューブ等の成型物類、木材,紙,アルミ箔,プ
ラスチックス等の接着剤、粘着剤、再湿剤、保湿剤、ホ
ットメルト接着剤,感圧接着剤,不織布用バインダー,
セメント混和用等の接着剤類、紙,繊維製品へのコーテ
ィング剤、成型物の添加剤、インキ,塗料等の添加剤、
塩化ビニル,酢酸ビニル,アクリル酸エステル等の不飽
和単量体の懸濁重合並びに乳化重合用の分散安定剤等種
々の用途が挙げられ、更には、50℃以下の状態で水性
分散液として使用されることが好ましいが、必ずしもこ
れらの用途や使用法に限定されるものではない。
【0014】
【作用】本発明のポリビニルアルコール系樹脂の水性分
散液は、該樹脂が高重合度、高濃度であっても低粘度
で、塗工性に優れ、紙加工、接着剤、糊剤等の用途に大
変有用である。
【0015】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。尚、実施例中、「部」、「%」とあるのは、特に
ことわりのない限り重量基準を示す。 実施例1 平均重合度3500のポリ酢酸ビニル100部、メタノ
ール溶液300部及び水酸化ナトリウム1部を撹拌機付
の缶で混合撹拌し、ポリ酢酸ビニルのペーストを得た。
次に該ペーストを20℃に保ち、ノズル(φ=0.5m
m)より、噴霧圧1.0kg/cm2で180℃の窒素
ガス雰囲気中に噴霧し、同時に乾燥させた後、メタノー
ル中で再ケン化を行い乾燥させて、結晶化度35%、平
均重合度3500、ケン化度97モル%、平均粒子径1
0μのポリビニルアルコール系樹脂微粒子を得た。上記
の如く、スプレードライ法で得られた該ポリビニルアル
コール系樹脂100部を1900部の水に撹拌下に充分
分散させ、安定なポリビニルアルコール系樹脂の水性分
散液を得た。該水性分散液の粘度は、1.6cps(2
0℃)であり、20℃で10日間放置後の粘度も、1.
6cps(20℃)であり、外観は、均一分散状態を示
し良好であった。また、上質紙(坪量50g/m2)に
ロールコーターで20℃にて該水性分散液を塗工(ポリ
ビニルアルコール系樹脂着量0.5g/m2)し、乾燥
後該塗工紙に常法でインキを印刷してJIS P 81
42に準拠して75度鏡面光沢度を測定した。
【0016】実施例2 常法によりアルカリケン化して平均重合度5000、ケ
ン化度99.8モル%、平均粒子径430μのポリビニ
ルアルコール系樹脂を得た。次に180℃で5分間熱処
理を行い、結晶化度を40%として、該樹脂をジェット
ミル(日本ニューマチック工業社製、超音速ジェット粉
砕機 LABO JET LJ)で粉砕し、平均粒子径
25μのポリビニルアルコール系樹脂を得た。該樹脂を
用いて実施例1と同様にポリビニルアルコール系樹脂の
水性分散液を調製し、同様に評価を行った。
【0017】実施例3,4 表1に示すポリビニルアルコール系樹脂を用い、実施例
1と同様にポリビニルアルコール系樹脂の水性分散液を
得て、同様に評価を行った。 比較例1〜3 表1に示すポリビニルアルコール系樹脂を用いて実施例
1と同様にポリビニルアルコール系樹脂の水性分散液を
得て、同様に評価を行った。
【0018】比較例4 常法によりアルカリケン化して得られた平均重合度35
00、ケン化度99.0モル%、平均粒子径430μの
ポリビニルアルコール系樹脂を90℃にて加熱溶解させ
て5%のポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得て、
実施例1と同様に評価を行った。実施例及び比較例の評
価結果を表2に示す。
【0019】
【表1】 ポリビニルアルコール系樹脂 微粒子化法 平均粒径 平均重合度 ケン化度 結晶化度 (μ) (モル%) (%) 実施例1 3500 97.0 35 噴霧乾燥法 10 〃 2 5000 99.8 40 機械粉砕法 25 〃 3 3000 98.0 36 噴霧乾燥法 20 〃 4 4000 99.0 45 〃 15 比較例1 3500 97.0 20 噴霧乾燥法 10 〃 2 1700 97.0 35 〃 25 〃 3 3500 97.0 35 〃 80 〃 4 3500 99.0 35 加熱溶解法 −−
【0020】
【表2】 ポリビニルアルコール系樹脂液 保存安定性* 塗工性** PVA濃度 PVA粒子 粘 度 外観 増粘度 (%) の分散状態 (cps/20℃) 実施例1 5.0 均一分散 1.6 ○ ○ ○ 〃 2 4.8 〃 1.5 ○ ○ ○ 〃 3 7.0 〃 1.6 ○ ○ ○ 〃 4 10.0 〃 3.9 ○ ○ ○ 比較例1 5.0 均一分散 8.5 × △ × 〃 2 5.0 〃 2.7 × △ △ 〃 3 5.0 不均一分散 1.9 × ○ × 〃 4 5.0 溶解 300 ゲル化 塗工不可
【0021】*保存安定性評価の方法及び基準 (外観)目視観察により、分散液の状態を調べた。 ○ −−− 層分離が認められず均一分散状態 × −−− 層分離が認められ不均一分散状態 (増粘度)初期の粘度と10日放置後の粘度から、次式
より粘度変化率を算出し、以下の通り評価した。 粘度変化率=放置後の粘度(cps)/初期の粘度(c
ps) ○ −−− 1.5未満 △ −−− 1.5以上3.0未満 × −−− 3.0以上 **塗工性評価の方法及び基準 上記の方法で75度鏡面光沢度を測定し、以下の通り評
価した。 ○ −−− 光沢度55%以上 △ −−− 光沢度55%未満50%以上 × −−− 光沢度50%未満
【0022】
【発明の効果】本発明のポリビニルアルコール系樹脂の
水性分散液は、該樹脂が高重合度、高濃度であっても低
粘度で、塗工性に優れ、紙加工、接着剤、糊剤等の用途
に大変有用である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C09D 129/04 C08J 3/03 C09J 129/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶化度30%以上、平均重合度300
    0以上、平均粒径50μ以下のポリビニルアルコール系
    樹脂微粒子を0.1重量%以上の濃度で水に分散させた
    ことを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂の水性分
    散液。
  2. 【請求項2】 ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にケン
    化触媒を添加した組成物をノズルより噴霧及び乾燥処理
    することによって得られたポリビニルアルコール系樹脂
    球形粉末をポリビニルアルコール系樹脂微粒子として用
    いることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコ
    ール系樹脂の水性分散液。
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