JP3322260B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プレス成形性およ
び油面接着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車メーカーにおける代表的な車体製
造工程は、鋼板材料のブランキング工程、油洗工程(鋼
板を油で洗浄する工程)、プレス成形工程、接合(油面
接着、スポット溶接)工程、脱脂工程、化成処理工程お
よび塗装工程からなり、各工程は、素材として一般的に
用いられている合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適応した設
計がなされている。なお、前記の「油面接着性」とは、
油洗工程で用いた油が付着したままの鋼板表面に接着剤
を塗布し、接着する際の接着性をいう。合金化溶融亜鉛
めっき鋼板にはプレス成形性が要求されるが、合金化溶
融亜鉛めっき皮膜の合金化度はプレス成形性に大きな影
響を与える。すなわち、合金化度が低すぎる場合には、
プレス成形時にダイスと材料の焼き付きによる材料破断
が頻発し、合金化度が高すぎる場合には、パウダリング
と呼ばれるめっき皮膜の剥離が起こる。そのため、合金
化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性を安定した良好な
ものとすることが急務であり、プレス成形性の改良技術
の開発が切望されている。また、このプレス成形性改良
のための技術を適用することにより他の特性、すなわ
ち、スポット溶接性、化成処理性、油面接着性等に悪影
響が生じてはならず、特に、プレス成形性と油面接着性
とが共に良好であることが強く要請されている。合金化
溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性、スポット溶接性、
化成処理性を向上させる技術として、例えば、以下の技
術が知られている。 合金化溶融亜鉛めっき皮膜の表面に電析させた、より
硬質な、鉄−亜鉛合金めっき皮膜により潤滑性を向上さ
せ、プレス成形時のめっき皮膜とダイスの焼き付きを抑
制する(特開昭58− 15554号公報)。 亜鉛系めっき皮膜の表面をアモルファス状のりん
(P)酸化物で被覆することによりプレス成形性、化成
処理性に優れた亜鉛系めっき鋼板とする(特許第 28194
27号公報)。 亜鉛含有金属めっき鋼板の表面に、りん酸亜鉛化成皮
膜中のZnの一部をFe、Co、Ni等の金属で置換したりん酸
亜鉛複合皮膜を形成することにより特に発熱の大きい高
速連続プレス成形時における成形性を確保し、さらに、
この結晶性の皮膜が有する物理的な形状(表面の凹凸)
により上塗り塗装密着性を改善する(特開平 7−138764
号公報)。 めっき皮膜の表面に、硬質でかつ化成処理液に可溶な
マンガン酸化物被膜を形成させることによりプレス成形
性を改善しつつ、化成処理性をも確保する(特公平 6−
35678号公報)。 しかし、これら従来の技術には、次のような問題点があ
る。すなわち、上記の鉄−亜鉛合金めっき皮膜を合金
化溶融亜鉛めっき皮膜の表面に電析させる方法では、電
気めっきのための設備費を含め製造コスト負担が極めて
大きい。の亜鉛系めっき皮膜の表面をアモルファス状
のP酸化物で被覆する方法では、前記P酸化物の形成を
電解処理により行うとすれば、製造コストが上昇するほ
か、生産速度が電解処理によって制約を受ける。の亜
鉛含有金属めっき鋼板の表面にりん酸亜鉛複合皮膜を形
成する方法では、電解反応や化成反応を利用するもので
あるため、反応浴の温度、濃度、反応時間、副生成物の
除去、反応に必要な成分の補充等、反応条件の維持、管
理のためのコストがかかる上に、多量の洗浄排水の処理
が必要になる。また、のマンガン酸化物被膜をめっき
皮膜の表面に形成させる方法では、マンガン酸化物被膜
の形成を生産性の高い塗布型処理により行えるので、め
っき鋼板を安価に製造できるが、ユーザー側での鋼板の
加工工程で、脱脂槽や化成処理槽に溶出するマンガン
(労働安全衛生法に定める特定化学物質)を含む廃液の
処理が必要となり、それに伴うコスト上昇が避けられな
い。一方、油面接着性については、上記の技術では十
分な性能が確保されるが、製造コストが高く、〜の
技術では十分な油面接着性が得られない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような状
況に鑑みなされたもので、その課題は、プレス成形性お
よび油面接着性が共に優れ、しかも安価な合金化溶融亜
鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明者らは、まず、プレス成形性を改善するた
めに、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に上層皮膜を形
成させることによって前記めっき鋼板の表面化学的性質
を改良し、境界潤滑特性を改善することに着眼した。す
なわち、通常は油膜切れを起こすような過酷な摺動条件
下にあっても、潤滑油成分を上層皮膜を介してめっき鋼
板表面へ強固に吸着させ、その吸着層を活用することに
よってめっき鋼板と工具との接触による焼き付きを防止
するのである。このプレス成形性の改善に関しては、従
来から、加工油の極圧添加剤として、分子中に工具との
接触を妨げる有機鎖と鋼材への吸着性に優れた亜鉛塩と
を有する亜鉛石鹸が有効であることが知られている。し
かし、本発明者らは、検討を重ねた結果、上層皮膜を構
成する物質中に有機鎖が含まれていなくても、亜鉛塩が
含まれていれば、それと洗浄油との相乗効果により過酷
な摺動条件下で耐焼き付き性が発現し、境界潤滑特性が
改善されることを見出した。一方、油面接着性について
は、潤滑油成分(この場合は、洗浄油)のめっき鋼板表
面への吸着がプレス成形性の場合とは逆に作用し、吸着
が強固になると塗布された接着剤中への潤滑油成分の拡
散が起こりにくくなるため、めっき鋼板と接着剤との界
面近傍が脆弱層となりやすく、良好な油面接着性が得ら
れない。
【0005】このように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の
表面に形成させる上層皮膜中に亜鉛塩のみを含有させる
限りにおいてはプレス成形性と油面接着性を共に向上さ
せることは難しい。しかし、後述するように、上層皮膜
中にさらに鉄を含有させることによって良好な油面接着
性を得ることが可能であることを知見した。また、プレ
ス成形および接着の工程が終了した後の鋼板材料は、化
成処理性を向上させるために脱脂(アルカリ脱脂)処理
されるが、この脱脂工程で、あるいはその後の化成処理
工程で、上記の上層皮膜が溶解除去され、しかも、前記
溶解した成分が化成反応を阻害しないことが必要であ
る。さらに、前記上層皮膜は、塗布型処理によって連続
的にめっき鋼板表面に形成させ得るものであることが必
要である。塗布型処理は、りん酸亜鉛処理のようないわ
ゆる反応型処理と比較して、 (a)生産速度の高速化、
(b)浴管理の簡略化、および (c)処理後の水洗の必要が
ないため大量の洗浄排水の処理が不要、の3点において
有利であり、反応型処理と比較して、生産性を高め、大
幅な製造コストの削減が可能となる。本発明は、これら
の知見に基づきなされたもので、その要旨は、下記
(1)の合金化溶融亜鉛めっき鋼板、および(2)のそ
の製造方法にある。 (1)少なくとも片面に、付着量が20g/m2 以上80g/m2
以下の合金化溶融亜鉛めっき層を有し、その上に、Pに
換算して0.5mmol/m2 以上10mmol/m2 以下のりん酸基
と、前記りん酸基のPに対するモル比で、 1.0以上 2.0
以下の亜鉛および0.01以上 0.1以下の鉄とを含有する化
合物からなる非晶質皮膜を有する合金化溶融亜鉛めっき
鋼板。 (2)めっき付着量が20g/m2 以上80g/m2 以下の合金化
溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、りん酸イオンと、りん酸
イオンに対するモル比で、 0.5以下の亜鉛イオンおよび
0.01以上 0.1以下の鉄イオンと水からなる処理水溶液を
塗布し、乾燥する上記(1)に記載の合金化溶融亜鉛め
っき鋼板の製造方法。処理水溶液として、りん酸イオン
と、りん酸イオンに対するモル比で、 0.5以下の亜鉛イ
オンおよび 0.1以上 1以下の過酸化水素と水からなる水
溶液を用いてもよい。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の合金化溶融亜鉛め
っき鋼板(以下、「本発明のめっき鋼板」ともいう)、
およびその製造方法について詳細に説明する。本発明の
めっき鋼板は、母材鋼板の少なくとも片側の表面に合金
化溶融亜鉛めっき層を有している。このようなめっき層
を有する鋼板は、種々の性能および経済性を加味したト
ータルバランスから自動車車体用鋼板として特に好適で
ある。前記のめっき層におけるめっき付着量は、20g/m2
以上80g/m2 以下とする。付着量が20g/m2 未満である
と、十分な耐食性が得られないことがある。一方、付着
量が80g/m2 を超えると、耐食性を高める上からは望ま
しいが、プレス成形性、接合(油面接着、スポット溶
接)性が損なわれ、後述する上層皮膜をめっき層の上に
設けてもこれを避けることはできない。本発明のめっき
鋼板は、上記の合金化溶融亜鉛めっき層の上に、上層皮
膜として、りん酸基、亜鉛および鉄を含有する化合物か
らなる非晶質皮膜を有している。この上層皮膜がりん酸
基を含有することとするのは、亜鉛の存在と相まって良
好なプレス成形性を確保するため、および、上層皮膜が
アルカリ脱脂浴、化成処理浴のいずれにも容易に溶解
し、かつ、溶解した成分が化成反応を阻害せず、良好な
化成処理性を保持するためである。なお、りん酸基が上
層皮膜中に含まれていても、母材鋼板の耐食性に悪影響
はない。
【0007】りん酸よりも強酸の酸基(例えば、硫酸
基、塩酸基等)が上層皮膜中に存在すると、母材鋼板に
対し強い腐食性を示し、貯蔵期間内においても腐食の問
題が起こり得る他、油面接着性に対しても著しい悪影響
を及ぼす。また、りん酸よりも弱酸の酸基(例えば、珪
酸基、蓚酸基等)が上層皮膜中に存在すると、上層皮膜
のアルカリ脱脂浴または化成処理浴への溶解性が悪くな
り、良好な化成処理性が確保できない。上層皮膜が亜鉛
を含むこととするのは、上述したように、プレス成形性
を改善するためである。
【0008】亜鉛の他に、鉛、カドミウムも亜鉛と同様
にプレス成形性を改善する作用を有するが、これらの元
素を含む化合物を用いるのは環境保全上好ましくない。
また、亜鉛は酸性水溶液を上記の合金化溶融亜鉛めっき
層の上に塗布することによって容易にめっき層から上層
皮膜中へ供給することができるので、簡便かつ安価であ
ることも、上層皮膜が亜鉛を含むこととする理由として
あげられる。また、上層皮膜が鉄を含有することとする
のは、良好な油面接着性を得るためである。
【0009】上層皮膜に鉄が含まれていない場合は、十
分な接着強度を得るために、接着貼合した後の養生(熱
硬化型接着剤の場合は加熱)に長時間を要し、生産性が
低下する。また、鉄が含まれていない上層皮膜を有する
めっき鋼板に防錆油を塗布し、コイル状にして貯蔵する
と、その貯蔵期間が長くなるに伴い油面接着性が劣化す
る。これは、上層皮膜の表層の亜鉛と潤滑油成分(この
場合は、防錆油)との強固な吸着層が前記めっき鋼板の
表面を覆ってしまい、これに接着剤を塗布しても、強固
に吸着した潤滑油成分の接着剤層への拡散が抑制され、
前記めっき鋼板と接着剤層との界面近傍が脆弱層となり
やすいことによるものと考えられる。
【0010】これに対し、上層皮膜に鉄が含まれている
場合は、良好な油面接着性が得られる。これは、亜鉛に
比べて潤滑油成分との吸着力が弱い鉄の存在する部分が
起点となって前記めっき鋼板表面に吸着した潤滑油成分
が接着剤層へ拡散し、潤滑油成分と接着剤成分との置換
が促進され、接着が進行することによるものと推察され
る。上層皮膜の付着量は、Pに換算して0.5mmol/m2
上10mmol/m2 以下であることが必要である。0.5mmol/
m2 に満たない場合は良好なプレス成形性が確保できな
い。好ましくは、1mmol/m2 以上である。一方、10mmol/
m2 を超えるとスポット溶接性が悪化する。好ましく
は、8mmol/m2 以下である。上層皮膜に含まれる亜鉛の
量は、上記の上層皮膜に含まれるPの量に対するモル比
( Zn/P)で、 1.0以上 2.0以下とする。 Zn/Pが 1.0
に満たない場合は、潤滑性への悪影響が避けられず、
2.0を超えると、良好な油面接着性が確保できなくな
る。好ましくは、 1.2以上 1.7以下である。上層皮膜に
含まれる鉄の量は、上記の上層皮膜に含まれるPの量に
対するモル比( Fe/P)で、0.01以上 0.1以下であるこ
とが必要である。 Fe/Pが0.01に満たない場合は、油面
接着性に改善効果が認められず、一方、0.1 を超える
と、上層皮膜が難溶化し、アルカリ脱脂浴、化成処理浴
のいずれにも完全には溶解せず、化成処理性に悪影響が
現れる。また、上層皮膜は非晶質である。逆に言えば、
上層皮膜は、後述するような結晶質(結晶、または結晶
を含むもの)ではない。上層皮膜が結晶質であれば、絞
り成形の際、ダイス肩のしごきによって皮膜が容易に脆
性破壊してしまうが、上層皮膜が非晶質であれば、しご
きによる皮膜破壊の起点がなく皮膜の健全性が保たれや
すいため、プレス成形性が良好となる。なお、ここでい
う「非晶質」とは、通常の、例えば、加速電圧が 5〜25
kV程度で、倍率が数百〜数千倍程度の電子顕微鏡による
観察で結晶の規則性を有する形状が確認できないもの、
または、X線回折法で結晶のピークが確認できないもの
である。また、「結晶質」とは、りん酸亜鉛系化成処理
によって析出したホパイトやフォスフォフィライトのよ
うな、いわゆる化成結晶、または化成結晶を含むものを
指し、数千倍程度の電子顕微鏡像で粒径が 1〜10μm 程
度の結晶が確認できるもの、またはX線回折法で結晶ピ
ークが検出できるものである。上記本発明の合金化溶融
亜鉛めっき鋼板は、めっき付着量が20g/m2 以上80g/m2
以下の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、りん酸イオ
ンと、りん酸イオンに対するモル比で 0.5以下の亜鉛イ
オンおよび0.01以上 0.1以下の鉄イオンと水からなる処
理水溶液を塗布し、乾燥することによって製造すること
ができる。処理水溶液を塗布する合金化溶融亜鉛めっき
鋼板としては、従来用いられている方法で溶融亜鉛めっ
きを施し、合金化後のめっき付着量が上記範囲に入るよ
うに調整し、従来用いられている方法で合金化しためっ
き鋼板を用いればよい。処理水溶液にりん酸イオン(PO
4 3- )を含有させるには、工業用りん酸水溶液を用いれ
ばよい。一般に、りん酸塩はほとんどが難溶性で、本発
明の方法で使用し得るりん酸亜鉛、りん酸鉄もその例に
もれず、扱いにくい。なお、本発明の方法は塗布型処理
で、塗布された成分は形成される皮膜中に残るので、り
ん酸亜鉛、りん酸鉄以外のりん酸塩は使用できない。
【0011】塗布する際の濃度は、塗布方法に応じて適
宜調整すればよいが、例えば、ロールコート法による連
続塗布工程、および熱風炉による乾燥工程における生産
性を考慮すると、りん酸イオン(PO4 3- )濃度で 0.1〜
1 mol/l とするのが好ましい。亜鉛イオン(Zn2+ )を
含有させるのは、前記のように、めっき鋼板のプレス成
形性を改善するためで、上記のりん酸イオンに対するモ
ル比(Zn2+/PO4 3- )で 0.5以下とする。 0.5を超える
と処理水溶液中に亜鉛化合物のスラッジが生成し、めっ
き鋼板の表面に上層皮膜形成処理に起因する欠陥が発生
する原因となる。なお、りん酸イオンを含有する酸性処
理液を亜鉛めっき鋼板に塗布すると、めっき層から亜鉛
が溶出するので、処理液中に亜鉛イオンを必ずしも含有
させておく必要はない。
【0012】処理水溶液に亜鉛イオンを含有させるため
には、炭酸亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛塩を使用すればよ
い。
【0013】なお、皮膜成分として必要な亜鉛基は、塗
布工程において、処理水溶液と合金化溶融亜鉛めっき層
とを接触させたときに、めっき層から供給されるので、
処理水溶液には、亜鉛イオンは含まれていなくてもよ
い。鉄イオン(Fe2+) を処理水溶液に含有させるの
は、めっき鋼板のプレス成形性の改善に加え、良好な油
面接着性を得るためである。りん酸イオンに対するモル
比(Fe2+/PO4 3- )で0.01以上 0.1以下とするのは、こ
の範囲外では、めっき層の表面に処理水溶液を塗布し、
乾燥した状態で上層皮膜に含まれる鉄の量をPに対する
モル比で0.01以上 0.1以下とすることができず、良好な
油面接着性を得ることができないからである。なお、処
理水溶液に鉄イオンを含有させるためには、酸化第二鉄
(ベンガラ)等の鉄酸化物を用いればよい。処理水溶液
として、りん酸イオンと、りん酸イオンに対するモル比
で、 0.5以下の亜鉛イオンおよび 0.1以上 1以下の過酸
化水素(H2O2 )とを含有する水溶液を用いてもよい。
処理水溶液に鉄イオンを含有させる代わりに過酸化水素
を添加しておくことにより、合金化溶融亜鉛めっき層か
ら溶出させた鉄を、処理水溶液に供給することができる
からである。そのためには、過酸化水素(H2O2 )の添
加量をりん酸イオンに対するモル比(H2O2/PO4 3- )で 0.
1以上 1以下とすることが必要である。H2O2/PO4 3-
0.1に満たない場合は、過酸化水素の分解等が起こりや
すく、上層皮膜形成処理を安定して行えず、一方、H2O2
/PO4 3- が 1を超えると、上層皮膜中に亜鉛の塩基性塩
が生成し、化成処理性に悪影響を及ぼす。処理水溶液の
塗布には、スプレー法やロールコート法等、通常、塗料
の塗布に用いられている方法を使用することができる。
処理水溶液を塗布した後は、水洗することなく乾燥す
る。乾燥は、熱風炉などを用いて行えばよい。乾燥温度
は、処理水溶液が乾燥する温度であればよく、60〜 120
℃で十分である。このように、上記の方法は塗布型処理
による皮膜形成方法であって、りん酸亜鉛処理のような
いわゆる反応型処理と比較して、前述したように、次の
ような利点を有している。すなわち、 (a)皮膜の形成を連続的に行うことができるので、生産
速度の高速化が可能である。 (b)処理水溶液の調整および管理が容易である。 (c)処理後、水洗することなく乾燥工程に移行するの
で、水洗工程が不要であるとともに大量の洗浄排水の処
理が不要である。上記の方法により得られる上層皮膜
は、りん酸亜鉛系化成処理によって析出するホパイトや
フォスフォフィライトのような、いわゆる化成結晶を含
まない。また、通常の電子顕微鏡による観察で結晶の規
則性を有する形状が確認できず、X線回折法で結晶のピ
ークが確認できないものである。このような上層皮膜を
有する本発明のめっき鋼板は、プレス成形性および油面
接着性が共に優れ、また、後述する実施例に示すよう
に、連続スポット溶接性、化成処理性にも優れている。
さらに、このめっき鋼板は、上記本発明の方法、すなわ
ち、前記の様々な利点を有する塗布型処理によって、高
い生産性で安価に製造することができる。
【0014】
【実施例】板厚0.7mm の極低炭素鋼(C: 0.001質量
%)の冷間圧延鋼板の両面に、合金化処置後のめっき付
着量が両面とも60g/m2 となるように溶融亜鉛めっきを
施し、合金化処理した後、その上に種々の組成の処理水
溶液(以下、「処理液」と記す)をそれぞれ塗布し、乾
燥した後の鋼板(すなわち、上層皮膜を有する合金化溶
融亜鉛めっき鋼板)について、プレス成形性、溶接性
(連続スポット溶接性)、化成処理性および油面接着性
を調査した。なお、比較のために、合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板の表面に上層として電気Fe―Znめっき(付着量:
両面とも 5g/m2)を施した鋼板についても同様の調査を
行った。処理液は、りん酸(濃度:1 mol/l) に酸化第
二鉄(ベンガラ)または過酸化水素を加えたもので、表
1にその組成を示す。この場合、亜鉛はめっき層から溶
出させることとし、あらかじめ処理水溶液中に加えるこ
とはしなかった。なお、表1において、記号aは、酸化
第二鉄および過酸化水素のいずれも添加していないりん
酸のみを用いた例である。また、Fe2+ およびH2O2
量は、それぞれりん酸イオン(PO4 3- )に対するモル比
で表した。
【0015】
【表1】 処理液の塗布は、めっきラインの出側に設置したスプレ
ーコーター設備またはロールコーター設備を用いて連続
的に行い、その後直ちに(水洗することなく)200℃に
設定した熱風炉で約10秒間乾燥した。
【0016】このようにして得られた上層皮膜の付着量
(Pに換算した付着量)およびZn、Feの含有量は、 5%
クロム酸水溶液により上層皮膜のみを溶解し、溶解液の
原子吸光法による元素分析を行うことにより求めた。な
お、得られた上層皮膜を、15kVの加速電圧をもつ1000倍
のSEM(走査型電子顕微鏡)の二次電子像で観察した
ところ、いずれの皮膜についても結晶の規則性を有する
形状は認められなかった。 〔プレス成形性評価法〕上記の上層皮膜を有する合金化
溶融亜鉛めっき鋼板から直径100mm の試験片を切り出
し、防錆油を塗布した状態で、円筒絞り試験機を用いて
以下の条件でカップ成形を行い、材料破断が起こるブラ
ンクホルダ圧で評価した。すなわち、ブランクホルダ圧
が17150N(1750kgf) 以上であれば極めて良好(後に示す
表2では、○印で表示)、14700N(1500kgf) 以上17150N
(1750kgf) 未満であれば良好(同じく△印で表示)、14
700N(1500kgf) 未満であれば不良(同じく×印で表示)
とした。 パンチ直径:50mm、肩R:5mm ダイス直径:52.4mm、肩R:5mm ブランク直径:100mm 絞り比:2.0 〔溶接性評価法〕上記の上層皮膜を有する合金化溶融亜
鉛めっき鋼板から試験片を切り出し、以下の条件でスポ
ット溶接連続打点性を調査し、3000打点以上であれば良
好(表2では、○印で表示)、3000打点未満であれば不
良(同じく×印で表示)とした。なお、終点はナゲット
径が4t1/2 (t :鋼板厚み)より小さくなるまでとし
た。 電極:ドーム型電極 加圧力:2450N 通電時間:12サイクル 打点電流:チリ発生電流に設定 〔化成処理性評価法〕上記の上層皮膜を有する合金化溶
融亜鉛めっき鋼板から 150mm×70mmの試験片を切り出
し、以下の条件でアルカリ脱脂処理および化成処理を順
に行った後、表面を走査電子顕微鏡(SEM )で観察し、
1μm 程度の化成結晶粒が緻密に析出していた場合は良
好(表2では、○印で表示)、結晶の析出が疎であった
場合、結晶粒度が不均一であった場合または結晶粒度が
粗大であった場合は不良(同じく×印で表示)とした。 アルカリ脱脂条件 脱脂液:ファインクリーナー(日本パーカライジング社
製) 200g/l、液温50℃ 脱脂法:浸漬 脱脂時間: 2分 化成処理条件 表面調整液:パーコレンZ (日本パーカライジング社
製) 化成処理液:PB-3080 (日本パーカライジング社製) 液温43℃ 処理法:スプレー法 処理時間: 2分 〔油面接着性評価法〕上記の上層皮膜を有する合金化溶
融亜鉛めっき鋼板から 250mm×25mmの試験片を切り出
し、塩化ビニル系熱硬化型接着剤を用いて以下の条件で
油面接着を行い、T型剥離試験(クロスヘッド速度:50
mm/min)を実施した。評価は、剥離面に占める接着剤の
凝集破壊の面積比率により行い、凝集破壊面積比率が75
%以上であれば極めて良好(表2では、○印で表示)、
50%以上75%未満であれば良好(同じく△印で表示)、
50%未満であれば不良(同じく×印で表示)とした。 接着条件 接着面の寸法:幅25mm×長さ200mm 塗油条件:防錆油 2g/m2 接着剤厚み: 100μm 接着時の加熱条件:150℃ ×15分 接着後の養生時間:24時間 調査結果を表2に示す。表2において、「処理液の組
成」の欄の記号は表1の記号に対応する。また、「評
価」の欄で○印または△印であれば良好(合格)とし、
「総合評価」欄で○印で表示した。ただし、No.20 の上
層皮膜として電気Fe―Znめっきを施した鋼板では、調査
したすべての性能が良好であったが、製造コストが高い
ので、総合評価では×印を付した。
【0017】
【表2】 表2の結果から明らかなように、本発明例の合金化溶融
亜鉛めっき鋼板では、プレス成形性、溶接性、化成処理
性および油面接着性のすべてにおいてNo.20 の上層に電
気Fe―Znめっきを施した鋼板に劣らない優れた性能を示
した。
【0018】
【発明の効果】本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、
プレス成形性および油面接着性が共に優れ、また、連続
スポット溶接性、化成処理性にも優れている。しかも、
この鋼板は本発明の方法により高い生産性で安価に製造
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 若野 茂 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平11−302862(JP,A) 特開 平3−87375(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C23C 2/06 C23C 2/26 C23C 2/28 C23C 2/40

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも片面に、付着量が20g/m2 以上8
    0g/m2 以下の合金化溶融亜鉛めっき層を有し、その上
    に、Pに換算して0.5mmol/m2 以上10mmol/m2 以下の
    りん酸基と、前記りん酸基のPに対するモル比で、 1.0
    以上 2.0以下の亜鉛および0.01以上 0.1以下の鉄とを含
    有する化合物からなる非晶質皮膜を有することを特徴と
    する合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 【請求項2】めっき付着量が20g/m2 以上80g/m2 以下の
    合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、りん酸イオンと、
    りん酸イオンに対するモル比で、 0.5以下の亜鉛イオン
    および0.01以上 0.1以下の鉄イオンと水からなる処理水
    溶液を塗布し、乾燥することを特徴とする請求項1に記
    載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】めっき付着量が20g/m2 以上80g/m2 以下の
    合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、りん酸イオンと、
    りん酸イオンに対するモル比で、 0.5以下の亜鉛イオン
    および 0.1以上 1以下の過酸化水素と水からなる処理水
    溶液を塗布し、乾燥することを特徴とする請求項1に記
    載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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