JP3318553B2 - 弾性表面波フィルタ装置及びこれに用いる一方向性変換器 - Google Patents

弾性表面波フィルタ装置及びこれに用いる一方向性変換器

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、弾性表面波フィル
タ装置、特にCDMA通信方式に好適な広帯域の弾性表
面波フィルタ及びそれに好適な一方向性変換器に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、短絡型浮き電極を各電極指がこれ
に隣接する正電極の電極指と負電極の電極指との中間位
置から弾性表面波の伝播方向又はこれとは反対の方向に
λ/12偏位して位置する一方向性変換器を有する弾性
表面波フィルタ装置が、例えば特開平5−347535
号公報に開示されている。
【0003】このような一方向性変換器を有する弾性表
面波フィルタ装置では、電極の非対称に基づく一方向性
を高めることによって電極指の励振効果と反射効果とを
適切に利用して挿入損失を大幅に低減することができ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、CDMA(符号
分割マルチアクセス)方式に好適な広帯域の弾性表面波
フィルタ装置が要求されている。送信側変換器及び受信
側変換器として上記一方向性変換器を用いて広帯域の弾
性表面波フィルタ装置を構成する場合、比較的多くの対
数が必要となるので、弾性表面波フィルタ装置の横方向
すなわち弾性表面波の伝播方向の寸法が増大し、弾性表
面波フィルタ装置の小型化には不都合である。
【0005】本発明の目的は、寸法を増大させることな
く挿入損失を大幅に悪化させることのない広帯域の弾性
表面波フィルタ装置及びこれに好適な一方向性変換器を
提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項1記
載の一方向性変換器は、弾性表面波フィルタ装置用の一
方向性変換器であって、圧電性基板と、λを基本弾性表
面波の伝播波長とした場合に、λのピッチで前記圧電性
基板上に周期的に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅
がほぼλ/12の複数の電極指を有する正電極と、同様
にλのピッチで前記圧電性基板上に周期的に形成され、
弾性表面波の伝播方向の幅がほぼλ/12の複数の電極
指を有し、各電極指が前記正電極の電極指とλ/2の中
心間距離を以てそれぞれ位置する負電極とを具え、一部
の対を、正電極の電極指と負電極の電極指との中間位置
から弾性表面波の伝播方向にλ/12偏位して各電極指
が位置する短絡型浮き電極を有する対とし、それ以外の
対を、正電極の電極指と負電極の電極指との中間位置か
ら弾性表面波の伝播方向とは反対の方向にλ/12偏位
して各電極指が位置する短絡型浮き電極を有する対とし
たことを特徴とするものである。
【0007】幅がλ/12の電極指を有する正電極及び
負電極と、λ/12の幅の電極指の各々を正電極の電極
指と負電極の電極指との間に配置した短絡型浮き電極と
を具える一方向性変換器を入力側変換器として用いる場
合、短絡型浮き電極の各電極指が、これに隣接する正電
極の電極指と負電極の電極指との中間位置から弾性表面
波の伝播方向とは反対の方向にλ/12偏位して位置さ
せると一方向性が最も顕著になる。それに対して、出力
側変換器として用いる場合、伝播方向にλ/12偏位し
て位置させると一方向性が最も顕著になる。
【0008】本発明のうち請求項1記載の一方向性変換
器を入力側変換器として用いるとともに、上記特開平5
−347535号公報に記載された一方向性変換器を出
力側変換器として用いた弾性表面波フィルタ装置では、
入力側変換器の一部の対の短絡型浮き電極の各電極指
を、これに隣接する正電極の電極指と負電極の電極指と
の中間位置から弾性表面波の伝播方向にλ/12偏位して
位置させることによって、一方向性の励振レベルをダウ
ンさせる。なお、請求項1記載の一方向性変換器を出力
側変換器として用いるとともに、上記特開平成5−34
7535号に記載された一方向性変換器を入力側変換器
として用いた場合も同様である。このように入力側変換
器と出力側変換器のうちの一方で一方向性を抑制するこ
とによって、挿入損失を大幅に悪化させることなく周波
数に対する挿入損失の特性の頂部は広帯域に亘ってフラ
ットとなる。また、一方の対で励起される弾性表面波の
反射中心が、それ以外の対で励起される弾性表面波の反
射中心に一致するので、一方向性が著しく抑制されるお
それがない。
【0009】したがって、本発明のうち請求項1記載の
一方向性変換器によれば、このように一部の対について
短絡型浮き電極の電極指をシフトさせることによって、
対数を増加させることなく、すなわち、弾性表面波フィ
ルタ装置の寸法を増大させることなく、挿入損失を大幅
に悪化させることがなく広帯域の弾性表面波フィルタ装
置を構成することができる。
【0010】本発明のうち請求項2記載の一方向性変換
器は、前記一部の対とそれ以外の対とを交互に配置した
ことを特徴とするものである。本発明者が実験を行った
結果、一部の対とそれ以外の対とをこのように配置する
ことによって、良好な特性が得られることが確認され
た。
【0011】本発明のうち請求項3記載の一方向性変換
器は、前記圧電性基板が、その表面上に弾性表面波の伝
播方向の幅がほぼλ/12の電極指の短絡型浮き電極を
形成した場合に正の反射係数を有するようにしたことを
特徴とするものである。電極指の励振効果と反射効果と
を適切に利用するためには、電極指幅がλ/12の電極
指を表面上に形成した場合に正の反射係数を有する必要
がある。このような圧電性基板として、例えば、水晶基
板、タンタル酸リチウム基板、ほう酸リチウム基板、ラ
ンガサイト基板等を挙げることができる。
【0012】本発明のうち請求項4記載の弾性表面波フ
ィルタ装置は、圧電性基板と、この圧電性基板上に形成
され、電気信号が外部から入力され、この電気信号を弾
性表面波に変換する入力側変換器と、前記圧電性基板上
に形成され、前記入力側変換器で励振された弾性表面波
を電気信号に変換し、この電気信号を外部に出力する出
力側変換器とを具え、前記入力側変換器と出力側変換器
のうちの少なくとも一方を、λを基本弾性表面波の伝播
波長とした場合に、λのピッチで前記圧電性基板上に周
期的に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅がほぼλ/
12の複数の電極指を有する正電極と、同様にλのピッ
チで前記圧電性基板上に周期的に形成され、弾性表面波
の伝播方向の幅がほぼλ/12の複数の電極指を有し、
各電極指が前記正電極の電極指とλ/2の中心間距離を
以てそれぞれ位置する負電極とを具え、一部の対を、正
電極の電極指と負電極の電極指との中間位置から弾性表
面波の伝播方向にλ/12偏位して各電極指が位置する
短絡型浮き電極を有する対とし、それ以外の対を、正電
極の電極指と負電極の電極指との中間位置から弾性表面
波の伝播方向とは反対の方向にλ/12偏位して各電極
指が位置する短絡型浮き電極を有する対とする一方向性
変換器としたことを特徴とするものである。
【0013】このような弾性表面波フィルタ装置では、
請求項1記載の一方向性変換器を有する弾性表面波フィ
ルタ装置と同様の作用効果を有する。
【0014】本発明のうち請求項5記載の弾性表面波フ
ィルタ装置は、圧電性基板と、この圧電性基板上に形成
された双方向性変換器と、この双方向性変換器の弾性表
面波の伝播軸線の両側に配置した第1の一方向性変換器
及び第2の一方向性変換器とを具え、前記双方向性変換
器を入力側変換器とする場合、前記第1の一方向性変換
器及び第2の一方向性変換器を出力側変換器とし、前記
双方向性変換器を出力側変換器とする場合、前記第1の
一方向性変換器及び第2の一方向性変換器を入力側変換
器とし、前記第1の一方向性変換器と第2の一方向性変
換器のうちの少なくとも一方が、λを基本弾性表面波の
伝播波長とした場合に、λのピッチで前記圧電性基板上
に周期的に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅がほぼ
λ/12の複数の電極指を有する正電極と、同様にλの
ピッチで前記圧電性基板上に周期的に形成され、弾性表
面波の伝播方向の幅がほぼλ/12の複数の電極指を有
し、各電極指が前記正電極の電極指とλ/2の中心間距
離を以てそれぞれ位置する負電極とを具え、一部の対
を、正電極の電極指と負電極の電極指との中間位置から
弾性表面波の伝播方向にλ/12偏位して各電極指が位
置する短絡型浮き電極を有する対とし、それ以外の対
を、正電極の電極指と負電極の電極指との中間位置から
弾性表面波の伝播方向とは反対の方向にλ/12偏位し
て各電極指が位置する短絡型浮き電極を有する対とした
ことを特徴とするものである。
【0015】このように、請求項1記載の一方向性変換
器を双方向性変換器と組み合わせて、本発明による弾性
表面波フィルタ装置を構成することができ、このような
弾性表面波フィルタ装置は、特にCDMA用の弾性表面
波フィルタ装置に好適である。
【0016】また、このような弾性表面波フィルタ装置
によって得られる電気信号の周波数特性は、一方向性変
換器の特性と双方向性変換器の特性とが掛け合わされた
特性となる。したがって、周波数特性については双方向
性変換器の良好な特性が活用され、挿入損失及びT.
T.E(Triple Transit Echo)レ
ベルについては一方向性変換器の有用な特性が生かされ
た弾性表面波フィルタ装置を実現することができる。そ
の結果、周波数特性、挿入損失及びT.T.E.レベル
の要件を全て満足する弾性表面波フィルタ装置を実現す
ることができる。
【0017】本発明のうち請求項6記載の弾性表面波フ
ィルタ装置は、前記双方向性変換器が、λ/4の中心間
距離を以て位置し、弾性表面波の伝播方向の幅がλ/8
である2個の電極指の組をλのピッチで周期的に形成し
た正電極と、同様にλ/4の中心間距離を以て位置し、
弾性表面波の伝播方向の幅がλ/8である2個の電極指
の組をλのピッチで周期的に形成され、各電極指の組が
前記正電極の隣接する電極指の組とλ/2の中心間距離
を以てそれぞれ位置する負電極とを具えることを特徴と
するものである。
【0018】双方向性変換器として、正電極及び負電極
の各電極指の幅をλ/4に設定した変換器がある。この
変換器は励振効率の面では極めて有益である。しかしな
がら、電極指の各端間のピッチがλ/4となるため、電
極指の各端縁で生じた反射波が互いに同相になり、その
結果、1dB以上の大きなリップルが生じる。したがっ
て、請求項1記載の一方向性変換器と組み合わせた場
合、周波数特性を満足することができない。
【0019】また、各電極指の幅をλ/8に設定した双
方向性変換器の場合、電極指の面積がλ/4型よりも小
さくなるため、励振効率はλ/4型よりも低下する。ま
た、電極指の端縁で生じる反射波の位相が相互にずれる
ために、周波数特性にリップルが生じてしまう。したが
って、一方向性変換器と組み合わせた場合、挿入損失及
び周波数特性について満足できる特性を得ることができ
ない。
【0020】これに対して、幅がλ/8の2本の電極指
を対とし、正電極及び負電極の電極指を2本の電極指対
で構成したλ/8スプリット型の双方向性変換器の場
合、電極指の面積はλ/4型と同一であり、高い変換効
率が得られる。また、電極指端縁で発生する反射波は互
いに位相が反転した反射波同士だけであるので、リップ
ルのない極めて良好な周波数特性が得られる。したがっ
て、このλ/8スプリット型の電極構造を有する双方向
性変換器を、請求項1記載の一方向性変換器と組み合わ
せれば、挿入損失、周波数特性及びT.T.E.減衰レ
ベルについて各変換器が有する固有の欠点が互いに補完
され、その結果、優れた特性を有する弾性表面波フィル
タ装置を実現することができる。
【0021】本発明のうち請求項7記載の弾性表面波フ
ィルタ装置は、前記双方向性変換器を、重み付けした電
極構造としたことを特徴とするものである。
【0022】このように双方向性変換器も重み付けした
電極構造とすることによって、更に良好な周波数特性の
波形が得られるようになる。
【0023】本発明のうち請求項8記載の弾性表面波フ
ィルタ装置は、前記双方向性変換器の重み付け電極構造
を、弾性表面波の伝播方向に沿って前記正電極の電極指
と負電極の電極指との交叉幅が順次変化するアポタイズ
法、又は弾性表面波の伝播方向に沿って前記電極指の電
極指と負電極の電極指との交叉幅が一様で、励振強度を
変化させることによって重み付けを行う間引き法によっ
て構成したことを特徴とするものである。
【0024】重み付けの方法として、電極指の間隔を変
化させるバリビッチ法が既知である。しかしながら、こ
の方法では、電極指における反射波に位相の擦れが生
じ、これがリップルの原因となる。それに対して、アポ
タイズ法では、電極指の弾性表面波の伝播方向と直交す
る方向の長さを順次変化させているので、位相ずれによ
るリップルの発生を防止し、リップルのない良好な周波
数特性の波形が得やすくなる。このことは、弾性表面波
の伝播方向に沿って正電極の電極指と負電極の電極指と
の交叉幅が一様で、電極を間引くことによって励振強度
を変化させる重み付けを行う間引き法にも当てはまる。
【0025】本発明のうち請求項9記載の弾性表面波フ
ィルタ装置は、前記一部の対とそれ以外の対とを交互に
配置したことを特徴とするものである。
【0026】このような弾性表面波フィルタ装置は、請
求項2記載の一方向性変換器を用いた弾性表面波フィル
タ装置と同様な作用効果を有する。
【0027】本発明のうち請求項10記載の弾性表面波
フィルタ装置は、前記圧電性基板が、その表面上に弾性
表面波の伝播方向の幅がほぼλ/12の電極指を形成し
た場合に正の反射係数を有するようにしたことを特徴と
するものである。
【0028】このような弾性表面波フィルタ装置は、請
求項3記載の一方向性変換器を用いた弾性表面波フィル
タ装置と同様な作用効果を有する。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明による弾性表面波フィルタ
装置及びこれに用いる一方向性変換器を、図面を参照し
て詳細に説明する。なお、図面は線形的であり、寸法ど
おりではない。
【0030】図1は、本発明による第1の一方向性変換
器の実施の形態を示す図である。この一方向性変換器を
入力側変換器として用いる場合、図において右方向に弾
性表面波が伝播し、出力側変換器として用いる場合、図
において左方向に弾性表面波が伝播する。
【0031】本実施の形態において、圧電性基板として
矩形の水晶基板1を用いる。水晶基板1は、温度変化に
対する帯域幅変化が微小であるので、温度変化による通
過周波数帯域の変化を微小に維持することができる。
【0032】この一方向性変換器は、正電極2、負電極
3及び短絡型浮き電極4を具える。正電極2は、λを基
本弾性表面波の伝播波長とした場合に、λのピッチで周
期的に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅がほぼλ/
12の複数の電極指を有する。負電極3は、同様にλの
ピッチで周期的に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅
がほぼλ/12の複数個の電極指を有し、負電極3の各
電極指は、それに隣接する正電極2の電極指とλ/2の
中心間距離を以てそれぞれ位置する。短絡型浮き電極4
の各々は、弾性表面波の伝播方向の幅がほぼλ/12の
2個の電極指を有する。
【0033】本実施の形態では、一部の対Aを、短絡型
浮き電極4の各々の各電極指5は、これに隣接する正電
極2の電極指6と負電極3の電極指7との中間位置から
一方の方向(図1の右側)にλ/12偏位して位置する
対とする。。それ以外の対(例えば、図1の対B)を、
正電極2の電極指8と負電極3の電極指9との中間位置
から上記一方の方向とは正反対の方向(すなわち、図1
の左側)にλ/12偏位して電極指10が位置する短絡
型浮き電極11を有する対とする。
【0034】なお、正電極2及び負電極3の対数を、例
えば200対に設定するが、この対数は、要求される変
換器特性に応じて適宜最適条件に設定することができ
る。
【0035】図2は、本発明による第2の一方向性変換
器の実施の形態を示す図である。本実施の形態では、短
絡型浮き電極の各電極指が正電極の電極指と負電極の電
極指との中間位置から一方の方向(図2の右側)にλ/
12偏位して電極指が位置する対C及びDと、短絡型浮
き電極の各電極指が正電極の電極指と負電極の電極指と
の中間位置から一方の方向とは正反対の方向(図2の左
側)にλ/12偏位して電極指が位置するそれ以外の対
E及びFとを交互に配置する。
【0036】図3は、本発明による弾性表面波フィルタ
装置の第1の実施の形態を示す図である。本実施の形態
では、入力側変換器21を、図1に示した本発明による
一方向性変換器と同一のものとする。出力側変換器22
を、上記特開平5−347535号公報に記載された従
来のλ/12型の一方向性変換器とする。すなわち、出
力側変換器22は、正電極23と、負電極24と、各電
極指が正電極23の電極指25と負電極24の電極指2
6との中間位置から弾性表面波の伝播方向にλ/12偏
位して位置する短絡型浮き電極27とを具える。
【0037】本実施の形態の動作を説明する。入力側変
換器21によって変換される弾性表面波は、電極指6と
電極指7との中間位置から弾性表面波の伝播方向にλ/
12偏位して位置させた一部の対によって、一方向性の
励振レベルが、全ての短絡型浮き電極を弾性表面波の伝
播方向とは反対の方向にλ/12偏位させた場合に比べ
てダウンする。その結果、挿入損失を大幅に悪化させる
ことなく周波数に対する挿入損失の特性の頂部は広帯域
に亘ってフラットとなる。
【0038】本実施の形態によれば、一部の対によっ
て、対数を増加させることなく、すなわち、弾性表面波
フィルタ装置の寸法を増大させることなく、挿入損失を
大幅に低減することができる広帯域の弾性表面波フィル
タ装置を構成することができる。
【0039】また、シフト方向を、互いに最も近接する
電極指の間隔が広がる方向に定めているので、加工技術
の制約も緩和される。
【0040】図4は、本発明による弾性表面波フィルタ
装置及び従来の弾性表面波フィルタ装置の周波数に対す
る挿入損失の曲線を示す図である。図4において、縦軸
に挿入損失をとり、横軸に周波数をとる。曲線Xは、図
3に示した弾性表面波フィルタ装置によって得られる特
性を示すものであり、曲線Yは、上記特開平5−347
535号公報に記載された従来の弾性表面波フィルタ装
置によって得られる特性を示すものである。なお、これ
ら弾性表面波フィルタ装置の対数を同一(共に170
対)とする。
【0041】図からわかるように、曲線Xの頂部が広帯
域に亘ってフラットとなっている。したがって、入力側
変換器と出力側変換器のうちの一方で一方向性を抑制す
ることによって、対数を増大させることなく広帯域の特
性を得られることがわかる。それに対して、曲線Yの頂
部は丸みを帯びており、したがって従来の弾性表面波フ
ィルタ装置では広帯域の特性を得ることができない。
【0042】図5は、本発明による弾性表面波フィルタ
装置の第2の実施の形態を示す図である。本実施の形態
では、入力側変換器31の両側に第1及び第2の出力側
変換器32及び33を配置する。入力側変換器31を、
λ/4の中心間距離を以て配置した2個の電極指の組を
λのピッチで周期的に複数形成した正電極34及び負電
極35を有する双方向性変換器で構成し、正電極34の
各電極指の組が負電極35の電極指の組とλ/2の中心
間距離を以てそれぞれ位置するように設定する。本実施
の形態では、弾性表面波の変換効率を良くするために、
これら正電極34及び負電極35の電極指の幅をλ/8
に設定する。このように構成することによって、互いに
隣接する電極指の間隔が全てλ/8に設定されることと
なる。入力側変換器31の対数を、例えば300対に設
定する。
【0043】また、入力側変換器31には、アポタイズ
法による重み付けが行われており、正電極33の電極指
の負電極34の電極指との交叉幅すなわち開口長を、弾
性表面波の伝播方向に沿って変化させている。
【0044】第1の出力側変換器32を、図1に示した
本発明による一方向性変換器と同一のものとする。第2
の出力側変換器33を、正電極を負電極とするとともに
負電極を正電極とした点を除いて図3の出力側変換器と
同一構成のものとする。
【0045】このように、本発明による一方向性変換器
を双方向性変換器と組み合わせて、本発明による弾性表
面波フィルタ装置を構成することができ、このような弾
性表面波フィルタ装置では、特にCDMA用の弾性表面
波フィルタ装置に好適である。
【0046】また、このような弾性表面波フィルタ装置
によって得られる電気信号の周波数特性は、一方向性変
換器の特性と双方向性変換器の特性とが掛け合わされた
特性となる。したがって、周波数特性については双方向
性変換器の良好な特性が活用され、挿入損失及びT.
T.E.レベルについては一方向性変換器の有用な特性
が生かされた弾性表面波フィルタ装置を実現することが
できる。その結果、周波数特性、挿入損失及びT.T.
E.レベルの要件を全て満足する弾性表面波フィルタ装
置を実現することができる。
【0047】本発明は、上記実施の形態に限定されるも
のではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例え
ば、上記実施の形態では、圧電性基板として水晶基板を
用いたが、幅がほぼλ/12の電極指を表面上に形成し
た場合に正の反射係数を有する任意の基板を代わりに用
いることができる。このような基板として、例えば、タ
ンタル酸リチウム基板(LiTa3 )、ほう酸リチウ
ム基板(Li247)又はランガサイト基板(Li3
6SiO14 )を挙げることができる。
【0048】また、一方向性変換器の上記実施の形態で
は、上記一部の対の数を1としたもの及び一部の対とそ
れ以外の対とを交互に配置したものについて説明した
が、これらの対の数を、要求される変換器特性に応じて
適宜最適条件に設定することができる。一部の対を、弾
性表面波の伝播方向とその反対方向のうちのいずれか一
方にシフトした位置に配置するとともに、それ以外の対
を他方にシフトした位置に配置し、又は一部の対及びそ
れ以外の対を、これらの対によってそれぞれ励振された
弾性表面波の励振中心を一致させるように所定の間隔で
配置することもできる。これによって、一方向性を強め
ることができる。
【0049】上記弾性表面波フィルタ装置の第1の実施
の形態において、出力側変換器として他の任意の変換器
(例えば、図1又は2に示した一方向性変換器、双方向
性変換器等)を用いることもできる。
【0050】上記双方向性変換器を重み付けするに当た
り、アポタイズ法の代わりに間引き法によって重み付け
することもできる。
【0051】さらに、一方向性変換器及び双方向性変換
器の正電極を負電極とするとともに、負電極を正電極と
することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の一方向性変換器の実施の形
態を示す図である。
【図2】本発明による第2の一方向性変換器の実施の形
態を示す図である。
【図3】本発明による弾性表面波フィルタ装置の第1の
実施の形態を示す図である。
【図4】本発明による弾性表面波フィルタ装置及び従来
の弾性表面波フィルタ装置の周波数に対する特性の曲線
を示す図である。
【図5】本発明による弾性表面波フィルタ装置の第2の
実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
1 水晶基板、2,23,34、正電極 3,24,3
5、負電極 4,11,27、短絡型浮き電極 5,
6,7,8,9,10,25,26 電極指、12,1
3 端子、A,B,C,D,E,F 対、X,Y 曲
線、a シフト量、21,31 入力側変換器、22,
32,33 出力側変換器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−256864(JP,A) 特開 平8−116231(JP,A) 特開 平5−347535(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H03H 9/145 H03H 9/64

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】弾性表面波フィルタ装置用の一方向性変換
    器であって、圧電性基板と、λを基本弾性表面波の伝播
    波長とした場合に、λのピッチで前記圧電性基板上に周
    期的に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅がほぼλ/
    12の複数の電極指を有する正電極と、同様にλのピッ
    チで前記圧電性基板上に周期的に形成され、弾性表面波
    の伝播方向の幅がほぼλ/12の複数の電極指を有し、
    各電極指が前記正電極の電極指とλ/2の中心間距離を
    以てそれぞれ位置する負電極とを具え、 一部の対を、正電極の電極指と負電極の電極指との中間
    位置から弾性表面波の伝播方向にλ/12偏位して各電
    極指が位置する短絡型浮き電極を有する対とし、 それ以外の対を、正電極の電極指と負電極の電極指との
    中間位置から弾性表面波の伝播方向とは反対の方向にλ
    /12偏位して各電極指が位置する短絡型浮き電極を有
    する対としたことを特徴とする一方向性変換器。
  2. 【請求項2】前記一部の対とそれ以外の対とを交互に配
    置したことを特徴とする請求項1記載の一方向性変換
    器。
  3. 【請求項3】前記圧電性基板が、その表面上に弾性表面
    波の伝播方向の幅がほぼλ/12の電極指を形成した場
    合に正の反射係数を有するようにしたことを特徴とする
    請求項1又は2記載の一方向性変換器。
  4. 【請求項4】圧電性基板と、この圧電性基板上に形成さ
    れ、電気信号が外部から入力され、この電気信号を弾性
    表面波に変換する入力側変換器と、前記圧電性基板上に
    形成され、前記入力側変換器で励振された弾性表面波を
    電気信号に変換し、この電気信号を外部に出力する出力
    側変換器とを具え、 前記入力側変換器と出力側変換器のうちの少なくとも一
    方を、λを基本弾性表面波の伝播波長とした場合に、λ
    のピッチで前記圧電性基板上に周期的に形成され、弾性
    表面波の伝播方向の幅がほぼλ/12の複数の電極指を
    有する正電極と、同様にλのピッチで前記圧電性基板上
    に周期的に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅がほぼ
    λ/12の複数の電極指を有し、各電極指が前記正電極
    の電極指とλ/2の中心間距離を以てそれぞれ位置する
    負電極とを具え、一部の対を、正電極の電極指と負電極
    の電極指との中間位置から弾性表面波の伝播方向にλ/
    12偏位して各電極指が位置する位置短絡型浮き電極を
    有する対とし、それ以外の対を、正電極の電極指と負電
    極の電極指との中間位置から弾性表面波の伝播方向とは
    反対の方向にλ/12偏位して各電極指が位置する短絡
    型浮き電極を有する対とする一方向性変換器としたこと
    を特徴とする弾性表面波フィルタ装置。
  5. 【請求項5】圧電性基板と、この圧電性基板上に形成さ
    れた双方向性変換器と、この双方向性変換器の弾性表面
    波の伝播軸線の両側に配置した第1の一方向性変換器及
    び第2の一方向性変換器とを具え、 前記双方向性変換器を入力側変換器とする場合、前記第
    1の一方向性変換器及び第2の一方向性変換器を出力側
    変換器とし、前記双方向性変換器を出力側変換器とする
    場合、前記第1の一方向性変換器及び第2の一方向性変
    換器を入力側変換器とし、 前記第1の一方向性変換器と第2の一方向性変換器のう
    ちの少なくとも一方が、λを基本弾性表面波の伝播波長
    とした場合に、λのピッチで前記圧電性基板上に周期的
    に形成され、弾性表面波の伝播方向の幅がほぼλ/12
    の複数の電極指を有する正電極と、同様にλのピッチで
    前記圧電性基板上に周期的に形成され、弾性表面波の伝
    播方向の幅がほぼλ/12の複数の電極指を有し、各電
    極指が前記正電極の電極指とλ/2の中心間距離を以て
    それぞれ位置する負電極とを具え、一部の対を、正電極
    の電極指と負電極の電極指との中間位置から弾性表面波
    の伝播方向にλ/12偏位して各電極指が位置する短絡
    型浮き電極を有する対とし、それ以外の対を、正電極の
    電極指と負電極の電極指との中間位置から弾性表面波の
    伝播方向とは反対の方向にλ/12偏位して各電極指が
    位置する短絡型浮き電極を有する対としたことを特徴と
    する弾性表面波フィルタ装置。
  6. 【請求項6】前記双方向性変換器が、λ/4の中心間距
    離を以て位置し、弾性表面波の伝播方向の幅がλ/8で
    ある2個の電極指の組をλのピッチで周期的に形成した
    正電極と、同様にλ/4の中心間距離を以て位置し、弾
    性表面波の伝播方向の幅がλ/8である2個の電極指の
    組をλのピッチで周期的に形成され、各電極指の組が前
    記正電極の隣接する電極指の組とλ/2の中心間距離を
    以てそれぞれ位置する負電極とを具えることを特徴とす
    る請求項5記載の弾性表面波フィルタ装置。
  7. 【請求項7】前記双方向性変換器を、重み付けした電極
    構造としたことを特徴とする請求項6記載の弾性表面波
    フィルタ装置。
  8. 【請求項8】前記双方向性変換器の重み付け電極構造
    を、弾性表面波の伝播方向に沿って前記正電極の電極指
    と負電極の電極指との交叉幅が順次変化するアポタイズ
    法、又は弾性表面波の伝播方向に沿って前記電極指の電
    極指と負電極の電極指との交叉幅が一様で、励振強度を
    変化させることによって重み付けを行う間引き法によっ
    て構成したことを特徴とする請求項7記載の弾性表面波
    フィルタ装置。
  9. 【請求項9】前記一部の対とそれ以外の対とを交互に配
    置したことを特徴とする請求項4から8のうちのいずれ
    か1項に記載の弾性表面波フィルタ装置。
  10. 【請求項10】前記圧電性基板が、その表面上に弾性表
    面波の伝播方向の幅がほぼλ/12の電極指を形成した
    場合に正の反射係数を有するようにしたことを特徴とす
    る請求項4から9のうちのいずれかに記載の弾性表面波
    フィルタ装置。
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