JP3317737B2 - シアンヒドリン水和用触媒の製造法 - Google Patents

シアンヒドリン水和用触媒の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシアンヒドリン水和用触
媒の二酸化マンガンの製造法に関する。更に詳しくはシ
アンヒドリンの液相水和反応において高活性な触媒作用
を有する二酸化マンガンを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アセトンシアンヒドリンやラクトニトリ
ルなどのシアンヒドリン類の水和反応によりヒドロキシ
カルボン酸アミドを合成することができる。この反応は
シアンヒドリン類からヒドロキシカルボン酸アミドを経
由してヒドロキシカルボン酸エステル又は不飽和カルボ
ン酸エステルを製造するのに適用できる重要な反応であ
り、アミド合成反応における優れた触媒の開発は従来の
硫酸法によるプロセスに比べて廃酸処理設備を必要とし
ないプロセスが可能となり、工業的に大きな意義があ
る。
【0003】シアンヒドリンの水和用触媒として二酸化
マンガンが用いられることは、例えば特開昭47−40
68号公報に開示されており公知である。しかし、二酸
化マンガンの触媒作用はその製造法によって異なり、ま
た同じ製法による触媒でも再現性を得ることは困難であ
ることが特開昭52−222号公報に記載されている。
【0004】二酸化マンガン触媒は種々の方法で調製さ
れている。例えば上記の特開昭52−222号公報には
ツアイトシュリフト・フュア・アノルガニッシェ・ウン
ト・アルゲマイネ・ケミ−(Zeitschrift fur anorgani
sche und allgemeine Chemie) 309巻 1〜36及び121 〜
150(1961) 記載のδ−二酸化マンガンは、主として中性
〜アルカリ性領域で20〜100℃で7価のマンガン化
合物を還元する際に得られることを記載している。米国
特許明細書第3,366,639 号には等量の硫酸マンガンと過
マンガン酸カリウムとを小過剰の水酸化ナトリウムの存
在下、80℃に加熱する方法、特開昭55−87749
号公報には硝酸マンガンの熱分解法、特開昭55−98
146号公報には炭酸マンガンの熱分解法、特開昭63
−57535号公報には7価のマンガン塩をハロゲン化
水素酸で還元する方法、特開平3−68447号公報に
は過マンガン酸塩と2価のマンガン化合物を酸性水溶液
中、60〜150 ℃で反応させる方法、等が開示されてい
る。
【0005】また、特開昭63−57534号公報には
過マンガン酸カリウムと苛性ソーダと硫酸マンガンとを
反応させて得た二酸化マンガンに亜鉛等を加える方法、
特開平2−193952号公報には過マンガン酸カリウ
ムと硫酸とを含む溶液中にメタノールを少量ずつ添加し
還元した二酸化マンガンにアルカリ金属塩またはアルカ
リ土類金属塩を添加する方法、特開平3−93761号
公報には過マンガン酸塩に、硫酸に溶解させた硫酸マン
ガンと硫酸ジルコニウム、硫酸バナジル及び/又は硫酸
スズを混合し二酸化マンガンを調製する方法、等も開示
されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
触媒調製法は良好な活性、選択性を有する触媒を製造す
るのに、必ずしも満足すべきものではなかった。例えば
シアンヒドリンの転化率を上げるためには長い滞留時間
を必要とし、生産性を確保するためには多量の触媒を必
要とした。また、目的とするα−ヒドロキシカルボン酸
アミドの選択率も低く、低価値な副生物が多く生成した
りする。本発明はこれら従来技術における問題点を解決
したものであり、その目的は活性が大きくかつ高い目的
生成物選択率を有するシアンヒドリンの水和用触媒の製
造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、シアンヒ
ドリンの水和反応によるヒドロキシカルボン酸アミドの
製造に使用する二酸化マンガン触媒の調製法について鋭
意検討した結果、過マンガン酸塩を特定の還元剤で還元
することにより優れた性能を有する二酸化マンガン触媒
が得られることを見いだし本発明に至った。すなわち、
本発明は、過マンガン酸塩を、ヒドラジン類、ヒドロキ
シカルボン酸類およびそれらの塩の一種または二種以上
を用いて還元することを特徴とするシアンヒドリン類の
水和用二酸化マンガン触媒の製造法に関する。
【0008】以下に本発明の方法を詳しく説明する。本
発明は、通常、液相系で実施される。すなわち、過マン
ガン酸塩の水溶液中に還元剤を加え処理することにより
二酸化マンガンを調製するものである。過マンガン酸塩
としては、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリ
ウム、過マンガン酸リチウム等が用いられる。また、還
元剤としては、ヒドラジン、メチルヒドラジン、ジメチ
ルヒドラジンなどのヒドラジン類およびその硫酸塩、塩
酸塩等、あるいはクエン酸、グリコ−ル酸、酒石酸など
のヒドロキシカルボン酸類およびそのアンモニウム塩、
カリウム塩、ナトリウム塩等を、一種または二種以上用
いることができる。
【0009】使用する還元剤がヒドラジン類およびその
塩である場合、その使用量は過マンガン酸塩に対して
0.4〜2 倍モル、好ましくは0.5〜1.5倍モルの
範囲で適宜選択できる。二酸化マンガンは、塩基性〜酸
性の領域で得られるが、中性〜酸性の領域で調製するこ
とが好ましい。塩基性領域では得られた二酸化マンガン
の触媒としての活性、選択性が低くなる。還元時の液温
は10〜200℃、好ましくは30〜120℃の範囲で
ある。これより低い温度では反応性が低くなるため、二
酸化マンガン収量が少なく、これより高い温度では二酸
化マンガンの表面積が減少し好ましくない。
【0010】使用する還元剤がヒドロキシカルボン酸類
およびその塩である場合、その使用量は過マンガン酸塩
に対して0.04〜2 倍モル、好ましくは0.05〜
1.2倍モルの範囲で適宜選択できる。二酸化マンガン
は、塩基性〜酸性の広い領域で調製することができる。
還元時の液温は10〜200℃、好ましくは30〜12
0℃の範囲である。これより低い温度では反応性が低く
なるため、二酸化マンガン収量が少なく、これより高い
温度では二酸化マンガンの表面積が減少し好ましくな
い。
【0011】また、これらの還元剤と共に硫酸マンガ
ン、硝酸マンガン、塩化マンガン等の2価のマンガン塩
を使用することができる。2価のマンガン塩の併用はヒ
ドラジン類、ヒドロキシカルボン酸類の使用量を減少す
ることができる。2価のマンガン塩の使用量は、過マン
ガン酸塩に対して0.8倍モル以下が好ましい。以上の
如くして調製した二酸化マンガンは、反応液から分離
後、水洗、乾燥する。乾燥方法としては、水洗後のケー
キを恒温槽等を使用して蒸発乾固させても、スプレード
ライ等を使用した噴霧乾燥法によって行ってもよい。二
酸化マンガンのシアンヒドリンの水和反応への使用に際
しては、二酸化マンガンを粉体のまま回分式反応用触媒
として使用してもよく、また成型して固定床流通式反応
用触媒として使用しても良い。
【0012】シアンヒドリンの水和反応は、シアンヒド
リンに対し水が過剰の系で実施される。すなわち、反応
液中のシアンヒドリンと水との割合はモル比で水/シア
ンヒドリン=1.5〜40、好ましくは3〜20であ
る。また、シアンヒドリンに対応するオキソ化合物、例
えばアセトンシアンヒドリンに対するアセトンなどを反
応液中に5〜30重量%添加すると、シアンヒドリンの
分解が抑制され、その結果α−ヒドロキシカルボン酸ア
ミド収率が増大するという効果がある。反応温度は、2
0〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲である。
これより低い温度では反応速度が小さくなり、又これよ
り高い温度ではシアンヒドリンの分解による副生成物が
多くなり好ましくない。
【0013】
【実施例】以下、実施例および比較例を用いて本発明の
方法を具体的に説明する。
【0014】実施例1 1)触媒調製: 過マンガン酸カリウム39.5g(0.2
5モル)を水450gに溶解した液に濃硫酸24gを少
しづつ加えた後、50℃に温度を調節した。次いでこの
溶液に硫酸ヒドラジン32.5g(0.25モル)を1
000mlの水に少しづつ溶解させた液を添加した後、
90℃で3時間加熱撹拌した。得られたスラリー液を吸
引濾過した後、3000mlの水で3回洗浄し、110
℃で一晩乾燥して黒色の塊状二酸化マンガンを21.9
g得た。 2)水和反応: 上記で得た二酸化マンガンを破砕し、粒径
を63〜177μm(80〜250メッシュ)にそろえ
たもの0.6gを撹拌機を備えた内容積15mlの容器
に入れ、−10℃で保存しておいたアセトンシアンヒド
リン(ACH)水溶液12g(組成、モル比;水/アセ
トン/ACH=11.0/0.98/1)を加え、容器
を60℃の水浴に入れた後4時間加熱撹拌して反応させ
た。生成液を氷冷したのち、フィルターを用いて生成液
のみを採取し反応液組成を高速液体クロマトグラフィー
で分析した結果、ACHの反応率は73.5%、α−ヒ
ドロキシイソ酪酸アミドの収率は72.1%、同選択率
は98.1%だった。
【0015】実施例2 1)触媒調製: 過マンガン酸カリウム46.7g(0.3
0モル)を水200gに溶解し、温度を70℃に調節し
た。次いでこの溶液に濃硫酸16.7gと硫酸マンガン
水和物23.8g(0.10モル)と硫酸ヒドラジン1
3.0g(0.10モル)を50gの水に溶解させた液
を添加した後、90℃で3時間加熱撹拌した。得られた
スラリー液を吸引濾過し、3000mlの水で3回洗浄
した後、110℃で一晩乾燥して黒色の塊状二酸化マン
ガンを36.9g得た。 2)水和反応: 上記で得た二酸化マンガンを実施例1と同
様の条件で反応させた。その結果、ACHの反応率は7
1.4%、α−ヒドロキシイソ酪酸アミドの収率は6
9.9%、同選択率は97.9%だった。
【0016】比較例1 1)触媒調製: 過マンガン酸カリウム46.7g(0.3
0モル)を水200gに溶解し、温度を70℃に調節し
た。次いでこの溶液に濃硫酸16.7gと硫酸マンガン
水和物47.5g(0.20モル)を50gの水に溶解
させた液を添加した後、90℃で3時間加熱撹拌した。
得られたスラリー液を吸引濾過し、3000mlの水で
3回洗浄した後、110℃で一晩乾燥して黒色の塊状二
酸化マンガンを47.6g得た。 2)水和反応: 上記で得た二酸化マンガンを実施例1と同
様の条件で反応させた。その結果、ACHの反応率は5
5.9%、α−ヒドロキシイソ酪酸アミドの収率は5
2.3%、同選択率は93.6%だった。
【0017】比較例2、3 実施例1における硫酸ヒドラジンの代りに、過硫酸アン
モニウムまたは亜硫酸アンモニウムを用いた以外は、実
施例1と同様にして触媒の調製及びアセトンシアンヒド
リンの水和反応を実施した。その結果を上記の実験結果
と一緒に表1に示す。
【0018】実施例3 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム39.6g(0.2
5モル)を水360gに溶解したのち50℃に温度を調
節した。次にクエン酸一水和物17.9g(0.085
モル)を50gの水に溶解させた液を添加した後、90
℃で10分間加熱撹拌した。得られたスラリー液を吸引濾
過した後、1000mlの水で3回洗浄し、110℃で
一晩乾燥した。乾燥後6N硝酸120mlで洗浄してか
ら2000mlの水で2回洗浄し、110℃で一晩乾燥
して黒色の塊状二酸化マンガンを22.6g得た。 2)水和反応:上記で得た二酸化マンガンを破砕し、粒径
を63〜177μm(80〜250メッシュ)にそろえ
たもの1.2gを撹拌機を備えた内容積15mlの容器
に入れ、−10℃で保存しておいたアセトンシアンヒド
リン水溶液12g(組成、モル比;水/アセトン/AC
H=11.0/0.98/1)を加え、容器を60℃の水
浴に入れた後4hr加熱撹拌して反応させた。生成液を
氷冷したのち、フィルターを用いて生成液のみを採取し
反応液組成を高速液体クロマトグラフィーで分析した結
果、ACHの反応率は98.1%、α−ヒドロキシイソ
酪酸アミドの収率は91.7%だった。
【0019】実施例4 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム39.6g(0.2
5モル)を水360gに溶解したのち50℃に温度を調節し
た。次にクエン酸三アンモニウム12.3g(0.05
モル)を50gの水に溶解させた液を添加した後、90
℃で10分間加熱撹拌した。得られたスラリ−液を吸引濾
過した後、1000mlの水で3回洗浄し、110℃で
一晩乾燥した。乾燥後6N硝酸120mlで洗浄してか
ら2000mlの水で2回洗浄し、110℃で一晩乾燥
して黒色の塊状二酸化マンガンを24.5g得た。 2)水和反応:上記で得た二酸化マンガンを実施例3と同
様の条件で反応させた。その結果、ACHの反応率は9
7.9%、α−ヒドロキシイソ酪酸アミドの収率は9
0.1%だった。
【0020】実施例5 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム39.6g(0.2
5モル)を水360gに溶解した液に28%アンモニア
水10gを少しづつ加え、50℃に温度を調節した。次
にクエン酸三アンモニウム12.3g(0.05モル)
を50gの水に溶解させた液を添加した後、90℃で10
分間加熱撹拌した。得られたスラリー液を吸引濾過した
後、1000mlの水で3回洗浄し、110℃で一晩乾
燥した。乾燥後6N硝酸120mlで洗浄してから20
00mlの水で2回洗浄し、110℃で一晩乾燥して黒
色の塊状二酸化マンガンを23.2g得た。 2)水和反応:上記で得た二酸化マンガンを実施例3と同
様の条件で反応させた。その結果、ACHの反応率は9
8.2%、α−ヒドロキシイソ酪酸アミドの収率92.
3%だった。
【0021】実施例6 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム39.6g(0.2
5モル)を水360gに溶解した液に濃硫酸20gを少
しづつ加え、50℃に温度を調節した。次にクエン酸一
水和物13.7g(0.065モル)を50gの水に溶
解させた液を添加した後、90℃で10分間加熱撹拌し
た。得られたスラリー液を吸引濾過した後、2000m
lの水で3回洗浄し、110℃で一晩乾燥して黒色の塊
状二酸化マンガンを20.0g得た。 2)水和反応:上記で得た二酸化マンガンを実施例3と同
様の条件で反応させた。その結果、ACHの反応率は9
8.8%、α−ヒドロキシイソ酪酸アミドの収率は8
9.7%だった。
【0022】実施例7〜9 実施例6におけるクエン酸の代りに、いろいろなヒドロ
キシカルボン酸を用いた以外は、実施例6と同様にして
触媒の調製及びACHの水和反応を実施した。その結果
を表2に示す。
【0023】実施例10 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム46.7g(0.3
0モル)を水200gに溶解し、温度を70℃に調節し
た。次に濃硫酸16.7gと硫酸マンガン水和物23.
8g(0.10モル)とクエン酸一水和物5.5g
(0.026モル)を50gの水に溶解させた液を添加
した後、90℃で3時間加熱撹拌した。得られたスラリ
ー液を吸引濾過し、3000mlの水で3回洗浄した
後、110℃で一晩乾燥して黒色の塊状二酸化マンガン
を37.5g得た。 2)水和反応:上記で得た二酸化マンガンを実施例3と同
様の条件で反応させた。その結果、ACHの反応率は9
0.5%、α−ヒドロキシイソ酪酸アミドの収率は8
6.3%だった。
【0024】比較例4 1)触媒調製:過マンガン酸カリウム46.7(0.30
モル)を水200gに溶解し、温度を70℃に調節し
た。次に濃硫酸16.7gと硫酸マンガン水和物47.
5g(0.20モル)を50gの水に溶解させた液を添
加した後、90℃で3時間加熱撹拌した。得られたスラ
リー液を吸引濾過し、3000mlの水で3回洗浄した
後、110℃で一晩乾燥して黒色の塊状二酸化マンガン
を47.6g得た。 2)水和反応:上記で得た二酸化マンガンを実施例3と同
様の条件で反応させた。その結果、ACHの反応率は8
6.3%、α−ヒドロキシイソ酪酸アミドの収率は8
1.3%だった。
【0025】比較例5〜7 実施例6おけるクエン酸の代わりにメタノ−ル、シュウ
酸またはモノエタノ−ルアミン他の有機物を用いた以外
は、実施例6と同様にして触媒の調製及びアセトンシア
ンヒドリンの水和反応を実施した。その結果を上記実験
結果と共に表2に示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 21/00 - 38/74 C07C 1/00 - 409/44

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】過マンガン酸塩を、ヒドラジン類、ヒドロ
    キシカルボン酸類およびそれらの塩の一種または二種以
    上を用いて還元することを特徴とするシアンヒドリン類
    の水和用二酸化マンガン触媒の製造法。
  2. 【請求項2】前記還元に、さらに2価のマンガン塩を用
    いる請求項1記載の製造法。
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