JP3315906B2 - 熱間圧延設備及び熱間圧延機の潤滑方法 - Google Patents

熱間圧延設備及び熱間圧延機の潤滑方法

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JP3315906B2
JP3315906B2 JP28345897A JP28345897A JP3315906B2 JP 3315906 B2 JP3315906 B2 JP 3315906B2 JP 28345897 A JP28345897 A JP 28345897A JP 28345897 A JP28345897 A JP 28345897A JP 3315906 B2 JP3315906 B2 JP 3315906B2
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    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、板材の圧延を行う
熱間圧延機を備えた熱間圧延設備に係わり、特に、作業
ロールと圧延材との間を潤滑剤で潤滑する熱間圧延設備
に関する。
【0002】
【従来の技術】 従来、この種の熱間圧延設備において
は、例えば「板圧延の理論と実際」(日本鉄鋼協会)第
216頁〜221頁に示されるように、圧延と作業
ロールとの摩擦による作業ロールの摩耗の抑制、圧延
材と作業ロールとの焼き付き防止、及び圧延材と作業
ロールとの間の摩擦係数低減による圧延荷重の低減を目
的として、補強ロールに潤滑剤(以下適宜、熱間圧延油
という)を噴射し作業ロール・圧延材間の潤滑が行われ
ている。
【0003】一方、上記従来技術と同様に、補強ロール
に潤滑剤を噴射する公知技術例として、例えば、特開平
6−190409号公報記載のものがある。この公知例
に開示される圧延設備は、いわゆる作業ロールクロス式
圧延機を備えた圧延設備であり、潤滑剤供給装置を設け
て作業ロールと補強ロールとの潤滑を行うための所定の
潤滑剤(以下適宜、作業ロール・補強ロール間の潤滑剤
という)を補強ロール表面上に噴射し、これにより作業
ロール・補強ロール間に生じるスラスト力を低減するよ
うになっている。そしてまた、この圧延設備では、潤滑
剤供給装置のカバーと補強ロール表面とで形成される閉
空間内において補強ロール表面に付着しなかった潤滑剤
を回収し、潤滑剤供給源であるタンクに戻して循環させ
再利用するようになっている。なおこのとき潤滑剤は、
エマルジョン中の原液粘度が40℃で80Cst.以下
であり、濃度は例えば3重量%に維持されるようになっ
ている。そして、このような構成により、作業ロール表
面上に噴射される冷却剤に混入する潤滑剤の量を減ら
し、冷却剤回収後における化学的冷却水処理の負担を低
減できるようになっている。またこれにより潤滑剤供給
量を増加できるので、作業ロールと補強ロールとの間の
潤滑性能を向上できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
な作業ロールクロス式の圧延機でなく、作業ロール及び
補強ロールがともにパスラインに直角方向となる圧延機
(以下適宜、作業ロール非クロス式という)の場合は、
作業ロール・補強ロール間のスラスト力がクロス式に比
べてごく小さいことから、最初に述べた作業ロール・圧
延材間の潤滑性能の向上のほうが重要である。そこで、
上記特開平6−190409号公報記載の構成において
潤滑剤を熱間圧延油とし、その一部を回収し循環させ再
利用することで同様に作業ロール・圧延材間の潤滑性能
の向上を図ることが考えられる。
【0005】しかしながらこの場合、以下のような課題
が存在する。すなわち、よく知られているように、この
種の潤滑剤は温度の変化によってその粘度が大幅に変化
し、高温となるほど粘度が低下し付着力・転着力が低下
する性質を備えている。ここで、作業ロールと圧延材と
の接触位置付近の温度は例えば約800℃〜1000℃
という高温であるのに対し、作業ロールと補強ロールと
の接触位置付近の温度は例えば80℃〜100℃とそれ
に比べてかなり低い。したがって、前者の潤滑を目的と
する熱間圧延油と、後者の潤滑を目的とする作業ロール
・補強ロール間の潤滑剤とは、その目的の差異により備
えるべき物性が大幅に異なることとなる。つまり、熱間
圧延油は高温において潤滑を行うことから、高温による
粘度の低下をあらかじめ見越して、作業ロール・補強ロ
ール間の潤滑剤よりも付着力・転着力が高いものを噴射
する必要がある。
【0006】しかし、上記特開平6−190409号公
報の圧延設備においては、このような点への配慮がされ
ていない。すなわち、エマルジョン中の原液濃度を例え
ば3重量%としつつ原液粘度を40℃で80Cst.以
下としているが、これらの値は、比較的低温で機能する
作業ロール・補強ロール間の潤滑剤のための物性値とし
ては十分であるものの、熱間圧延油として用いる場合に
は補強ロールへの付着力及び作業ロールへの転着力が不
十分となる。したがって、熱間圧延油で圧延材・作業ロ
ール間の潤滑を行って上記を達成するとともに、
そのとき熱間圧延油の一部を回収して循環使用すること
で圧延材・作業ロール間の潤滑性能の向上を図ることが
できない。
【0007】本発明の目的は、作業ロール非クロス式の
熱間圧延機を備えた熱間圧延設備及び熱間圧延機の潤滑
方法において、圧延材・作業ロール間の潤滑性能の向上
を図ることができる構成を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】(1)上記目的を達成す
るために、本発明は、上下一対の作業ロール及びこれら
作業ロールをそれぞれ支持する上下一対の補強ロールを
備え、前記一対の作業ロール及び前記一対の補強ロール
の軸線がともにパスラインに直角方向となるように配置
された作業ロール非クロス式の熱間圧延機と、この熱間
圧延機の出側又は入側より前記一対の作業ロールに潤滑
剤とはタンク系統を異にした水を主体とする冷却剤を噴
射してこれらを冷却する冷却手段と、前記一対の作業ロ
ールと圧延材との間を潤滑するための潤滑剤を貯留する
タンクと、前記一対の補強ロールのそれぞれに対面して
配置され、前記潤滑剤を前記一対の補強ロール表面上に
それぞれ噴射する潤滑剤噴射手段と、前記タンクに貯留
された前記潤滑剤を前記潤滑剤噴射手段に導く潤滑剤導
入手段と、前記潤滑剤噴射手段から噴射された潤滑剤の
うち補強ロール表面上に付着しなかった余剰分を回収す
る潤滑剤回収手段と、この潤滑剤回収手段で回収された
潤滑剤を前記タンクへ還流させる潤滑剤還流手段と
記タンク内に40℃における粘度が100Cst.以上
160Cst.以下である潤滑剤原液を供給する潤滑剤
原液供給手段と、この潤滑剤原液供給手段による供給量
を調整する第1の弁と、前記タンク内に前記潤滑剤原液
を希釈する希釈液を供給する希釈液供給手段と、この希
釈液供給手段による供給量を調整する第2の弁と、前記
潤滑剤導入手段に導入される前記潤滑剤中に占める前記
潤滑剤原液の濃度を検出する濃度検出手段と、この濃度
検出手段での検出結果に応じ、前記第1及び第2の弁の
うち少なくとも第1の弁の動作を制御する制御手段とを
有する。潤滑剤原液供給手段からの潤滑剤原液と希釈液
供給手段からの希釈液とがタンク内に導入されて潤滑剤
として貯留される。この潤滑剤は、潤滑剤導入手段で潤
滑剤噴射手段に導かれ、補強ロール表面上に噴射され
る。そのうち一部は補強ロール上に付着しさらに作業ロ
ールに転着するが、付着しなかった余剰分は潤滑剤回収
手段で回収され、さらに潤滑剤還流手段でタンクへ還流
される。ここで、この潤滑剤の循環ルートにおいて、潤
滑剤導入手段に導入される潤滑剤中に占める潤滑剤原液
の濃度が濃度検出手段によって検出されており、この検
出結果に応じ、潤滑剤原液の供給量を調整する第1の弁
の動作が制御手段で少なくとも制御される。したがっ
て、この制御手段で、潤滑剤導入手段を介し潤滑剤噴射
手段に導かれる潤滑剤中の潤滑剤原液粘度を例えば比較
的高めに設定することにより、噴射される潤滑剤を熱間
圧延油として用いたとしても補強ロールへの十分な付着
力を得ることができ、さらに作業ロールへの十分な転着
力も得ることができるので、作業ロール・圧延材間の潤
滑を良好に行うことができる。これにより、圧延材との
摩擦による作業ロールの摩耗や作業ロールと圧延材との
焼き付きを抑制し、また圧延荷重を低減することができ
る。特に、潤滑剤原液供給手段が供給する潤滑剤原液
は、40℃における粘度が100Cst.以上であるこ
とにより、通常一般的である潤滑剤原液濃度0.3重量
%〜3重量%の範囲において、補強ロールへの十分な付
着力及び作業ロールへの十分な転着力を確実に確保でき
る。また40℃における粘度が160Cst.以下であ
ることにより、目詰まり等の発生による潤滑剤噴射手段
の噴射不良を確実に回避できる。またこの熱間圧延油を
潤滑剤回収手段で回収することにより、冷却手段から作
業ロールに噴射される冷却剤に熱間圧延油が混入するの
を抑制できるので、冷却剤を回収して再利用するときに
通常行われる化学的処理の負担を低減できる。これによ
り、潤滑剤噴射手段からの熱間圧延油の噴射量を増加で
きるので、その分、圧延材と作業ロールとの間の潤滑性
能を向上することができる。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】()上記(1)において、また好ましく
は、前記潤滑剤回収手段から前記潤滑剤還流手段に導入
された潤滑剤中に含まれる不純物を分離排出する分離排
出手段をさらに有する。これにより、例えばロール表面
に付着していた鉄分や潤滑剤腐敗物等の不純物がタンク
に混入することによる潤滑性能の低下、濃度検出手段の
検出不良、潤滑剤噴射手段の噴射不良等を確実に防止で
き、信頼性を向上できる。
【0013】()上記(1)において、また好ましく
は、前記濃度検出手段に洗浄液を導くとともに洗浄後の
液を排出する洗浄液導入・排出手段をさらに有する。こ
れにより、所定周期毎に濃度検出手段の洗浄を行うこと
で、濃度検出精度を高く維持することができ、信頼性を
向上できる。
【0014】()また上記目的を達成するために、本
発明は、上下一対の作業ロール及びこれら作業ロールを
それぞれ支持する上下一対の補強ロールを備え前記一対
の作業ロール及び前記一対の補強ロールの軸線がともに
パスラインに直角方向となるように配置された作業ロー
ル非クロス式の熱間圧延機に対し、この熱間圧延機の出
側又は入側より前記一対の作業ロールに潤滑剤とはタン
ク系統を異にした水を主体とする冷却剤を噴射してこれ
らを冷却する一方、前記一対の作業ロールと圧延材との
間を潤滑するための潤滑剤をタンクに貯留し、この貯留
した潤滑剤を前記一対の補強ロールに向かってそれぞれ
噴射し、この噴射された潤滑剤のうち前記補強ロール表
面上に付着しなかった余剰分を回収して前記タンクへ還
流させ前記噴射する潤滑剤として、40℃における粘
度が100Cst.以上160Cst.以下である潤滑
剤原液及び希釈液のうち少なくとも前者で構成されかつ
該潤滑剤中に占める前記潤滑剤原液の濃度が所定値以上
に調整されたものを用いる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面
を参照しつつ説明する。本実施形態による熱間圧延設備
の要部構造を表す配置図を図1に示す。この図1におい
て、本実施形態による熱間圧延設備は、まず、上下一対
の作業ロール1U,1L及びこれら作業ロール1U,1
Lをそれぞれ支持する上下一対の補強ロール2U,2L
を備え、これら作業ロール1及び補強ロール2の軸線が
ともに圧延材3のパスラインに直角方向となるように配
置された熱間圧延機4を備えている。
【0016】また、この熱間圧延設備は、熱間圧延機4
の出側又は入側より作業ロール1U,1Lに冷却水を噴
射してこれらを冷却する冷却手段としての冷却水ノズル
5Ua,5Ub,5La,5Lbと、潤滑剤を貯留する
ストレージタンク(ミキシングタンク)6と、補強ロー
ル2U,2Lのそれぞれに対面して配置され、潤滑剤を
補強ロール2U,2L表面(=バレルの周面)上にそれ
ぞれ噴射する潤滑剤噴射手段としての潤滑剤ノズル8
U,8Lと、タンク6に貯留された潤滑剤を潤滑剤ノズ
ル8U,8Lに導く潤滑剤導入手段としての吸入管路
9、潤滑剤供給ポンプ10、吐出管路11、及び潤滑剤
供給用切換弁7a,7bと、潤滑剤ノズル8U,8Lか
ら噴射された潤滑剤のうち補強ロール2U,2L表面上
に付着しなかった余剰分を回収する潤滑剤回収手段とし
てのカバー12U,12L及びシールリップ13U,1
3Lと、これら潤滑剤回収手段12,13で回収された
潤滑剤をタンク6へ還流させる潤滑剤還流手段としての
吸入管路14、潤滑剤回収ポンプ15、吐出管路16、
及びタンク管路18と、タンク6内に潤滑剤原液を供給
する潤滑剤原液供給手段としての潤滑剤原液供給管路1
9と、この潤滑剤原液供給管路19による供給量を調整
する第1の弁としての潤滑剤原液補給切換弁20と、タ
ンク6内に潤滑剤原液を希釈する希釈液、例えば水を供
給する希釈液供給手段としての水供給管路21と、この
水供給管路21による供給量を調整する第2の弁として
の水補給切換弁22と、潤滑剤導入手段9,10,1
1,7に導入される潤滑剤中に占める潤滑剤原液の濃度
を検出する濃度検出手段としての濃度計23と、この濃
度計23での検出結果に応じ、切換弁20の動作を制御
する制御手段としてのコントローラ24と、潤滑剤回収
手段12,13から潤滑剤還流手段14,15,16,
18に導入された潤滑剤中に含まれる不純物を分離排出
する分離排出手段としての不純物分離装置25及び不純
物排出用切換弁26と、濃度計23に洗浄液、例えば水
を導くとともに洗浄後の液を排出する洗浄液導入・排出
手段としての洗浄用導入配管28、洗浄液導入用切換弁
29、洗浄用排出配管30、及び洗浄液排出用切換弁3
1とを有している。
【0017】潤滑剤ノズル8U,8Lと、カバー12
U,12Lと、シールリップ13U,13Lとは、略箱
状の潤滑剤ヘッダ32U,32Lとして一体的に構成さ
れている。これらのうち、潤滑剤ヘッダ32Uを例にと
ってその詳細構造を図2に示す。図2において、潤滑剤
ノズル8Uを包含するように設けられたカバー12Uの
補強ロール2U側端部に例えばゴムからなるシールリッ
プ13Uがはめ込み固定され、シールリップ13Uの補
強ロール2U側端面は補強ロール2Uの回転に追従して
接触を維持するようになっている。すなわち、シールリ
ップ13Uとカバー12Uとにより補強ロール2Uの表
面領域を包含する閉空間を形成し、潤滑剤の漏洩を抑制
するようになっている。なお、このような構造において
本願発明者等が潤滑剤を50L/minの割合で供給し潤
滑剤漏洩試験を行った結果、潤滑剤漏洩量は0.5L/
min以下、即ち供給量の1重量%以下のレベルであるこ
とを確認した。また逆に、冷却水ノズル5Ua,5U
b,5La,5Lbから噴出される冷却水の潤滑剤循環
系への混入量についても同様の条件で測定を行ったとこ
ろ、その量は0.1L/min以下のレベルであり、微少
量に留まった。このような漏洩抑制機能により、ノズル
8Uから噴射された潤滑剤のうち補強ロール2Uに付着
した部分以外のの飛散・落下するもの(すなわち余剰部
分)は、カバー12U内の下部に形成された回収ポート
12Uaから吸入管路14Uに導かれ、さらに潤滑剤回
収ポンプ15でタンク6へと導かれるようになってい
る。なお、潤滑剤ヘッダ32Uのロール軸方向の幅は、
補強ロール2Uのバレル全長よりわずかに小さくなって
いる。また、潤滑剤ヘッダ32Lについても上記同様の
構造となっており、ノズル8Lから噴射された潤滑剤の
余剰部分は、カバー12L下部から吸入管路14Lに導
かれ、さらにタンク6へと導かれるようになっている。
【0018】図1に戻り、補強ロール2U,2Lの表面
のうちこれら潤滑剤ヘッダ32U,32Lに対向する領
域における補強ロール2U,2Lの冷却水膜厚みを低減
するために、補強ロール2U,2Lの表面のうち潤滑剤
ヘッダ32U,32Lとほぼ反対側の位置に接して水膜
除去を行う水切り33U,33Lと、作業ロール1U,
1Lの表面のうち補強ロール2U,2Lとの接触位置よ
りやや出側位置に接して水膜除去を行う水切り34U,
34Lが設けられている。
【0019】タンク6には、潤滑剤の液面位置を検出す
る水位計35が設けられており、その検出結果がコント
ローラ24に入力されている。そしてこれに基づきコン
トローラ24が水補給切換弁22を制御することによ
り、潤滑剤の水位が常時一定に保たれるようになってい
る。またタンク6内における潤滑剤原液の濃度は、濃度
計23における検出結果に基づきコントローラ24が潤
滑剤原液補給切換弁20を制御することにより、常時
0.3重量%〜3重量%に保たれるようになっている。
このとき供給される潤滑剤原液としては、牛脂あるいは
鉱油・エステルをベースにしたもので、40℃における
粘度が100Cst.〜160Cst.であるものを使
用する。
【0020】吐出管路11のうち濃度計23を挟んで潤
滑剤供給用切換弁7aの上流側位置と潤滑剤供給用切換
弁7bの下流側位置とは、バイパス管路44で短絡され
ており、このバイパス管路44にはコントローラ24の
制御により動作するバイパス切換弁45が設けられてい
る。
【0021】不純物分離装置25は、補強ロール2U,
2Lの表面に付着していた鉄粉・潤滑剤腐敗物等の不純
物を、回収した潤滑剤中から分離するようになってい
る。すなわち、分離装置25は、吐出管路16から回収
した潤滑剤が供給される第1槽25aと、下部において
第1槽25aと連通している第2槽25bと、上部にお
いて第2槽25bと連通している第3槽25cと、下部
において第3槽25cと連通するとともに上部において
タンク管路18に接続している第4槽25dとから構成
されている。この第1槽25aから第4槽25dまでの
間を図示のように上下方向に浮沈させつつジグザグに潤
滑剤を導くことにより、不純物を各槽内に沈降あるいは
浮遊させて分離し、これらがタンク5内に流入するのを
防止し循環系の清浄度を維持するようになっている。な
お各槽25a〜d内で分離された不純物は、コントロー
ラ24で不純物排出用切換弁26を一定周期ごとに連通
位置に切り換えることにより、排出タンク37に排出さ
れるようになっている。
【0022】冷却水ノズル5Ua,5Ub,5La,5
Lbには、冷却水タンク38内の冷却水が冷却水ポンプ
39によって吸入管路40及び吐出管路41Ua,41
Ub,41La,41Lbを介して導かれている。各冷
却水ノズル5Ua,5Ub,5La,5Lbから噴出さ
れた冷却水は、仕上げミルスケールピット42から管路
43を介して再び冷却水タンク38へと還流される。こ
のときに冷却水中に混入する微量の潤滑剤は、水に対し
分離性が良い性質を利用してこの冷却水タンク38にお
いて化学的処理(例えば高分子凝集剤による沈降処理)
が施されて分離される。これにより、冷却水の清浄度が
確保されるようになっている。
【0023】上記構成において、潤滑剤原液補給切換弁
20を介しタンク6内に供給された潤滑剤原液と水補給
切換弁22を介しタンク6内に供給された水は、タンク
6内に配置されたアジテータ36によって互いに撹拌さ
れ混合され、水と油の混合液(エマルジョン)となった
状態で潤滑剤として貯留される。通常の圧延時において
は、コントローラ24によって切換弁7a,7bが連通
位置に切換弁29,31,45が遮断位置に切り換えら
れており、タンク6内の潤滑剤は、ポンプ10により管
路9及び11U,11Lを介し潤滑剤ノズル8U,8L
に導かれ、補強ロール2U,2Lの表面上に噴射され
る。そのうち一部は、ロール表面に形成される冷却水膜
を破ってロールを構成する金属材料の表面に衝突し補強
ロール2U,2L上に付着した後さらに作業ロール1
U,1Lに転着するが、付着しなかった余剰分は潤滑剤
ヘッダ32U,32Lにおいて回収され、ポンプ15に
よって管路14L,14U及び16を介して不純物分離
装置25で不純物を除去される。その後さらに管路18
を介してタンク6へと還流される。このとき、タンク6
内における液面の低下が水位計35で検出されることで
管路21から水が供給されて補充され、さらに原液濃度
が濃度計23で検出され原液濃度を維持するために管路
19から潤滑剤原液補充され、結果として潤滑に用いら
れて減少した分の潤滑剤原液及び水のみが補充されるこ
ととなる。また、以上のようにして潤滑剤の循環・再利
用を行うとき、濃度計23の検出精度を確保するため
に、ある一定の周期で濃度計23の水洗浄が行われる。
この場合、コントローラ24によって潤滑剤供給用切換
弁7a,7bを遮断位置に切り換えるとともに、洗浄液
導入用切換弁29及び洗浄液排出用切換弁31を連通位
置に切り換える。これにより、洗浄用導入配管28から
の水が切換弁29を介して濃度計23へ導かれ濃度計2
3内部を洗浄し、さらに洗浄後の排水が洗浄用排出配管
30及び切換弁31を介して排水タンク37へと排出さ
れる。なおこのとき、コントローラ24によってバイパ
ス切換弁45が連通位置に切り換えられ、タンク6から
の潤滑剤は管路9→ポンプ10→バイパス管路44→切
換弁45を介してノズル8U,8Lに供給され、濃度計
洗浄中でも潤滑剤の供給は確保される。
【0024】次に、上記構成及び動作の本実施形態の作
用効果を以下に説明する。
【0025】(1)圧延材・作業ロール間の潤滑性能向
上作用 本実施形態の要部は、潤滑剤原液として所定の粘度のも
のを使用し、かつ管路11中の潤滑剤(すなわちタンク
6内の潤滑剤)中に占めるその潤滑剤原液の濃度を、潤
滑剤原液補給切換弁20を介してコントローラ24で制
御することにより、作業ロール1U,1Lと圧延材3と
の間を潤滑する熱間圧延油として好適な比較的高い付着
力及び転着力をもつ潤滑剤を供給するとともに、この潤
滑剤を回収して循環使用することにある。
【0026】そこで、まず本願発明者等は、熱間圧延油
として好適な物性を以下のようにして検討した。図3
は、本実施形態と同様のこの種の圧延設備において、そ
の特性を表すものとして広く知られているStribe
ck曲線である。横軸に圧延油の粘度Zに作業ロールの
回転数Nを乗じたものを圧延荷重Pで除したZ×N/P
をとったとき、代表的な熱間圧延油を用いた場合の作業
ロールと圧延材との摩擦係数μは、図示のような変化を
示す。
【0027】ここで、この種の圧延設備で通常よく用い
られる回転数N及び圧延荷重Pは、N≒150〜250
回転及びP≒1000t〜3000tの範囲である。そ
して、本願発明者等は、これらN及びPの値を図3の横
軸に代入すると、圧延油の原液濃度を0.3重量%〜3
重量%とした場合には、図3中の境界AがZ≒80Cs
t.(40℃)、境界BがZ≒100Cst.(40
℃)に相当することを確認した。したがって、40℃に
おける粘度を80Cst.以上とすることで熱間圧延油
の補強ロールへの十分な付着と作業ロールへの十分な転
着によって摩擦係数μを低減できることがわかり、特
に、40℃における粘度を100Cst.以上とすれば
より確実にこの効果を得られることがわかった。但しこ
のとき、目詰まり等の発生による潤滑剤ノズルの噴射不
良を確実に回避するためには、40℃における粘度を1
60Cst.以下とすることが好ましい。
【0028】本実施形態における圧延設備においては、
管路19から供給される潤滑剤原液として40℃での粘
度が100Cst.〜160Cst.であるものを使用
し、またコントローラ24による切換弁20の制御によ
って潤滑剤原液濃度は0.3重量%〜3重量%に維持さ
れる。したがって潤滑剤ノズル8U,8Lの噴射不良を
確実に回避しつつ、十分な付着力と十分な転着力を確実
に備えた熱間圧延油を潤滑剤ノズル8U,8Lから補強
ロール2U,2Lに噴射することができる。これによ
り、作業ロール1U,1L・圧延材3間の潤滑を良好に
行うことができるので、圧延材3との摩擦による作業ロ
ール1U,1Lの摩耗や作業ロール1U,1Lと圧延材
3との焼き付きを抑制し、また圧延荷重を低減すること
ができる。また、潤滑剤ノズル8U,8Lから噴射した
潤滑剤を回収して管路14,16,18を介しタンク6
へ還流させることにより、前述したように冷却水ノズル
5Ua,5Ub,5La,5Lbから噴射され冷却水タ
ンク38へ還流される冷却水に潤滑剤が混入するのを著
しく抑制できるので、冷却水タンク38における化学的
処理の負担を低減できる。この結果、潤滑剤ノズル8
U,8Lからの潤滑剤の噴射量を増加できるので、その
分、圧延材3と作業ロール1U,1Lとの間の潤滑性能
を向上することができる。
【0029】(2)生産コストの低減作用 また、本実施形態の圧延設備においては、潤滑剤を循環
させ再利用することにより、潤滑剤原液の消費量を低減
できる。このことを図4により説明する。図4は、本願
発明者等が行った実験結果に基づく、本実施形態におけ
る潤滑剤消費量低減効果を示したものである。すなわ
ち、本願発明者等は、本実施形態の圧延設備から潤滑剤
の回収部分を除去した従来構造(すなわち潤滑剤の余剰
分が回収されず掛け捨てとなり冷却水タンク38内に混
入する構造)における典型的な潤滑剤消費量を300c
c/分と設定し、本実施形態の圧延設備においてこれと
同様に潤滑剤ノズル8U,8Lから300cc/分の割
合で噴射しつつ余剰分を回収して再利用を行った場合の
潤滑剤消費量を測定した。図3は、この潤滑剤消費量と
従来消費量(=300cc/分)との比率(=潤滑剤消
費率)を、横軸に圧延材のコイル(リールで巻き出し・
巻き取りを行い1回の圧延における基本単位となる例え
ば1000mの長さの圧延材)の本数Nをとって示した
ものである。図4に示されるように、本実施形態におい
ては、潤滑剤消費率を従来の30%程度に抑制すること
ができ、70%程度の潤滑剤を回収し再利用することが
可能となった。すなわち、高価な潤滑剤原液の消費量を
低減できるので、生産コストの低減を図ることができ
る。
【0030】なお、近年、耐摩耗性能向上を目的として
ハイスピードロール(ハイスロール)を作業ロールに採
用する圧延設備が増加しているが、ハイスロールの材料
はステンレス材料に対し焼き付き易いため、ステンレス
を圧延する場合には熱間圧延油を多量に供給することで
耐焼き付き性能の向上を図ることが多い。このような場
合においては、本実施形態のように熱間圧延油を循環さ
せることにより、冷却水の化学的処理負担の低減や生産
コストの低減の面から特に有効である。
【0031】(3)その他 上記(1)(2)のほか、潤滑剤ノズル8U,8Lを備
えたヘッダ32U,32Lが設置スペースに余裕のある
補強ロール2U,2L近傍へ配置されることにより、ス
ペース面での制限を受けることなく容易にヘッダ32
U,32Lを設置できるという効果もある。また、ある
一定の周期で濃度計23の水洗浄を行うことにより、濃
度計23の検出精度を高く維持することができ、信頼性
を向上できるという効果もある。さらに、不純物分離装
置25で例えば補強ロール2U,2L表面に付着してい
た鉄分や潤滑剤腐敗物等の不純物の分離排出を行うこと
により、これら不純物がタンク6に混入することによる
潤滑性能の低下、濃度計23の検出不良、及び潤滑剤ノ
ズル8U,8Lの噴射不良等を確実に防止でき、信頼性
を向上できる効果もある。
【0032】なお、上記実施形態においては、濃度計2
3での検出結果に応じてコントローラ24が潤滑剤原液
補給切換弁20の動作のみを制御したが、これに限られ
ず、水補給切換弁22の動作も制御してもよい。この場
合も、同様の効果を得る。また、上記実施形態において
は、タンク6内に潤滑剤原液と水との両方を供給し、ア
ジテータ36でエマルジョンとなった状態での潤滑剤を
潤滑剤ノズル8U,8Lに供給したが、これに限られな
い。すなわち、圧延材3の種類や圧延条件等によっては
潤滑剤原液のみを供給し(この場合、潤滑剤中に占める
潤滑剤原液の濃度=100重量%となる)潤滑剤ノズル
8U,8Lに供給することも考えられる。
【0033】
【発明の効果】 本発明によれば、潤滑剤原液として4
0℃における粘度が100Cst.以上160Cst.
以下のものを用いるので、通常一般的である潤滑剤原液
濃度0.3重量%〜3重量%の範囲において補強ロール
への十分な付着力及び作業ロールへの十分な転着力を確
実に確保でき、作業ロール・圧延材間の潤滑を良好に行
うことができる。さらに熱間圧延油を潤滑剤回収手段で
回収するので、冷却手段から作業ロールに噴射される冷
却剤に熱間圧延油が混入するのを抑制し、冷却剤を回収
して再利用するときに通常行われる化学的処理の負担を
低減できる。したがって、潤滑剤噴射手段からの熱間圧
延油の噴射量を増加でき、圧延材・作業ロール間の潤滑
性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による熱間圧延設備の要部
構造を表す配置図である。
【図2】図1に示した潤滑剤ヘッダの詳細構造図であ
る。
【図3】Stribeck曲線の一例を示す図である。
【図4】本実施形態における潤滑剤消費量低減効果を示
した図である。
【符号の説明】
1L,U 作業ロール 2L,U 補強ロール 3 圧延材 4 熱間圧延機4 5La,b 冷却水ノズル(冷却手段) 5Ua,b 冷却水ノズル(冷却手段) 6 ストレージタンク(タンク) 7a,b 潤滑剤供給用切換弁(潤滑剤導入手
段) 8L,U 潤滑剤ノズル(潤滑剤噴射手段) 9 吸入管路(潤滑剤導入手段) 10 潤滑剤供給ポンプ(潤滑剤導入手
段) 11 吐出管路(潤滑剤導入手段) 12L,U カバー(潤滑剤回収手段) 13L,U シールリップ(潤滑剤回収手段) 14 吸入管路(潤滑剤還流手段) 15 潤滑剤回収ポンプ(潤滑剤還流手
段) 16 吐出管路(潤滑剤還流手段) 18 タンク管路(潤滑剤還流手段) 19 潤滑剤原液供給管路(潤滑剤原液
供給手段) 20 潤滑剤原液補給切換弁(第1の
弁) 21 水供給管路(希釈液供給手段) 22 水補給切換弁(第2の弁) 23 濃度計(濃度検出手段) 24 コントローラ(制御手段) 25 不純物分離装置(分離排出手段) 26 不純物排出用切換弁(分離排出手
段) 28 洗浄用導入配管(洗浄液導入・排
出手段) 29 洗浄液導入用切換弁(洗浄液導入
・排出手段) 30 洗浄用排出配管(洗浄液導入・排
出手段) 31 洗浄液排出用切換弁(洗浄液導入
・排出手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F16N 7/40 F16N 7/40 39/00 39/00 (72)発明者 橋本 直 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 坂中 孝雄 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 尾野 博 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株 式会社内 (72)発明者 渡辺 勉 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株 式会社内 (56)参考文献 特開 平6−297011(JP,A) 特開 平8−174035(JP,A) 特開 平6−190409(JP,A) 特開 平8−112613(JP,A) 特開 平8−155510(JP,A) 特開 平4−118101(JP,A) 特開 平6−234989(JP,A) 特開 昭57−199501(JP,A) 特開 平6−15314(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 27/10 B21B 1/22 B21B 45/02 310 F16N 7/32 F16N 7/40 F16N 39/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】上下一対の作業ロール及びこれら作業ロー
    ルをそれぞれ支持する上下一対の補強ロールを備え、前
    記一対の作業ロール及び前記一対の補強ロールの軸線が
    ともにパスラインに直角方向となるように配置された
    業ロール非クロス式の熱間圧延機と、 この熱間圧延機の出側又は入側より前記一対の作業ロー
    ルに潤滑剤とはタンク系統を異にした水を主体とする
    却剤を噴射してこれらを冷却する冷却手段と、 前記一対の作業ロールと圧延材との間を潤滑するための
    潤滑剤を貯留するタンクと、 前記一対の補強ロールのそれぞれに対面して配置され、
    前記潤滑剤を前記一対の補強ロール表面上にそれぞれ噴
    射する潤滑剤噴射手段と、 前記タンクに貯留された前記潤滑剤を前記潤滑剤噴射手
    段に導く潤滑剤導入手段と、 前記潤滑剤噴射手段から噴射された潤滑剤のうち補強ロ
    ール表面上に付着しなかった余剰分を回収する潤滑剤回
    収手段と、 この潤滑剤回収手段で回収された潤滑剤を前記タンクへ
    還流させる潤滑剤還流手段と 前記タンク内に40℃における粘度が100Cst.以
    上160Cst.以下である潤滑剤原液を供給する潤滑
    剤原液供給手段と、 この潤滑剤原液供給手段による供給量を調整する第1の
    弁と、 前記タンク内に前記潤滑剤原液を希釈する希釈液を供給
    する希釈液供給手段と、 この希釈液供給手段による供給量を調整する第2の弁
    と、 前記潤滑剤導入手段に導入される前記潤滑剤中に占める
    前記潤滑剤原液の濃度を検出する濃度検出手段と、 この濃度検出手段での検出結果に応じ、前記第1及び第
    2の弁のうち少なくとも第1の弁の動作を制御する制御
    手段とを有することを特徴とする熱間圧延設備。
  2. 【請求項2】請求項1記載の熱間圧延設備において、前
    記潤滑剤回収手段から前記潤滑剤還流手段に導入された
    潤滑剤中に含まれる不純物を分離排出する分離排出手段
    をさらに有することを特徴とする熱間圧延設備。
  3. 【請求項3】請求項1記載の熱間圧延設備において、前
    記濃度検出手段に洗浄液を導くとともに洗浄後の液を排
    出する洗浄液導入・排出手段をさらに有することを特徴
    とする熱間圧延設備。
  4. 【請求項4】上下一対の作業ロール及びこれら作業ロー
    ルをそれぞれ支持する上下一対の補強ロールを備え前記
    一対の作業ロール及び前記一対の補強ロールの軸線がと
    もにパスラインに直角方向となるように配置された作業
    ロール非クロス式の熱間圧延機に対し、この熱間圧延機
    の出側又は入側より前記一対の作業ロールに潤滑剤とは
    タンク系統を異にした水を主体とする冷却剤を噴射して
    これらを冷却する一方、前記一対の作業ロールと圧延材
    との間を潤滑するための潤滑剤をタンクに貯留し、この
    貯留した潤滑剤を前記一対の補強ロールに向かってそれ
    ぞれ噴射し、この噴射された潤滑剤のうち前記補強ロー
    ル表面上に付着しなかった余剰分を回収して前記タンク
    へ還流させる熱間圧延機の潤滑方法であって、 前記噴射する潤滑剤として、40℃における粘度が10
    0Cst.以上160Cst.以下である潤滑剤原液及
    び希釈液のうち少なくとも前者で構成されかつ該潤滑剤
    中に占める前記潤滑剤原液の濃度が所定値以上に調整さ
    れたものを用いることを特徴とする熱間圧延機の潤滑方
    法。
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