JP3313489B2 - ブロー成形用樹脂組成物 - Google Patents

ブロー成形用樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エアーブロー成形時の
酸化劣化が著しく改良され、かつ機械的強度の低下を防
止してなるブロー成形に適した樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および問題点】ブロー成形法は、中空成形
品を成形する技術として、特にポリオレフィン系樹脂を
中心として利用されてきたが、比較的簡便な装置を用い
大型の中空成形品が得られる事から、近年、ポリオレフ
ィン系樹脂よりも機械的特性に優れるゴム強化スチレン
系樹脂(たとえば、ABS樹脂、AES樹脂)をエアー
ブロー成形法に適用する試みがなされている。
【0003】しかしながら、エアーブロー成形法におい
ては、樹脂が高温下で空気と接触するため、これらゴム
強化スチレン系樹脂では成形時の熱酸化により成形品内
部に劣化がおこり、それにともない機械的強度が著しく
低下すると言った問題があり、エアーブロー成形法採用
の大きな障害となっている。
【0004】元来、ゴム強化スチレン系樹脂は、樹脂が
高温下で空気と接触することのない射出成形法や押出成
形法等によって成形されていたため、このようなエアー
ブロー成形法にて生じる問題はなかった。
【0005】また、このような問題を解決すべく、ブロ
ー成形において空気ではなく窒素を使用する、いわゆる
窒素ブロー成形法を適用するという試みもなされている
が、設備に多大な費用がかかり経済的ではない。
【0006】本発明者は、このようなエアーブロー成形
に適したゴム強化スチレン系樹脂組成物を得るべく鋭意
検討した結果、特定の化合物を配合することにより、エ
アーブロー成形時の酸化劣化が著しく改良され、機械的
強度低下を防止できることを見出し、本発明に到達した
ものである。
【0007】
【問題点を解決する手段】すなわち、本発明は、ゴム強
化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、下記一般
式(1)に示される化合物(B)0.05〜5重量部配
合してなることを特徴とするブロ−成形用樹脂組成物を
提供するものである。
【0008】
【化2】
【0009】以下に本発明について詳細に説明する。
【0010】ゴム強化スチレン系樹脂(A)とは、ゴム
状重合体(a−1)と芳香族ビニル系単量体(a−2−
i)、シアン化ビニル系単量体および/または不飽和カ
ルボン酸アルキルエステル系単量体(a−2−ii)およ
び必要に応じて共重合可能な他のビニル系単量体(a−
2−iii)からなる単量体(a−2)とを重合してなる樹
脂であり、上述のゴム状重合体(a−1)の存在下に単
量体(a−2)を重合してなるグラフト重合体又は該グ
ラフト重合体と単量体(a−2)を重合してなる共重合
体との混合物である。
【0011】ゴム状重合体(a−1)としては、ガラス
転移温度が0℃以下のポリブタジエン、スチレン−ブタ
ジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合
体等のジエン系重合体、エチレン−プロピレン共重合
体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系共重合体等
のエチレン−プロピレン系共重合体、アクリル酸エステ
ル系共重合体、塩素化ポリエチレン等が例示され、一種
または二種以上用いることができる。
【0012】これらのゴム状重合体は乳化重合、溶液重
合、懸濁重合、塊状重合等により製造される。なお、乳
化重合により製造する場合におけるゴム状重合体のゲル
含有率については特に制限はないが、0〜95%である
ことが望ましい。
【0013】芳香族ビニル系単量体(a−2−i)とし
てはスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレ
ン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブ
チルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルス
チレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムス
チレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等が例示
され、一種または二種以上用いることができる。特にス
チレンが好ましい。
【0014】シアン化ビニル系単量体(a−2−ii)と
しては、アクリロニトリル、メタクリロニル、フマロニ
トリル等が例示され、一種または二種以上用いることが
できる。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0015】不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量
体(a−2−ii)としては、メチル(メタ)アクリレー
ト、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)ア
クリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート
等が例示され、一種または二種以上用いることができ
る。特にメチルメタクリレートが好ましい。
【0016】上述の単量体と共にゴム強化スチレン系樹
脂(A)を構成することのできる共重合可能な他のビニ
ル系単量体(a−2−iii)としては、アクリル酸、メタ
クリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、シトラコン
酸無水物などの不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン
酸無水物、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレ
イミド、N−フェニルマレイミド、O−クロル−N−フ
ェニルマレイミドなどのマレイミド化合物などがあげら
れ、それぞれ一種または二種以上用いることができる。
【0017】単量体(a−2)における芳香族ビニル系
単量体(i)、シアン化ビニル系単量体および/または
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(ii)およ
び共重合可能な他のビニル系単量体(iii)の組成比率に
は特に制限はないが、(i)50〜90重量%、(ii)
50〜10重量%および(iii)0〜40重量%であるこ
とが好ましく、さらに好ましくは、(i)50〜80重
量%、(ii)50〜20重量%および(iii)0〜30重
量%であり、特に(ii)としてシアン化ビニル系単量体
を用いることが好ましい。
【0018】また、ゴム状重合体(a−1)と単量体
(a−2)との組成比率にも特に制限はないが、ゴム状
重合体(a−1)5〜80重量%と単量体(a−2)9
5〜20重量%であることが好ましい。
【0019】特にグラフト率20〜100%および重量
平均粒子径0.05〜5μのグラフト重合体と共重合体と
からなる樹脂が好ましい。
【0020】ゴム強化スチレン系樹脂(A)(グラフト
重合体および共重合体)の製造方法にも特に制限はな
く、公知の乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合ま
たはこれらを組み合わせた方法が用いられる。
【0021】本発明の最終樹脂組成物を構成する化合物
(B)は、下記一般式(1)に示される化合物である。
化合物(B)はゴム強化スチレン系樹脂(A)100重
量部に対し0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜5
重量部が好適である。0.05重量部以下では酸化劣化
防止の効果は得られず強度低下をおこし、また5重量部
以上用いても効果は変わらず、却って高価となる。
【0022】
【化3】
【0023】上記一般式(1)に示される化合物は、イ
オウ系酸化防止剤の一種であるが、2,6−ジ−t−ブ
チル−4−メチルフェノール(商標登録スミライザーB
HT)、スチレン化フェノール(商標登録スミライザー
S)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒ
ドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル
アクリレート(商標登録スミライザーGM)などの他の
フェノール系酸化防止剤、ジラウリル3−3’−チオジ
プロピオネート(商標登録スミライザーTPL−R)、
ジステアリル3−3’−チオジプロピオネート(商標登
録スミライザーTPS)などの他のイオウ系酸化防止
剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤と異なり、
ゴム強化スチレン系樹脂のブロー成形時、特異な効果を
もたらす。すなわち、他の酸化防止剤ではブロー成形
時、ゴム強化スチレン系樹脂に対し何ら効果を示さない
にもかかわらず、上記の化合物が有効に作用するもので
ある。なお、作用機構は明確ではないが、化合物(B)
のみがゴム強化スチレン系樹脂に対し特異的に作用する
ことより、通常の酸化劣化防止機構とは異なるものと考
えられる。
【0024】上述の化合物をゴム強化スチレン系樹脂に
配合する手段には何ら制限はなく、ゴム強化スチレン系
樹脂製造時に添加する方法、懸濁液、有機溶媒溶液、ラ
テックスなどの状態で得られたゴム強化スチレン系樹脂
に添加し、樹脂組成物として回収する方法、パウダー、
ペレット状態のゴム強化樹脂に添加し、溶融混練して樹
脂組成物とする方法などが挙げられる。
【0025】尚、配合時、必要に応じて酸化防止剤、紫
外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔
料、可塑剤、難燃剤、離型剤、ガラス繊維、金属繊維、
炭素繊維、金属フレーク等の添加剤、補強材、充填材を
添加できる。また、本発明の目的を逸脱しない範囲にお
いて、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセター
ル、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリメ
チルメタクリレート、ポリ塩化ビニル等の他の熱可塑性
樹脂を適宜配合することもできる。
【0026】次に、以下に各種樹脂組成物を用いて本発
明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら
制限を受けるものではない。尚、部数およびパーセント
についてはいずれも重量基準で示した。
【0027】−ゴム強化スチレン系樹脂(A)− ABS樹脂:ポリブタジエンゴムラテックス(粒子径0.
35μ、ゲル90%)50部(固形分)、スチレン35
部およびアクリロニトリル15部を公知の乳化重合法に
より重合した。一方、別の反応器でスチレン70部およ
びアクリロニトリル30部を公知の乳化重合法により重
合した。その後、得られた重合体ラテックスを混合後、
塩析、脱水、乾燥を経てグラフト率55%のグラフト重
合体を含むゴム含有量15%のABS樹脂を得た。
【0028】AES樹脂:エチレン−プロピレン−エチ
リデンノルボルネンゴム(プロピレン含有量41%、ヨ
ウ素価15、ムーニー粘度65)50部、スチレン35
部およびアクリロニトリル15部を公知の懸濁重合法に
基づき重合を行い、脱水・乾燥処理した。一方、別の反
応器でスチレン70部とアクリロニトリル30部を公知
の乳化重合法に基づき重合を行い、塩析・乾燥処理し
た。両者を混合し、ゴム含有量15%のAES樹脂を得
た。
【0029】−化合物(B)− 化合物B ;2−メルカプトベンズイミダゾール
【0030】〃 b−1;2,6−ジ−第3ブチル−4
−メチルフェノール(商標登録スミライザ−BHT)
【0031】〃 b−2;2−第3ブチル−6−(3−
第3ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−
4−メチルフェニルアクリレート(商標登録スミライザ
ーGM)
【0032】〃 b−3;4,4’−ブチリデンビス
(3−メチル−6−第3ブチルフェノール)(商標登録
スミライザーWX−R)
【0033】実施例1〜8および比較例1〜10 得られたABS樹脂、AES樹脂および各種化合物を表
−1に示す配合比率(表中の単位は重量部)で混合した
のち、押出機で溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られ
た組成物を用いて評価に供した。評価結果を表−1に示
す。
【0034】評価方法は以下の通り。
【0035】(1)エアーブロー成形後の衝撃強度(k
g・cm) エアーブロー成形法(成形温度240℃)にて得られた
スポイラー成形品から切りだした55×55×3〜4m
mのテストピースを用い、室温にてデュポン衝撃強度を
測定した。 ○;100kg・cm以上 △;50〜100kg・cm ×;50kg・cm以下
【0036】(2)射出成形後の衝撃強度(kg・cm
/cm) 射出成形(成型温度240℃)にて得られた試験片をA
STM D−256に準拠し、ノッチ付アイゾット衝撃
強度を測定した。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】以上のとおり、本発明における樹脂組成
物は、エアーブロー成形時の酸化劣化が著しく改良さ
れ、機械的強度低下を防止できるものであり、エアーブ
ロー成形に好適に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 51/04 C08K 5/378 C08L 55/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重
    量部に対し、下記一般式(1)に示される化合物(B)
    0.05〜5重量部配合してなることを特徴とするブロ
    −成形用樹脂組成物。 【化1】
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