JP3309605B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

アンチスキッド制御装置

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JP3309605B2 JP30379994A JP30379994A JP3309605B2 JP 3309605 B2 JP3309605 B2 JP 3309605B2 JP 30379994 A JP30379994 A JP 30379994A JP 30379994 A JP30379994 A JP 30379994A JP 3309605 B2 JP3309605 B2 JP 3309605B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、制動時に各車輪に配設
された制動用シリンダの流体圧を最適状態に制御して、
車輪のロックを防止するアンチスキッド制御装置の改良
に関し、特に応急用タイヤ等の小径タイヤを装着した場
合でも制動距離を確保可能なアンチスキッド制御装置に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両の制動時における車輪のロックを防
止するアンチスキッド制御装置は、一般に、制御対象車
輪の車輪速を検出して、その車体速(誤差等の関係から
最大車輪速と等価であると判断される場合が多い)との
偏差の比からスリップ率を算出し、このスリップ率が、
制動距離の確保に有効とされるスリップ率の基準値であ
る基準スリップ率を越えるような場合には、制動用シリ
ンダへの流体圧を減圧し、この減圧によって当該車輪の
スリップ率が基準スリップ率以下となると再び制動用シ
リンダへの流体圧を増圧し、いわゆるポンピングブレー
キ的な操作を自動制御することによって制動力を調整制
御を行い、すなわち、車体速から基準スリップ率を満足
する目標車輪速が算出設定され、この目標車輪速を各車
輪速が越えているか否かにより制動力を調整制御してい
る。
【0003】一方、前記制御対象車輪のスリップ率の算
出に必要な車体速の設定、或いは、検出は、変速機の出
力軸回転速度等から得られる車体速が特に制動中におい
ては誤差を生じ易く、また、制動中にアクセルペダルの
踏み込みはないので駆動輪が実際の車体速を越えてスリ
ップしていることはないものとして、多くの場合には、
検出された各制御対象車輪速を用いて車体速を算出推定
するようにしており、例えば、制動中に駆動輪が車体速
を越えるスリップ状態にはなく、且つ、各制御対象車輪
のロックを確実に防止するということから、車体速の算
出推定は各制御対象車輪速の最大値を車体速として設定
するようにしている。
【0004】ところで、実際の車両走行においては、例
えば、タイヤのパンク等により応急タイヤを装着するこ
ともあり、一般に、普通乗用車の応急用タイヤは、初期
設定されている通常のタイヤよりも小径である。このよ
うな小径タイヤを装着した車輪の、車輪速センサ等によ
り検出された車輪速は、実際の車輪速が車軸回転角速度
から置換して算出されたものであるために、通常のタイ
ヤを装着した車輪速検出値よりも大きな値となる。例え
ば、直進走行時において実際に車体速が一定である場合
には、小径タイヤを装着した車輪の車軸の方が、実際の
小径タイヤ外周速度は同じであるが、通常のタイヤを装
着した車輪の車軸よりも速く回転しなければならないの
で、小径タイヤを装着した車輪の車軸回転角速度は、通
常のタイヤを装着した車輪の車軸回転角速度よりも大き
くなり、この大きな車軸回転角速度に通常タイヤの外半
径を乗じて置換算出される車輪速検出値は、その他の車
輪速検出値よりも大きな値となってしまう。したがっ
て、このように他の車輪速検出値よりも突出して大きな
車輪速検出値を最大車輪速検出値とし、算出推定された
車体速算出値は、実際の車体速よりも大きな値となって
しまう。
【0005】そして、このように実際の車体速よりも大
きな値で算出推定された車体速算出値を用いてアンチス
キッド制御を行う場合には、例えば、同等の基準スリッ
プ率を満足する車輪速の目標値(以下、目標車輪速とも
いう。)が、真の車体速に応じた目標車輪速よりも大き
な値になる。この目標車輪速は、例えば、アンチスキッ
ド制御においては、制動用シリンダへの流体圧の減圧開
始のための閾値であるから、特に車輪速検出値が車体速
算出値よりも常時小さい通常タイヤを装着した車輪にお
いては、制動後のアンチスキッド制御では、各車輪速検
出値の減少に伴って、この車輪速検出値が目標車輪速を
下回った時点で減圧が開始されることになり、真の車体
速に応じたアンチスキッド制御の減圧開始タイミングよ
りも、その減圧開始タイミングが早くなることになる。
また、例えば、この目標車輪速を、一旦、減圧を開始し
た後の車輪速増速復帰に伴う制動用シリンダへの流体圧
の増圧開始の閾値に設定したアンチスキッド制御におい
ては、車体速算出値と通常のタイヤを装着した車輪速と
の偏差が小さいために、ゆっくりとしたその車輪速が復
帰しないこともあって、アンチスキッド制御の増圧タイ
ミングが、真の車体速に応じたアンチスキッド制御の増
圧開始タイミングよりも遅くなることになる。
【0006】したがって、何れの制御態様のアンチスキ
ッド制御においても、特に通常のタイヤを装着した車輪
の制動用シリンダへの流体圧は小さめに設定されるか
ら、少なくとも、小径タイヤを装着した車輪以外の車輪
への制動力は小さくなり、結果的に車両の制動距離が大
きくなってしまう可能性がある。このような問題を解決
するためのアンチスキッド制御装置としては、例えば、
特開平2−169362号公報、或いは、特開平3−6
7764号公報に記載されるものが提案されており、例
えば、前者のアンチスキッド制御装置(以下、第1従来
例という。)においては、小径タイヤ装着異径車輪速に
代表される最大車輪速検出値を除く、その他の車輪速検
出値の最大偏差が所定の閾値以下であって、且つ、最大
車輪速検出値とその他の車輪速検出値の最大値、すなわ
ち、2番目に大きい車輪速検出値との偏差が所定の閾値
以上である状態が、所定の期間を越えて継続したとき
に、この最大車輪速検出値を車体速算出に用いないよう
にしたものである。また、最大車輪速検出値と第2車輪
速検出値との偏差が所定の閾値以下である状態が所定の
期間を越えて継続したときには、最大車輪速を用いた車
体速算出の禁止を解除するようにもしている。このアン
チスキッド制御装置によれば、少なくともアンチスキッ
ド制御が開始されるまでの車体速算出値は、小径タイヤ
装着異径車輪速を除いて算出推定されるので、駆動輪が
車体速を越えて大幅にスリップしているような状態を除
いては、算出推定される車体速算出値は真の車体速と等
価又はほぼ等価なものとすることが可能である。したが
って、この車体速算出値をアンチスキッド制御中にも用
いることができれば、少なくとも、通常のタイヤを装着
した車輪に対しては良好な制動用シリンダへの流体圧制
御によって制動力を最適な状態に制御することが可能で
ある。
【0007】また、後車のアンチスキッド制御装置(以
下、第2従来例という。)は、従来と同様に、前述のよ
うな小径タイヤ装着異径車輪速に代表される最大車輪速
検出値をも含んで、各車輪速検出値の最大値から車体速
を算出推定するが、この車体速算出値から所定速度差だ
け小さい値を、制動用シリンダへの流体圧の増圧開始の
閾値に設定すると共に、小径タイヤのような異径タイヤ
の装着を判定して異径タイヤの装着が判定されたときに
は、制動用シリンダへの流体圧の増圧開始閾値がより小
さくなるように、車体速算出値から減じられる所定速度
差を大きくするようにしてある。すなわち、この車体速
算出値から所定速度差が減じられた値が、目標車輪速に
相当している。
【0008】このアンチスキッド制御装置によれば、少
なくとも小径タイヤ等の異径タイヤを装着した車輪速検
出値、すなわち、最大車輪速検出値がその他の通常のタ
イヤを装着した車輪速検出値に対して所定の比率で大き
く、つまり、異径タイヤの通常タイヤに対する外径の比
が所定値で、且つ、通常時に車体速算出値から減じられ
る所定速度差に対する異径タイヤ装着時に減じられる所
定速度差の比が、このタイヤ外径比の逆比である場合に
は、例えば、小径タイヤ装着異径車輪速である最大車輪
速検出値から車体速を算出推定しても、実際の目標車輪
速は、真の車体速、すなわち、通常タイヤ装着車輪速検
出値に応じた小さな値となる。したがって、一旦、減圧
を開始した後の車輪速増速復帰に伴う制動用シリンダへ
の流体圧の増圧開始の閾値であるこの小さな目標車輪速
までは、真の車体速と車輪速との偏差が大きいためにこ
の車輪速が速やかに増速復帰することもあって、アンチ
スキッド制御の増圧タイミングが、所定速度差を一定と
して算出された大きな値の目標車輪速に応じたアンチス
キッド制御の増圧開始タイミングよりも早くなることに
なる。
【0009】したがって、少なくとも通常タイヤ装着車
輪に対するアンチスキッド制御による流体圧は、大きめ
に算出推定される車体速算出値をそのまま用いたときよ
りも良好に制御されて、制動力を最適な状態に制御する
ことも可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のアンチスキッド制御装置においては、例えば、前記
第1従来例では、最大車輪速検出値と第2車輪速検出値
との偏差が所定の閾値以下となるまでこの最大車輪速検
出値をネグレクトして車体速を算出推定するために、ア
ンチスキッド制御に必要な車体速算出のための車輪速検
出値が一つ減ることになり結果的にアンチスキッド制御
が不確実なものになる可能性がある。例えば、小径タイ
ヤ装着車輪以外の全ての車輪がロックする或いはロック
傾向を示したとき、それらの車輪速検出値から得られる
第2車輪速検出値と小径タイヤ装着車輪速である最大車
輪速検出値との偏差は、より大きくなって所定の閾値以
下とはならないから、最大車輪速検出値はネグレクトさ
れた状態で車体速が算出推定される。そして、この状態
では、車体速算出値は真の車体速よりもどんどん小さな
値となってしまい、この車体速算出値を用いて基準スリ
ップ率を満足するように算出設定される目標車輪速も小
さな値となる。
【0011】よって、この目標車輪速を、例えば、前述
のアンチスキッド制御の制動用シリンダへの流体圧の減
圧開始のための閾値に設定すると、制動後のアンチスキ
ッド制御において、各車輪速検出値の減少に伴って目標
車輪速も小さくなるために、各車輪速検出値は目標車輪
速を下回りにくくなって、減圧開始タイミングが真の車
体速に応じたアンチスキッド制御の減圧開始タイミング
よりも遅れる。
【0012】また、例えば、この目標車輪速を、一旦、
減圧を開始した後の車輪速増速復帰に伴う制動用シリン
ダへの流体圧の増圧開始の閾値に設定したアンチスキッ
ド制御においては、制御対象車輪速がこの目標車輪速ま
で直ぐに増速復帰してしまうので、アンチスキッド制御
の増圧タイミングが、真の車体速に応じたアンチスキッ
ド制御の増圧開始タイミングよりも早くなることにな
る。
【0013】よって、何れの制御態様のアンチスキッド
制御においても、小径タイヤ装着異径車輪を含む各制御
対象車輪の制動用シリンダへの流体圧は大きめに設定さ
れるので、各車輪速を基準スリップ率を満足する領域に
制御できなくなる可能性がある。また、前記第2従来例
では、小径タイヤ装着異径車輪速のような最大車輪速検
出値を用いた車体速の算出推定は、異径タイヤ装着判定
時には、この車体速算出値に対する所定速度差を大きく
して、制動用シリンダへの流体圧の増圧の閾値である目
標車輪速を小さく設定するものであるが、例えば、この
特開平3−67764号公報に記載されるように通常タ
イヤ装着車輪速のみに基づく車体速算出値から減じられ
る所定速度差を3km/h、異径タイヤ装着車輪速にも
基づく車体速算出値から減じられる所定速度差を10k
m/hといったように一意に設定してしまうと、この異
径タイヤ装着車輪速である最大車輪速検出値から得られ
た車体速算出値が、これを除くその他の車輪速検出値か
ら得られる真の車体速と等価又はほぼ等価な車体速算出
値に対して、この所定速度差の逆比でない場合には、こ
れらの所定速度差を用いて算出される制動用シリンダへ
の流体圧の増圧開始閾値である目標車輪速は、通常タイ
ヤと異径タイヤとの外径比を正確に反映していないもの
となるから、この目標車輪速に基づいて流体圧、すなわ
ち、制動力を制御した場合には、少なくとも通常のタイ
ヤを装着した車輪に対しては基準スリップ率を満足する
車輪速領域に制御できない可能性がある。また、異径タ
イヤを装着した車輪速検出値に対しては何らの対応も講
じられていないために、この目標車輪速に対して単に、
異径タイヤ装着車輪速の大小だけで流体圧、すなわち、
制動力を制御したのでは、基準スリップ率を満足する車
輪速は全く考慮されていない関係からこの基準スリップ
率を満足する車輪速領域への制御は困難なものとなる。
【0014】そこで、この発明は上記従来の未解決の課
題に着目してなされたものであり、小径タイヤを装着し
た場合でも舵取り効果や制動距離の確保可能なアンチス
キッド制御装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に関わるアンチスキッド制御装置は、図1
の基本構成図に示すように、複数の車輪の速度を検出す
る車輪速検出手段と、該車輪速検出手段の車輪速検出値
に基づいて擬似車体速を算出する擬似車体速算出手段
と、該擬似車体速算出手段の擬似車体速と前記車輪速検
出手段の車輪速検出値とから得られる当該車輪のスリッ
プ率が基準スリップ率に保たれると共に、当該制御対象
となる車輪のロックを防止するために、各車輪に配設さ
れた制動用シリンダの流体圧を制御する制動圧制御手段
とを備えたアンチスキッド制御装置において、前記車輪
速検出手段で検出された車輪速検出値のうちの最大車輪
速検出値を通常のタイヤより小径のタイヤが装着された
異径車輪の車輪速であるとし、少なくとも前記制動圧制
御手段が制動用シリンダへの流体圧を制御していないと
きに前記最大車輪速検出値とその他の各車輪速検出値と
から得られる速度誤差率に基づいて補正値を設定する補
正値設定手段と、該補正値設定手段の補正値に基づいて
前記異径車輪の車輪速検出値と該異径車輪の基準スリッ
プ率とを小さく補正する異径車輪補正手段とを備えるこ
とを特徴としている。
【0016】また請求項2に関わるアンチスキッド制御
装置は、図2の基本構成図に示すように、複数の車輪の
速度を検出する車輪速検出手段と、該車輪速検出手段の
車輪速検出値に基づいて擬似車体速を算出する擬似車体
速算出手段と、該擬似車体速算出手段の擬似車体速と前
記車輪速検出手段の車輪速検出値とから得られる当該車
輪のスリップ率が基準スリップ率に保たれると共に、当
該制御対象となる車輪のロックを防止するために、各車
輪に配設された制動用シリンダの流体圧を制御する制動
圧制御手段とを備えたアンチスキッド制御装置におい
て、前記車輪速検出手段で検出された車輪速検出値のう
ちの最大車輪速検出値を通常のタイヤより小径のタイヤ
が装着された異径車輪の車輪速であるとし、少なくとも
前記制動圧制御手段が制御用シリンダへの流体圧を制御
していないときに前記最大車輪速検出値とその他の各車
輪速検出値とから得られる速度誤差率に基づいて補正値
を設定する補正値設定手段と、該補正値設定手段の補正
値に基づいて前記異径車輪を除く前記通常タイヤを装
着した通常車輪の基準スリップ率を大きく補正する通常
車輪補正手段とを備えたことを特徴としている。
【0017】また、請求項3に関わるアンチスキッド制
御装置は、上記請求項1又は2記載の補正値設定手段
は、前記速度誤差率と前記擬似車体速算出手段の擬似車
体速とに基づいて補正値を設定することを特徴としてい
る。さらに、請求項4に関わるアンチスキッド制御装置
は、上記請求項1乃至3の何れかに記載の補正値設定手
段は、前記速度誤差率と前記擬似車体速算出手段に応じ
て設定されるしきい値とに基づいて補正を行う必要があ
るか否かを判定する判定手段を備え、該判定手段で補正
する必要があると判定したとき補正値を設定することを
特徴としている。
【0018】
【作用】請求項1に関わるアンチスキッド制御装置は、
車輪速検出手段で検出した車輪速検出値のうちの最大車
輪速検出値を通常のタイヤよりも小径のタイヤが装着さ
れた異径車輪の車輪速であるものとし、制動圧制御手段
において制動用シリンダへの流体圧を制御していないと
きに、最大車輪速検出値とその他の車輪速検出値とから
得られる速度誤差率に基づいて補正値設定手段によって
補正値を設定し、補正値設定手段の補正値をもとに異径
車輪補正手段によって異径車輪であると判定した異径車
輪速検出値を小さく補正することにより通常タイヤを装
着した車輪速とほぼ同等の車輪速に補正し、補正したこ
れら各車輪速をもとに擬似車体速算出手段で擬似車体速
を算出することによって擬似車体速を真の車体速とほぼ
同等に補正し、また、異径車輪に対応する基準スリップ
率を小さく補正して異径車輪のタイヤ特性に応じた基準
スリップ率に補正することによって、制動圧制御手段で
は、異径車輪に対しては真の車体速と異径車輪のタイヤ
特性に応じた基準スリップ率とをもとに制動圧制御を行
い、また、異径車輪ではない通常車輪に対しては真の車
体速と通常車輪のタイヤ特性に応じて設定された基準ス
リップ率とをもとに制動圧制御を行うことによって車輪
のロックを確実に防止すると共に舵取り効果や制動確保
を行うことができる。
【0019】また、請求項2に関わるアンチスキッド制
御装置は、車輪速検出手段で検出した車輪速検出値のう
ちの最大車輪速検出値を通常のタイヤよりも小径のタイ
ヤが装着された異径車輪の車輪速であるものとし、制動
圧制御手段において制動用シリンダへの流体圧を制御し
ていないときに、最大車輪速検出値とその他の車輪速検
出値とから得られる速度誤差率に基づいて通常車輪補正
手段によって、異径車輪であると判定した以外の車輪、
すなわち、通常のタイヤが装着された通常車輪に相当す
る基準スリップ率を大きく補正することによって、異径
車輪に対しては異径車輪のタイヤ特性に応じた擬似車体
速及び基準スリップ率に基づいて制動圧制御を行い、通
常車輪に対しては、真の車体速よりも大きい異径車輪の
タイヤ特性に応じた擬似車体速と、擬似車体速が真の車
体速よりも大きく設定されているのに対して通常車輪補
正手段によって通常車輪の車輪特性に応じて補正した基
準スリップ率とに基づいて制動圧制御手段によって制動
圧制御を行うことにより、車輪のロックを確実に防止す
ると共に舵取り効果や制動確保を行うことができる。
【0020】また、請求項3に関わるアンチスキッド制
御装置は、補正値設定手段では、擬似車体速算出手段の
擬似車体速と速度誤差率とをもとに補正値を設定してい
るので、例えば、速度誤差率が同一である場合でも、車
体速が小さい場合にはそれほど補正する必要はないので
補正値は小さく設定し、車体速が大きい場合には速度誤
差率と車体速とに応じて補正値を大きく設定することに
よって、車体速に応じて必要とする的確な補正値を設定
することによってアンチスキッド制御をより確実に行
う。
【0021】また、請求項4に関わるアンチスキッド制
御装置は、補正値設定手段では、速度誤差率と擬似車体
速算出手段の擬似車体速に応じたしきい値とに基づいて
補正を行う必要があるか否かを判定手段によって判定し
ているので、例えば、速度誤差率が、その時点での擬似
車体速に応じた速度誤差率のしきい値の範囲内にあるか
否かを判定し、しきい値の範囲内にある場合には、補正
する必要がないものとして補正値を零に設定し、速度誤
差率がしきい値の範囲内にない場合には、速度誤差率と
擬似車体速とに応じた補正値を設定し、設定した補正値
に基づいて補正を行うことによって、補正する必要がな
い場合等には補正を行わず、必要とする場合にのみ補正
を行うようにすることにより、アンチスキッド制御をよ
り確実に行う。
【0022】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図3は、本発明の第1実施例を示す概略構成図
であり、本発明によるアンチスキッド制御装置をFR方
式の車両に適用した場合の構成を示したものである。図
中、1FL,1FRは前輪(従動輪)、1RL,1RR
は後輪(駆動輪)であり、後輪1RL,1RRには、エ
ンジンEGの回転駆動力が変速機T、プロペラシャフト
PS及びディファレンシャルギヤDGを介して伝達され
るようになされている。
【0023】各車輪1FL〜1RRには、それぞれ制動
用のシリンダとしてのホイールシリンダ2FL〜2RR
が配設されていると共に、各前輪1FL,1RRには、
これら車輪の車輪回転数に応じた正弦波信号SiFL ,S
iFR を出力する車輪速センサ3FL,3FRが取り付け
られ、また、プロペラシャフトPSには、後輪1RL,
1RRの平均回転数に応じた正弦波信号SiRを出力する
車輪速センサ3Rが取り付けられ、さらに、各車輪速セ
ンサ3FL〜3Rには車輪速演算回路15FL〜15R
が接続されている。そして、これら車輪速センサ3FL
〜3Rが車輪速検出手段に対応している。
【0024】そして、各前輪側のホイールシリンダ2F
L,2FRには、ブレーキペダル4の踏み込みに応じて
2系統のマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ5
からの一方のマスタシリンダ圧が、前輪側のアクチュエ
ータ6FL,6FRを介して個別に供給されるようにな
されていると共に、後輪側のホイールシリンダ2RL,
2RRには、マスタシリンダ5からの他方のマスタシリ
ンダ圧が共通の後輪側のアクチュエータ6Rを介して供
給されるようになされている。
【0025】アクチュエータ6FL〜6Rのそれぞれ
は、図4に示すように、マスタシリンダ5に接続される
油圧配管7及びホイールシリンダ2FL〜2RR間に介
挿された電磁流入弁8と、この電磁流入弁8に対して並
列に接続された電磁流出弁9、油圧ポンプ10及び逆止
弁11からなる直列回路と、電磁流出弁9及び油圧ポン
プ10間の油圧配管に接続されたアキュムレータ12と
を備えている。
【0026】そして、各アクチュエータ6FL〜6Rの
電磁流入弁8,電磁流出弁9及び油圧ポンプ10は、車
輪速センサ3FL〜3Rの車輪速正弦波信号SiFL 〜S
iRが入力されるコントローラCRからの液圧制御信号E
V,AV及びMRによって制御され、電磁流入弁8は、
液圧制御信号EVが論理値“0”であるときに開状態、
論理値“1”であるときに閉状態となるように構成され
ている。逆に、電磁流出弁9はコントローラCRからの
液圧制御信号AVが論理値“0”であるときに閉状態、
論理値“1”であるときに開状態となるように構成され
ている。そして油圧ポンプ10はコントローラCRから
の制御信号MRが“1”であるときに回転駆動状態とな
るように構成されている。
【0027】前記コントローラCRは、車輪速センサ3
FL〜3Rの車輪速正弦波信号SiF L 〜SiRをもとに車
輪速VwFL〜VwR を算出する車輪速演算回路15FL
〜15Rと、車輪速演算回路15FL〜15Rからの車
輪速VwFL〜VwR に対して時間制限フィルタ処理を行
う車輪速フィルタ16FL〜16Rと、車輪速フィルタ
16FL〜16Rからの車輪速VfFL〜VfR をもとに
擬似車速Viを算出し、この擬似車速Viと車輪速演算
回路15FL〜15Rからの車輪速VwFL〜VwR とを
もとに制動時のアンチスキッド制御を行う制動圧制御手
段としての制動圧制御装置18とから構成される。
【0028】そして、車輪速演算回路15FL〜15R
は、車輪速センサ3FL〜3Rの車輪速正弦波信号S
iFL 〜SiRを入力し、これら車輪速正弦波信号SiFL
iRと各車輪1FL〜1RRの回転半径とから車輪の周
速度を算出し、これを車輪速VwFL〜VwR として車輪
速フィルタ16FL〜16R及び制動圧制御装置18に
出力する。なお、各車輪1FL〜1RRの回転半径とし
ては、通常のタイヤ、すなわち、初期設定されたタイヤ
の外半径が用いられているものとする。
【0029】ここで、車輪速センサ3FL〜3Rは、前
記各車軸やプロペラシャフトに取り付けられてそれらと
等角速度で回転するディスクの外周にセレーション状の
歯を形成し、各車軸やプロペラシャフトと共にディスク
が回転すると、このディスクの歯に対向するコイルに磁
界強度の変化が発生し、この磁界強度の変化を例えば電
圧の変化で検出すれば、この電圧変化が各ディスクの回
転速度に応じた周波数の正弦波状信号となって検出され
るようになされている。
【0030】したがって、各車輪速演算回路15FL〜
15Rでは、例えば、この各ディスクの回転速度に応じ
た周波数の正弦波状信号を波形整形してパルス化し、さ
らに、ディスクの半径で除せば、各前車軸やプロペラシ
ャフトの回転各速度が得られるので、この回転角速度に
通常タイヤの外周の半径を乗じて通常タイヤ装着車輪速
を得ることができる。
【0031】車輪速フィルタ16FL〜16Rのそれぞ
れは、例えば、図5に示すように、車輪速演算回路15
j(j=FL〜R)からの車輪速Vwj を車輪速サンプ
リング値Vsとして保持するサンプルホールド回路16
1と、オペアンプで構成され入力電圧Eを積分する積分
回路162と、この積分回路162の積分出力Veとサ
ンプルホールド回路161の車輪速サンプリング値Vs
とを加算してフィルタ出力Vfj を算出する加算回路1
63と、車輪速Vwj がフィルタ出力Vfj に対して予
め設定した所定の不感帯幅内、すなわち、Vfj −1k
m/h<Vwj<Vfj +1km/hであるか否かを検
出し、Vfj −1km/h<Vwj <Vfj +1km/
hであるとき出力C1及びC2を共に低レベルとし、V
j ≧Vfj +1km/hであるときに、出力C1を高
レベルとし、Vwj ≦Vfj −1km/hであるときに
出力C2を高レベルとする不感帯検出回路164と、こ
の不感帯検出回路164で車輪速Vwj が不感帯幅内と
なったとき及びイグニッションスイッチのオン信号IG
が入力されたときに、前記サンプルホールド回路161
で車輪速Vwj を保持させると共に、積分回路162を
リセットするリセット信号SRを出力するリセット回路
165と、車体速Vwj が不感帯幅内にあるとき及び不
感帯幅外となってからオフディレータイマ166で設定
された所定時間T3 の間、積分入力電圧Eとして零電圧
を積分回路162に供給し、Vwj >Vfj +1km/
hとなってから所定時間T3 経過後に、非アンチスキッ
ド制御中は+0.4Gに対応する負の電圧を、アンチス
キッド制御中は+10Gに対応する負の電圧をそれぞれ
積分入力電圧Eとして積分回路162に供給し、さら
に、Vwj <Vfj −1km/hとなってから所定時間
3 経過後に−1.2Gに対応する正の電圧を積分入力
電圧Eとして積分回路162に供給する選択回路167
とを備えている。そして、積分回路162は、リセット
回路165からのリセット信号SR によりリセットさ
れ、リセット信号SR が消失した後電圧Eを積分し続
け、サンプルホールド回路161はリセット回路165
からのリセット信号SR によりリセットされ、そのとき
の車輪速度Vwj をサンプリング値として記憶し続け、
これを加算回路163に出力し、サンプルホールド回路
161からのサンプリング値Vsと積分回路162から
の積分値Veとを加算し、これをフィルタ処理後の車輪
速度Vfj として制動圧制御装置18に出力する。
【0032】制動圧制御装置18は、図3に示すよう
に、例えば、少なくとも、A/D変換機能を有する入力
インタフェース回路25aと、D/A変換機能を有する
出力インタフェース25dと、演算処理装置25bと、
記憶装置25cとを有するマイクロコンピュータ25で
構成され、車輪速フィルタ16FL〜16Rにおいてフ
ィルタ処理した各車輪速VfFL〜VfR に基づいて擬似
車速Viを算出し、この擬似車速Vi及び車輪速演算回
路15FL〜15Rからの車輪速VwFL〜VwRに基づ
いてスリップ判断を行うと共に、各車輪速VwFL〜Vw
R をもとに車輪加減速度V′wj を算出し、スリップ判
断の判断結果と算出した車輪加減速度V′wj とをもと
に図7に示すアンチスキッド制御マップを参照して各車
輪1FL〜1RRに対する制御モードを、保持モード,
増圧モード,減圧モード等に設定し、所定の制御信号E
V,AV及びMRを形成して各アクチュエータ6FL〜
6Rに出力し、アンチスキッド制御処理を行う。また、
車輪速フィルタ16FL〜16Rからのフィルタ処理し
た各車輪速VfFL〜VfR をもとに速度誤差率としての
径差比εを求め、この径差比εと擬似車速Vi(n−
1)とに応じて、例えば、応急用タイヤ等の小径タイヤ
等を装着しており補正する必要があるか否かを判定し、
補正する必要があるとき、擬似車速Vi(n−1)と径
差比εとに応じた補正値ΔVK により小径タイヤの車輪
速を補正することによって擬似車速Viを真の車体速と
同等又はほぼ同等に補正すると共に、小径タイヤ装着車
輪に対する基準スリップ率を補正し、この基準スリップ
率を満足するように算出設定される目標車輪速を補正
し、小径タイヤ装着車輪に対する制動圧制御を的確に行
うよう補正処理を行う。
【0033】次に、制動圧制御装置18での処理手順を
図6及び図8に示すフローチャートに基づいて説明す
る。図6は、制動圧制御装置18でのアンチスキッド制
御処理の処理手順を示すフローチャートであり、このア
ンチスキッド制御処理は、所定時間、例えば、5mse
c毎のタイマ割り込み処理として実行される。
【0034】そして、フローチャート中、ASはアンチ
スキッド制御フラグ、Tは減圧タイマを示し、これらは
キースイッチのオンによる電源投入時及び前回のアンチ
スキッド制御の終了時に、ステップS9からステップS
11に移行してリセットされる。そして、図6の処理が
開始されると、制動圧制御装置18では、まず、ステッ
プS1で記憶装置25cの所定の記憶領域に記憶した各
車輪速演算回路15FL〜15Rからの車輪速Vw
j (n)及び前回の車輪速Vwj (n−1)(j=FL
〜R)と、後述の補正処理において算出し所定の記憶領
域に記憶している擬似車速Vi(n)とを読み込む。
【0035】次いで、ステップS2に移行し、ステップ
S1で読み込んだ前回の車輪速Vw j (n−1)から今
回の車輪速Vwj (n)を減算して単位時間当たりの車
輪速変化量、すなわち、車輪加減速度V′wj (j=F
L,FR,R)を算出し、これを記憶装置25cの所定
の記憶領域に格納する。そして、ステップS3に移行
し、ステップS1で読み込んだ擬似車速Vi(n)と、
今回の車輪速Vwj (n)とをもとに次の(1)式の演
算を行って、各輪毎にスリップ率Sj (j=FL,F
R,R)を算出する。
【0036】 Sj ={(Vi−Vwj )/Vi}×100 ……(1) 次いで、ステップS4に移行し、ステップS3で算出さ
れた各スリップ率Sjと、後述の補正処理で設定し記憶
装置25cの所定の記憶領域に記憶している基準スリッ
プ率SjO(j=FL〜R)とが、Sj ≧SjO(j=FL
〜R)であるか否かを判定し、Sj ≧SjO(j=FL〜
R)である場合にはステップS5に移行し、Sj ≧SjO
(j=FL〜R)でない場合にはステップS6に移行す
る。
【0037】前記ステップS5では、ステップS2で算
出された各車輪加減速度V′wj と予め設定された正の
車輪加減速度閾値βとが、V′wj ≧βであるか否かを
判定し、V′wj ≧βである場合にはステップS7に移
行し、V′wj ≧βでない場合にはステップS8に移行
する。前記ステップS7では、減圧タイマTをT=0に
リセットした後、ステップS9に移行する。
【0038】また、前記ステップS8では、減圧タイマ
Tを所定値TO にセット(T=TO)すると共に、アン
チスキッド制御フラグASをAS=1にセットした後、
ステップS9に移行する。一方、前記ステップS6で
は、減圧タイマTがT>0であるか否かを判定し、T>
0である場合にはステップS10に移行し、T>0でな
い場合にはステップS9に移行する。
【0039】前記ステップS10では、現在の減圧タイ
マTから“1”を減じた値を新たな減圧タイマTとして
(T=T−1)、これを記憶装置25cの所定の記憶領
域に記憶した後ステップS9に移行する。このステップ
S9では、例えば、車両が停止近傍の速度になったと
き、緩増圧モードの選択回数が所定値以上となった時な
どの制御終了条件を満足する状態であるか、すなわち、
アンチスキッド制御を終了できるか否かを判定し、アン
チスキッド制御終了可能である場合にはステップS11
に移行し、アンチスキッド制御終了不可である場合には
ステップS12に移行する。
【0040】前記ステップS11では、減圧タイマTを
T=0にリセットすると共に、アンチスキッド制御フラ
グASをAS=0にリセットした後、ステップS13に
移行する。また、前記ステップS12では、減圧タイマ
TがT>0であるか否かを判定し、T>0である場合に
はステップS14に移行し、T>0でない場合にはステ
ップS15に移行する。
【0041】このステップS15では、ステップS2で
算出された車輪加減速度V′wj と予め設定された閾値
βとが、V′wj ≧βであるか否かを判定し、V′wj
≧βである場合にはステップS16に移行し、V′wj
≧βでない場合にはステップS17に移行する。そし
て、ステップS16では、アンチスキッド制御フラグA
SがAS=0、すなわち、リセット状態であるか否かを
判定し、AS=0である場合にはステップS13に移行
し、AS=0でない場合にはステップS20に移行す
る。
【0042】一方、前記ステップS17では、ステップ
S2で算出された車輪加減速度V′wj と予め設定され
た負の車輪加減速度閾値αとがV′wj ≦αであるか否
かを判定し、V′wj ≦αである場合にはステップS1
8に移行し、V′wj ≦αでない場合にはステップS1
9に移行する。このステップS19では、アンチスキッ
ド制御フラグASがAS=0のリセット状態であるか否
かを判定し、アンチスキッド制御フラグASがAS=0
である場合にはステップS13に移行し、AS=0でな
い場合にはステップS21に移行する。
【0043】そして、前記ステップS13では、制御対
象車輪1FL〜1RRの各ホイールシリンダ2FL〜2
RRへの制動圧を急増圧モードに設定してからメインプ
ログラムに戻る。また、前記ステップS14では、制御
対象車輪1FL〜1RRの各ホイールシリンダ2FL〜
2RRへの制動圧を減圧モードに設定してからメインプ
ログラムに戻る。
【0044】また、前記ステップS18では、制御対象
車輪1FL〜1RRの各ホイールシリンダ2FL〜2R
Rへの制動圧を高圧保持モードに設定してからメインプ
ログラムに戻る。また、前記ステップS20では、制御
対象車輪1FL〜1RRの各ホイールシリンダ2FL〜
2RRへの制動圧を低圧保持モードに設定してからメイ
ンプログラムに戻る。
【0045】また、前記ステップS21では、制御対象
車輪1FL〜1RRの各ホイールシリンダ2FL〜2R
Rへの制動圧を緩増圧モードに設定してからメインプロ
グラムに戻る。したがって、この演算処理の作用を図7
のアンチスキッド制御マップにしたがって簡潔に説明す
ると、基準スリップ率SjO(初期設定される基準スリッ
プ率S jOは通常のタイヤの舵取り効果及び制動距離の確
保可能な15%程度である。)未満であり、且つ、制御
フラグAS及び減圧タイマTが共に“0”であり、車輪
加減速度V′wj が予め設定された負の加減速度閾値α
及び正の加減速度閾値βの間、すなわち、α<V′wj
<βである非制動時及び制動初期時には、ステップS
9,S11、又は、ステップS15,S17,S19を
経て、ステップS13でアクチュエータ6FL〜6Rの
圧力をマスタシリンダ5の圧力に応じた圧力とする急増
圧モードに設定する。この急増圧モードでは、アクチュ
エータ6FL〜6Rの電磁流入弁8を開状態に、電磁流
出弁9を閉状態にそれぞれ制御する。
【0046】そして、制動状態となると車輪速Vwj
徐々に減少し、これに応じて車輪加減速度V′wj が負
の加減速度閾値αを越えると、ステップS17からステ
ップS18に移行し、ホイールシリンダ2FL〜2RR
の内圧を一定値に保持する高圧側の保持モードとなる。
この高圧側保持モードでは、アクチュエータ6FL〜6
Rの電磁流入弁8を閉状態に、電磁流出弁9を閉状態に
それぞれ制御し、ホイールシリンダ2FL〜2RRの内
圧をその直前の圧力に保持する。
【0047】しかしながら、この保持モードにおいても
車輪に対して制動力が作用しているので、図7の曲線に
示すように車輪加減速度V′wj が減少すると共に、ス
リップ率Sj が増加する。そして、各輪のスリップ率S
j が前記各輪の基準スリップ率SjOを越え、且つ、車輪
加減速度V′wj が正の加減速度閾値β未満を維持して
いるときには、ステップS4からステップS5を経てス
テップS8に移行して、減圧タイマTを予め設定された
所定値TO にセットすると共に制御フラグASを“1”
にセットし、これに応じて論理値“1”の制御中信号M
Rを出力してアクチュエータ6FL〜6Rの油圧ポンプ
10を作動状態とする。このため、ステップS12から
ステップS14に移行し、アクチュエータ6FL〜6R
の圧力を徐々に減圧する減圧モードとなる。この減圧モ
ードでは、アクチュエータ6FL〜6Rの電磁流入弁8
を閉状態、電磁流出弁9を開状態として、ホイールシリ
ンダ2FL〜2RRに保持されている圧力を電磁流出弁
9、油圧ポンプ10及び逆止弁11を介してマスタシリ
ンダ5側に戻し、ホイールシリンダ2FL〜2RRの内
圧を減少させる。
【0048】この減圧モードになると、車輪に対する制
動力が緩和されるが、車輪速Vwjはしばらくは減少状
態を維持し、このため図7の曲線に示すように車輪加減
速度V′wj はさらに負の方向に減少し、且つ、スリッ
プ率Sj は増加傾向を継続するが、その後、車輪速Vw
j の減少率が低下して加速状態に移行する。これに応じ
て車輪加減速度V′wj が正方向に増加し、車輪加減速
度V′wが正の加減速度閾値β以上となると、前記ステ
ップS4からステップS5を経てステップS7に移行す
る。このステップS7では、減圧タイマTを“0”にリ
セットしてから前記ステップS9に移行する。したがっ
て、ステップS12の判定でT=0となるのでステップ
S15に移行し、V′wj ≧βであるのでステップS1
6に移行し、制御フラグがAS=0であるので、ステッ
プS20に移行し、アクチュエータ6FL〜6Rの圧力
を低圧側で保持する低圧側の保持モードに移行する。
【0049】この低圧側の保持モードでは、前記高圧側
の保持モードと同様に制御信号EVを論理値“1”、制
御信号AVを論理値“0”に制御してホイールリンダ2
FL〜2RRの内圧をその直前の圧力に保持する。この
低圧側の保持モードにおいても、車輪に対しては制動力
が作用しているので、車輪速Vwj の増加率は徐々に減
少し、車輪加減速度V′wj が正の加減速度閾値β未満
となると、ステップS15からステップS17に移行
し、V′wj >αであるので、ステップS19に移行
し、このとき制御フラグASはAS=1であるのでステ
ップS21に移行する。
【0050】このステップS21ではマスタシリンダ5
からの圧力作動油を間欠的にホイールシリンダ2FL〜
2RRに供給し、このホイールシリンダ2FL〜2RR
の内圧がステップ状に増圧されて緩増圧モードとなる。
この緩増圧モードでは、アクチュエータ6FL〜6Rに
対する制御信号EVを論理値“0”及び論理値“1”に
所定間隔で繰り返すと共に、制御信号AVを論理値
“0”として、アクチュエータ6FL〜6Rの電磁流入
弁8を所定間隔で開閉し、電磁流出部9を閉状態とする
ことにより、ホイールシリンダ2FL〜2RRの内圧を
徐々にステップ状に増圧する。
【0051】この緩増圧モードとなると、ホイールシリ
ンダ2FL〜2RRの圧力上昇が緩やかとなるので、車
輪1FL〜1RRに対する制動力が徐々に増加し、車輪
1FL〜1RRが減速状態となって車輪速Vfj も減少
する。その後、車輪加減速度V′wj が負の加減速度閾
値α未満となるとステップS17からステップS18に
移行して高圧側の保持モードとなり、その後、各輪のス
リップ率Sj が基準スリップ率SjO以上となると、ステ
ップS4からステップS5を経てステップS8に移行
し、次いでステップS9、S12を経てステップS14
に移行して減圧モードとなり、以後、低圧保持モード、
緩増圧モード、高圧保持モード、減圧モードが繰り返さ
れて、アンチスキッド効果を発揮することができる。
【0052】なお、車両の速度がある程度低下したとき
には、減圧モードにおいてスリップ率Sj が基準スリッ
プ率SjO未満に回復する場合があり、このときにはステ
ップS4からステップS6に移行し、上記のように、減
圧モードを設定するステップS8で減圧タイマTが所定
値TO にセットされているので、ステップS10に移行
して減圧タイマTの所定設定値を“1”だけ減算してか
らステップS9に移行することになる。よってこのステ
ップS6からステップS10に移行する処理を繰り返し
て減圧タイマTが“0”となると、ステップS9〜S1
9を経てステップS21に移行して緩増圧モードに移行
し、次いで、高圧側の保持モードに移行してから減圧モ
ードに移行する、すなわち、破線で示すように制動圧制
御が実行されることになる。
【0053】そして、車両が停止近傍の速度になったと
き、緩増圧モードの選択回数が所定値以上となったとき
等の制御終了条件を満足する状態となったときには、ス
テップS9の判断によって制御終了と判断されるので、
このステップS9からステップS11に移行して減圧タ
イマT及び制御フラグASそれぞれ“0”にリセットし
てからステップS13に移行して、急増圧モードとして
からアンチスキッド制御を終了する。
【0054】次に、図8に示すフローチャートに基づい
て制動圧制御装置18での補正処理の処理手順を説明す
る。この補正処理は、前述のアンチスキッド制御処理よ
りも高い優先順位で実行され、所定時間、例えば、5m
sec毎のタイマ割り込み処理として実行される。この
補正処理では、まず、ステップS31で前述のアンチス
キッド制御処理において所定の記憶領域に記憶した各輪
に対するアンチスキッド制御フラグASを読み込み、次
いでステップS32に移行して、このアンチスキッド制
御フラグが全てAS=0であるか否かを判定する。そし
て、AS=0である場合にはステップS34に移行し、
AS=0でない場合にはステップS42に移行する。
【0055】そして、ステップS34では、車輪速フィ
ルタ16FL〜16Rからの車輪速Vfj (j=FL〜
R)を読み込み、次いで、ステップS36で、これら車
輪速VfFL,VfFR,VfR の中から最大となる最大車
輪速VfMAX を下記(2)式にしたがって選出し、ま
た、最大車輪速VfMAX に相当する車輪位置を補正対象
車輪Pとして設定し、記憶装置25cの所定の記憶領域
に更新記憶した後ステップS38に移行する。なお、
(2)式中、MAXは最大値選出を意味する。
【0056】 VfMAX =MAX(VfFL,VfFR,VfR ) ……(2) 次いで、ステップS38では、前記ステップS34で読
み込んだ車輪速VfFL,VfFR,VfR の中から2番目
に大きい第2車輪速Vf2ND を、下記(3)式にしたが
って選出してからステップS40に移行する。なお、
(3)式中、MIDは中央値選出を意味する。
【0057】 Vf2ND =MID(VfFL,VfFR,VfR ) ……(3) ステップS40では、下記(4)式に基づいて、径差比
εを算出し所定の記憶領域に記憶した後、ステップS4
2に移行する。 ε=(VfMAX −Vf2ND )/VfMAX ……(4) ステップS42では、記憶装置25cの所定の記憶領域
に記憶している前回の擬似車速Vi(n−1)を読み込
み、この擬似車速Vi(n−1)に基づいて許容値ΔK
を設定する。この許容値ΔKは、車体速増速に伴うトラ
クションロスを想定して設定するものである。
【0058】これは、例えば、Vi(n−1)<10k
m/hである場合にはΔK=0.24、10km/h≦
Vi(n−1)<80km/hである場合にはΔK=
2.4/Vi、80km/h<Vi(n−1)である場
合にはΔK=0.030として設定される。次いで、ス
テップS44に移行し、下記(5)式に基づいて、許容
偏差KPを算出し、ステップS46に移行する。
【0059】 KP=ε−ΔK ……(5) このステップS46では、補正処理フラグFFがFF=
1であるか否かを判定し、FF=1である場合にはステ
ップS70に移行し、FF=1でない場合にはステップ
S48に移行する。このステップS48では、所定の補
正処理開始条件を満足しているか否かを判定し、補正処
理開始条件を満足している場合にはステップS52に移
行し、補正処理開始条件を満足していない場合にはステ
ップS50に移行する。
【0060】ここで、補正処理開始条件は、車両が安定
走行中であり、的確な補正値ΔVKを算出可能な状態で
あるか否かを判定するものであり、例えば、許容偏差K
P>0であるか否か、すなわち、径差比εが許容範囲内
にあり補正を行う必要があるかないか、径差比εがε<
0.376であるか否か、すなわち、タイヤがパンク状
態でないかどうか、記憶装置25cの所定の記憶領域に
記憶している前回の補正対象車輪P(n−1)と今回の
補正対象車輪P(n)とが同一であるか否か、すなわ
ち、補正対象車輪が同一であり車両が安定走行状態にあ
るか否か、記憶装置25cの所定の記憶領域に記憶して
いる前回の擬似車速Vi(n−1)がVi(n−1)≧
5km/hであり、補正の必要があるか否か、そして、
ステップS31で読み込んだアンチスキッド制御フラグ
ASが全てAS=0であるか否かを判定しておりこれら
条件を全て満足するとき補正処理開始条件を満足してい
るものとしている。
【0061】そして、前記ステップS50では、開始タ
イマT1 をT1 =0に設定し、ステップS62に移行す
る。一方、前記ステップS52では開始タイマT1 が、
車両が走行安定状態となったとみなすことの可能な予め
設定した基準時間である基準値Tα1 と等しいか否かを
判定し、T1 =Tα1 であるとき車両が走行安定状態と
なったものとしてステップS56に移行し、T1 =Tα
1 でないときにはステップS54に移行する。そして、
ステップS54で開始タイマT1 をT1 =T1+1とし
て更新した後、ステップS62に移行する。
【0062】前記ステップS56では、補正処理フラグ
FFをFF=1に設定してステップS58に移行し、ス
テップS58では、ステップS44で算出した許容偏差
KPを、例えばローパスフィルタ処理する等によってフ
ィルタ処理した値を補正率DKPとして設定する。そし
て、ステップS60に移行し、補正率DKPと前回の擬
似車速Vi(n−1)とを乗算し、これを補正値ΔVK
とし記憶装置25cの所定の記憶領域に記憶する。
【0063】次いで、ステップS62に移行し、ステッ
プS36で設定した補正対象車輪Pに相当する車輪位置
の車輪速Vfp を下記(6)式にしたがって補正してこ
れを新たに車輪速VfP とし、ステップS64に移行す
る。 VfP =VfP −ΔVK ……(6) このステップS64では、ステップS62で補正した車
輪速を含む車輪速Vf FL,VfFR,VfR の中から最大
となる車輪速を下記(7)式にしたがって選出し、これ
を擬似車速Vi(n)として設定する。
【0064】 Vi(n)=MAX(VfFL,VfFR,VfR ) ……(7) 次いで、ステップS66に移行し、補正対象車輪Pに相
当する車輪位置の目標車輪速λP を下記(8)式にした
がって補正することによって、基準スリップ率SPOを補
正し、これを新たに基準スリップ率SPOとして設定す
る。そして、処理を終了してメインプログラムに戻る。
【0065】 λP =λP +ΔVK ……(8) ここで、λP =(1−SPO)・Vi(n)で設定される
値であるので、基準スリップ率SPOは、SPo=SPO−Δ
K ×100/Vi(n)に更新される。一方、前記ス
テップS70では、記憶装置25cに記憶している前回
の擬似車速Vi(n−1)がVi(n−1)=0である
か否かを判定し、Vi(n−1)=0である場合にはス
テップS76に移行し、Vi(n−1)=0でない場合
にはステップS72に移行する。
【0066】このステップS72では、予め設定した所
定の補正処理終了条件を満足しているか否かを判定し、
補正処理終了条件を満足している場合にはステップS7
6に移行し、補正処理終了条件を満足していない場合に
はステップS74に移行する。ここで、補正処理終了条
件は、補正の必要がない状態であるか否かを判定するも
のであり、例えば、許容偏差KPがKP≦0であり補正
の必要がないか、径差比εがε≧0.376、すなわ
ち、パンクしている状態とみなすことのできる車輪径差
比“0.376”よりも大きいか否かを判定しており、
これらの何れかの条件を満たすとき、補正終了条件を満
足しているものと判定する。
【0067】そして、ステップS74では、終了タイマ
2 をT2 =0に設定した後ステップS58に移行す
る。また、前記ステップS76では、終了タイマT2
予め設定した基準値Tα2と等しいか否かを判定し、T
2 =Tα2 である場合にはステップS78に移行し、T
2 =Tα2 でない場合にはステップS82に移行する。
【0068】前記ステップS78では、補正処理フラグ
FFをFF=0、終了タイマT2 をT2 =0にリセット
した後、ステップS80に移行し、補正値ΔVK をΔV
K =0に設定した後ステップS62に移行する。一方、
ステップS82では、終了タイマT2 をT2 =T2 +1
に更新した後、ステップS58に移行する。
【0069】ここで、ステップS48が判定手段に対応
し、ステップS60が補正値設定手段に対応し、ステッ
プS64が擬似車体速算出手段に対応し、ステップS6
2及びステップS66が異径車輪補正手段に対応してい
る。したがって、例えば、車両が良好で平坦な路面を直
進走行しており、制動中ではなく、例えば、左前輪1F
Lに応急用タイヤである小径タイヤを装着し、駆動輪で
ある後輪1RL,1RRの車輪速VfR が前右輪1FR
の車輪速VfFRよりも平均的にわずかに大きい状態を想
定する。また、前記記憶装置25cに記憶されている基
準スリップ率Sjo(j=FL〜R)はそれぞれ初期値、
例えば、15%程度に設定されているものとする。
【0070】この車両走行状態で、図8の演算処理が開
始されると、ステップS31,S32が実行されてアン
チスキッド制御フラグASを読み込みこれがAS=0で
あるか否かを判定する。この場合、制動中ではないので
AS=0となり、ステップS34を実行して、車輪速フ
ィルタ16FL〜16Rからの車輪速VfFR〜VfR
読み込む。
【0071】この場合、車両は平坦な路面を直進走行中
であるから、小径タイヤが装着された前左輪1FLの車
輪速VfFLは安定して、その他の車輪速VfFR、VfR
よりも比較的大きく突出しており、また、通常タイヤを
装着した駆動輪である後輪1RL,1RRの平均車輪速
VfR は、従動輪で、且つ、通常タイヤを装着している
前右輪1FLの車輪速VfFLよりも大きいので、車輪速
Vfj の最大値は車輪速VfFLとなり、ステップS36
ではこの車輪速VfFLが最大車輪速VfMAX として設定
され、補正対象車輪PとしてP=FLがセットされ、2
番目に大きい車輪速Vfj は車輪速VfR であるので、
ステップS38でこの車輪速VfR が第2車輪速Vf
2ND として設定され、これらはそれぞれマイクロコンピ
ュータ25の演算処理装置25bが備えるバッファに一
時記憶される。
【0072】そして、ステップS40で、最大車輪速V
MAX として選択されたVfFLと、第2車輪速Vf2ND
として選択された車輪速VfR とを用いて前記(4)式
により径差比εが算出される。このとき、駆動輪である
後輪1RL,1RRの平均車輪速VfR は、真の車体速
との誤差は小さいとすれば、平坦な路面を走行中の車両
において算出される径差比εは、小径タイヤの外半径と
通常タイヤの外半径との偏差の比をほぼ正確に反映した
数値となる。
【0073】そして、ステップS42において、所定の
記憶領域に記憶している前回の擬似車速Vi(n−1)
が10km/hより小さいときには許容値ΔKをΔK=
0.24として設定し、擬似車速Vi(n−1)が80
km/h以下のときにはΔK=0.030に設定し、擬
似車速Vi(n−1)が10km/h以上、80km/
h未満のときはΔK=2.4/Vi(n−1)として設
定する。すなわち、許容値ΔKは0.030〜0.24
の間で擬似車速Vi(n−1)が小さいほど、大きく設
定されるようになされている。
【0074】そして、ステップS44で、径差比εと許
容値ΔKとをもとに、前記(5)式に基づいて許容偏差
KPを算出し、補正処理フラグがFF=0であるものと
するとステップS46からS48に移行し、補正処理開
始条件を満足しているか否かを判定する。そして、許容
偏差KPがKP>0であり補正の必要があるか、前回の
補正対象車輪P(n−1)と、今回の補正対象車輪P
(n)とが同一であるか否か、擬似車速Vi(n−1)
が5km/h以上であるか否か、アンチスキッド制御フ
ラグASがAS=0であるかを判定し、これら条件を全
て満足するとき車両が安定走行中であり的確な補正値Δ
K の算出が可能であるとし、この状態を所定時間Tα
1 継続したとき、ステップS52、S56を経てステッ
プS58に移行する。
【0075】そして、ステップS58で、許容偏差KP
をローパスフィルタ処理した値を補正率DKPとして設
定し、ステップS60でこの補正率DKPと前回の擬似
車速Vi(n−1)とを乗算して補正値ΔVK を算出す
る。よって、この補正値ΔV K は車両が安定走行中であ
るときの車体速に応じた、その車体速の時点で必要とす
る補正値となる。そして、ステップS62でこの補正値
ΔVK により補正対象車輪P(=FL)に対応する車輪
速VfFLを前記(6)式にしたがって補正することによ
り、補正された小径車輪の車輪速VfFLは真の車輪速に
ほぼ近い値となり、よって、ステップS64で設定され
る補正された車輪速VfFLと、車輪速フィルタ16F
R,16Rの出力である車輪速VfFRとVfR とから選
択される最大値である擬似車速Vi(n)は、ほぼ真の
車体速に近い値となる。そして、ステップS66で補正
対象車輪である前左輪に相当する基準スリップ率SFLO
を更新し、所定の記憶領域に記憶する。
【0076】したがって、前述のアンチスキッド制御処
理では、ステップS66において設定した真の車体速に
近い擬似車速Vi(n)と、車輪速演算回路15FL〜
15Rの車輪速Vwj とに基づいて制動圧制御を行うの
で、通常のタイヤが装着されている前右輪1FR及び後
左右輪1RL,1RRに対しては、真の車体速と真の車
輪速とをもとに的確な制動圧制御を行うことになる。一
方、小径タイヤが装着されている前左輪1FLについて
は、真の車体速に近い擬似車速Vi(n)と補正前の車
輪速演算回路15FLからの車輪速VwFLとをもとに制
動圧制御を行うが、このとき、小径タイヤのタイヤ特性
に応じたスリップ率に補正された基準スリップ率SFLO
に基づいて制動圧制御を行うので、各輪の制動圧を最適
な状態に制御することができるので、各輪のロックが確
実に防止されると共に舵取り効果や制動距離も確保する
ことができる。
【0077】そして、この補正処理は、車両が制動状態
となりアンチスキッド制御を行っているときには径差比
εの更新を行わず、例えば、ブレーキペダル4を踏み込
み状態とし、アンチスキッド制御処理を開始した場合に
は、ステップS32からステップS42に移行し、ステ
ップS42,S44,S46,S70,S72,S74
を経てステップS58に移行するので、制動状態となる
以前に算出された径差比εに基づいて補正値ΔVk を設
定する。
【0078】また、例えば、擬似車速Vi(n−1)が
Vi(n−1)=0、許容偏差KPがKP≦0、或い
は、径差比εがε≧0.376となった場合等は、この
状態が所定時間Tα2 継続されたとき、補正の必要がな
いものとしてステップS76,S78,S80を実行し
て、補正処理フラグFF及びタイマT2 を零にリセット
し、補正値ΔVK を零に設定し以後補正を行わない。そ
して、タイマT2 がT2=Tα2 となる以前に擬似車速
Vi(n−1)≠0となった場合、例えば、車両が一旦
停車した後、すぐに最発進した場合等には、ステップS
72からステップS74に移行してタイマT2 を零にリ
セットし、許容偏差KPに基づいて補正率DKPを算出
し、これに応じて補正値ΔVK を算出して補正を行う。
【0079】よって、車両が安定走行状態でない場合に
は、それ以前の的確な径差比εとその時点での車体速、
すなわち、擬似車速Vi(n−1)とをもとに補正値Δ
Kを算出し、この補正値ΔVK をもとに補正を行うこ
とによって、この間、補正対象車輪である前左輪速は真
の車輪速とほぼ同等となることから、ステップS64で
設定される擬似車速Vi(n)はほぼ真の車体速と同等
となる。よって、この擬似車速Viを用いたアンチスキ
ッド制御処理は、この小径タイヤ装着前左輪1FLをも
含んで各輪への制動圧を最適な状態に制御することがで
きるので、各輪のロックは確実に防止されると共に舵取
り効果や制動距離を確保することができる。
【0080】次に、前記第1実施例のアンチスキッド制
御装置によるホイルシリンダ圧制御のシミュレーション
結果について図9のタイムチャートを用いて説明する。
このタイムチャートは、当該車両の前左輪に応急用タイ
ヤ等の小径タイヤを装着して、一見平坦な安定摩擦係数
路面を走行したものであり、時点t0 から一定の加速度
β0 で発進加速しながら直進走行し、時点t5 で必要な
加速を終了して低速直進走行状態に移行し、直進走行状
態のまま時点t6 でブレーキペダル4の踏み込みと同時
に制動を開始し、それと同時点t6 で前記図6の演算処
理によるアンチスキッド制御が開始され、必要な減速量
を得て時点t22で車両が停止したものをシュミレートし
たものである。
【0081】ここでは、小径タイヤを装着した前左輪速
VfFLが最大車輪速VfMAX に選択され続けたものと
し、図9(a)には、車輪速演算回路15FLからの前
左輪速VwFL(実線)と、この前左輪速VwFLを車輪速
フィルタ16FLで所定のフィルタ処理を行った前左輪
速VfFLと、車輪速演算回路15Rからの後輪速VwR
(一点鎖線)と、擬似車速をもとに設定した通常車輪に
対する目標スリップ率λ V と、補正処理において補正を
行った前左輪1FLに対する目標スリップ率λFL * と、
補正処理において補正を行った擬似車速Vi* との経時
変化の概略を表す。また、図9(b)には、図8の演算
処理における許容偏差KPの概略経時変化を、図9
(c)には、図8の演算処理における開始タイマT1
概略経時変化を、図9(d)には、図8の演算処理にお
ける補正率DKPの概略経時変化を、図9(e)には、
図8の演算処理における補正値ΔVK の概略経時変化
を、図9(f)には、図8の演算処理における終了タイ
マT2 の概略経時変化を表す。また、図9(g)には、
図6の演算処理における前左輪速の加減速度V′wFL
表し、そして、図9(h)には、前左輪のホイルシリン
ダ圧PFLを、それぞれ表す。
【0082】そして、時点t0 で発進した車両は時点t
5 までの間、加速度β0 で加速され、その後時点t6
では直進走行を行うので、車輪速VwFL及びVwR は車
輪速零の状態から増加して時点t5 で所定速度となり、
このとき、前左輪1FLは小径タイヤが装着されている
ので、後輪速VwR よりも大きくなる。このとき、図8
の補正処理においては、車輪速フィルタ16FL〜16
Rの車輪速VfFL〜VfR の最大値を小径タイヤが装着
された小径車輪とみなしており、この場合、前左輪1F
Lが小径車輪として設定される。そして、この車輪速が
最大である前左輪速VfFLと、次に大きい車輪速、例え
ば、後輪速VfR とをもとに径差比εを算出し、この径
差比εと擬似車速Vi(n−1)をもとに設定した許容
値ΔKとから許容偏差KPを算出する。この場合、時点
2 で擬似車速ViがVi>10km/hとなるまでの
間は、許容値ΔKがΔK=0.24であるので許容偏差
KPはほぼ一定値となり、擬似車速Viが10≦Vi<
80km/hとなる間は許容値ΔK=2.4/Viで設
定されるので擬似車速の増加に応じて許容偏差KPは増
加し、時点t4 でVi≧80km/hとなると許容値Δ
K=0.030であるので許容偏差KPはほぼ一定値と
なる。そして、擬似車速Viが時点t6 で減速される
と、時点t11で擬似車速がVi<10km/hとなるま
での間これに応じて許容偏差KPは減少しその後一定値
となる。
【0083】また、補正率DKPは、時点t3 で開始タ
イマT1 がT1 =Tα1 となった時点から許容偏差KP
のローパスフィルタ処理した値として設定されるので、
時点t3 から許容偏差KPに応じて増加し、時点t6
許容偏差KPが減少開始すると、補正率DKPもこれに
応じて減少する。そして、補正値ΔVK は補正率DKP
と擬似車速Viとの積で設定されるので、時点t3 から
増加し、車両が直進走行を行っているときはほぼ一定値
となり、制動状態となった時点t6 から擬似車速Vi及
び補正率DKPに応じて減少している。
【0084】このとき、開始タイマT1 は、所定の補正
処理開始条件を満足すると判定されたとき、例えば、時
点t1 で擬似車速Viが5km/h以上となったときカ
ウントを開始し、T1 =Tα1 となった時点t3 から、
擬似車速に応じた補正値ΔV K による補正が行われ、そ
して、時点t6 でブレーキペダル4を踏み込み状態と
し、図6のアンチスキッド制御処理が実行されて時点t
8 でアンチスキッド制御フラグASがAS=1となった
とき開始タイマT1 は零にリセットされ、以後、所定の
補正処理開始条件を満足しないので、零の状態を維持す
る。
【0085】また、終了タイマT2 は、この場合常に許
容偏差はKP>0であるものとし、パンク状態ではない
ものとすると、車両が走行開始した時点からT2 =0の
状態を維持し、時点t13で擬似車速Viが零となったと
きからカウントを開始し、この状態が継続し、時点t14
でT2 =Tα2 となったとき零にリセットされる。そし
て、前述の補正処理では、時点t3 で開始タイマT1
Tα1 となったときから、車輪速が最大である前左輪1
FLを小径タイヤが装着された小径車輪であるものと判
定してこの前左輪速VfFLに対して補正を行っており、
前左輪速VfFLから補正値ΔVK を減算した値を前左輪
速VfFLとして設定している。よって、この補正に伴
い、小径車輪である前左輪速VfFLは、通常タイヤを装
着した場合の車輪速とほぼ同等の値に補正されることに
なる。そして、擬似車速Viは、この補正したVf
FLと、図示しないVfFR,VfR との中の最大のものを
擬似車速として設定しているので、全輪が通常タイヤを
装着した場合の各車輪速の最大値を擬似車速として設定
することになり、図9(a)に示すように、擬似車速V
* はほぼ真の擬似車速に近い値として設定される。
【0086】また、補正処理では、補正値ΔVK によっ
て小径車輪のアンチスキッド制御処理における基準スリ
ップ率を補正することによって目標車輪速の補正をも行
っているので、小径車輪、すなわち、前左輪1FLの基
準スリップ率、すなわち、目標車輪速λFLが補正され、
基準スリップ率の初期値としては例えば15%程度に設
定されているが、この場合、補正値VK により補正され
ているので、図9(a)に二点鎖線で示すように、前左
輪1FLの目標車輪速λFL * は、擬似車速Viをもとに
設定された目標車輪速λv よりも補正値ΔVK 分だけ高
く設定されることになる。
【0087】したがって、図6に示すアンチスキッド制
御処理においては、小径車輪1FLに対してはこの補正
された目標車輪速λFL * に基づいて制動圧制御を行うこ
とになる。よって、アンチスキッド制御処理において
は、小径車輪が装着された前左輪1FLに対しては、車
輪速VwFLと目標車輪速λFL * とに基づいて制動圧制御
を行い、時点t6 でブレーキペダル4が踏み込み状態と
なったときに急増圧モードが選択されてそれに合わせて
図9(h)に示すように、前左輪ホイルシリンダ圧PFL
が増圧され、これに合わせて傾きを増加しながら車輪速
が減速されるから前左輪加減速度V′wFLは負の領域で
減少し、やがてこの前左輪加減速度V′wFLが負の加減
速度閾値α未満となる時点t7 で高圧側保持モードに移
行し、前左輪ホイルシンダ圧PFLがその直前の内圧に
保持され、車輪速の減速の傾きはほぼ一定となり、前左
輪加減速度V′wFLの減少変化率も小さくなる。
【0088】次いで、減速を続ける前左輪1FLが擬似
車速Viに対して補正処理において補正した基準スリッ
プ率SFLO を満足する目標車輪速λFL * を下回る時点t
8 で減圧モードに移行し、前左輪ホイルシリンダ圧PFL
がアクチュエータ6FLの作用による所定の傾きで減圧
させる。これにより、前左輪速VfFLは暫くの間減速を
継続するが、やがて増速傾向に移行し、これに合わせて
前左輪加減速度V′w FLは三次曲線的に正の領域まで増
加する。なお、この時点t8 で前左輪用アンチスキッド
制御フラグASがAS=1に設定され、減圧タイマTが
所定値T0 に設定される。
【0089】次いで正の領域で増加している前左輪加減
速度V′wFLが正の加減速度閾値β以上となる時点t9
で、減圧タイマTはその値の如何に関わらず零に設定さ
れて低圧保持モードに移行し、前左輪ホイルシリンダ圧
FLがその直前の内圧に保持され、前左輪速VwFLの増
速の傾きはほぼ一定となり、前左輪加減速度V′wFL
増加変化率も小さくなり、やがて正の領域で減少し始
め、次いで、この前左輪加減速度V′wFLが正の加減速
度閾値β以下となる時点t10で緩増圧モードに移行し
て、前左輪ホイルシリンダ圧PFLが所定の傾きで増圧さ
れ、これに合わせて前左輪加減速度V′wFLは三次曲線
的に負の領域まで減少し、これ以後、前記前左輪速Vw
FL及び前左輪加減速度V′wFL,前左輪ホイルシリンダ
圧PFLはこれを繰り返すことになり、次に前左輪加減速
度V′wFLが負の加減速度閾値αを下回るとき高圧保持
モードに移行し、次に前左輪速VwFLが前左輪目標車輪
速λFL * を下回るとき減圧モードに移行し、次に前左輪
加減速度V′wFLが正の加減速度閾値βを上回るとき低
圧保持モードに移行し、次に前左輪加減速度V′wFL
正の加減速度閾値βを上回るとき緩増圧モードに移行す
る。
【0090】そして、擬似車速が零近傍の値となりアン
チスキッド制御処理終了条件を満足する時点t12でアン
チスキッド制御処理が終了して急増圧モードに移行し、
マスタシリンダ圧となる。このとき、例えば、擬似車速
Viのみを補正し、基準スリップ率、すなわち、目標車
輪速の補正は行わないものとすると、アンチスキッド制
御処理においては、小径輪である前左輪1FLに対して
は、真の車輪速よりも大きい車輪速VwFLと真の車体速
にほぼ近い擬似車速Viをもとに設定した目標車輪速λ
V とをもとに制動圧制御を行うことになり、図9(a)
に示すように、擬似車速Viをもとに設定した目標車輪
速λV は小径車輪のタイヤ特性に応じた目標車輪速λFL
* よりも低く設定されることから、前左輪ホイルシリン
ダ圧PFLは増速傾向となり、よって、ロック傾向となる
ので舵取り効果が低下し、また、制動距離が確保できな
くなる可能性がある。
【0091】したがって、補正処理において、小径車輪
とみなされる前左輪速VfFLを補正し、補正した前左輪
速VfFLと、その他の車輪速VfFR,VfR との最大値
から擬似車速Viを設定することによって、真の車体速
に近い擬似車速Viに補正し、通常車輪に対してはこの
真の車体速に近い擬似車速Viと通常車輪のタイヤ特性
に応じて設定された基準スリップ率とに基づいてアンチ
スキッド制御を行い、小径車輪に対しては、真の車体速
に近い擬似車速Viと補正処理において車体速と径差比
とに応じた補正値ΔVK に基づいて補正した小径車輪の
タイヤ特性に応じた基準スリップ率とに基づいてアンチ
スキッド制御を行うことによって、通常車輪速、小径車
輪速をそれぞれに応じた基準スリップ率の領域内に制御
されるので、車両としての制動力を確保して制動距離を
確保すると共に、各車輪のロックを確実に防止して舵取
り効果をも確保することができる。
【0092】次に、本発明の第2実施例について説明す
る。この第2実施例は、上記第1実施例において、制動
圧制御装置18での補正処理の処理手順が異なるほかは
上記第1実施例と同様であるので、ここでは、補正処理
について説明する。第2実施例における補正処理は、第
1実施例では小径車輪に対し車輪速及び基準スリップ率
を補正するようになされているのに対し、第2実施例で
は通常車輪に対して基準スリップ率を補正するようにし
たものである。
【0093】図10は、第2実施例における補正処理の
処理手順を示したものであり、図8に示す第1実施例に
おける補正処理の処理手順と同一処理部には同一符号を
付与しており、この補正処理も、前述のアンチスキッド
制御処理よりも高い優先順位で実行され、所定時間、例
えば、5msec毎のタイマ割り込み処理として実行さ
れる。
【0094】そして、まず、ステップS31で前述のア
ンチスキッド制御処理において所定の記憶領域に記憶し
たアンチスキッド制御フラグASを読み込み、次いでス
テップS32に移行して、このアンチスキッド制御フラ
グが全てAS=0であるか否かを判定する。そして、A
S=0である場合にはステップS34に移行し、AS=
0でない場合にはステップS42に移行する。
【0095】そして、ステップS34では、車輪速フィ
ルタ16FL〜16Rからの車輪速Vfj (j=FL〜
R)を読み込み、次いで、ステップS35でこれら車輪
速VfFL,VfFR,VfR の中から最大となる最大車輪
速VfMAX を前記(2)式にしたがって選出し、これを
擬似車速Vi(n)として所定の記憶領域に記憶する。
【0096】次いで、ステップS37で、最大車輪速V
MAX として設定した車輪速に相当する車輪位置以外の
車輪位置を補正対象車輪Pとして設定する。例えば、最
大車輪速VfMAX として前左輪1FLの車輪速VfFL
設定した場合には、補正対象輪Pとして前右輪FR、
後輪Rを設定する。次いで、ステップS38に移行し、
ステップS34で読み込んだ車輪速VfFL,VfFR,V
R の中から2番目に大きい第2車輪速Vf2ND を、前
記(3)式にしたがって選出し、次いでステップS40
に移行して、前記(4)式に基づいて、車輪径差比εを
算出し、次いでステップS42で記憶装置25cの所定
の記憶領域に記憶している前回の擬似車速Vi(n−
1)を読み込み、この擬似車速Vi(n−1)に基づい
て上記第1実施例と同様に許容値ΔKを設定し、擬似車
速Vi(n−1)が、Vi(n−1)<10km/hの
とき、ΔK=0.24、10km/h≦Vi(n−1)
<80km/hのとき、ΔK=2.4/Vi、80km
/h<Vi(n−1)のとき、ΔK=0.030として
設定する。
【0097】そして、ステップS44で、前記(5)式
に基づいて、許容偏差KPを算出し、ステップS46
で、補正処理フラグFFがFF=1であるか否かを判定
し、FF=1である場合にはステップS70に移行し、
FF=1でない場合にはステップS48に移行する。そ
して、ステップS48で、所定の補正処理開始条件を満
足しているか、すなわち、許容偏差KP>0であるか否
か、すなわち、車輪径差比εが許容範囲内にあり補正を
行う必要があるかないか、車輪径差比εがε<0.37
6であるか否か、すなわち、タイヤがパンク状態でない
かどうか、記憶装置25cの所定の記憶領域に記憶して
いる前回の補正対象車輪P(n−1)と今回の補正対象
車輪P(n)とが同一であるか否か、すなわち、補正対
象車輪が同一であり車両が安定走行状態にあるか否か、
記憶装置25cの所定の記憶領域に記憶している前回の
擬似車速Vi(n−1)がVi(n−1)≧5km/h
であり、補正の必要があるか否か、そして、ステップS
31で読み込んだアンチスキッド制御フラグASが全て
AS=0であるか否かを判定しておりこれら条件を全て
満足するとき補正処理開始条件を満足しているものとし
てステップS52に移行し、これら条件を一つでも満足
しないときステップS50に移行する。
【0098】そして、ステップS50では、開始タイマ
1 をT1 =0に設定してステップS65に移行し、前
記ステップS52では開始タイマT1 がT1 =Tα1
なり車両が走行安定状態となったか否かを判定しT1
Tα1 でないときステップS54に移行して開始タイマ
1 =T1 +1とした後ステップS65に移行する。ま
た、ステップS52で開始タイマT1 がT1 =Tα1
あるときステップS56に移行し、ステップS56で補
正処理フラグFFをFF=1に設定し、次いでステップ
S58で、ステップS44で算出した許容偏差KPを例
えばローパスフィルタ処理してこれを補正率DKPとし
て設定し、次いでステップS60で補正率DKPと前回
の擬似車速Vi(n−1)とを乗算してこれを補正値Δ
K とし記憶装置25cの所定の記憶領域に記憶する。
【0099】次いで、ステップS65に移行し、ステッ
プS37で設定した補正対象車輪Pに対する目標車輪速
λP を下記(9)式にしたがって補正することによっ
て、基準スリップ率SPOを補正し、これを新たに基準ス
リップ率SPOとして設定する。そして、処理を終了して
メインプログラムに戻る。 λP =λP −ΔVK ……(9) ここで、λP =SPO×Vi(n)/100で設定される
値であるので基準スリップ率SPOは、SPO=SPO+ΔV
K ×100/Vi(n)に更新される。
【0100】一方、前記ステップS70では、記憶装置
25cに記憶している前回の擬似車速Vi(n−1)が
Vi(n−1)=0であるか否かを判定し、Vi(n−
1)=0である場合にはステップS76に移行し、Vi
(n−1)=0でない場合にはステップS72に移行
し、ステップS72で、予め設定した所定の補正処理終
了条件を満足しているか否か、すなわち、許容偏差KP
がKP≦0又は車輪径差比εがε≧0.376であるか
否かを判定し、これら補正処理終了条件を満足している
場合にはステップS76に移行し、補正処理終了条件を
満足していない場合にはステップS74に移行する。そ
して、ステップS74では、終了タイマT 2 をT2 =0
に設定してステップS58に移行し、また、前記ステッ
プS76では、終了タイマT2 が予め設定した基準値T
α2 と等しいか否かを判定し、T2=Tα2 である場合
にはステップS78に移行し、T2 =Tα2 でない場合
にはステップS82に移行する。
【0101】また、前記ステップS78では、補正処理
フラグFFをFF=0、終了タイマT2 をT2 =0にリ
セットしてステップS80に移行し、補正値ΔVK =0
に設定した後ステップS65に移行する。一方、ステッ
プS82では、終了タイマT2 をT2 =T2 +1に更新
した後、ステップS58に移行する。
【0102】ここで、ステップS35が擬似車体速算出
手段に対応し、ステップS48が判定手段に対応し、ス
テップS60が補正値設定手段に対応し、ステップS6
5が通常車輪補正手段に対応している。したがって、例
えば、上記第1実施例と同様に、車両が良好で平坦な路
面を直進走行しており、制動中ではなく、例えば、左前
輪1FLに応急用タイヤである小径タイヤを装着し、駆
動輪である後輪1RL,1RRの車輪速VfR が前右輪
1FRの車輪速VfFRよりも平均的にわずかに大きい状
態を想定する。また、前記記憶装置25cに記憶されて
いる基準スリップ率Sjoはそれぞれ初期値、例えば、1
5%程度に設定されているものとする。
【0103】この車両走行状態で、図10の演算処理が
開始されると、上記第1実施例と同様に、アンチスキッ
ド制御フラグASが全てAS=0であるか否かを判定
し、この場合制動中ではないので、ステップS34に移
行して車輪速フィルタ16FL〜16Rからの車輪速V
FR〜VfR を読み込む。そして、この場合、車両は平
坦な路面を直進走行中であるから、小径タイヤが装着さ
れた前左輪1FLの車輪速VfFLは安定して、その他の
車輪速VfFR、VfR よりも比較的大きく突出してお
り、また、通常タイヤを装着した駆動輪である後輪1R
L,1RRの平均車輪速VfR は、従動輪で、且つ、通
常タイヤを装着している前右輪1FLの車輪速VfFL
りも大きいので、最大車輪速VfMAX は車輪速VfFL
第2車輪速Vf2ND は車輪速VfR として設定され、最
大車輪速VfMAX に相当しない前右輪1FR及び後輪R
が制御対象車輪Pとして設定され、これらはそれぞれマ
イクロコンピュータ25の演算処理装置25bが備える
バッファに一時記憶される。
【0104】次いで、ステップS40において、最大車
輪速VfMAX として選択されたVf FLと、第2車輪速V
2ND として選択された車輪速VfR とを用いて前記
(4)式により車輪径差比εが算出され、このとき、駆
動輪である後輪1RL,1RRの平均車輪速VfR は、
真の車体速との誤差は小さいとすれば、平坦な路面を走
行中の車両において算出される車輪径差比εは、小径タ
イヤの外半径と通常タイヤの外半径との偏差の比をほぼ
正確に反映した数値となる。
【0105】そして、ステップS42において、擬似車
速Vi(n−1)を所定の記憶領域から読み込み、この
擬似車速Vi(n−1)が10km/hより小さいとき
には許容値ΔK=0.24、Vi(n−1)≦80km
/hのときΔK=0.030、10km/h≦Vi(n
−1)<80km/hのときΔK=2.4/Vi(n−
1)として設定する。
【0106】そして、ステップS44で、車輪径差比ε
と許容値ΔKとをもとに、前記(5)式に基づいて、許
容偏差KPを算出し、このとき、補正処理フラグがFF
=0であるものとすると、補正処理を行っていない状態
であるものとしてステップS46からS48に移行し、
補正処理開始条件を満足しているか否かを判定する。そ
して、所定の補正処理開始条件を満足しているときステ
ップS52、S56を経てステップS58に移行し、許
容偏差KPをローパスフィルタ処理した値を補正率DK
Pとして設定し、ステップS60でこの補正率DKPと
前回の擬似車速Vi(n−1)とを乗算して補正値ΔV
K を算出する。
【0107】よって、この補正値ΔVK は車両が安定し
て直進走行中であるときの車体速に応じた、その車体速
の時点で必要とする補正値となる。そして、ステップS
65でこの補正値ΔVK により補正対象車輪Pに相当す
る車輪、すなわち、前右輪1FR,後輪1RL,1RR
に相当する基準スリップ率SRLO ,SROを更新し、所定
の記憶領域に記憶する。
【0108】したがって、図6のアンチスキッド制御処
理では、ステップS35において設定した擬似車速Vi
(n)と、車輪速演算回路15FL〜15Rの車輪速V
FL〜VwR とに基づいて制動圧制御を行うが、この場
合、擬似車速Vi(n)として小径タイヤが装着されて
いる前左輪1FLの車輪速VfFLが設定されるので、車
輪速VwFLと擬似車速Vi(n)とは共に、小径車輪の
タイヤ特性に応じた値となり、スリップ率の算出におい
ては小径車輪のタイヤ特性に応じた車輪速及び車体速と
から算出することになるので、的確な制動圧制御を行う
ことができる。
【0109】一方、通常タイヤが装着されている前右輪
1FR及び後左右輪1RL,1RRに対しては、真の車
体速よりも大きい、小径車輪の車輪速VfFLに応じた擬
似車速Viと、通常タイヤの車輪速VwFR,VwR に基
づき制動圧制御を行うことになり、これら速度値をもと
にスリップ率を算出した場合には擬似車速Viが真の車
体速よりも大きく設定されているために、通常タイヤに
対する正確なスリップ率を算出することができず、スリ
ップ率は大きく設定されることになるが、補正処理にお
いて基準スリップ率を大きく補正しているので、擬似車
速Viが真の車輪速よりも大きく設定されている場合で
も通常車輪に対する目標車輪速は基準スリップ率が補正
されることにより小さく設定されるので、制動圧制御に
おいて減圧モードに早めに設定されることはなく通常タ
イヤに対する真の車体速と真の車輪速とに基づき制動圧
制御を行う場合と同様に的確な制動圧制御を行うことが
できる。よって、各輪の制動圧を最適な状態に制御する
ことができるから、各輪のロックが確実に防止されると
共に舵取り効果や制動距離も確保することができる。
【0110】図11は、上記第2実施例のアンチスキッ
ド制御装置によるホイルシリンダ圧制御のシミュレーシ
ョン結果の概略を表すタイムチャートである。このタイ
ムチャートは、図9に示す前記第1実施例のアンチスキ
ッド制御装置によるホイルシリンダ圧制御のシミュレー
ション結果と同様に、当該車両の前左輪に応急用タイヤ
等の小径タイヤを装着して、一見平坦な安定摩擦係数路
面を走行したものであり、時点t31から一定の加速度β
0 で発進加速しながら直進走行し、時点t35で必要な加
速を終了して定速直進走行状態に移行し、直進走行状態
のまま時点t36でブレーキペダル4の踏み込みと同時に
制動を開始し、それと同時点t36で前記図6の演算処理
によるアンチスキッド制御が開始され、必要な減速量を
得て時点t42で車両が停止したものをシュミレートした
ものである。
【0111】そして、小径タイヤを装着した前左輪速V
FLが最大車輪速VfMAX に選択され続けたものとし、
図11(a)には、車輪速演算回路15FLからの前左
輪速VwFL(実線)と、車輪速演算回路15Rからの後
輪速VwR (一点鎖線)と、前左輪速VwFLを車輪速フ
ィルタ16FLで所定のフィルタ処理を行った前左輪速
VfFL(=擬似車速Vi)(破線)と、擬似車速Viに
対する目標車輪速λVと、図10の補正処理において補
正処理を行った目標車輪速λ* との経時変化の概略を表
す。
【0112】また、図11(b)には、図10の演算処
理における許容偏差KPの経時変化の概略を、図11
(c)には、図10の演算処理における開始タイマT1
の経時変化の概略を、図11(d)には、図10の演算
処理における補正率DKPの経時変化の概略を、図11
(e)には、図10の演算処理における補正値ΔVK
経時変化の概略を、図11(f)には、図10の演算処
理における終了タイマT 2 の経時変化の概略を表す。ま
た、図11(g)には、図6の演算処理における後輪速
の加減速度V′wR を表し、そして、図11(h)に
は、後輪のホイルシリンダ圧PR の経時変化の概略をそ
れぞれ表す。
【0113】そして、時点t30で発進した車両は時点t
35までの間、加速度β0 で加速され、その後時点t36
では直進走行を行うので、車輪速VwFL及びVwR は車
輪速零の状態から増加して時点t35で所定速度となり、
このとき、前左輪1FLは小径タイヤが装着されている
ので、後輪速VwR よりも大きくなる。このとき、図1
0の補正処理においては、車輪速フィルタ16FL〜1
6Rの車輪速VfFL〜VfR の最大値である前左輪1F
Lを小径車輪とみなし、この前左輪速VfFLと、次に大
きい後輪速VfR とをもとに径差比εを算出し、この径
差比εと擬似車速Vi(n−1)をもとに設定した許容
値ΔKとから許容偏差KPを算出する。この場合、時点
32で擬似車速ViがVi>10km/hとなるまでの
間は許容偏差KPはほぼ一定値となり、擬似車速Viが
10≦Vi<80km/hとなる間は擬似車速の増加に
応じて許容偏差KPは増加し、時点t34でVi≧80k
m/hとなると許容偏差KPはほぼ一定値となり、擬似
車速Viが時点t36で減速されると、時点t46で擬似車
速がVi<10km/hとなるまでの間これに応じて許
容偏差KPは減少しその後一定値となる。
【0114】また、補正率DKPは、時点t33で開始タ
イマT1 がT1 =Tα1 となった時点から許容偏差KP
に応じて増加し、時点t36で許容偏差KPが減少開始す
ると、補正率DKPもこれに応じて減少する。そして、
補正値ΔVK は時点t33から増加し、車両が直進走行を
行っているときはほぼ一定値となり、制動状態となった
時点t36から擬似車速Vi及び補正率DKPに応じて減
少している。
【0115】このとき、開始タイマT1 は、所定の補正
処理開始条件を満足すると判定された、時点t31で擬似
車速Viが5km/h以上となったときカウントを開始
し、時点t33でT1 =Tα1 となり、時点t38でアンチ
スキッド制御フラグASがAS=1となったとき開始タ
イマT1 は零にリセットされる。また、終了タイマT 2
は、この場合常に許容偏差はKP>0であるものとし、
また、各タイヤはパンク状態ではないものとすると、車
両が走行開始した時点からT2 =0の状態を維持し、時
点t42で擬似車速Viが零となったときからカウントを
開始し、この状態が継続し、時点t43でT2 =Tα2
なったとき零にリセットされる。
【0116】そして、前述の図10の補正処理では、時
点t33で開始タイマT1 =Tα1 となったときから、車
輪速が最大である前左輪1FLを小径タイヤが装着され
た小径車輪であるものと判定し、前左輪1FL以外の車
輪、すなわち、前右輪1FR及び後輪1RL,1RRに
対する図6に示すアンチスキッド制御処理における基準
スリップ率、SFRO ,SROの補正を行っており、通常1
5%程度に設定される基準スリップ率SO を満足する目
標車輪速λV から補正値ΔVK を減算してこれを、前右
輪1FR及び後輪1RL,1RRに対する目標車輪速λ
* とし、これに相当するスリップ率を基準スリップ率S
FRO ,SROとして設定している。
【0117】したがって、図6に示すアンチスキッド制
御処理では、小径車輪に対しては、小径車輪のタイヤ特
性に応じた擬似車速と基準スリップ率とに基づいて制動
圧制御を行い、通常車輪に対しては、真の車体速よりも
大きい擬似車速に基づいて制動圧制御を行うことになる
が、基準スリップ率を小径車輪と通常車輪との径差比ε
に応じて補正し、擬似車速が大きく設定されている分、
通常車輪のタイヤ特性に相当するように小さく補正した
目標車輪速に基づいて制動圧制御を行うことになる。し
たがって、小径車輪が装着された前左輪1FLに対して
は、車輪速Vw FLと目標車輪速λV とに基づいて制動圧
制御を行うことにより的確なアンチスキッド制御を行う
ことができる。一方、通常車輪が装着された、例えば、
後輪1RL,1RRに対しては、後輪速VwR と補正し
た目標車輪速λ* とに基づいて制動圧制御を行い、図1
1に示すように、時点t36でブレーキペダル4が踏み込
み状態となったときに急増圧モードが選択され、これに
合わせて傾きを増加しながら車輪速が減速されるから後
輪加減速度V′wR は負の領域で減少し、やがてこの後
輪加減速度V′wR が負の加点速度閾値α未満となる時
点t37で高圧保持モードに移行し、後輪ホイルシリンダ
圧PR がその直前の内圧に保持され、車輪速の減速の傾
きはほぼ一定となり、後輪加減速度VwR の減少変化率
も小さくなる。
【0118】次いで、減速を続ける後輪速VwR が補正
した目標車輪速λ* を下回る時点t 38で減圧モードに移
行し、後輪ホイルシリンダ圧PR がアクチュエータ6R
の作用による所定の傾きで減圧させる。これにより後輪
速VfR は暫くの間、減速を継続するが、やがて増速傾
向に移行し、これに合わせて後輪加減速度V′wR は三
次曲線的に正の領域まで増加する。なお、この時点t38
で後輪用アンチスキッド制御フラグASがAS=1に設
定され、減圧タイマTが所定値T0 に設定される。
【0119】次いで、正の領域で増加している後輪加減
速度V′wR が正の加減速度閾値β以上となる時点t39
で、減圧タイマTはその値の如何に関わらず零に設定さ
れて低圧保持モードに移行し、後輪ホイルシリンダ圧P
R がその直前の内圧に保持され、後輪速VwR の増速の
傾きはほぼ一定となり、後輪加減速度V′wR の増加変
化率も小さくなり、やがて、正の領域で減少し始め、次
いで、この後輪加減速度V′wR が正の加減速度閾値β
以下となる時点T40で緩増圧モードに移行して、後輪ホ
イルシリンダ圧PR が所定の傾きで増圧され、これに合
わせて後輪加減速度V′wR は三次曲線的に負の領域ま
で減少し、これ以後、前記後輪速VwR,前記後輪加減
速度V′wR ,後輪ホイルシリンダ圧PR はこれを繰り
返すことになる。そして、時点t41で擬似車速が零近傍
の値となり、アンチスキッド制御を終了すると、急増圧
モードに移行し、マスタシリンダ圧となる。
【0120】したがって、補正処理において、通常車輪
である前右輪及び後輪に対する目標車輪速λを小さく補
正し、擬似車速が真の車輪速よりも大きく設定されてい
る分、目標車輪速λを大きく補正することによって、小
径車輪に対しては小径車輪のタイヤ特性に応じた擬似車
速Viと目標車輪速λV とをもとに制動圧制御を行い、
通常車輪に対しては小径車輪のタイヤ特性に応じた擬似
車速Viと小径車輪及び通常車輪の径差比εをもとに補
正した目標車輪速λ* とをもとに制動圧制御を行うこと
により、小径車輪、及び通常車輪ともに、それぞれのタ
イヤ特性に応じた目標車輪速に基づいて制動圧制御を行
うことによって、通常車輪に対しては目標車輪速が大き
く設定されることによって真の車体速に応じたアンチス
キッド制御の減圧開始タイミングよりもその減圧開始タ
イミングが早くなり、制動用シリンダへの流体圧は小さ
めに設定されることにより制動力が小さくなり車両の制
動距離が大きくなってしまうようなことはなく、的確な
制御を行うことができ、車両としての制動力を確保して
制動距離を確保すると共に、各車輪のロックを確実に防
止して舵取り効果をも確保することができる。
【0121】また、上記第1及び第2実施例において
は、補正処理においては、補正値ΔV K を車体速に応じ
て設定するようになされているので車体速に応じた的確
な補正を行うことができ、必要以上の補正を行うことに
よって舵取り効果、或いは、制動距離を低下させること
なく、的確な制動圧制御を行うことができる。また、上
記第1及び第2実施例においては、補正処理では、所定
の補正開始条件を満足する状態が、所定時間Tα1 継続
された時点から径差比εに基づく補正値ΔVK による補
正を行うようになされているので、車両が確実に安定走
行状態となった時点から補正値ΔVK を設定することに
なり、確実に的確な補正値ΔV K を設定することができ
る。
【0122】また、上記第1及び第2実施例において
は、補正処理においては、所定の終了条件、或いは、擬
似車速Vi=0となる状態が所定時間Tα2 継続された
とき、補正値ΔVK に基づく補正を終了するようにして
いるので、例えば、擬似車速Vi=0となり、その後、
直ぐに、Vi≠0となった場合等でも、引き続いて補正
値ΔVk に基づいて補正を行うことができるので、的確
なアンチスキッド制御を行うことができる。
【0123】また、上記第1及び第2実施例において
は、擬似車速Viを車輪速演算回路15FL〜15Rの
車輪速VwFL〜VwR を車輪速フィルタ16FL〜16
Rによってフィルタ処理し、挙動変化を小さく抑えた車
輪速VfFL〜VfR をもとに算出するようにしているの
で、例えば、旋回時、又はホイルスピン時等に、極端に
擬似車速が変化することはない。
【0124】なお、上記第1及び第2実施例では、4つ
の車輪1FL〜1RRに対応して3つの車輪速センサ7
FL〜7Rを配設した場合について説明したが、これに
限らず、例えば、各車輪1FL〜1RRに対応して4つ
の車輪速センサを配設した場合にも適用することができ
る。また、上記第1及び第2実施例では、マイクロコン
ピュータ21を適用した場合について説明したが、これ
に限らず、比較回路、演算回路、論理回路等の電子回路
を組み合わせて構成することも可能である。
【0125】また、上記第1及び第実施例では、ホイ
ールシリンダを油圧で制御する場合について説明した
が、これに限らず、他の液体又は空気等の気体を適用す
ることも可能である。また、上記第1及び第2実施例で
は、後輪駆動車に適用した場合について説明したが、こ
れに限らず、前輪駆動車、四輪駆動車等のあらゆる車両
に適用することができる。
【0126】また、上記第1及び第2実施例では、補正
処理において、径差比εを補正処理開始条件を満足する
間は、補正処理を実行する度に算出するようになされて
いるが、例えば、車両が走行安定状態となったときに算
出した径差比εを記憶し、以後、この径差比εをもとに
補正値ΔVK を算出するようにすることも可能であり、
また、例えば、車両が走行安定状態である間の径差比ε
の平均値をもとに補正値ΔVK を算出するようにするこ
とも可能である。
【0127】また、上記第1及び第2実施例では、セレ
クトハイ車輪速を擬似車速Viとして設定するようにな
されているが、例えば、車両の前後加速度を検出する前
後加速度センサを配設しこの前後加速度とセレクトハイ
車輪速とをもとに擬似車速Viを演算するようにするこ
とも可能である。
【0128】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
に関わるアンチスキッド制御装置は、車輪速検出手段で
検出した車輪速検出値のうちの最大車輪速検出値を通常
のタイヤよりも小径のタイヤが装着された異径車輪の車
輪速であるものとし、制動圧制御手段において制動用シ
リンダへの流体圧を制御していないときに、最大車輪速
検出値とその他の車輪速検出値とから得られる速度誤差
率に基づいて補正値設定手段によって補正値を設定し、
補正値設定手段の補正値をもとに、異径車輪であると判
定した車輪の車輪速検出値と当該異径車輪に対応する基
準スリップ率とを小さく補正することによって、擬似車
輪速算出手段で算出される擬似車体速をほぼ真の車体速
に補正し、制動圧制御手段によって異径車輪に対しては
真の車体速と異径車輪のタイヤ特性に応じたスリップ率
となるよう補正した基準スリップ率とをもとに制動圧制
御を行い、また、異径車輪ではない通常車輪に対しては
真の車体速と通常車輪のタイヤ特性に応じて設定されて
いる基準スリップ率とをもとに制動圧制御を行うことに
よって車輪のロックを確実に防止すると共に舵取り効果
や制動確保を行うことができる。
【0129】また、請求項2に関わるアンチスキッド制
御装置は、車輪速検出手段で検出した車輪速検出値のう
ちの最大車輪速検出値を通常のタイヤよりも小径のタイ
ヤが装着された異径車輪の車輪速であるものとし、制動
圧制御手段において制動用シリンダへの流体圧を制御し
ていないときに、最大車輪速検出値とその他の車輪速検
出値とから得られる速度誤差率に基づいて通常車輪補正
手段によって異径車輪であると判定した異径車輪以外の
車輪、すなわち、通常車輪に対する基準スリップ率を大
きく補正することによって、制動圧制御手段によって異
径車輪に対しては異径車輪のタイヤ特性に応じた擬似車
体速及び基準スリップ率に基づいて制動圧制御を行い、
通常車輪に対しては異径車輪のタイヤ特性に応じた擬似
車体速と通常車輪補正手段によって通常車輪の車輪特性
に応じたスリップ率に補正した基準スリップ率とに基づ
いて制動圧制御を行うことによって車輪のロックを確実
に防止すると共に舵取り効果や制動確保を行うことがで
きる。
【0130】また、請求項3に関わるアンチスキッド制
御装置は、補正値設定手段では、擬似車体速算出手段の
擬似車体速と速度誤差率とをもとに補正値を設定してい
るので、例えば、車体速が大きい場合には車体速が小さ
い場合に比べて補正値を大きく設定するなど、その車体
速に応じて必要とする的確な補正値を設定することがで
きるので、アンチスキッド制御の確実性をより向上させ
ることができる。
【0131】また、請求項4に関わるアンチスキッド制
御装置は、補正値設定手段では、速度誤差率と擬似車体
速算出手段の擬似車体速に応じて設定したしきい値に基
づいて補正を行う必要があるか否かを判定手段によって
判定しているので、例えば、車体速に応じて許容できる
速度誤差率のしきい値の範囲内であり補正する必要がな
い場合等には補正を行わず、必要とする場合にのみ補正
を行うので、アンチスキッド制御の確実性をより向上さ
せることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わるアンチスキッド制御装置の基本
構成図である。
【図2】本発明に関わるアンチスキッド制御装置の基本
構成図である。
【図3】本発明に関わるアンチスキッド制御装置の概略
を示す構成図である。
【図4】車輪速センサの一例を示す構成図である。
【図5】アクチュエータの一例を示す構成図である。
【図6】コントローラでのアンチスキッド制御処理の処
理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】アンチスキッド制御処理における制御モード設
定時の制御マップである。
【図8】第1実施例における補正処理の一例を示すフロ
ーチャートである。
【図9】第1実施例における制動圧制御回路で実行され
る制動圧制御の説明図である。
【図10】第2実施例における補正処理の一例を示すフ
ローチャートである。
【図11】第2実施例における制動圧制御回路で実行さ
れる制動圧制御の説明図である。
【符号の説明】
1FL,1FR 前輪(従動輪) 1RL,1RR 後輪(駆動輪) 2FL〜2RR ホイールシリンダ 3FL〜3R 車輪速センサ 4 ブレーキペダル 5 マスタシリンダ 6FL〜6R アクチュエータ 7 配管 8 電磁流入弁 9 電磁流出弁 10 油圧ポンプ 11 逆止弁 12 アキュムレータ 15FL〜15R 車輪速演算回路 16FL〜16R 車輪速フィルタ 18 制動圧制御回路 CR コントローラ

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の車輪の速度を検出する車輪速検出
    手段と、該車輪速検出手段の車輪速検出値に基づいて擬
    似車体速を算出する擬似車体速算出手段と、該擬似車体
    速算出手段の擬似車体速と前記車輪速検出手段の車輪速
    検出値とから得られる当該車輪のスリップ率が基準スリ
    ップ率に保たれると共に、当該制御対象となる車輪のロ
    ックを防止するために、各車輪に配設された制動用シリ
    ンダの流体圧を制御する制動圧制御手段とを備えたアン
    チスキッド制御装置において、前記車輪速検出手段で検
    出された車輪速検出値のうちの最大車輪速検出値を通常
    のタイヤより小径のタイヤが装着された異径車輪の車輪
    速であるとし、少なくとも前記制動圧制御手段が制動用
    シリンダへの流体圧を制御していないときに前記最大車
    輪速検出値とその他の各車輪速検出値とから得られる速
    度誤差率に基づいて補正値を設定する補正値設定手段
    と、該補正値設定手段の補正値に基づいて前記異径車輪
    の車輪速検出値と該異径車輪の基準スリップ率とを小さ
    く補正する異径車輪補正手段とを備えることを特徴とす
    るアンチスキッド制御装置。
  2. 【請求項2】 複数の車輪の速度を検出する車輪速検出
    手段と、該車輪速検出手段の車輪速検出値に基づいて擬
    似車体速を算出する擬似車体速算出手段と、該擬似車体
    速算出手段の擬似車体速と前記車輪速検出手段の車輪速
    検出値とから得られる当該車輪のスリップ率が基準スリ
    ップ率に保たれると共に、当該制御対象となる車輪のロ
    ックを防止するために、各車輪に配設された制動用シリ
    ンダの流体圧を制御する制動圧制御手段とを備えたアン
    チスキッド制御装置において、前記車輪速検出手段で検
    出された車輪速検出値のうちの最大車輪速検出値を通常
    のタイヤより小径のタイヤが装着された異径車輪の車輪
    速であるとし、少なくとも前記制動圧制御手段が制御用
    シリンダへの流体圧を制御していないときに前記最大車
    輪速検出値とその他の各車輪速検出値とから得られる速
    度誤差率に基づいて補正値を設定する補正値設定手段
    と、該補正値設定手段の補正値に基づいて前記異径車輪
    を除く前記通常タイヤを装着した通常車輪の基準スリ
    ップ率を大きく補正する通常車輪補正手段とを備えたこ
    とを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  3. 【請求項3】 前記補正値設定手段は、前記速度誤差率
    と前記擬似車体速算出手段の擬似車体速とに基づいて補
    正値を設定することを特徴とする上記請求項1又は2記
    載のアンチスキッド制御装置。
  4. 【請求項4】 前記補正値設定手段は、前記速度誤差率
    と前記擬似車体速算出手段に応じて設定されるしきい値
    とに基づいて補正を行う必要があるか否かを判定する判
    定手段を備え、該判定手段で補正する必要があると判定
    したとき補正値を設定することを特徴とする上記請求項
    1乃至3の何れかに記載のアンチスキッド制御装置。
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