JP3306504B2 - 不溶性陽極 - Google Patents
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Description
電気メッキを行う場合に使用される不溶性陽極に関する
ものである。
キを行う際に使用される陽極としては鉛又は鉛合金が用
いられてきたが、溶出した鉛によるメッキ液の汚染、膜
質の低下等の問題がある。これに代わる陽極として、チ
タン等の導電性基体上に電極活物質として白金族金属、
特にイリジウムの酸化物を含む電極活性層を被覆した不
溶性陽極が種々提案されている。しかしこの種の電極は
陽極として使用することを目的としており、陽分極のみ
でなく陰分極を伴う電解では、陽分極のみの電解と比べ
て電極寿命が短くなるという欠点がある。
の両面をメッキするために陽極を2枚用い、その間に所
定間隔を置いて陰極となる鋼帯を走行させながらメッキ
浴を電解して、メッキ金属を鋼帯の両面に析出させてい
る。通常、図2に示すように陽極1,1’の幅AWは種
々の幅を持つ鋼帯の走行に対応するために、鋼帯2の幅
SWよりも大に設定されている。従って鋼帯の走行面に
対向する陽極面の中央部3(幅はSWに相当、以下板道
という)の両外縁部4,4は、2枚の陽極同士が直接対
向することとなる。そして鋼板の各面に厚さの異なる金
属メッキを施す場合は、2枚の陽極の電位に差があるた
め、より低電位側の陽極においては板道の外縁部4,4
は断続的に陰極として働くことが知られている(陽極の
陰極化現象)。従って低電位側の陽極の外縁部は板道よ
り先に消耗するため、電極全体としての寿命もこれに相
応して短くなってしまう。
長するため、特開平5−230682号公報には、電極
基体と電極活物質の層との間に、白金層と金属酸化物層
との2層の中間層を設けた電極が提案されている。この
電極は陰極としての寿命を延長する効果は認められる
が、鋼板の電気メッキにおける板道と板道の外縁部との
寿命が同一となるまでには至っていない。
は、陽極の陰極化現象を電気メッキの装置の改良によっ
て防ぐ方法が提案されている。この方法は、2枚の陽極
間の電位差を小さくするために電極電位を測定し、それ
をもとに極間を制御している。しかしこの場合は多くの
設備投資及び運転コストの増加を伴うという問題点があ
る。
の両面メッキに使用される不溶性陽極のように、電解時
に陰分極を伴う電極の寿命を長くすることにより、電極
の使用期間を延長し、電極の補修、交換等の作業を軽減
することにある。
決するためのものであって、即ち電解浴に浸された2枚
の不溶性陽極の間に所定間隔を置いて陰極となる鋼帯が
走行し、鋼帯の電気メッキを行う装置に使用される不溶
性陽極において、電解中2枚の電極の電位差により陰分
極を生じる電極面の電極活物質の被覆量を、陰分極を生
じない電極面の被覆量より大ならしめたことを特徴とす
る不溶性陽極である。
その間を走行する鋼帯の幅より大であり、該不溶性陽極
の陰分極を生じる電極面が鋼帯に対向する面の外縁部で
あることを特徴とする上記の不溶性陽極である。
じる電極面を被覆する電極活物質の量が60g/m2 以
上であることを特徴とする上記の不溶性陽極である。
しては、金属チタンやチタン−タンタル、チタン−タン
タル−ニオブ、チタン−パラジウム等のチタン基合金が
好適であり、その形状は板状、網状、棒状、多孔板状等
所望のものとすることができる。基体を被覆する電極活
物質としては、酸化イリジウム又はこれとチタン、タン
タル、ニオブ、タングステン、ジルコニウム等バルブ金
属酸化物との混合酸化物が好適である。代表的な例とし
ては、イリジウム−タンタル混合酸化物、イリジウム−
チタン混合酸化物等があげられる。此の際、混合酸化物
中の酸化イリジウムは金属換算で60〜99重量%、特
に60〜95重量%、バルブ金属酸化物は金属換算で4
0〜1重量%、特に40〜5重量%とからなる混合酸化
物が耐久性に優れている。
る場合、電解の末期では電極活性層が脆くなり、剥離が
激しくなるいう現象が見られる。このため、電極の寿命
は電極活物質の消耗よりも寧ろ電極活性層の脆化の速度
で定まる。この傾向は、電極活物質として酸化イリジウ
ムを含む電極において顕著である。従って電極活物質の
量を60g/m2 より増加しても電極としての寿命延長
の効果は少なく、経済的に不利益となる。
記のように陰分極を伴う電解に用いた場合、陽分極のみ
に使用する場合に比べて電極活物質の消耗が非常に速
く、通常の電極活物質の量では電極活性層が脆くなる前
に消耗し、寿命が短くなることが分かった。
を被覆する電極活物質の量を60g/m2 以上、好まし
くは80〜500g/m2 、特に好ましくは100〜2
50g/m2 とすることによって、電極活物質の消耗に
よる電極寿命の短期化を防ぐことができる。具体的には
鋼板の電気メッキ用不溶性陽極において、2枚の陽極間
の電位差により陰分極を生じる電極面(板道の外縁部)
における電極活物質の被覆量を、陰分極を生じない電極
面(板道)の被覆量より大にすることによって、板道部
とそれ以外の部分との電極寿命を同一とすることができ
る。この場合、2枚の不溶性陽極のうち、低電位側の陽
極にのみ板道外縁部の電極活物質量を板道部より大にす
ればよく、高電位側の陽極においては板道部とその外縁
部との電極活物質量を同一にしても差し支えない。また
板道の幅はこれに対向する鋼帯の幅によって変化するも
のであるから、実際の操作においても最も幅の小さい鋼
板に適合する幅に設定しておけばよい。なお陰分極を生
じない電極面を被覆する電極活物質の量の範囲は15g
/m2 以上、60g/m2 未満が好ましい。15g/m
2 未満になると電極活物質量が少くて陽極としての機能
が保たれない。
によって説明する。 実施例1 市販チタン板(長さ30mm、幅90mm、厚さ1.5
mm)をアルミナグリットを用い圧力4kgf/cm2
でグリットブラスト処理を施した。この基体に下記の液
組成の溶液を塗布した。 TaCl5 800mg H2 Ir2 Cl6 .6H2 O 2600mg 35%HCl 1ml n−C4 H9 OH 10ml これを120℃で10分間乾燥し、次いで500℃に保
持した電気炉中で20分間焼成した。この操作を繰り返
すことによって所望の量の電極活性層を得た。試験陽極
として図1に示す中央部3(板道、幅50mm)を被覆
する電極活物質5の量が30g/m2 、外縁部4,4
(各幅20mm)を被覆する電極活物質5’,5’の量
が100g/m2 である電極1−Aを作製した。また以
下に示す試験において補助的な役割を持つ第2陽極(以
下補助陽極という)として、試験陽極と同じ寸法で中央
部と外縁部とをそれぞれ被覆する電極活物質量が共に5
0g/m2 である電極を作製した。この試験陽極と補助
陽極とを図2に示す不溶性陽極1,1’として配置し、
また陰極となる鋼板(長さ30mm、幅50mm、厚さ
1.5mm)を図2に示す2として配置し(各極間距離
は7mm)、電解浴として硫酸浴(硫酸ナトリウム濃度
100g/l、pH=1.2、60℃)を使用し、電解
試験を行った。
には電流15Aを10分と45Aを10分交互に繰り返
すパルス電流を流し、不溶性陽極(補助陽極)1’の側
には45Aの定電流を流した。従って試験陽極側の電流
が15Aの時には試験陽極の電位が補助陽極の電位に比
べて低くなることによって、試験陽極の外縁部4,4で
陰分極を生じるようになっている。なお本電解試験では
45A通電時のセル電圧が電解初期と比べて5V上昇す
るまでの時間を電極寿命とした。その結果を表1に示
す。
が30g/m2 、外縁部の電極活物質量が60g/m2
である試験陽極、および中央部、外縁部の電極活物質量
が共に50g/m2 である補助陽極を作製した。この2
枚の陽極を用いて実施例1と同様の条件で電解試験を行
った結果を表1に示す。
活物質の量が共に30g/m2 である試験陽極と、50
g/m2 である補助陽極とを作製した。この2枚の陽極
を用いて実施例1と同様の条件の電解試験を行った。そ
の結果を表1に示す。
5Aの定電流で電解試験を行った。その結果を表1に示
す。
極の外縁部を被覆する電極活物質量が最も大きい実施例
1においては、試験陽極の寿命が非常に長く、2枚の陽
極間の電位差が無いため陰分極を全く生じない参考例と
ほぼ同等の電極寿命が得られている。実施例2は、外縁
部の電極活物質量が中央部より大であるが実施例1より
少ないため、やや試験陽極の寿命が短くなっている。即
ち外縁部の電極活物質の量はその電極の使用条件によっ
て決定し、陰分極を生じない中央部の電解可能時間とほ
ぼ同等にするのが最も有効である。比較例は従来法であ
って、中央部と外縁部の電極活物質量が同様であり、電
流の変化により外縁部において陰分極が生じるため、電
極の寿命が実施例に比べて明らかに短くなっている。
気メッキを行う際、陰極化現象による電極活物質の過度
の消耗を電極活物質の量を増加することによって補い、
電極の使用期間の延長を可能とする。特に、電極活物質
として酸化イリジウムを含む不溶性陽極の陰分極に伴う
電解における劣化は、脆化より寧ろ消耗が問題であるの
で、電極活物質量の増加による電極寿命延長の効果が顕
著である。また陰分極を生じる部分の電極活物質量は、
その電極を使用する条件によって決定すればよい。従っ
て本発明の不溶性陽極を鋼板の電気メッキに使用する場
合、陰分極を生じる電極の外縁部を被覆する電極活物質
の量を調節することによって、陽極の鋼帯対向面(板
道)と外縁部との電解可能時間を同等にし、電極全体と
しての寿命を可能な限度まで長くすることができる。こ
れに伴い電極の補修、交換等の作業の軽減に貢献でき
る。
幅方向の断面図(b)である。
置を示す説明図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 電解浴に浸された2枚の不溶性陽極の間
に所定間隔を置いて陰極となる鋼帯が走行し、鋼帯の電
気メッキを行う装置に使用される不溶性陽極において、
電解中2枚の陽極間の電位差により陰分極を生じる電極
面の電極活物質の被覆量を、陰分極を生じない電極面の
被覆量より大ならしめたことを特徴とする不溶性陽極。 - 【請求項2】 2枚の不溶性陽極の幅が、その間を走行
する鋼帯の幅より大であり、該不溶性陽極の陰分極を生
じる電極面が鋼帯に対向する面の外縁部である請求項1
に記載の不溶性陽極。 - 【請求項3】 不溶性陽極の陰分極を生じる電極面を被
覆する電極活物質の量が60g/m2 以上である請求項
1又は2に記載の不溶性陽極。 - 【請求項4】 不溶性陽極の陰分極を生じない電極面を
被覆する電極活物質の量が15g/m2 以上、60g/
m2 未満である請求項1又は2に記載の不溶性陽極。 - 【請求項5】 電極活物質が酸化イリジウム又は酸化イ
リジウムと、チタン、タンタル、ニオブ、タングステ
ン、ジルコニウムよりなる群より選ばれた少なくとも1
種の金属の酸化物との混合酸化物である請求項1,2,
3又は4に記載の不溶性陽極。
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