JPH09157879A - 電解用電極およびその製造方法 - Google Patents

電解用電極およびその製造方法

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JPH09157879A
JPH09157879A JP7338214A JP33821495A JPH09157879A JP H09157879 A JPH09157879 A JP H09157879A JP 7338214 A JP7338214 A JP 7338214A JP 33821495 A JP33821495 A JP 33821495A JP H09157879 A JPH09157879 A JP H09157879A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒ
ドリン、チオ尿素等の特定の有機化合物を添加剤として
用いた場合でも、異常消耗を起こさず、長期間にわたっ
て安定使用が可能であり、長寿命で耐久性に優れた電解
用電極を提供する。 【解決手段】 導電性基体上に酸化タンタルを含有する
下地層を有し、この下地層を介して、酸化イリジウム、
酸化タンタルおよび酸化ケイ素を含有する被覆層を有す
る電解用電極。エチレンシアンヒドリン、エチレンクロ
ロヒドリン、チオ尿素、ポリエチレングリコール、酢酸
およびアセトニトリルから選択される少なくとも1種の
有機化合物を含む電解液の電解に適用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工業用および民生用電
解プロセスに使用される電解用電極およびその製造方法
に関する。さらに詳しくいえば、金属電解液を電気分解
して、陽極で酸素を発生させる反応に用いられ、耐久性
に優れかつ酸素過電圧の低い電解用電極と、これを簡易
かつ効率よく製造する方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属チタンを導電性基体とし、そ
の上に白金族金属やその酸化物の被覆層を設けた金属電
極は、種々の電解工業の分野において使用されている。
例えば、チタン基板上に、ルテニウムとチタンの酸化物
や、ルテニウムとスズの酸化物の被覆を熱分解法により
施した電極が食塩電解による塩素発生用陽極として知ら
れている(特公昭46−21884号公報、特公昭48
−3954号公報、特公昭50−11330号公報、特
開昭52−63176号公報)。
【0003】しかし、これらの電極は、食塩電解のよう
に高濃度塩水溶液の電解には適するが、希薄な塩水溶液
の電解や海水の電解では、耐久性が十分でなく、塩素発
生の効率も十分満足しうるものではない。
【0004】さらに、特開昭55−152143号公報
や特開昭56−150148号公報には、非晶質合金を
電極材料として用いた電極が食塩のようなアルカリ金属
ハロゲン化物水溶液の電解用電極として開示されてい
る。しかし、非晶質合金は作製に際し大がかりな装置を
必要とする。
【0005】電解工業においては、前記の食塩電解の場
合のように塩素発生を伴う電解のほかに、酸、アルカリ
または塩の回収、銅、亜鉛などの金属の採取や精製、め
っき、銅などの金属箔製造、金属表面処理、陰極防食、
廃液処理などの酸素発生を伴う電解プロセスも数多くの
分野で利用されている。そして、このような酸素発生を
伴う電解では、鉛系電極が最も一般的に使用されてい
る。その他、不溶性電極として、チタン基板上に酸化イ
リジウムと白金を被覆した電極、酸化イリジウム−酸化
スズ系電極、酸化イリジウム−酸化タンタル系電極など
の酸化イリジウム系電極や白金めっきチタン電極などが
知られている。
【0006】しかしながら、これらの公知の電極は、そ
の使用用途によっては種々のトラブルを生じ、必ずしも
適当なものとはいえない。例えば亜鉛めっき用の陽極と
して可溶性亜鉛陽極を用いると、陽極の溶解が著しいの
で、極間距離の調節を頻繁に行わなければならないし、
また鉛系の不溶性陽極を用いると、電解液中に混入した
鉛の影響によりめっき不良を生じる。また、酸化イリジ
ウムと白金を被覆した電極や、白金めっきチタン電極で
は、100A/dm2 以上の高電流密度で、いわゆる高速亜
鉛めっきを行う場合には、消耗が激しく使用することが
できない。
【0007】従って、酸素発生を伴う電解プロセスの使
用用途ごとに、なんら障害を伴わずに適用できる電極を
開発することが、電極製造技術における重要な課題の1
つになっている。このような特殊電解プロセスの1例と
しては、亜鉛めっきやニッケルめっきの電解プロセスに
おいて、主として光沢剤などに用いられるエチレンシア
ンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素等のイ
オウ、窒素および酸素の少なくとも1種を含む有機化合
物を含有する電解液を用いる場合が挙げられる。
【0008】例えば、特開昭63−235493号公報
には、Ir50〜90モル%、Ta50〜10モル%の
下地層を設け、この上に酸化イリジウム層を形成した酸
素発生用電極が開示されている。この電極は、めっき浴
中に上記有機化合物を全く含まない場合には問題なく使
用可能であるが、めっき浴中に上記有機化合物を添加し
た場合には、耐久性が低下して実用性を失ってしまうも
のがあることが判明した。
【0009】また、一般に、被覆層を有するチタン基体
電極を陽極として酸素発生を伴う電解を行うと、基体と
被覆層との間に酸化チタン層を生じたり、チタン基体の
腐食により、次第に陽極電位が高くなり、遂には被覆層
が剥離して陽極が不動態化する現象がしばしばみられ
る。この現象は特に、電解液中に上記有機物化合物が添
加された場合に顕著である。
【0010】なお、チタン基体に形成される酸化チタン
の生成を抑制したり、チタン基体の腐食を抑制し、陽極
の不動態化を防止するために、適当な被覆層を選択した
り、適当な下地層を設けることが種々提案されてきてい
る。
【0011】例えば、特公昭51−19429号公報に
は、比較的薄く、導電性で比較的酸素に対して不浸透性
を示す中間障壁層を有する電極が開示されている。ま
た、特公昭49−48072号公報には、中間層とし
て、電極基体をフィルム形成金属イオン含有水溶液中に
浸漬して、そしてこの溶液から電気的もしくは化学的酸
化によりフィルム形成金属の酸化物を沈着させることに
より中間層を形成する電極の製造法が開示されている。
しかし、上記有機化合物を添加したときには、中間障壁
層の上や中間層の上に形成されている電極触媒層の消耗
が激しくなり、耐久性が不十分なため使用できない。
【0012】さらに、特開平6−146047号公報、
特公平7−7447号公報には、チタン等のバルブ金属
基体上にスパッタリング法等の物理的気相成長法やプラ
ズマ溶射法により、シリカとタンタルとの混合物、シリ
カとチタンとの混合物からなる薄膜中間層を設け、さら
にこの上に酸化イリジウムと酸化タンタルとの混合物か
らなるバルク状電極活性層を設けた酸素発生用陽極が開
示されている。しかし、これらの電極では、薄膜中間層
がスパッタリング法やプラズマ溶射法等により形成され
るため作業効率が悪く、大型の電解用電極の製造には向
かない。また、製造コストが高くなる。しかも、上記有
機化合物を添加した電解液を用いる場合には、電極活性
層の消耗が激しいため、中間層の耐酸化性が向上したと
しても十分な耐久性が得られないことが判明した。この
ような事情から、電解液が上記有機化合物を含有してい
る場合でも異常消耗を起こさず、耐久性の良好な電極が
切望されている。
【0013】また、特開平7−268695号公報で
は、チタン等のバルク基体上に白金族元素酸化物および
酸化ケイ素からなる被膜(電極活性層)を形成した電解
用電極が開示されている。同公報には、この電極がエチ
レンクロロヒドリンを含む硫酸酸性硫酸ナトリウム電解
液に対して高耐久性を示す旨が記載されている。しか
し、この電極にはチタン基体の腐食を抑制する下地層が
存在しないため、多くの電極活性層を残したまま電極の
不動態化が起こってしまう。このため、電極活性層の触
媒の消耗が抑えられたとしても、十分な耐久性を得るこ
とはできない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、金属
電解液を電解する電極であって、エチレンシアンヒドリ
ン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素等の有機化合物
を添加剤として用いた場合でも、異常消耗を起こさず、
長期間にわたって安定使用が可能であり、長寿命で耐久
性に優れた電解用電極を提供することであり、また、こ
のような電解用電極を簡易かつ効率よく製造する方法を
提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(6)のいずれかによって達成される。 (1)導電性基体上に酸化タンタルを含有する下地層を
有し、この下地層を介して、酸化イリジウム、酸化タン
タルおよび酸化ケイ素を含有する被覆層を有する電解用
電極。 (2)被覆層における酸化イリジウムの含有量がIr換
算で全金属中の2〜90原子%、酸化タンタルの含有量
がTa換算で全金属中の2〜50原子%、酸化ケイ素含
有量がSi換算で全金属中の3〜75原子%である上記
(1)の電解用電極。 (3)下地層が酸化ケイ素を含有する上記(1)または
(2)の電解用電極。 (4)エチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリ
ン、チオ尿素、ポリエチレングリコール、酢酸およびア
セトニトリルから選択される少なくとも1種の有機化合
物を含む電解液の電解に適用される上記(1)〜(3)
のいずれかの電解用電極。 (5)上記(1)〜(4)のいずれかの電解用電極を得
るに際し、前記下地層および前記被覆層を熱分解法によ
って形成する電解用電極の製造方法。 (6)被覆層に含有される酸化ケイ素の原料がシリカゾ
ルである上記(5)の電解用電極の製造方法。
【0016】
【作用および効果】主として光沢剤などに用いられるエ
チレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ
尿素等の有機化合物を含有する電解液の電解に適用した
場合、従来の電極では異常消耗が発生しやすかった。
【0017】これに対し、本発明では、電極を上記構成
とすることにより、上記有機化合物を用いた場合でも電
極の異常消耗が抑制され、高い耐久性を得ることが可能
となった。
【0018】また、本発明では、下地層および被覆層を
熱分解法によって形成するので、電極を簡易かつ効率よ
く製造することができる。
【0019】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0020】本発明の電解用電極は、導電性基体上に酸
化タンタルを含有する下地層を有し、この下地層を介し
て、酸化イリジウム、酸化タンタルおよび酸化ケイ素を
含有する被覆層を有する。
【0021】本発明に用いられる導電性基体としては、
例えば、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブなど
のバルブ金属あるいはこれらのバルブ金属の中から選ば
れた2種以上の金属の合金が挙げられる。
【0022】本発明の特徴は、上記有機化合物を添加剤
として用いる電解反応に対し、電極触媒能を有する被覆
層成分として酸化イリジウムおよび酸化タンタルのほか
に酸化ケイ素を用いたところにある。酸化イリジウム
は、酸素発生電解において酸素過電圧の上昇を阻止し、
実用上耐久性のある白金族酸化物である。一方、酸化タ
ンタルは、チタン基体の活性溶解による接合部損傷に対
する耐久性を向上させる効果があり、本発明においても
酸化タンタルを下地層として使用している。しかし、上
記有機化合物を添加剤として用いる電解の場合には、電
極の耐久性が接合部の損傷以外に触媒層の消耗速度に大
きく依存しているので、下地層に酸化タンタル、その上
の被覆層に酸化イリジウム、酸化タンタルといった従来
の2層構造では十分な耐久性が得られない。
【0023】しかし本発明では、酸化タンタルを含む下
地層を設け、この上の被覆層にさらに酸化ケイ素を含有
させることによって、上記の異常消耗を抑制し、十分な
耐久性を得ることが可能となる。被覆層中の酸化ケイ素
は、X線回折図によればアモルファス状態で存在してい
ると考えられる。このような酸化ケイ素相において、酸
化ケイ素はシロキサン結合により網目構造をとって互い
に強固に結合していると考えられる。このため、被覆層
を構成する触媒成分の溶出が防止される。また、走査型
電子顕微鏡写真による表面観察から、酸化ケイ素の存在
によって結晶粒子の微細化が起こり、酸化イリジウム、
酸化タンタル系電極の特徴である干潟構造変化がみられ
る。このため、有効表面積が増大し、酸素過電圧の低減
がはかられる。以上により、電極の長寿命化および耐久
の向上が期待できる。
【0024】これに対し、下地層に酸化タンタルがない
と、チタン基体の活性溶解による接合部損傷が生じるた
め、被覆層に十分な触媒層が存在したとしても十分な耐
久性が得られない。なお、下地層の酸化タンタルの一部
を酸化チタンや酸化ニオブなどの他のバルブ金属酸化物
で置換してもよいが、十分な耐久性を得るためには全バ
ルブ金属中のTaの割合を好ましくは40原子%以上、
より好ましくは60原子%以上とする。また、下地層に
酸化ケイ素を添加することにより、下地層の基体に対す
る密着性が良好となり、その結果、下地層および被覆層
の剥離が生じにくくなる。ただし、下地層中の酸化ケイ
素の含有量は、Si換算で全金属中の好ましくは80原
子%以下、より好ましくは50原子%以下である。な
お、本明細書において「全金属」とは、Si等の半金属
も含む。下地層中の酸化ケイ素が多すぎると、十分な耐
久性が得られにくくなる。
【0025】また、被覆層中において上記の三成分のい
ずれかが欠如すると、上記の効果は得られなくなる。よ
り具体的には、酸化イリジウムと酸化タンタルのみで酸
化ケイ素が存在しないか、酸化イリジウムと酸化ケイ素
のみで酸化タンタルが存在しないと、十分な耐久性が得
られない。酸化ケイ素と酸化タンタルとの併用によって
被覆層の消耗速度の低減がはかられ、電極寿命がさらに
のびる効果が得られる。
【0026】本発明において、上記効果をさらに向上さ
せるには、被覆層中の酸化ケイ素の含有量がSi換算で
全金属中の3〜75原子%、さらには5〜70原子%で
あることが好ましい。酸化ケイ素の含有量が少なくなる
と添加の実効が得られなくなり、酸化ケイ素の含有量が
多くなると、電解によるIrの消耗によって表面に存在
する酸化ケイ素の量が多くなり、電極触媒能を示さなく
なる。
【0027】一方、酸化イリジウムと酸化タンタルの含
有量は、酸化イリジウムがIr換算で全金属中の2〜9
0原子%であることが好ましく、酸化タンタルがTa換
算で全金属中の2〜50原子%であることが好ましい。
上記範囲内で酸化ケイ素を含有した上で、この範囲内で
酸化イリジウムおよび酸化タンタルを含有することによ
り、電極寿命がのびる効果が得られる。
【0028】被覆層は、酸化イリジウム含有量がIr換
算で0.5〜10mg/cm2となるような厚さとすることが
好ましい。酸化イリジウム担持量が少なすぎると本発明
の効果が不十分となり、担持量が多すぎると電解初期に
おいて被覆層の脱落が生じやすくなる。また、下地層
は、酸化タンタル等のバルブ金属と酸化ケイ素との合計
量がバルブ金属+Si換算で0.2〜5mg/cm2となるよ
うな厚さとすることが好ましい。これらの合計担持量が
少なすぎると下地層を設けたことによる効果が不十分と
なり、担持量が多すぎると基体との密着強度が低下しや
すくなる。担持量は蛍光X線分析により求めることがで
きる。
【0029】次に、本発明の電解用電極の製造方法を説
明する。
【0030】この方法では、まず、導電性基体上にタン
タル化合物を含有する溶液を塗布したのち、酸化性雰囲
気中で熱処理して酸化タンタルを含む下地層を形成す
る。このときに使用する塗布液は、熱分解によって酸化
タンタルとなる化合物、例えば、塩化タンタルのような
ハロゲン化タンタルやエトキシタンタルのようなタンタ
ルアルコキシドなどのタンタル化合物を所定の割合で適
当な溶媒に溶解することによって調製する。塗布液を調
製する際の溶媒には特に制限はなく、通常、アルコール
や水等であってよいが、アルコキシドを用いる場合に
は、その分解を避けるために水以外の溶媒を用いる。酸
化性雰囲気中での熱処理は、前記塗布液を導電性基体上
に塗布し、乾燥したのち、酸素の存在下、一般に0.0
5気圧以上の酸素分圧で、好ましくは400〜550℃
の温度範囲において行われる。塗布と熱処理との一連の
操作は、必要な担持量になるまで、通常、複数回繰り返
される。
【0031】次に、下地層上に、イリジウム化合物、タ
ンタル化合物およびケイ素化合物を所定量含有する溶液
を塗布したのち、酸化性雰囲気中で熱処理して各化合物
を熱分解することにより被覆層を形成する。このとき用
いるイリジウム化合物、タンタル化合物としては、熱分
解により酸化イリジウムまたは酸化タンタルになる化合
物であればいずれを用いてもよく、例えば、イリジウム
化合物としては塩化イリジウム酸(H2 IrCl6 ・6
2 O)、塩化イリジウム等を用いることができ、タン
タル化合物としては塩化タンタルのようなハロゲン化タ
ンタルやエトキシタンタルのようなタンタルアルコキシ
ドなどのタンタル化合物を用いることができる。また、
ケイ素化合物としては、熱分解により酸化ケイ素となる
化合物、例えばシリカゾル、シリコンアルコキシドなど
いずれを用いてもよいが、なかでも、シリカゾルを用い
ることが好ましい。シリカゾルを用いることによって、
塗布液の劣化が防止される。シリカゾルとしては、用い
る塗布溶媒等に応じて、イソプロピルアルコール等のア
ルコール、水などを分散媒としたものであってよく、市
販品をそのまま用いることもできる。シリカゾルの粒径
は5〜150nm程度である。
【0032】下地層に酸化ケイ素等を含有させる場合に
は、上記したシリカゾル等の原料化合物を下地層用塗布
液に所定量含有させればよい。
【0033】被覆層用塗布液を調製する際の溶媒には特
に制限はなく、通常、アルコールや水等であってよい
が、アルコキシドを用いる場合には、その分解を避ける
ために水以外の溶媒を用いる。
【0034】被覆層形成の際の酸化性雰囲気中での熱処
理は、前記塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥したの
ち、酸素の存在下、一般に0.05気圧以上の酸素分圧
で、好ましくは400〜600℃の温度範囲で行われ
る。塗布と熱処理との一連の操作は、必要な担持量にな
るまで、通常、複数回繰り返される。
【0035】本発明の電解用電極は、金属精製、金属採
取、金属箔製造、排液処理等における各種電解液の電解
プロセスにおいて、酸素発生用電極などとして使用する
ことができるが、特に、主として光沢剤などに用いられ
る有機化合物を含む金属電解液の電解における陽極、す
なわち酸素発生用電極として好適である。
【0036】上記有機化合物としてエチレンシアンヒド
リン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素、ポリエチレ
ングリコール、酢酸およびアセトニトリルから選択され
る少なくとも1種を用いた場合に本発明の効果は高く、
特に、エチレンシアンヒドリンおよびエチレンクロロヒ
ドリンから選択される少なくとも1種を用いた場合に本
発明の効果は著しく高くなる。
【0037】電解金属は、亜鉛、銅、ニッケル、鉄、
錫、ビスマス、アンチモン、ヒ素、各種貴金属等のいず
れであってもよい。特に、亜鉛またはニッケルを含むめ
っき膜、特に、Zn、Zn−Cr、Zn−Co、Zn−
Co−Mnや、Ni、Ni−Cr、Ni−Snのめっき
膜を形成する際に用いるめっき浴に上記有機化合物を添
加した場合に、本発明の電極は好適である。このような
めっき浴としては、例えば、各種硫酸酸性亜鉛めっき浴
や各種硫酸酸性ニッケルめっき浴が挙げられる。
【0038】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明
するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるも
のではない。
【0039】<実施例1>表1に示される組成の下地層
および被覆層を設けた電解用電極のサンプルを作製し
た。
【0040】まず、各サンプルの下地層組成に応じ、タ
ンタルブトキシド{Ta(OC255 }、イソプロ
ピルアルコールに分散したシリカゾル(平均粒径10nm
程度)を秤量し、ブタノールを加えて下地層用塗布液を
調製した。また、各サンプルの被覆層組成に応じ、塩化
イリジウム酸(H2 IrCl6 ・6H2 O)、タンタル
ブトキシド、イソプロピルアルコールに分散したシリカ
ゾル(平均粒径10nm程度)を秤量し、ブタノールを加
えて被覆層用塗布液を調製した。これら被覆層用塗布液
の金属(イリジウム+タンタル)換算濃度は、80g/リ
ットルであった。
【0041】熱シュウ酸でエッチングしたチタン基体上
に、上記下地層用塗布液を刷毛で塗布し、乾燥した後、
電気炉に入れて空気を吹き込みながら500℃で焼き付
けた。この塗布、乾燥、焼き付けの操作を、Ta担持量
が0.9〜1.2mg/cm2 となるまで繰り返し、下地層
とした。
【0042】続いて、下地層上に上記被覆層用塗布液を
刷毛で塗布し、乾燥した後、電気炉に入れて空気を吹き
込みながら500℃で焼き付けた。この塗布、乾燥、焼
き付けの操作を、Ir担持量が1.8〜2.3mg/cm2
となるまで9〜14回繰り返し、被覆層とした。
【0043】このようにして作製したサンプルについ
て、以下の特性を調べた。結果を表1に示す。
【0044】寿命試験I 60℃、1モル/リットル硫酸水溶液中で寿命試験を行
なった。各サンプルを陽極とし、陰極には白金を用い、
電流密度200A/dm2 で電解を行い、電極寿命を下記の
基準で評価した。 ○:電解可能な時間が2000時間以上 △:電解可能な時間が1000時間以上2000時間未
満 ×:電解可能な時間が1000時間未満
【0045】寿命試験II 上記寿命試験Iで用いた硫酸水溶液にエチレンクロロヒ
ドリンを0.1モル/リットルとなるように溶解した溶
液を用い、その他は上記寿命試験Iと同様にして電極寿
命を下記の基準で評価した。 ◎:電解可能な時間が250時間以上 ○:電解可能な時間が200時間以上250時間未満 △:電解可能な時間が100時間以上200時間未満 ×:電解可能な時間が100時間未満
【0046】密着強度 電解液中のサンプルの機械的強度を測定した。上記各サ
ンプルを陽極とし、60℃、1モル/リットル硫酸水溶
液中で、陰極に白金を用い、電流密度200A/dm2 で電
解を1000時間行い、その後、超音波による振動を5
分間与え、振動付与前後の下地層+被覆層の厚さを蛍光
X線分析により測定して減量分を求め、下記基準で評価
した。 ○:厚さの減量分が5重量%以下 △:厚さの減量分が5重量%超10重量%以下 ×:厚さの減量分が10重量%超
【0047】酸素過電圧 上記各サンプルについて、電位走査法により、30℃、
1モル/リットル硫酸水溶液中で電流密度20A/dm2
おける電圧を測定した。
【0048】
【表1】
【0049】表1から本発明の効果が明らかである。す
なわち、本発明サンプル(No. 1〜12)では、電極と
しての寿命が長く、密着強度が高く、酸素過電圧が低
い。これに対し、被覆層が酸化ケイ素を含まない比較サ
ンプル(No. 14〜17)では、酸素過電圧が高くなっ
ており、エチレンクロロヒドリンに対する耐久性も全般
的に劣っている。また、被覆層が酸化タンタルを含まな
い比較サンプル(No. 18〜22)および下地層を設け
なかった比較サンプル(No. 23〜27)では、エチレ
ンクロロヒドリンに対する耐久性が低くなっている。
【0050】なお、サンプルNo. 31〜34は、前記し
た特開平7−268695号公報に記載された電極と同
様な組成の被覆層をもつものであるが、下地層をもた
ず、また、被覆層が酸化タンタルを含まないため、エチ
レンクロロヒドリンに対する耐久性が低くなっている。
特開平7−268695号公報では、エチレンクロロヒ
ドリンに対する耐久性をうたっているが、同公報の図2
に示される耐久時間(触媒塗布回数n=12前後の電極
のもの)と、上記比較サンプルNo. 31〜34の耐久時
間とを比較すると、同等であることがわかる。そして、
上記表1では、電流密度が特開平7−268695号公
報図2における電流密度よりも高いにもかかわらず、本
発明サンプルの耐久時間は特開平7−268695号公
報図2のn=30程度のものの耐久時間と同等である。
これらの比較から、本発明の効果が明らかである。
【0051】<実施例2>上記寿命試験IIにおけるエチ
レンクロロヒドリンを表2に示す有機化合物に替えた他
は上記寿命試験IIと同様にして溶液を調製し、これを用
いて表1に示すサンプルの一部について寿命試験を行な
った。各有機化合物と各サンプルとの組み合わせにおけ
る電解可能な時間を、表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】表2から、本発明のサンプルはエチレンク
ロロヒドリン以外の有機化合物を含む電解液に対しても
耐久性が高いことがわかる。
【0054】<実施例3>下記のZn−Co硫酸めっき
浴を用いて、表1のサンプルの寿命を調べた。めっき浴 ZnSO4 ・7H2 O 300 g/L CoSO4 ・7H2 O 10 g/L MoSO4 ・7H2 O 1.5 g/L Na2 SO4 ・10H2 O 100 g/L エチレンシアンヒドリン 1 g/L pH 3.0〜4.0 温度 55〜65℃ 電流密度 30 A/dm2
【0055】この結果、比較サンプルでは寿命が半年以
下であったが、本発明サンプルでは1年以上の寿命が得
られた。
【0056】以上の各実施例から、本発明の効果が明ら
かである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斎藤 弘聡 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体上に酸化タンタルを含有する
    下地層を有し、この下地層を介して、酸化イリジウム、
    酸化タンタルおよび酸化ケイ素を含有する被覆層を有す
    る電解用電極。
  2. 【請求項2】 被覆層における酸化イリジウムの含有量
    がIr換算で全金属中の2〜90原子%、酸化タンタル
    の含有量がTa換算で全金属中の2〜50原子%、酸化
    ケイ素含有量がSi換算で全金属中の3〜75原子%で
    ある請求項1の電解用電極。
  3. 【請求項3】 下地層が酸化ケイ素を含有する請求項1
    または2の電解用電極。
  4. 【請求項4】 エチレンシアンヒドリン、エチレンクロ
    ロヒドリン、チオ尿素、ポリエチレングリコール、酢酸
    およびアセトニトリルから選択される少なくとも1種の
    有機化合物を含む電解液の電解に適用される請求項1〜
    3のいずれかの電解用電極。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの電解用電極を
    得るに際し、前記下地層および前記被覆層を熱分解法に
    よって形成する電解用電極の製造方法。
  6. 【請求項6】 被覆層に含有される酸化ケイ素の原料が
    シリカゾルである請求項5の電解用電極の製造方法。
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