JP3658823B2 - 電解用電極およびその製造方法 - Google Patents

電解用電極およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、工業用および民生用電解プロセスに使用される電解用電極およびその製造方法に関する。さらに詳しくいえば、金属電解液を電気分解して、陽極で酸素を発生させる反応に用いられ、耐久性に優れかつ酸素過電圧の低い電解用電極と、これを簡易かつ効率よく製造する方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属チタンを導電性基体とし、その上に白金族金属やその酸化物の被覆層を設けた金属電極は、種々の電解工業の分野において使用されている。例えば、チタン基板上に、ルテニウムとチタンの酸化物や、ルテニウムとスズの酸化物の被覆を熱分解法により施した電極が食塩電解による塩素発生用陽極として知られている(特公昭46−21884号公報、特公昭48−3954号公報、特公昭50−11330号公報、特開昭52−63176号公報)。
【0003】
しかし、これらの電極は、食塩電解のように高濃度塩水溶液の電解には適するが、希薄な塩水溶液の電解や海水の電解では、耐久性が十分でなく、塩素発生の効率も十分満足しうるものではない。
【0004】
さらに、特開昭55−152143号公報や特開昭56−150148号公報には、非晶質合金を電極材料として用いた電極が食塩のようなアルカリ金属ハロゲン化物水溶液の電解用電極として開示されている。しかし、非晶質合金は作製に際し大がかりな装置を必要とする。
【0005】
電解工業においては、前記の食塩電解の場合のように塩素発生を伴う電解のほかに、酸、アルカリまたは塩の回収、銅、亜鉛などの金属の採取や精製、めっき、銅などの金属箔製造、金属表面処理、陰極防食、廃液処理などの酸素発生を伴う電解プロセスも数多くの分野で利用されている。そして、このような酸素発生を伴う電解では、鉛系電極が最も一般的に使用されている。その他、不溶性電極として、チタン基板上に酸化イリジウムと白金を被覆した電極、酸化イリジウム−酸化スズ系電極、酸化イリジウム−酸化タンタル系電極などの酸化イリジウム系電極や白金めっきチタン電極などが知られている。
【0006】
しかしながら、これらの公知の電極は、その使用用途によっては種々のトラブルを生じ、必ずしも適当なものとはいえない。例えば亜鉛めっき用の陽極として可溶性亜鉛陽極を用いると、陽極の溶解が著しいので、極間距離の調節を頻繁に行わなければならないし、また鉛系の不溶性陽極を用いると、電解液中に混入した鉛の影響によりめっき不良を生じる。また、酸化イリジウムと白金を被覆した電極や、白金めっきチタン電極では、100A/dm2 以上の高電流密度で、いわゆる高速亜鉛めっきを行う場合には、消耗が激しく使用することができない。
【0007】
従って、酸素発生を伴う電解プロセスの使用用途ごとに、なんら障害を伴わずに適用できる電極を開発することが、電極製造技術における重要な課題の1つになっている。このような特殊電解プロセスの1例としては、亜鉛めっきやニッケルめっきの電解プロセスにおいて、主として光沢剤などに用いられるエチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素等のイオウ、窒素および酸素の少なくとも1種を含む有機化合物を含有する電解液を用いる場合が挙げられる。
【0008】
例えば、特開昭63−235493号公報には、Ir50〜90モル%、Ta50〜10モル%の下地層を設け、この上に酸化イリジウム層を形成した酸素発生用電極が開示されている。この電極は、めっき浴中に上記有機化合物を全く含まない場合には問題なく使用可能であるが、めっき浴中に上記有機化合物を添加した場合には、耐久性が低下して実用性を失ってしまうものがあることが判明した。
【0009】
また、一般に、被覆層を有するチタン基体電極を陽極として酸素発生を伴う電解を行うと、基体と被覆層との間に酸化チタン層を生じたり、チタン基体の腐食により、次第に陽極電位が高くなり、遂には被覆層が剥離して陽極が不動態化する現象がしばしばみられる。この現象は特に、電解液中に上記有機物化合物が添加された場合に顕著である。
【0010】
なお、チタン基体に形成される酸化チタンの生成を抑制したり、チタン基体の腐食を抑制し、陽極の不動態化を防止するために、適当な被覆層を選択したり、適当な下地層を設けることが種々提案されてきている。
【0011】
例えば、特公昭51−19429号公報には、比較的薄く、導電性で比較的酸素に対して不浸透性を示す中間障壁層を有する電極が開示されている。また、特公昭49−48072号公報には、中間層として、電極基体をフィルム形成金属イオン含有水溶液中に浸漬して、そしてこの溶液から電気的もしくは化学的酸化によりフィルム形成金属の酸化物を沈着させることにより中間層を形成する電極の製造法が開示されている。しかし、上記有機化合物を添加したときには、中間障壁層の上や中間層の上に形成されている電極触媒層の消耗が激しくなり、耐久性が不十分なため使用できない。
【0012】
さらに、特開平6−146047号公報、特公平7−7447号公報には、チタン等のバルブ金属基体上にスパッタリング法等の物理的気相成長法やプラズマ溶射法により、シリカとタンタルとの混合物、シリカとチタンとの混合物からなる薄膜中間層を設け、さらにこの上に酸化イリジウムと酸化タンタルとの混合物からなるバルク状電極活性層を設けた酸素発生用陽極が開示されている。しかし、これらの電極では、薄膜中間層がスパッタリング法やプラズマ溶射法等により形成されるため作業効率が悪く、大型の電解用電極の製造には向かない。また、製造コストが高くなる。しかも、上記有機化合物を添加した電解液を用いる場合には、電極活性層の消耗が激しいため、中間層の耐酸化性が向上したとしても十分な耐久性が得られないことが判明した。このような事情から、電解液が上記有機化合物を含有している場合でも異常消耗を起こさず、耐久性の良好な電極が切望されている。
【0013】
また、特開平7−268695号公報では、チタン等のバルク基体上に白金族元素酸化物および酸化ケイ素からなる被膜(電極活性層)を形成した電解用電極が開示されている。同公報には、この電極がエチレンクロロヒドリンを含む硫酸酸性硫酸ナトリウム電解液に対して高耐久性を示す旨が記載されている。しかし、この電極にはチタン基体の腐食を抑制する下地層が存在しないため、多くの電極活性層を残したまま電極の不動態化が起こってしまう。このため、電極活性層の触媒の消耗が抑えられたとしても、十分な耐久性を得ることはできない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、金属電解液を電解する電極であって、エチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素等の有機化合物を添加剤として用いた場合でも、異常消耗を起こさず、長期間にわたって安定使用が可能であり、長寿命で耐久性に優れた電解用電極を提供することであり、また、このような電解用電極を簡易かつ効率よく製造する方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(4)のいずれかによって達成される。
(1)導電性基体上に酸化ケイ素を含有してもよい酸化タンタルよりなる熱分解法によって形成された下地層を有し、この下地層を介して、酸化イリジウムの含有量がIr換算で全金属中の2〜90原子%、酸化タンタルの含有量がTa換算で全金属中の2〜50原子%、酸化ケイ素含有量がSi換算で全金属中の3〜75原子%である熱分解法によって形成された被覆層を有する電解用電極。
(2)下地層が酸化ケイ素を含有する(1)の電解用電極。
(3)エチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素、ポリエチレングリコール、酢酸およびアセトニトリルから選択される少なくとも1種の有機化合物を含む電解液の電解に適用される(1)または(2)に記載の電解用電極。
(4)被覆層に含有される酸化ケイ素の原料がシリカゾルである(1)〜(3)のいずれかに記載の電解用電極の製造方法。
【0016】
【作用および効果】
主として光沢剤などに用いられるエチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素等の有機化合物を含有する電解液の電解に適用した場合、従来の電極では異常消耗が発生しやすかった。
【0017】
これに対し、本発明では、電極を上記構成とすることにより、上記有機化合物を用いた場合でも電極の異常消耗が抑制され、高い耐久性を得ることが可能となった。
【0018】
また、本発明では、下地層および被覆層を熱分解法によって形成するので、電極を簡易かつ効率よく製造することができる。
【0019】
【具体的構成】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0020】
本発明の電解用電極は、導電性基体上に酸化タンタルを含有する下地層を有し、この下地層を介して、酸化イリジウム、酸化タンタルおよび酸化ケイ素を含有する被覆層を有する。
【0021】
本発明に用いられる導電性基体としては、例えば、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブなどのバルブ金属あるいはこれらのバルブ金属の中から選ばれた2種以上の金属の合金が挙げられる。
【0022】
本発明の特徴は、上記有機化合物を添加剤として用いる電解反応に対し、電極触媒能を有する被覆層成分として酸化イリジウムおよび酸化タンタルのほかに酸化ケイ素を用いたところにある。酸化イリジウムは、酸素発生電解において酸素過電圧の上昇を阻止し、実用上耐久性のある白金族酸化物である。一方、酸化タンタルは、チタン基体の活性溶解による接合部損傷に対する耐久性を向上させる効果があり、本発明においても酸化タンタルを下地層として使用している。しかし、上記有機化合物を添加剤として用いる電解の場合には、電極の耐久性が接合部の損傷以外に触媒層の消耗速度に大きく依存しているので、下地層に酸化タンタル、その上の被覆層に酸化イリジウム、酸化タンタルといった従来の2層構造では十分な耐久性が得られない。
【0023】
しかし本発明では、酸化タンタルを含む下地層を設け、この上の被覆層にさらに酸化ケイ素を含有させることによって、上記の異常消耗を抑制し、十分な耐久性を得ることが可能となる。被覆層中の酸化ケイ素は、X線回折図によればアモルファス状態で存在していると考えられる。このような酸化ケイ素相において、酸化ケイ素はシロキサン結合により網目構造をとって互いに強固に結合していると考えられる。このため、被覆層を構成する触媒成分の溶出が防止される。また、走査型電子顕微鏡写真による表面観察から、酸化ケイ素の存在によって結晶粒子の微細化が起こり、酸化イリジウム、酸化タンタル系電極の特徴である干潟構造変化がみられる。このため、有効表面積が増大し、酸素過電圧の低減がはかられる。以上により、電極の長寿命化および耐久の向上が期待できる。
【0024】
これに対し、下地層に酸化タンタルがないと、チタン基体の活性溶解による接合部損傷が生じるため、被覆層に十分な触媒層が存在したとしても十分な耐久性が得られない。なお、下地層の酸化タンタルの一部を酸化チタンや酸化ニオブなどの他のバルブ金属酸化物で置換してもよいが、十分な耐久性を得るためには全バルブ金属中のTaの割合を好ましくは40原子%以上、より好ましくは60原子%以上とする。また、下地層に酸化ケイ素を添加することにより、下地層の基体に対する密着性が良好となり、その結果、下地層および被覆層の剥離が生じにくくなる。ただし、下地層中の酸化ケイ素の含有量は、Si換算で全金属中の好ましくは80原子%以下、より好ましくは50原子%以下である。なお、本明細書において「全金属」とは、Si等の半金属も含む。下地層中の酸化ケイ素が多すぎると、十分な耐久性が得られにくくなる。
【0025】
また、被覆層中において上記の三成分のいずれかが欠如すると、上記の効果は得られなくなる。より具体的には、酸化イリジウムと酸化タンタルのみで酸化ケイ素が存在しないか、酸化イリジウムと酸化ケイ素のみで酸化タンタルが存在しないと、十分な耐久性が得られない。酸化ケイ素と酸化タンタルとの併用によって被覆層の消耗速度の低減がはかられ、電極寿命がさらにのびる効果が得られる。
【0026】
本発明において、上記効果をさらに向上させるには、被覆層中の酸化ケイ素の含有量がSi換算で全金属中の3〜75原子%、さらには5〜70原子%であることが好ましい。酸化ケイ素の含有量が少なくなると添加の実効が得られなくなり、酸化ケイ素の含有量が多くなると、電解によるIrの消耗によって表面に存在する酸化ケイ素の量が多くなり、電極触媒能を示さなくなる。
【0027】
一方、酸化イリジウムと酸化タンタルの含有量は、酸化イリジウムがIr換算で全金属中の2〜90原子%であることが好ましく、酸化タンタルがTa換算で全金属中の2〜50原子%であることが好ましい。上記範囲内で酸化ケイ素を含有した上で、この範囲内で酸化イリジウムおよび酸化タンタルを含有することにより、電極寿命がのびる効果が得られる。
【0028】
被覆層は、酸化イリジウム含有量がIr換算で0.5〜10mg/cm2となるような厚さとすることが好ましい。酸化イリジウム担持量が少なすぎると本発明の効果が不十分となり、担持量が多すぎると電解初期において被覆層の脱落が生じやすくなる。また、下地層は、酸化タンタル等のバルブ金属と酸化ケイ素との合計量がバルブ金属+Si換算で0.2〜5mg/cm2となるような厚さとすることが好ましい。これらの合計担持量が少なすぎると下地層を設けたことによる効果が不十分となり、担持量が多すぎると基体との密着強度が低下しやすくなる。担持量は蛍光X線分析により求めることができる。
【0029】
次に、本発明の電解用電極の製造方法を説明する。
【0030】
この方法では、まず、導電性基体上にタンタル化合物を含有する溶液を塗布したのち、酸化性雰囲気中で熱処理して酸化タンタルを含む下地層を形成する。このときに使用する塗布液は、熱分解によって酸化タンタルとなる化合物、例えば、塩化タンタルのようなハロゲン化タンタルやエトキシタンタルのようなタンタルアルコキシドなどのタンタル化合物を所定の割合で適当な溶媒に溶解することによって調製する。塗布液を調製する際の溶媒には特に制限はなく、通常、アルコールや水等であってよいが、アルコキシドを用いる場合には、その分解を避けるために水以外の溶媒を用いる。酸化性雰囲気中での熱処理は、前記塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥したのち、酸素の存在下、一般に0.05気圧以上の酸素分圧で、好ましくは400〜550℃の温度範囲において行われる。塗布と熱処理との一連の操作は、必要な担持量になるまで、通常、複数回繰り返される。
【0031】
次に、下地層上に、イリジウム化合物、タンタル化合物およびケイ素化合物を所定量含有する溶液を塗布したのち、酸化性雰囲気中で熱処理して各化合物を熱分解することにより被覆層を形成する。このとき用いるイリジウム化合物、タンタル化合物としては、熱分解により酸化イリジウムまたは酸化タンタルになる化合物であればいずれを用いてもよく、例えば、イリジウム化合物としては塩化イリジウム酸(H2 IrCl6 ・6H2 O)、塩化イリジウム等を用いることができ、タンタル化合物としては塩化タンタルのようなハロゲン化タンタルやエトキシタンタルのようなタンタルアルコキシドなどのタンタル化合物を用いることができる。また、ケイ素化合物としては、熱分解により酸化ケイ素となる化合物、例えばシリカゾル、シリコンアルコキシドなどいずれを用いてもよいが、なかでも、シリカゾルを用いることが好ましい。シリカゾルを用いることによって、塗布液の劣化が防止される。シリカゾルとしては、用いる塗布溶媒等に応じて、イソプロピルアルコール等のアルコール、水などを分散媒としたものであってよく、市販品をそのまま用いることもできる。シリカゾルの粒径は5〜150nm程度である。
【0032】
下地層に酸化ケイ素等を含有させる場合には、上記したシリカゾル等の原料化合物を下地層用塗布液に所定量含有させればよい。
【0033】
被覆層用塗布液を調製する際の溶媒には特に制限はなく、通常、アルコールや水等であってよいが、アルコキシドを用いる場合には、その分解を避けるために水以外の溶媒を用いる。
【0034】
被覆層形成の際の酸化性雰囲気中での熱処理は、前記塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥したのち、酸素の存在下、一般に0.05気圧以上の酸素分圧で、好ましくは400〜600℃の温度範囲で行われる。塗布と熱処理との一連の操作は、必要な担持量になるまで、通常、複数回繰り返される。
【0035】
本発明の電解用電極は、金属精製、金属採取、金属箔製造、排液処理等における各種電解液の電解プロセスにおいて、酸素発生用電極などとして使用することができるが、特に、主として光沢剤などに用いられる有機化合物を含む金属電解液の電解における陽極、すなわち酸素発生用電極として好適である。
【0036】
上記有機化合物としてエチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素、ポリエチレングリコール、酢酸およびアセトニトリルから選択される少なくとも1種を用いた場合に本発明の効果は高く、特に、エチレンシアンヒドリンおよびエチレンクロロヒドリンから選択される少なくとも1種を用いた場合に本発明の効果は著しく高くなる。
【0037】
電解金属は、亜鉛、銅、ニッケル、鉄、錫、ビスマス、アンチモン、ヒ素、各種貴金属等のいずれであってもよい。特に、亜鉛またはニッケルを含むめっき膜、特に、Zn、Zn−Cr、Zn−Co、Zn−Co−Mnや、Ni、Ni−Cr、Ni−Snのめっき膜を形成する際に用いるめっき浴に上記有機化合物を添加した場合に、本発明の電極は好適である。このようなめっき浴としては、例えば、各種硫酸酸性亜鉛めっき浴や各種硫酸酸性ニッケルめっき浴が挙げられる。
【0038】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
表1に示される組成の下地層および被覆層を設けた電解用電極のサンプルを作製した。
【0040】
まず、各サンプルの下地層組成に応じ、タンタルブトキシド{Ta(OC255 }、イソプロピルアルコールに分散したシリカゾル(平均粒径10nm程度)を秤量し、ブタノールを加えて下地層用塗布液を調製した。また、各サンプルの被覆層組成に応じ、塩化イリジウム酸(H2 IrCl6 ・6H2 O)、タンタルブトキシド、イソプロピルアルコールに分散したシリカゾル(平均粒径10nm程度)を秤量し、ブタノールを加えて被覆層用塗布液を調製した。これら被覆層用塗布液の金属(イリジウム+タンタル)換算濃度は、80g/リットルであった。
【0041】
熱シュウ酸でエッチングしたチタン基体上に、上記下地層用塗布液を刷毛で塗布し、乾燥した後、電気炉に入れて空気を吹き込みながら500℃で焼き付けた。この塗布、乾燥、焼き付けの操作を、Ta担持量が0.9〜1.2mg/cm2 となるまで繰り返し、下地層とした。
【0042】
続いて、下地層上に上記被覆層用塗布液を刷毛で塗布し、乾燥した後、電気炉に入れて空気を吹き込みながら500℃で焼き付けた。この塗布、乾燥、焼き付けの操作を、Ir担持量が1.8〜2.3mg/cm2 となるまで9〜14回繰り返し、被覆層とした。
【0043】
このようにして作製したサンプルについて、以下の特性を調べた。結果を表1に示す。
【0044】
寿命試験I
60℃、1モル/リットル硫酸水溶液中で寿命試験を行なった。各サンプルを陽極とし、陰極には白金を用い、電流密度200A/dm2 で電解を行い、電極寿命を下記の基準で評価した。
○:電解可能な時間が2000時間以上
△:電解可能な時間が1000時間以上2000時間未満
×:電解可能な時間が1000時間未満
【0045】
寿命試験 II
上記寿命試験Iで用いた硫酸水溶液にエチレンクロロヒドリンを0.1モル/リットルとなるように溶解した溶液を用い、その他は上記寿命試験Iと同様にして電極寿命を下記の基準で評価した。
◎:電解可能な時間が250時間以上
○:電解可能な時間が200時間以上250時間未満
△:電解可能な時間が100時間以上200時間未満
×:電解可能な時間が100時間未満
【0046】
密着強度
電解液中のサンプルの機械的強度を測定した。上記各サンプルを陽極とし、60℃、1モル/リットル硫酸水溶液中で、陰極に白金を用い、電流密度200A/dm2 で電解を1000時間行い、その後、超音波による振動を5分間与え、振動付与前後の下地層+被覆層の厚さを蛍光X線分析により測定して減量分を求め、下記基準で評価した。
○:厚さの減量分が5重量%以下
△:厚さの減量分が5重量%超10重量%以下
×:厚さの減量分が10重量%超
【0047】
酸素過電圧
上記各サンプルについて、電位走査法により、30℃、1モル/リットル硫酸水溶液中で電流密度20A/dm2 における電圧を測定した。
【0048】
【表1】
Figure 0003658823
【0049】
表1から本発明の効果が明らかである。すなわち、本発明サンプル(No. 1〜)では、電極としての寿命が長く、密着強度が高く、酸素過電圧が低い。これに対し、被覆層が酸化ケイ素を含まない比較サンプル(No.14〜17)では、酸素過電圧が高くなっており、エチレンクロロヒドリンに対する耐久性も全般的に劣っている。また、被覆層が酸化タンタルを含まない比較サンプル(No.18〜22)および下地層を設けなかった比較サンプル(No. 23〜27)では、エチレンクロロヒドリンに対する耐久性が低くなっている。
【0050】
なお、サンプルNo. 31〜34は、前記した特開平7−268695号公報に記載された電極と同様な組成の被覆層をもつものであるが、下地層をもたず、また、被覆層が酸化タンタルを含まないため、エチレンクロロヒドリンに対する耐久性が低くなっている。特開平7−268695号公報では、エチレンクロロヒドリンに対する耐久性をうたっているが、同公報の図2に示される耐久時間(触媒塗布回数n=12前後の電極のもの)と、上記比較サンプルNo. 31〜34の耐久時間とを比較すると、同等であることがわかる。そして、上記表1では、電流密度が特開平7−268695号公報図2における電流密度よりも高いにもかかわらず、本発明サンプルの耐久時間は特開平7−268695号公報図2のn=30程度のものの耐久時間と同等である。これらの比較から、本発明の効果が明らかである。
【0051】
<実施例2>
上記寿命試験IIにおけるエチレンクロロヒドリンを表2に示す有機化合物に替えた他は上記寿命試験IIと同様にして溶液を調製し、これを用いて表1に示すサンプルの一部について寿命試験を行なった。各有機化合物と各サンプルとの組み合わせにおける電解可能な時間を、表2に示す。
【0052】
【表2】
Figure 0003658823
【0053】
表2から、本発明のサンプルはエチレンクロロヒドリン以外の有機化合物を含む電解液に対しても耐久性が高いことがわかる。
【0054】
<実施例3>
下記のZn−Co硫酸めっき浴を用いて、表1のサンプルの寿命を調べた。
めっき浴
ZnSO4 ・7H2 O 300 g/L
CoSO4 ・7H2 O 10 g/L
MoSO4 ・7H2 O 1.5 g/L
Na2 SO4 ・10H2 O 100 g/L
エチレンシアンヒドリン 1 g/L
pH 3.0〜4.0
温度 55〜65℃
電流密度 30 A/dm2
【0055】
この結果、比較サンプルでは寿命が半年以下であったが、本発明サンプルでは1年以上の寿命が得られた。
【0056】
以上の各実施例から、本発明の効果が明らかである。

Claims (4)

  1. 導電性基体上に酸化ケイ素を含有してもよい酸化タンタルよりなる熱分解法によって形成された下地層を有し、この下地層を介して、酸化イリジウムの含有量がIr換算で全金属中の2〜90原子%、酸化タンタルの含有量がTa換算で全金属中の2〜50原子%、酸化ケイ素含有量がSi換算で全金属中の3〜75原子%である熱分解法によって形成された被覆層を有する電解用電極。
  2. 下地層が酸化ケイ素を含有する請求項1記載の電解用電極。
  3. エチレンシアンヒドリン、エチレンクロロヒドリン、チオ尿素、ポリエチレングリコール、酢酸およびアセトニトリルから選択される少なくとも1種の有機化合物を含む電解液の電解に適用される請求項1または2に記載の電解用電極。
  4. 被覆層に含有される酸化ケイ素の原料がシリカゾルである請求項1〜3のいずれかに記載の電解用電極。
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