JP3301559B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性、表面外観に
優れ、かつ、耐衝撃性と成形性、さらに難燃性に優れた
ポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネートは、耐衝撃性、耐熱性
等に優れており、車両分野をはじめ、弱電、医療、食品
等の各分野において幅広く使用されているが、耐摩耗性
に劣るため、その用途が制限されている。このポリカー
ボネートの耐摩耗性を改良するために、従来よりポリテ
トラフルオロエチレンを配合することが行なわれている
(特開昭50−34051号)。しかしながら、この方
法ではポリカーボネート固有の特性である耐衝撃性が低
下し、さらに成形品の表面外観(成形品表面の肌あれ状
態)が著しく低下し、商品価値の低いものしか得られな
いといった状況である。
【0003】このようなポリカーボネートの耐衝撃性を
改良すべくMBS樹脂等のゴム強化樹脂を配合すること
により、耐衝撃性は向上するものの依然として成形品の
表面外観は改良されず、また耐摩耗性にも劣るものであ
る。さらに、これらの性能に加えて難燃性に優れた材料
が要望されているが、未だこれらの性能を満足する材料
は得られていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決する問題点】本発明は、耐摩耗性、表面外
観に優れ、かつ、耐衝撃性と成形性、さらに難燃性に優
れたポリカーボネート樹脂組成物を得ることを目的とす
る。
【0005】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、上記の
問題点につき鋭意検討の結果、ポリカーボネートに対
し、特定のポリテトラフルオロエチレンおよび特定のポ
リフッ化ビニリデンを特定比率にて、さらには芳香族ス
ルホンイミドの金属塩および/または特定のポリテトラ
フルオロエチレンを配合することにより、上記の問題点
を解決できることを見い出し本発明に到達した。
【0006】すなわち、本発明は、ポリカーボネート
(A)、機械的剪断を受けた際にフィブリルを形成しな
いポリテトラフルオロエチレン(B)およびメルトフロ
ーレイト(230℃、5Kg)10以下のポリフッ化ビニ
リデン(C)からなり、(A)、(B)および(C)の
合計100重量部に対し、(A)60〜95重量部およ
び(B)+(C)〜40重量部からなり、かつ、
(B)/(C)が重量比で1/0.5〜1/0.1であ
ることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、さら
には該組成物に対し下記一般式で示される、芳香族スル
ホンイミドの金属塩(D)および/または機械的剪断を
受けた際にフィブリルを形成するポリテトラフルオロエ
チレン(E)を含有してなる樹脂組成物を提供するもの
である。
【0007】
【化2】
【0008】(但し、式中、Arは芳香族基又は置換芳
香族基であり、Mは金属陽イオンである。)
【0009】以下、本発明につき詳細に説明する。本発
明において使用されるポリカーボネート(A)とは、種
々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応
させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合
物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反
応させるエステル交換法によって得られる重合体であ
り、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造
されたポリカーボネートが挙げられる。
【0010】上記ジヒドロキシジアリール化合物として
は、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オク
タン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチ
ルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ
−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス
(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェ
ニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,
5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロ
キシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒド
ロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒド
ロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−
3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒド
ロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシ
ジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,
3’−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロ
キシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシ
ジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−
3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジ
ヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒ
ドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ
−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒ
ドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0011】これらは単独または2種類以上混合して使
用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジル
ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシ
ジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0012】さらに、上記のジヒドロキシアリール化合
物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混
合使用してもよい。
【0013】3価以上のフェノールとしてはフロログル
シン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒ
ドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル
−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘ
プタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニ
ル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキ
シフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−
(4,4’−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシ
ル〕−プロパンなどがあげられる。
【0014】ポリカーボネートの粘度平均分子量は通常
10,000〜100,000 、好ましくは15,000〜35,000である。
かかるポリカーボネートを製造するに際し、分子量調節
剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0015】本発明にて使用されるポリテトラフルオロ
エチレン(B)は、機械的剪断を受けた際にフィブリル
を形成せず、かつ粒子同士の粘着も起こさない種類のポ
リテトラフルオロエチレンである必要がある。(B)成
分として、機械的剪断を受けた際にフィブリルを形成す
る種類のポリテトラフルオロエチレンを使用した場合に
は表面外観に劣り好ましくない。
【0016】なお、上記の機械的剪断とは、単に手中で
こすり合わせることによるものでもあり得る。もしその
際に粒子同士が粘着を起こすならば、本発明にて使用す
る(B)成分としては不適当である。
【0017】また、該ポリテトラフルオロエチレン
(B)は、粒子または微小な凝集塊からなる粉末状で使
用される。粒子径あるいは凝集塊を形成する一次粒子の
径および凝集塊の径は平均0.01〜500μ、好まし
くは0.05〜100μである。
【0018】本発明にて使用されるポリフッ化ビニリデ
ンは、メルトフローレイト(230℃、5Kg)が10
(g/10分)以下である必要がある。メルトフローレ
イトが10以上では表面外観および耐衝撃性に劣り好ま
しくない。
【0019】本発明は、上記ポリカーボネート(A)、
ポリテトラフルオロエチレン(B)およびポリフッ化ビ
ニリデン(C)からなり、(A)、(B)および(C)
の合計100重量部に対し、(A)60〜95重量部お
よび(B)+(C)〜40重量部からなり、かつ、
(B)/(C)が重量比で1/0.5〜1/0.1であ
ることが必要である。
【0020】ポリカーボネート(A)の割合が60重量
部未満では耐衝撃性および成形性に劣り、又95重量部
を越えると耐摩耗性に劣り好ましくない。
【0021】上記(B)/(C)の重量比が1/0.5
未満では耐摩耗性および成形性に劣り、また1/0.1
を越えると耐衝撃性および表面外観に劣り好ましくな
い。
【0022】また、本発明にて使用される芳香族スルホ
ンイミドの金属塩(D)とは、下記一般式で示される化
合物である。
【0023】
【化3】
【0024】(但し、式中、Arは芳香族基又は置換芳
香族基であり、Mは金属陽イオンである。)
【0025】上記好適な金属としては、I族、II族の金
属ならびに銅、アルミニウム、アンチモン等が挙げられ
るが、特にアルカリ金属であることが好ましく、ナトリ
ウム又はカリウムが最も好ましい。
【0026】また、該芳香族スルホンイミドの金属塩
(D)の使用量には特に制限はなく、所望の難燃性を付
与する量で使用することができるが、好ましくは
(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対
し、0.001〜2重量部、さらに好ましくは0.00
1〜1重量部である。
【0027】本発明にて使用されるポリテトラフルオロ
エチレン(E)は、機械的剪断を受けた際にフィブリル
を形成し、かつ粒子同士の粘着を起こす種類のポリテト
ラフルオロエチレンである必要がある。(E)成分とし
て、機械的剪断を受けた際にフィブリルを形成しない種
類のポリテトラフルオロエチレンを使用した場合には難
燃性に劣り好ましくない。
【0028】また、該ポリテトラフルオロエチレン
(E)の使用量には特に制限はなく、所望の難燃性を付
与する量で使用することができるが、好ましくは
(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対
し、0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.01
〜5重量部である。
【0029】上記芳香族スルホンイミドの金属塩(D)
および/またはポリテトラフルオロエチレン(E)は、
(A)、(B)および(C)からなる組成物が有する特
性、すなわち、耐摩耗性、表面外観、耐衝撃性および成
形性を低下させることなく、難燃性を付与することがで
きるものである。特に難燃性の面より、(D)成分およ
び(E)成分を併用することが好ましい。
【0030】上記(A)、(B)および(C)成分、さ
らには(D)および(E)成分の混合方法ならびに混合
順序には特に制限はなく、公知の混合機、例えば、タン
ブラー、リボブレンダー、高速ミキサー等で混合し、溶
融混練して行なうことができる。また、上記3成分の一
括同時混合、または特定成分のみを混合した後、残る成
分を添加混合することも可能である。
【0031】さらに、混合時、必要に応じてテトラブロ
モビスフェノールA、塩素化ビスフェノールのカーボネ
ート誘導体、臭素化ビスフェノールのカーボネート誘導
体のオリゴマー、酸化アンチモン、水酸化アルミニウ
ム、ほう酸亜鉛、トリクレジルホスフェート、トリス
(ジクロロプロピル)ホスフェート、塩素化パラフィ
ン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモベンゼン等の難
燃剤、さらには公知の添加剤、例えば帯電防止剤、離型
剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料などを配合する
ことができる。
【0032】以下に本発明を実施例により具体的に説明
するが、本発明は、これら実施例により何ら限定される
ものではない。
【0033】〔実施例I〕ポリカーボネート(A)、ポ
リテトラフルオロエチレン(B)、ポリフッ化ビニリデ
ン(C)を表−1に示す配合比率に基づき、タンブラー
で混合した後、押出機にて溶融混練し、ペレットを得
た。得られたペレットより4オンスの射出成形機を使用
し、シリンダー設定温度280℃にて各種試験片を作成
し、試験に供した。試験結果を表−1に示す。
【0034】なお、本実施例で得られた材料は以下のと
おりである。
【0035】P C:ビスフェノールAとホスゲンとよ
りなる粘度平均分子量22,000の芳香族ポリカーボネー
ト。
【0036】B−1:ポリテトラフルオロエチレン(ダ
イキン工業(株)製 ルブロンL−5F)
【0037】C−1:ポリフッ化ビニリデン(ダイキン
工業(株)製 VP−850) メルトフローレイト(230℃、5Kg)0.2(g/1
0分)
【0038】C−i:ポリフッ化ビニリデン(ダイキン
工業(株)製 VP−800) メルトフローレイト(230℃、5Kg)15〜30(g
/10分)
【0039】D−1:パラトリルスルホンイミドのカリ
ウム塩
【0040】E−1:ポリテトラフルオロエチレン(イ
ー・アイ・デュポン製テフロン6CJ)
【0041】TBBA:テトラブロモビスフェノールA
ポリカーボネートオリゴマー(グレートレークスケミカ
ル製 BC−52)
【0042】MBS:メチルメタクリレート−ブタジエ
ン−アクリロニトリル共重合体(三菱レーヨン(株)製
E−901)
【0043】また、各種試験方法は以下のとおりであ
る。
【0044】o衝撃強度 ASTM D−256 1/8
”、ノッチ付アイゾット、23℃
【0045】o流動性(メルトフローインデックス)A
STM D−1238 300℃、1.2kg
【0046】o耐摩耗性 PV値 JIS K−721
8A すべり速度 60cm/sec
【0047】o表面外観 成形品表面の外観(肌荒れ、
フローマーク)を目視にて判定。 ○:良好 △:やや不良 ×:不良
【0048】o難燃性 UL94 垂直燃焼試験に準拠
(試験片厚み1/16”)
【0049】〔実施例II〕表−2に示す各成分および配
合比率に基づき、タンブラーで混合した後、押出機にて
溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットより4
オンスの射出成形機を使用し、シリンダー設定温度28
0℃にて各種試験片を作成し、試験に供した。試験結果
を表−2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【発明の効果】本発明におけるポリカーボネート樹脂組
成物は、耐摩耗性、表面外観に優れ、かつ、耐衝撃性と
成形性に優れ、またこれらの特性を損なうことなく難燃
性にも優れるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−5158(JP,A) 米国特許4220583(US,A) 米国特許5041479(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 69/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリカーボネート(A)、機械的剪断を受
    けた際にフィブリルを形成しないポリテトラフルオロエ
    チレン(B)およびメルトフローレイト(230℃、5
    Kg)10以下のポリフッ化ビニリデン(C)からなり、
    (A)、(B)および(C)の合計100重量部に対
    し、(A)60〜95重量部および(B)+(C)
    40重量部からなり、かつ、(B)/(C)が重量比で
    1/0.5〜1/0.1であることを特徴とするポリカ
    ーボネート樹脂組成物。
  2. 【請求項2】下記一般式で示される、芳香族スルホンイ
    ミドの金属塩(D)および/または機械的剪断を受けた
    際にフィブリルを形成するポリテトラフルオロエチレン
    (E)を含有してなる請求項1記載のポリカーボネート
    樹脂組成物。 【化1】 (但し、式中、Arは芳香族基又は置換芳香族基であ
    り、Mは金属陽イオンである。)
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