JP3291561B2 - 光触媒塗料およびその製造方法並びにそれを塗布した光触媒膜とこの光触媒膜を有する基材 - Google Patents

光触媒塗料およびその製造方法並びにそれを塗布した光触媒膜とこの光触媒膜を有する基材

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JP3291561B2 JP13930698A JP13930698A JP3291561B2 JP 3291561 B2 JP3291561 B2 JP 3291561B2 JP 13930698 A JP13930698 A JP 13930698A JP 13930698 A JP13930698 A JP 13930698A JP 3291561 B2 JP3291561 B2 JP 3291561B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒活性、塗膜
強度および透明性に優れた酸化チタン系光触媒塗料並び
にその製造方法およびそれを塗布して形成した光触媒膜
およびこれを有する基材に関するものである。本発明に
係わる光触媒塗膜は、環境中の微量の有害成分を分解す
ることが出来、環境浄化の目的に利用することが出来
る。
【0002】
【従来の技術】酸化チタンが、光触媒として機能し、光
を照射すると物質の分解や酸化を生ずることは従来より
知られている。この酸化チタンの光触媒作用を利用し
て、室内や屋外空間に存在する微量の有害成分、特に微
生物を含む有機物系の有害成分を除去することにより、
環境浄化(例、脱臭、防汚、抗菌、防かび等)を行う試
みがなされている。例えば、ガラスなどの無機系の樹材
に酸化チタン系の光触媒膜を形成し、基材に付着または
接触した有機物を分解することが広く利用されるように
なってきた。この様な光触媒膜には、光触媒活性が高い
という基本的な性質に加えて、皮膜強度が高く、透明性
が高い、ことが求められている。皮膜強度が低いと光触
媒膜の耐久性が不十分となり、その効果が持続しない。
透明性が低いと、基材の美観が損なわれ、ガラスの様な
透明基材には適用出来なくなる。に関しては、酸化チタ
ンの光触媒活性を高めるため、これにカリウム化合物ま
たはカリウム化合物+アルミニウムもしくはリン化合物
を担持させる(特開平8−182934号公報)、ある
いは酸化リンを担持させる(特開平9−75748号公
報)ことが知られている。しかし、この様な他の化合物
を担持させる方法は、十分な活性向上につながらない
上、簡便な方法でもない。光触媒の活性がなお不十分で
あるため、上記公報に記載の光触媒膜は、いずれも酸化
チタン質の光触媒のみからなる光触媒100%の膜であ
る。この様な膜は、酸化チタン粒子を焼結させるか、或
いはゾル−ゲル法により加水分解性チタン化合物の膜を
焼成することにより成膜されるが、いずれの方法でも約
500℃以上の高温の焼成が必要であり、成膜コストが
高い上、適用できる基材の種類が限定される。例えば、
一般的なガラスには適用することが困難である。勿論、
ほとんどの有機系基材にも適用出来ない。また、酸化チ
タン粒子の焼結により成膜された光触媒膜は一般に透明
性が低い。酸化チタンの微粉末をバインダ溶液に分散さ
せた塗料を用いた塗布法により簡便に光触媒膜を形成す
ることも知られている。バインダの使用により成膜温度
が大幅に低下する。しかし、触媒活性のないバインダの
量が増えると光触媒膜の活性が低下するので、実用上十
分な光触媒活性を得るには、光触媒の含有量を80重量
%以上と高くする必要がある。そのため、バインダ量が
不足し、皮膜強度を十分に高くすることが出来ない。ま
た、この方法で成膜された酸化チタン質の光触媒膜は白
濁化し、透明性が十分に高い膜を形成することが出来な
いと従来は考えられて来た(上記特開平9−75748
号公報の第3欄参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、光触
媒活性と皮膜強度と透明性のいずれもが十分に高い光触
媒膜を、バインダを用いた塗布法により簡便に成膜する
ことである。具体的には、バインダ量を減らしても高い
皮膜強度の光触媒膜を形成出来る光触媒塗料とその製造
方法並びにこれを用いて塗布した塗膜を得ることであ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、平均一次
粒子径0.1μm以下の超微粒子酸化チタン、β−ジケ
トン、チタネ−ト系またはアルミニウム系カップリング
剤、有機溶媒からなる分散液とアルコキシシランオリゴ
マ−の部分加水分解物を混合した光触媒塗料を得ること
により、光触媒粉末の含有量を低下させても実用上十分
な有機物分解能を有し、また光触媒粉末の含有量を高く
しても高い皮膜強度を示す光触媒膜が得られるとの知見
を得た。
【0005】本発明は、上記せる知見に基づいて得られ
たものであって、 (1)β−ジケトンおよびカップリング剤含有する有機
溶媒中に、平均一次粒子径が0.1μm以下の超微粒子
酸化チタンを分散させた分散液と、アルコキシシランオ
リゴマーの部分加水分解物の溶液とからなる2液型の光
触媒塗料であって、上記β−ジケトンの添加量が、上記
酸化チタンに対して0.5〜10.0重量%であり、上
記カップリング剤がアルミニウム系またはチタネート系
カップリング剤で、かつ、その添加量が上記酸化チタン
に対して0.1〜5.0重量%であり、上記アルコキシ
シランオリゴマーの平均重合度が2〜100であり、上
記2液を混合した後の酸化チタンの含有量が0.5〜2
0重量%であり、酸化チタン量とアルコキシシランオリ
ゴマ−の部分加水分解物のシリカ換算量との合計量に対
する酸化チタン量の割合が、30〜95wt%である光
触媒塗料。 (2)(1)に記載の光触媒塗料から形成された、ヘイ
ズ値が0.1〜1.0%であり、硬度が鉛筆硬度で3H
以上である光触媒膜。 (3)(1)に記載の光触媒塗料から形成された、ヘイ
ズ値が0.1〜1.0%であり、硬度が鉛筆硬度で3H
以上である光触媒膜を有する無機質基材。 (4)表面に無機質の下地層を設け、その上に(1)に
記載の光触媒塗料から形成された、ヘイズ値が0.1〜
1.0%であり、硬度が鉛筆硬度で3H以上である光触
媒膜を有する有機質基材。に特徴を有するものである。
本発明の光触媒塗料は、β−ジケトンおよびカップリン
グ剤を含有する有機溶媒中に平均一次粒子径0.1μm
以下の超微粒子酸化チタンを分散させ、得られた分散液
をアルコキシシランオリゴマ−の部分加水分解物の溶液
と混合することによって製造される。また本発明の光触
媒塗料を適用するのに好適な基材としては、ガラス、プ
ラスチック、金属、木材、タイルを含むセラミック、セ
メント、コンクリ−ト、繊維および紙よりなる群から選
ばれた材質のものがある。基材の具体例としては、車両
用および道路用ミラ−、車両用ガラス、車両用照明灯と
そのカバ−、レンズ、照明用蛍光灯とそのカバ−、板ガ
ラス、トンネル用内装材および照明灯とそのカバ−、プ
ラスチックフィルムおよびシ−ト、プラスチック成形
体、各種建材/内装材および建物付属物、食器、換気
扇、眼鏡、鏡、天然および合成繊維および布、紙、ブラ
ウン管、カバ−ガラス、ゴ−グル、マスクシ−ルド、標
識、看板、金属板、家電製品のハウジング、焼結金属フ
ィルタ−、ガ−ドレ−ル、ビニ−ルハウス、調理レンジ
とそのフ−ド、流し台、衛生器具、浴槽、家具、屋外照
明用固定材、室内もしくは屋外展示物と表示物、屋外用
家具と遊具、屋外固定構造物よりなる群から選ばれる基
材がある。
【0006】
【本発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につ
いて説明する。本発明の光触媒塗料は、有機溶媒中に光
触媒である超微粒子酸化チタンを分散させた分散液
(A)と、バインダ溶液(B)の2液型の塗料である。
酸化チタン分散液(A)は、光触媒の酸化チタン以外
に、β−ジケトンとカップリング剤を含有し、バインダ
溶液(B)は、バインダであるアルコキシシランオリゴ
マ−の部分加水分解物を含有する。アルコキシシランオ
リゴマ−の部分加水分解物と超微粒子酸化チタンの分散
液とを混合して保存すると、保存中に液がゲル化する傾
向があるため、両者は別々に保管する必要がある。その
ため、本発明の光触媒塗料は2液型とし、使用前にこれ
ら2液を混合して塗布に用いる。
【0007】光触媒の酸化チタンとしては、平均一次粒
子径0.1μm以下の超微粒子のものを使用する。平均
一次粒子径が0.1μm以上より大きい酸化チタンで
は、特に光触媒膜中の酸化チタンの含有量が比較的低い
場合に、光触媒活性が不十分となる。また従来技術で指
摘されている様に、塗膜が白濁化して透明性も著しく低
下する。酸化チタンの平均一次粒子径は、好ましくは
0.01〜0.1μmであり、より好ましくは0.01
〜0.05μmである。この超微粒子酸化チタンの製造
方法は特に制限されない。超微粒子酸化チタンは、四塩
化チタンガスの熱酸化分解による気相法で製造されたも
のが市販されており(例、日本アエロジル社製P−2
5)、これをそのまま利用することが出来る。しかし、
液相法である硫酸法でも、上記の平均一次粒子径を持つ
超微粒子酸化チタンの製造が可能であり、液相法で製造
された超微粒子酸化チタンを使用することも出来る。酸
化チタンは、顔料として使用する場合にはその光触媒活
性を低下させるように、粒子表面にアルミナまたは酸化
ケイ素を被覆する表面処理が行われてから出荷されてい
るが、本発明では光触媒として使用するため、酸化チタ
ンのこの様な表面処理は必要ない。工業的に使用される
酸化チタンには、アナタ−ゼ型とルチル型の2種類の結
晶形のものがある。いずれでも使用できるが、アナタ−
ゼ型の方が光触媒活性が高いため好ましい。酸化チタン
は、平均一次粒子径が、上記の様に微細であれば、本発
明の塗料により成膜することで十分に高活性の光触媒膜
を成膜出来るので、光触媒活性を高めるために他の元素
をド−プする必要はない。しかし、光触媒活性の向上の
ために1種もしくは2種以上の元素をド−プした超微粒
子酸化チタンを使用してもよい。この様なド−プ元素と
しては、上記の様にカリウム、リン、カリウム+アルミ
ニウムまたはリンなどが知られている。また、ケイ素や
鉄もド−プ元素として使用出来る。
【0008】この超微粒子酸化チタンを分散させる有機
溶媒は特に制限されない。使用出来る溶媒の例として
は、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタ
ノ−ル等のアルコ−ル類;アセトン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、
キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類が
挙げられる。有機溶媒は1種でも2種以上を混合して使
用してもよい。好ましい溶媒はアルコ−ル類である。ア
ルコ−ル類には、アルコキシアルコ−ル、即ち、エ−テ
ル基を含有するアルコ−ルも含まれる。この種のアルコ
−ルの例としては、2−メトキシエタノ−ル、1−メト
キシ−2−プロパノ−ルが挙げられる。
【0009】カップリング剤は、有機溶媒中の超微粒子
酸化チタンの分散性を改善することにより、塗料の保存
性を良好にし、得られた塗膜の透明性を高める(ヘイズ
を低下させる)ために添加する。これらは、超微粒子酸
化チタンを分散させる前の溶媒に予め添加しておいてよ
く、或いは酸化チタンを溶媒に分散させる際に同時に添
加しても良い。これらは1種の分散助剤であるので、酸
化チタンの分散後に添加するのは、不可能ではないが、
あまり好ましくない。β−ジケトンの例としては、2,
4−ペンタンジオン(=アセチルアセトン)、3−メチ
ル−2,4−ペンタンジオン、3−イソプロピル−2,4
−ペンタンジオン、2,2−ジメチル−3,5−ヘキサ
ンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘ
プタンジオン(=ジピバロイルメタン)等が挙げられ、
1種もしくは2種以上を使用することが出来る。β−ジ
ケトンの添加量は、酸化チタンに対して0.5wt%未
満では十分な分散性が得られず、一方10.0wt%を
越えてもさらなる分散性の向上にはつながらないので、
0.5〜10.0wt%の範囲内が好ましい。より好ま
しい添加量は0.5〜5.0wt%である。
【0010】カップリング剤としては、最も一般的なシ
ランカップリング剤も使用できるが、チタネ−ト系また
はアルミニウム系カップリング剤を使用する方が好まし
い。本発明で使用するに適したカップリング剤の例とし
ては、アセトアルコキシ基を有するアルミニウム系カッ
プリング剤、ならびにジアルキルパイロホスフェ−ト基
もしくはジアルキルホスファイト基を有するチタネ−ト
系カップリング剤がある。アセトアルコキシ基を有する
アルミニウム系カップリング剤の例としては、下記
(a)式で示される化合物がある。また、ジアルキルパ
イロホスフェ−ト基を有するチタネ−ト系カップリング
剤の例では、下記(b)〜(d)式で示される化合物が
あり、ジアルキルホスファイト基を有するチタネ−ト系
カップリング剤の例では、下記(e)〜(f)で示され
る化合物げある。これらの1種もしくは2種以上を使用
することが出来る。
【化1】
【0011】カップリング剤の添加量は、酸化チタンに
対して0.1wt%未満では分散性およびヘイズ低下の
効果が得られず、一方、5.0wt%を越えてもさらな
る効果が得られないので、0.1〜5.0wt%の範囲
内が好ましい。より好ましい添加量は、0.1〜2.5
wt%である。バインダ−としては、アルコキシシラン
オリゴマ−を部分的に加水分解した部分加水分解物を含
有することを特徴とし、それによりプラスチック等の基
材に対する高い濡れ性を示す様になる。アルコキシシラ
ンを単量体のままで加水分解して使用すると、プラスチ
ック等の基材に対する濡れ性が改善されない。利用され
るアルコキシシランは、加水分解と重縮合を経て、−S
i−O−で示されるシロキサン結合による重合体となり、
最終的に有機物が完全に除去されるとシリカ質の皮膜を
形成する。このアルコキシシランオリゴマ−の加水分解
を制御された反応条件で行うと、アルコキシシランオリ
ゴマ−の部分加水分解物が得られる。
【0012】アルコキシシランオリゴマ−の部分加水分
解物を得るための加水分解は、酸触媒を使用し、または
使用せずに行うことが出来、この時の酸触媒の使用の有
無や使用する場合の使用量、反応系に存在させる加水分
解用の水の量、反応温度、反応時間といった反応条件を
調節することにより重合度を制御して、アルコキシシラ
ンオリゴマ−の部分加水分解物を得る。本発明で用いる
アルコキシシランオリゴマ−の平均重合度は2〜100
の範囲内であることが好ましい。即ち、このオリゴマ−
は平均で2〜100量体(Si原子を2〜100個含有
するオリゴマ−)であることが好ましい。オリゴマ−の
重合度が100より大きいと、プラスチック等の基材と
の濡れ性および密着性の向上が得られにくくなる。平均
重合度のより好ましい範囲は3〜50であり、特に好ま
しくは4〜35である。
【0013】このアルコキシシランオリゴマ−を溶媒
中、酸触媒の存在下で加水分解して、塗布用組成物とし
て使用する。この加水分解は、水を含有する有機溶媒中
で加熱攪拌下で行うことが好ましい。反応温度は、好ま
しくは30〜60℃であり、よりこのましくは35〜5
5℃である。反応時間は2〜5時間程度が好ましい。
【0014】酸化チタンの含有量が、塗料成分全体に対
して0.5wt%未満では、成膜した時の膜厚が薄くな
り、膜厚を厚くしたい場合、何回か重ね塗りしなければ
ならず、20wt%を越えると、酸化チタンの分散性が
低下する傾向になるので、その含有量は0.5〜20w
t%の範囲が好ましい。より好ましい酸化チタンの含有
量は1.0〜10.0wt%である。
【0015】本発明における塗膜が、透明性および密着
性に極めて優れているのは、アルコキシシランオリゴマ
−の部分加水分解物が、塗膜中で均一に分散し、基材と
酸化チタンとを強固に結び付けているためと考えられ
る。また、光触媒である酸化チタンとバインダの割合に
ついては、酸化チタン量とアルコキシシランオリゴマ−
の部分加水分解物のシリカ換算量との合計量に対する酸
化チタンの割合が、30〜95wt%(換言すると、バ
インダのSiO2含有量が、5〜70wt%)の範囲内で
あることが好ましい。酸化チタンの割合が、30wt%
未満では、光触媒活性が不十分となり、95wt%を越
えると被膜強度が不十分となる。
【0016】本発明の光触媒塗料を基材に塗布し、塗膜
を乾燥させると、基材の表面に光触媒膜が形成される。
塗布法は基材の種類や形状に応じて選択すればよい。乾
燥は常温でも可能であるが、乾燥時間を短縮するため、
加熱乾燥する方が好ましい。加熱温度は60〜170℃
程度が適当であり、基材の耐熱性に応じて選択すればよ
い。光触媒の膜厚は、特に制限されないが、通常は0.
1〜1.0μmの範囲であろう。この光触媒膜は、超微
粒子酸化チタンが持つ優れた光触媒活性を示し、基材と
の密着性に優れ、かつ高硬度で傷つきにくいので、耐久
性に優れ、長期間にわたってその光触媒活性を発揮する
ことが出来る。また、透明性に優れているので、基材の
透明度または外観を損なわない。
【0017】本発明の光触媒塗膜を適用する基材は特に
制限されず、有機質でも無機質でも良い。基材の材質の
例としては、ガラス、プラスチック、金属、木材、タイ
ルを含むセラミック、セメント、コンクリ−ト、繊維お
よび紙が例示される。但し、プラスチックをはじめとす
る有機質基材に光触媒塗膜を適用すると、基材上に形成
された光触媒膜が基材に対して光触媒作用を発揮して、
基材を分解または劣化させることがあるので、有機質基
材に適用する場合には、基材を保護するための下地層を
予め形成し、その上に光触媒膜を形成することが好まし
い。従って、成膜作業が複雑になる。下地層としては、
光触媒膜による劣化を受けない無機質の皮膜が好まし
い。好ましい下地層は、アルコキシシランオリゴマ−か
ら形成されたシリカ質のものである。例えば、本発明に
係わる2液型塗料のバインダ溶液(B)、即ち、アルコ
キシシランオリゴマ−の部分加水分解物の溶液を単独で
使用して、下地層を形成することができる。また、この
下地層の形成には、アルコキシシランオリゴマ−をほぼ
完全に加水分解したシリカゾルも使用することができ
る。光触媒膜のバインダがシリカ質であるので、下地層
もシリカ質であると、下地層と光触媒膜との密着性が特
に良好となり、透明度もほとんど阻害されない。
【0018】基材が無機質の場合には、光触媒膜による
基材の劣化がないので下地層は不要であり、光触媒塗料
を基材に直接塗布すればよい。本発明に係わる光触媒塗
料から形成された光触媒膜は、光(紫外光)が照射され
ると触媒作用を発揮し、この膜に付着または接触した有
機物を分解することができる。また、酸化可能な無機物
を無害化することもできる。(NOxやSOxの酸化)。基
材が透明であれば、光照射は基材の裏面(光触媒膜が形
成されていない側)から行うこともできる。従って、例
えば、窓ガラスの室内側の表面にひかり触媒膜を形成し
ておくと、昼間は太陽光により、夜間は室内の照明光に
より、光触媒作用が発揮され、室内の有害な有機物
(例、建材から発生するアルデヒド類、タバコのヤニ、
調理で発生する油分、細菌やカビなどの微生物)を分解
することができる。
【0019】本発明に係わる光触媒膜から形成された光
触媒膜は、好ましくは鉛筆硬度が3H以上の皮膜強度を
有するので、疵がつきにくく、透明性や光触媒性の低下
が起こりにくい。また、この光触媒膜は好ましくは85
%以上の有機除去率を示す。本発明における有機物除去
率は、後述する実施例に示す方法で測定した場合の値を
意味する。
【0020】本発明の光触媒膜の形成に適した基材の具
体例としては、車両用および道路用ミラ−、車両用ガラ
ス、車両用照明灯とそのカバ−、レンズ、照明用蛍光灯
とそのカバ−、板ガラス(窓ガラス、家具用ガラス、額
用ガラス、温室用ガラス灯を含む)、トンネル用内装材
および照明灯とそのカバ−、プラスチックフイルムおよ
びシ−ト、プラスチック成形体、各種建材/内装材およ
び建物付属物(金属製、セラミック製、コンクリ−ト
製、セメント製、木製、天然石其の他の天然もしくは合
成鉱物製または樹脂製の建材、タイル、ガラスブロッ
ク、床材、天井材、壁紙、ドア、障子、襖、網戸、スダ
レ、畳、ブラインド、日除けまたは雨除けシ−ト、波板
等を含む)、食器、換気扇、眼鏡、鏡、天然および合成
繊維および布、紙、ブラウン管、カバ−ガラス、ゴ−グ
ル、マスクシ−ト、標識、看板、金属板、家電製品のハ
ウジング、焼結金属フイルタ−、ガ−ドレ−ル、ビニ−
ルハウス、調理レンジとそのフ−ド、流し台、衛生器具
(洗面台、トイレ等)、浴槽、家具(食器棚等の戸棚、
テ−ブル、机等)、屋外照明用固定材、室内もしくは屋
外の展示物(例、彫刻)と表示物(例、案内板)、屋外
用家具と遊具(例、ベンチ、すべり台)、屋外固定物
(例、墓石、電柱)等が例示される。但し、基材はこれ
に限定られるものではない。これらの基材は、製品化す
る前の素材の状態、または製品化した後、のいずれかに
おいても本発明の光触媒膜を形成することができる。例
えば、トンネルでは、トンネル用の照明灯とそのカバ
−、トンネル内装用のタイルや金属板の表面に本発明の
光触媒膜を形成することにより、排ガス中の有機成分に
加えてNOxやSOxも分解することができるので、トン
ネル内の空気の浄化に役立つ。その他の基材もその周囲
の有機物を分解することができ、環境の浄化に加えて、
基材の抗菌・防黴にも効果がある。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例について、具体的に説
明する。 [実施例A]表1に記載した配合比および反応条件で、ア
ルコキシシランオリゴマ−の部分加水分解物を合成し
た。表2に記載した様な配合比で、有機溶媒、β−ジケ
トン、チタネ−ト系あるいはアルミネ−ト系カップリン
グ、光触媒粉末(P−25:日本アエロジル社製)を混
合し、ジルコニアビ−ズ100gにより、16時間ペイ
ントシエ−カ−にて分散させた。その後、アルコキシシ
ランオリゴマ−の部分加水分解物と混合し、光触媒塗料
とした。この塗料をスピンコ−タ−にてガラス基板に塗
布し、150℃・1時間乾燥させ、光触媒膜とした。こ
の塗膜のヘイズ(スガ試験機ヘイズコンピユタ−:HG
M−3D)、鉛筆硬度を測定した。その結果を表3に示
した。また、この光触媒膜を有するガラス板(10×1
0cm)を、1リットルのパイレックス製容器の中に塗
布面を上にして入れ、容器を密閉した後、アセトアルデ
ヒドを所定量(350ppm)注入し、この容器の上1
0cmの距離に設置した紫外線ランプ(1.2mW/c
2)で2時間光照射した後のアセトアルデヒド濃度を
ガステック検知管で測定し、次式によりアセトアルデヒ
ドの除去率を算出することにより、光触媒活性を評価し
た。その結果を表2に示した。 除去率(%)=[(初期濃度−光照射後の濃度)/初期
濃度]×100
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】表2から解る様に、本発明によれば、バイ
ンダであるSiO2含有量を酸化チタンとの合計量に対し
て70wt%まで増やしても(換言すると、光触媒であ
る酸化チタンの割合を30wt%まで低下させても)、
高い光触媒活性を保持することができる。一方、バイン
ダのSiO2含有量を5wt%まで低下させても、鉛筆硬
度が3H以上であり、高い皮膜強度を保持していた。鉛
筆硬度はSiO2含有量が多いほど高くなるので、光触媒
膜の傷つき防止を特に高めたい場合には、SiO 2含有量
を多くする方が有利である。また、SiO2含有量が増す
ほどヘイズはやや低下する傾向を示したが、SiO2含有
量が70wt%と多くてもヘイズは1%未満と低く、透
明性に優れていた。一方、バインダ溶液が、アルコキシ
シランの単量体から構成された比較例1〜3では、鉛筆
硬度とヘイズが著しく悪化した。
【0026】[実施例B]各種基材に対する本発明の光触
媒塗料の有効性を実証するために、実施例1の光触媒塗
料を使用し、塗布法と基材を表4、5に示すように変更
して、基材表面に光触媒膜を形成した。塗布後の塗膜の
乾燥は、80℃×1時間の加熱で行った。基材は眼鏡レ
ンズと蛍光灯ランプを除いて、約10×10cm切り出
したものである。こうして光触媒膜を形成した基材の光
触媒活性を前述した有機物除去率により評価した。その
試験結果を表4、5に膜厚と一緒に示した。表4、5か
ら解る様に、基材や塗布法が異なっても、光触媒膜の光
触媒活性は実施例1と実質的に同じであった。従って、
本発明により、各種の基材に対して、その基材の形状や
材質に適した塗布法により、光触媒活性の高い光触媒膜
を形成できることが解る。なお、この試験では、成膜後
すぐに試験に付したため、光触媒膜による基材の劣化は
無視できるので、基材が有機質(PETフィルム、換気
扇、コピ−用紙、および木綿布)である場合について
も、下地の保護層の形成は省略した。しかし、有機質基
材の場合は、光触媒膜が次第に基材を劣化させるため、
前述した様に、保護層(例、シリカ層)を下地に形成す
ることが好ましい。
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【発明の効果】本発明の光触媒膜は、優れた光触媒活性
に加えて、高い透明性と高い皮膜強度を示す。従って、
高い皮膜強度を保持したまま、膜中の酸化チタン含有量
を高くすることが出来、その光触媒活性を極限まで利用
することが出来る。また酸化チタン含有量を低くしても
まだ実用上十分な光触媒活性を示し、膜がさらに高硬度
になるので、耐久性が非常に優れた光触媒膜を得ること
が出来る。この様に、光触媒膜の適用環境に合わせて酸
化チタン含有量を選択することが出来るので、皮膜強度
が特に要求される分野への光触媒膜の展開を図ることが
可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−164334(JP,A) 特開 昭60−79068(JP,A) 特開 昭61−9460(JP,A) 特開 平8−176475(JP,A) 特開 平4−202378(JP,A) 特開 平5−345877(JP,A) 特開 平4−50262(JP,A) 特開 昭64−1769(JP,A) 国際公開97/2212(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 1/00 - 201/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 β−ジケトンおよびカップリング剤含有
    する有機溶媒中に、平均一次粒子径が0.1μm以下の
    超微粒子酸化チタンを分散させた分散液と、アルコキシ
    シランオリゴマーの部分加水分解物の溶液とからなる2
    液型の光触媒塗料であって、 上記β−ジケトンの添加量が、上記酸化チタンに対して
    0.5〜10.0重量%であり、 上記カップリング剤がアルミニウム系またはチタネート
    系カップリング剤で、かつ、その添加量が上記酸化チタ
    ンに対して0.1〜5.0重量%であり、 上記アルコキシシランオリゴマーの平均重合度が2〜1
    00であり、 上記2液を混合した後の酸化チタンの含有量が、0.5
    〜20重量%であり、酸化チタン量とアルコキシシラン
    オリゴマ−の部分加水分解物のシリカ換算量との合計量
    に対する酸化チタン量の割合が、30〜95wt%であ
    ることを特徴とする光触媒塗料。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の光触媒塗料から形成され
    た、ヘイズ値が0.1〜1.0%であり、硬度が鉛筆硬
    度で3H以上である光触媒膜。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の光触媒塗料から形成され
    た、ヘイズ値が0.1〜1.0%であり、硬度が鉛筆硬
    度で3H以上である光触媒膜を有する無機質基材。
  4. 【請求項4】表面に無機質の下地層を設け、その上に請
    求項1に記載の光触媒塗料から形成された、ヘイズ値が
    0.1〜1.0%であり、硬度が鉛筆硬度で3H以上で
    ある光触媒膜を有する有機質基材。
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