JP4238551B2 - 親水性被膜形成用コーティング液及びその製造方法、該コーティング液の使用方法並びに該コーティング液を用いて形成した被膜付き基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種基材の表面に透明な親水性被膜を形成することができるコーティング液及びその製造方法、このコーティング液の使用方法並びにこのコーティング液を用いて形成した被膜付き基材に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタン等の光触媒性半導体材料とシリカとを含む複合材料からなる光触媒性被膜を基材表面に形成し、この基材表面に紫外光を照射すると、光触媒性半導体材料の光励起に応じて基材表面が親水性を示すことが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
このように基材表面が親水性を呈すると、基材がガラスのように透明な場合や、鏡面である場合には基材表面に防曇性が付与される。また、親水性を呈することで基材表面が汚れにくくなり、自己浄化や清掃が容易になる汚れ防止機能も基材表面に付与される。
【0003】
【特許文献1】
特許第2756474号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に示されるように光触媒作用を利用して基材表面に親水性を付与する手段では、基材表面への紫外光の照射が必要となり、例えば、夜間や屋内、トンネル内等のように紫外光が十分に得られない環境では親水性が発現できない。また、明所で紫外光を照射して基材表面に親水性を付与させたとしても、この基材を暗所に保持してしまうと一定の期間しか親水性は保たれない。従って、紫外光の有無にかかわらず基材表面に親水性を常に付与することができる技術がなお求められている。
【0005】
例えば、光触媒作用を利用せずに親水性の被膜を形成する方法としては、被膜中に親水性の界面活性剤を添加する方法がある。しかしこの方法では、界面活性剤の溶出を利用して親水性を保持しているため、その効果が持続しないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、明所で高い親水性を示すだけでなく、十分な光量が確保できない暗所においても高い親水性を示す親水性被膜形成用コーティング液及びその製造方法、該コーティング液の使用方法並びに該コーティング液を用いて形成した被膜付き基材を提供することにある。
本発明の別の目的は、高い透明性を有し、かつ低温成膜性を付与できる親水性被膜形成用コーティング液及びその製造方法、該コーティング液の使用方法並びに該コーティング液を用いて形成した被膜付き基材を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、自己清浄、防曇及び結露防止効果を有する親水性被膜形成用コーティング液及びその製造方法、該コーティング液の使用方法並びに該コーティング液を用いて形成した被膜付き基材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アルコキシシラン等の加水分解性シラン化合物にスルホン酸基等の親水性官能基を導入した化合物と、ある特定の物性を有する酸化チタン粉末とを被膜形成成分として含むコーティング液を基材に塗布すると、この基材表面には明所で高い親水性を示すだけでなく、十分な光量が確保できない暗所においても高い親水性を示すことを見出した。
【0008】
請求項1に係る発明は、少なくとも一部にスルホン酸基又はその前駆基のどちらか一方又はその双方を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と、ルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含みこのアナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.478Å〜3.562Åの範囲を満たす酸化チタン粉末とを親水性有機溶媒に分散させたコーティング液であって、酸化チタン粉末が次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする、基材表面に親水性を付与するためのコーティング液である。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。
請求項1に係る発明では、アルコキシシラン等の加水分解性シラン化合物にスルホン酸基等の親水性官能基を導入した化合物と、上記物性を有する酸化チタン粉末を親水性有機溶媒に分散することにより、明所で高い親水性を示すだけでなく、十分な光量が確保できない暗所においても高い親水性を示すコーティング液が得られる。このコーティング液は高い透明性を有し、かつ低温成膜性を付与できる。また自己清浄、防曇及び結露防止効果を有する。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、酸化チタン粉末がアナターゼ型結晶構造を含み、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値の下限値が3.480Å〜3.504Åであって、その上限値が3.531Å〜3.550Åの範囲を満たすコーティング液である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、酸化チタン粉末がルチル型結晶構造を含み、ルチル型結晶の(110)面の回折ピーク半値幅から求めた(110)面の面間隔d値の下限値が3.222Å〜3.243Åであって、その上限値が3.255Å〜3.280Åの範囲を満たすコーティング液である。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、酸化チタン粉末の一次平均粒子径が0.01μm〜0.03μmであるコーティング液である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4いずれか1項に係る発明であって、酸化チタン粉末の酸化チタン純度が99.5%以上であるコーティング液である。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5いずれか1項に係る発明であって、酸化チタン粉末に含まれるHCl含有量が0.3%以下であるコーティング液である。
【0011】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6いずれか1項に係る発明であって、酸化チタン粉末に含まれるSiO2含有量が0.2%以下、Al2O3含有量が0.3%以下、Fe2O3含有量が0.01%以下であるコーティング液である。
請求項8に係る発明は、請求項1ないし7いずれか1項に係る発明であって、酸化チタン粉末は、揮発性チタン化合物を高温気相中で加水分解することにより製造された粉末であるコーティング液である。
請求項9に係る発明は、請求項1ないし8いずれか1項に係る発明であって、酸化チタン粉末の含有量が0.5〜20重量%であるコーティング液である。
請求項10に係る発明は、請求項1に係る発明であって、前駆基がスルホン酸エステル基、チオ−ル基又はスルフィド基であるコーティング液である。
【0012】
請求項11に係る発明は、少なくとも一部にスルホン酸エステル基を有する加水分解性シラン化合物を親水性有機溶媒に溶解させて溶液を調製し、溶液を水及び酸の存在下で加熱して溶液中のシラン化合物及びスルホン酸エステル基を加水分解し、加水分解した溶液に酸化チタン粉末を分散させる親水性被膜形成用コーティング液の製造方法であって、酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする親水性被膜形成用コーティング液の製造方法である。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。
請求項12に係る発明は、少なくとも一部にチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方を有する加水分解性シラン化合物を親水性有機溶媒中に溶解させて溶液を調製し、溶液をオゾン含有ガス又は過酸化水素で処理して溶液中のチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方をスルホン酸基に転化させ、転化させた溶液に酸化チタン粉末を分散させる親水性被膜形成用コーティング液の製造方法であって、酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする親水性被膜形成用コーティング液の製造方法である。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。
請求項13に係る発明は、請求項11又は12に係る発明であって、酸化チタン粉末が四塩化チタンを高温気相中で加水分解反応させ、反応生成物を急速冷却することにより得られる製造方法である。
【0013】
請求項14に係る発明は、図1に示すように、少なくとも一部にスルホン酸エステル基を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と酸化チタン粉末とを親水性有機溶媒中に含有する溶液を基材12に塗布、乾燥して基材12表面に被膜11を形成し、基材12を加熱して被膜11に含まれるスルホン酸エステル基をスルホン酸基に転化させる基材表面への親水性付与方法であって、酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする、基材表面に親水性を付与する方法である。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。
請求項15に係る発明は、図1に示すように、少なくとも一部にチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と酸化チタン粉末とを親水性有機溶媒中に含有する溶液を基材12に塗布、乾燥して基材12表面に被膜11を形成し、基材12をオゾン含有ガスで処理して、被膜11に含まれるチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方をスルホン酸基に転化させる基材表面への親水性付与方法であって、酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする、基材表面に親水性を付与する方法である。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。
請求項16に係る発明は、請求項14又は15に係る発明であって、酸化チタン粉末が四塩化チタンを高温気相中で加水分解反応させ、反応生成物を急速冷却することにより得られる方法である。
【0014】
請求項17に係る発明は、基材と、この基材の表面に請求項1ないし10いずれか1項に記載のコーティング液又は請求項11ないし13いずれか1項に記載の製造方法により得られたコーティング液を塗布乾燥して形成した被膜とを備えた親水性を有する被膜付き基材である。
請求項18に係る発明は、請求項17に係る発明であって、基材と、この基材の表面に無機質の下地層と、この下地層の上に請求項1ないし10いずれか1項に記載のコーティング液又は請求項11ないし13いずれか1項に記載の製造方法により得られたコーティング液から形成された被膜とを有する親水性を有する被膜付き基材である。
請求項19に係る発明は、請求項17又は18に係る発明であって、基材がガラス、プラスチック、金属、木材、タイルを含むセラミック、セメント、コンクリート、繊維、紙、石及び皮革よりなる群から選ばれた材質である被膜付き基材である。
請求項20に係る発明は、請求項18に係る発明であって、無機質の下地層がシリカ又はアルミナからなる親水性を有する被膜付き基材である。
請求項21に係る発明は、請求項17ないし20いずれか1項に係る発明であって、基材が車両用及び道路用ミラー、車両用ガラス、車両用照明灯とそのカバー、レンズ、照明用蛍光灯とそのカバー、板ガラス、トンネル用内装材及び照明灯とそのカバー、プラスチックフィルム及びシート、プラスチック成形体、各種建材、内装材及び建物付属物、食器、換気扇、眼鏡、鏡、天然及び合成繊維及び布帛、紙、革製品、ブラウン管、カバーガラス、ゴーグル、マスクシールド、標識、看板、金属板、家電製品のハウジング、焼結金属フィルター、ガードレール、ビニールハウス、調理レンジとそのフード、流し台、衛生器具、浴槽、家具、屋外照明用固定材、室内もしくは屋外展示物と表示物、屋外用家具と遊具及び屋外固定構造物よりなる群から選ばれる親水性を有する被膜付き基材である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のコーティング液は、少なくとも一部にスルホン酸基又はその前駆基のどちらか一方又はその双方を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と、酸化チタン粉末とを親水性有機溶媒中に分散させたものである。酸化チタン粉末はアナターゼ型結晶構造を含み、このアナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.478Å〜3.562Åの範囲を満たす粉末である。
このような成分を含有したコーティング液は、シリカ質によって親水性を有し、更にこのシリカ質が有するスルホン酸基が更なる親水性を示し、上記物性を有する酸化チタン粉末の光触媒作用により高い分解性をも併せ持つ。その結果、紫外光が照射される明所では酸化チタン粉末の光触媒作用により高い親水性を示し、暗所においてもシリカ質とスルホン酸基により高い親水性を示すことができる。また、このコーティング液は高い透明性を有し、かつ低温成膜性を付与できる。更に自己清浄、防曇及び結露防止効果を有する。
【0016】
本発明のコーティング液に含まれる酸化チタン粉末の物性は、X線回折によりこの粉末を測定し、得られた測定データの2θが24.0deg〜26.5degの間に存在する(101)面の回折ピークの半値幅から、次の式(2)に示されるブラッグの法則式を用いることにより結晶格子の面間隔d値を求めることができる。ここでλはX線の波長、nは整数である。
2dsinθ=nλ ……(2)
上記式(2)から求めた面間隔d値が3.478Å〜3.562Åの範囲を満たす酸化チタン粉末を親水性有機溶媒中に分散させることにより、透明性、硬度及び分解性能に優れたコーティング液が得られる。(101)面の面間隔d値の下限値が3.480Å〜3.504Åであって、その上限値は3.531Å〜3.550Åの範囲を満たすことが好ましい。また(110)面の面間隔d値の下限値が3.222Å〜3.243Åであって、その上限値は3.255Å〜3.280Åの範囲を満たすことが好ましい。
【0017】
本発明の酸化チタン粉末はルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、酸化チタン粉末が次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすように構成される。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×IR/IA) …(1)
上記式(1)においてIRはルチル型強度、IAはアナターゼ型強度である。酸化チタン粉末をX線回折により測定し、2θが24.0deg〜26.5degの間に存在するアナターゼ型を示す(101)面の回折ピークの強度と2θが27.0deg〜28.0degの間に存在するルチル型を示す(110)面の回折ピークの強度を求め、これらの測定値を上記式(1)に当てはめたとき、アナターゼ含有量が70%〜95%の割合を満たすように構成される。アナターゼ含有量は75%〜85%が好ましい。アナターゼ含有量が下限値未満であると触媒活性が低下する不具合を生じ、上限値を越えた酸化チタン粉末は気相法では製造が困難である。
【0018】
本発明の酸化チタン粉末はその一次平均粒子径が0.01〜0.03μmの範囲内に規定される。上記範囲内の大きさに規定された酸化チタン粉末は塗料中で、一次粒子に近い状態まで均一で高度に分散するため、このコーティング液から形成された被膜の透明性を高めることができる。酸化チタン粉末は一次平均粒子径が下限値未満のものは入手が困難であり、上限値を越えるとコーティング液の透明度が低下する。
本発明の酸化チタン粉末は、ルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、ルチル型とアナターゼ型の重量比(ルチル型/アナターゼ型)が30/70〜5/95の範囲内に規定された粉末である。重量比(ルチル型/アナターゼ型)は25/75〜15/85の範囲内が好ましい。
【0019】
酸化チタン粉末の酸化チタン純度は99.5%以上である。この酸化チタン粉末に含まれるHCl含有量は0.3%以下であり、SiO2含有量が0.2%以下、Al2O3含有量が0.3%以下、Fe2O3含有量が0.01%以下である。このような不純物含有量の酸化チタン粉末は、揮発性チタン化合物を高温気相中で加水分解することにより製造される。
酸化チタン粉末の含有量は0.5〜20重量%である。1.0〜10.0重量%の割合で含有させることが好ましい。酸化チタン粉末の含有量が0.5重量%未満では十分な触媒活性が得られず、20重量%を越えると酸化チタンの分散性が低下し、形成する光触媒薄膜のヘイズが悪化する不具合を生じる。
【0020】
本発明のコーティング液は、基材表面にこの塗料を0.05μm〜0.5μmの厚さで塗布して塗膜を形成したとき、形成した塗膜のヘイズ値が5以下となるように規定される。好ましいヘイズ値は0.1〜1.0である。
本発明のコーティング液中の酸化チタン粉末の含有量は、酸化チタン含有量と加水分解性シラン化合物の酸化ケイ素換算含有量の固形分比がTiO2/SiO2=1/9〜9/1の範囲内となるように含有させる。5/5〜8/2の範囲内となるように含有させることが好ましい。気相法の酸化チタン粉末をコーティング液に含有させるときには、分散安定剤として、少量のアセチルアセトン等のβ-ジケトンを一緒に添加することが好ましい。
【0021】
こうして基材の表面にスルホン酸基のような親水性官能基を有するシリカ質被膜を形成すると、基材表面が高度に親水性化され、表面での水の接触角が15°以下となる。その結果、基材に防曇性や汚れ防止機能が付与される。
加水分解性シラン化合物を含んでいるため、紫外光が存在しなくても親水性を発揮でき、屋内やトンネル内で使用する基材や夜間でも十分な親水性を基材に付与できる。また、界面活性剤を添加して親水性とする被膜とは異なり、親水性の効果が長期間持続する。コーティング液の塗布量は特に制限されないが、形成された親水性被膜の膜厚が0.1〜1.0μmの範囲の薄膜で十分に効果がある。
【0022】
親水性被膜は、スルホン酸基又はその前駆基を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と前述した物性を有する酸化チタン粉末とを被膜形成成分とするコーティング液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。加水分解性シラン化合物の代表例はアルコキシシランが挙げられるので、以下の説明ではアルコキシシランを用いて説明するが、この加水分解性基はハロゲンであってもよい。
使用するアルコキシシランは、その全部がスルホン酸基又はその前駆基のどちらか一方又はその双方を有している必要はない。即ち、アルコキシシランの一部は官能基を有していないものでよく、官能基を持たないアルコキシシランとスルホン酸基を有するアルコキシシランの比率により、形成された被膜の親水性の程度を調節することができる。
スルホン酸基を有するシリカ質の被膜を形成するには、スルホン酸基を有するアルコキシシラン(即ち、スルホン酸基を有するシランカップリング剤)を利用することがまず考えられる。しかし、スルホン酸基はカルボン酸等の酸基に比べて酸性が非常に高いため、スルホン酸基を有するアルコキシシランはスルホン酸基の酸性によって加水分解と縮合を受け易く、安定に存在することができない。そのため、スルホン酸基を有するアルコキシシランを安定して合成する方法は知られておらず、スルホン酸基を有するシランカップリング剤は市販されていない。
【0023】
本発明のコーティング液の製造方法では、化学反応を受けるとスルホン酸基に転化させることができるスルホン酸前駆基を有するアルコキシシランを利用し、塗布前又は塗布後に前駆基をスルホン酸基に転化させる。このようなスルホン酸前駆基としては、加水分解又は熱分解によりスルホン酸基になるスルホン酸エステル基、ならびにオゾンで酸化するとスルホン酸基になるチオール基(-SH)とスルフィド基が挙げられる。スルフィド基は、モノスルフィド基(-S-)とジスルフィド基(-S-S-)の両者を包含する。
アルコキシシランの代表例は、次の(1)で示されるスルホン酸エステル基含有アルコキシシラン、(2)で示されるチオール基含有アルコキシシラン、及び(3)で示されるスルフィド基含有アルコキシシラン等のトリアルコキシシラン類が挙げられるが、ジアルコキシシラン類やモノアルコキシシラン類も使用できる。
【0024】
(1) スルホン酸エステル基含有アルコキシシラン
(R1O)3Si(CH2)nSO3R2 、 (R1O)3Si(CH2)n-X-SO3R2
(2) チオール基含有アルコキシシラン
(R1O)3Si(CH2)nSH
(3) スルフィド基含有アルコキシシラン
[(R1O)3Si(CH2)n]2S 、 [(R1O)3Si(CH2)nS]2
上記(1)〜(3)で示されるトリアルコキシシラン類において、R1は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、そのうちメチル基やエチル基が好ましい。R2は炭素数1〜18のアルキル基であり、そのうちイソプロピル基、イソブチル基といった分岐型アルキル基が好ましい。嵩の大きい分岐型アルキルエステルは、比較的低い加熱温度で熱分解によりスルホン酸基に転化し易いからである。Xは、直鎖アルキレン以外の2価結合基、例えば分岐アルキレン基、-O-、フェニレン基等が挙げられる。
【0025】
スルホン酸前駆基を有するアルコキシシランの1種又は2種以上を、必要に応じスルホン酸基又はその前駆基を有しないアルコキシシランを加え、このアルコキシシランを親水性の有機溶媒に溶解させて加水分解を行った溶液中に酸化チタン粉末を分散させることにより、本発明のコーティング液が得られる。
スルホン酸前駆基を有するアルコキシシランだけでも親水性被膜を形成することができるが、コーティング液の価格が非常に高くなる、成膜性や膜特性が必ずしも良好とはならない等の理由から、スルホン酸基又はその前駆基を有しないアルコキシシランを併用する。即ち、コーティング液の成分であるアルコキシシランは、その少なくとも一部がスルホン酸基又はその前駆基のどちらか一方又はその双方を有していればよい。
【0026】
本発明で使用するのに適した、スルホン酸基又はその前駆基を有していないアルコキシシランとしては、エチルシリケート等のテトラアルコキシシラン類、トリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、モノメチルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン類が挙げられる。これらのうち、被膜強度や密着性に優れたテトラアルコキシシラン類が特に好ましい。また、スルホン酸基又はその前駆基を有していないアルコキシシランの一部又は全部を、スルホン酸以外の酸基、例えばカルボン酸基を含有するアルコキシシランや、スルホン酸と反応しない他の官能基を含有するアルコキシシランとしてもよい。
スルホン酸前駆基を有するアルコキシシラン(A)と、スルホン酸基又はその前駆基を有しないアルコキシシラン(B)の比率は、(A):(B)のモル比で1:9〜9:1の範囲内とすることが好ましい。3:7〜7:3の範囲内がより好ましい。上記モル比は形成された親水性被膜の親水性の程度に影響を及ぼすので、必要な親水性も考慮して選択するのがよい。
【0027】
以上のアルコキシシラン類を親水性の有機溶媒に溶解させる。アルコキシシラン類の合計含有量は0.1〜10重量%の範囲内とすることが好ましい。親水性有機溶媒としては、アルコール類やケトン類が挙げられ、アルコール類が特に好ましい。この有機溶媒は1種又は2種以上を使用できる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコールでよいが、メトキシエタノール、エトキシエタノールといったアルコキシアルコールも溶媒の一部又は全部として使用することができる。
少なくとも一部がスルホン酸前駆基を有するアルコキシシランを親水性有機溶媒に溶解させた溶液中に酸化チタン粉末を分散させた分散液を、そのまま本発明のコーティング液として使用することもできるが、このコーティング液に加水分解反応を施して、アルコキシシランを予め部分加水分解しておくことで、成膜が促進され、被膜成形が容易となる。こうして加水分解することにより得られたコーティング液では、アルコキシシランの少なくとも一部が部分加水分解物として存在し、スルホン酸前駆基がスルホン酸エステル基である場合には、このエステル基も一部がスルホン酸基に加水分解される場合があるため、スルホン酸基も存在しうる。
【0028】
この加水分解反応は、酸又は水のどちらか一方又はその双方の存在下で行うことが好ましい。酸としては、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸、スルホン酸等の有機酸が使用できる。アルコキシシランの合計量1モルに対して、酸は0.001〜1.0モル、水は0.1〜10モルの範囲内の量で使用することが好ましい。反応温度は室温から80℃の範囲が適当である。反応時間は、完全に加水分解しないように温度等の反応条件に応じて設定する。
スルホン酸前駆基がチオール基又はスルフィド基である場合には、上述したコーティング液の製造方法の適当な段階で、溶液にオゾン含有ガスを吹込むことによってオゾン処理して、前駆基をスルホン酸基に転化させる。オゾン処理の代わりに過酸化水素で処理することもできる。オゾン処理は基材への塗布後、即ち塗膜に対して行うこともできるので、コーティング液中の官能基は、前駆基のまま(チオール基、スルフィド基)であってもよい。
【0029】
アルコキシシランの部分加水分解を行う場合、オゾン処理はこの部分加水分解前又は部分加水分解後のいずれに行ってもよいが、部分加水分解後に行う方が好ましい。オゾン処理に用いるオゾン含有ガス中のオゾン濃度、他のガスの種類、ガス流量、温度等の条件は特に制限されない。一般的には、酸素、窒素又は空気と、オゾンとの混合ガスを用いることができる。ガス中のオゾン濃度は高い方がスルホン酸基を効率的に生成させることができる。温度は−50℃から溶媒の沸点までの広い温度が採用できるが、通常は室温で十分である。処理時間は、液中のスルホン酸前駆基が実質的に完全にスルホン酸基に転化されるように選択することが好ましい。処理時間は、例えば1〜10時間程度である。
【0030】
上記のようにして製造されたコーティング液を基材に塗布する。塗布方法は、スピンコート法、ロール塗布法、スプレー法、浸漬法、バーコート等の任意の方法で実施できる。塗布後、塗膜を加熱して乾燥させることで表面に親水性を付与された基材、即ち本発明の被膜付き基材が得られる。加熱乾燥は空気中で実施すれば十分であるが、加水分解を促進させるため、水蒸気を含有させた雰囲気、例えば、水蒸気を吹込んだ空気中で実施することもできる。加熱温度は、一般に80〜180℃の範囲内とすることが好ましい。但し、上限は基材の耐熱性によって制限を受けることもある。この加熱中に周囲雰囲気からの水分によってアルコキシシラン及びその部分加水分解物が完全に加水分解及び縮合されてシリカ質の被膜を形成する。スルホン酸前駆基がスルホン酸エステル基である場合には、同時にこのエステル基が加水分解又は熱分解により実質的に完全にスルホン酸基に転化される。こうして、スルホン酸基を有するシリカ質被膜が形成される。スルホン酸前駆基がチオール基又はスルフィド基であって、コーティング液を予めオゾン処理や過酸化水素処理することによって官能基をスルホン酸基に既に転化させてある場合も、形成されたシリカ質の被膜はスルホン酸基を有している。
【0031】
スルホン酸前駆基がチオール基又はスルフィド基であって、コーティング液がオゾン処理等を受けていない場合には、塗布後の加熱前又は加熱後に、オゾン含有ガスで処理して、前駆基をスルホン酸基に転化させる。使用するオゾン含有ガスは、コーティング液での処理の場合と同様の手法でよい。温度は−50℃から基材の耐熱温度或いは200℃程度までが適当であるが、一般には室温〜100℃の間が好ましい。塗布後にこのオゾン処理と、アルコキシシランの加水分解と縮合による成膜のための加熱を行うと、スルホン酸基を有するシリカ質被膜が基材の表面に形成される。
本発明のコーティング液は、以上に説明した、少なくとも一部がスルホン酸基又はその前駆基のどちらか一方又はその双方を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と、酸化チタン粉末だけでなく、その他の成分を含有することもできる。このような他の成分としては、まず、前述した加水分解に関与する酸や水がある。
【0032】
本発明に使用される基材の材質としては、ガラス、プラスチック、金属、木材、タイルを含むセラミック、セメント、コンクリート、繊維、紙、石その他の鉱物、皮革等が適当である。基材がガラスや透明プラスチックのように透明であるか、鏡のように反射性を有する材質である場合には、本発明のコーティング液によって、その表面を親水性にすることにより、汚れ防止効果に加えて、防曇効果も得られる。
上記のような材質の基材の具体例としては、車両用及び道路用ミラー、車両用ガラス、車両用照明灯とそのカバー、レンズ、照明用蛍光灯とそのカバー、板ガラス、トンネル用内装材及び照明灯とそのカバー、プラスチックフィルム及びシート、プラスチック成形体、各種建材、内装材及び建物付属物、食器、換気扇、眼鏡、鏡、天然繊維、合成繊維及び布帛、紙、革製品、ブラウン管、カバーガラス、ゴーグル、マスクシールド、標識、看板、金属板、家電製品のハウジング、焼結金属フィルター、ガードレール、ビニールハウス、調理レンジとそのフード、流し台、衛生器具、浴槽、家具、屋外照明用固定材、室内もしくは屋外展示物と表示物、屋外用家具と遊具、屋外固定構造物等がある。
なお、本発明のコーティング液中に各種顔料を混合したり、各種顔料を含んだ塗料と本発明のコーティング液を混合して使用することもできる。
【0033】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
スルホン酸エステル基を有するアルコキシシランである3−トリメトキシシリルプロパンスルホン酸イソプロピルエステル(CH3O)3Si(CH2)3SO3CH(CH3)222.9g(0.08モル)と官能基を持たないアルコキシシランであるテトラエトキシシランSi(OC2H5)44.2g(0.02モル)を溶媒であるエタノール14.6gに溶解して溶解液を調製した。この溶解液に水18g(1モル)と60重量%硝酸0.28g(0.025モル)を添加し、50℃で2時間加熱攪拌して溶解液中のアルコキシシランを部分加水分解させた。
アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.492Å〜3.548Å、ルチル型結晶の(110)面の回折ピーク半値幅から求めた(110)面の面間隔d値が3.234Å〜3.269Åであり、アナターゼ含有量84%の酸化チタン粉末10g、エタノール150g、2,4−ペンタンジオン0.25g、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ社製、KR138S)0.25gを混合し、ジルコニアビーズ100gにより、16時間ペイントシェーカーにて分散させた。
この酸化チタン分散液に上記部分加水分解溶液を、酸化チタン含有量と酸化ケイ素換算シラン含有量がTiO2:SiO2=8:2の割合になるように混合して、親水性被膜形成用コーティング液を調製した。調製したコーティング液をガラス基板表面にスピンコーターにより150rpm、95秒の条件で塗布し、塗布した基板を125℃で1時間乾燥させることにより、ガラス基板に親水性被膜が形成された被膜付き基材を得た。
【0034】
<実施例2>
チオール基を有するアルコキシシランであるγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(CH3O)3Si(CH2)3SH15.7g(0.08モル)とテトラエトキシシラン4.2g(0.02モル)を溶媒であるエタノール21.8gに溶解して溶解液を調製した。この溶解液に水18g(1モル)と60重量%硝酸0.28g(0.025モル)を添加し、50℃で2時間加熱攪拌して溶解液中のアルコキシシランを部分加水分解させた。
得られた部分加水分解液を室温に放冷した後、オゾンガスを酸素ガスで希釈したオゾン含有ガスを部分加水分解液に140L/hrの流量で3時間吹き込んで酸化させ、チオール基をスルホン酸基に転化させた。オゾン含有ガス中のオゾン濃度は、オゾン供給量が0.02g/hrとなる量であった。
実施例1と同様にして得られた酸化チタン分散液に上記転化した溶液を酸化チタン含有量と酸化ケイ素換算シラン含有量がTiO2:SiO2=8:2の割合になるように混合して、親水性被膜形成用コーティング液を調製した。調製したコーティング液をガラス基板表面にスピンコーターにより150rpm、95秒の条件で塗布し、塗布した基板を125℃で1時間乾燥させることにより、ガラス基板に親水性被膜が形成された被膜付き基材を得た。
【0035】
<実施例3>
スルフィド基を有するアルコキシシランであるビス(3−トリエトキシシリルプロピル)スルフィド[(C2H5O)3Si(CH2)3]2S35.4g(0.08モル)とテトラエトキシシラン4.2g(0.02モル)を溶媒であるエタノール62.1gに溶解して溶解液を調製した。この溶解液に水18g(1モル)と60重量%硝酸0.28g(0.025モル)を添加して50℃で2時間加熱攪拌してアルコキシシランを部分加水分解させた。
得られた部分加水分解液を室温に放冷した後、オゾンガスを酸素ガスで希釈したオゾン含有ガスを部分加水分解液に140L/hrの流量で6時間吹き込んで酸化させ、スルフィド基をスルホン酸基に転化させた。オゾン含有ガス中のオゾン濃度は、オゾン供給量が0.02g/hrとなる量であった。
実施例1と同様にして得られた酸化チタン分散液に上記転化した溶液を酸化チタン含有量と酸化ケイ素換算シラン含有量がTiO2:SiO2=8:2の割合になるように混合して、親水性被膜形成用コーティング液を調製した。調製したコーティング液をガラス基板表面にスピンコーターにより150rpm、95秒の条件で塗布し、塗布した基板を125℃で1時間乾燥させることにより、ガラス基板に親水性被膜が形成された被膜付き基材を得た。
【0036】
<比較例1>
3−トリメトキシシリルプロパンスルホン酸イソプロピルエステルを含まず、テトラエトキシシラン含有量を20.9g(0.1モル)とした以外は、実施例1と同様にしてガラス基板に親水性被膜が形成された被膜付き基材を得た。
<比較例2>
アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.431Å〜3.600Åであるアナターゼ含有量100%の酸化チタン粉末10gを用いた以外は実施例1と同様にして親水性被膜が形成された被膜付き基材を得た。
<比較例3>
酸化チタン分散液を含まないこと以外は、実施例1と同様にして親水性被膜が形成された被膜付き基材を得た。
【0037】
<比較試験1>
実施例1〜3及び比較例1〜3でそれぞれ得られた被膜付き基材についてヘイズ、鉛筆硬度を測定した。なお、ヘイズ測定には、スガ試験機社製ヘイズコンピューターHGM−3Dを用いた。また、屋外及び屋内の明所、暗所における水の接触角の経時変化を測定した。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1より明らかなように、スルホン酸前駆基を有するシラン化合物を含まないコーティング液により形成された比較例1は、屋内、屋外ともに接触角が大きい数値となった。また、本発明の範囲外である酸化チタン粉末を用いた比較例2は接触角が大きくなっただけでなく、ヘイズ、鉛筆硬度ともに、被膜付き基材として不十分な結果が得られた。酸化チタン分散液を含まない比較例3は、屋内、屋外での初期における接触角は小さいが、6ヶ月後における接触角は大きくなっており、親水機能が低下していることが判る。これに対して本発明の範囲内に調製されたコーティング液により形成された実施例1〜3では、ヘイズが極めて低く、鉛筆による硬度も3Hと硬く、初期及び6ヶ月後ともに接触角の値に変化なく、長期にわたり親水性を保持できる結果が得られた。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明では、アルコキシシラン等の加水分解性シラン化合物にスルホン酸基等の親水性官能基を導入した化合物と、上記物性を有する酸化チタン粉末を親水性有機溶媒に分散することにより、明所で高い親水性を示すだけでなく、十分な光量が確保できない暗所においても高い親水性を示すコーティング液が得られる。このコーティング液は高い透明性を有し、かつ低温成膜性を付与できる。また自己清浄、防曇及び結露防止効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコーティング液を基材に塗布、乾燥して、表面に親水性を付与された基材の断面図。
【符号の説明】
10 表面に親水性を付与された基材
11 親水性被膜
12 基材
Claims (21)
- 少なくとも一部にスルホン酸基又はその前駆基のどちらか一方又はその双方を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と、ルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み前記アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.478Å〜3.562Åの範囲を満たす酸化チタン粉末とを親水性有機溶媒に分散させたコーティング液であって、
前記酸化チタン粉末が次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする、基材表面に親水性を付与するためのコーティング液。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。 - 酸化チタン粉末がアナターゼ型結晶構造を含み、前記アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値の下限値が3.480Å〜3.504Åであって、その上限値が3.531Å〜3.550Åの範囲を満たす請求項1記載のコーティング液。
- 酸化チタン粉末がルチル型結晶構造を含み、前記ルチル型結晶の(110)面の回折ピーク半値幅から求めた(110)面の面間隔d値の下限値が3.222Å〜3.243Åであって、その上限値が3.255Å〜3.280Åの範囲を満たす請求項1又は2記載のコーティング液。
- 酸化チタン粉末の一次平均粒子径が0.01μm〜0.03μmである請求項1ないし3いずれか1項に記載のコーティング液。
- 酸化チタン粉末の酸化チタン純度が99.5%以上である請求項1ないし4いずれか1項に記載のコーティング液。
- 酸化チタン粉末に含まれるHCl含有量が0.3%以下である請求項1ないし5いずれか1項に記載のコーティング液。
- 酸化チタン粉末に含まれるSiO2含有量が0.2%以下、Al2O3含有量が0.3%以下、Fe2O3含有量が0.01%以下である請求項1ないし6いずれか1項に記載のコーティング液。
- 酸化チタン粉末は、揮発性チタン化合物を高温気相中で加水分解することにより製造された粉末である請求項1ないし7いずれか1項に記載のコーティング液。
- 酸化チタン粉末の含有量が0.5〜20重量%である請求項1ないし8いずれか1項に記載のコーティング液。
- 前駆基がスルホン酸エステル基、チオ−ル基又はスルフィド基である請求項1記載のコーティング液。
- 少なくとも一部にスルホン酸エステル基を有する加水分解性シラン化合物を親水性有機溶媒に溶解させて溶液を調製し、前記溶液を水及び酸の存在下で加熱して前記溶液中のシラン化合物及びスルホン酸エステル基を加水分解し、前記加水分解した溶液に酸化チタン粉末を分散させる親水性被膜形成用コーティング液の製造方法であって、
前記酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする親水性被膜形成用コーティング液の製造方法。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。 - 少なくとも一部にチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方を有する加水分解性シラン化合物を親水性有機溶媒中に溶解させて溶液を調製し、前記溶液をオゾン含有ガス又は過酸化水素で処理して前記溶液中のチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方をスルホン酸基に転化させ、前記転化させた溶液に酸化チタン粉末を分散させる親水性被膜形成用コーティング液の製造方法であって、
前記酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする親水性被膜形成用コーティング液の製造方法。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。 - 酸化チタン粉末が四塩化チタンを高温気相中で加水分解反応させ、反応生成物を急速冷却することにより得られる請求項11又は12記載の製造方法。
- 少なくとも一部にスルホン酸エステル基を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と酸化チタン粉末とを親水性有機溶媒中に含有する溶液を基材(12)に塗布、乾燥して基材(12)表面に被膜(11)を形成し、前記基材(12)を加熱して被膜(11)に含まれるスルホン酸エステル基をスルホン酸基に転化させる基材表面への親水性付与方法であって、
前記酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする、基材表面に親水性を付与する方法。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。 - 少なくとも一部にチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方を有する加水分解性シラン化合物又はその部分加水分解物のどちらか一方又はその双方と酸化チタン粉末とを親水性有機溶媒中に含有する溶液を基材(12)に塗布、乾燥して前記基材(12)表面に被膜(11)を形成し、前記基材(12)をオゾン含有ガスで処理して、被膜(11)に含まれるチオール基又はスルフィド基のどちらか一方又はその双方をスルホン酸基に転化させる基材表面への親水性付与方法であって、
前記酸化チタン粉末がルチル型結晶構造とアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすことを特徴とする、基材表面に親水性を付与する方法。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×I R /I A ) …(1)
但し、I R はルチル型強度であり、I A はアナターゼ型強度である。 - 酸化チタン粉末が四塩化チタンを高温気相中で加水分解反応させ、反応生成物を急速冷却することにより得られる請求項14又は15記載の方法。
- 基材と、前記基材の表面に請求項1ないし10いずれか1項に記載のコーティング液又は請求項11ないし13いずれか1項に記載の製造方法により得られたコーティング液を塗布乾燥して形成した被膜とを備えた親水性を有する被膜付き基材。
- 基材と、前記基材の表面に無機質の下地層と、前記下地層の上に請求項1ないし10いずれか1項に記載のコーティング液又は請求項11ないし13いずれか1項に記載の製造方法により得られたコーティング液から形成された被膜とを有する請求項17記載の親水性を有する被膜付き基材。
- 基材(12)がガラス、プラスチック、金属、木材、タイルを含むセラミック、セメント、コンクリート、繊維、紙、石及び皮革よりなる群から選ばれた材質である請求項17又は18記載の被膜付き基材。
- 無機質の下地層がシリカ又はアルミナからなる請求項18記載の親水性を有する被膜付き基材。
- 基材(12)が車両用及び道路用ミラー、車両用ガラス、車両用照明灯とそのカバー、レンズ、照明用蛍光灯とそのカバー、板ガラス、トンネル用内装材及び照明灯とそのカバー、プラスチックフィルム及びシート、プラスチック成形体、各種建材、内装材及び建物付属物、食器、換気扇、眼鏡、鏡、天然及び合成繊維及び布帛、紙、革製品、ブラウン管、カバーガラス、ゴーグル、マスクシールド、標識、看板、金属板、家電製品のハウジング、焼結金属フィルター、ガードレール、ビニールハウス、調理レンジとそのフード、流し台、衛生器具、浴槽、家具、屋外照明用固定材、室内もしくは屋外展示物と表示物、屋外用家具と遊具及び屋外固定構造物よりなる群から選ばれる請求項17ないし20いずれか1項に記載の親水性を有する被膜付き基材。
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