JP3289282B2 - アルカリ性無機硬化体の保護方法 - Google Patents

アルカリ性無機硬化体の保護方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルカリ性無機硬化体
の、新規にして有用なる保護方法に関する。さらに詳細
には、トップコートとして、特定のフルオロオレフィン
系共重合体類エマルジョンを用いることから成る、とり
わけ、アルカリ物質の浸出防止能にも優れ、しかも、超
耐候性、耐水性、耐アルカリ性ならびに耐汚染性などに
優れた皮膜を形成して、アルカリ性無機硬化体を保護す
るという、斬新なる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】土木建築分野において、コンクリート躯
体、壁材または屋根材などのアルカリ性無機硬化体の表
面を被覆することが行なわれるが、これは主として、か
かる基材に対し、耐薬品性、耐水性または耐候性などを
付与せしめるためであり、勿論、保護と美装という面も
考慮されてのことである。
【0003】こうした被覆材の中でも、水性の有機ポリ
マー・ベースのものは、被覆処理それ自体が簡便であ
り、したがって、それらのものが頻繁に用いられてい
る。この種のポリマー・ベースとして、アクリル系やア
クリル−スチレン共重合体系のものが、一応の水準に達
していて多用されている。
【0004】ところが、特に建築外装材として用いられ
る場合には、寿命も最低で10年以上、さらには、半永
久的なものが要求されるに及んではいるものの、アクリ
ル系やアクリル−スチレン共重合体系の水性ポリマー
を、トップコートに用いた場合には、とりわけ、耐候性
が充分であるとは言い難く、したがって、短期間内での
再塗装が必要となることも否めない。
【0005】一方、フルオロオレフィン系共重合体類
は、高耐候性および高耐薬品性をもたらすバインダーと
して公知のものであり、既に、有機溶剤溶液のものが市
販されている。
【0006】しかしながら、有機溶剤を多量に含むもの
である処から、火災の危険性、有害性ならびに大気汚染
などの面で、社会的な問題にもなっている。これに対し
て、テトラフルオロエチレン、ふっ化ビニリデンまた
は、へキサフルオロプロピレンなどのポリマー(フルオ
ロオレフィン・ポリマー)の水分散体の使用が提唱され
てこそいるものの、これらは、いずれも、高温での焼付
けが必要なものであり、たとえば、特開昭57−388
45号公報には、ふっ化ビニリデンと、ヘキサフルオロ
プロピレンとの共重合体が開示されていて、当該共重合
体は、その固有粘度〔η〕が0.1〜0.5なる低分子
量物であるにも拘らず、依然として、180〜230℃
という高温で焼付けを必要としている。
【0007】したがって、常温で塗膜を形成させる必要
のある建築用塗料や、強制乾燥に頼る工場塗装用塗料な
どにあっても、上述した如き高温焼付けは、まさに実用
上、不可能であって、こうした用途には適さないもので
あると言い得えよう。
【0008】しかも、フルオロオレフィン類は、それ自
体が、元々、高価なものである処から、このフルオロオ
レフィン類で以て共重合体を構成するということは、ま
さに、経済上からも不利であると言えよう。
【0009】ところで、特開昭61−261367号公
報には、上述した諸々の問題点を解決せしめる方法とし
て、フルオロオレフィン、アルキルビニルエーテルおよ
びカルボン酸ビニルエステルから構成される乳化共重合
体ベースの塗料用樹脂組成物が開示されており、アルカ
リ性無機硬化体の保護という用途に対しては、一応の
処、適応しうるものであると言い得ようが、これとて
も、基材への付着性、顔料分散性ならびに耐汚染性など
の面で、不充分なものであることは、決して否めない。
【0010】
【発明が開発しようとする課題】このように、従来技術
に従う限りは、セメントモルタル、セメントコンクリー
ト、セメントアスベストまたは珪酸カルシウム板などの
アルカリ性無機質基材の表面を被覆したさいに、これら
の基材が水と接触した場合とか、水和硬化時において、
アルカリ性物質が浸出するのを封鎖することもできない
し、さらには、長期の屋外曝露に対しても充分なる超耐
候性をはじめ、耐水性、耐薬品性ならびに耐汚染性など
の諸々の皮膜性能にすぐれるような、極めて有用性の高
い保護手段ないしは保護材が存在しない、というのが現
状であり、これこそが、目下の当業界の切なる要望であ
る。
【0011】そのために、本発明者は、こうした現状の
認識と、従来技術における種々の未解決課題の抜本的な
解決と、当業界における切なる要望との上に立って、ア
ルカリ性無機硬化体中のアルカリ性物質の浸出封鎖能
と、超耐候性、耐水性、耐薬品性ならびに耐汚染性など
とに優れた皮膜を形成せしめうる、極めて有用性の高
い、アルカリ性無機硬化体の保護方法を求めて、鋭意、
研究に着手した。
【0012】したがって、本発明が解決しようとする課
題は、一にかかって、アルカリ性無機硬化体の、経時に
伴う外観変化も少なく、かつ、かかる基材硬化体の劣化
も防止でき、しかも、施工も簡便であって、経済的にも
有利であるような、極めて有用なる、アルカリ性無機硬
化体の保護方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は、上
述した如き発明が解決しようとする課題に照準を合わせ
て、鋭意、検討を重ねた結果、特定の組成のフルオロオ
レフィン系共重合体類エマルジョンをバインダーとする
塗装材を、アルカリ性無機硬化体のトップコートとして
塗装せしめた処、それが、経時の外観変化も劣化も、共
に、少なく、しかも、保護皮膜が前述した如き諸々の性
能にもすぐれるし、さらには、施工も簡便であり、した
がって、経済的に有利なる、極めて有用性の高い、アル
カリ性無機硬化体の保護方法であることが確認されるに
及んで、本発明を完成させるに到った。
【0014】すなわち、本発明は必須のバインダー成分
として、フルオロオレフィン類と、カルボン酸ビニルエ
ステル類と、エチレンと、不飽和カルボン酸類と、架橋
性単量体類とを乳化重合せしめて得られる、特定のフル
オロオレフィン系共重合体類エマルジョンを含有する塗
料組成物を、トップコートとして用いて塗布することか
ら成る、アルカリ性無機硬化体の保護方法を提供しよう
とするものである。
【0015】本発明において、上記したアルカリ性無機
硬化体とは、たとえば、セメントモルタル、セメントコ
ンクリート、ALC、アスベストコンクリート、木質セ
メント板または珪酸カルシウム板などのように、アルカ
リ物質を水和結晶化せしめることによって調製させる、
いわゆる硬化体を指称するものであり、たとえば、コン
クリート躯体、壁材または屋根材などとして用いられる
ものである。
【0016】ここにおいて、前記したフルオロオレフィ
ン類として特に代表的なもののみを例示するに留めれ
ば、ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、テトラフルオロ
エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、1,1,3,
3,3−ペンタフルオロプロピレン、2,3,3,3−
テトラフルオロプロピレン、1,1,2−トリフルオロ
プロピレンまたは3,3,3−トリフルオロプロピレン
の如き、純粋な意味でのフルオロオレフィンをはじめと
して、さらには、クロロトリフルオロエチレン、ブロモ
トリフルオロオレフィン、1−クロロ−1,2−ジフル
オロエチレンまたは1,1−ジクロロ−2,2−ジフル
オロエチレンの如き、いわゆるフルオロハロゲン系の、
ふっ素以外に他のハロゲン原子を有するものまでを包含
した、広義のフルオロオレフィンなどが挙げられる。
【0017】かかるフルオロオレフィン類が、当該フル
オロオレフィン系共重合体類中に占める割合、すなわ
ち、当該共重合体中の、フッ素含有率は、それ自体が、
得られる塗膜の、とりわけ、耐候性に与える影響が大き
い処から、このフッ素含有率としては、5重量%以上で
あることが好ましい。
【0018】こうした観点から、フルオロオレフィン類
の種類およびその使用量が選択されるべきであり、かか
るフルオロオレフィン類の使用量としては、全単量体類
中、40〜60重量%なる範囲内が適切である。
【0019】他方、かかるフルオロオレフィン類と共重
合可能なる主要単量体は、種々、考えられるが、その種
類と使用量は、高度なる耐候性、耐薬品性、耐水性、耐
アルカリ性、耐熱性ならびに柔軟性などの、諸々の皮膜
性能を考慮して選択されるべきものであり、カルボン酸
ビニルエステル類の30〜50重量%、そして、エチレ
ンの5〜20重量%の範囲で使用されるのがよい。
【0020】このうち、カルボン酸ビニルエステル類に
おいては、炭素数が5以上なる直鎖状、分岐状ないしは
環状のカルボン酸のビニルエステルを使用すると、とり
わけ、撥水性(ひいては、耐汚染性)、耐水性、耐アル
カリ性ならびに耐熱性などの皮膜性能が向上するので、
好ましいことであり、さらに好ましくは、炭素数が6以
上なるものを使用することが適切である。
【0021】なお、ビニルエーテル類も、良好なる共重
合性は有するものの、乳化重合時において、水中で分解
し易く、重合条件の設定が難しいばかりか、得られる皮
膜の高度の耐アルカリ性が得られにくい処から、好まし
くない。
【0022】一方、架橋性単量体類を共重合せしめるこ
とは、皮膜の諸性能を向上させるという上でも好まし
く、全単量体中の0.1〜2重量%なる範囲内で使用さ
れる。0.1重量%未満の場合には、該単量体類の使用
の効果が得られにくく、一方、2重量%を超えて余りに
多く使用する場合には、効果が飽和するばかりか、得ら
れるエマルジョンの造膜性が低下し易いので、いずれの
場合も好ましくない。
【0023】また、不飽和カルボン酸を共重合すること
は、皮膜の基材付着性を向上させ、エマルジョンの顔料
分散性をも向上させるので、かかる不飽和カルボン酸類
の使用は好ましいものであり、全重量体中の0.5〜3
重量%なる範囲内で、好ましくは、1.0〜3重量%な
る範囲内で使用される。
【0024】0.5重量%未満では、上記した効果が充
分に得られにくく、一方、3重量%を超えて余りに多く
使用すると、皮膜の耐アルカリ性が劣るようになるの
で、好ましくない。
【0025】これらの単量体のうちでも、特に代表的な
もののみを例示するにとどめる。まず、カルボン酸ビニ
エステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニ
ル、酪酸ビニルもしくはイソ酪酸ビニルなどが挙げられ
るし、さらに、炭素数が5以上なるカルボン酸のビニル
エステル類としては、C5 以上なる直鎖状、分岐状ない
しは環状の、カルボン酸のビニルエステル類;
【0026】つまり、(シクロ)アルキル基を有するカ
ルボン酸のビニルエステル類であり、具体的には、ピバ
リン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニ
ル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニルもしくはシ
クロヘキサン酸ビニルなどが挙げられるが、これらは単
独使用でも2種以上の併用でも良いことは、勿論であ
る。
【0027】次に、前記した架橋性単量体類として特に
代表的なもののみを例示するに留めれば、ジビニル化合
物やビニルシラン類などであり、一層、具体的には、ポ
リアルキレングリコール・ジ(メタ)アクリレートの如
き、各種のジ(メタ)アクリレート化合物;
【0028】トリアルキロールアルカン・トリ(メタ)
アクリレートの如き、各種のトリ(メタ)アクリレート
化合物;ジアリルフタレートの如き、各種のジアリル化
合物;トリアリルイソシアヌレートの如き、各種のトリ
アリル化合物;1,7−オクタジエンもしくは1,9−
デカジエンの如き、各種の末端ジエン類;
【0029】または分子内にアルコキシシリル基を有す
る、各種のビニルアルコキシシラン類などであり、これ
らは単独使用でも、2種以上の併用でもよいことは、勿
論である。
【0030】さらに、不飽和カルボン酸類としては、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸の如き不飽和一塩基酸
ないしはそれらの塩類;またはイタコン酸、マレイン
酸、フマル酸の如き不飽和二塩基酸ないしはそれらの半
エステルもしくは塩類などであり、これらは1種もしく
は2種以上の混合物として使用される。
【0031】以上に掲げられた各種の単量体類のほかに
も、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、あるい
は、当該フルオロオレフィン系共重合体類エマルジョン
の効果を損わない限りにおいて、各種の(メタ)アクリ
ル酸エステル類をはじめとして、塩化ビニルもしくは塩
化ビニリデンの如き各種のハロゲン化ビニル類(但し、
ふっ素化ビニル類を除く);グリシジル(メタ)アクリ
レートもしくはアリルグリシジルエーテルの如き各種の
グリシジル基含有化合物;
【0032】(メタ)アクリルアミドもしくはN−メチ
ロール(メタ)アクリルアミドの如き、各種のアミド結
合含有化合物;またはビニルスルホン酸ナトリウムの如
き、いわゆる反応性乳化剤などを用いることは、一向
に、差し支えがない。
【0033】当該フルオロオレフィン系共重合体類エマ
ルジョンを調製するには、公知慣用の乳化重合法を駆使
すればよく、次に示されるような、それぞれ、乳化剤や
ラジカル重合開始剤などを用いて行なわれる。
【0034】すなわち、まず、乳化剤として特に代表的
なもののみを例示するに留めれば、アルキルベンゼンス
ルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂
肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫
酸エステル塩または燐酸エステル塩などの各種のアニオ
ン系乳化剤;
【0035】アルキルフェノールエチレンオキサイド付
加物またはエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド
・ブロック共重合体などの各種のノニオン系乳化剤;
【0036】あるいは、親水基として4級アミノ基を有
する、たとえば、テトラアルキルアンモニウムクロライ
ドまたはトリアルキルベンジルアンモニウムクロライド
などのカチオン系乳化剤である。
【0037】また、ポリビニルアルコール、ポリビニル
ピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセル
ロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(メタ)
アクリル酸塩またはα−オレフィン−無水マレイン酸共
重合体の加水分解物などの、いわゆる水溶性高分子化合
物を保護コロイドとして使用することもできる。
【0038】上掲されたような乳化剤も水溶性高分子化
合物も、共に、単独使用でも2種以上の併用でもよいこ
とは勿論ではあるが、これらのうち、カチオン系乳化剤
の使用だけは、イオン的にゲル化する場合もあるので、
特に、注意を要することは、言うまでもない。
【0039】ここにおいて、パーフルオロオクタン酸塩
で代表されるフッ素原子含有乳化剤の併用もまた、包含
されるものであることも、言うまでも無い。そして、か
かる部類の乳化剤の使用量としては、単量体類の総量に
対し、0.5〜10重量%なる範囲内が適切である。
【0040】一方、前記したラジカル重合開始剤として
特に代表的なもののみを例示するに留めれば、過硫酸塩
類、または過酸化水素の如き水溶性触媒;あるいは、ベ
ンゾイルパーオキサイドまたはt−ブチルパーオキシベ
ンゾエートの如き油溶性触媒などであり、
【0041】さらには、かかる各種の重合開始剤と、亜
硫酸塩、ロンガリット塩またはアスコルビン酸塩などの
水溶性還元剤との併用による、いわゆるレドックス系触
媒の形で用いられてもよいことは、勿論である。
【0042】こうした各種の触媒の使用量としては、特
に制限はないが、単量体類の総量に対して、0.1〜2
重量%なる範囲内であることが望ましい。そのほかに
も、こうした乳化重合系には、pH緩衝剤や連鎖移動剤
などをも、適宜、添加して用いることができる。
【0043】本発明で用いられる当該フルオロオレフィ
ン系共重合体類のエマルジョンの不揮発分としては、1
〜60重量%なる範囲内が適切であるし、また、当該共
重合体エマルジョンの平均粒子径としては、0.02〜
0.50μmなる範囲内、好ましくは、0.03〜0.
3μmなる範囲内である。
【0044】0.02μm未満の場合には、どうして
も、得られる皮膜の造膜性や耐水性などは優れるもの
の、顔料分散性や機械的安定性などが劣るようになるり
易く、一方、0.50μmを超える場合には、どうして
も、皮膜の造膜性や耐水性など低下し易くなるので、い
ずれの場合も好ましくない。
【0045】次いで、前記した顔料は、皮膜の硬さ、隠
蔽性、着色による美外の付与、基材に対する付着性また
は耐候性の向上などを目的として、その目的に応じて、
適宜、使用されるものであるが、当該顔料の使用量とし
ては、前述したフルオロオレフィン系共重合体類エマル
ジョンの固形分重量に対して、200%以下となるよう
なの量が適切である。
【0046】200重量%を超えて余りに多く用いる場
合には、どうしても、得られる皮膜がポーラスのものと
なり、ひいては、耐水性などの長期の耐久性が劣るよう
になるので、好ましくない。
【0047】当該顔料として特に代表的なもののみを例
示するに留めれば、酸化チタン、マイカ、タルク、クレ
ー、沈降性硫酸バリウム、シリカ末もしくは炭酸カルシ
ウムの如き無機白色顔料;
【0048】カーボン・ブラック、アルミ末もしくは弁
柄の如き無機着色顔料;またはアゾ系もしくはフタロシ
アニン系の如き有機着色顔料などであり、
【0049】さらには、これらの各顔料を、乳化剤や分
散剤などで水中に分散せしめて得られる、いわゆる分散
顔料の使用が可能であり、それぞれの目的に応じて、適
宜、選択されるべきである。
【0050】また、前記したフルオロオレフィン系共重
合体類エマルジョンを用いての、いわゆる塗料化を行な
うにさいしては、公知慣用の分散剤、湿潤剤、造膜助
剤、増粘剤、チクソ化剤(チクソトロピー付与剤)、紫
外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、凍結防止剤、撥水
剤、消泡剤または防腐・防黴剤などの各種の添加剤を添
加せしめることも一向に差し支えはないが、得られる皮
膜の耐久性などを考慮して、適宜、選択して使用すべき
である。
【0051】かくして、フルオロオレフィン系共重合体
類エマルジョンを、あるいは、この共重合体類エマルジ
ョンと顔料とを、必須の成分とする水性塗料組成物を、
前掲された如き各種のアルカリ性無機硬化体に塗布する
に当たっては、特に制限はないが、代表的な塗布方法と
も言うべき、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、
ロールコーター塗装またはシャワリング塗装などによる
のが望ましい。
【0052】そのさい、建築現場などでの施工用の組成
物としては、該組成物の最低造膜温度が0℃以下となる
ようにすべきであることが望ましく、そのさいの塗装法
としては、刷毛、ローラーまたはスプレーなどの方法に
よるのがよいし、瓦の如き屋根材や壁材などにおける、
いわゆる工場ライン塗装用としては、一般的に行なわれ
ている加熱強制乾燥法に従い、その乾燥条件に応じた、
該組成物の最低造膜温度が、概ね、60℃以下、好まし
くは、50℃以下なる塗料を選択して用いるのが望まし
く、塗装法としては、ロールコーター、ローラー、スプ
レーまたはシャワリングなどの方法によるのがよい。
【0053】かかる工場ライン塗装にあっては、塗布基
材たるアルカリ性無機硬化体を成型して、生養生のま
ま、アルカリシーリングを兼ねて塗装されるという場合
も多いが、それに続く促進養生工程における常圧蒸気養
生や、加圧下でのオートクレーブ蒸気養生などでの熱と
か、水和熱などを利用して、塗膜の乾燥を行なうことが
できるのは勿論であり、特に効果的である。
【0054】こうした現場施工用と、工場ライン塗装な
いしは加熱強制乾燥ライン塗装用とを問わず、常温乾燥
によるのも、勿論、一法ではあるけれども、何らかの手
段により、60℃以上の温度、実質的には、200℃以
下の温度の雰囲気下において行なうべく、加熱乾燥によ
ることは、造膜性ないしは成膜性を、一層、強固なもの
にし、塗膜の長期耐久性をも確保するためにも、さらに
は、ブロッキングを、極力、低減化せしめたりする為に
も有効であり、耐汚染性をも確保したりするためにも、
望ましい限りである。
【0055】また、アルカリ性無機硬化体の上に、直
接、フルオロオレフィン系共重合体類エマルジョンを必
須成分とし、あるいは、該共重合体類エマルジョンと顔
料とを、必須成分とする水性塗料組成物を、1コート
で、または重ね塗りで、塗布してもよいし、あるいは、
アクリル系、アクリル−スチレン共重合体系、アクリル
−ウレタン併用系、シリコン−アクリル併用系、エポキ
シ系、ウレタン系またはシリコン系などの、概して、耐
アルカリ性の良好なるバインダーを含む塗材を下塗りと
したその上に、トップコートとして、これらの共重合体
エマルジョンまたは水性塗料組成物を塗装し、こうした
塗装システム全体の耐候性などの改善向上化を図るよう
にしてもよい。
【0056】かかる各塗装システムのいずれによった場
合においても、フルオロオレフィン系共重合体類エマル
ジョンを必須成分とし、あるいは、この共重合体類エマ
ルジョンと顔料とを必須の成分とする水性塗料組成物の
乾燥膜厚としては、5μm以上が適切である。
【0057】5μm未満の場合には、どうしても、皮膜
の長期耐久性などが不充分となり易いからである。かく
して、本発明の方法に従えば、超耐候性をはじめ、耐水
性、耐薬品性ならびに耐汚染性などの諸々の皮膜性能に
すぐれた、アルカリ性無機硬化体の保護皮膜が形成され
る。
【0058】
【実施例】次に、本発明を参考例、実施例および比較例
により、一層、具体的に説明することにする。以下にお
いて、部及び%は特に断りのない限り、すべて重量基準
であるものとする。
【0059】参考例 1(乳化共重合体類の調製例) 2リットルのステンレス製オートクレーブを窒素ガスで
置換し、イオン交換水の800部、ドデシルベンゼンス
ルホン酸ソーダ(アニオン乳化剤)の20部、ポリオキ
シエチレンノニルフェニルエーテル(ノニオン乳化剤)
の20部およびpH緩衝剤としてのボラックスの10部
を仕込んで溶解せしめた。
【0060】次いで、ネオノナン酸ビニル(バーサチッ
ク酸ビニルエステル)の400部、クロトン酸の15
部、デカジエンの15部および液化捕集したクロロトリ
フルオロエチレンの500部をも仕込んだ。
【0061】そこへ、エチレンを15Kg/cm2 にて
圧入した。オートクレーブの内温を70±5℃に昇温
し、過硫酸アンモニウムの5部をイオン交換水200部
に溶解した溶液を4時間に亘って圧入せしめた。
【0062】その間、エチレンにより内圧を30Kg/c
2に維持せしめた。その後も、10時間同温度に保持
し反応を完結させた。室温まで冷却したのち、14%ア
ンモニア水を用いてpHを調整し、減圧脱気した。
【0063】得られた乳化重合体は、不揮発分が45%
で、pHが7.3で、最低造膜温度が40℃で、かつ、
平均粒子径が0.08ミクロンであった。以下、これを
乳化共重合体(A−1)と略記する。
【0064】このA−1は、元素分析ならびに熱分解ガ
スクロマトグラフなどの組成分析の結果、フルオロオレ
フィン類の48重量%、カルボン酸ビニルエステル類の
40%、エチレンの9重量%、不飽和カルボン酸類の
1.6重量%および架橋性単量体類の1.4重量%より
なる共重合体であった。
【0065】参考例 2〜9 参考例1にならって、加圧反応及び常圧反応を行い、A
−2、A−3、A−4、B−5、B−6、B−7、B−
8ならびにB−9なる、各種の(共)重合体類を得た。
それぞれの組成は、まとめて、第1表に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】実施例 および比較例 得られた9種の共重合体エマルジョンを以下に述べる。
塗料配合A(常乾用白色艶有塗料)、及び塗料配合B
(加熱強制乾燥用黒色艶有塗料)により塗料化し、別途
作製した基材a、b、cに塗装し後述する各種試験に供
した。それらの結果を、まとめて、第2表に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】 塗料配合A(常乾用白色艶有塗料)の調製 水 7.84 部 25% アンモニア水 0.15 「ノイゲンEA−120」 0.33 「タモール 731」 (アメリカ国ローム・アンド・ハース 1.34 社製の分散剤)の25%水溶液 エチレングリコール 7.46 (凍結防止剤) 「タイペーク R−930 」 41.00 (石原産業(株)製のルチル型酸化チタン) 「ベストサイド FX」 0.02 (大日本インキ化学工業(株)製の防腐剤) 「ノプコ 8034」 0.30 (サンノプコ(株)製の消泡剤) ───────────────────────────── 以上高速撹拌機にて分散 「セロサイズ QP−4400 」の3%水溶液 7.46 部 (アメリカ国ユニオン・カーバイド社製の増粘剤) 「チッソサイザー CS−12 」 7.36 (チッソ(株)製の造膜助剤) 共重合体エマルジョン(不揮発分=45%) 100.00 ─────────────────────────────── 以上撹拌 塗料不揮発分 51% 顔料濃度(PWC) 47% 最低造膜温度 0℃以下
【0074】 塗料配合B(強制乾燥用黒色艶有塗料)の調製 水 11.5 部 共重合体エマルジョン(不揮発分=45%) 100.0 ブチルカルビトールアセテート(造膜助剤) 1.5 「ディスパースカラーSD−9020」 〔大日本インキ化学工業(株)製 1 のカーボン水性分散顔料〕 「ノプコ8034L」(前出) 0.01 「ベストサイド FX」 0.2 ────────────────────────────── 以上撹拌 塗料不揮発分 40% 最低造膜温度 30±5℃
【0075】基材a、bおよびcの調製 基材a:フレキシブル板 基材b:フレキシブル板上に、溶剤系シーラーとして、
「アクリディック A−172」〔大日本インキ化学工
業(株)製の酢酸ビニル−アクリル共重合体〕を、10
0g/m2 となるように塗布して乾燥させたのち、さら
に、その上に、「ラクトンジャンボ」〔鈴鹿塗料(株)
製の吹付けタイル用塗料〕を、2,000g/m2 とな
るように、平滑に塗布して、室温に1週間のあいだ放置
して乾燥せしめた。
【0076】基材c:比重が1.45なる珪酸カルシウ
ム板上に、溶剤系シーラーとして、「エクセルプライマ
ー」〔東日本塗料(株)製の酢酸ビニル−塩化ビニル共
重合体〕を、100g/m2 となるように塗装して乾燥
させた。
【0077】塗装(1):塗料配合Aに従って得られた
各種水性塗料を、フレキシブル板(基材a)に120g
/m2 となるように塗装せしめ、室温に一昼夜放置し
て、その上、それぞれの塗装を80g/m2 となるよう
に上塗りせしめて、室温下に7日間の放置乾燥を行っ
た。
【0078】それぞれの試験片の塗装面を残して他の面
をウレタンーアクリル系シーリング材でシーリングした
のち、各種の試験に供した。 塗装(2):塗料配合Aに従って得られた各種水性塗料
を吹き付けタイル塗装面(基材b)上に、上記(1)と
同様に、塗装、乾燥、シーリングをして、各種試験に供
した。
【0079】塗装(3):塗料配合Aに従って得られた
各種水性塗料を板温40℃に予熱した硅酸カルシウム板
(基材c)上に、120g/m2 となるように塗装せし
め、100℃の雰囲気下に10分間のあいだ加熱乾燥
し、板温が40℃になるまで放冷させてから、再度、塗
料を80g/m2 となるように上塗りせしめ、100℃
なる雰囲気下に10分間の加熱乾燥を行い、その後、室
温下に7日間の放置乾燥を行った。
【0080】その後、塗装1と同様に、シーリングし
て、各種の試験に供した。 塗装(4):塗料配合Bに従って得られた各種水性塗料
をフレキシブル板(基材a)上に、塗装(3)と同様の
手法により、加熱強制乾燥下で塗装、乾燥し、シーリン
グ材は施さずに、各種の試験に供した。
【0081】試験方法 耐水性…………水道水中に、2ケ月間のあいだ浸漬した
のちの塗面の変化状態を、目視によって判定した。 耐アルカリ性…5%水酸化ナトリウム水溶液中に2ケ月
間のあいだ浸漬したのちの塗面の変化状態を、目視によ
り判定した。 耐蒸気養生性…圧力容器に塗板を入れ、5気圧140℃
に高圧蒸気を圧入し、同圧力、同温度に12時間保持し
た。
【0082】しかるのち、常圧、室温にしてから、塗面
の変化状態を、目視にて判定した。 耐凍結融解性…水道水中に浸漬して、まず、−20℃に
4時間、次いで、40℃に4時間のあいだ、それぞれ、
保持するという操作を1サイクルとして、これを20サ
イクル行なったのちの塗面の変化状態を、目視により判
定した。 促進耐候性……サンシャイン・ウェザロメーターにて促
進試験を行なって、それぞれの所定の試験時間後におけ
る光沢保持率(%)を測定した。 実曝試験………大阪府高石市において1年間の屋外曝露
を行なったのちの塗面の変化状態を、目視によって判定
した。
【0083】判定: ○…良好 △…やや良好 ×
…不良
【0084】
【発明の効果】以上のように、本発明の保護方法は、ア
ルカリ性無機硬化体が、水や熱などと接触した場合と
か、該硬化体の水和時においても、優れたアルカリ性物
質の封止効果があるばかりか、長期に亘たるアルカリ性
条件下や高温条件下でも、極めて劣化が少なく、加え
て、長期の屋外暴露に対しても、充分なる耐候性、耐薬
品性ならびに耐汚染性などの諸々の皮膜性能に優れた、
極めて有用性の高い保護皮膜を形成せしめることができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C09D 131/02 C09D 131/02 135/02 135/02 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 41/00 - 41/72

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フルオロオレフィン類と、カルボン酸ビ
    ニルエステル類と、エチレンと、不飽和カルボン酸類
    と、架橋性単量体類とを乳化重合せしめて得られるフル
    オロオレフィン系共重合体類エマルジョンを、アルカリ
    性無機硬化体のトップコートとして塗布することを特徴
    とする、アルカリ性無機硬化体の保護方法。
  2. 【請求項2】 フルオロオレフィン類と、カルボン酸ビ
    ニルエステル類と、エチレンと、不飽和カルボン酸類
    と、架橋性単量体類とを乳化重合せしめて得られるフル
    オロオレフィン系共重合体類エマルジョンと、顔料と
    を、アルカリ性無機硬化体のトップコートとして塗布す
    ることを特徴とする、アルカリ性無機硬化体の保護方
    法。
  3. 【請求項3】 前記したフルオロオレフィン系共重合体
    類エマルジョンが、フルオロオレフィン類の40〜60
    重量%と、カルボン酸ビニルエステル類の30〜50重
    量%と、エチレンの5〜20重量%と、不飽和カルボン
    酸類の0.5〜3重量%と、架橋性単量体類の0.1〜
    2重量%との総計が100重量%なる単量体混合物を、
    乳化重合せしめて得られるものである、請求項1または
    に記載の保護方法。
  4. 【請求項4】 前記したフルオロオレフィン系共重合体
    類エマルジョンが、カルボン酸ビニルエステル類とし
    て、炭素数が5以上なる、直鎖状、分岐状ないしは環状
    のカルボン酸のビニルエステルを用いたものである、請
    求項1〜3のいずれか一つに記載の保護方法。
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