JP3289259B2 - リチウム二次電池用負極 - Google Patents

リチウム二次電池用負極

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リチウム二次電池用負
極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小型軽量化、携帯化が
進み、その電源として高エネルギー密度を有する電池の
開発が要求されている。このような要求に応える電池と
して、リチウム金属を負極活物質として用いたリチウム
二次電池が期待されている。
【0003】リチウム二次電池は、基本的に市販されて
いる各種の二次電池、例えばニッケルカドミウム電池、
鉛蓄電池に比べ、高電圧、高エネルギー密度を有してい
る。しかし、一般に負極活物質としてリチウム金属を用
いたリチウム二次電池は、充電時に針状リチウム(デン
ドライト)が生成し、放電時にこの針状リチウムが切
れ、電極基盤から脱離するため、充放電に寄与しない死
んだリチウムが生成する。また、析出した金属リチウム
粒子は非常に活性であるため、電解液との反応によりリ
チウム金属が消費される。これらの理由で、負極活物質
としてリチウム金属を用いた電池は、サイクル寿命が短
くなるという問題を抱えており、負極にリチウム金属あ
るいはリチウム合金を用いた電池系においてはサイクル
寿命の確保が難しい状況にある。
【0004】リチウム金属あるいはリチウム合金に替わ
る新しい負極活物質として、リチウムのインターカレー
ション反応を利用した材料が注目されている。この代表
的なものとして、天然黒鉛や人造黒鉛等の炭素質材料や
五二酸化ニオブ(Nb25)、二酸化モリブデン(Mo
2)、二硫化チタン(TiS2)等の無機材料が検討さ
れている。これらの材料は、リチウムをイオン化した状
態で骨格構造中に保持しているため、化学的に活性な金
属状態のリチウム負極に比べて安定であり、リチウム金
属で見られたデンドライトの生成もないためサイクル寿
命は改善される。このうち、炭素質材料は、リチウム基
準極(金属リチウム)に対し、0〜1Vの卑な電極電位
の範囲において、安定にリチウムイオンを挿入脱離する
ことができ、150〜370mAh/gの充放電容量を
有する。実際、負極活物質に炭素質材料を用いたリチウ
ムイオン二次電池が実用化されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、炭素質
材料を負極活物質として用いた場合、最大リチウム収容
量をLiC6とすると、重量当たりの容量は、370m
Ah/gと比較的大きいものの、これら炭素質材料の密
度は1.6〜2.2g/cm3と小さく、電極シートに
加工した際の密度は、1〜1.5g/cm3程度である
ため、負極容積当たりの容量は370〜555mAh/
cm3となる。しかし、この値は理論値であって、実際
は安全性の観点から、200〜370mAh/cm3
容量しか取り出せていない。一方、リチウム金属を負極
活物質として用いた場合、負極容積当たりの容量は20
62mAh/cm3得られるが、通常は上記で述べた金
属リチウムの劣化を補償するため、一般的に電池容量の
3倍当量程度のリチウムを電池内に充填するので、負極
容積当たりの容量は687mAh/cm3となる。
【0006】このように炭素質材料を負極活物質に用い
た場合、負極容積当たりの比容量が、リチウム金属の場
合の約半分になり、炭素質材料を負極活物質に用いた電
池のエネルギー密度は、リチウム金属を負極活物質に用
いた電池に比べてかなり小さくなるという問題がある。
【0007】一方、上記無機材料は、一般に安定にリチ
ウムイオンを挿入脱離することができる電極電位が、リ
チウム基準極に対して0.5〜2.0Vと高いため、こ
れら無機材料を負極活物質に用いた場合、リチウム二次
電池の動作電位が0.5〜2.0V低下し、高電圧を達
成できないという問題がある。しかも、充放電容量が1
00〜200mAh/gと小さいため、無機材料を負極
活物質に用いた電池のエネルギー密度は、リチウム金属
を負極に用いた電池に比べてかなり小さくなるという問
題がある。
【0008】近年、無機材料の中でLi2.5Co0.5
が、リチウム基準極に対して、1V近傍の電圧におい
て、330mAh/gの比容量を有することが報告され
た(電気化学協会第61回大会講演要旨集,p31,1
994)。しかしながら、上記Li2.5Co0.5Nは、充
放電において、組成式Li2.5-xCo0.5Nで、Liはx
=0〜0.755の範囲でしか利用されていないため、
比容量が330mAh/gと小さく、炭素質材料の理論
容量に満たない。また上記Li2.5Co0.5Nの比重は約
2.3g/cm3と、炭素質材料に比べて若干高い程度
であるため、負極容積当たりの容量は炭素質材料と同程
度に留まっており、上記Li2.5Co0.5Nを負極活物質
に用いた電池のエネルギー密度も、リチウム金属を負極
に用いた電池に比べてかなり小さくなるという問題があ
る。
【0009】
【発明の目的】本発明の目的は、上記のような従来技術
のかかる問題を解決し、高エネルギー密度で、かつ充放
電容量が大きく、しかもサイクル寿命が長い電極特性を
有するリチウム二次電池用負極を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め、充電によりリチウムイオンを吸蔵し、放電によりリ
チウムイオンを放出する負極活物質を主体とするリチウ
ム二次電池用負極において、該負極活物質が、組成式L
1+xyM’zN(但し、Mは、Co,NiあるいはC
uを表し、M’は遷移金属、IIIA族、IVA族、V
A族に属する元素で、かつMではない元素を表し、xは
−0.2〜2.0の範囲にあり、y+zは0.1〜0.
6の範囲にある)で表される非晶質のリチウム含有遷移
金属窒化物であることを特徴としている。
【0011】本発明を以下、さらに詳しく説明する。
【0012】上述のように本発明においては、負極活物
として、組成式Li1+xyM’zN(但し、Mは、C
o,NiあるいはCuを表し、M’は遷移金属、III
A族、IVA族、VA族に属する元素を表し、xは−
0.2〜2.0の範囲にあり、y+zは0.1〜0.6
の範囲にある)で表される非晶質のリチウム含有遷移金
属窒化物を用いる。本発明の負極活物質は、リチウム基
準極に対して1.5V以下の電極電位において、安定に
リチウムイオンを挿入脱離することができ、高容量の充
放電領域を有することを実験により見い出し、その認識
の下に本発明を完成した。本発明でいうM’の遷移金属
とは、元素番号が21のScから元素番号30のZnと
元素番号39のYから元素番号48のCdと元素番号5
7のLaから元素番号80のHgまでを含む。
【0013】前述の組成式において、xが−0.2未満
であると分解する恐れがある。またy+zが0.1未満
であると絶縁性が高くなり、電池性能が劣化するととも
に、分解する恐れを生じ、一方0.6を越えると遷移金
属元素の固溶が困難になる。
【0014】本発明の負極活物質である組成式Li1+x
yM’zN(但し、Mは、Co,NiあるいはCuを表
し、M’は遷移金属、IIIA族、IVA族、VA族に
属する元素で、かつMではない元素を表わし、xは−
0.2〜2.0の範囲にあり、y+zは0.1〜0.6
の範囲にある)で表される非晶質のリチウム含有遷移金
属窒化物は、例えば組成式Li3-y-zyM’zN(但
し、Mは、Co,NiあるいはCuを表し、M’は遷移
金属、IIIA族、IVA族、VA族に属する元素を
し、y+zは0.1〜0.6の範囲にある)で表される
リチウム含有遷移金属窒化物(以後は、前駆体という)
を非晶質化することによって得られる。非晶質化の方法
について様々な方法を試みた結果、例えば、化学反応に
より前駆体からリチウムイオンを脱離する方法や、電気
化学反応により前駆体からリチウムイオンを脱離する方
法や、スパッタ法により非晶質の薄膜を形成させる方法
がある。
【0015】詳しい合成方法の一例について説明する。
まず、上記前駆体は、出発原料としてリチウム(Li)
あるいは窒化リチウム(Li3N)と遷移金属あるいは
遷移金属窒化物を用いることができ、組成式Li3-y-z
yM’zN(但し、Mは、Co,NiあるいはCuを表
し、M’は遷移金属、IIIA族、IVA族、VA族に
属する元素を表し、y+zは0.1〜0.6の範囲にあ
る)に従って、所定量を秤量し、混合後、窒素雰囲気中
で焼成することにより合成することができる。次に、該
前駆体から、化学反応あるいは電気化学反応によりリチ
ウムイオンを脱離し非晶質化させる。電気化学反応によ
り非晶質化する方法としては、作用極に該前駆体を、対
極にリチウム金属を、及び電解液にリチウム塩を含む非
水電解液を用いた酸化還元系を組み、所定の電気量、充
電(作用極からリチウムイオンを脱離する方向)する方
法がある。一方、化学反応により非晶質化する方法とし
ては、脱水したアセトニトリル中に所定量のヨウ素(I
2)を溶解し、これに該前駆体を加え、攪拌、濾過する
方法がある。またンスパッタ法により非晶質化する方法
としては、通常のスパッタ装置で、ターゲットに前駆体
の燒結体を用い、Arガス雰囲気で非晶質の薄膜を形成
する方法がある。
【0016】本発明のリチウム二次電池用負極を使用す
るリチウム二次電池に用いる電解質には、非水電解液、
高分子電解質、無機固体電解質、あるいは溶融塩電解質
が適当である。非水電解液は、一般に、溶媒と、その溶
媒に溶解するリチウム塩とから構成されている。非水電
解液の溶媒としては、エチレンカーボネイト(EC)、
プロピレンカーボネイト(PC)、ジメチルカーボネイ
ト(DMC)、ジエチルカーボネイト(DEC)、メチ
ルエチルカーボネイト(MEC)等の鎖状エステル類、
γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメ
トキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン
(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖
状エーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル
類、アセトニトリル等のニトリル類等から選ばれた少な
くとも1種類以上の溶媒を用いることができる。また、
非水電解液の溶質としては、LiAsF6、LiBF4
LiPF6、LiAlCl4、LiClO4、LiCF3
3、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiC65
SO3、LiN(CF3SO2)、LiC(CF3
23、C49SO3Li等のリチウム塩及びこれらの
混合物を用いることができる。
【0017】また、高分子電解質としては、例えばポリ
エチレンオキサイド等のポリエーテル化合物にLiCF
3SO3等のリチウム塩を溶解した系や高分子ラテックス
に上記非水電解液を含浸させた系を用いることができ、
無機固体電解質には、Li2S−SiS2−Li3PO4
やLi4SiO4−Li3VO4系等を用いることができ
る。さらに、溶融塩電解質としては、例えばAlCl3
−1−ブチルピリジニウムクロリド−LiCl系やAl
Cl3−1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリ
ド−LiCl系を用いることができる。
【0018】さらに、本発明の負極活物質をリチウム二
次電池に用いる場合、正極活物質には、リチウムを含有
する、チタン、モリブデン、タングステン、ニオブ、バ
ナジウム、マンガン、鉄、クロム、ニッケル、コバルト
などの遷移金属の複合酸化物や複合硫化物等を用いるこ
とができる。特に、リチウム金属極に対する電極電位が
3V以上であり、高電圧、高エネルギー密度が期待でき
る、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2が、正極
活物質として好適である。
【0019】本発明の負極活物質である組成式Li1+x
yM’zN(但し、Mは、Co,NiあるいはCuを表
し、M’は遷移金属、IIIA族、IVA族、VA族に
属し、かつMではない元素を表し、xは−0.2〜2.
0の範囲にあり、yは0.1〜0.6の範囲にある)で
表される非晶質のリチウム含有遷移金属窒化物は、リチ
ウム基準極(金属リチウム)に対し、1.5V以下の卑
な電極電位の範囲において、高容量の充放電領域を有す
ることを見い出した。
【0020】特に、本発明の負極活物質であるLi1+x
CoyNizN、Li1+xCoyCuzNやLi1+xNiy
zN(但し、xは−0.2〜2.0の範囲にあり、y
+zは0.1〜0.6の範囲にある)は、X線粉末回折
法において、回折角をθとして2θで30〜70゜の範
囲に回折ピークを持たない非晶質であり、従来技術のL
2.5Co0.5Nとは、マクロ的に全く異なった特性を有
する負極活物質であり、しかも、この非晶質のLi1+x
CoyNizN、Li1+xCoyCuzNやLi1+xNiy
zN(但し、xは−0.2〜2.0の範囲にあり、y
+zは0.1〜0.6の範囲にある)は、可逆的にリチ
ウムイオンの脱挿入ができ、かつ高充放電容量を有する
ことを実験により発見し、従来技術に比べて、充放電容
量を著しく向上することを見い出した。すなわち、X線
粉末回折法において回折角2θで30〜70゜に回折ピ
ークを有さない非晶質であれば、電池特性が改良される
ことがわかった。
【0021】このように、本発明の負極活物質は、従来
この種の電池の負極活物質として用いられてきた炭素質
材料等に比べて、負極単位容積当たりの充放電容量も大
きくなる。さらに、本発明の負極活物質は、リチウムの
拡散が速く、充放電による分極が小さいため、大電流で
の充放電が可能であり、さらに充放電の繰り返しによる
不可逆物質の生成等の劣化が殆ど見られず、極めて安定
でサイクル寿命の長い電池特性を得ることができる。従
って、負極活物質として、本発明の組成式Li1+x
yM’zN(但し、Mは、Co,NiあるいはCuを表
し、M’は遷移金属、IIIA族、IVA族、VA族に
属する元素を表し、遷移金属に属する元素で、かつMで
はない元素を表し、xは−0.2〜2.0の範囲にあ
り、y+zは0.1〜0.6の範囲にある)で表される
非晶質のリチウム含有遷移金属窒化物を用いることによ
り、高エネルギー密度で、かつ充放電容量が大きく、し
かも安全性が確保され、サイクル寿命が長いリチウム
次電池用負極を提供することができる。
【0022】以下、実施例により本発明をさらに詳しく
説明する。
【0023】
【実施例1】図1は本発明によるリチウム二次電池の
極活物質の性能評価に用いたテストセルの断面図であ
る。図1において、1は対極ケースであり、ステンレス
鋼板の板を絞り加工したものである。2は金属リチウム
であり、所定の厚みのリチウム金属箔を直径16mmに
打ち抜いたものを圧着したものである。3は非水電解液
であり、ECとDEEの体積比1:1の混合溶媒に、L
iClO4を1モル/リットル溶解したものである。4
はポリプロピレンまたはポリエチレンの多孔質フィルム
からなるセパレータである。5はステンレス鋼の板を絞
り加工した作用極ケースである。6はLiCo 0.4 Fe
0.1 を用いて構成された作用極である。この作用極
は、上述した化学反応により合成したLiCo0.4Fe
0.1Nと導電剤であるアセチレンブラックと結着剤であ
るポリテトラフルオロエチレンを重量比70:25:5
で混合、圧延し、シートを作製し、直径16mmに打ち
抜いたものである。7はTiネット製の集電体であり、
前記作用極6に被せた状態で、作用極ケース5にスポッ
ト溶接されている。8はガスケットであり対極ケース1
と作用極ケース5との間の電気的絶縁を保つと共に、作
用極ケース開口縁が内側に折り曲げられ、かしめられる
ことによって、電池内容物を密閉、封止している。図2
に、粉末X線回折装置を用いて測定したLiCo0.4
0.1Nの回折パターンを示す。X線回折装置の管球に
は、Cuを用い、管電圧30kV、管電流100mAで
測定した。2θ=25゜付近にブロードなピークが認め
られたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の範囲
において回折ピークは認められず、LiCo0.4Fe0.1
Nは非晶質であることを確認した。
【0024】このテストセルを0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電試験した。この時の5サイ
クル目の充放電曲線を図3に示す。図3から明らかなよ
うに、LiCo0.4Fe0.1Nは、0.0〜1.4Vの電
圧範囲で、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、放出可能で
あった。充放電に伴う容量の急激な低下は認められず、
50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。しかも、
安定に充放電を繰り返しているときの容量は、54mA
h得られ、これを作用極の負極活物質の重量当たりの容
量に換算すると、810mAh/gの比容量が得られ
た。また、充放電試験終了後、テストセルを分解し、作
用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリチウム
金属の析出やデンドライトの成長を認めることができな
かった。また、作用極をX線回折装置で分析したが、リ
チウム金属のX線回折パターンは認められなかった。
【0025】
【実施例2】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLiCo0.4Ni0.1Nに替えてテストセルを作製し
た。この作用極は、上述した化学反応により合成したL
iCo0.4Ni0.1Nと導電剤であるアセチレンブラック
と結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを重量比7
0:25:5で混合、圧延し、シートを作製し、直径1
6mmに打ち抜いたものである。作用極6以外は、実施
例1と同じものを用いた。図4に、粉末X線回折装置を
用いて測定したLiCo0.4Ni0.1Nの回折パターンを
示す。X線回折装置の管球には、Cuを用い、管電圧3
0kV、管電流100mAで測定した。2θ=25゜付
近にブロードなピークが認められたが、このピーク以
外、2θで10〜70゜の範囲において回折ピークは認
められず、LiCo 0.4 Ni 0.1 は非晶質であることを
確認した。
【0026】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。この時の
5サイクル目の充放電曲線を図5に示す。図5から明ら
かなように、LiCo0.4Ni0.1Nも0.0〜1.4V
の電圧範囲で、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、放出可
能であった。充放電に伴う容量の急激な低下は認められ
ず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。しか
も、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、53
mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当たり
の容量に換算すると、810mAh/gの比容量が得ら
れた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解し、
作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリチウ
ム金属の析出やデンドライトの成長を認めることができ
なかった。また、作用極をX線回折装置で分析したが、
リチウム金属のX線回折パターンを認めることはできな
かった。
【0027】
【実施例3】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLi1.1Co0.2Ni0.2Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した化学反応により合成し
たLi1.1Co0.2Ni0.2Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLi1.1Co
0.2Ni0.2Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが
認められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の
範囲において回折ピークは認められず、Li1.1Co0.2
Ni0.2Nは非晶質であることを確認した。
【0028】このテストセルは0.0〜1.3Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
1.1Co0.2Ni0.2Nも、可逆的にリチウムイオンを吸
蔵、放出可能であり、充放電に伴う容量の急激な低下は
認められず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返し
た。しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量
は、45mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重
量当たりの容量に換算すると、680mAh/gの比容
量が得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを
分解し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面
にリチウム金属の析出やデンドライトの成長を認めるこ
とができなかった。また、作用極をX線回折装置で分析
したが、リチウム金属のX線回折パターンを認めること
はできなかった。
【0029】
【実施例4】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLiCo0.4Mn0.1Nに替えてテストセルを作製し
た。この作用極は、上述した電気化学反応により合成し
たLiCo0.4Mn0.1Nと導電剤であるアセチレンブラ
ックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを重量
比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製し、直
径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以外は、
実施例1と同じものを用いた。このLiCo0.4Mn0.1
Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認められた
が、このピーク以外、2θで10〜70゜の範囲におい
て回折ピークは認められず、LiCo0.4Mn0.1Nは非
晶質であることを確認した。
【0030】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Co0.4Mn0.1Nも、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、
放出可能であり、充放電に伴う容量の急激な低下は認め
られず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。
しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、
50mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当
たりの容量に換算すると、780mAh/gの比容量が
得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解
し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリ
チウム金属の析出やデンドライトの成長を認めることが
できなかった。また、作用極をX線回折装置で分析した
が、リチウム金属のX線回折パターンを認めることはで
きなかった。
【0031】
【実施例5】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLiCo0.4Cu0.1Nに替えてテストセルを作製し
た。この作用極は、上述した化学反応により合成した非
晶質のLiCo0.4Cu0.1Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。図6に、粉末X線
回折装置を用いて測定したLiCo0.4Cu0.1Nの回折
パターンを示す。X線回折装置の管球には、Cuを用
い、管電圧30kV、管電流100mAで測定した。2
θ=25゜付近にブロードなピークが認められたが、こ
のピーク以外、2θで10〜70゜の範囲において回折
ピークは認められず、LiCo 0.4 Cu 0.1 は非晶質で
あることを確認した。
【0032】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。この時の
5サイクル目の充放電曲線を図7に示す。図7から明ら
かなように、LiCo0.4Cu0.1Nも0.0〜1.4V
の電圧範囲で、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、放出可
能であった。充放電に伴う容量の急激な低下は認められ
ず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。しか
も、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、58
mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当たり
の容量に換算すると、860mAh/gの比容量が得ら
れた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解し、
作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリチウ
ム金属の析出やデンドライトの成長を認めることができ
なかった。また、作用極をX線回折装置で分析したが、
リチウム金属のX線回折パターンを認めることはできな
かった。
【0033】
【実施例6】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLiCo0.1Cu0.4Nに替えてテストセルを作製し
た。この作用極は、上述した化学反応により合成した非
晶質のLiCo0.1Cu0.4Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLiCo0.1
Cu0.4Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認
められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の範
囲において回折ピークは認められず、LiCo0.1Cu
0.4Nは非晶質であることを確認した。
【0034】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。この時の
5サイクル目の充放電曲線を図8に示す。図8から明ら
かなように、LiCo0.1Cu0.4Nも0.0〜1.4V
の電圧範囲で、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、放出可
能であった。充放電に伴う容量の急激な低下は認められ
ず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。しか
も、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、50
mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当たり
の容量に換算すると、770mAh/gの比容量が得ら
れた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解し、
作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリチウ
ム金属の析出やデンドライトの成長を認めることができ
なかった。また、作用極をX線回折装置で分析したが、
リチウム金属のX線回折パターンを認めることはできな
かった。
【0035】
【実施例7】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLi1.2Co0.2Cu0.2Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した化学反応により合成し
たLi1.2Co0.2Cu0.2Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLi1.2Co
0.2Cu0.2Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが
認められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の
範囲において回折ピークは認められず、Li1.2Co0.2
Cu0.2Nは非晶質であることを確認した。
【0036】このテストセルは0.0〜1.2Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
1.2Co0.2Cu0.2Nも、可逆的にリチウムイオンを吸
蔵、放出可能であった。充放電に伴う容量の急激な低下
は認められず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返
した。しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容
量は、46mAh得られ、これを作用極の負極活物質
重量当たりの容量に換算すると、850mAh/gの比
容量が得られた。また、充放電試験終了後、テストセル
を分解し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表
面にリチウム金属の析出やデンドライトの成長を認める
ことができなかった。また、作用極をX線回折装置で分
析したが、リチウム金属のX線回折パターンを認めるこ
とはできなかった。
【0037】
【実施例8】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLiCo0.4Zn0.1Nに替えてテストセルを作製し
た。この作用極は、上述した電気化学反応により合成し
たLiCo0.4Zn0.1Nと導電剤であるアセチレンブラ
ックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを重量
比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製し、直
径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以外は、
実施例1と同じものを用いた。このLiCo0.4Zn0.1
Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認められた
が、このピーク以外、2θで10〜70゜の範囲におい
て回折ピークは認められず、LiCo0.4Zn0.1Nは非
晶質であることを確認した。
【0038】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Co0.4Zn0.1Nも、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、
放出可能であった。充放電に伴う容量の急激な低下は認
められず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返し
た。しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量
は、44mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重
量当たりの容量に換算すると、660mAh/gの比容
量が得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを
分解し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面
にリチウム金属の析出やデンドライトの成長を認めるこ
とができなかった。また、作用極をX線回折装置で分析
したが、リチウム金属のX線回折パターンを認めること
はできなかった。
【0039】
【実施例9】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe0.1
NをLiNi0.4Fe0.1Nに替えてテストセルを作製し
た。この作用極は、上述した電気化学反応により合成し
たLiNi0.4Fe0.1Nと導電剤であるアセチレンブラ
ックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを重量
比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製し、直
径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以外は、
実施例1と同じものを用いた。このLiNi0.4Fe0.1
Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認められた
が、このピーク以外、2θで10〜70゜の範囲におい
て回折ピークは認められず、LiNi0.4Fe0.1Nは非
晶質であることを確認した。
【0040】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Ni0.4Fe0.1Nも可逆的にリチウムイオンを吸蔵、放
出可能であり、充放電に伴う容量の急激な低下は認めら
れず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。し
かも、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、4
5mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当た
りの容量に換算すると、680mAh/gの比容量が得
られた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解
し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリ
チウム金属の析出やデンドライトの成長を認めることが
できなかった。また、作用極をX線回折装置で分析した
が、リチウム金属のX線回折パターンを認めることはで
きなかった。
【0041】
【実施例10】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe
0.1NをLiNi0.4Mn0.1Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した電気化学反応により合
成したLiNi0.4Mn0.1Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLiNi0.4
Mn0.1Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認
められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の範
囲において回折ピークは認められず、LiNi0.4Mn
0.1Nは非晶質であることを確認した。
【0042】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Ni0.4Mn0.1Nも、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、
放出可能であった。充放電に伴う容量の急激な低下は認
められず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返し
た。しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量
は、38mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重
量当たりの容量に換算すると、650mAh/gの比容
量が得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを
分解し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面
にリチウム金属の析出やデンドライトの成長を認めるこ
とができなかった。また、作用極をX線回折装置で分析
したが、リチウム金属のX線回折パターンを認めること
はできなかった。
【0043】
【実施例11】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe
0.1NをLiNi0.4Cu0.1Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した電気化学反応により合
成したLiNi0.4Cu0.1Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLiNi0.4
Cu0.1Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認
められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の範
囲において回折ピークは認められず、LiNi0.4Cu
0.1Nは非晶質であることを確認した。
【0044】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Ni0.4Cu0.1Nも、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、
放出可能であり、充放電に伴う容量の急激な低下は認め
られず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。
しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、
45mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当
たりの容量に換算すると、700mAh/gの比容量が
得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解
し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリ
チウム金属の析出やデンドライトの成長を認めることが
できなかった。また、作用極をX線回折装置で分析した
が、リチウム金属のX線回折パターンを認めることはで
きなかった。
【0045】
【実施例12】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe
0.1NをLiNi0.1Cu0.4Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した電気化学反応により合
成したLiNi0.1Cu0.4Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。図9に、粉末X線
回折装置を用いて測定したLiNi0.1Cu0.4Nの回折
パターンを示す。X線回折装置の管球には、Cuを用
い、管電圧30kV、管電流100mAで測定した。2
θ=25゜付近にブロードなピークが認められたが、こ
のピーク以外、2θで10〜70゜の範囲において回折
ピークは認められず、LiNi 0.1 Cu 0.4 は非晶質で
あることを確認した。
【0046】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。この時の
5サイクル目の充放電曲線を図10に示す。図10から
明らかなように、LiNi0.1Cu0.4Nも0.0〜1.
4Vの電圧範囲で、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、放
出可能であった。充放電に伴う容量の急激な低下は認め
られず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。
しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、
48mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当
たりの容量に換算すると、720mAh/gの比容量が
得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解
し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリ
チウム金属の析出やデンドライトの成長を認めることが
できなかった。また、作用極をX線回折装置で分析した
が、リチウム金属のX線回折パターンを認めることはで
きなかった。
【0047】
【実施例13】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe
0.1NをLiCu0.4Fe0.1Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した電気化学反応により合
成したLiCu0.4Fe0.1Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLiCu0.4
Fe0.1Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認
められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の範
囲において回折ピークは認められず、LiCu0.4Fe
0.1Nは非晶質であることを確認した。
【0048】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Cu0.4Fe0.1Nも、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、
放出可能であり、充放電に伴う容量の急激な低下は認め
られず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。
しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、
43mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当
たりの容量に換算すると、680mAh/gの比容量が
得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解
し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリ
チウム金属の析出やデンドライトの成長を認めることが
できなかった。また、作用極をX線回折装置で分析した
が、リチウム金属のX線回折パターンを認めることはで
きなかった。
【0049】
【実施例14】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe
0.1NをLiCu0.4Mn0.1Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した電気化学反応により合
成したLiCu0.4Mn0.1Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLiCu0.4
Mn0.1Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認
められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の範
囲において回折ピークは認められず、LiCu0.4Mn
0.1Nは非晶質であることを確認した。
【0050】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Cu0.4Mn0.1Nも、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、
放出可能であり、充放電に伴う容量の急激な低下は認め
られず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返した。
しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量は、
40mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重量当
たりの容量に換算すると、630mAh/gの比容量が
得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを分解
し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面にリ
チウム金属の析出やデンドライトの成長を認めることが
できなかった。また、作用極をX線回折装置で分析した
が、リチウム金属のX線回折パターンを認めることはで
きなかった。
【0051】
【実施例15】実施例1の作用極6のLiCo0.4Fe
0.1NをLiCu0.4Zn0.1Nに替えてテストセルを作
製した。この作用極は、上述した電気化学反応により合
成したLiCu0.4Zn0.1Nと導電剤であるアセチレン
ブラックと結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを
重量比70:25:5で混合、圧延し、シートを作製
し、直径16mmに打ち抜いたものである。作用極6以
外は、実施例1と同じものを用いた。このLiCu0.4
Zn0.1Nは2θ=25゜付近にブロードなピークが認
められたが、このピーク以外、2θで10〜70゜の範
囲において回折ピークは認められず、LiCu0.4Zn
0.1Nは非晶質であることを確認した。
【0052】このテストセルは0.0〜1.4Vの電圧
範囲、1mAの電流で充放電条件で試験した。このLi
Cu0.4Zn0.1Nも、可逆的にリチウムイオンを吸蔵、
放出可能であった。充放電に伴う容量の急激な低下は認
められず、50サイクル以上安定に充放電を繰り返し
た。しかも、安定に充放電を繰り返しているときの容量
は、45mAh得られ、これを作用極の負極活物質の重
量当たりの容量に換算すると、700mAh/gの比容
量が得られた。また、充放電試験終了後、テストセルを
分解し、作用極表面をSEMで観察したが、作用極表面
にリチウム金属の析出やデンドライトの成長を認めるこ
とができなかった。また、作用極をX線回折装置で分析
したが、リチウム金属のX線回折パターンを認めること
はできなかった。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による負極
活物質を用いれば、リチウム金属基準極に対し、1.5
V以下の卑な電極電位の範囲において、大きな充放電容
量ならびに安定で長いサイクル寿命が得られる。このた
め、電池の動作電圧を著しく低下することがなく、高電
圧、高エネルギー密度を達成することができる。しか
も、比重が炭素質材料に比べて同等または大きいため、
負極電極容積当たりの充放電容量もグラファイト系負極
電極に比べて大きな容量を得ることができる。さらに、
充放電の繰り返しによる容量の急激な低下は認められな
いことから、非常に長いサイクル寿命を得ることができ
る。また、充放電を繰り返した負極活物質の電極表面に
リチウム金属の析出やデンドライトの発生が認められな
いことから、安全上も問題がない。
【0054】従って、本発明は、高エネルギー密度で、
かつ充放電容量が大きく、しかもサイクル寿命が長い
極特性を有するリチウム二次電池用負極を得ることがで
きるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いたテストセルの断面図。
【図2】本発明によるLiCo0.4Fe0.1NのX線回折
パターンを示す図。
【図3】本発明によるLiCo0.4Fe0.1Nを作用極に
用いたテストセルの5サイクル目の充放電曲線を示す
図。
【図4】本発明によるLiCo0.4Ni0.1NのX線回折
パターンを示す図。
【図5】本発明によるLiCo0.4Ni0.1Nを作用極に
用いたテストセルの5サイクル目の充放電曲線を示す
図。
【図6】本発明によるLiCo0.4Cu0.1NのX線回折
パターンを示す図。
【図7】本発明によるLiCo0.4Cu0.1Nを作用極に
用いたテストセルの5サイクル目の充放電曲線を示す
図。
【図8】本発明によるLiCo0.1Cu0.4Nを作用極に
用いたテストセルの5サイクル目の充放電曲線を示す
図。
【図9】本発明によるLiNi0.1Cu0.4NのX線回折
パターンを示す図。
【図10】本発明によるLiNi0.1Cu0.4Nを作用極
に用いたテストセルの5サイクル目の充放電曲線を示す
図。
【符号の説明】
1 対極ケース 2 対極 3 非水電解液 4 セパレータ 5 作用極ケース 6 作用極 7 集電体 8 ガスケット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山木 準一 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−78609(JP,A) 特開 平7−320720(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/58 H01M 4/02 - 4/04 H01M 10/40 JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】充電によりリチウムイオンを吸蔵し、放電
    によりリチウムイオンを放出する負極活物質を主体とす
    リチウム二次電池用負極において、該負極活物質が、
    組成式Li1+xyM’zN(但し、Mは、Co,Niあ
    るいはCuを表し、M’は遷移金属、IIIA族、IV
    A族、VA族に属する元素で、かつMではない元素を表
    し、xは−0.2〜2.0の範囲にあり、y+zは0.
    1〜0.6の範囲にある)で表される非晶質のリチウム
    含有遷移金属窒化物であることを特徴とするリチウム二
    次電池用負極
  2. 【請求項2】該組成式Li1+xyM’zNで表される非
    晶質のリチウム含有遷移金属窒化物が、Li1+xCoy
    zN、Li1+xCoyNizN、Li1+xCoyMnzN、
    Li1+xCoyCuzNあるいはLi1+xCoyZnzN(但
    し、xは−0.2〜2.0の範囲にあり、y+zは0.
    1〜0.6の範囲にある)であることを特徴とする請求
    項1記載のリチウム二次電池用負極
  3. 【請求項3】該組成式Li1+xyM’zNで表される非
    晶質のリチウム含有遷移金属窒化物が、Li1+xNiy
    zN、Li1+xNiyMnzN、あるいはLi1+xNiy
    zN(但し、xは−0.2〜2.0の範囲にあり、y
    +zは0.1〜0.6の範囲にある)であることを特徴
    とする請求項1記載のリチウム二次電池用負極
  4. 【請求項4】該組成式Li1+xyM’zNで表される非
    晶質のリチウム含有遷移金属窒化物が、Li1+xCuy
    zN、Li1+xCuyMnzN、あるいはLi1+xCuy
    zN(但し、xは−0.2〜2.0の範囲にあり、y
    +zは0.1〜0.6の範囲にある)であることを特徴
    とする請求項1記載のリチウム二次電池用負極
  5. 【請求項5】該組成式Li1+xyM’zNで表される非
    晶質のリチウム含有遷移金属窒化物が、X線粉末回折法
    において、回折角をθとして2θで30〜70゜の範囲
    に回折ピークを持たない非晶質であることを特徴とする
    請求項1乃至4のいずれか1項記載のリチウム二次電池
    用負極
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