JP3288208B2 - 溶銑の脱りん方法 - Google Patents

溶銑の脱りん方法

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JP3288208B2 JP31090295A JP31090295A JP3288208B2 JP 3288208 B2 JP3288208 B2 JP 3288208B2 JP 31090295 A JP31090295 A JP 31090295A JP 31090295 A JP31090295 A JP 31090295A JP 3288208 B2 JP3288208 B2 JP 3288208B2
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶銑の高効率な脱りん
処理方法に関するものであって、溶銑予備処理分野に広
く利用される。
【0002】
【従来の技術】鋼材中のりんは、鋼材の結晶粒界に偏析
し、その強度を低下させ、低温靭性を悪化させる。従っ
て、高強度部材ではそのりん含有量を極力低減すること
が望まれている。
【0003】このような要求に応えるため、従来より銑
鉄を鋼に変える転炉脱炭工程において生石灰等の精錬剤
を添加して脱りん処理を並行して行う、いわゆる塩基性
転炉製鋼法が行われていた。
【0004】これら酸化による溶銑の脱りん反応は一般
に下式の反応式にて表される。
【0005】 2 + 5 → P25 (1) 一方、転炉精錬では脱りん処理にとっては本来不利な条
件である。即ち(1)式の反応は低温の方が熱力学的に
有利であるが、転炉末期の1650℃程度の高温の条件
では無く、溶銑段階即ち1350℃前後の温度が望まし
いことから、今日では、転炉精錬に先立ち、溶銑段階で
脱りん処理を行う、いわゆる溶銑予備脱りん処理が広く
普及するに至っている。また、耐火物の耐用性を考慮す
れば、脱硫処理も溶銑段階で行うことにより転炉での精
錬を脱炭処理に特化し、少ないスラグで高効率な脱炭精
錬を行うことが指向されている。今日では溶銑段階での
溶銑予備脱りん、脱硫処理を合わせた溶銑予備処理技術
が広く採用されているのである。
【0006】一方、溶銑予備脱りん技術においては安価
で優れた精錬能力を持つCaOが広く用いられている。
一方、CaO自体は2600℃と極めて高い融点を持つ
高融点酸化物であり、CaO単体では溶銑温度では固体
状態であり、反応性に乏しいという欠点を持つとされて
いた。そのため、CaOを溶融させる目的でCaF2
の溶融促進剤を併用することが広く行われている。転炉
精錬では粒径5〜30mm程度の塊状の生石灰を炉上の
ホッパーから炉内に落とし込んで上方添加する方法が行
われているが、溶銑予備処理においては、溶融性を改善
するために微粉にして溶銑中に先の溶融促進剤などとと
もに吹き込む方法が広く行われている。一方、この溶銑
予備脱りんにおいては溶銑中に珪素が存在すると珪素の
方が酸化され易いためSi + 2 → SiO2 (2) (2)式の脱珪反応が優先し、スラグ中には生成するS
iO2 が濃化する。その結果スラグの塩基度CaO/S
iO2 が低下することになるが、低塩基度になると
(1)式の酸化脱りん反応で生じるP25 の溶融スラ
グ中への溶解能力が低下するために、一般には事前に溶
銑を脱珪処理することが効率的とされている。あるいは
事前脱珪処理を行わない時には多量のCaOを添加して
塩基度を高く保つことが行われる。しかし、事前脱珪処
理を行うにはそれ相応の設備費用が必要となり、また、
多量の生石灰添加を行えば当然のことながら生石灰使用
量が増え、溶銑予備脱りんを行う本来の目的、即ち「転
炉より低温の溶銑段階で脱りん処理を行い、生石灰など
の精錬剤を削減してコスト的に有利な精錬を行う」の有
利性が縮小する。
【0007】更に、(1)式からも想像されるように、
脱りんを促進するためにはスラグ−メタル系の酸素ポテ
ンシャルを高めても良いことが分かるが、従来の方法で
は例えば先の特開昭58−016007号公報では塩基
度と酸素ポテンシャルの指標であるスラグ中の酸化鉄含
有量を例えば各々2.0以上、15%以下との範囲が好
適であるとの記述が見られる訳である。しかし、塩基度
を高めるには生石灰使用量が増え、また、スラグ中の酸
化鉄含有量を増すということは逆にスラグへの鉄分の酸
化ロスを増すことにもなり、塩基度を高めたり、酸化鉄
含有量を高めるにも自ずと限界がある。
【0008】それに対し、本願発明者らは特開平2−2
00716号公報にて示した強撹拌、高送酸速度下での
脱りん処理を行えば低塩基度で、極めて短い時間での脱
りん方法を開示した。しかもこの方法によると事前脱珪
処理を施していない高珪素濃度の溶銑でも従来、事前脱
珪処理を施した溶銑を高塩基度で処理するのと同等の生
石灰量で、かつ極めて短時間での脱りん処理が可能であ
ることを開示したが、本願発明ではその発明の改良とし
て、更に高効率な脱りん処理を可能とするものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は前項に述べ
た課題を解決するために成されたものである。即ち、安
価に溶銑の予備脱りん処理を行おうとすると安価な精錬
剤としてCaO系精錬剤を用いることになる。CaOは
2400℃以上という高融点酸化物であるためにそのま
ま用いられることは無く、一般にはCaF2 などの滓化
剤を添加して用いるがそのために耐火物寿命が低下する
という問題が生じる。例えば、特開昭59−22251
3号公報にはCaOにCaCl2 ,CaF2 を添加し、
事前焼成した脱りん剤の記述があり、特開平4−218
609号公報には生石灰と蛍石を吹き込むとの記載があ
り、特開昭63−262406号公報にはCaO粉末を
CaF2 粉末とともに吹き込むとの記載がある。以上の
様に、生石灰を紛状で利用するに際してもCaF2 やM
n鉱石、あるいはCaCl2 などの滓化助剤を利用しな
ければ脱りんが有効に進まないということが従来の常識
であって、これによる耐火物損耗もやむなしとされてい
た。スラグの塩基度を高めれば、スラグの融点は上昇す
るので、これらの滓化助剤の必要量も益々増加する。
【0010】更に、スラグの塩基度を保って脱りんを起
こすためには事前脱珪処理を行うか、多量の生石灰を添
加して塩基度の低下を防ぐことが行われる。これには多
大な事前脱珪処理設備費が必要となり、多量の生石灰添
加を行うと生石灰コストが増加する。塩基度を高めずに
脱りん処理を行うためにはスラグの酸化鉄含有量を高め
る必要が生じるが、これは鉄ロスを増大させる、という
問題があった。
【0011】この様な観点から、生石灰系フラックスに
よる溶銑の予備脱りん処理においては事前脱珪処理を施
すか、多量の生石灰を添加して塩基度を上げ、紛状Ca
Oを使う場合にも滓化助剤を添加して生石灰の融点を低
下させることが行われていた。このように、事前脱珪を
行うには多大な設備費を要し、事前脱珪を行わない場合
には多量の生石灰を要し、また高塩基度とするとスラグ
の溶融滓化性を確保するために更に多量の滓化剤を要
し、耐火物損耗を助長するという結果を招いている。
【0012】この様な状況に鑑み、本発明は安価で効率
的な溶銑の予備脱りん処理を可能とする方法を提供する
ことを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、 (1)溶銑にCaO源及び酸素源を添加して溶銑の脱り
ん処理を行うに際し、溶銑に付与する撹拌力εを1.2
〜10kw/tとし、CaF2 、CaCl2 等の滓化剤
を添加すること無く微粉CaO源をスラグ中のCaOと
SiO2 比が1.7〜2.1モル比となるように添加す
ることを特徴とする溶銑の脱りん方法。
【0014】(2)(1)の溶銑の脱りん方法におい
て、CaO源と酸素源を同一羽口から供給することを特
徴とする溶銑の脱りん方法。
【0015】である。
【0016】
【作用】固体CaOによる脱りん反応は、(1)式で生
成したP25 がCaO粒子内を固相拡散し、高融点で
安定なりん酸カルシウムを生成する次式の反応で表され
る。
【0017】 3CaO+P25 →3CaO・P25 (3) 4CaO+P25 →4CaO・P25 (4) 所で、(3)、(4)式の反応は固体CaO中のりんの
拡散過程が律速段階となり、反応速度が小さいとされて
いた。例えば、鉄と鋼、vol.58(1972),
p.1217頁に掲載されている論文では固体CaOる
つぼによる溶鉄の脱りん反応では、最終的に溶鋼中のり
ん、酸素濃度は(4)式の平衡で規定される値に到達す
るものの、60〜90分という長時間を要すると記載さ
れている。一方、本願発明ではこの点について検討を行
い、十分細かい生石灰を使用し、溶銑側の撹拌がある程
度強い条件では速やかに脱りん反応が進行することを見
出した。この理由は、ある程度粒径が細かい生石灰を使
用すれば、生石灰粒子内への(1)式で生じたりん酸の
生石灰粒子内部への固相拡散は拡散距離が短いので十分
な速度で進み得ることが明らかとした。ただし、この場
合にも固体生石灰−溶銑界面への溶銑中のりんの物質移
動速度がある程度速くなければならない。従って、これ
が律速段階とならない様、溶銑にはある程度高い撹拌力
を付与することが必要となる。
【0018】更に、溶銑中の珪素濃度がある程度高い時
には(2)式の反応で生じるSiO2 とCaOとの反応
も生じ、最終的には(5)、(6)式の反応でCaO中
に固定されることになる。
【0019】 2CaO+SiO2 →2CaO・SiO2 (5) 3CaO+SiO2 →3CaO・SiO2 (6) ただし、(6)の反応でトリカルシウムシリケート(3
CaO・SiO2 )が生成するのは設定塩基度(CaO
添加量と溶銑中のSi濃度から計算される塩基度)が2
を超える場合に限られる。
【0020】ここで、2CaO・SiO2 自体は210
0℃程度の高融点で安定な化合物である。
【0021】本願発明者らは溶銑中にりんと珪素が同時
に存在する場合には、ある撹拌力、酸素供給速度の範囲
に設定することにより同時に脱珪反応と脱りん反応が極
めて速やかに進行することを見出し、特開平2−200
716号公報として公開した所であるが、更に本発明に
おいては強撹拌条件において微粉のCaOを使うと、
(1)、(2)式でP25 、SiO2 が同時に生成
し、P25 は(3)、(4)式、SiO2 は(5)式
で最終的にCaOによって同時に安定な酸化物として固
定されることを見出した。
【0022】図1は本願発明者らが本願発明に至る脱り
ん反応の基礎研究過程で得た結果の一部である。実験に
用いた溶銑は170kgであり、脱りん処理前の珪素、
りん濃度は各々0.31%、0.10%である。本実験
では生石灰とともに酸化剤として100mesh以下の
ヘマタイト(Fe23 )試薬を用いた。生石灰20.
7重量%、ヘマタイト79.3重量%の脱りんフラック
スを10.6kg添加し、Arガスを吹き込み、溶銑を
強撹拌しながら同時脱珪脱りん処理を行った。生石灰粒
径を100mesh以下の微粉、8〜12mm、25m
m、30mm以上の4水準とし、他の条件を同じとして
脱りん挙動に及ぼす生石灰粒径の影響を検討したが、微
粉の生石灰の場合には低りん濃度まで脱りん反応が進行
している。また、処理後のスラグ中に未反応のフリーな
CaOは定量されず、滓化率は100%であった。一
方、粒径の大きな生石灰を用いると滓化率は低値に止ま
るがこれは(3)、(4)、(5)の反応が遅れている
ためである。
【0023】一方、本願発明者らは既に溶銑の脱珪、脱
りん方法として特開平2−200716号公報に脱珪と
脱りん処理を同時に低塩基度下で高速で行う方法とし
て、溶銑に付与する撹拌力を1.2〜10kw/tと
し、総送酸速度を0.8〜2.5Nm3 /t/minと
することにより、事前脱珪処理を施していない珪素濃度
の高い未脱珪溶銑を8min以下という極短時間に同時
に脱珪脱りん処理可能とする方法を開示した。同公報に
は実施例として転炉様の反応容器を用いて塊生石灰1
8.2kg/tと同時に塊状のCaF2 を1.7kg/
t使用しているが、この時、短時間処理になると、処理
の初期に上方から添加する塊状の生石灰の未滓化が生じ
ることがあるので、上記生石灰の滓化挙動、即ち、微粉
生石灰によれば滓化が速やかに起こり、脱りん速度の上
で障害とならないことを利用すればより効率的な脱りん
処理が可能となるという着想を得たのである。
【0024】この様に、強撹拌として粒径の小さなCa
O源を用いることによりCaF2 などの滓化剤を利用す
ることなく極めて速やかに生石灰の滓化反応が生じるの
で脱珪反応と脱りん反応を短時間のうちに進行させるこ
とが可能となり、しかもこの場合りん濃度が低下した後
の復りん反応は極めて緩慢にしか進まない。これは固体
化合物としてりんが安定に固定されているためである。
【0025】これらの反応機構を再整理すれば、以下の
様になる。
【0026】(1)溶銑に供給された塊状の生石灰は一
旦溶融することにより流動性の高いスラグを形成し、ス
ラグ−溶銑界面で酸化して生じたP25 をスラグ中に
溶解させる。
【0027】(2)溶銑の撹拌力が1.2kw/t以上
に大きい場合には、溶銑側のりんの物質移動が大きいの
で、溶銑内部からスラグ−溶銑界面へのりんの供給速度
は十分確保されているが、生石灰粒径が大きい場合には
生石灰の溶融速度が反応の律速段階となり得る。一方、
生石灰の粒径が小さい微粉の場合はこれが速やかに生じ
る。
【0028】(3)更に、微粉生石灰の場合には、スラ
グ中で2CaO・SiO2 、3CaO・P25 、ある
いは4CaO・P25 の固体生成がスラグ−溶銑界面
への溶銑側からのりんの移動、およびスラグ−溶銑界面
でのりんの酸化反応速度に十分追随できる速度で生じ、
25 (もちろんSiO2 もであるが)を固定して行
く。これら2CaO・SiO2 、3CaO・P25
あるいは4CaO・P25 の固体の生成は生石灰粒子
内部へのP25 、SiO2 の固相拡散によって生じる
が、この速度を決めるのは生石灰粒子径と温度である
が、粒径は工業的に用いられるいわゆる微粉の程度で良
い。また温度の高い方が大きいので酸化源として酸素ガ
スを用いるのであれば同じ酸素ガスと同じ羽口から供給
していわゆる高温の火点を利用するのがより望ましい。
【0029】(4)(3)の結果、スラグ中には固体相
と液体相が同時に存在することとなる。図2は一般的な
CaO−SiO2 −FeO三元状態図上に本発明のスラ
グ組成をプロットしたものであるが、スラグの液体側に
はFeOが高濃度で濃縮することになり、スラグ−溶銑
界面の酸素ポテンシャルを高めることになる。その結
果、(1)式のりんの酸化反応は益々促進されることと
なり、高い脱りん効率が得られる。即ち、塊生石灰をC
aF2 、CaCl2 などの滓化剤で溶融させた場合と異
なる。この場合には液体スラグ側にFeOが高濃度で濃
縮するという現象は生じない。
【0030】(5)一方、粒径25mm内外の塊生石灰
を用いた場合も未滓化のCaOと液体スラグを形成する
のでやはり固−液共存スラグを成すのではあるが、滓化
が塊CaOの中心部に達するには少なくとも120mi
nは要すると思われる。従って、10min以下の短時
間処理では生石灰全体を滓化・溶融させて反応に寄与さ
せるにはやはり多量のCaF2 、CaCl2 などを添加
せざるを得なくなる。
【0031】(6)以上のように、溶銑に撹拌力を1.
2kw/t以上与えておき、酸素供給条件を適正に保て
ば、脱りん速度は大きくなり、しかも溶銑側に高濃度の
珪素を含んでおり珪素の酸化反応が優先しても、スラグ
−溶銑界面の酸素活量はりんの酸化を生じるに十分なレ
ベルに確保出来る。その結果、溶銑側のりんの溶銑内部
からスラグ−溶銑界面への移動速度は十分確保され、界
面でのりんの酸化も十分生じる。この状態では塊状の生
石灰を使用する場合に滓化剤を多量添加しなければ、生
石灰の溶融速度が脱りん速度向上の上での障害となり、
一方、微粉生石灰を使用すれば、生石灰粒子内への固体
拡散も十分生じるのでP25 (SiO2)の固定が速
やかに生じ、更に高効率な脱りん処理が行える。例えば
10分程度の時間で十分な滓化を可能とするためには原
理的には細かい程良いが、通常、製鋼工程で吹き込みに
利用する程度の粒径ならば十分であり、また、1mm以
下であれば同一の効果を有する。
【0032】(7)また、滓化剤を使用せず、微粉生石
灰を使用するとりん酸、珪酸とCaOの固体化合物相と
高濃度にFeOを濃縮した液体スラグの固液共存となる
ので、スラグ−溶銑界面の酸素活量は非常に高くなり、
脱りん反応を一層促進する。
【0033】(8)一方、塊生石灰を使用すると数%〜
10%程度の未滓化のフリーライムを含み、土木材料と
して再資源化するにあたってはこれが(7)式の反応に
よって膨張・風化するために適当では無いとされている
が、この問題も解決出来る。
【0034】 CaO+H2 O→Ca(OH)2 (7) 更に、従来の溶銑予備脱りんでは塩基度を2以上とする
ことが多いが、この時には冷却に伴いトリカルシウムシ
リケート(3CaO・SiO2 )が生成する。一方、室
温では3CaO・SiO2 が(8)式の反応で分解し、
フリーライムを生じるので、膨張・風化が生じるがこの
反応は非常に遅いので6ヶ月〜1年という長期間のエー
ジングを行うことが必要とされていたが、本法では安定
なダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2 )が
主要相であるためにこの問題も無く、目的の粒径に荒粉
砕すれば即時再利用可能であり、エージングのための敷
地確保、粉塵発生の問題も無い。
【0035】 3CaO・SiO2 →2CaO・SiO2 +CaO (8) ここで、CaO源としては、天然に産出する石灰石、あ
るいはこれを900℃程度で一度焼成した生石灰、更に
は一度使用した後のCaOを主成分とするスラグ、ある
いは貝殻、サンゴなど、高温の当該精錬温度で分解し、
CaOを生成するものであれば使用することが出来る。
またスラグを再利用するのであれば、りんを含まないも
のが望ましいことは言うまでも無い。
【0036】更に、酸素源としては、酸素ガスはもちろ
んであるが、鉄鉱石、転炉ダストなどの固体状の酸化
物、あるいはこれらの高温で容易に分解して酸素を発生
するものであれば使用することが出来る。ただし、一般
には溶銑の処理後の温度を目標値に合わせるためにこれ
ら酸素ガスと固体酸素源を使い分ける、あるいはこれら
の比率を適宜変更して行うのが望ましい。
【0037】
【発明の実施の形態】表1に本発明による実施例と比較
例を示す。これらの処理は全て図3に示す精錬設備を利
用した。
【0038】
【表1】
【0039】実施例1は277tの珪素濃度0.35%
の高炉溶銑を転炉の様な溶銑予備処理容器1にスクラッ
プ3tとともに装入し、炉底に設けた羽口5から窒素ガ
ス7をキャリアーガスとしてブロータンク4内のCaC
3 を溶銑2中に吹き込み、次式の反応で生じるCO2
ガスによる撹拌を実施しつつ、上吹きランス3より酸素
ガス6を上吹きしつつ、生石灰粉を酸素ガスをキャリア
ーガスとして吹き付けた例である。その他、温度調整の
ためホッパー8より上方から鉄鉱石を投入して脱りん処
理を行った。この時、脱りん後の温度は1400℃であ
った。10分間の精錬後、りん濃度は0.087%から
0.017%まで低下し、目標の0.020%以下を十
分達成した。
【0040】実施例2は280tの珪素を0.31%含
む高炉溶銑を転炉の様な溶銑予備処理炉にスクラップ1
0tとともに装入し、脱りん処理した例である。本実施
例では炉底から窒素ガスをキャリアーガスとしてCaC
3 とCaOを混合した粉体を吹き込みながら処理し
た。また、酸素上吹きランスから酸素ガスを供給し続け
た。温度調整のために鉄鉱石を添加した。8分間の精錬
後、りん濃度は0.091%から0.015%まで低下
した。脱りん処理後の温度は1350℃であった。
【0041】比較例1では、高炉溶銑269tをスクラ
ップ8.9tとともに転炉様の溶銑予備処理容器に装入
した。脱りん初期に上方から塊状(平均粒径25mm)
の生石灰および鉄鉱石を溶銑上に添加した。上吹きラン
スから酸素ガスを供給しつつ、底吹き羽口からCaCO
3 を2.6kg/tの割合で吹き込みながら脱りん処理
を10分間行ったが、最終のりん濃度は0.034%と
目標のりん濃度に到達しなかった。この理由は本例の場
合、塊状の生石灰を上方添加しているために滓化・溶融
速度が遅く、所定時間内に滓化が完了し得なかったため
と考えられる。従って、処理後スラグを定量分析して求
めたスラグ中のCaOとSiO2 のモル比は1.48と
いう低値に留まり、脱りん不良に終わったと考えられ
る。従って、この例では次の転炉工程での脱炭時に更に
生石灰の多量添加を行って脱りんを行う必要があった。
【0042】比較例2では、高炉溶銑278tをスクラ
ップ4.0tとともに転炉様の溶銑予備処理容器に装入
し、脱りん中、粉生石灰13.3kg/tを上吹き酸素
とともに溶銑表面に吹き付けながら脱りん処理した例で
ある。12分間の処理中、酸素ガスは上吹きランスから
連続的に溶銑表面に吹き付けた。また、塊生石灰投入と
同時に鉄鉱石1.85kg/tを上方から添加した。更
に、底吹き羽口からCa3 粉体を供給して攪拌を行
った。12分間の精錬後、到達りん濃度は0.041%
であり目標の0.02%以下に到達せず、不調に終わっ
た。この理由は生石灰の滓化・溶融速度は十分であっ
て、処理後スラグのCaO/SiO2 モル比は1.91
と適正範囲内にあったものの、底吹き攪拌力が小さく、
溶銑ルク中からスラグ−溶銑界面へのりんの物質移動
が遅れているために脱りん速度が遅かったものと推定さ
れる。
【0043】実施例1、2、比較例1、2いずれにおい
ても脱りん時にはCaF2 、あるいはCaCl2 等の生
石灰の滓化促進剤は使用しなかった。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、従来、塊状の生石灰で
は困難であったCaF2 やCaCl2などの滓化剤を一
切用いることなく処理が可能となり、耐火物損耗が著し
く改善される。しかも従来に無い1400℃という高温
で処理が可能となるので、熱的余裕度が増す。また、生
石灰原単位の少ない条件で、なおかつ10分以下という
短時間で、事前脱珪処理することなく塩基度2未満での
脱りん処理が可能となるので事前脱珪処理設備が不必要
となるのみならず、事前脱珪処理に伴う熱損失、スラグ
への鉄分ロスが少なくて済むという効果を有する。ま
た、スラグ中の存在するフリーな未反応CaOが少ない
ので、風化の心配が無く、路盤材としての有効利用も可
能となる。また、本発明は実施例に示した設備のみなら
ず、鍋、トーピードカーなど、他の設備を利用しても可
能であり、単に粉体吹き込み、あるいは吹き付け設備を
追加するのみで実施可能である。また、溶銑の撹拌も本
願発明の実施例に示したCaCO3 を底吹き羽口から吹
き込む方法のみならず、溶銑にランスを浸漬してガス、
あるいはガス発生物質をインジェクションしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を行う過程で行った実験結果を示す図、
(a)は溶銑中りん濃度の経時変化を示す図、(b)は
生石灰と滓化率と生石灰粒径の関係を示す図。
【図2】本発明の処理後スラグの状態を示す図。
【図3】本発明の実施例を行うに好適な反応容器である
転炉の横断面図。
【符号の説明】
1 転炉 2 溶銑 3 上吹きランス 4 ブロータンク 5 底吹き羽口 6 酸素ガスホルダー 7 窒素ガスホルダー 8 炉上ホッパー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐渡達也 東海市東海町5−3 新日本製鐵株式会 社名古屋製鐵所内 (56)参考文献 特開 平2−200716(JP,A) 特開 平7−70626(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21C 1/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶銑にCaO源及び酸素源を添加して溶
    銑の脱りん処理を行うに際し、溶銑に付与する撹拌力ε
    を1.2〜10kw/tとし、CaF2 、CaCl2
    の滓化剤を添加すること無く微粉CaO源をスラグ中の
    CaOとSiO2 比が1.7〜2.1モル比となるよう
    に添加することを特徴とする溶銑の脱りん方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の溶銑の脱りん方法におい
    て、CaO源と酸素源を同一羽口から供給することを特
    徴とする溶銑の脱りん方法。
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