JP3287246B2 - 溶融金属の温度測定装置 - Google Patents

溶融金属の温度測定装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高炉の溶銑等、高
速で流動している溶融金属の流れの中に光ファイバの先
端部を浸漬してその溶湯流温度を高精度に測定する装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】高炉操業においては、炉内に鉄鉱石、コ
ークス、その他石灰等の副原料を充填し、炉の下部から
熱風を吹き込んでコークスを燃焼させ、発生する熱と還
元ガスにより鉄鉱石を還元させて溶銑を得ている。この
溶銑は、炉の下部に設けられた出銑口から鉱滓とともに
取り出され、通常この操作を出銑と呼んでいる。コーク
スの燃焼に伴い炉内の充填物が降下するので、炉の上部
から原料等を装入し適正な充填物レベルを保持してい
る。
【0003】高炉操業では、このような物質収支、熱収
支等を始め種々のバランスを保ちながら定常操業を行う
ことが重要である。特に高炉の炉内の熱レベルは、炉内
の反応状況等の炉内状況を反映し、コークス等の消費量
に影響するので、高炉の熱レベルを正確に把握すること
が炉内状況の変化の早期検知や原料コストの低減の観点
から非常に重要である。
【0004】高炉の熱レベルは、生成した溶銑の温度に
顕著に現れることから、溶銑温度を正確に測定すること
が望まれている。高炉における溶銑温度の測定技術とし
て、従来から浸漬型熱電対や保護管付熱電対を使用する
ものがあったが、これらはスキンマという鉱滓除去装置
に溜まっている溶銑の中に熱電対を浸漬して温度を測定
するものであるため、測定温度が出銑口付近の溶銑温度
よりもかなり低めになるという問題があった。というの
は、スキンマにおける溶銑は、温度が安定するまで溶銑
の出銑を開始してから数十分を要するため、その間に大
量の熱がスキンマおよび溶銑樋で奪われてしまうからで
ある。
【0005】そこで最近では、本出願人が例えば、特開
平7−151918号公報、特開平8−82553号公
報で提案するように、光ファイバを用いた放射温度計に
より出銑口付近の溶銑温度を直接測定することが試みら
れている。これらの技術は、図5に示すように、出銑口
20から噴出している溶銑流5の中に光ファイバ10の
先端を挿入し、その先端から入射した光を他端の放射温
度計11で検出し、溶銑温度を測定するものである。図
5において、12は光ファイバ10の供給ドラム、13
はピンチロール、14は光ファイバ10を溶銑流に対し
直角に案内するガイド装置、15は回転式光コネクタで
ある。
【0006】ところで、このような光ファイバ放射温度
計では、光ファイバ先端の浸漬状態が良好なときは見掛
けの放射率が1となるため、放射温度計の温度指示値は
真値(真温度)を示す。これは、光ファイバは細いガラ
ス製の棒状体であるため、溶融金属で取り囲まれたその
先端部は、等温壁で囲まれた、開口径に比べて長い円筒
空洞を形成するため、良好な黒体と見なせるからであ
る。一方、光ファイバ先端の浸漬状態が不良なときには
空洞の長さが十分に得られず、見掛けの放射率が1より
小さくなるため、温度指示値は真温度より低い値を示
し、指示値のばらつきも大きくなる。このため、光ファ
イバの先端を十分な長さで溶湯流に浸漬することが精度
の良い測定を実現する上で非常に重要になる。
【0007】しかしながら、上記特開平7−15191
8号公報に開示された二重被覆光ファイバでは剛性がな
いため、ファイバ軸に対し直角方向からの高速流に先端
部が接した瞬間にはじき飛ばされ、光ファイバ先端の挿
入そのものが非常に難しい。一方、上記特開平8−82
553号公報に開示された金属製の二重管を使用した場
合には剛性が大きいため、ファイバ軸に対し直角方向か
らの高速流に先端部が浸漬しても流れにはじかれること
なく光ファイバ先端部をその位置に保持する。しかし、
金属管は融点が溶湯流温度より低いため、溶湯流の外面
に接した瞬間に溶損し、光ファイバを十分な深さに浸漬
することができない。その結果、例えば、図4の金属製
二重管による測定結果からわかるように、ばらつき幅が
約15゜と大きく、実用には不十分である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な問題点を解決するためになされたもので、高速の溶融
金属流に十分な長さで浸漬することができ、より精度の
高い温度測定が可能な溶融金属の温度測定装置を得るこ
とを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る溶融金属の
温度測定装置は、基端に放射温度計を接続した光ファイ
バの先端部を流速の速い溶融金属の流れの中に浸漬し
て、その光ファイバの先端から入射する光を検出するこ
とにより溶融金属の温度を測定する装置において、前記
光ファイバの被覆層を、内側より順に、金属製の保護
管、前記溶融金属の温度より融点の高い粒子を添加物と
して含有する断熱材、及び金属製の保護管を設けて、三
重被覆層としたことを特徴とするものである。または、
前記断熱材に代えて、セルロースを成分とする断熱材と
するものである。
【0010】本発明は、図1に示すような三重被覆構造
の光ファイバを使用することに特徴を有するものであ
る。図1において、1は光ファイバ、2は光ファイバ1
の外周に設けた金属製の保護管(内管ともいう)、3は
内管2の外周に被覆された断熱材、4は断熱材3の外周
に設けた金属製の保護管(外管ともいう)である。この
ような三重被覆光ファイバ1を使用して、図5に示すよ
うに高炉の出銑口20から噴出している高速の溶湯流5
の中に、ファイバ軸が溶湯流の方向と直角になるように
この光ファイバ1の先端部を浸漬して、放射温度計11
によりその溶湯流温度を測定する。
【0011】さらに図2を参照して、本発明の作用を説
明する。(a)図に示すように、三重被覆光ファイバ1
を所定の速度で溶湯流5に対し直角に挿入していく。こ
の光ファイバ1は、金属管からなる外管4の径が太いた
め剛性が強く、ファイバ軸に対し直角方向からの高速溶
湯流5に先端部が浸漬しても流れにはじかれることなく
光ファイバ1の先端部をその位置に保持する。しかし、
外管4の金属管は融点が溶湯流温度より低いため、溶湯
流の外面に接した瞬間に溶損し、(a)図のように内部
の断熱材3が露出する。しかしながら、断熱材3は溶湯
流温度より融点が高い粒子(例えば、炭素粒子)を添加
物として含有しているため、この断熱材3を被覆した内
管2の金属管は断熱材3に含まれた炭素粒子が無酸素状
態で炭化するため、高温下でも直ちに溶損することはな
く、(b)図のように溶湯流5の本流内部まで到達した
ところで溶損する。このとき、内管2の内部にある光フ
ァイバ1が露出し、溶融金属で取り囲まれる。このよう
にして高速で流動している溶湯流内へ光ファイバ1を十
分な長さで浸漬することができる。その結果、見掛けの
放射率が1となり、高精度の測温が達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明による三重被覆光フ
ァイバの構成図である。中心の光ファイバ1は、石英ガ
ラス製で、コア径50μm、クラッド径125μmの通
信用光ファイバを使用している。この光ファイバ1の外
側に設けられる第1の金属製保護管2には、例えばSU
S304を用い、内径1.0mm、外径1.4mmのス
テンレス製パイプを使用している。この保護管2の外周
に約3%の炭素粒子を含有したポリエチレン被覆を施し
(外径2.6mm)、断熱材3としている。また、ポリ
エチレン被覆の代わりに、布または紙テープを保護管2
の外周に螺旋状に巻き付けて断熱材3とすることもでき
る。このようなセルロースを主成分とする断熱材であっ
ても、無酸素状態で炭化作用があるため、保護管2の溶
損を遅延させる効果がある。そして、断熱材3の外側に
第2の金属製保護管4を設ける。この保護管4は同じく
SUS304製で、内径3.2mm、外径3.6mmの
ステンレス製パイプである。上記のように構成された三
重被覆光ファイバ1を、図5の光ファイバに代えて使用
する。
【0013】図3に上記三重被覆光ファイバ1を使用し
て温度測定装置により測定した結果を示す。この結果よ
り明らかなように、温度指示値のばらつき幅は約6゜℃
と小さく、実用に十分な精度が得られている。
【0014】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、三重被覆
構造の光ファイバとしたので、高速の溶湯流の中に十分
な長さでその光ファイバを浸漬することができ、高精度
の温度測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による三重被覆光ファイバの構成図であ
る。
【図2】三重被覆光ファイバを高速溶湯流に浸漬したと
きの溶損の状況を示す説明図である。
【図3】溶銑温度の測定結果を示す図である。
【図4】従来の金属製二重管による溶銑温度の測定結果
を示す図である。
【図5】従来及び本発明で使用する温度測定装置の構成
図である。
【符号の説明】
1 光ファイバ 2 保護管(内管) 3 断熱材 4 保護管(外管) 5 溶湯流 11 放射温度計 12 供給ドラム 13 ピンチロール 14 ガイド装置 15 回転式光コネクタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山中 善吉 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−151918(JP,A) 特開 平8−82553(JP,A) 特開 平8−304182(JP,A) 特開 平5−248960(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01J 5/00 - 5/62 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基端に放射温度計を接続した光ファイバ
    の先端部を流速の速い溶融金属の流れの中に浸漬して、
    その光ファイバの先端から入射する光を検出することに
    より溶融金属の温度を測定する装置において、 前記光ファイバの被覆層を、内側より順に、金属製の保
    護管、前記溶融金属の温度より融点の高い粒子を添加物
    として含有する断熱材、及び金属製の保護管を設けて、
    三重被覆層としたことを特徴とする溶融金属の温度測定
    装置。
  2. 【請求項2】 融点の高い粒子が炭素粒子であることを
    特徴とする請求項1記載の溶融金属の温度測定装置。
  3. 【請求項3】 基端に放射温度計を接続した光ファイバ
    の先端部を流速の速い溶融金属の流れの中に浸漬して、
    その光ファイバの先端から入射する光を検出することに
    より溶融金属の温度を測定する装置において、 前記光ファイバの被覆層を、内側より順に、金属製の保
    護管、セルロースを成分とする断熱材、及び金属製の保
    護管を設けて、三重被覆層としたことを特徴とする溶融
    金属の温度測定装置。
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