JP3279695B2 - 分岐ガラクトオリゴ糖を有効成分とするミネラル吸収促進剤 - Google Patents

分岐ガラクトオリゴ糖を有効成分とするミネラル吸収促進剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分岐ガラクトオリゴ糖
を有効成分とするミネラル吸収促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、日本人のカルシウム摂取量
は、栄養必要量を下回っている現状にあり、カルシウム
の摂取が求められている。しかしながら、日本人の平均
的な食習慣では、十分な量のカルシウムを含む献立を継
続するのに相当の努力を要する。また、カルシウム以外
に亜鉛、鉄、銅、マグネシウムなどのミネラルについて
も不足しがちであり、ミネラルの吸収性が高い食品と共
に、ミネラルの吸収を促進する物質に対しても関心が高
まっている。そのような中で、糖質のミネラル吸収に関
する効果については、乳糖がカルシウムの吸収を促進す
ることが知られており、また、ビフィズス菌の増殖促進
因子として知られているガラクトオリゴ糖やフラクトオ
リゴ糖にもミネラルの吸収を促進する効果のあることが
報告されている〔日本栄養・食糧学会誌、第44巻、2
87−291頁、1991年〕。さらには、ガラクトオ
リゴ糖を有効成分とするカルシウム吸収促進剤も提案さ
れている〔特開平4−134031号公報〕。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、ミネラ
ルの吸収性を向上させる物質について鋭意検討を進めた
ところ、分岐ガラクトオリゴ糖にミネラルの吸収性を向
上させる性質を有することを見出し、本発明を完成する
に至った。したがって、本発明は、分岐ガラクトオリゴ
糖を有効成分とするミネラル吸収促進剤を提供すること
を課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の分岐ガラクトオ
リゴ糖は、一般式Gal(Gal)−Xで表される。
(ただし、Galはガラクトース残基を、Xはグルコー
ス残基またはソルビトール残基をそれぞれ表す。)この
一般式Gal(Gal)−Xで表される分岐ガラクトオ
リゴ糖の中、Xがグルコース残基の分岐ガラクトオリゴ
糖は、乳糖にβ−ガラクトシダーゼを作用させることに
よって得ることができ、また、Xがソルビトール残基の
分岐ガラクトオリゴ糖は、ラクチトールにβ−ガラクト
シダーゼを作用させることによって得ることができ、ビ
フィズス菌増殖促進効果や便秘改善効果を有する物質と
して期待されている〔特開昭58−99497号公報、
特開平3−246296号公報〕。
【0005】なお、本発明の分岐ガラクトオリゴ糖とし
ては、新規物質であるβ−D−ガラクトピラノシル−
(1→4)〔β−D−ガラクトピラノシル−(1→
6)〕−D−グルコース、β−D−ガラクトピラノシル
−(1→4)〔β−D−ガラクトピラノシル−(1→
1)〕−D−ソルビトール、β−D−ガラクトピラノシ
ル−(1→4)〔β−D−ガラクトピラノシル−(1→
5)〕−D−ソルビトール及びβ−D−ガラクトピラノ
シル−(1→4)〔β−D−ガラクトピラノシル−(1
→6)〕−D−ソルビトールを例示することができる。
【0006】本発明の分岐ガラクトオリゴ糖は、糖衣錠
やタブレットなどの錠剤、顆粒剤、液剤、もしくはカプ
セルなどとして、経口的に投与できるミネラル吸収促進
効果のある医薬の有効成分として用いることができる
さらには、ミネラルの吸収を促進する飼料添加物として
用いることもできる。
【0007】本発明の分岐ガラクトオリゴ糖の摂取量に
ついては特に制限はないが、成人男子の場合、10mg
/kg体重/日以上、望ましくは30〜100mg/k
g体重/日が適当である。すなわち、10mg/kg体
重/日未満では効果が殆ど認められず、100mg/k
g体重/日以上では何ら障害は無いものの、効果の顕著
な上昇は見られない。従って、本発明における有効量
は、この程度の投与量になるように医薬あるいは飼料
に添加してミネラル吸収促進作用を生じせしめるものを
いう。次に本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。
【0008】
【実施例1】乳糖10kgを温水15kgに溶解した
後、クエン酸を加えてpHを4.5に調整し、β−ガラ
クトシダーゼ45,000単位を添加して、40℃、2
時間反応を行った。そして、この反応液を105℃、2
秒間加熱して酵素を失活させ、反応を停止させた。この
ようにして得られた反応液を活性炭とセライトを2:1
の割合で混合して充填したカラム(直径50cm×40
cm)に通液して糖類を吸着させた。次に、十分量の水
または5%エタノールをカラムに通液して単糖類及び二
糖類を溶出、除去し、さらに、20%エタノールをカラ
ムに通液して吸着させた分岐ガラクトオリゴ糖を溶出、
回収した。この溶出液を減圧濃縮した後、凍結乾燥して
分岐ガラクトオリゴ糖粉末100gを得た。
【0009】
【実施例2】ラクチトール10kgを温水10kgに溶
解した後、クエン酸を加えてpHを5.0に調整し、β
−ガラクトシダーゼ100,000単位を添加して、5
0℃、6時間反応を行った。そして、この反応液を10
5℃、2秒間加熱して酵素を失活させ、反応を停止させ
た。このようにして得られた反応液2kgを活性炭カラ
ム(直径10cm×50cm)に通液して糖類を吸着さ
せた。次に、水20kgをカラムに通液して単糖類と未
吸着のラクチトールを溶出、除去し、さらに、5%エタ
ノール20kgをカラムに通液して吸着させたラクチト
ールを完全に溶出、除去した後、40%エタノール15
kgをカラムに通液して吸着させた分岐ガラクトオリゴ
糖を溶出、回収した。この溶出液を減圧濃縮した後、凍
結乾燥して分岐ガラクトオリゴ糖粉末150gを得た。
【0010】
【試験例1】実施例1及び実施例2で調製した分岐ガラ
クトオリゴ糖のカルシウム吸収促進効果について調べ
た。なお、比較のために、ガラクトオリゴ糖(ガラクト
シルラクトース)及び乳糖についても同様の試験を行っ
た。被検試料は、最終濃度で150mMの塩化カルシウ
ムと500mMの分岐ガラクトオリゴ糖、ガラクトオリ
ゴ糖、あるいは乳糖を含有する水溶液を用いた。また、
対照として、150mMの塩化カルシウム水溶液を用い
た。ラットは、SD系ラット雄8週齢を用い、1群6匹
で行った。試験は、腸管結紮法によって行った。ラット
をエーテル麻酔下で開腹し、回腸を糸で結紮することに
より長さ5cmのソーセージ状の腸管ループを作成し
た。そして、この腸管ループに被検試料0.3mlを注
入した後、腹部を縫合した。60分後に開腹し、回腸を
摘出して灰化した。そして、灰化カルシウム量を測定
し、次式によってカルシウムの吸収率を算出した。 カルシウム吸収率(%)={(注入カルシウム量−灰化
カルシウム量)/注入カルシウム量}×100 結果を図1に示す。本発明の分岐ガラクトオリゴ糖は、
ガラクトオリゴ糖及び乳糖に比べて有意にカルシウムの
吸収を促進させた。
【0011】
【試験例2】実施例1及び実施例2で調製した分岐ガラ
クトオリゴ糖の鉄吸収促進効果について調べた。なお、
比較のために、ショ糖、乳糖及びガラクトオリゴ糖とし
てガラクトシルラクトースについても同様の試験を行っ
た。被検試料は、硫酸鉄50μgと0.1Mの分岐ガラ
クトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ショ糖、あるいは乳
糖の水溶液1mlを混合したものを用いた。ラットは、
初体重50g前後のウイスター系雄ラットを用い、1群
6匹で行った。試験は、ラットに鉄欠乏食を投与して3
週間飼育した後、さらに2週間、対照群はそのまま鉄欠
乏食を投与して飼育し、被検試料投与群は鉄欠乏食と被
検試料を投与して飼育した。そして、被検試料投与開始
時と飼育終了時のラット血清中ヘモグロビン量を測定し
た。結果を表1に示す。
【表1】 ──────────────────────────────────── 血清中ヘモグロビン量 被検試料 ─────────────────── 0日目 14日目 ──────────────────────────────────── ショ糖 5.6±0.3 5.3±0.6 乳糖 5.6±0.4 6.5±0.5 ガラクトオリゴ糖 5.6±0.4 6.8±0.4 実施例1の分岐ガラクトオリゴ糖 5.6±0.5 7.9±0.6 実施例2の分岐ガラクトオリゴ糖 5.6±0.4 7.6±0.7 ──────────────────────────────────── 実施例1及び実施例1の分岐ガラクトオリゴ糖投与群
は、ショ糖、乳糖、さらにはガラクトオリゴ糖投与群に
比べ、血清中ヘモグロビン量が増加しており、鉄の吸収
が促進されたことが示唆された。
【0012】
【参考例1】分岐ガラクトオリゴ糖を配合し、カルシウ
ムの吸収性を高めたカルシウム製剤を製造した。カルシ
ウム2,200g、コーンスターチ1,232g、結晶
セルロース100g、カルボキシメチルセルロースカル
シウム68g及び分岐ガラクトオリゴ糖400gをニー
ダーで混合した後、水500mlを噴霧滴下しながら混
練した。次に、この混練物を20メッシュのスクリーン
をセットした単軸オシレーターで造粒し、流動槽型乾燥
機で乾燥した。そして、この乾燥品をフラッシュミルで
粉砕し、整粒して打錠用粉体を得た。このようにして得
られた打錠用粉体に滑沢剤としてショ糖脂肪酸エステル
80gをV型混合機で混合し、直径11mmの杵をセッ
トした錠剤機で打錠して平均重量0.35gのタブレッ
トを得た。
【0013】
【参考例2】常法に従い、分岐ガラクトオリゴ糖を添加
してミネラルの吸収性を高めた果汁飲料を表2の配合割
合で製造した。
【表2】 ─────────────────────────────── 混合異性化糖 15.0(重量%) 果汁 10.0 クエン酸 1.0 分岐ガラクトオリゴ糖 0.1 香料 0.1 水 73.8 ───────────────────────────────
【0014】
【参考例3】常法に従い、分岐ガラクトオリゴ糖を添加
してミネラルの吸収性を高めたゼリーを表3の配合割合
で製造した。
【表3】 ─────────────────────────────── 果汁 20.0(重量%) グラニュー糖 15.0 水飴 5.0 寒天 1.0 分岐ガラクトオリゴ糖 0.5 香料 0.1 水 58.4 ───────────────────────────────
【0015】
【参考例4】常法に従い、分岐ガラクトオリゴ糖を添加
してミネラルの吸収性を高めたドッグフードを表4の配
合割合で製造した。
【表4】 ─────────────────────────────── 大豆粕 13.7(重量%) 脱脂粉乳 14.0 大豆油 4.0 コーン油 2.0 パーム油 2.0 トウモロコシ澱粉 23.0 小麦粉 15.0 麩 8.0 ビタミン混合物 2.0 ミネラル混合物 9.0 セルロース 2.3 分岐ガラクトオリゴ糖 5.0 ───────────────────────────────
【0016】なお、ドッグフードに配合したビタミン混
合物は、ビタミンA1,500IU、ビタミンD3 30
0IU、ビタミンE6.8mg、ビタミンB1 0.9m
g、ビタミンB2 0.4mg、ビタミンB6 0.5m
g、ビタミンB123.4mg、ビタミンC50.0m
g、パントテン酸4.0mg、葉酸0.2mg、コリン
200.0mg、ビオチン24.4μg、イノシトール
50.0mg、ナイアシン10.5mgにショ糖を加え
て全量を2gとしたものを用いた。
【0017】また、ドッグフードに配合したミネラル混
合物は、炭酸カルシウム3.0g、リン酸二水素カリウ
ム2.0g、リン酸二水素ナトリウム1.5g、酸化マ
グネシウム0.5g、炭酸マンガン40.0mg、Fe
6 5 7 30.0mg、70%酸化亜鉛10.0m
g、55%炭酸カルシウム4.5mg、KlO3 0.6
5mg、Na2 SeO3 ・5H2 O0.05mg、Cr
K(SO4 )・12H2 O5.0mgにショ糖を加えて
全量を9gとしたものを用いた。
【0018】
【発明の効果】本発明の分岐ガラクトオリゴ糖は、ミネ
ラルの吸収性を促進する効果があり、分岐ガラクトオリ
ゴ糖を配合した医薬及び飼料は、ミネラルの補給に有用
である。また、各種の骨粗鬆症や骨疾患、あるいは動物
の健康保持にも有用である。
【0019】
【図面の簡単な説明】
図1は、試験例1のカルシウム吸収促進効果についての
実験結果である。
フロントページの続き (72)発明者 小林 智子 埼玉県大宮市今羽町47−7 (72)発明者 松山 博昭 埼玉県川越市新宿町5−11−3 むさし の寮 (56)参考文献 特開 平3−246296(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/30 - 1/304 A61K 31/70 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式Gal(Gal)−Xで表される
    分岐ガラクトオリゴ糖を有効成分とするミネラル吸収促
    進剤。(ただし、Galはガラクトース残基を、Xはグ
    ルコース残基またはソルビトール残基をそれぞれ表
    す。)
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JP4305685B2 (ja) 1998-04-23 2009-07-29 日本食品化工株式会社 カルシウム吸収促進剤

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