JP3279355B2 - マトリクス液晶表示装置 - Google Patents

マトリクス液晶表示装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はマトリクス液晶表示装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置は、いわゆるスーパーツイ
ステッドネマチック(STN)モードや薄膜トランジス
ター(TFT)駆動のツイステッドネマチックモード
(TN)の開発の進展により、例えば、ワープロやパソ
コンの表示部品として必要欠くべからざるものになって
いる。
【0003】従来、液晶表示パネルにおいては、環境湿
度の影響を受け、高湿度中に放置することにより、表示
部分にムラが発生する現象が認められている。この現象
は水分が介在することにより発生しやすいことが知ら
れ、表示パネルを乾燥状態におくと発生しにくいことが
知られている。
【0004】水分による表示ムラには2種類あると考え
られる。すなわち、水分が接続端子に付着して短時間で
発生するムラと、シール材を通して長時間を経て発生す
るムラの2種類である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】短時間で発生する表示
ムラを防止するために、完成した液晶表示装置の輸送の
ための袋などには乾燥剤を入れるなどの方法が行われて
いるが、これでは分ではなく、袋から出したに高湿
度であると数時間で表示ムラが発生するという問題点が
あった。また、長期で発生するムラに対しては、シール
材の外側に各種のポリマーが塗布されているが、従来の
ものでは分な効果があるとはいえない。本発明は、上
記2種類の表示ムラを防ぐことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は前述の問題点を
解決すべくなされたものであり、対向配置した一対の基
板の周辺部にシール材を設けて内部に液晶を封入し、少
なくとも一方の基板の端部近傍の表面に複数の接続端子
を有するマトリクス液晶表示装置において、前記接続端
の少なくとも一部は、隣り合う2本の接続端子間の抵
抗が107〜109 Ωとなるようにフッ素系樹脂で被覆
されてなることを特徴とするマトリクス液晶表示装置を
提供するものである。
【0007】本発明を図1に基づいて説明する。図1は
液晶表示パネル端部の断面構造を示。1はシール材で
あり、3は液晶層、4は電極、5、6は基板である。基
板5の端部はシール材1の端部より通常、0.5mm程
度外側にある。したがって、シール材1の外側の空間は
基板間隔が約10μm程度で幅が0.5mm程度であ
る。
【0008】本発明においては、隣り合う2本の接続端
子間の抵抗が107 〜109 Ωとなるように、図1に示
すごとくフッ素系樹脂2で接続端子の少なくとも一部
被覆される。
【0009】フッ素系樹脂としては、塗布ができるよう
に変性されたものが好ましく使用できる。そのようなも
のとしては、溶媒可溶型フッ素樹脂、液状で塗布後反応
硬化するタイプの樹脂が例示される。
【0010】このようなフッ素系樹脂としては、例え
ば、フルオロオレフィンを共重合成分として含む共重合
体で、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデ
ン、及びフルオロオレフィン−炭化水素系モノマー共重
合体などを例として挙げることができ、架橋して用いら
れることが望ましい。また、フッ素系のシーリング材や
光硬化型のものを用いることもできる。
【0011】なかでも、塗布性能を考慮すると、フルオ
ロオレフィン−炭化水素系モノマー共重合体が好まし
い。ここで、炭化水素系モノマーとしては、ビニルエー
テル、ビニルエステル、オレフィン、アリルエーテル、
イソプロペニルエーテル等がある。上記共重合体は水酸
基、エポキシ基等の官能基を有することが好ましく、ま
た、硬化剤として、イソシアネート系硬化剤、多価アミ
ン系硬化剤を用いることが好ましい。さらに、フッ素系
樹脂はアクリル樹脂などの他の樹脂と混合して用いるこ
ともできる。
【0012】最も簡単かつ確実に被覆するためには、フ
ッ素系樹脂2を一対の基板の間でかつシール材1の外側
空間に充填することが望ましい。
【0013】充填の方法としては、液晶表示パネルの一
にフッ素系樹脂溶液を滴下し、浸透圧で周囲に浸透さ
せ塗布・乾燥した後、硬化する方法、ディスペンサーを
用いて液晶表示パネルの周囲に樹脂溶液を塗布・乾燥
た後、硬化する方法等が適用できる。
【0014】異方性導電ゴムなどを介して駆動回路と接
続する場合には端子の異方性導電ゴムなどとの接続部分
に樹脂がはみだすと接続不良が生じやすくなるため、塗
布するフッ素系樹脂のはみだしを極力防止することが好
ましい。一方TAB基板などを異方性導電膜で熱圧着す
る接続方式の場合には接続終了後にTAB基板を含め
て塗布すれば樹脂のはみだしによる接続不良の心配もな
く塗布の精度が問題となることは少なくなり、塗布自体
が容易である。
【0015】また、フッ素系樹脂としては、比抵抗を低
く制御した樹脂を用いることが好ましい。比抵抗を調整
するための添加剤の例として、金属、カーボン、酸化
錫、酸化インジウム、チタンなどの導電性粒子を挙げる
ことができる。また、プラスチックなどの非導電性粒子
の表面に金属などの導電膜を被覆した導電性粒子でもよ
い。
【0016】フッ素系樹脂の比抵抗としては被覆厚み等
にもよるが、107 〜1010Ωcm程度とされるのが
い。比抵抗が低い場合には電流が増大して消費電流の増
加あるいは表示電極に使用するITO(In 2 3 −Sn
2 の電蝕などが生じやすくなり、比抵抗が高すぎる
場合には塗布の効果が分に現れにくくなる。
【0017】なお、ここでいう比抵抗とは、フッ素系樹
脂全体で平均したものをいう。すなわち、フッ素系樹脂
の表面に導電性の薄膜を形成して、全体として、上記の
比抵抗に調整したものであってもよい。
【0018】また、フッ素系樹脂としては溶剤をできる
だけ含まないものが望ましい。これは樹脂を充填した
の硬化時に体積収縮しやすくなり、このため樹脂中に
「す」が入りやすくなるからである。
【0019】本発明は、表示モード、駆動形式にかかわ
ることなく、通常用いられる液晶表示装置一般に適用可
能であるが、接続子の線間が、数100μm以下、特
に150μm以下のマトリクス配置の液晶表示装置に適
用すると効果が大きい。
【0020】使用する液晶層は、従来のツイステッドネ
マチック液晶表示素子、スーパーツイステッド液晶表示
素子、その他の液晶表示素子の液晶層と同じ構成の液晶
層である。例えばスーパーツイステッド液晶表示素子の
場合、具体的には、ほぼ平行に配置された一対の透明電
極基板間に旋光性物質を含有した誘電異方性が正のネマ
チック液晶を挟持し、両電極間での液晶分子のねじれ角
を160〜300°とる。
【0021】上記液晶層を挟持した液晶セルの基本構成
は以下のようになる。プラスチック、ガラス等の基板の
表面に、所望のパターンでパターニングされたITO、
SnO2等の透明電極が設けられて電極付きの基板とさ
れる。電極層は、表示に対応して電極群が対向したマト
リクス配置になっており、これにより各ドット毎にオン
オフを制御可能とされる。電極層の形成方法としては
厚を均一にする見地からは、蒸着法、スパッタ法等が
好ましく用いられるが、特にこれらに限るものではな
【0022】また、本発明においては、必要に応じて電
極の上または下にSiO2、TiO2等の絶縁膜、TF
T、MIM、薄膜ダイオード等の能動素子、位相差膜、
偏光膜、反射膜、光導電膜等が形成されていてもよい。
【0023】この電極付き基板の表面には表面をラビン
グされたポリイミド、ポリアミド等の膜や、斜め蒸着さ
れたSiO等の膜からなる配向制御膜が形成される。表
示モードによっては垂直配向剤を塗布する必要のある場
合もある。2枚の上記基板が準備されて、前記した液晶
層を挟持するようにされる。
【0024】なお、電極と配向制御膜との間に基板間短
絡防止のためにTiO2、SiO2、Al23等の絶縁膜
を設けたり、透明電極にAl、Cr、Ti等の低抵抗の
リード電極を併設したり、カラーフィルターを電極の上
または下に積層してもよい。
【0025】この基板の両外側に一対の偏光板を配置す
る。この偏光板自体もセルを構成する基板の外側に配置
することが一般的であるが、性能が許せば、基板自体を
偏光板で構成したり、基板と電極との間に偏光層として
設けてもよい。
【0026】また、カラーフィルターを併用することも
可能である。このカラーフィルターは、セル内面に形成
することにより、視角によるズレを生じなく、より精密
なカラー表示が可能となる。具体的には、電極の下側に
形成されてもよいし、電極の上側に形成されてもよい。
また、色を補正するためのカラーフィルターやカラー偏
光板を併用したり、液晶中に色素を添加したり、特定の
波長分布を有する照明を用いたりしてもよい。
【0027】このような構成の液晶セルの電極に電圧を
印加するための駆動手段を接続し、駆動を行う。すなわ
ち、基板端部に導出した接続端子部分に、異方性導電ゴ
ムを介したり、ヒートシール、異方性導電接着剤を用い
て、フレキシブル基板等からなる外部回路基板を接続し
たり、TAB基板を接続したりする。
【0028】本発明では透過型でも反射型でも適用可能
であり、その応用範囲が広い。なお、透過型で使用する
場合には裏側に光源を配置する。また、導光体、カラー
フィルターを併用してもよい。さらに、透過型で使用す
る場合、画素以外の背景部分を印刷等による遮光膜で覆
うこともできる。また、遮光膜を用いるとともに、表示
したくない部分に選択電圧を印加するように、逆の駆動
をすることもできる。
【0029】本発明は、この、本発明の効果を損なわ
ない範囲内で、通常の液晶表示装置で使用されている種
々の技術が適用可能である。
【0030】
【作用】シールを通して、長時間で浸透する水分によっ
て発生するムラについては、フッ素樹脂が他のポリマ
ーに比べて著しく透湿性が低いために、ムラの発生が抑
えられるものと考えられる。
【0031】また、接続端子への吸着水が原因で発生す
るムラについては、おおよそ以下のような理由で発生が
抑制されると考えられる。
【0032】図1に示したパネルの部分の模式的な等価
回路図を図2に示す。湿度が上昇するとガラスからなる
基板上には吸着水が発生することが知られており、この
吸着水が電解質の作用をすることにより、隣り合う電極
を電極とした電池が形成されるものと考えられる。実際
に発生する電圧をデジタルボルトメータで測定すると最
大0.1V程度の直流電圧が発生している部分があるこ
とが確認された。
【0033】このように形成される電池には内部抵抗が
存在する。この内部抵抗が高い場合には電流を流す
圧降下により実際に液晶部分にかかる電圧が低下する
ことになる。このような電池の内部抵抗は吸着した水分
の抵抗で主に決まり、吸着水の膜厚はせいぜい数10n
m以下であることからすると、電池の内部抵抗はかなり
高くなっていることが予想される。
【0034】本発明の構成によれば、接続端子間を比較
的導電率高い(すなわち比較的比抵抗が低い)フッ素
系樹脂で接続するので、電池の内部抵抗を実質的に小さ
くすることにより、電池によって液晶部分に印加される
電圧を減少させることができるものと考えられる。
【0035】必要な電圧の減少率を測定したところ、発
生する電圧の大きさが0.05V以下になればVthムラ
(しきい値電圧の変動に基づく表示ムラ)が実用上発生
しないことが認められた。液晶部分の等価回路は正確に
は容量と抵抗の並列回路で表現できるが、直流が印加さ
れる本発明で扱うような場合では抵抗部分だけを考慮す
ればよい。液晶の直流抵抗は1011Ω程度と高いため、
必要なフッ素系樹脂の抵抗を算出するために液晶の抵抗
はあまり考慮する必要はなく、電池により発生する電圧
0.1Vを半減するためにフッ素系樹脂の抵抗値はほぼ
電池の内部抵抗と同等であればよいことになる。
【0036】電池の内部抵抗は不明確であるが、フッ素
系樹脂の抵抗は、電極の線間距離や、被覆厚み等による
ものの、通常の液晶表示素子の構成ではあまり影響は大
きくない。したがって、接続端子間の抵抗107〜1
9 Ω、すなわち、接続端子間抵抗の2倍以上であり、
液晶層の抵抗より小さい程度とされる
【0037】
【実施例】実施例1 ガラス基板上に面抵抗15Ω程度のITOのストライプ
パターンを形成し(電極幅150μm、線間幅150μ
m)、この上にポリイミドLQ1800(商品名、日立
化成工業社製)を0.06μmの厚さになるように塗
布、焼成して膜形成した。
【0038】この膜を静電植毛のナイロン糸ラビング布
を用いてラビングした。このような基板を2枚用意し
1枚にはスペーサーを100個/mm2 程度散布し、他
の1枚にはセルの周辺に注入孔をしてシール材(商品
名ストラクトボンド、三井東圧化学社製)を印刷して形
成した。
【0039】両基板を熱圧着してセル形成した後、液晶
ZLI−2293(商品名、メルク社製)を封入して液
表示パネルを作製した。
【0040】反応硬化型フッ素樹脂であるルミフロンL
F200C(商品名、旭硝子社製)100g、硬化剤と
してイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、
「コロネートEH」)20g、導電性粒子としてアンチ
モン含有酸化錫(三菱マテリアル社製、「T−1」)を
充分混合し、液晶表示パネル周囲にディスペンサーで塗
布した。このポリマーの比抵抗はおおよそ108 Ωcm
であった。これにより、隣り合う接続端子間の抵抗は、
おおよそ5×108 Ωとなった。
【0041】このに60℃で1時間の熱硬化をさせ
た。このようにしてフッ素系樹脂を塗布したパネルを異
方性導電ゴムで導電接続して駆動回路を組み立てた。こ
のようにして作製したモジュールを30℃、90%の高
湿度中に2時間放置した後に点灯したところ何の異状も
認められなかった。比較のために上記のフッ素系樹脂を
塗布せずに組み立てたモジュールを加湿雰囲気中に放置
し、同様に点灯したところ部分的に電極部分のVthが異
なりムラとなって見えた。
【0042】更に、上記のフッ素系樹脂を塗布した液晶
表示装置を50℃、90%RH雰囲気に1月放置した後
表示させたが、ムラは認められなかった。
【0043】実施例2 実施例1でルミフロンLF200C及びイソシアネート
系硬化剤に代えて、溶媒可溶型フッ素樹脂であるサイト
ップCTL−807M(商品名、旭硝子社製)をディス
ペンサーで塗布し、これを60℃で2時間乾燥させた。
【0044】出来上がった液晶表示装置を50℃、90
%RH雰囲気に1月放置した後表示させたが、ムラは認
められなかった。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、シール材を通して
する水分については、非常に透湿性の低いフッ素ポリマ
ーを用いることで水分によって発生するムラを防ぐこと
ができる。また、導電性粒子を含有するなどして、比抵
抗を調整したフッ素樹脂を用いて隣り合う2本の端子
間の抵抗が10 7 〜10 9 Ωとなるようにすることで、
1度の塗布で2種類のムラを防ぐことができる。また、
従来、表示ムラを防止するのに必要な導電性を持つポリ
マーは、導電性を発現するために親水性であるか、電子
電導性であるなどの化学構造が必要となることから、そ
の中から、透湿性の低い材料を選定することは極めて困
難であったが、フッ素系樹脂に導電性粒子を添加するこ
とにより、必要な導電性を持つとともに透湿性の低い材
料が容易に得られる
【0046】また、フッ素系樹脂の塗布には、シールの
外側の空間に水分が入することを防止する作用もある
ので、この部分のITOなどからなる透明電極が駆動中
に電気分解の作用を受け断線するいわゆる電蝕も防止
することができる。
【0047】電蝕の防止は、本発明の構成においても端
子間の絶縁抵抗としては10 7 Ω以上が確保されてお
り、この抵抗を介して流れる電流は1μA以下であるた
めによるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示装置の端子部分の断面図
【図2】液晶表示装置の隣り合う2つの端子間の模式的
な等価回路図
【符号の説明】
1:シール材 2:フッ素系樹脂 3:液晶層 4:電極

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】対向配置した一対の基板の周辺部にシール
    材を設けて内部に液晶を封入し、少なくとも一方の基
    端部近傍の表面に複数の接続端子を有するマトリクス
    液晶表示装置において、前記接続端子の少なくとも一部
    、隣り合う2本の接続端子間の抵抗が107 〜109
    Ωとなるようにフッ素系樹脂で被覆されてなることを特
    徴とするマトリクス液晶表示装置。
  2. 【請求項2】フッ素系樹脂は導電性粒子が添加されてな
    る樹脂である請求項1に記載のマトリクス液晶表示装
    置。
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