JP3273961B2 - クリームはんだ - Google Patents

クリームはんだ

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健一 河合
靖久 田中
栄治 浅田
雄彦 成田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スクリーン印刷、ディ
スペンサ塗布、ピン転写などにより基板上の供給される
クリームはんだに関する。
【0002】
【従来の技術】従来スクリーン印刷などで基板上に塗布
されて使用されるクリームはんだは、通常75〜92重
量%のはんだ粉末にフラックスが混合されてクリーム状
に形成されたものである。このクリームはんだに使用さ
れるフラックスは、たとえば、ロジンなどの基材と、有
機溶剤と、はんだ粉末とフラックスとの分離を抑制する
ための粘性剤およびはんだ付け性向上のための活性剤と
が混合された粘稠な液体である。このクリームはんだで
は、はんだ粉末とフラックスが混合されているため、フ
ラックス中に含まれる活性剤成分とはんだとが反応し易
い。特に水分が含まれていると低温で反応が進行する。
そのためクリームはんだでは、室温で経時変化が大きい
こと、また基板に塗布した後はんだ付けまでの期間が長
いと経時変化によりはんだ付け性が低下するなどの不具
合が発生し易い。
【0003】上記の経時変化は、主としてクリームはん
だが空気中の水分を吸収して活性剤として使用されるア
ミンのハロゲン塩がはんだとの反応を促進させるためと
考えられ、フラックスの溶剤を水分吸収の少ないエチレ
ングリコールモノフェニルエーテルとしたクリームはん
だが開示されている(特公昭61−15798号公
報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の水分吸収の少な
い溶剤を用いて経時変化を抑制する方法では、非水系の
はんだには適用できるが、水溶性タイプのクリームはん
だでは水分が存在するかあるいは水分を吸収し易い成分
を含むため多少の改善は認められるが経時変化を抑制す
るには充分でない。また他のアミンや有機酸の活性剤を
使用した場合も経時変化を抑制することはむつかしい。
【0005】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもの
で、室温での貯蔵時や塗布時では活性が低く、はんだ付
け温度域で活性を示す活性剤をフラックスに配合するこ
とで、経時変化を抑制して貯蔵安定性に優れ、はんだ付
け性に優れたクリームはんだを提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のクリームはんだ
は、はんだ粉末とアミン活性剤を含むフラックスとを有
するクリームはんだであって、該アミン活性剤は、ジエ
タノールアミン及びトリエタノールアミンの少なくとも
一方のアミンと、カルボン酸との反応で得られた中和塩
であって室温で固体でありはんだ付け温度域では液状の
アミン有機酸塩であることを特徴とする。このアミン有
機酸塩を構成するカルボン酸は芳香族カルボン酸である
のが好ましい。さらにカルボン酸活性剤としてジフェニ
ル酢酸を含むことが好ましい。クリームはんだは、はん
だ粉末とフラックスとの混合物で形成されている。フラ
ックスは基材、溶剤、活性剤、粘性剤などで構成されて
いる。基材は、主としてロジンおよびその誘導体が一般
的に用いられている。溶剤は基材、活性剤、粘性剤およ
びはんだとの混合物をクリーム状にするもので溶解性の
高いジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエ
チレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコ
ールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアル
キルエーテルなどの通称カルビトールと呼ばれる溶剤が
用いられる。粘性剤はフラックスをはんだに混合して全
体をクリーム状にして保持するもので粘性が高く、フラ
ックスにチキソ性を付与してはんだのたれなどを防ぐ働
きをするものである。たとえばチキソ剤の脂肪族アミ
ド、カスターワックスなどが利用される。
【0007】はんだ用活性剤は室温付近で不活性で、は
んだ付け温度域で活性でなければならない。このため少
なくと50℃までは不活性であることが必要である。活
性剤は、従来無機のハロゲン化物、有機酸、アミンなど
が知られているが、これらははんだに使用されるSn−
Pb合金、Cu等の金属の酸化物などと反応して酸化物
を除去する。しかし、活性剤ははんだとの混合状態によ
りはんだとの反応が低温でも進行して経時変化をもたら
す。従来クリームはんだのアミン活性剤として、アミン
の塩酸塩や、臭酸塩が使用されるが、これらのハロゲン
塩では、強酸性で活性が強く特に水が存在すると低温の
反応を促進して経時変化が高まるという問題がある。ま
たフラックスが残渣として基板上に存在すると腐食の発
生するという問題がある。
【0008】本発明では活性剤の主成分となるアミン活
性剤としてアミンとカルボン酸との中和塩で、かつ室温
では固体のアミン有機酸塩が用いられる。アミン有機酸
塩の融点が高く室温で固体であると低温で解離しにくく
はんだとの反応が抑制される。アミン有機酸塩の融点は
30〜230℃、好ましくは50〜200℃の範囲が良
い。融点が30℃以下であると形成される有機酸塩は液
状であるので、たとえば、溶媒中で解離して酸とアミン
となり、はんだと反応しやすくなり低温での活性を抑制
することにならず好ましくない。また固体とならないの
で中和の度合の調整など取扱が困難となり好ましくな
い。また融点が230℃より高いとはんだ付け温度域で
液状にならず活性が充分に発揮されず好ましくない。
【0009】アミンの有機酸塩を形成するカルボン酸
は、室温で固体のものは液状のものに比べて解離定数が
低く、低温で酸の活性が低いのでクリームはんだの経時
変化が抑制できる。固体のカルボン酸としては、融点が
50℃以上のものが好ましい。融点が50℃以上の脂肪
族カルボン酸、芳香族カルボン酸としては、たとえば、
ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン
酸、ベヘニン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタ
ル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシ
ン酸、フマル酸、マレイ酸、酒石酸、クエン酸、安息香
酸、フタル酸、サルチル酸、アニス酸、フェニル酢酸、
ジフェニル酢酸、シンナミン酸などが挙げられる。
【0010】一方ここで使用するアミンは、ジエタノー
ルアミン及びトリエタノールアミンの少なくとも一方で
ある。
【0011】活性剤に室温で固体の有機酸塩を使用する
ことにより、クリームはんだの経時変化を抑制すること
ができ、貯蔵安定性、作業時の経時変化が少ないクリー
ムはんだが形成できる。活性剤のアミン有機酸塩は当モ
ルで中和されたものであることが好ましい。しかし多少
のバランスのずれがあっても、経時変化に影響は与える
ことはない。さらに他の有機酸、すなわちカルボン酸活
性剤を添加することもできる。この酸の添加によっても
安定性は保持され、経時変化が悪化しない。このカルボ
ン酸活性剤としてジフェニル酢酸が好ましい。
【0012】この活性剤は、基材、粘度調整剤とともに
溶剤に溶解されてフラックスを形成し、はんだと混合さ
れてクリーム状のはんだを形成することができる。また
このアミン有機酸塩は比較的分子量が大きいのでフラッ
クスの粘度を高め塗布後のたれの発生が防止できる。さ
らに組成を特定することによって水溶性とすることがで
き水洗によりはんだ付け後の残渣を容易に除去すること
もできる。
【0013】
【作用】本発明のクリームはんだに用いられるアミン
性剤は、室温で固体ではんだ付け温度域では溶融して活
性を示すアミン有機酸塩で形成されている。このアミン
有機酸塩は室温では固体であるため活性が低くはんだと
反応しない。このため、クリームはんだのアミン活性剤
として使用されるとはんだの経時変化が抑制できる。さ
らにアミンが酸で中和されているのでアミン単体として
はんだと反応するのが抑制される。このため本発明のク
リームはんだの経時変化が抑制できる。そしてはんだ付
け温度域でアミン有機酸塩が液状となり活性を示す。こ
のためこのアミン活性剤を含むフラックスで形成された
クリームはんだは、貯蔵時の経時変化がなく、塗布後の
はんだ付けまでの期間が長くなっても経時変化の少ない
クリームはんだが形成できる。
【0014】そしてアミンと有機酸との組合せによって
は水溶性となり、水洗浄により腐食性の残渣を容易に除
去することができる。
【0015】
【実施例】以下実施例により具体的に説明する。 (実施例1)ロジンエステル57重量%、ジフェニル酢
酸23重量%、脂肪族アミド6.0重量%、フタル酸1
2.0重量%、サルチル酸1重量%および活性剤のアミ
ン有機酸塩Aとしてジエタノールアミン(沸点268.
8℃)とジフェニル酢酸(融点148℃)との当モル量
からなるアミン有機酸塩(融点約180℃)1重量%を
混合してフラックスを作成した。このフラックスにはん
だ粉末(Sn−Pb)の量が90重量%になるように混
合してクリームはんだを作成した。このフラックスの組
成割合を第1表に示す。 (実施例2)ロジンエステル60重量%、ジフェニル酢
酸20重量%、脂肪族アミド8重量%および活性剤のア
ミン有機酸塩Bとしてジエタノールアミンと安息香酸
(融点122.4℃)との当モル量からなるアミン有機
酸塩(融点約160℃)12重量%を混合してフラック
スを作成した。このフラックスを実施例1と同様にはん
だが90重量%になるように混合してクリームはんだを
作成した。 (実施例3)ロジンエステル60重量%、ジフェニル酢
酸20重量%、脂肪族アミド5.5重量%、フタル酸
4.5重量%、サルチル酸3重量%および活性剤のアミ
ン有機酸塩Cとしてトリエタノールアミンとジフェニル
酢酸(融点148℃)との当モル量からなるアミン有機
酸塩(融点約180℃)7重量%を混合してフラックス
を作成した。このフラックスを実施例1と同様にはんだ
が90重量%になるように混合してクリームはんだを作
成した。 (実施例4)ロジンエステル60重量%、ジフェニル酢
酸20重量%、脂肪族アミド5.5重量%、フタル酸
4.5重量%、サルチル酸3重量%および活性剤のアミ
ン有機酸塩Dとしてジエタノールアミンとアジピン酸
(融点152℃)との当モル量からなるアミン有機酸塩
(融点約160℃)7重量%を混合してフラックスを作
成した。このフラックスを実施例1と同様にはんだが9
0重量%になるように混合してクリームはんだを作成し
た。 (比較例1)比較としてアミン有機酸塩を含まないフラ
ックスとしてロジンエステル60重量%、ジフェニル酢
酸19.5重量%、脂肪族アミド5.5重量%、アジピ
ン酸(融点152℃)15重量%を混合して作成した。
このフラックスを実施例1と同様にはんだが90重量%
になるように添加してクリームはんだを作成した。 (比較例2)活性剤として公知のジメチルアミン塩酸塩
を用いたクリームはんだと比較した。ロジンエステル7
0重量%、ジフェニル酢酸23.4重量%、脂肪族アミ
ド6重量%およびジメチルアミン塩酸塩(融点171
℃)を0.6重量%を混合してフラックスを作成した。
このフラックスを実施例1と同様にはんだが90重量%
になるように添加してクリームはんだを作成した。 (比較例3)比較として室温で液状のアミン有機酸塩を
フラックスに配合した。ロジンエステル60重量%、ジ
フェニル酢酸20重量%、脂肪族アミド5.5重量%、
フタル酸4.5重量%、サルチル酸3重量%およびアミ
ン有機酸塩としてトリエタノールアミン(融点21.2
℃)と酢酸(融点16.7℃)との当量アミン有機酸塩
(液体)7重量%を混合してフラックスを作成した。こ
のフラックスを実施例1と同様にはんだが90重量%に
なるように添加してクリームはんだを作成した。
【0016】
【表1】
【0017】この実施例、比較例の各クリームはんだに
ついて以下の評価をおこなった。以下に述べるIPC−
SP−819の5段階の評価(図1にはんだボールの状
態の評価点を表す模式図を示す)ではんだボールを約2
5℃の室温に放置して、ボールの状態変化を24、4
8、78、96時間経過後のそれぞれの状態を図2およ
び下記の基準で観察評価した。結果を図2の線グラフに
示す。
【0018】評価基準は以下の通りである。1:加熱し
ても未溶融のままではんだボールとならない。2:ペー
ストが溶けると、はんだは1つにの大きな球となりその
周囲に多数の細かい球が半連続のかさ状に並んだり、溶
けて同じ大きさの耳になったりする。3:ペーストが溶
けると、はんだは1つの大きな球となりその周囲に直径
75μm以下の少球が3つ以上存在するが、それらは半
連続のかさ状に並んでいない。4:ペーストが溶ける
と、はんだは1つの大きな球となり周囲に75μm以下
のソルダーボールが3つ以下ある。5:ペーストが溶け
ると、はんだは1つの大きな球となり周囲にソルダーボ
ールがない。
【0019】実施例の各はんだボールは96時間経過後
も評価基準の5の状態を保持した。比較例1の活性剤に
相当するのはアジピン酸のみであり、24時間経過後、
評価点が低下し48時間後では評価点が2となりはんだ
ボールの周りにはんだの少片球が広がるいわゆるたれが
発生している。比較例2のジメチルアミン塩酸塩では始
めから評価点が4と低く、時間の経過とともに上記のた
れが発生し48時間後では比較例1と同じとなり経時変
化が大きく安定性に欠けることを示している。比較例3
の液状のアミン有機酸塩では最初は評価点は5である
が、時間の経過と共にたれなどの発生により低下し、4
8時間後では評価点が2となる経時変化がおき安定性に
欠け経時変化が大きいことを示している。
【0020】次に実施例の各フラックスの残渣の温水除
去性を調べるため、フラックスを塗布したテスト板を用
いて、温水洗浄をおこなって次の5段階の観察評価で調
べた。 1:目視で残渣有り。2:目視で一部に残渣有り。3:
実体顕微鏡で20倍に拡大して、一部に残渣有り。4:
実体顕微鏡で20倍に拡大して、ごくわずかに残渣有
り。5:実体顕微鏡で20倍に拡大して、残渣なし。
【0021】結果を図3に示す。実施例1、2のジエタ
ノールアミンと芳香族カルボン酸との塩は親水性のため
洗浄性が良好で残渣が全く残らなかった。実施例3のト
リエタノールアミンと芳香族カルボン酸との塩と実施例
4のアジピン酸の塩の場合は親水性でないため温水洗浄
では多少の残渣が認められた。したがって、アミンにジ
エタノールアミンを酸に芳香族カルボン酸を使用した場
合は温水洗浄性が高い。
【0022】
【発明の効果】本発明のクリームはんだは、そのアミン
活性剤として室温で固体ではんだ付け温度域では液状と
なるアミンとカルボン酸の当モル量で中和されたアミン
有機酸塩を用いている。このアミン有機酸塩は室温では
はんだに混合されていても反応せず安定であるので、こ
クリームはんだは経時変化が抑制され、かつクリーム
はんだが塗布された基板上でも活性が低く安定性を保持
できる。そのため経時変化の小さいクリームはんだとす
ることができる。またはんだ付け温度ではアミン有機酸
塩が液状となり活性を示してはんだの性能を発揮でき
る。さらにこのアミン有機酸塩は比較的分子量が大きく
固体であるのではんだの塗布後のたれ発生が抑制でき
る。加えて特定の組成では水溶性となり温水洗浄が可能
となりフロン洗浄を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、はんだボールの変化を評価する判定
基準の模式図である。
【図2】この図は、はんだボールの室温放置による評価
と時間の関係を示す線グラフである。
【図3】この図は、はんだの残渣の洗浄性の評価を示す
グラフである。
フロントページの続き (72)発明者 河合 健一 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 田中 靖久 愛知県豊田市緑ケ丘3丁目65番地 大豊 工業株式会社内 (72)発明者 浅田 栄治 愛知県豊田市緑ケ丘3丁目65番地 大豊 工業株式会社内 (72)発明者 成田 雄彦 名古屋市緑区鳴海町字長田75番地 ソル ダーコート株式会社内 (72)発明者 小島 広光 名古屋市緑区鳴海町字長田75番地 ソル ダーコート株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−154897(JP,A) 特開 平5−69188(JP,A) 特開 平1−284495(JP,A) 特開 平2−165893(JP,A) 特開 昭63−278695(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/363 B23K 35/22

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 はんだ粉末とアミン活性剤を含むフラッ
    クスとを有するクリームはんだであって、 該アミン活性剤は、ジエタノールアミン及びトリエタノ
    ールアミンの少なくとも一方のアミンと、カルボン酸と
    の反応で得られた中和塩であって室温で固体でありはん
    だ付け温度域では液状のアミン有機酸塩であることを特
    徴とするクリームはんだ。
  2. 【請求項2】 前記カルボン酸は芳香族カルボン酸であ
    る請求項1に記載のクリームはんだ。
  3. 【請求項3】さらにカルボン酸活性剤としてジフェニル
    酢酸を含む請求項1又は2に記載のクリームはんだ。
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