JP3267029B2 - 芳香族コポリエステル - Google Patents

芳香族コポリエステル

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陽則 塩谷
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、比較的低い温度で溶融
加工が可能な新規サーモトロピック液晶コポリエステル
に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】近年、種々のエンジニア
リングプラスチックスが開発されている。特に光学異方
性を有する液晶コポリマーが注目されている。Advances
in Polymer Science60/61 , 61 (1984) には、P-ヒド
ロキシ安息香酸ホモポリマー、テレフタル酸とハイドロ
キノンとのコポリマー、あるいはナフタレン-2,6- ジカ
ルボン酸とハイドロキノンとのコポリマーなどが記載さ
れているが、これらのポリマーは、融点がそれぞれ 610
℃、 596℃、 577℃と高いためポリマーの分解を伴わず
に溶融加工することが事実上、不可能であった。また、
特公昭47-47870号公報には、P-ヒドロキシ安息香酸、テ
レフタル酸およびハイドロキノンとのコポリマーが開示
されているが、この重合体は 500℃以上の高い融点を有
し、溶融加工がきわめて困難である。
【0003】従来、液晶ポリエステルの融点を下げて溶
融加工性を改善する方法について各種の提案がされてい
る。(Brit. Polymer Journal 132 (1980))。2,2'- ジ
メチルビフェニル-4,4'-ジカルボン酸をモノマー成分と
したポリエステル(Makromol.Chem., 189, 2029 (198
8)、Makromol.Chem.Makromol.Symp., 26, 47 (1989) 、
特開昭64-66231号公報)、2,2'- ビス(トリフルオロメ
チル)- ビフェニル-4,4'-ジカルボン酸をモノマー成分
としたポリエステル(Journal of Polymer Sci.,Part
C, Polymer Letters, 25, 11 (1987) 、Makromolecule
s, 20, 2374 (1987) )などが開示されている。しか
し、2,2'- 置換- ビフェニル-4,4'-ジカルボン酸類は、
フェニル環の共平面性が妨害され、従って、ポリマーの
結晶性が減少する。一般に結晶性の小さいポリマーは満
足する機械的強度を有していない等の欠点が指摘されて
いる。
【0004】
【発明の目的】本発明は、溶融成形性と耐熱性とを良好
に併せもちながら、十分に実用性のある機械的物性を有
する新規なコポリエステルを提供する。
【0005】
【問題点解決のための技術的手段】本発明は、下式の反
復単位A、B、C、D、E及びFから実質的に構成さ
れ、
【0006】
【化3】
【0007】
【化4】
【0008】(式中、Rは水素原子、炭素数 1〜8 のア
ルキル基あるいはアリール基、またはハロゲン原子を示
す。) A/〔A+B+C+D+E〕のモル比が85/100以下であ
り、〔B+C〕/〔B+C+D〕のモル比が 5/100より
大きく 1以下であり、〔B+C+D〕とFは実質的に等
モルであり、かつ反復単位Eが必須である芳香族コポリ
エステルを提供する。
【0009】本発明の芳香族コポリエステルを形成して
いる反復単位Aは、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキ
シ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ハロゲン化
物、p-アセトキシ安息香酸などから誘導されたものであ
る。
【0010】本発明の芳香族コポリエステルを形成して
いる反復単位Bは、3,3'- ジメチルビフェニル-4,4'-ジ
カルボン酸、そのジカルボン酸エステルあるいはジカル
ボン酸ハロゲン化物などから誘導されたものである。
【0011】本発明の芳香族コポリエステルを形成して
いる反復単位Cは、3,4'- ジメチルビフェニル-4,3'-ジ
カルボン酸、そのジカルボン酸エステルあるいはジカル
ボン酸ハロゲン化物などから誘導されたものである。
【0012】上記の3,3'- ジメチルビフェニル-4,4'-ジ
カルボン酸および3,4'- ジメチルビフェニル-4,3'-ジカ
ルボン酸は、例えばo-トルイル酸アルキルの酸化カップ
リング反応によって合成することができる( 特開平2-11
5143号公報および特開平3-77843 号公報参照)。
【0013】本発明の芳香族コポリエステルを形成して
いる反復単位Dは、テレフタル酸、そのジカルボン酸エ
ステルあるいはジカルボン酸ハロゲン化物などから誘導
されたものである。
【0014】本発明の芳香族コポリエステルを形成して
いる反復単位Eは、公知の方法で合成したポリエチレン
-2,6- ナフタレートから誘導されたものである。上記の
ポリエチレン-2,6- ナフタレートの分子量は、通常、フ
ェノール/テトラクロロエタン(重量比 1:1)の混合溶
媒中、30℃で対数粘度ηinh が0.05〜1.0dl/g 、好まし
くは、 0.1〜0.7dl/g の範囲である。また、ポリエチレ
ン-2,6- ナフタレートを無水酢酸と共に加熱、乾燥処理
して得られるアセチル化ポリエチレン-2,6- ナフタレー
トを用いることもできる
【0015】本発明の芳香族コポリエステルを形成して
いる反復単位Fは、ハイドロキノン誘導体、4,4'- ジヒ
ドロキシビフェニル、4,4'- ジヒドロキシビフェニルエ
ーテル、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキ
シナフタレン、およびこれらのジアセチル体から誘導さ
れたものである。
【0016】ハイドロキノン誘導体としては、ハイドロ
キノン、およびメチルハイドロキノン、エチルハイドロ
キノン、プロピルハイドロキノン、ブチルハイドロキノ
ンなどの炭素数 1〜8 のアルキル基置換ハイドロキノ
ン、フェニルハイドロキノンなどのアリール基置換ハイ
ドロキノン、クロロハイドロキノンなどのハロゲン原子
置換ハイドロキノンおよびこれらのジアセチル誘導体が
具体例として挙げられる。本発明においては、反復単位
Fとして、上記の複数の種類のジヒドロキシ誘導体の混
合物から誘導されたものでもよい。
【0017】本発明の芳香族コポリエステルにおいて
は、通常、A/〔A+B+C+D+E〕のモル比は85/1
00以下であり、好ましくは、 0/100〜75/100である。こ
のモル比が85/100を超えると芳香族コポリエステルの溶
融温度が高くなり、成形加工が困難となる。
【0018】本発明の芳香族コポリエステルにおいて
は、反復単位Eが必須であるが、E/〔A+B+C+D
+E〕のモル比は、通常、 1/1000 〜70/100であり、よ
り好ましくは、 1/100〜50/100である。このモル比が70
/100を超えると芳香族コポリエステルの耐熱性が低下す
る。
【0019】〔B+C〕/〔B+C+D〕のモル比は 5
/100より大きく 1以下であり、好ましくは 8/100より大
きく、1 以下である。このモル比が5/100 未満であると
前記と同様に芳香族コポリエステルの溶融温度が高くな
り、成形加工が困難となる。また、〔B+C+D〕とF
とが実質的に等モルで構成されている。
【0020】前記の反復単位A、B、C、D、Eおよび
F以外に、他のエステル結合を形成できる僅かな量によ
って反復単位A、B、C、D、EおよびFが置換されて
もよい。
【0021】他のエステル結合を形成できる反復単位の
具体例としては、イソフタル酸、ナフタリン-1,5- ジカ
ルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸、ジ
フェニルケトン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルプロパ
ン-4,4'-ジカルボン酸などから誘導されるようなジカル
ボキシ単位、レゾルシン、2,5-ジ-t- ブチルハイドロキ
ノン、2,3,5-トリメチルハイドロキノン、1,5-ジヒドロ
キシナフタレン、2,2-ビス(4- ヒドロキシフェニル) プ
ロパン、ビス(4- ヒドロキシフェニル) ケトン、ビス(4
- ヒドロキシフェニル) スルホンなどから誘導されるジ
ヒドロキシ単位、m-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ
-4'-カルボキシジフェニルエーテル、1-ヒドロキシ-4-
ナフトエ酸、4'- ヒドロキシビフェニル-4- カルボン酸
などから誘導されるオキシカルボキシ単位を挙げること
ができる。これらの置換反復単位の置換割合は、芳香族
コポリエステルの溶融温度を比較的に低くするために、
〔A+B+C+D+E+F〕に対して20モル%以下であ
ることが好ましい。
【0022】本発明の芳香族コポリエステルの製法につ
いては特に制限はなく、公知のエステル重縮合反応によ
って製造することができる。製造法の具体例としては、
(1)ジカルボン酸ジクロライドとジオールを第3級アミ
ンの存在下に重縮合する方法、 (2)ジカルボン酸のジフ
ェニルエステルとジオールから脱フェノール法にて重縮
合する方法、 (3)ジカルボン酸とジオールのジアセチル
誘導体から脱酢酸法で重縮合する方法などが挙げられ
る。特に、カルボン酸成分とヒドロキシ成分のアセチル
誘導体からの脱酢酸重合法が一般的である。
【0023】この重縮合に際して、A成分のモノマーと
F成分のモノマーをアセチル化及び/又は予備縮合させ
た後、ジカルボン酸成分を添加して重縮合させる方法を
用いると、均質なポリマーを製造することができる。重
縮合反応は、触媒の存在下または不存在下に行うことが
できる。触媒の具体例としては、酢酸第一スズ、酢酸第
一鉄、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、マグネシウ
ム、アセチルアセトン鉄(III)、チタンテトラブトキシ
ド、次亜リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどの金属
や金属化合物を挙げることできるが、これらに限定され
るものではない。
【0024】重合中の熱劣化による着色防止および生成
ポリマ−の熱安定性向上の目的で、得られる重合体の物
性に大きな影響を与えない範囲で、安定剤の存在下で重
縮合反応を行うことができる。安定剤の具体例として、
リン酸、亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、リン酸トリ
フェニル、亜リン酸トリフェニルなどのリン系化合物、
あるいは、ヒンダードフェノールを挙げることができ
る。脱酢酸重合法の場合、反応温度は 230〜 350℃で行
い、段階的に昇温して酢酸を留去させた後、減圧( 〜0.
1mmHg)にして反応を完結させる。反応時間は 1〜10時間
が好ましい。
【0025】
【発明の効果】本発明のコポリエステルは、比較的低い
温度、例えば400 ℃以下の温度で溶融状態を形成し、通
常知られた各種の成形加工法によって、バルク成形品、
フィルム、繊維などにすることができる。また、ペンタ
フルオロフェノール、p-クロロフェノールなどの有機極
性溶媒に溶解するので、溶解加工法によって成形品を得
ることが可能である。これらの成形品は、電気、電子、
自動車材料などに幅広く使用できる。顕著な特性とし
て、溶融状態において液晶性を有するため、高度に分子
配向した成形品にすることができ、従って、機械強度に
優れた高分子材料を製造することができる。
【0026】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。
【0027】(測定方法)本発明における実施例で示さ
れている各物性値は、以下の方法で測定した。 (1) 光学異方性開始温度; 偏光顕微鏡に試料をのせ、リ
ンカム社製TH600RMS型加熱装置を用いて、窒素気流下に
10℃/ 分で昇温して肉眼観察した。 (2) 熱分解開始温度; セイコー電子工業社製SSC/5200 T
GA装置を用い、試料を窒素中、10℃/ 分で昇温し、重量
の経時変化を観測した。 (3) 融点; セイコー電子工業社製SSC/5200 DSC装置を用
い、試料を窒素中、20℃/ 分で昇温し、吸熱ピークを観
測した。 (4) 対数粘度ηinh ; 60℃にてペンタフルオロフェノー
ル中、0.2g/dl の濃度で試料を溶解し、ウベローデ型粘
度計を用いて測定した。ηinh は、次式に従って計算し
た。 ηinh = ln(t/t0)/c ただし、t0はペンタフルオロフェ
ノールの落下時間、tは試料溶液の落下時間、c は試料
の濃度。
【0028】参考例 100mLのガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、攪拌
機、窒素導入管および冷却器を取りつけた。この容器内
に2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル 18.32g(75mM)
、エチレングリコール11.17g(180mM) 、テトラブチル
チタネート Ti(OBu)4 16.5mgを仕込み、窒素気流下にて
200℃で 2時間20分、 240℃で 1時間40分加熱し、この
間にほぼ理論量のメタノールが留出した。その後、反応
系を真空にして、1torr 240℃にて加熱した。 5分後に
固化するが、そのまま 1時間反応させた後、窒素を導入
して常圧とし放冷した。
【0029】粗反応物をフェノール/テトラクロロエタ
ンの混合液(重量 1:1)に溶解し、メタノール 3L 中に
注いで、ポリマーを析出させた。析出物を濾別し、メタ
ノール洗浄、アセトン洗浄の後、乾燥した。収量は16.5
0g(収率91% )であった。このポリエチレン-2,6- ナフ
タレートの対数粘度ηinh は、フェノール/テトラクロ
ロエタン(重量 1:1)の溶媒中、30℃ 1.0dl/g濃度にて
0.22 であった。上記のポリエチレン-2,6- ナフタレー
ト 6.09gに無水酢酸 10.2gを加え、 150℃で 2時間加熱
した。過剰の無水酢酸を留去した後、80℃で 2時間乾燥
し、アセチル化ポリエチレン-2,6- ナフタレート(以
下、PENAc と略す。)6.20g (重量増 1.8% )を得た。
【0030】実施例1 ステンレス製容器(100mL)にガラス製のセパラブル三つ
口フラスコの上部を用い、攪拌機、窒素導入管およびク
ライゼンを取りつけた。この容器内に、p-アセトキシ安
息香酸(PHBA-Ac) 7.206g(40mM)、ジアセトキシヒドロキ
ノン(HQu-Ac)11.884g(61.2mM) 、トリフェニルホスフェ
ート 32mg を仕込み、真空脱気し、窒素置換を 3回繰返
した後、窒素流通下、常圧にて 240℃、10分加熱した。
一旦、 100℃まで冷却し、3,3'- ジメチルビフェニル-
4,4'-ジカルボン酸(PA) 4.054g(15mM) 、3,4'- ジメチ
ルビフェニル-4,3'-ジカルボン酸(QA) 4.054g(15mM) 、
テレフタル酸(TPA) 4.983g(30mM)およびPENAc 0.987g(4
mM) を加えた。真空脱気し、窒素置換を 3回繰返した
後、窒素流通下 240℃で 1時間、 260℃で30分、 280℃
で30分、 300℃で60分、その後、減圧にし、0.1torr 3
00℃で55分加熱して酢酸を留去した。窒素を導入して常
圧とし、室温に戻した。ポリマーの収量は 22.30g(96
%)、元素分析は、C 73.21,H 3.95 (計算値C 72.9
7,H 3.98 )であった。ηinh は 1.46dl/g 、光学異
方性を示す温度は 283℃、融点は不明瞭であり、熱分解
温度は 434℃であった。
【0031】実施例2 PHBA-Ac 17.30g(96mM)、4,4'- ジアセトキシビフェニル
(BP-Ac) 8.822g(32.64mM) 、PA 1.730g(11.2mM) 、TPA
4.253g(20.8mM)、PENAc 1.973g(8mM) 、トリフェニルホ
スフェート 9.6mgを用いて、 250℃で 1時間、その後20
分かけて 315℃へ昇温し、 315℃で 1時間加熱した。そ
の後、減圧にし、 0.1torr 315℃で 1時間25分加熱し
た。ポリマーの収量は 23.24g(96%)、元素分析は、C 7
3.27,H 3.65 (計算値C73.04,H 3.74 )であっ
た。ηinh は 2.95dl/g 、光学異方性を示す温度は 294
℃、融点は 272℃、熱分解温度は 429℃であった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下式の反復単位A、B、C、D、E及び
    Fから実質的に構成され、 【化1】 【化2】 (式中、Rは水素原子、炭素数 1〜8 のアルキル基ある
    いはアリール基、またはハロゲン原子を示す。) A/〔A+B+C+D+E〕のモル比が85/100以下であ
    り、〔B+C〕/〔B+C+D〕のモル比が 5/100より
    大きく 1以下であり、〔B+C+D〕とFは実質的に等
    モルであり、かつ反復単位Eが必須である芳香族コポリ
    エステル。
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