JP3260179B2 - 恒温槽収納型の水晶振動子およびこれを用いた水晶発振器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は水晶振動子を恒温槽に収
納した恒温槽収納型水晶振動子（恒温型振動子とする）
及びこれを用いた水晶発振器を利用分野とし、特にセラ
ミックヒータを付加して起動特性を良好とした水晶発振
器に関する。

【０００２】

【発明の背景】恒温型振動子及びこれを用いた水晶発振
器は、水晶振動子（水晶片）の動作温度を一定とするた
め、水晶振動子に起因した温度特性に拘らず、安定な発
振周波数を得ることができ、特に高安定度の要求される
通信機器分野にて有用されている。

【０００３】

【従来技術】第５図はこの種の一従来例を説明する恒温
型振動子の図で、同図（ａ）は一部破断図、同図（ｂ）
は水晶振動子の断面図である。恒温型振動子は、水晶振
動子１を恒温槽２に収納して構成される。水晶振動子１
は、例えばＳＣカットの水晶片３を金属容器４内に密閉
封入してなる。金属容器４は、ベース５にカバー６をコ
ールドウェルドにより接合してなる。ベース５は金属板
の凹部にガラス７を埋設し、リード線８が絶縁貫通す
る。そして、水晶片３をサポータ９を介在させて保持
し、電気的・機械的に接続する。恒温槽２は金属筒体１
０の一端を開口端とし、外表面に熱線１１を巻回すると
ともにサーミスタ（未図示）設ける。そして、水晶振動
子１の頭部側を開口端から挿入して、ベース５を開口端
側に位置させる。通常では、水晶振動子１のリード線８
を短く切断し、開口端側に外部端子１２の絶縁貫通した
金属蓋体１３を設けて閉塞する。そして、リード線８と
外部端子１２とを金属細線１３により接続する。さら
に、蓋体１４とベース７との間隙には例えば樹脂等の断
熱材１５が埋設される。これらの理由は、水晶振動子１
のリード線８を経由しての外部との熱的な結合を防止す
るためである。そして、サーミスタにより周囲温度を検
出し、熱線１１に供給する電流を制御回路（未図示）に
より可変し、槽内温度を一定にする。水晶発振器はこの
ような恒温型振動子を発振子として例えばコルピッツ型
（未図示）の発振回路を形成して構成される。

【０００４】

【従来技術の問題点】しかしながら、上記構成の恒温型
振動子を用いた水晶発振器では、第６図の起動特性に示
したように、起動時から発振周波数が安定するまで、約
３０分の時間を要する。すなわち、水晶発振器（恒温槽
２）の起動時に、金属筒体１０の温度が瞬間的に上昇し
たとしても、水晶片３の温度は直ちには追従しない。こ
れは、金属筒体１０と水晶振動子１の金属容器４との間
隙や断熱材１５及び金属容器４内の雰囲気で、水晶片３
に熱の伝導が阻害されることによる。したがって、水晶
片３が動作温度例えば７０℃に到達するまでには時間を
費やすことになる。このようなことから、特に緊急時の
通信において要求される起動特性に問題があった。

【０００５】

【発明の目的】本発明は起動特性を良好とした恒温型振
動子及びこれを用いた水晶発振器を提供することを目的
とする。

【０００６】

【解決手段】本発明は、従来の恒温槽を使用するととも
に、これとは別個に水晶振動子のベースにセラミックヒ
ータを設け、リード線を経由して直接的に水晶片加熱
し、起動特性を良好とすることを解決手段とする。以
下、本発明の一実施例を説明する。

【０００７】

【実施例】第１図は本発明の一実施例を説明する図で、
同図（ａ）は恒温型振動子の断面図、同図（ｂ）はセラ
ミックヒータの平面図である。なお、前従来例図と同一
部分には同番号を付与してその説明は簡略する。恒温型
振動子は、前述同様に水晶片３の密閉された水晶振動子
１を、熱線１１の巻回された恒温槽２に収納される。そ
して、この実施例では、水晶振動子１のベース５に、セ
ラミックヒータ１６を取着した構成とする。なお、恒温
槽及びセラミックヒータには図示しないサーミスタがそ
れぞれ設けられる。セラミックヒータ１６はセラミック
板に抵抗膜１７を形成し、両側に貫通孔１８を設けて水
晶振動子１のリード線８に挿通される。そして、蓋体１
４に設けた外部端子１９と抵抗膜１７の端子２１とを金
属細線２０を用いて接続する。第２図は恒温槽２とセラ
ミックヒータ１６へ電力を供給する制御回路２２、２３
の一例図である。なお、恒温槽の制御回路はブロックで
示し、その回路例は省略してある。簡略すると、２４は
セラミックヒータ１６に設けれるサーミスタであり、こ
の抵抗値に基づき、比較器２５がＯＮ、ＯＦＦする。す
なわち、セラミックヒータ１６の温度が規定値になるま
では、比較器２５はＯＮ状態となる。そして、トランジ
スタ２６にベース電流を与え、これによりセラミックヒ
ータ１６に電力を供給する。このようなものでは、例え
ば発振器の起動時に、恒温槽２とセラミックヒータ１６
の制御回路２２、２６を同時に駆動させる。恒温槽２の
制御回路２２は、従来同様に恒温槽２に設けたサーミス
タの抵抗値に従い、発振周波数が安定後も、熱線に電力
を供給する。また、セラミックヒータ１６の制御回路２
３はサーミスタ２４の抵抗値に従い、発振周波数が安定
する少し前まで、セラミックヒータ１６に電力を供給
し、それ以降は停止するようにする。

【０００８】上記構成の恒温型振動子であれば、起動時
には、従来の恒温槽２による加熱に加え、セラミックヒ
ータ１６による熱が付加されるので、水晶振動子１の内
部温度を早めに上昇することができる。特に、セラミッ
クヒータ１６はベース５を直接的に加熱するので、水晶
振動子１の内部温度を効率よく上昇する。加えて、ベー
ス５への加熱は、直接的あるいはガラスを通して、瞬時
にリード線に伝熱し、さらにサポータを通して水晶片３
の電極温度をも上昇させる。したがって、水晶片３への
伝熱経路中に熱容量の大きな雰囲気を含まず、伝熱経路
は直接的になり、その温度上昇が早められる。ちなみ
に、本発明を適用した起動特性は、第３図に示した通り
約１０分であり、従来のものに比較して１／３程度に短
縮できた。

【０００９】上記実施例では、セラミックヒータ１６
は、リード線８に直接に伝熱するようにした方がよいの
で、例えば第４図に示したようにセラミックヒータ１６
の貫通孔部分のみの厚みを大きくしてリード線８との接
触面積を大きくするようにしてもよい。そして、両者間
に熱伝導率の良好なオイル状のものを充填して熱的に密
着させるようにしてもよい。また、ベース５は冷間圧接
用のものを用いたが、例えば抵抗溶接用の金属ベースで
あったとしてもよい。そして、セラミックヒータ１６は
必ずしも貫通孔を設けてリード線８に挿通することな
く、ベース５に単に固着してもよく、要は、従来の恒温
槽２に水晶振動子１を収納して、起動特性を良好とする
ために、セラミックヒータ１６をベース５に設けて水晶
振動子１のリード線８を通し、発振周波数が安定するま
での間、水晶片３を直接的に加熱するようにしたもの
は、本発明の技術的範囲に属するものである。

【００１０】

【発明の効果】本発明は、従来の恒温槽を使用するとと
もに、これとは別個に水晶振動子のリード線の導出した
ベースに起動特性を良好とするセラミックヒータを設け
たので、起動特性を良好とする恒温型振動子及びこれを
用いた水晶発振器を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【第１図】本発明の一実施例を説明する図で、同図
（ａ）は恒温型振動子の断面図、同図（ｂ）はセラミッ
クヒータの平面図である。

【第２図】本発明の一実施例を説明するセラミックヒー
タの制御回路の一例である。

【第３図】本発明の一実施例による起動特性図てある。

【第４図】本発明の他の実施例を説明する一部断面図で
ある。

【第５図】従来例を説明する図で、同図（ａ）は恒温型
振動子の一部破断図、同図（ｂ）は水晶振動子の断面図
である。

【第６図】従来例の起動特性図である。

【符号の説明】

１ 水晶振動子、２ 恒温槽、３ 水晶片、４ 金属容
器、５ ベース、６ カバー、７ ガラス、８ リード
線、９ サポータ、１０ 金属筒体、１１ 熱線、１２
外部端子、１３ 金属細線、１４ 蓋体、１５ 断熱
材、１６ セラミックヒータ、１７ 抵抗膜、１８ 貫
通孔、１９ 外部端子、２０ 金属細線、２１ 端子．

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】開口端を有する金属筒体の外表面に熱線を
   巻回した恒温槽と、前記恒温槽に収納されて前記開口端
   側からリード線の導出した水晶振動子と、該水晶振動子
   のベース底面側に設けられて前記リード線を加熱して発
   振周波数が安定するまでの間動作するセラミックヒータ
   とからなる恒温槽収納型水晶振動子。
2. 【請求項２】請求項１に記載の恒温槽収納型水晶振動子
   を用いて構成したことを特徴とする水晶発振器。