JP3258413B2 - 四フッ化ゲルマニウムの製造方法 - Google Patents

四フッ化ゲルマニウムの製造方法

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  • Organic Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属ゲルマニウムとフ
ッ素(F2 )ガスまたは三弗化窒素(NF3)ガスとを
反応させて、四フッ化ゲルマニウム(GeF4 )を製造
する方法に関する。更に詳しくは、GeF4 は、GeH
4 、GeCI4 などと共にアモルファスシリコン薄膜形
状の際のゲルマニウムドーピング剤として、近年盛んに
使用されつつあるが、これらの用途に用いるためには高
純度であることが要求されている。
【0002】
【従来の技術】GeF4 の製造方法としては、(1)四
塩化ゲルマニウムにSbF3 /SbCl5 を加え反応さ
せるハロゲン交換法〔H.S.Booth et a
l.,ジャナル オブ アメリカン ケミカル ソサイ
エテイ(J.Am.Chem.Soc.)58,90
(1936)〕、(2)六フッ化ゲルマニウム酸塩(B
aGeF6 等)を熱分解する方法〔インオーガニック
シンセシス(Inorganic Synthese
s)IV 147〕、(3)GeO2 とBrF3 との反
応による方法〔H.J,Emelonset al,ジ
ャーナル オブ ケミカル ソサイエテイ(J.Che
m.Soc.)164,(1950)、(4)金属ゲル
マニウムとF2 ガスまたはNF3 ガスによる直接フッ素
化法等の方法がよく知られている。
【0003】しかしながら、(1)、(2)及び(3)
で得られるGeF4 中には、フッ化塩化ゲルマニウム、
HF、CO2 、SO2 、SiF4 、CF4 、CO、
2 、O 2 など多種類のガスを不純物として含有し、ま
た(4)で得られるGeF4 は、金属ゲルマニウムやN
3 ガスの高純度品が入手出来ることからGeF4 も純
度が良い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、直接フ
ッ素化法では次のような問題がある。すなわち、反応器
に充填された金属ゲルマニウム層を250〜500℃に
加熱した後、一方よりF2 ガスまたはNF3 ガスを供給
すると、二フッ化ゲルマニウム(GeF2 )が、副生す
る。GeF2 が副生する原因については次のように推察
する。F2 ガス及びNF3 ガスが加熱された金属ゲルマ
ニウム層を通過する際に反応し、GeF4 を生成する
が、更にその一部が化1に示すように、金属ゲルマニウ
ム層内で反応が進行し、GeF2 が副生するものと思わ
れる。
【0005】
【化1】 GeF4 + Ge → 2GeF2
【0006】GeF2 は高温下ではガス状であるが、室
温では白色の固体で大気に触れると潮解性を有する物質
である。副生したGeF2 は出口フランジ内側や、反応
器から捕集容器間の導管内に固着し、通気ラインを閉塞
させてしまう。従って、収率の低下及び長時間定常運転
が出来ないという問題が生じる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる状況
に鑑み、GeF2 の副生を抑制し、安定的に、かつ高収
率でGeF4 を製造する方法について種々検討を重ねた
結果、反応器に充填された金属ゲルマニウム層の下部と
上部に、F2 ガスまたはNF3 ガスを供給することによ
り、目的が達成できることを見出し、本発明を完成する
に至った。
【0008】すなわち、本発明は金属ゲルマニウムが充
填され、250〜500℃に保持された反応部を有する
反応器に、フッ素ガスまたは三弗化窒素ガスを通気し
て、四フッ化ゲルマニウムを製造する方法において、該
反応器の下部と上部からフッ素ガスまたは三弗化窒素ガ
スを供給することを特徴とする四フッ化ゲルマニウムの
製造方法に関する。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいて使用される金属ゲルマニウムは、その形状を特に
限定するものではなく、塊状または粉末状のものが使用
できる。また純度は、反応生成物であるGeF4 の純度
に直接影響を及ぼすことから99.99%以上のものが
望まれる。このような金属ゲルマニウムは、GeCl4
を精製したのち加水分解してGeO2 とし、これを水素
還元してゲルマニウム粉末としたものや、更にはこれを
帯溶融精製法により高純度化したものがある。
【0010】金属ゲルマニウムをフッ素化する原料ガス
には、F2 ガスまたはNF3 ガスが使用される。しか
し、このガスの純度も、GeF4 の純度に直接影響を及
ぼすことから99%以上のものが望まれる。反応器に用
いる材質は、ニッケルあるいはモネルのような、高温に
於いてフッ素系ガスに耐えうるものでなければならな
い。また、形状は高温に接する部分に溶接等の継ぎ目が
ある場合、腐食され易いことから、高温となる反応器の
胴体部には、上記材質の継ぎ目無し管、すなわち円筒状
で、両端にフランジを取り付けこれを竪型に設置した反
応器が好適に使用される。
【0011】反応器には金属ゲルマニウムを充填し、F
2 ガスまたはNF3 ガスと反応させる反応部とその上部
に設けられた加熱部からなっており、反応部及び加熱部
には、外部から加熱できるヒータが取り付けられてい
る。加熱部の構造としては、加熱部が外部加熱ヒーター
により充分目的の温度を達成できればよい。更に、該加
熱部にニッケル金網を取りつけるか、またはモネル等の
高温に於いてフッ素系ガスに耐えうるものを充填する方
法がより好ましい結果を得ることができる。
【0012】F2 ガスまたはNF3 ガスの供給管は、金
属ゲルマニウムを充填している反応部の下部及び上部に
位置する部分に設けられている。そして、F2 ガスまた
はNF3 ガスの上部供給口は、反応部である金属ゲルマ
ニウム表層と加熱部の上端との間に設けられているが、
より好ましくは、金属ゲルマニウム表層と加熱部下端の
間に位置するように設置するのが好ましい。
【0013】F2 ガスまたはNF3 ガスの上部供給口を
前記位置に設置することによりGeF2 生成の抑制がで
きるのである。この理由は、定かではないが、次のよう
に推察する。すなわち、金属ゲルマニウム層で副生した
GeF2 が金属ゲルマニウム層上部に供給されるF2
スまたはNF3 ガスと、加熱部で化2に示す反応によっ
てGeF4 が生成するものと考えられる。
【0014】
【化2】 GeF2 + F2 → GeF4 GeF2 + 2/3 NF3 → GeF4 + 1 /3 N
2
【0015】反応部に於いてF2 ガスまたはNF3 ガス
を通気する場合、100%濃度でもよいが、どちらも高
温下では強い酸化力を有することから、N2 またはHe
等の不活性ガスで希釈してもよい。希釈ガスは、ガス捕
集時のキャリアーガスとしても有用であり、その濃度は
10〜50%程度が好ましい。また、F2 ガスまたはN
3 ガスの上部と下部のガス供給量及び供給比率は、反
応器の反応温度や金属ゲルマニウムの充填量によって異
なるが、通常ガス供給量は、10〜10000cc/m
in、供給比率は下部を1容量部として、上部は0.1
〜1容量部で行われる。
【0016】本発明に於ける反応温度は反応部及び加熱
部共に250〜500℃が好ましく、更に、好ましくは
300〜400℃が好適である。反応部及び加熱部が2
50℃未満では、金属ゲルマニウムとF2 ガスまたはN
3 ガスの反応が充分進行せず、また未反応のF2 ガス
またはNF3 ガスが混入し好ましくない。500℃を超
えると反応部の温度が制御温度以上に上昇し、反応温度
を制御できない。また、NF3 ガスに於いては一部ゲル
マニウムの窒化物を副生するが、500℃を超えるとそ
の副生物が増加しGeF4 の収率の低下の原因となるこ
とから好ましくない。
【0017】反応時の圧力は、特に限定はなくもちろん
減圧でもよいが、通常、常圧〜9kg/cm2 程度の圧
力で実施される。反応により得られたGeF4 は、副生
したN2 及びN2 、He等の希釈ガスや未反応のF2
スまたはNF3 ガスを含有し、反応器より生成ガス排出
管を経て捕集容器(図面に表示なし)に導かれる。Ge
4 を捕集する容器は約−90℃に冷却して、これら希
釈ガス及び未反応ガスとを分離してGeF4 を捕集す
る。
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明する。以下に於いて%は特記する以外は重量基準で表
す。
【0019】実施例1 純度99.99%の金属ゲルマニウム粉末250gを、
図1に示すニッケル製で内径40mm、高さ800mm
の竪型反応器1の反応部2に位置する部分に充填した。
次にガス下部供給管5から常圧のN2 ガス300cc/
minを約1時間通気し、系内の空気を完全に除去し
た。しかる後、反応部2を350℃、加熱部3を400
℃の温度に加熱した状態で、ガス下部供給管5からN2
ガス400cc/minに加え、純度99.99%NF
3 ガスを90cc/min、またガス上部供給管6から
はNF3 ガス30cc/minを反応部2と加熱部3と
の間に通気して6時間反応を行った。反応器1より発生
した生成ガスは、生成ガス排出管8から−90℃の温度
まで冷却した捕集容器に導き捕集した。反応終了後捕集
容器内を真空ポンプにて真空排気し、希釈ガスとして使
用したN2 ガス、副生したN2 ガス及び未反応のNF3
ガスを除去した。尚、これらの反応は常圧で行った。
【0020】その結果、GeF4 収量は174g 、反応
器内のGe消費量91gでGe基準での収率は93%と
高収率であった。また、反応器1の底部には、ゲルマニ
ウムの窒化物と見られるものがあったが、GeF2 の固
着物はなかった。尚、捕集したGeF4 中の単体金属の
含有量を分析するにあたり、エタノールに吸収させたサ
ンプルをICP(高周波誘導結合プラズマ)分析にてそ
の含有量を測定したところ、Na、Mg、Ca、Fe、
Siの5元素はGeF4 ベースで各々0.05ppm以
下であった。また、ガスクロマトグラフィーによるガス
分析に於いても、CF4 は10ppm以下であった。
【0021】実施例2 帯溶融精製法によって得られた純度99.999%の金
属ゲルマニウムを約2cm×2cm×1cmの大きさに
切断したもの8個(252g)を、実施例1と同じ反応
器1に充填した。しかる後、反応部2を300℃、加熱
部3を400℃の温度に加熱した状態でガス下部供給管
5から、N2 ガス通気量400cc/minに加え、N
3 ガス100cc/min、またガス上部供給管6か
らNF3ガス20cc/minを反応部2と加熱部3と
の間に通気して12時間反応を行った。反応器1より発
生した生成ガスは、実施例1と同様の操作で捕集した。
尚、これらの反応は常圧で行った。その結果、GeF4
の収量は320g 、反応器内のGe消費量171gでG
e基準での収率は91%と高収率であった。また、反応
器1の底部には、ゲルマニウムの窒化物と見られるもの
があったが、GeF2 の固着物はなかった。尚、実施例
と同様に、ICP分析にてその含有量を測定したとこ
ろ、Na、Mg、Ca、Fe、Siの5元素はGeF4
ベースで各々0.05ppm以下であった。また、ガス
クロマトグラフィーによるガス分析に於いても、CF4
は10ppm以下であった。
【0022】実施例3 ガス下部供給管5から、N2 ガスの通気量400cc/
minに加え、常圧の99%F2 ガス160cc/mi
n、またガス上部供給管6からF2 ガス40cc/mi
nを反応器1に通気して10時間反応を行った以外は、
実施例1と同様の操作で行った。その結果、GeF4
収量は305g、反応器内のGe消費量145gでGe
基準での収率は98.6%と高収率であった。尚、実施
例1と同様、ICP分析にてその含有量を測定したとこ
ろ、Na、Mg、Ca、Fe、Siの5元素はGeF4
ベースで各々0.05ppm以下であった。また、ガス
クロマトグラフィーによるガス分析に於いては、CF4
は200ppmであった。
【0023】実施例4 反応部2の温度を450℃に、加熱部3の温度を300
℃に変更しNF3 ガスを下部供給管から100cc/m
in、上部供給管から50cc/minとした以外は、
実施例1と同様の操作で行った。その結果、GeF4
収量は214g 、反応器内のGe消費量115gでGe
基準での収率は91%と高収率であった。また、反応器
の低部には、ゲルマニウムの窒化物と見られるものがあ
ったが、GeF2 の固着物はなかった。尚、捕集したG
eF4 中の単体金属の含有量を分析するにあたり、エタ
ノールに吸収させたサンプルをICP(高周波誘導結合
プラズマ)分析にてその含有量を測定したところ、N
a、Mg、Ca、Fe、Siの5元素はGeF4 ベース
で各々0.05ppm以下であった。また、ガスクロマ
トグラフィーによるガス分析に於いても、CF4 は10
ppm以下であった。
【0024】比較例1 純度99.99%の金属ゲルマニウム粉末250gを、
図2に示すニッケル製で内径40mm、高さ800mm
の竪型反応器1の反応部2に位置する部分に充填した。
反応部2を350℃の温度に加熱した状態で、ガス下部
供給管5からN 2 ガス400cc/minに加え、純度
99.99%NF3 ガスを90cc/minを反応部2
に通気して6時間反応を行った。その他の操作は実施例
1の方法に従った。しかし、NF3 ガス通気開始後約2
時間で反応器1内の圧力が上昇し始めた。NF3 ガスの
通気及び反応部2の加熱を止め、内部を観察したところ
GeF2 が、上部フランジ蓋の内側に固着し、出口ノズ
ル部が閉塞していた。GeF4 の収率は、Ge基準に於
いて62%と低収率であった。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、反応器1の一部を改良
して、ガス供給管を反応部2の下部と上部に分割して供
給するという簡単な方法で、従来技術では達成されなか
ったGeF4 収率の向上が達成され、また、GeF2
副生によるラインの閉塞が無くなるという大きな効果を
挙げることができた。従って、本発明の方法は長期間定
常運転を行い、高収率のGeF4 を得るのに最適であ
る。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による実施態様の一例を示す断面図
【図2】 従来法による実施態様の一例を示す断面図
【符号の説明】
1 反応器 2 反応部 3 加熱部 4 加熱ヒーター 5 ガス下部供給管 6 ガス上部供給管 7 ガス上部供給口 8 生成ガス排出管
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−234301(JP,A) 特開 平1−234303(JP,A) 特開 平2−133302(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00 - 23/08 CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属ゲルマニウムが充填され、25
    0〜500℃に保持された反応部を有する反応器に、フ
    ッ素ガスまたは三弗化窒素ガスを通気して、四フッ化ゲ
    ルマニウムを製造する方法において、該反応器の下部と
    上部からフッ素ガスまたは三弗化窒素ガスを供給するこ
    とを特徴とする四フッ化ゲルマニウムの製造方法。
  2. 【請求項2】 反応器が反応部と加熱部からなり、
    該加熱部が反応部の上部に位置し、かつ加熱部の温度が
    250〜500℃である請求項1記載の四フッ化ゲルマ
    ニウムの製造方法。
  3. 【請求項3】 反応器の上部から供給するフッ素ガ
    スまたは三弗化窒素ガスのガス上部供給口が、加熱部の
    上端と反応部の表層との間に位置する請求項1記載の四
    フッ化ゲルマニウムの製造方法。
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