JP3257719B2 - ポリアミドの合成法 - Google Patents

ポリアミドの合成法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アニオン重合によるポ
リアミドの製造方法に関するものである。本発明の製造
方法により、単分散性を有する所望の高重合度ポリアミ
ドを高収率で得ることが出来る。
【0002】
【従来の技術】一般に、β−ラクタムが塩基性触媒でア
ニオン重合する事は知られており、重合溶媒としてクロ
ルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等が使用されてい
た。重合溶媒としてこれらの非極性の溶媒または極性が
低い溶媒を用いて重合を行った場合には、生成するポリ
アミドの溶媒に対する溶解性が低いため、重合の初期か
らポリアミドの沈殿が生じ、高重合度物を得る事が困難
であった。このような状況下、β−ラクタムの高重合度
物を得るべく、反応系の均一化および乳化、懸濁重合等
の各種重合方法が検討されている。例えば、ジメチルス
ルホキシドのように極性が高い溶媒を用いて重合を行な
うことが試みられている。この場合、重合反応の後期に
至るまで見掛け上均一溶解状態が保たれ、ある程度の高
重合度化は可能とはなるが、反応を追い込むと重合末期
にはポリアミドのゲル化あるいは一部不溶化等が生じ、
所望の高重合度物を得るよう重合を制御することは困難
であった。さらに、この反応系を高温で行なうことによ
り、重合末期におけるポリアミドのゲル化がある程度改
善されると期待されるが、副反応であるアミド交換反応
および解重合反応が促進されるため、ポリアミドの分子
量分散が大きくなり、単分散性の高重合度ポリアミドを
得ることは困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来のβ
−ラクタムのアニオン重合方法では、副反応であるアミ
ド交換反応および解重合反応を極力抑制し、しかも高重
合度のポリアミドを得ることは困難であった。したがっ
て本発明の目的は、β−ラクタムのアニオン重合におい
て、単分散性を有する所望の高重合度ポリアミドを高収
率で得ることが可能な製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記の
目的は、下記一般式(I)で示されるβ−ラクタムを、
リチウム塩を含有するジメチルアセトアミド、N−メチ
ルピロリドンおよびリン酸−N,N’,N”−トリスジ
メチルアミドから選ばれる少なくとも1種類の溶媒中
で、触媒として下記一般式(II)で示されるピロリドン
塩および活性化剤としてN−アシルラクタムを用いて重
合させることを特徴とするポリアミドの製造方法を提供
することによって達成される。
【0005】
【化3】 (式中、R1、R2、R3およびR4は水素原子または炭素
数1〜4のアルキル基を示す。)
【0006】
【化4】 (式中、Xはリチウム原子、カリウム原子、ナトリウム
原子、テトラメチルアンモニウムを示す。)
【0007】本発明に用いられるβ−ラクタム単量体は
上記一般式(I)で示され、R1〜R4はすべて水素原子
であっても、アルキル基であっても、または水素原子と
アルキル基の混在であってもよい。例えば、アゼチジノ
ン−2、3−メチル−アゼチジノン−2、4−メチル−
アゼチジノン−2、シス−およびトランス−3,4−ジ
メチル−アゼチジノン−2、3,3−ジメチル−アゼチ
ジノン−2、4,4−ジメチル−アゼチジノン−2、3
−エチル−アゼチジノン−2、4−エチル−アゼチジノ
ン−2、3−メチル−3−ブチル−アゼチジノン−2等
を挙げることが出来る。これらの中でも、該アルキル基
がメチル基であるβ−ラクタム単量体が、重合時におけ
る副反応が起こりにくい点、および生成するポリアミド
の重合溶媒への溶解性の観点から好ましい。これらのβ
−ラクタム単量体は単独または2種類以上の組み合せで
用いられる。これらのβ−ラクタム単量体は後述する重
合溶媒中で重合させる。β−ラクタム単量体の重合溶媒
中での濃度は、重合溶媒に対して1〜50重量%、好ま
しくは5〜30重量%の範囲内にあることが適当であ
る。
【0008】重合溶媒としては、ジメチルアセトアミ
ド、N−メチルピロリドンおよびリン酸−N,N’,
N”−トリスジメチルアミドの極性溶媒にリチウム塩を
添加したものを使用する。これらの重合溶媒は単独また
は2種類以上の混合系で使用される。リチウム塩として
は、例えば、ハロゲン化リチウムである塩化リチウム、
臭化リチウムおよびヨウ化リチウム等が挙げられる。極
性溶媒中へのリチウム塩の添加量は、通常、極性溶媒に
対して0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%
の範囲内にあることが適当である。
【0009】触媒としては、前記一般式(II)で示され
るピロリドン塩を用いる。中でも2−ピロリドンのカリ
ウム塩が好ましい。触媒の使用量は、β−ラクタムの反
応性、後述の活性化剤の種類や濃度、更には重合条件等
に依存して適宜設定可能であるが、通常、β−ラクタム
単量体に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.
1〜3重量%の範囲内で使用されることが望ましい。
【0010】活性化剤としては、N−アシルラクタムを
使用する。N−アシルラクタムとしては、例えば、N−
ベンゾイル−3,3−ジメチルアゼチジノンおよびN−
ベンゾイル−2−ピロリドン等を挙げることが出来る。
重合に用いる活性化剤とβ−ラクタム単量体とのモル比
により、生成するポリアミドの重合度を制御することが
可能であり、所望の重合度に応じて活性化剤の使用量を
調節する。通常、その使用量は、β−ラクタム単量体に
対して0.001〜5モル%、好ましくは0.01〜1
モル%の範囲内にあることが適当である。
【0011】本発明のアニオン重合の重合方法について
は特に制限はなく、公知の方法を採用することが出来
る。例えば、反応容器に前記の重合溶媒、β−ラクタム
単量体、N−アシルラクタムを仕込み、所定の温度に維
持した系に、ピロリドン塩を添加することによりアニオ
ン重合させることが出来る。
【0012】本発明のアニオン重合の重合条件は公知の
方法を採用することが出来るが、穏やかな条件下で単時
間に重合を完了させることが、副反応を抑制して分子量
の分散を小さくする観点から好ましい。重合温度として
は、通常、−20〜40℃、好ましくは0〜30℃の範
囲内にあることが適当である。重合時間は、使用するβ
−ラクタム単量体、触媒、活性化剤等の種類や濃度によ
り異なるが、通常、30分〜10時間の範囲内である。
【0013】重合終了後、例えば、ベンジルアミン、p
−ビニルベンジルアミンまたはn−ブチルアミン等の一
級アミン化合物を重合系に添加することにより、成長末
端を定量的に変換することが出来る。
【0014】本発明の製造方法で得られるポリアミドの
数平均分子量は、β−ラクタム単量体と活性化剤とのモ
ル比によって一義的に決まるため、β−ラクタム単量体
と活性化剤との使用量の割合を変えることにより、生成
するポリアミドの数平均分子量を広い範囲にわたって容
易に制御可能である。1H−NMRスペクトル中の、繰
り返し単位由来のピーク強度および末端基由来のピーク
強度の比から求まるポリアミドの数平均分子量で、通
常、5000〜500000の範囲のポリアミドが得ら
れる。さらに、本発明の製造方法では、分子量分布の非
常に狭い単分散性のポリアミドを得ることが可能であ
り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GP
C)法により、標準ポリスチレン検量線から求めたポリ
アミドの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(M
n)との比(Mw/Mn)は、通常、1.01〜1.1
0の範囲内である。
【0015】β−ラクタム環の3位に水素原子を有する
β−ラクタム単量体は、従来公知の重合方法では副反応
の抑制が困難であったが、本発明の重合方法によればこ
のようなβ−ラクタム単量体においても副反応が抑制さ
れ、単分散性の高重合度ポリアミドを高収率で得ること
が出来る。
【0016】本発明の製造方法によれば高重合度のポリ
アミドが得られるので、該ポリアミドを用いて各種成形
品を製造すれば、機械的強度などの力学的特性に優れた
ものが得られる。
【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。な
お、実施例中の部はすべて重量部を示す。
【0018】実施例1 ジメチルアセトアミド100部に、塩化リチウムを5
部、3,3−ジメチルアゼチジノン−2を20.8部、
N−ベンゾイル−3,3−ジメチルアゼチジノン−2を
0.02部(β−ラクタム単量体に対して0.05モル
%)添加して調製した溶液に、25℃で撹拌しながら触
媒である2−ピロリドンのカリウム塩を0.13部加え
重合を開始した。引き続き同温度で重合を続け、1時間
後にn−ブチルアミンを添加し、重合反応を停止した。
重合反応は終始均一系で進行した。得られた反応液を大
量のアセトン中に注ぎ入れて、析出した白色重合体を濾
別して回収し、乾燥した。収率は99%であった。1
−NMRスペクトルより求めた重合体の数平均分子量
は、198000であった。さらに、GPC法(移動
相:ジメチルアセトアミド100部に塩化リチウムを5
部溶解した溶媒、カラム:昭和電工(株)製のShodex K
D803とKD804を直列に接続して使用)でMw/Mnを求
めたところ1.04であり、単分散性のポリアミドが得
られていることが確認された。
【0019】実施例2 β−ラクタム単量体に対する活性化剤のモル比を適宜変
更した以外は、実施例1と同じ条件にて重合反応を行っ
た。いずれの重合条件でも、重合反応は終始均一系で進
行した。活性化剤と消費された単量体とのモル比から理
論的に求めた重合体の数平均分子量(Mncalcd)と1
−NMRスペクトルより求めた重合体の数平均分子量
(Mnestd)との関係を図1に示す。図1から明らかな
ように、MncalcdとMnestdは、数平均分子量約5×
105程度までよく一致した。
【0020】実施例3 N−アシルラクタムとして、N−ベンゾイル−2−ピロ
リドンを0.019部を用いる以外は実施例1と同じ条
件で、5℃にて3時間重合反応を行った。重合反応は終
始均一系で進行した。重合体の収率は88%であり、数
平均分子量は197000であった。分子量分布は、M
w/Mn=1.03と単分散性であることが確認され
た。
【0021】実施例4 β−ラクタム単量体として、4,4−ジメチル−アゼチ
ジノン−2を用いる以外は実施例1と同じ条件で、15
℃にて2時間重合反応を行った。重合反応は終始均一系
で進行した。重合体の収率は95%であり、数平均分子
量は198000であった。分子量分布は、Mw/Mn
=1.04と単分散性であることが確認された。
【0022】実施例5 β−ラクタム単量体として、3−メチル−アゼチジノン
−2を用いる以外は実施例1と同じ条件で重合反応を行
った。重合反応は終始均一系で進行した。重合体の収率
は98%であり、数平均分子量は170000であっ
た。分子量分布は、Mw/Mn=1.05と単分散性で
あることが確認された。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、β−ラクタム単量体の
アニオン重合は終始均一系で進行し、しかも副反応が抑
制されるため、単分散性を有する所望の高重合度ポリア
ミドが高収率で得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】活性化剤と単量体とのモル比から理論的に求め
たポリアミドの数平均分子量(Mncalcd)と、1H−N
MRスペクトルから求めた数平均分子量(Mnestd)と
がよく一致することを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 69/14 - 69/24

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I)で示されるβ−ラクタ
    ムを、リチウム塩を含有するジメチルアセトアミド、N
    −メチルピロリドンおよびリン酸−N,N’,N”−ト
    リスジメチルアミドから選ばれる少なくとも1種類の溶
    媒中で、触媒として下記一般式(II)で示されるピロリ
    ドン塩および活性化剤としてN−アシルラクタムを用い
    て重合させることを特徴とするポリアミドの製造方法。 【化1】 (式中、R1、R2、R3およびR4は水素原子または炭素
    数1〜4のアルキル基を示す。) 【化2】 (式中、Xはリチウム原子、カリウム原子、ナトリウム
    原子、テトラメチルアンモニウムを示す。)
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