JP3246287B2 - 既存建物のジャッキアップ工法 - Google Patents

既存建物のジャッキアップ工法

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JP3246287B2
JP3246287B2 JP23109295A JP23109295A JP3246287B2 JP 3246287 B2 JP3246287 B2 JP 3246287B2 JP 23109295 A JP23109295 A JP 23109295A JP 23109295 A JP23109295 A JP 23109295A JP 3246287 B2 JP3246287 B2 JP 3246287B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ビル等の既存建
物下部の基礎を地盤側基礎から切り離して所要高さまで
持上げて必要な工事を施工するためのジャッキアップ工
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、既存建物の耐震性能を向上させる
ために、その既存建物の基礎下部に免震装置を導入した
り、あるいは既存建物を一層分持上げ、その下部を地下
室等に利用する等の要求がある。
【0003】ここで、この様な工事を行うには、既存建
物を所要高さまでジャッキアップしてその状態を保持し
ておく必要があるが、そのジャッキアップ工法として
は、既存建物下部の基礎を基礎杭等の地盤側基礎から切
り離して、ジャッキにより押し上げることが考えられて
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ジャッキによるリフトアップ作業にあっては、建築物を
その下部に挿入したジャッキで単に押し上げて所要の高
さに保持するだけか、あるいは押し上げたのち支保工上
に載置しているだけであるため、強風あるいは地震など
の水平力に対して抗することができず、過大な水平力を
受けると位置ずれを招く懸念がある。
【0005】なお、短期的な作業であるならば、この様
な位置ずれを招くような事態に遭遇する可能性は少ない
が、下部構造物の工事期間が長期に亘り、しかも工事期
間中該当する建物を供用しつつジャッキアップ状態を保
持するには、これらに対する保全対策を充分に考慮した
工法を採用する必要がある。
【0006】この発明は、以上の事情に鑑みてなされた
ものであり、その目的は、ジャッキアップした既存建物
に加わる水平力に充分対抗し得る既存建物のジャアップ
工法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、この発明のうち請求項1記載のジャッキアップ工法
は、既存建物の下部基礎を地盤側から切り離し、該既存
建物を所要高さまでジャッキアップする工法において、
前記既存建物の地中梁の適宜箇所の両側に配置される一
対のジャッキ架台と、該ジャッキ架台の間にあって、前
記地中梁の下部を支持する補強材兼用の支持体と、前記
各ジャッキ架台上に配置され、前記支持体を懸架するリ
フトアップジャッキとを備えて、該リフトアップジャッ
キの上昇動作により前記支持体を上昇させ、該既存建物
の下部基礎の下方には仮設基礎を設けるとともに、該仮
設基礎上に該下部基礎の周囲を包囲して係合する仮設架
台を設けて、該仮設架台を介して該既存建物に加わる水
平力を地盤側にて支持することによって、前記支持体上
に載置された状態で地中梁は上昇し、過大な水平力が加
わった場合には、仮設架台が降伏して変形することで、
免震作用を呈し、上昇中の既存建物への入力が減少し、
水平力に対する抗力を得る。
【0008】この発明のうち請求項2記載のジャッキア
ップ工法は、既存建物の下部基礎を地盤側から切り離
し、該既存建物を所要高さまでジャッキアップする工法
において、前記既存建物の下部基礎の下方に複数のプッ
シュアップ用ジャッキを配置し、該プッシュアップ用ジ
ャッキの上昇動作により該下部基礎を上昇動作させると
ともに、該仮設基礎上に該下部基礎の周囲を包囲して係
合する仮設架台を設けて、該仮設架台を介して該既存建
物に加わる水平力を地盤側にて支持することにより、前
記と同様に水平力に対する抗力を得ることになる。
【0009】この発明のうち、請求項3記載のジャッキ
アップ工法は、前記既存建物の周囲に緩衝用のダンパを
介してバットレスフレームを配置したことによって、建
物が動いた場合に緩衝用ダンパによって入力が減少する
ため、さらに二重の安全性を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を添
付図面を参照して説明する。
【0011】図1〜図3は、この発明工法の第一実施形
態例による施工手順を示すものである。
【0012】先ず、図1、2に示すように、既存建物の
下部は、基礎杭1上に設置された下部基礎2及び基礎2
に十字形に一体に交差する地中梁3からなり、基礎2上
には柱4が一体に立設され、その上部を2階部分2FL
から上を構成する梁、及び床スラブに連結している。ま
た地中梁3上には一階床面1FLを構成するスラブが一
体化されている。
【0013】施工に当っては、先ず基礎2の周囲を掘下
げ、基礎2に近接する任意の地中梁3の下部に仮土台5
を構築し、地中梁3の両側を挟んで、前記仮土台5上に
門形をした一対のジャッキ架台6を設置するとともに、
ジャッキ架台6の間にあって地中梁3の下部に梁補強材
兼用の逆台形状をした支持体7を一体に設ける。この支
持体7は、鉄骨などによって地中梁3の下部に一体に構
築されるものである。
【0014】次いで各ジャッキ架台6上の中央にはリフ
トアップジャッキ8を設置し、その中心を貫通するリフ
トアップロッド9をジャッキ架台6の下部側に垂下さ
せ、このリフトアップロッド9の下端を前記支持体7の
下部に交差配置された支持梁10に固定することで、ジ
ャッキアップ準備作業が完了する。
【0015】なお、図においては一カ所しか示されてい
ないが、基礎2毎に以上のジャッキ設備を配置する。
【0016】また、この後に、基礎杭1と基礎2との間
を切離し、基礎杭1上に仮設基礎11を設置し、さらに
仮設基礎11上には基礎2の周囲を包囲する仮設架台1
2を配置する。仮設架台12は、H型鋼からなる縦横の
フレーム12a,12bを櫓状に組み立てて基礎2の周
囲を覆うとともに、周囲にブレース材12c を掛け渡
したトラス組状のもので、縦フレーム12aを予め上方
に延設することで、基礎2の上昇ガイドを行う。
【0017】以上の準備作業後は各ジャッキ8を一斉に
駆動し、リフトアップロッド9を引上げることで、図3
に示すように、これに連結した支持体7を引上げ、基礎
2及び地中梁3を上昇動作させることができる。
【0018】上昇作業一回毎の上昇ストロークは、リフ
トアップワイヤ9の長さに依存するものであるが、ジャ
ッキ8により直接プッシュアップする場合に比べてスト
ロークを極めて大きく取ることができる。また、上昇作
業時には、当然ながら建物の鉛直度、水平度を測定しつ
つ各ジャッキ8のジャッキアップ速度、上昇ストローク
を調整しながら行うことによって、建物各部の不陸を未
然に防止できる。
【0019】このとき、図3に示すように、基礎2の上
昇に合わせて周囲の仮設架台12には横方向のフレーム
12b及びブレース材12cを増設して補強していく。
さらに上昇させる場合には、仮設架台12を上方に延設
して増設するとともに、個々のジャッキ架台6を上昇さ
せ、各ジャッキ架台6と仮土台5間にスペーサを挿入す
れば、再び図1のジャッキアップ待機状態となり、以下
同様にして尺取虫状にジャッキアップ作業を反復するこ
とによって、所望の高さ位置まで既存建物をジャッキア
ップできることになる。
【0020】以上の一連の作業工程において、建物が最
も不安定なのは、上昇作業完了時点であるが、下部基礎
2の周囲は仮設基礎11上に設けた仮設架台12に係合
し、また支持体7の補強効果、及び支持体7自体がジャ
ッキ架台6に両側を狭持状態に支持されていることによ
って風、地震などの横力が建物に加わってもこれに対抗
できることになる。また、想定以上の水平力が加わった
場合には、基礎2を包囲する仮設架台12自体が降伏し
て剛性を低下させることで一種の免震効果を生じ、既存
建物への入力を減少させる。なお既存建物を一層分リフ
トアップして、その下部を新たに地下室等に利用する場
合には、仮設架台12は本設柱の構成部材として使用で
きる。
【0021】図4〜図6はこの発明の第二実施形態例を
示すものである。なお、前記と同一箇所には同一符号を
付し、異なる部分にのみ異なる符号を用いて説明する。
【0022】図において、基礎2の下部には補強兼用の
支持体30が配置されているとともに、基礎杭1の周囲
を取囲むようにして仮設基礎31が構築され、この仮設
基礎31と支持体30との間に4つのプッシュアップ用
ジャッキ32が配置されることによってジャッキアップ
準備作業がなされ、各ジャッキ32の駆動によって基礎
2を上昇させる。さらに、仮設基礎31上には前記仮設
架台12が配置され基礎2の周囲を包囲している。
【0023】このジャッキストロークは短いが、図6に
示すごとく上昇動作毎に仮設基礎31とジャッキ32と
の間にスペーサ33を介在させ、また、ある程度上昇距
離が大きくなる毎に、仮設基礎31上に補強桁34を積
層することで安全性を保って上昇作業を行うことができ
る図7は、この発明の第三実施形態例を示すものであっ
て、前述の実施形態例1、2におけるリフトアップ準備
作業と平行して、既存建物の周囲の複数箇所にバットレ
スフレーム40を構築し、緩衝用ダンパを構成する防舷
材41を介して既存建物との間に僅かな隙間をおいて対
向させる。
【0024】バットレスフレーム40はH型鋼の組合わ
せからなるもので、既存建物の側面にあって、その外側
に延長して施工された仮設基礎42上に鉛直に固定され
た門形フレーム40aと、門形フレーム40aの背面に
斜めに掛渡されてこれを支持する斜桁40bと、斜桁4
0bと門形フレーム40a間に掛渡されたブレース材4
0cと、門形フレーム40aの前面中央に鉛直に固定さ
れた水平力受け部材40dとから構成されている。
【0025】防舷材41は基礎2の外側部に固定され、
前記水平力受け部40dとの間に僅かな隙間を保って対
向している。最大リフトアップ時に基礎2は図7の想像
線位置まで上昇するが、前記水平力受け部材40dの高
さは、これに対応しており、何れの高さ位置においても
既存建物1の水平力が防舷材41を介してバットレスフ
レーム40に伝達されるようになっている。
【0026】なお、図においては、防舷材41を基礎2
の外側部に固定してあり、既存建物がどの高さ位置であ
っても水平力受け部材40d側に当ることができ、防舷
材41を水平力受け部材40dの全長に亘って設ける場
合に比べて経済的に有利である。
【0027】従って、何れの実施例においても施工中に
強風や地震等の水平力が既存建物に加わった場合に、仮
設架台12がその水平力Fに抗して既存建物を地盤上に
保持する。また、想定以上の水平力 が加わった場合に
は、仮設架台12自体が降伏して剛性を低下させること
で一種の免震効果を生じ、既存建物への入力を減少させ
る。
【0028】さらに、この結果既存建物が動いた場合に
これを防舷材41を介してバットレスフレーム40で受
けとめ、防舷材41の緩衝作用によって既存建物に作用
する水平エネルギーを減少させつつ、位置ずれを抑制す
ることになる。
【0029】
【発明の効果】以上実施例により詳細に説明したよう
に、この発明のうち請求項1記載の既存建物のジャッキ
アップ工法によれば、既存建物のリフトアップ期間中に
強風、地震などの水平力が加わっても、その水平力を仮
設架台を介して地盤側で支持することができ、水平力に
対する抗力が得られる。また、想定以上の過大な水平力
が加わった場合には、仮設架台が降伏して変形すること
で、免震作用を呈し、上昇中の既存建物への入力を減少
させることができる。また、一回のジャッキアップ作業
による上昇ストロークが大きいなどの特徴がある。
【0030】また、この発明のうち請求項2記載の発明
によれば、一般的なプッシュアップ用ジャッキを用いる
ことができるので、以上の効果に加えて準備作業が簡単
となる。
【0031】この発明のうち請求項3記載の発明によれ
ば、過大な水平力によって既存建物が動いた場合には、
これを前記既存建物の周囲に配置したバットレスフレー
ムに緩衝用のダンパを介して受け止め、ダンパの緩衝作
用によって既存建物に対する入力を減ずることができ、
さらに安全性を確保できる。
【0032】従って、これらの発明によれば、既存建物
を長期間リフトアップ状態に保持する場合でも、安全性
を確保することが出来、工事期間中にも既存建物の供用
を図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第一実施例による要部側断面図であ
る。
【図2】図1のA矢視断面図である。
【図3】同第一実施例におけるジャッキアップ作業後の
状態を示す要部側断面図である。
【図4】この発明の第二実施例を示す要部側断面図であ
る。
【図5】同平断面図である。
【図6】同第二実施例におけるジャッキアップ作業後の
状態を示す要部側断面図である。
【図7】この発明の第三実施例を示す要部側面断面図で
ある。
【符号の説明】
1 基礎杭 2 下部基礎 3 地中梁 6 ジャッキ架台 7、20、30 支持体 8 リフトアップジ
ャッキ 9 リフトアップワイヤ 11 仮設基礎 12 仮設架台 32 プッシュアッ
プ用ジャッキ 34 補強桁 40 バットレスフ
レーム 41 防舷材(緩衝用ダンパ)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 既存建物の下部基礎を地盤側から切り離
    し、該既存建物を所要高さまでジャッキアップする工法
    において、 前記既存建物の地中梁の適宜箇所の両側に配置される一
    対のジャッキ架台と、該ジャッキ架台の間にあって、前
    記地中梁の下部を支持する補強材兼用の支持体と、前記
    各ジャッキ架台上に配置され、前記支持体を懸架するリ
    フトアップジャッキとを備えて、該リフトアップジャッ
    キの上昇動作により前記支持体を上昇させ、 該既存建物の下部基礎の下方には仮設基礎を設けるとと
    もに、該仮設基礎上に該下部基礎の周囲を包囲して係合
    する仮設架台を設けて、該仮設架台を介して該既存建物
    に加わる水平力を地盤側にて支持することを特徴とする
    既存建物のジャッキアップ工法。
  2. 【請求項2】 既存建物の下部基礎を地盤側から切り離
    し、該既存建物を所要高さまでジャッキアップする工法
    において、 前記既存建物の下部基礎の下方に複数のプッシュアップ
    用ジャッキを配置し、該プッシュアップ用ジャッキの上
    昇動作により該下部基礎を上昇動作させるとともに、 該仮設基礎上に該下部基礎の周囲を包囲して係合する仮
    設架台を設けて、該仮設架台を介して該既存建物に加わ
    る水平力を地盤側にて支持することを特徴とする既存建
    物のジャッキアップ工法。
  3. 【請求項3】 前記既存建物の周囲に緩衝用のダンパを
    介してバットレスフレームを配置したことを特徴とする
    請求項1または2記載の既存建物のジャッキアップ工
    法。
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