JP3241702B2 - 車両用のエネルギ吸収構造 - Google Patents

車両用のエネルギ吸収構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、鉄道車両同士や
自動車同士などの衝突又は追突時等において生じる衝突
エネルギをより効果的に吸収緩和することができる車両
用のエネルギ吸収構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車のフレーム構造におい
て、衝突時に長手方向について蛇腹状に変形させて衝突
エネルギを吸収できるようにした技術が知られている。
【0003】例えば、特開昭58−116267号公報
に記載の自動車の車体フレーム構造では、軸方向に切欠
部を設けたチャンネル部材と切欠部のないチャンネル部
材とを組み合わせた箱形断面構造によって、長手方向の
衝撃力により蛇腹変形を生じさせ、変形現象が異なる切
欠部に対応した部位で順次生じさせて、図8(b)のよう
なエネルギ吸収曲線図を得て衝突エネルギの吸収緩和能
力を高めんとする。
【0004】この従来技術は、図8(a)に示すような箱
形断面柱01において、座屈が起きた瞬間の最初のピー
ク荷重P1は、図8(b)に示すように高いままで、他にも
幾つかピーク荷重P2 ,P3 …を生じるような部材構成
にしてエネルギ吸収能力を高めんとする思想である。な
お、図8(a)は、箱形断面柱01における変形領域(斜
線で示す)の遷移を模式的に示したもので、図8(b)
は、これに対応する圧壊荷重(縦軸)と変位(横軸)の
関係図である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のエ
ネルギ吸収構造では、図8(b)に示されるように衝突エ
ネルギを吸収する部材において、その変形の初期段階で
高いピーク荷重P1 が生じる。この最初のピーク荷重P
1 が大きい場合は、衝突エネルギを吸収する部材の後方
に位置する部材に大きな荷重が作用したり、積載物ある
いは人員に対して大きな加速度を発生させることになり
好ましくない。
【0006】また、衝突エネルギを吸収する部材の後方
部材の変形を生じさせることになる場合もあり、衝撃吸
収部材としては好ましくない性質を持っていることにな
る。
【0007】そこで、本願発明の目的は、衝突エネルギ
を吸収する部材において、その変形の初期段階で生じる
高いピーク荷重を減少させる構造を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明に係る車両用の
エネルギ吸収構造は、第一に、衝突エネルギを吸収する
部材を箱形断面の柱状部材とし、衝突時に最初に変形の
生じるその先頭部分に板厚と同じ乃至5倍程度の球面状
初期撓みを設けてその変形の初期段階で生じる高いピ
ーク荷重を減少させるようにしたことを特徴とする。こ
れにより、圧壊時の荷重がほぼ均一になる構造となり、
箱形断面柱全体で衝突エネルギを吸収できる。
【0009】この場合、一つの対向面には凹状の初期撓
みを、他の対向面には凸状の初期撓みを設けることで、
初期段階で生じる高いピーク荷重を減少させのに有効で
あり、衝突エネルギを構造全体で効率良く吸収できる。
【0010】第二に、衝突エネルギを吸収する部材を箱
形断面の柱状部材とし、衝突時に最初に変形の生じるそ
の先頭部分にだけ、その断面の幅に対して50〜90%
の幅の開口を設けて初期段階で生じる高いピーク荷重を
減少させて箱形断面全体で衝突エネルギを効率よく吸収
できるようにしたことを特徴とする。この場合、開口を
柱状部材の4面に設けると上記作用が効果的に得られ
る。
【0011】
【0012】
【発明の実施の形態】本願発明の車両用のエネルギ吸収
構造のコンセプトは、前述したように座屈が起きた瞬間
のピーク荷重を下げることにある。以下、そのための実
施形態を図面を参照しながら説明する。 [第一実施形態]図1に示すように、箱形断面の柱状部材
(箱形断面柱)1において、衝突時に最初に変形を生じ
る先頭部分1aに板厚以上の(即ち、板厚相当の、又は
板厚を超える)初期撓み、即ち、初期不整を設けたもの
である。例えば、箱形断面柱1の一つの対向面には凹状
撓み(球面状の凹み)2を設け、他の対向面には凸状撓
み(球面状の膨らみ)3を設ける。かかる初期撓みは、
変形の生じる領域全体に与えてもよいし、もっと狭い領
域に与えてもよい。
【0013】かかる初期撓みを有する構造により初期の
ピーク荷重が減少する理由は以下の通りである。
【0014】前述した図8(a)のような初期撓みを有し
ない箱形断面柱01における、圧壊時の荷重と変位の関
係は前述した図8(b)のようになる。その第1ピーク荷
重P1は箱形断面の先頭部分が座屈変形する時の荷重で
ある。第2番目のピーク荷重P 2 は、1番目のピーク荷
重 P1を生じさせた部位に隣接してその後方に位置する
部位が座屈変形する時の荷重である。順次、第3、第4
のピークP3、P4 もそれに続く部位が座屈変形する時の
荷重である。
【0015】第2番目のピーク荷重が1番目のピーク荷
重に比較して低い理由は、第1番目のピーク荷重P1
生じさせる変形のとき、それに隣接する領域にも変形を
生じさせている。すなわち、2番目のピーク荷重P2
発生させる座屈が生じる領域にはすでに撓みが生じてい
ることになる。この撓み発生が、2番目のピーク荷重P
2を減少させている要因である。
【0016】かかる現象に着目し、これと同じ現象を1
番目の領域でも生じさせることができれば、最初のピー
ク荷重を現象させることが可能になる。そのため、前述
した図1のように箱形断面柱1の先頭部分1aに初期撓
み2,3を付ける。
【0017】図2は、有限要素法に基づく数値計算を用
いて箱形断面の柱状部材において、その先頭部分に板厚
相当の又は板厚を超える大きな初期撓みを付けた場合
と、初期撓みが全く存在しない場合について比較した結
果を示す。縦軸には軸方向圧縮力(KN)、横軸には軸
方向変位(mm)をとって示している。は初期不整
0.1t(tは箱形断面柱の板厚)の場合で、初期ピー
ク荷重588KN、2は初期不整1.0tの場合で、初
期ピーク荷重は450KN、は初期不整5.0tの場
合で、初期ピーク荷重439KNを示す。
【0018】これによって、板厚相当の又は板厚を超え
た初期撓みを付けた場合には、初期のピーク荷重が大幅
に減少することが確認できた。板厚と同じ乃至5倍程度
の初期撓みが有効である。
【0019】初期撓みを生じさせる方法としては、剛な
型を用いて押し付け、塑性変形を生じさせる方法でも可
能であるし、ガスバーナであぶり、その後水をかけて急
冷させる方法などによっても可能である。初期撓みモー
ドの与え方の例として、図3のように箱形断面柱1の表
面に、線状加熱h或いはビード盛りにより、隣接面の間
で交互に初期変形を与える。これにより、変形の方向を
決めることができる。 [第二実施形態]図4(a)に示すように、箱形断面柱1に
おいて、衝突時に最初に変形を生じるその先頭部分1a
に開口4を設けたものである。開口4の形状は、図示の
ような円形の他に長方形、矩形などでもよい。
【0020】また、図4(b)に示すように、その先頭部
分1aに開口の変形例として半円形の切り欠き部(上部
開口)5を設けてもよい。開口4,切り欠き部5の大き
さは大きいほど好ましいが、概略その断面の幅に対して
50〜90%の幅を有することが好ましい。
【0021】図4(a)(b)では、箱形断面柱1の相対する
2面にのみ開口4ないし切り欠き部5を設けているが、
4面全てに開口ないし切り欠き部を設けるとさらに第1
ピーク荷重を減少させることができる。
【0022】図5は、開口を設けた場合と開口が全く存
在しない場合で、荷重と変位の関係がどのように変化す
るか有限要素法を用いた計算で求めた結果を示す。縦軸
には軸方向圧縮力(KN)、横軸には軸方向変位(m
m)をとって示している。は開口がない場合で、初期
ピーク荷重は614KN、は図4(a)のような開口4
を設けた場合で、初期ピーク荷重は429KN、は図
4(b)のような上部切り欠き部(上部開口)5を設けた
場合で、初期ピーク荷重は515KNである。
【0023】これより、開口の存在によって、初期のピ
ーク荷重が大幅に減少することが確認できた。 [第三実施形態]図6、図7に示すように、箱形断面柱1
において、衝突時に最初に変形の生じるその先頭部分1
aにおいて、他の部分より、断面積を減少させる。
【0024】その方法としては、図6に示すようにその
先頭部分1aの板厚t1を他の部位の板厚t2より減じる
ことによって達成できる。また、図7のように先頭部分
1aを先細りのテーパー状に形成して断面寸法を減じる
ことによっても達成できる。
【0025】
【発明の効果】以上説明した本願発明によれば、衝突時
の変形の初期段階で生じる高いピーク荷重を減少させる
ことができて圧壊時の荷重がほぼ均一になる構造が得ら
れる。これによって、箱形断面柱全体で衝突エネルギを
効率よく吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第一実施形態で、箱形断面柱の先頭
部分(衝突時に最初に変形を生じる領域)に初期撓みを
設けた場合の斜視図である。
【図2】箱形断面柱に初期不整を設けた場合と設けない
場合の軸方向圧縮力と軸方向変位との関係図である。
【図3】線状加熱等による初期撓みモードの与え方の模
式図である。
【図4】本願発明の第二実施形態で、(a)は箱形断面柱
の先頭部分に開口を設けた場合の斜視図、(b)は先頭部
分に切り欠き部を設けた場合の斜視図である。
【図5】箱形断面柱に開口を設けた場合と設けない場合
の軸方向圧縮力と軸方向変位との関係図である。
【図6】本願発明の第三実施形態で、先頭部分の板厚を
他の部分の板厚より減じた場合の斜視図である。
【図7】同じく先頭部分の断面寸法を減じた場合の斜視
図である。
【図8】(a)は箱形断面柱の変形領域(斜線部)の遷移
を模式的に示す斜視図、(b)はこのときの圧壊荷重と変
位の関係図である。
【符号の説明】
1…箱形断面の柱状部材(箱形断面柱) 1a…(衝突時に最初に変形を生じる)先頭部分 2、3…初期撓み 4…開口 5…切り欠き部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢木 誠一郎 兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工 業株式会社 明石工場内 (72)発明者 丸中 俊則 兵庫県神戸市兵庫区和田山通2丁目1番 18号 川崎重工業株式会社 兵庫工場内 (56)参考文献 特開 平2−175452(JP,A) 特開 昭61−196847(JP,A) 実開 平2−57752(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B62D 21/15

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 衝突エネルギを吸収する部材を箱形断面
    の柱状部材とし、突時に最初に変形の生じるその先頭
    部分に板厚と同じ乃至5倍程度の球面状の初期撓みを設
    けてその変形の初期段階で生じる高いピーク荷重を減少
    させるようにしたことを特徴とする車両用のエネルギ吸
    収構造。
  2. 【請求項2】 一つの対向面には凹状の初期撓みを、他
    の対向面には凸状の初期撓みをそれぞれ設けた請求項1
    記載の車両用のエネルギ吸収構造。
  3. 【請求項3】 衝突エネルギを吸収する部材を箱形断面
    の柱状部材とし、衝突時に最初に変形の生じるその先頭
    部分にだけ、その断面の幅に対して50〜90%の幅の
    開口を設けて初期段階で生じる高いピーク荷重を減少さ
    せて箱形断面全体で衝突エネルギを効率よく吸収できる
    ようにしたことを特徴とする車両用のエネルギ吸収構
    造。
  4. 【請求項4】 開口を柱状部材の4面に設けた請求項3
    記載の車両用のエネルギ吸収構造。
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