JP4036234B2 - クラッシュボックス - Google Patents

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Description

本発明は、クラッシュボックスに関する。具体的には、本発明は、例えば自動車等の車両の衝突時に発生する衝撃エネルギを吸収することができるクラッシュボックスに関する。
周知のように、現在の多くの自動車の車体は、軽量化と高剛性とを両立するために、フレームと一体化したボディ全体により荷重を支えるモノコックボディによって構成される。自動車の車体は、車両の衝突時には、車両の機能の損傷を抑制し、かつキャビン内の乗員の生命を守る機能を有さなければならない。車両の衝突時の衝突エネルギを吸収してキャビンへの衝撃力を緩和することによってキャビンの損傷をできるだけ低減するためには、例えばエンジンルームやトランクルームといったキャビン以外のスペースを優先的に潰すことが有効である。
このような安全上の要請から、車体の前部、後部あるいは側部等の適宜箇所には、衝突時の衝撃荷重が負荷されると圧壊することによって衝突エネルギを積極的に吸収するための衝撃吸収部材が設けられている。これまでにも、このような衝撃吸収部材として、フロントサイドメンバ、サイドシルさらにはリアサイドメンバ等が知られている。
近年には、クラッシュボックスといわれる衝撃吸収部材をフロントサイドメンバの先端に例えば締結や溶接等の適宜手段によって装着することによって、車体の安全性の向上と、軽衝突による車体の損傷を略解消することによる修理費の低減とをともに図ることが、行われるようになってきた。クラッシュボックスとは、軸方向(本明細書では衝撃吸収部材の長手方向を意味する)へ負荷される衝撃荷重によって軸方向へ蛇腹状(アコーデオン状)に優先的に座屈することにより衝突エネルギを吸収する部材である。
この衝撃吸収部材の衝撃吸収性能を向上させるための材質や形状がこれまでにも種々開発されている。衝撃吸収部材に要求される衝撃吸収性能とは、具体的には、衝撃荷重が軸方向へ負荷されると軸方向へ繰り返し安定して座屈することにより蛇腹状に変形すること、衝撃吸収部材の圧壊時の平均荷重が高いこと、さらには、衝撃吸収部材の圧壊の際に発生する最大反力がこの衝撃吸収部材の近傍に配置された他の部材を破壊しない範囲にあることである。
これまでに一般的に用いられてきた衝撃吸収部材は、例えば特許文献1に開示されるような、ハット形の横断面形状の部材に設けられたフランジを介して裏板を溶接して箱状部材としたものである。なお、本明細書において「フランジ」とは、横断面における輪郭から外部へ向けて突出して設けられた縁部を意味する。
これに対し、特許文献2には、一端から他端へ向けての横断面形状が四角形以上の多角形からこの多角形よりも辺の数が多い他の多角形へと連続的に変化する閉断面構造を有することによって、衝突の初期の荷重を低減しながら衝撃吸収量を向上させた衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
特許文献3には、内部に隔壁を有する多角形の閉断面形状を有する衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
特許文献4には、四角形の横断面を有する素材の4つの頂点を含む領域に、内部へ向けた略直角三角形状の溝部を形成することによって強度を確保した衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
さらに、特許文献5には、フランジを有するハット形の断面形状のフロントサイドフレームの側面に軸方向へ延在するビードを形成することにより、衝撃荷重が負荷された際のフロントサイドフレームの折れ曲がりを抑制する発明が開示されている。
特開平8−128487号公報 特開平9−277953号公報 特開2003−48569号公報 特開2002−284033号公報 特開平8−108863号公報
しかし、これらの従来のいずれの発明によっても、隔壁の追加や板厚の増加による重量の増加を招くことなく、安定して軸方向へ座屈することにより所定の衝撃吸収量を確保することができる衝撃吸収部材を提供することはできない。
すなわち、自動車の車体に用いられる衝撃吸収部材の横断面形状は、殆どの場合、扁平である。このため、特許文献2により開示されたような単純な正多角形等の多角形の横断面形状を有する衝撃吸収部材を用いることは難しい。また、特許文献2により開示された発明では、衝撃吸収部材の横断面形状が略全長に渡って徐々に変化する。このため、軸方向の位置によっては、衝撃吸収部材の横断面形状が不可避的に安定した座屈には適さない形状になるおそれがある。したがって、この衝撃吸収部材は、衝撃荷重が軸方向へ負荷されると、軸方向へ繰り返し安定して座屈することができず、蛇腹状に変形しないおそれがある。
特許文献3により開示された発明では、隔壁を設けられた部分の強度が過剰に上昇するおそれがある。このため、この発明では、座屈が不安定となってかえって衝撃吸収量が不足するおそれがあるとともに、圧壊の特に初期に衝撃吸収部材に生じる最大反力が他の部材の強度を超え、衝撃吸収部材が圧壊される前に他の部材が先に圧壊されるおそれもある。さらに、この発明では、内部に隔壁を設ける分だけ衝撃吸収部材の重量が不可避的に増加する。このため、この発明は近年特に強く要請されている車体の軽量化に逆行する。
特許文献4により開示された発明では、もともと強度が高いコーナ部にさらに加工を行って切欠き部を設けるため、この切欠き部の強度が過剰に上昇し、安定して座屈することができないおそれがある。したがって、この発明では、特許文献3により開示された発明と同様に、衝撃吸収量が不足するおそれがあるとともに、この衝撃吸収部材が圧壊される前に他の部材が先に圧壊してしまうおそれがある。
さらに、特許文献5により開示された発明では、衝撃吸収部材がフランジを有するハット形の横断面形状を有する。このため、この発明によれば、負荷された衝撃荷重による折れ曲がりを抑制することは確かに可能になると考えられる。しかし、この発明によっては、衝撃荷重を負荷されても、軸方向へ蛇腹状に安定して圧壊することはできない。
本発明の目的は、隔壁の追加や板厚の増加による重量の増加や、軸方向での屈曲を招くことなく、衝撃荷重を負荷されると、軸方向へ安定して蛇腹状に座屈することによって所定の衝撃吸収量を確保できるクラッシュボックスを提供することである。
本発明者らは、上述した従来の技術が有する課題に鑑みて種々検討を重ねた結果、以下に列記する新規かつ重要な知見(I)及び(II)を得て、本発明を完成した。
(I)クラッシュボックスの横断面形状を、(a)略多角形からなる閉断面をなし、(b)外向きフランジを有さず、(c)略多角形を構成する複数の頂点のうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域でかつこの辺の端点を除く位置に、この基本断面の内側へ凸となる、筒体の軸方向に延びる溝部を有し、さらに、(d)溝部を有する辺の一部の領域を除いた辺の残余の領域が、曲線に形成されるという4要素(a)〜(d)を全て備える形状とすることにより、実際のクラッシュボックスでは多用される扁平な横断面形状の場合であっても、隔壁の追加や板厚の増加による重量の増加や軸方向での屈曲変形を招くことなく、軸方向へ安定して蛇腹状に座屈することにより所定の衝撃吸収性能を確保できること。及び
(II)FEM解析を鋭意行って検討した結果、この溝部の形状には座屈の安定化を図るために選択すべき好適な条件が存在し、この条件を逸脱してしまうと座屈の挙動が不安定となって、衝撃吸収性能が低下するおそれがあること。
本発明は、軸方向の一方の端部からこの軸方向へ向けて負荷される衝撃荷重により蛇腹状に座屈できることにより衝突エネルギを吸収するための筒体からなるクラッシュボックスであって、軸方向の少なくとも一部の横断面形状が、略多角形からなる閉断面であり、この閉断面の外側にフランジを具備しないとともに、略多角形を構成する複数の頂点のうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域でかつこの辺の端点を除く位置に基本断面の内側へ凸となる、筒体の軸方向に延びる溝部を有する形状であり、さらに、溝部を有する辺の一部の領域を除いた辺の残余の領域が、曲線に形成されることを特徴とするクラッシュボックスである。
この本発明に係るクラッシュボックスでは、クラッシュボックスの軸方向の全長をTとした場合、(i)溝部を、一方の端部から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置から他方の端部までの範囲に設けること、(ii)溝部を、一方の端部から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置から他方の端部までの範囲の全てに設けること、又は(iii)クラッシュボックスの横断面積が、一方の端部から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置までの範囲の少なくとも一部において、他の部位よりも小さいことが、それぞれ望ましい。
これらの本発明に係るクラッシュボックスでは、蛇腹状の座屈が、溝部と残余の領域とが交互に反対方向へ変形することにより、発生することが、例示される。
これらの本発明に係るクラッシュボックスでは、溝部を有する幅aの辺と溝部の輪郭線との交点の内角αが、辺の端点の内角β以上であることが望ましい。
これらの本発明に係るクラッシュボックスでは、溝部の断面形状が、台形状、曲線を有する形状、三角形状若しくは四角形状又はこれらの形状を二つ以上組み合わせた形状であることが望ましい。
さらに、これらの本発明に係るクラッシュボックスは、自動車に装着されるバンパーに負荷される衝撃エネルギーを吸収するための部材である。
本発明により、隔壁の追加や板厚の増加による重量の増加や軸方向での屈曲を招くことなく、軸方向へ安定して蛇腹状に座屈することによって所定の衝撃吸収量を確保することができるクラッシュボックスを提供することができる。
次に、本発明に係るクラッシュボックスを実施するための最良の形態を、参考の形態とともに添付図面を参照しながら詳述する。
(参考の形態)
この参考の形態の説明では、溝部が、横断面において、閉断面をなす略多角形を構成する複数の頂点のうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域であってこの辺の端点を除く位置に、最大の輪郭の内側へ凸となる、筒体の軸方向に延びる溝部を有する形状に設けられ、かつ、一の辺からこの領域を除いた残余の領域が直線に形成される場合を例にとる。
参考の形態のクラッシュボックスは、軸方向へ負荷される衝撃荷重を受けて蛇腹状に座屈することにより衝突エネルギを吸収するクラッシュボックスである。そして、軸方向の少なくとも一部の横断面形状が、略多角形を構成する複数の頂点を有する閉断面であり、かつ、閉断面の外側へ向けたフランジを具備しない形状である。さらに、軸方向の少なくとも一部の横断面形状が、略多角形を構成する複数の頂点のうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域でかつこの辺の端点を除く位置に輪郭の内側へ凸となる、筒体の軸方向に延びる溝部を有する形状である。
つまり、参考の形態では、クラッシュボックスの横断面形状を、(i)略多角形からなる閉断面とすること、(ii)閉断面の外側へ向けたフランジを具備しないこと、及び(iii)略多角形を構成する複数の頂点のうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域でかつこの辺の端点を除く位置に輪郭の内側へ凸となる溝部を有する形状であること、(iv)溝部を有する辺の一部の領域を除いた辺の残余の領域が直線に形成されることという4要素(i)〜(iv)を全て備える形状とする。
これにより、クラッシュボックスが扁平な横断面形状を有する場合であっても、隔壁の追加や板厚の増加による重量の増加や軸方向での屈曲を招くことなく、衝撃荷重を負荷されると、軸方向へ蛇腹状に安定して座屈することにより所定の衝撃吸収性能を確保する。そこで、参考の形態のクラッシュボックスの原理を説明する。
説明を行うための対象材料として、590MPa級の1.6mm厚の鋼板からなり、長さが200mmであるクラッシュボックスを用いた。このクラッシュボックスの横断面形状は、(a)長辺の長さが80mm、短辺の長さが60mmの四角形又は一辺の長さが35mmの正八角形をなし、(b)外向きのフランジを有さないとともに(c)台形形状の溝部を有する多角形形状とし、そのうちの対向する2辺の長さを延ばすことによって八角形の扁平度を様々に変更した。これらのクラッシュボックスについてFEM数値解析を行うことにより、座屈安定性に対する溝部の形状の効果を調査した。その結果、以下に列記する参考の形態のクラッシュボックスの原理[原理1]〜[原理3]を得た。
[原理1]例えばプレス成形等によって成形された2つ以上の部材を、例えばスポット溶接等により接合する際の接合代となるフランジを具備するクラッシュボックスと、このフランジを具備しないクラッシュボックスとのそれぞれに衝撃荷重を負荷したときの圧壊の挙動を、FEM数値解析によって分析した。
図1は、FEM数値解析による四角形の横断面を有するクラッシュボックスの圧壊の様子を示す説明図であり、図1(a)はフランジを具備する場合を示し、図1(b)はフランジを具備しない場合を示す。
図1(a)に示すように、クラッシュボックスがフランジを具備すると、衝撃荷重を負荷されたクラッシュボックスに生じる座屈が極めて不安定になり、クラッシュボックスは圧壊の途中で、長手方向で折れ曲がる。これに対し、図1(b)に示すように、クラッシュボックスがフランジを具備しないと、クラッシュボックスは長手方向で折れ曲がることなく安定して蛇腹状に座屈する。
[原理2]正八角形の横断面形状を有するクラッシュボックスを用い、正八角形から対向する2辺の長さを徐々に大きくした扁平な形状の八角形の圧壊の様子を図2に示す。扁平度を増していくと、圧壊時の座屈が安定しなくなって複雑な形状となり、次第に圧壊時の座屈が不安定になる。
[原理3]この際に、座屈が不安定となる扁平な八角形の長辺部に溝部を設けることにより、座屈を安定にすることができる。
図3は、扁平な八角形の横断面を有するクラッシュボックス10の長辺部12の一部に、台形状に溝部14を設けた状況を示す説明図である。この例では、溝部14は、幅W及び深さdの寸法で対称な位置に二つ設けられている。
クラッシュボックス10の横断面形状を図3に示す形状とすること、具体的には(i)略多角形を構成する複数の頂点A〜Pを有する閉断面とすること、(ii)この閉断面の外側へ向けたフランジを具備しないこと、(iii)複数の頂点A〜Pのうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面(図3における図形A−B−C−D−I−J−K−L−A)の内側へ凸となる溝部14を、この基本断面を構成する辺12(A−L)及び辺12(D−I)のそれぞれの一部の領域で頂点A、D、I、Lをいずれも含まない位置に一つ有する形状であること、及び(iv)溝部14を有する辺12(A−L)及び辺12(D−I)の一部の領域を除いた辺の残余の領域が直線に形成されること、という4要素(i)〜(iv)を全て備える形状とすることにより、衝撃吸収性能を発揮でき、安定して座屈が起こり、クラッシュボックス10は蛇腹状に座屈する。すなわち、このクラッシュボックス10は、衝撃荷重を受けて座屈することにより、溝部14とこの溝部14によって分割されて残った直線部分とが交互に変形することにより、蛇腹状に座屈する。
参考の形態のクラッシュボックス10がこのような優れた作用効果を奏する機構は、前述のFEM数値解析の結果等を勘案して総合的に判断すると、以下のように考えられる。
辺12に設ける溝部14は、上述した基本断面(図3における図形A−B−C−D−I−J−K−L−A)の内側へ凸となっている。このため、衝撃荷重が負荷された際に溝部14、14の変位は、図形A−B−C−D−I−J−K−L−Aの内側を指向する方向となる。
これに対し、基本断面(図形A−B−C−D−I−J−K−L−A)を構成する頂点A、B、C、D、I、J、K及びLの変位は、図形A−B−C−D−I−J−K−L−Aの外側を指向する方向となる。
このため、溝部14、14の変位方向と、頂点A、B、C、D、I、J、K及びLの変位方向とは、互いに反対向きとなり、それぞれの変位が互いに打ち消され合う。
このため、クラッシュボックス10が座屈の途中で一方向へ折れ曲がるといった大きな崩れを生じ難い。さらに、溝部14で座屈が発生する時期と、各頂点A〜Pで座屈が発生する時期とが異なる。このため、座屈の挙動が安定する。
そして、この溝部14が形成される範囲についての好適条件をFEM解析により調査した。この調査では、正四角形、正六角形、正八角形、正十角形の圧壊時のFEM解析を行って、各多角形を構成する辺の長さの好適な範囲を検討した。
FEM解析の結果を図4にグラフで示す。図4のグラフにおける横軸はl(辺の長さ)/t(板厚)を示し、縦軸Sは70%圧壊での単位断面周長当りの平均荷重(kN/mm)を示す。
図4にグラフで示すように、一つの辺の長さlが板厚tに対して、4<(l/t)<65の範囲を満足すれば、多角形の角数には関係なく安定した変形が得られ、衝撃吸収性能が安定して確保される。すなわち、図4に示すグラフにおいて、(l/t)が4を僅かに下回る3.6であると、クラッシュボックス10が蛇腹状に座屈せずに折れ曲がりを生じ、吸収エネルギを確保できなくなることがある。一方、(l/t)が4を僅かに上回る4.7であると、クラッシュボックス10は折れ曲がりを生じることなく蛇腹状の望ましい座屈が得られ、吸収エネルギを十分に確保できる。
一方、同図に示すグラフにおいて、(l/t)が65を僅かに下回る64であると、蛇腹状の座屈が得られ吸収エネルギを十分に確保できる。一方、(l/t)が65以上であるとクラッシュボックス10の全体の曲がりを生じるために吸収エネルギ量は低下する。
以上の結果から、溝部14が、この溝部14を有する辺の幅をaとし、一つの溝部14の開口幅をWiとし、クラッシュボックス10の板厚をtとし、上記辺に設けられた溝部14の個数をnとし、距離aの辺がn個の溝部14によって分割されて残った(n+1)個の残余の領域の一つの領域の幅をXjとした場合に、下記(1)式及び(2)式を満足するように、設けられることが望ましい。
4t<Wi<65t i=1〜nの間の自然数 ・・・・・(1)
4t<Xj<65t j=1〜(n+1)の間の自然数・・・・(2)
ただし、ΣWi+ΣXj=aであり、かつΣWiは、幅aの辺に形成された溝部の開口幅Wiの総和であり、溝部の開口幅は、幅aの辺と溝部の輪郭線との2つの交点の間の距離であり、ΣXjは前記幅Xjの総和である。
より好ましくは、図4のグラフにおいて、顕著に平均荷重が増加する範囲として、
4t<Wi<35t i=1〜nの間の自然数 ・・・・・(1a)
4t<Xj<35t j=1〜(n+1)の間の自然数・・・・(2a)
である。
なお、溝部14の深さdは、この溝部14の開口幅Wiの0.3未満と小さ過ぎる場合には、溝部14の強度が溝部14を構成しない他の頂点の強度に対して弱くなり、座屈が不安定となり易い。このため、溝部14の深さdは、溝部14の開口幅Wiの0.3倍以上であることが望ましい。
すなわち、一つの溝部14の開口幅Wiは、クラッシュボックス10の板厚をtとしたとき、4t<Wi<65tを満足する。Wiが4t以下である場合には、溝部14の座屈に対する強度が、多角形をなす他の頂点A、B、C、D、I、J、K、Lよりも過剰に高くなり、圧壊中に曲がり等の座屈不安定を生じるおそれがある。一方、Wiが65t以上である場合は、逆に溝部14を設けることの効果が弱まるおそれがある。このような関係はn個数のいずれについても満足される。
また、本参考の形態における溝部14は、多角形のいずれの辺に存在しても良いし、溝部14の個数は一の辺に2以上であってもよい。ただし、溝部14を、基本断面の頂点A、B、C、D、I、J、K及びLのいずれかを含む位置に設けると、特許文献4に記載された発明と同様に、その頂点の強度が過剰に上昇する。このために座屈が不安定となって、かえって衝撃吸収量が不足するおそれがあるとともに、圧壊の特に初期にクラッシュボックス10に生じる最大反力が他の部材の強度を超え、他の部材が損傷するおそれもある。
次に、溝部14が形成された一部の領域を除いた残余の領域について説明する。
図3において、辺12にn個の溝部14を設けた場合、この辺は溝部14によって(n+1)個の新たな直線部分に分割されることになる。このとき、(n+1)個の分割された各直線部分の幅をXjとすると、(2)式を満足する。
4t<Xj<65t j=1〜(n+1)の間の自然数・・・・・(2)
この幅Xjが、4t以下又は65t以上である場合には、十分な吸収エネルギが得られない。
これらの関係を図5に具体的に示す。図5には幅aを有する辺12上に、溝部14を3つ設けた場合を示す。各溝部14の開口幅W1、W2、W3が、いずれも、板厚tの4倍より大きいとともに板厚tの65倍よりも小さい。同時に、幅aの辺12が分割されて残存する4つの直線部分の幅X1、X2、X3、X4のいずれもが板厚tの4倍より大きいとともに板厚tの65倍よりも小さい。
以上の説明では、溝部14の横断面形状が台形である形態を例にとった。しかし、この形態に限定されるものではない。この形態以外に、溝部の横断面形状は、曲線を有する形状、三角形状若しくは四角形状又はこれらの形状を二以上組み合わせた形状であってもよい。
また、この溝部14の底部の形状は平坦面でなくともよい。溝部14の断面形状の幾つかの例を図6(a)〜図6(d)にまとめて示す。図6(a)は円弧を有する形状に形成された場合を示し、図6(b)は四角形状に形成された場合を示し、図6(c)は三角形状に形成された場合を示し、さらに、図6(d)は三角形の一部と円弧を有する形状とを組み合わせた形状に形成された場合を示す。
図7は、図3と同様の図面であって、同一符号は同一部材を示す。
本参考の形態では、図7に示すように、溝部14の輪郭線と辺との交点Mの内角αが、辺の端点Lの内角β以上であること、すなわち図7においてα≧βであることが好ましい。αがβ未満では、溝部14の強度が基本断面の頂点A、D、I、Lの強度を上回り、座屈が不安定になり易い。
本参考の形態のクラッシュボックス10は、十分な吸収エネルギを確保できるが、圧壊開始時の初期荷重が高くなり問題となることがある。このため、他の部材との関係によっては、高い初期最大荷重により他の部材を損傷するおそれがある。そこで、本参考の形態では、初期最大荷重を低減するために、クラッシュボックス10の軸方向の全長をTとした場合に、クラッシュボックスの横断面積が距離(T×0.3)離れた位置までの範囲において他の部位よりも小さいように設ける。例えば、一方の端部から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置までの範囲の少なくとも一部の領域において、距離(T×0.3)離れた位置から一方の端部15へ向かうにつれて横断面積が徐々に減少するように、設ける。
次に、横断面積を減少させる軸方向の長さと、初期最大荷重の低減効果との関係を説明する。
図8は、本参考の形態のクラッシュボックス10を示す説明図である。同図に示すように、扁平度2.0で全長がTである八角形断面の筒体に、開口幅Wが37.5tである溝部14を設けて、クラッシュボックスとした。本参考の形態では、衝撃荷重が負荷される一方の端部15における横断面積を、他方の端部16における横断面積の60%とした。そして、一方の端部15から(T×0.3)以下の長さの範囲でこの横断面積を徐々に増加させ、この範囲を脱する位置の横断面積を、他方の端部16における横断面積と同じとした。そして、軸方向へ部材長の70%を圧壊する条件で解析を行って、初期最大荷重の大小を検討した。
検討結果を図9にグラフで示す。図9のグラフにおける横軸Uは、断面積を減じる部位の長さ/部材長Tを示す。また、左側の縦軸Vは、初期最大荷重比(断面積を減じない場合を1とする)を示し、右側の縦軸Zは、70%圧壊時の吸収エネルギ比(断面積を減じない場合を1とする)を示す。また、図9のグラフでは、黒四角印は初期最大荷重比を示し、黒丸印は吸収エネルギ比を示す。
図9にグラフで示すように、一方の端部15の断面積を減少させない場合に比較すると、一方の端部15から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置までの範囲の少なくとも一部において、所定の位置から一方の端部に向かうにつれて横断面積を徐々に減少させることにより、初期最大荷重の低減効果が得られ、かつ、衝撃エネルギ吸収量の大幅な低下を抑制できる。
また、図8に示す参考の形態とは異なり、図10に示すように、この範囲では、一方の端部15から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置から他方の端部までの範囲にのみ溝部14を設けるようにしてもよい。
このように、本参考の形態では、初期最大荷重を低減するとともに衝撃エネルギ吸収量の大幅な低下を抑制するために、一方の端部15から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置までの範囲の全部又はこの範囲の一部において、(1)図10に示すように、安定座屈のための溝部14を設けないことによって、この範囲の部材をあえて不安定座屈として初期最大荷重を低減すること、または(2)図8に示すように、一方の端部15の横断面積を他方の端部16における横断面積の60%とし、一方の端部15から(T×0.3)以下の長さの範囲でこの横断面積を徐々に増加させ、この範囲を脱する位置の横断面積を、他方の端部16における横断面積と同じとすること、のいずれかによって、初期最大荷重の低減効果が得られるとともに、衝撃エネルギ吸収量の大幅な低下を抑制できる。
なお、図8では、距離(T×0.3)を超える範囲の横断面積は、他方の端部の横断面積と同じとしたが、必ずしも一定の断面積でなくてもよい。
これら(1)又は(2)の手段を部材長Tの30%を超える範囲にまで施してしまうと、初期座屈以後の座屈にまで影響し、安定座屈が得られなくなる。換言すれば、本参考の形態で規定する溝部14は、クラッシュボックス10に衝撃荷重が作用する一方の端部15の反対の他方の端部16から軸方向の70%以上の領域にわたって設けられることが望ましい。
なお、図8、10に示す参考の形態では、他方の端部16から軸方向へ70%以上の領域の全域において溝部14を連続して設けたが、溝部14はこの領域の全域に連続して設ける必要はなく、この領域内に断続的に設けるようにしてもよい。
なお、図8に示す(2)の手段は、図8からも分かるように、クラッシュボックスの軸方向の全長をTとした場合にこのクラッシュボックスの横断面積が距離(T×0.3)離れた位置までの範囲の少なくとも一部において他の部位よりも小さい限り、横断面積を急激に又は徐々に減じるように構成してもよい。また、これら(1)又は(2)の手段の他に、距離(T×0.3)離れた位置までの範囲の少なくとも一部に、連続的又は断続的につぶれの起点となるビードを形成してもよい。
本参考の形態のクラッシュボックス10は、周知慣用の適宜手段により製造すればよく、特定の製造法には限定されない。例えば、中空材に押出、ハイドロフォーム(液封成形)若しくはロールフォーミング等の加工をいずれか一つあるいは複数行うことや、所定厚さの鋼板にプレス曲げ、絞り、巻き若しくはロールフォーミング等の加工をいずれか一つあるいは複数行うことにより、多角形の横断面形状を有する筒体としてから適宜箇所を接合することにより閉断面形状としてもよい。この際の接合方法としては、例えばスポット、カシメ若しくはスポット摩擦攪拌接合等の断続接合や、アーク(プラズマ)、レーザー若しくは摩擦攪拌接合等の連続接合等を用いればよい。
また、成形された後のクラッシュボックス10に高周波焼き入れ、レーザ焼き入れ、浸炭、窒化等の後処理を行えば、クラッシュボックス10の強度をさらに高めることができるため、望ましい。なお、テーラードブランク、さらには軽量化のために薄鋼板、アルミニウム合金以外の素材等を利用して本参考の形態のクラッシュボックス10を構成すれば高荷重化を図ることもできる。
このように、本参考の形態のクラッシュボックス10は、隔壁の増加や板厚の増加に起因した重量の増加や軸方向での屈曲を招くことなく、軸方向へ安定して蛇腹状に座屈することができ、これにより、所定の衝撃吸収性能を確保することができる。このため、このクラッシュボックス10を、フロントサイドメンバの先端に、例えば締結や溶接等の適宜手段によって装着すれば、車体の重量増加を殆ど伴うことなく、車体の安全性の向上と、軽衝突による車体の損傷を略解消することによる修理費の低減とを、ともに図ることができる。
(実施の形態1)
次に、実施の形態1に係るクラッシュボックス10−1を説明する。
本実施の形態は、閉断面をなす略多角形を構成する複数の頂点のうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域で、かつ該辺の端点を含まない位置に、基本断面の内側へ凸となる、筒体の軸方向に延びる溝部を有する点では、上述した参考の形態と共通する。
しかし、本実施の形態では、この一部の領域を除いた残余の領域を、参考の形態のように直線に形成するのではなく、基本断面の外側に凸となる曲線、又は基本断面の内側に凸となる曲線に形成することにより、上述した参考の形態をさらに発展・改良するものである。
そこで、以降の説明では、上述した参考の形態に対する相違点を中心に説明し、共通する部分については、重複する説明を適宜省略する。
一般的に、クラッシュボックスの衝突性能は、クラッシュボックスが座屈する荷重(座屈荷重)によって支配される。この座屈荷重は、クラッシュボックスの横断面において剛性が高い頂点が座屈変形する際の荷重によって、略支配される。
一方、荷重が上昇するときは頂点に圧縮のひずみが蓄積され、座屈するまでに頂点には圧縮変形が進行する。その後、この頂点の座屈が発生すると荷重は急激に低下する。この荷重の低下を抑制するためには、頂点の座屈をより局所的に小さいエリアに限定して発生させること、及び、頂点の間に形成される面部に座屈しわが発生及び成長する際に発生する曲げ変形の変形応力を増大させることが、ともに重要である。
そこで、座屈時の荷重を上昇させるためには、頂点以外の面部を、容易に座屈せずに圧縮変形を促進することができる形状とし、圧縮変形が発生している領域を拡大することが望ましい。また、曲げ変形時の変形応力を高めるために、座屈しわが発生及び成長する面部に加工硬化を生じさせておけば、座屈開始までに圧縮変形を促進して曲げ変形時の変形応力を高めることができ、これにより、座屈時における上述した荷重の急激な低下を抑制できる。
つまり、本実施の形態において、残余の領域を、輪郭の外側に凸となる形状、又は輪郭の内側に凸となる形状に形成する理由は、面部の剛性を高め、座屈の開始までにこの面部にも圧縮ひずみを蓄積させることである。これにより、座屈荷重を高めて圧縮ひずみを蓄積すること(加工硬化)により座屈しわの発生及び成長時の変形抵抗を高めて、座屈時における荷重の低下を抑制することができる。
しかし、クラッシュボックスの横断面形状によっては、残余の領域を曲線に形成することにより、面部の剛性が高まり、これにより、面部と頂点との間の剛性バランスが崩れ、頂点の座屈が不安定となる場合がある。したがって、残余の領域に曲線の形状を形成して面部の剛性を高める場合には、頂点の剛性がもともと高い横断面形状を有するクラッシュボックスに適用することが望ましい。
図11は、本実施の形態のクラッシュボックス10−1の横断面を示す説明図である。
本実施の形態では、図11に示すように、頂点(A−L、D−I)間に高性能かつ安定した座屈を図るために溝部14、14を設け、かつ面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に各種曲率ρを有する曲線に形成した横断面形状を有するクラッシュボックス10−1について、FEM解析を行った。
このFEM解析では、クラッシュボックス10−1の材料を590MPa級の1.0mm厚の鋼板とし、ひずみ速度依存性はCowper−Symonds則により考慮した。また、曲率の付与条件は、図11に示した対象部位において頂点(A−L、D−I)間の幅28mmの面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に対して、外側又は内側に向けて高さhが0.5〜15.0mmの曲線を形成するように曲率を付与し、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)が直線に形成された場合に対する衝突性能を解析した。
性能は、クラッシュボックスの単位重量に対し、部材長の70%圧壊変位までの吸収エネルギ比で比較した。解析に用いたクラッシュボックスの長さTは200mmである。各条件間の比較は、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)が直線に形成された場合に対して相対的に行った。結果を図12にグラフでまとめて示す。
図12のグラフにおける横軸はh/Xを示し、縦軸Yは単位重量当たりの衝突性能(%)を示しており、面部が直線に形成された場合には100%である。また、このグラフでは、黒丸印は面部の外側へ向けて凸形状を設けた場合を示し、白丸印は面部の内側へ向けて凸形状を設けたことを示す。
図12のグラフから理解されるように、(h/X)が0.075以下の領域では内側に凸形状を設け、(h/X)が0.075〜0.375の領域では外側に凸形状を設け、さらに、(h/X)が0.26以上の領域では内側に凸形状を設けることにより、単位重量当たりの衝突性能を向上できる。
このように、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に曲率を付与することにより、衝突性能をさらに向上させることができる。
図13は、溝部14を有するクラッシュボックス10−1の面部に曲率を付与した場合の頂点及び面部の弾性座屈によるたわみの状況を模式的に示す説明図であり、図13(a)は外側に凸となる曲率を付与した場合を示し、図13(b)は内側に凸となる曲率を付与した場合を示す。
図13(a)に示すように、外側に凸となる曲率を付与すると、付与した曲率が小さい場合は衝突の初期における断面の広がりが大きくなる。このため、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)が直線である場合に比較すると、断面が外側へ広がる弾性座屈を生じて頂点(A〜P2)において軸方向へ作用する圧縮ひずみ量が小さくなり、座屈荷重が低下する。
しかし、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に付与した曲率がある程度大きくなると、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)自体の剛性が高まり、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)においても圧縮のひずみが高まり、座屈荷重が上昇する。また、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に付与する凸の高さを、h/Xで0.075〜0.375程度と大きくすることにより、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)の塑性変形も促進されることから、座屈しわの成長時の変形抵抗が高まって座屈発生後の荷重低下が抑制される。これにより、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)が直線である場合よりも衝突性能が向上する。
一方、図13(b)に示すように、内側に凸となる曲率を付与すると、付与した曲率が小さい場合は衝突の初期における頂点(A〜P2)及び面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)それぞれにおける弾性座屈の方向が異なる。これにより、頂点(A〜P2)の広がりが抑制され、より大きい圧縮のひずみが蓄積される。これによって、座屈荷重が大きくなり、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)が直線である場合よりも衝突性能が向上する。
しかし、付与する曲率がさらに大きくなると、クラッシュボックス10−1の全体において繰り返し発生する座屈モードが不安定となり、衝突性能は低下する。これは、頂点(A〜P2)及び面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)へ付与する凸の高さが、h/Xで0.075〜0.26程度と大きくなることにより、成長する座屈しわを巻き込んで座屈が進行するような形態となるため、繰り返し発生する座屈が不安定となり、クラッシュボックス10−1の全体での衝突性能の悪化を招くことになる。
しかしながら、付与する凸の高さを、h/Xで0.26〜0.55程度とさらに大きくすると、外側へ向けて凸となる曲率を付与した場合と同様に、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)の塑性変形が促進され、座屈発生までの座屈荷重を上昇させるとともに、座屈しわの成長時の変形抵抗も高まるため、座屈発生後の荷重低下も抑制でき、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)が直線である場合よりも衝突性能が向上する。
本実施の形態のように、頂点(A〜P2)の座屈強度を制御するとともに面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に対しても適度な曲率を付与することにより、衝突性能をさらに向上することができる。
なお、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に付与する曲率の最適値は、クラッシュボックス10−1の全体の断面剛性と、面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)の剛性、すなわち面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)の長さによって、変化すると考えられる。
一方、本実施の形態のクラッシュボックス10−1が対象とする自動車の車体用のクラッシュボックス10−1は、他の部材との寸法の取り合いの関係で、適用でき得る断面積には上限がある。また、他の部材を接合する際の基準平面を形成することも考慮する必要がある。
このため、高さhは50mm以下とすることが望ましい。
次に、本発明の参考例及び実施例1を参照しながら、さらに具体的に説明する。
(参考例)
本参考例では、上述した参考の形態のクラッシュボックスの効果をさらに説明するため、下記の要領で衝突試験を行った。
板厚1.6mmの590MPa級の高張力鋼板を素材として折り曲げ加工を行って多角形断面とし、突き合わせ面を溶接することによって、図14に示す横断面形状を有する筒体から成るクラッシュボックス10を構成した。図14に示すように、形成した溝部14によって2つに分割された辺の一方の長さをX5とし、他方の長さをX6とし、さらに、溝部14の深さをdとした。
そして、200kgfの重量の錘体を11.9mの高さからこのクラッシュボックス10に対して自由落下させ、55km/hの速度でクラッシュボックス10に軸方向へ衝突させ、クラッシュボックス10の軸方向への圧壊時の変形抵抗を、圧電式のロードセルで測定した。なお、クラッシュボックス10の長さTはいずれも180mmとし、130mm圧壊までの吸収エネルギを比較した。
なお、このクラッシュボックス10を自動車車体のフロントサイドメンバの前端部に配置した場合の衝突試験では、このクラッシュボックス10がまず圧壊し、次にフロントサイドメンバが圧壊する。したがって、この試験は衝突試験における前半の現象とよい相関を示す。
表1における参考例1から参考例3では、図14に示す幅aを130mmとし、上下の辺に溝部を一つずつ具備する形状とするとともに、内角αを135°とし、内角βを106°とした。
表1における参考例4では、参考例1の形状のうち内角αを100°とし、内角β(106°)よりも小さくした。また、例5では、幅aを130mmとし、上下の辺に溝部を二つずつ具備することとし、内角αは107°とした。
表1における参考例6では、参考例1の形状のうち、衝撃荷重を負荷される一方の端部から軸方向へ30mmの長さの範囲には、溝部14を設けないこととした。
表1における参考例7では、参考例1の形状のうち、衝撃荷重を負荷される一方の端部の側の断面積が参考例1の断面積の0.6倍となるように断面形状の各寸法を0.77倍に縮小させた形状とした。この端部の形状と参考例1の断面形状を軸方向への長さ30mmの範囲で滑らかにつなぎ、以下の部分150mmは参考例1と同一の形状とした。
表1における参考例8では、参考例1の形状のうち、衝撃荷重を負荷される一方の端部から軸方向へ80mmの長さの範囲には溝部14を設けないこととした。
表1における参考例9としては、一辺の長さが35mmの正八角形のうち、対向する一組の2辺の長さを119.5mmに拡大して、断面の扁平率が2.0である形状とした。
各条件及び代表寸法を表1にまとめて示す。
Figure 0004036234
また、初期最大荷重および部材長の70%圧壊までの吸収エネルギ量を表2に示す。
Figure 0004036234
表2に示す結果から、適正な溝部を設けることにより、従来は利用することができなかった扁平な多角形の横断面形状を有するクラッシュボックスを用いることができ、さらに、衝撃荷重を負荷される一方の端部の側を適正な範囲で形状変更することにより、初期最大荷重の低減も可能となることが確認された。
本実施例1では、実施の形態1のクラッシュボックス10−1の効果を検証するため、下記の衝突試験を行った。
検証に用いたクラッシュボックスの部材形状は、図11に示す横断面形状を有する部材であり、図11に示す矢印位置の面部(D−E1、H1−E2、H2−I、L−M1、P1−M2、P2−A)に曲率ρを付与して性能を比較した。この部材の部材長Tはいずれも200mmである。また、この部材に用いた薄鋼板は、引張強度が590MPa級であり、板厚が1.0mmである。
衝突性能の試験は、200kgfの重量の錘体を11.9mの高さから自由落下させ、55km/hでクラッシュボックスの軸方向へ衝突させることにより、行った。そして、クラッシュボックスの軸方向の圧壊時の変形抵抗を圧電式のロードセルを装着することにより測定し、部材長の70%が圧壊するまでに吸収したエネルギ量の大小により衝撃吸収性能の良否を評価した。
形状付与の条件と、試験にて得られた70%圧壊変位までの吸収エネルギの結果とを表3にまとめて示す。
Figure 0004036234
表3にまとめて示すように、比較例(参考例)である直線形状のものに比較すると、発明例では、面部に曲率形状を付与することにより、衝撃吸収性能が向上する。
発明例は、衝突時に軸方向へ圧壊するクラッシュボックスに関して、その圧壊過程での頂点以外の部位である面部においても、軸方向の圧縮ひずみの蓄積と、その部位において座屈しわの形成時における変形応力とをともに高めることによって、優れた衝撃吸収性能を得るものである。
このためには、面部においても形状(曲率)を付与し、この面部の剛性を向上させるとよい。
また、本発明例のクラッシュボックスにレーザー焼き入れ、浸炭さらには窒化を行ったり、適材配置を可能とするテーラードブランク、さらなる軽量化のために薄鋼板、アルミニウム合金以外の素材等を利用して本例のクラッシュボックスを構成すれば、さらなる高荷重化を図ることができる。
FEM数値解析による四角形の横断面を有するクラッシュボックスの圧壊の様子を示す説明図であり、図1(a)はフランジを具備する場合を示し、図1(b)はフランジを具備しない場合を示す。 正八角形から対向する2辺の長さを徐々に大きくした扁平な形状の八角形の圧壊の様子を示す説明図である。 扁平な八角形の横断面を有するクラッシュボックスの長辺部の一部に、台形状に溝部を設けた状況を示す説明図である。 FEM解析の結果を示すグラフである。 長さaを有する辺上に、溝部を3つ設けた場合を示す説明図である。 図6(a)〜図6(d)は、溝部の断面形状の幾つかの例をまとめて示す説明図である。 扁平な八角形の横断面を有するクラッシュボックスの長辺部の一部に設けられた溝部の形状例を示す説明図である。 クラッシュボックスの長手方向の端部の形状例を示す説明図である。 参考の形態の結果を示すグラフである。 クラッシュボックスの長手方向の端部の形状例を示す説明図である。 実施の形態1の衝撃吸収部材の横断面を示す説明図である。 実施の形態1の結果を示すグラフである。 溝部を有する衝撃吸収部材の面部に曲率を付与した際の断面内での頂点及び面部の弾性座屈によるたわみの状況を模式的に示す説明図であり、図13(a)は外側に凸となる曲率を付与した場合を示し、図13(b)は内側に凸となる曲率を付与した場合を示す。 参考例のクラッシュボックスの横断面形状の一例を示す説明図である。
符号の説明
10、10−1 クラッシュボックス
12 辺
14 溝部
15、16 端部
A〜P 頂点

Claims (6)

  1. 軸方向の一方の端部から該軸方向へ向けて負荷される衝撃荷重により蛇腹状に座屈できることにより衝突エネルギを吸収するための筒体からなるクラッシュボックスであって、前記軸方向の少なくとも一部の横断面形状は、略多角形からなる閉断面であり、該閉断面の外側にフランジを具備しないとともに、前記略多角形を構成する複数の頂点のうちの一部を直線で連結して得られる多角形のうちで最大の面積を有する多角形として規定される基本断面の少なくとも一の辺の一部の領域でかつ該辺の端点を除く位置に前記基本断面の内側へ凸となる、前記筒体の軸方向に延びる溝部を有する形状であり、さらに、前記溝部を有する前記辺の前記一部の領域を除いた前記辺の残余の領域は、曲線に形成されることを特徴とするクラッシュボックス。
  2. 前記クラッシュボックスの軸方向の全長をTとした場合、前記溝部を、前記一方の端部から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置から他方の端部までの範囲に設ける請求項1に記載されたクラッシュボックス。
  3. 前記クラッシュボックスの軸方向の全長をTとした場合、前記溝部を、前記一方の端部から軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置から他方の端部までの範囲の全てに設ける請求項1に記載されたクラッシュボックス。
  4. 前記クラッシュボックスの軸方向の全長をTとした場合、該クラッシュボックスの横断面積は、前記一方の端部から前記軸方向へ距離(T×0.3)離れた位置までの範囲の少なくとも一部において、他の部位よりも小さい請求項1に記載されたクラッシュボックス。
  5. 前記蛇腹状の座屈は、前記溝部と前記残余の領域とが交互に反対方向へ変形することにより、発生する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたクラッシュボックス。
  6. 前記溝部を有する幅aの辺と前記溝部の輪郭線との交点の内角(α)は、前記辺の端点の内角(β)以上である請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたクラッシュボックス。
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