JP3238077B2 - めっき鋼板の重ねレーザ溶接方法 - Google Patents

めっき鋼板の重ねレーザ溶接方法

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正恒 近藤
義昭 地切
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    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23KSOLDERING OR UNSOLDERING; WELDING; CLADDING OR PLATING BY SOLDERING OR WELDING; CUTTING BY APPLYING HEAT LOCALLY, e.g. FLAME CUTTING; WORKING BY LASER BEAM
    • B23K2103/00Materials to be soldered, welded or cut
    • B23K2103/02Iron or ferrous alloys
    • B23K2103/04Steel or steel alloys

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  • Laser Beam Processing (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車および自動車
部品、家電製品、産業機器などの製造において、鋼板に
耐食性をもたせるためにめっきを施された鋼板の、重ね
レーザ溶接を行う方法に関する。ここでめっき金属とし
ては、例えば、鉛、アルミニウム、亜鉛、すず、クロム
がある。
【0002】
【従来の技術】一般にめっきを施された鋼板を密着させ
て重ね、溶融溶接を行うと、めっき金属の蒸気のために
ピットが生じたり、溶接金属中に気泡が生じたりして、
安定して良好な溶接部品質を確保することは困難であ
る。これは、レーザ溶接においても例外ではない。この
ためめっき鋼板の重ね溶接では、鋼板間に隙間を設け
て、めっき金属及びその蒸気が溶接金属中に混入しない
ような方法が採られる。例えば、特開昭61−2718
9では、鋼板間に隙間を設ける方法として、塑性加工に
より亜鉛めっき鋼板間に空隙を設ける方法が開示されて
いる。
【0003】また、レーザビームをパルス状に照射し
て、めっき鋼板の欠陥のない重ね溶接を行う方法も考え
られている。例えば、特公平5−50278において開
示されている方法は、間欠したレーザ光をステップ状に
変化するように波形制御を加え、めっき鋼板の良好な重
ねレーザ溶接部を得ようとするものである。
【0004】一方、レーザビームを一定の基準軸に対し
振動させながら、ワークを基準軸に対して振動方向と直
角方向に相対的に駆動する、ビームの振動法が用いられ
ることがある。例えば、特公昭54−101596に記
載されている方法は、加工線と直角な方向にレーザビー
ムを振動させることで、振動方向に沿った温度勾配を緩
やかとし、突合せ溶接を良好に行うものである。
【0005】さらに、レーザ光を回転させる方法も試み
られている。例えば、特公昭54−116356に開示
されているものでは、突合せレーザ溶接において、突合
せギャップの裕度を広げることができるとされている。
また、板厚の違う2枚の鋼板の突合せ溶接にも用いられ
ている。しかし、振動や回転方法が従来、めっき鋼板の
重ね溶接に適用されることはなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】鋼板間に空隙を設ける
方法では、鋼板間に一定の隙間を再現性良く連続して設
けることは難しく、隙間が広くなりすぎて溶融金属が不
足し、溶接ビードが凹形状となって強度不足が生じた
り、部分的に隙間が無くなって溶接欠陥が残ったりと実
用上課題が多いものである。また、レーザ光をパルス状
に照射する方法では、種々のめっき種・めっき厚に対し
て再現性が悪く、広く一般に用いられることはなかっ
た。そこで本発明は、めっき鋼板の重ねレーザ溶接を簡
便かつ良好に行う方法を提供することを目的としてい
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するものであって、めっき鋼板の重ねレーザ溶接方法に
おいて、レーザビームを重ね合わせためっき鋼板上に集
光させ、レーザビームの光軸を基準軸を中心とする円運
動の軌跡の走査を行ないつつ、溶接個所を順次移動して
溶接を行ない、かつ基準軸を中心とするレーザビームの
光軸の前記円運動を、下記式(a)を満足する半径R、
周波数νで行うとともに、前記走査の幅は前記レーザビ
ームの光軸の基準軸を中心とするすべての方向に対し
て、前記レーザビームの集光スポット直径の0.2倍以
上、10倍以下であることを特徴とするめっき鋼板の重
ねレーザ溶接方法である。 0<α≦5 ・・・・・ (a) ただし、α=(1−β20.5 /(πβ)+(sin-1(β))/π−1/2 ここで、β=V0 /(2πνR) V0 :基準軸に対するめっき鋼板の相対移動の速度 ν:基準軸に対する光軸の円運動の周波数 R:基準軸に対する光軸の円運動の半径 π:円周率
【0008】また、めっき鋼板の重ねレーザ溶接方法に
おいて、レーザビームを重ね合わせためっき鋼板上に集
光させ、レーザビームの光軸を基準軸に対するめっき鋼
板の移動方向に長軸を持ち直角方向に短軸を持ちかつ短
径が長径の0.2倍以上であってこれら長軸と短軸の交
点を基準軸とする楕円運動の軌跡の走査を行ないつつ、
溶接個所を順次移動して溶接を行ない、かつ基準軸を長
軸と短軸の交点とするレーザビームの光軸の前記楕円運
動を、下記式(a)を満足する長径2R L 、周波数νで
行うともに、前記走査の幅は前記レーザビームの光軸の
基準軸を中心とするすべての方向に対して、前記レーザ
ビームの集光スポット直径の0.2倍以上、10倍以下
であることを特徴とするめっき鋼板の重ねレーザ溶接方
法である。 0<α≦5 ・・・・・ (a) ただし、α=(1−β20.5 /(πβ)+(sin-1(β))/π−1/2 ここで、β=V0 /(2πν L ) V0 :基準軸に対するめっき鋼板の相対移動の速度 ν:基準軸に対する光軸の楕円運動の周波数 2RL :基準軸に対する光軸の楕円運動の長径 π:円周率
【0009】
【発明の実施の形態】本発明はめっき鋼板の重ね溶接に
おいて、レーザビームを一定範囲内に走査しつつ溶接を
行う。図1はレーザビームの走査範囲の説明図である
が、この図で見るように、レーザビーム1を重ね合わせ
ためっき鋼板2上に集光させ、かつ前記レーザビームの
光軸7を、一定の走査範囲5、すなわち基準軸3を中心
とするすべての方向に対して、前記レーザビームの集光
スポット直径4の0.2倍以上、10倍以下の幅で走査
し、レーザ溶接を行うものである。このようにレーザビ
ームを走査することにより、欠陥を含んで凝固し始めて
いる部位に再度レーザ光を照射し、凝固を遅らせ、また
撹拌して欠陥を抑制できることを見いだした。
【0010】レーザビームの走査は、例えばレーザビー
ムの光路中のベンドミラーを駆動するなどの手段によ
り、2次元の軌跡の走査例えば溶接進行方向およびこれ
に直角な方向への2つの走査を組み合わせて行う。この
時それぞれの走査パターンには、例えば単振動(横軸に
時間をとって表せば正弦波)または等速往復運動(横軸
に時間をとって表せば三角波)がある。走査の基準軸3
は、走査範囲の大きさを0とした時に、機器構成上定ま
るレーザビームの光軸のことである。
【0011】さらに、レーザビームの集光スポット径4
は、1/e2 強度で定義される集光位置でのレーザビー
ムの平均直径とする。また、焦点距離、焦点位置、レー
ザ出力およびレーザ光の走査基準軸とめっき鋼板の相対
運動の速度は、ビームを走査しない場合に、溶接しよう
とするめっき鋼板と同厚の裸鋼板が良好に重ね溶接がで
きる条件を目安とする。
【0012】走査範囲をスポット径の0.2倍以上、1
0倍以下としたのは、この範囲内において良好な溶接部
を確保することができるからである。すなわち、0.2
倍未満では、撹拌できず溶接欠陥の低減効果が認められ
ず、10倍を超えると入熱が過大となって溶け落ちが生
じやすくなる。基準軸に対するレーザビームの光軸の走
査範囲の外周が円でない種々の走査パターンに対し、走
査径は基準軸を中心とするすべての方向に対する最大走
査幅と最小走査幅をもって定義する。すなわち、最大走
査幅は、集光スポット径の10倍以下とし、最小走査幅
は集光スポット径の0.2倍以上とする。
【0013】ここで上記のレーザビーム光軸の走査の一
つの典型的なパターンとして基準軸を中心とする円運動
をするものがある。円運動は、溶接線方向及びこれに直
角方向へのレーザビームの走査を同周期で位相が90度
ずれた単振動、すなわち横軸に時間をとって表せば正弦
波とすることによって実現することができる。
【0014】さらにこの場合望ましくは、基準軸3中心
とするレーザビームの光軸の円運動を、下記式(a)を
満足する半径R、周波数νで行う。 0<α≦5 ・・・・・ (a) ただし、α=(1−β20.5 /(πβ)+(sin-1(β))/π−1/2 ・・・・・ (b) ここで、β=V0 /(2πνR) V0 :基準軸に対するめっき鋼板の相対移動の速度 ν:基準軸に対する光軸の円運動の周波数 R:基準軸に対する光軸の円運動の半径 π:円周率
【0015】ここで、パラメータαは一般に、レーザビ
ームの光軸の軌跡の重なり程度を表しており、図2にお
いてα=(BD)/(D’D)で定義する。なお図2は
溶接速度3m/min、ビームの走査を直径0.5m
m、周波数100Hzの円運動としたときの軌跡を示し
ている。ただし、点B、D、およびD’は、基準軸に対
するレーザビームの走査と基準軸と鋼板の相対移動との
合成運動の、溶接進行方向に対する速度成分が0となる
点である。溶接進行方向に対する合成速度が0となる点
が1点しか存在しない場合、α=0とする。走査が円運
動の場合には、パラメータαは、前記式(b)で与えら
れる。
【0016】α=0に近い場合、図3に示す軌跡とな
り、α=5に近い場合、図4に示すような軌跡となる。
なお図3は溶接速度5m/min、ビームの走査を直径
0.5mm、周波数55Hzの円運動としたとき、図4
は溶接速度2.5m/min、ビームの走査を直径1.
5mm、周波数150Hzの円運動としたときの軌跡を
示している。α>0に制限したのは、レーザビームの軌
跡を十分に重ね、溶融金属の撹拌を行うために必要とな
るからであり、またα≦5と制限したのは、α>5とな
るとαが大きくなるに従ってスパッタの発生が激しくな
り、良好な溶接が行えなくなるからである。
【0017】また、レーザビームの走査を長軸と短軸の
交点を基準軸とする楕円とすることによっても同様の効
果を得ることができる。この時、楕円の長軸を溶接進行
方向に合わせることによって、溶融金属の撹拌をより効
果的に行うことができる。すなわち、基準軸3に対する
レーザビームの光軸7の走査を、基準軸3に対するめっ
き鋼板の移動方向に長軸を持ち、直角方向に短軸を持つ
楕円とし、かつ短径が長径の0.2倍以上とする。
【0018】さらにこの場合望ましくは、基準軸を長軸
と短軸の交点とするレーザビームの光軸7の楕円運動
を、下記式(a)を満足する長径2RL 、周波数νで行
う。 0<α≦5 ・・・・・ (a) ただし、α=(1−β20.5 /(πβ)+(sin-1(β))/π−1/2 ここで、β=V0 /(2πν L ) V0 :基準軸に対するめっき鋼板の相対移動の速度 ν:基準軸に対する光軸の楕円運動の周波数 2RL :基準軸に対する光軸の楕円運動の長径 π:円周率
【0019】楕円運動の場合に、長径と短径の比を短径
/長径≧0.2としたのは、短径が小さくなりすぎる
と、溶接進行方向への単純な振動に近づき、スパッタが
激しくなって良好な溶接ができなくなるからである。
【0020】
【実施例】実施例1 表1は、レーザ出力5kW、溶接速度3m/minで、
レーザビームを円状に走査し、周波数と直径を変えて亜
鉛めっき鋼板を溶接した結果を示している。レーザビー
ムの集光スポット径は0.5mmである。溶接欠陥の有
無判定にはX線透過試験と引張試験を併用して行った。
溶接品質の判定基準として、X線透過試験で欠陥が認め
られず、かつ溶接継手の強度が母材に比較して低下して
いないものを優、強度低下はほとんど認められないもの
のX線透過試験で若干の欠陥が認められるものを良、強
度が著しく低下するか又はX線透過試験で欠陥の認めら
れたものを不良とした。本発明の範囲外のものは良また
は不良であるのに対し、本発明の方法によるものはいず
れも優の結果となっている。
【0021】
【表1】
【0022】実施例2 表2は、レーザ出力5kW、溶接速度4m/minで、
レーザビームを溶接進行方向に長い楕円状に走査し、周
波数と直径を変えてアルミめっき鋼板を溶接した結果を
示している。レーザビームの集光スポット径は0.5m
mである。溶接部の品質を比較するために、溶接ビード
と直角方向に応力を印加して重ね継手の引張試験を実施
した。品質の判定基準は、適用対象にも依存するが、こ
こでは、同じサイズの母材引張強度と同等以上の強度で
あれば優、母材強度の90%以上の強度で良、90%未
満の強度で不良と判定している。本発明の範囲外のもの
は良または不良であるのに対し、本発明の方法によるも
のはいずれも優の結果となっている。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、めっき種、目付量に関
わらず、めっき鋼板の重ねレーザ溶接において、良好な
溶接部品質を簡便に実現することが可能であり、産業
上、その効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】レーザビームの走査範囲の説明図
【図2】レーザビーム光軸の鋼板上での軌跡を示すグラ
【図3】α≒0の時の、レーザビーム光軸の鋼板上での
軌跡を示すグラフ
【図4】α≒5の時の、レーザビーム光軸の鋼板上での
軌跡を示すグラフ
【符号の説明】
1 レーザビーム 2 めっき鋼板 3 基準軸 4 集光スポット径 5 走査範囲 6 めっき鋼板と基準軸の相対運動の方向 7 レーザビームの光軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小原 昌弘 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (72)発明者 宮崎 康信 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 昭61−202788(JP,A) 特開 昭59−92189(JP,A) 特開 昭54−116356(JP,A) 実開 平1−60792(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 26/00 B23K 26/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 めっき鋼板の重ねレーザ溶接方法におい
    て、レーザビームを重ね合わせためっき鋼板上に集光さ
    せ、レーザビームの光軸を基準軸を中心とする円運動の
    軌跡の走査を行ないつつ、溶接個所を順次移動して溶接
    を行ない、かつ基準軸を中心とするレーザビームの光軸
    の前記円運動を、下記式(a)を満足する半径R、周波
    数νで行うとともに、前記走査の幅は前記レーザビーム
    の光軸の基準軸を中心とするすべての方向に対して、前
    記レーザビームの集光スポット直径の0.2倍以上、1
    0倍以下であることを特徴とするめっき鋼板の重ねレー
    ザ溶接方法。0<α≦5 ・・・・・ (a) ただし、α=(1−β 2 0.5 /(πβ)+(sin -1 (β))/π−1/2 ここで、β=V 0 /(2πνR) 0 :基準軸に対するめっき鋼板の相対移動の速度 ν:基準軸に対する光軸の円運動の周波数 R:基準軸に対する光軸の円運動の半径 π:円周率
  2. 【請求項2】 めっき鋼板の重ねレーザ溶接方法におい
    て、レーザビームを重ね合わせためっき鋼板上に集光さ
    せ、レーザビームの光軸を基準軸に対するめっき鋼板の
    移動方向に長軸を持ち直角方向に短軸を持ちかつ短径が
    長径の0.2倍以上であってこれら長軸と短軸の交点を
    基準軸とする楕円運動の軌跡の走査を行ないつつ、溶接
    個所を順次移動して溶接を行ない、かつ基準軸を長軸と
    短軸の交点とするレーザビームの光軸の前記楕円運動
    を、下記式(a)を満足する長径2R L 、周波数νで行
    うともに、前記走査の幅は前記レーザビームの光軸の基
    準軸を中心とするすべての方向に対して、前記レーザビ
    ームの集光スポット直径の0.2倍以上、10倍以下で
    あることを特徴とするめっき鋼板の重ねレーザ溶接方
    法。 0<α≦5 ・・・・・ (a) ただし、α=(1−β 2 0.5 /(πβ)+(sin -1 (β))/π−1/2 ここで、β=V 0 /(2πνR L 0 :基準軸に対するめっき鋼板の相対移動の速度 ν:基準軸に対する光軸の楕円運動の周波数 2R L :基準軸に対する光軸の楕円運動の長径 π:円周率
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