JP3236783B2 - セラミック積層体の製造方法 - Google Patents

セラミック積層体の製造方法

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JP3236783B2 JP24314896A JP24314896A JP3236783B2 JP 3236783 B2 JP3236783 B2 JP 3236783B2 JP 24314896 A JP24314896 A JP 24314896A JP 24314896 A JP24314896 A JP 24314896A JP 3236783 B2 JP3236783 B2 JP 3236783B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はセラミック積層体の
製造方法に関するものであり、特に、電子機器等に利用
される表面実装用のセラミック積層電子部品や多層セラ
ミック回路基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器は小型軽量化が進んでお
り、それに用いられるセラミック積層電子部品や多層セ
ラミック回路基板もその動向に呼応する形で、小型軽量
薄型化、表面実装化が押し進められている。特にセラミ
ックスの優れた誘電特性を活かす電子部品は、高周波フ
ィルタ等で実用化されてきた。
【0003】このような電子部品等のセラミック積層体
の製造方法は2つに大別できる。
【0004】その1つが、絶縁層となるセラミック粉末
(ガラスセラミックも含む)を含有するスリップ材を形
成し、ドクターブレード法などによってグリーンシート
を作成し、次に、グリーンシートにビアホール導体とな
る位置にNCパンチや金型などで貫通穴を形成し、次に
内部導体のパターン及びビアホール導体に応じてグリー
ンシート上に導電性ペーストを印刷・充填し、次に、こ
れらのシートを複数積層して、この積層体を一括同時焼
成するグリーンシート積層方式である。
【0005】いま1つが、絶縁層となる絶縁ペーストと
内部導体となる導電性ペーストを交互に印刷し、印刷積
層体を形成し、この積層体を一括同時焼成する印刷積層
方式である。尚、この印刷積層方式で、異なる絶縁層間
の内部導体を接続するビアホール導体は、例えば絶縁ペ
ーストを印刷する際に下部に位置する内部導体となる導
体膜が露出するように印刷パターンを制御することによ
り形成されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
グリーンシート積層方式による製造方法は、絶縁層とな
るグリーンシートを作成するためのテープ成形工程が必
要であること、さらに異なる厚みの絶縁層が複数必要と
なる場合は、その種類だけグリーンシートを準備してお
く必要があり、製造工程が複雑であるという問題があっ
た。
【0007】また、異なる絶縁層間のビアホール導体と
なる貫通孔を開ける工程が必要であるが、孔開け工程の
具体的な例として、金型やNCパンチを用いることが一
般的であり、いずれの方法の場合も手間がかかり、製造
コストが高価になるという問題があった。
【0008】さらに、1枚のグリーンシートに複数種類
の径の孔を作成する場合、例えばストリップラインとグ
ランドの接続を強化するためにビアホール導体の径を大
きくしたい場合、グリーンシートの厚みによっては導電
性ペーストの充填が非常に困難となる。例えば、50μ
mの厚みのグリーンシートに500μmの径の孔を開け
ても、導電性ペーストの充填は不可能である。更に、N
Cパンチ及び金型で貫通孔を形成する場合に、その最小
孔径は100μm程度が限界であり、微細加工にも限界
がある。
【0009】これに対して、印刷積層方式による製造方
法は、上述のテープ成型工程及びビアホール導体となる
貫通穴の形成工程が不要になるため、製造工程は簡略化
されるものの、異なる絶縁層間に配置される内部導体間
を接続する手段として、絶縁層となる絶縁ペースト材の
印刷塗布のパターンを制御して、下部に位置する内部導
体の導体膜の接続部分のみを露出させるが、露出部分の
開口径は150μm以上にしなくては、絶縁ペースト材
のダレなどによって導通不良が発生する可能性があり、
高密度の内部導体を達成することが困難であった。
【0010】一方、従来、電子部品に用いられていた誘
電体磁器組成物として、低誘電損失(Q値が高い)で、
誘電率の温度係数の小さい、MgO−CaO−TiO2
の3成分組成の磁器組成物が知られている。この組成物
は比誘電率が20程度、7〜8GHzにおけるQ値が8
000程度、比誘電率の温度係数が0近傍の値と優れた
誘電特性を有するが、1300℃以上の高温で焼結する
必要があり、この材料をセラミック積層体の誘電体とし
て使用した場合、内部導体は前記誘電体磁器の焼結温度
にて溶融することなく、かつ酸化することがない高価な
貴金属であるパラジウム(融点1555℃)またはその
合金が使用され、特に静電容量が大きいものでは内部導
体数が大となってコスト高となるという問題があった。
即ち、従来の電子部品は容積効率が高く、その他誘電的
特性に優れ且つ高信頼性にあるにも拘らず、価格面がそ
の発展に大きな障害となっていた。そこで、内部電極と
して安価な卑金属であるNiを使用することが実用化さ
れつつある。
【0011】しかしながら、Ni、Pdは導体抵抗が大
きく、内部電極として使用すると、等価直列抵抗(ES
R)や素子のQ値が大きくなるという欠点を有し、特に
高周波領域での使用が困難となる。そこで係る問題を解
消するために、導体抵抗の小さいAg、Cu及びAu等
の金属を導体として採用し、低温で同時焼成できる誘電
体セラミックスが要求されている。さらに、最近の高周
波用電子部品に対する小型化と高性能化の要求に応える
ために、特定の周波数領域で比誘電率εrが高く、か
つ、Q値が高い誘電体磁器が要求されている。
【0012】本発明は、850〜1050℃の低温で、
Au、Ag、Cuを主成分とする内部導体と同時に焼成
できるとともに、比誘電率εrやQ値が高い誘電体磁器
組成物を用いて、安価にかつ容易に、品質上問題のない
セラミック積層体を製造する方法を提供することを目的
とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明のセラミック積層
体の製造方法は、絶縁層を複数積層してなるセラミック
積層体の製造方法であって、 (a)少なくともセラミック粒子および該セラミック粒
子を850〜1050℃で焼結せしめる焼結助剤を、前
記セラミック粒子に対する前記焼結助剤の酸化物換算で
の重量比率が0.05〜0.5となるように含有するセ
ラミック原料粉末と、光硬化可能なモノマーとを含有す
るスリップを作製する工程 (b)前記スリップを薄層化し、乾燥して絶縁層成形体
を形成する工程 (c)前記絶縁層成形体に露光処理を施し、該絶縁層成
形体を硬化させる工程 (d)前記(c)工程で得られた絶縁層成形体に対し、
(b)、(c)の工程を順次繰り返して前記絶縁層成形
体が複数積層された積層成形体を作製する工程 (e)前記積層成形体を850〜1050℃で焼成し、
前記絶縁層のQf値を2000以上とする工程を具備す
る方法である。
【0014】(d)工程は、(c)工程で得られた絶縁
層成形体に対し、(b)、(c)の工程を順次繰り返し
て前記絶縁層成形体が複数積層された積層成形体を作製
するとともに、少なくとも一つの絶縁層成形体に貫通穴
を形成し、該貫通穴に金、銀および銅の少なくとも一種
を主成分とする導電性ペーストを充填してビアホール導
体を形成する工程であっても良い。
【0015】(d)工程が、(c)工程で得られた絶縁
層成形体に対し、(b)、(c)の工程を順次繰り返し
て前記絶縁層成形体が複数積層された積層成形体を作製
するとともに、少なくとも一つの絶縁層成形体の表面
に、金、銀および銅の少なくとも一種を主成分とする導
電性ペーストを塗布して配線パターンを形成する工程で
あっても良い。
【0016】焼結助剤は硼素含有化合物およびアルカリ
金属含有化合物を含有することが望ましい。
【0017】セラミック原料粉末は、金属元素として少
なくともMg,Ti,Caを含有する複合酸化物であっ
て、その金属元素酸化物による組成式を(1−x)Mg
TiO3 −xCaTiO3 (但し、式中xは重量比を表
し、0.01≦x≦0.15)で表される主成分100
重量部に対して、硼素含有化合物をB2 3 換算で3〜
30重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金属炭
酸塩換算で1〜25重量部添加含有してなるものが望ま
しい。
【0018】セラミック原料粉末は、金属元素として少
なくともCa,Zrを含有する複合酸化物であって、こ
れらのモル比による組成式をxCaO・ZrO2 と表し
た時、前記xが0.87≦x≦1.36を満足する主成
分100重量部に対して、硼素含有化合物をB2 3
算でa重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金属
炭酸塩換算でb重量部の範囲で添加含有してなり、か
つ、前記a,bが0≦a≦30、0≦b≦20、1.5
≦a+bを満足するものが望ましい。
【0019】セラミック原料粉末は、金属元素として少
なくともBa、Tiを含有する複合酸化物であって、こ
れらのモル比による組成式を、BaO・x(Ti1-a
a)O2 と表した時、前記x、aが、3.5≦x≦
4.5、0≦a≦0.20を満足する主成分100重量
部に対して、亜鉛含有化合物をZnO換算で4〜30重
量部、硼素含有化合物をB2 3 換算で1〜20重量
部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金属炭酸塩換算
で1〜10重量部添加含有するものが望ましい。
【0020】
【作用】本発明によれば、従来のように、グリーンシー
トを形成する必要がないため、製造が極めて簡略化され
る。また、ビアホールが露光・現像による一括処理で形
成でき、更に複数種類の穴径を任意に設定でき、その相
対位置精度が極めて向上し、従来得ることのできなかっ
た穴径、例えば厚み50μmの誘電体膜に直径50μm
と500μmのものが実現でき、小型化が達成できる。
【0021】また、本発明のセラミック積層体の製造方
法で使用するセラミック原料粉末において、セラミック
粒子に対する焼結助剤の酸化物換算での重量比率を0.
05〜0.5としたので、低温焼結が可能となる。特
に、焼結助剤が硼素含有化合物およびアルカリ金属含有
化合物を含有する場合には、本発明の製法において、Q
値等の特性を劣化させることなく、850〜1050℃
の低温での焼結が可能となる。
【0022】そして、セラミック原料粉末が、金属元素
として少なくともMg,Ti,Caを含有する複合酸化
物であって、その金属元素酸化物による組成式を(1−
x)MgTiO3 −xCaTiO3 (但し、式中xは重
量比を表し、0.01≦x≦0.15)で表される主成
分100重量部に対して、硼素含有化合物をB2 3
算で3〜30重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカ
リ金属炭酸塩換算で1〜25重量部添加含有するもので
ある場合には、測定周波数7GHzでのQ値が1300
以上、かつ850〜1050℃の低温でAu、Cuまた
はAgを主成分とする導電性ペーストと同時焼成するこ
とができ、Q値が高く、高周波領域で優れた電子部品や
基板を得ることができる。この組成の場合には、測定周
波数7GHzでのQ値を3000以上、特には5000
以上とすることも可能となる。
【0023】本発明の製造方法で使用するセラミック原
料粉末においては、硼素含有化合物とアルカリ金属含有
化合物を同時に添加含有することに特徴があるが、その
理由について説明する。上記主成分に対して硼素含有化
合物のみを配合した場合には、その配合量が少ないと焼
成温度を十分に低下させることができず、Au、Ag、
Cuの融点温度以下の温度で焼結させることができな
い。
【0024】また、配合量が多いと焼結温度は低下する
が、硼素含有化合物は、焼成時等の高温下で主成分のM
gTiO3 −CaTiO3 系と反応するので、配合量が
多すぎた場合は、焼成後においてMgTiO3 −CaT
iO3 の残存量が少なくなり、高いQ値を維持すること
ができない。従って、硼素含有化合物のみを添加した場
合には、低い焼結温度と高周波領域における誘電特性が
共に優れた誘電体磁器組成物を得ることができないから
である。
【0025】即ち、硼素含有化合物のみを添加した場合
は、その添加量がB2 3 換算で3重量部未満では焼結
温度が1050℃以下にはならない。また、B2 3
算で30重量部よりも多い場合には焼結温度を1050
℃以下に低下できるが、硼素含有化合物は焼成時等高温
下において上述したようにMgTiO3 −CaTiO3
と反応するため、Q値が低下してしまうからである。
【0026】この組成物の場合、硼素含有化合物の添加
による組成物の焼結温度低下効果と焼成後の磁器組成物
の誘電特性向上効果とは背反関係にあり、硼素含有化合
物のみを添加した組成物では、低い焼結温度と高いQ値
等の優れた誘電特性とを共に備えた組成物を得ることが
困難である。
【0027】一方、主成分にLi,Na,K等のアルカ
リ金属含有化合物のみを添加した場合には、たとえ添加
量を増加させたとしても、組成物の焼結温度を低下させ
ることが殆どできず、1050℃以下で焼結できる組成
物を得ることができない。
【0028】これに対して、硼素含有化合物とアルカリ
金属含有化合物とを、各々特定量比で組み合わせ添加配
合した場合には、硼素含有化合物とMgTiO3 −Ca
TiO3 系等との過度の反応が抑制され、かつ、硼素含
有化合物のみの添加の場合と比較してさらに焼結温度を
低下させることができると同時にQ値の低下を抑制でき
る。
【0029】本発明は、上記した特定組み合わせ配合組
成により、従来困難とされていた誘電体磁器組成物の焼
結温度の低温度化とQ値等の誘電特性の高性能化を同時
に達成したもので、Au、AgおよびCuの少なくとも
一種を主成分とする金属導体との同時焼成が可能である
とともに、高性能でかつ小型化されたセラミック積層体
が得られるのである。
【0030】また、セラミック原料粉末が、金属元素と
して少なくともCa,Zrを含有する複合酸化物であっ
て、これらのモル比による組成式をxCaO・ZrO2
と表した時、前記xが0.87≦x≦1.36を満足す
る主成分100重量部に対して、硼素含有化合物をB2
3 換算でa重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカ
リ金属炭酸塩換算でb重量部の範囲で添加含有してな
り、かつ、前記a,bが0≦a≦30、0≦b≦20、
1.5≦a+bを満足するものである場合には、900
〜1050℃程度の比較的低温でAg系やCu系、Au
系等の導体金属と同時に焼成でき、誘電体セラミックス
の比誘電率εrを使用周波数に適したものを選べ、かつ
Q値が高い等の特徴を有し、高周波電子部品や基板の小
型化と高性能化を実現できる。
【0031】そして、本発明においては、硼素含有化合
物および/またはアルカリ金属含有化合物を添加したの
は焼成温度を低下させることができるからである。しか
しながら、硼素含有化合物を単独で含有する場合ある一
定量を越えると焼成時等の高温下で主成分のCaO−Z
rO2 からなる高Q値の結晶相と反応するので、配合量
が多すぎた場合は、焼成後において未反応のCaO−Z
rO2 からなる高Q値の結晶相の残存量が少なくなり、
高いQ値を維持することができない。
【0032】硼素含有化合物の添加による組成物の焼結
温度低下効果と焼成後の磁器組成物の誘電特性向上効果
とは背反関係にあり、硼素含有化合物のみを添加した組
成物では、低い焼結温度と高いQ値等の優れた誘電特性
とを共に備えた組成物を得ることが困難である。
【0033】一方、主成分にLi,Na等のアルカリ金
属含有化合物のみを添加した場合には、高Q値を維持し
たまま組成物の焼結温度を充分に低下させることができ
ない。
【0034】本発明では、硼素含有化合物とアルカリ金
属含有化合物とを、各々特定量比で組み合わせ添加含有
することが望ましいが、これは硼素含有化合物とCaO
−ZrO2 からなる高Q値の結晶相との過度の反応が抑
制され、かつ、硼素含有化合物のみの添加の場合と比較
してさらに焼結温度を低下させることができると同時
に、高Q値を達成できるため、Agを主成分とする金属
導体との同時焼成が可能となるからである。
【0035】さらに、セラミック原料粉末は、金属元素
として少なくともBa、Tiを含有する複合酸化物であ
って、これらのモル比による組成式を、BaO・x(T
1- a Zra )O2 と表した時、前記x、aが、3.5
≦x≦4.5、0≦a≦0.20を満足する主成分10
0重量部に対して、亜鉛含有化合物をZnO換算で4〜
30重量部、硼素含有化合物をB2 3 換算で1〜20
重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金属炭酸塩
換算で1〜10重量部添加含有するものである場合に
は、比誘電率が20〜40で、Qf値が30000〔G
Hz〕以上であり、−40〜85℃の温度範囲で共振周
波数の温度係数τfを−40〜+40〔ppm/℃〕の
範囲で、かつ、焼成温度を950℃以下とすることが可
能となり、Agを主成分とする導体を具備した電子部品
を、誘電体磁器と導体を同時焼成して形成することが可
能となる。
【0036】即ち、本発明においては、Tiの一部をZ
rで置換することにより、Qf値を30000以上と大
幅に向上することができる。
【0037】また、主成分に亜鉛含有化合物を添加する
ことによってもある程度Qf値を向上することができ、
しかも共振周波数の温度係数τfをプラスからマイナス
側に移行させることができる。
【0038】そして、硼素含有化合物およびアルカリ金
属含有化合物を組み合わせて添加含有することにより、
上記の特性を維持しつつ、焼成温度を950℃以下とす
ることができ、850〜950℃の比較的低温で、Ag
を含有する導体金属と同時焼成でき、高周波領域で優れ
た特性を示す。
【0039】本発明においては、硼素含有化合物とアル
カリ金属含有化合物を同時に添加含有することに特徴が
あるが、その理由について説明する。上記主成分に対し
て硼素含有化合物のみを配合した場合には、その配合量
が少ないと焼成温度を十分に低下させることができず、
Agの融点温度以下の温度で焼結させることができな
い。
【0040】また、配合量が多いと焼結温度は低下する
が、硼素含有化合物は、焼成時等の高温下で主成分のB
aO−x(Ti1-a Zra )O2 系と反応するので、配
合量が多すぎた場合は、焼成後においてBaTi4 9
結晶相の残存量が少なくなり、高いQ値を維持すること
ができない。従って、硼素含有化合物のみを添加した場
合には、低い焼結温度と高周波領域での誘電特性が共に
優れた誘電体磁器組成物を得ることができないからであ
る。
【0041】即ち、硼素含有化合物のみを添加した場合
は、その添加量がB2 3 換算で1重量部未満では焼結
温度が950℃以下にはならない。また、B2 3 換算
で20重量部よりも多い場合には焼結温度を950℃以
下に低下できるが、硼素含有化合物は焼成時等高温下に
おいて上述したように高Q値のBaTi4 9 結晶相と
反応するため、Q値が低下してしまうからである。
【0042】この組成物の場合、硼素含有化合物の添加
による組成物の焼結温度低下効果と焼成後の磁器組成物
の誘電特性向上効果とは背反関係にあり、硼素含有化合
物のみを添加した組成物では、低い焼結温度と高いQ値
等の優れた誘電特性とを共に備えた組成物を得ることが
困難である。
【0043】一方、主成分にLi,Na等のアルカリ金
属含有化合物のみを添加した場合には、たとえ添加量を
増加させたとしても、組成物の焼結温度を低下させるこ
とが殆どできず、950℃以下で焼結できる組成物を得
ることができない。
【0044】これに対して、硼素含有化合物とアルカリ
金属含有化合物とを、各々特定量比で組み合わせ添加配
合した本発明の組成物では、硼素含有化合物とBaTi
4 9 結晶相との過度の反応が抑制され、かつ、硼素含
有化合物のみの添加の場合と比較してさらに焼結温度を
低下させることができると同時にQ値の低下を抑制でき
る。
【0045】本発明は、上記した特定組み合わせ配合組
成により、従来困難とされていた誘電体磁器組成物の焼
結温度の低温度化とQ値向上を同時に達成したもので、
Agを主成分とする金属導体との同時焼成が可能とな
る。
【0046】
【発明の実施の形態】本発明のセラミック積層体の製法
は、複数の絶縁層成形体を積層し、所定位置にビアホー
ル導体となる導体部材が形成された積層成形体を作製
し、該積層成形体を焼成することにより得られるもので
ある。
【0047】そして、850〜1050℃での低温焼結
を可能とするため、絶縁層成形体となるスリップ材は、
セラミック原料粉末と、光硬化可能なモノマーを含むも
のであり、セラミック原料粉末は、具体的にはセラミッ
ク粒子、およびセラミック粒子を低温で焼結させるため
の焼結助剤を含むもので、セラミック粒子W1 に対する
焼結助剤W2 の酸化物換算での重量比率W2 /W1
0.05〜0.5であることが望ましい。これは、重量
比率W2 /W1 が0.05よりも小さい場合は850〜
1050℃での低温焼結が困難となり、また、0.5よ
りも多くなると誘電特性、特にQ値が低下するからであ
る。セラミック粒子W1 に対する焼結助剤W2 の酸化物
換算での重量比率W2 /W1 は、低温焼結およびQ値向
上という点から、0.05〜0.47、特には0.05
〜0.33、さらには0.064〜0.184が望まし
い。
【0048】本発明の製造方法で用いられるセラミック
原料粉末は、例えば、硼素含有化合物およびアルカリ金
属含有化合物を含有するものである。
【0049】セラミック原料粉末としては、金属元素酸
化物による組成式を(1−x)MgTiO3 −xCaT
iO3 (但し、式中xは重量比を表し、0.01≦x≦
0.15)で表される主成分100重量部に対して、硼
素含有化合物をB2 3 換算で3〜30重量部、アルカ
リ金属含有化合物をアルカリ金属炭酸塩換算で1〜25
重量部添加含有してなるものが最適である。セラミック
粒子は主に(1−x)MgTiO3 −xCaTiO3
表されるものであり、焼結助剤は主に硼素含有化合物と
アルカリ金属含有化合物からなる。
【0050】出発原料をMgTiO3 とCaTiO3
することにより、結晶として(Mg、Ca)TiO3
子、またはMgTiO3 粒子およびCaTiO3 粒子を
多く含有させることができるようになり、Q値を向上で
き、共振周波数の温度係数τfの制御を容易に行うこと
ができる。ここで、CaTiO3 の重量比xを0.01
≦x≦0.15としたのは、CaTiO3 の重量比xが
0.01未満の場合には、共振周波数の温度係数τfが
マイナス側に大きくなり、また、前記重量xが0.15
を越える場合には共振周波数の温度係数τfがプラス側
に大きくなるからである。よって、CaTiO3 の重量
比xは0.01〜0.15が望ましく、とりわけ、共振
周波数の温度係数τfの観点からは、0.05〜0.1
0が望ましい。
【0051】また、主成分100重量部に対して、硼素
含有化合物をB2 3 換算で3〜30重量部、アルカリ
金属含有化合物をアルカリ金属炭酸塩換算で1〜25重
量部添加含有したのは、B2 3 の添加量が3重量部未
満の場合には1100℃でも焼結せず、Au、Ag、C
uとの同時焼成ができなくなり、逆に30重量部を越え
る場合には結晶相が変化し、誘電特性が劣化するからで
ある。硼素含有化合物の添加量は、主成分に対してB2
3 換算で3〜20重量部が望ましく、とりわけ誘電体
磁器のQ値の観点からは5〜15重量部が望ましい。硼
素含有化合物としては、金属硼素、B2 3 、コレマナ
イト、CaB2 4 等がある。
【0052】また、アルカリ金属含有化合物を該アルカ
リ金属炭酸塩換算で1〜25重量部添加したのは、アル
カリ金属含有化合物、例えばリチウム含有化合物の添加
量が1重量部未満の場合には1100℃でも焼結せず、
Au、Ag、Cuとの同時焼成ができなくなり、逆に、
25重量部を越える場合には結晶相が変化し、誘電特性
が劣化するからである。アルカリ金属含有化合物の添加
量は、主成分100重量部に対してアルカリ金属炭酸塩
換算、例えばLi2 CO3 換算で1〜10重量部が望ま
しく、とりわけ誘電体磁器のQ値の観点からは3〜7重
量部が望ましい。
【0053】アルカリ金属としては、Li,Na,Kを
例示することができ、この中でもQ値の点からLiが特
に望ましい。アルカリ金属含有化合物としては、上記ア
ルカリ金属の炭酸塩,酸化物等を例示することができ
る。
【0054】そして、さらに主成分100重量部に対し
て、Mn含有化合物をMnCO3 換算で0.1〜5重量
部添加含有することが望ましい。Mnを含有することに
より低温焼成化等を図ることができるが、MnCO3
添加量が0.1重量部未満の場合には添加の効果がな
く、逆に、5重量部を越える場合には結晶相が変化し、
誘電特性が劣化するからである。
【0055】また、セラミック原料粉末としては、金属
元素として少なくともCa,Zrを含有する複合酸化物
であって、これらのモル比による組成式をxCaO・Z
rO2 と表した時、前記xが0.87≦x≦1.36を
満足する主成分100重量部に対して、硼素含有化合物
をB2 3 換算でa重量部、アルカリ金属含有化合物を
アルカリ金属炭酸塩換算でb重量部の範囲で添加含有し
てなり、かつ、前記a,bが0≦a≦30、0≦b≦2
0、1.5≦a+bを満足するものも最適である。セラ
ミック粒子は主にxCaO・ZrO2 で表されるもので
あり、焼結助剤は主に硼素含有化合物および/またはア
ルカリ金属含有化合物とからなるものである。
【0056】ここで、上記組成式において、0.87≦
x≦1.36としたのは、xが0.87未満の場合には
Qf値が低下(2000未満)し、xが1.36を越え
る場合には1200℃以下では焼結しなくなるからであ
る。とりわけ低温焼結と高Qf値の観点からは0.95
≦x≦1.28が好ましい。
【0057】本発明では、硼素含有化合物および/また
はアルカリ金属含有化合物を添加したのは高Q値を維持
したまま焼成温度を低下させることができるからであ
り、これらの合量a+bが1.5重量部よりも少ない場
合には1050℃では焼結せず、一方、硼素含有化合物
の量aが30重量部よりも多くなる場合やアルカリ金属
含有化合物の量bが20重量部よりも多くなる場合に
は、Qf値が2000未満に低下するからである。
【0058】望ましい第1の態様は、硼素含有化合物の
量aおよびアルカリ金属含有化合物bは、0≦a≦2
0、0≦b≦10、1.5≦a+bを満足することが望
ましい。これは、この範囲内であれば、Qf値を400
0以上とできるとともに、1050℃以下で焼結できる
からである。
【0059】望ましい第2の態様は、組成式をxCaO
・ZrO2 と表した時のxが0.95≦x≦1.28、
硼素含有化合物の量aおよびアルカリ金属含有化合物b
は、0<a≦15、0<b≦7.5、1.5≦a+bを
満足することが望ましい。この範囲内であれば、Qf値
を8000以上とできるとともに、1050℃以下で焼
結できるからである。
【0060】望ましい第3の態様は、組成式をxCaO
・ZrO2 と表した時のxが0.95≦x≦1.28、
硼素含有化合物の量aおよびアルカリ金属含有化合物b
は、0.1≦a≦10、2.5≦b≦7.5を満足する
ことが望ましい。この範囲内であれば、Qf値が130
00以上とできるとともに、950℃以下で焼結できる
からである。このように、硼素含有化合物とアルカリ金
属含有化合物とを同時に含有することにより、Qf値の
向上と低温焼成化をともに実現することができる。
【0061】硼素含有化合物としては、金属硼素,B2
3 ,コレマナイト,CaB2 4等がある。アルカリ
金属としては、Li,Na,Kがあり、とくに高Q値、
低温焼成化のためにはLiが望ましい。アルカリ金属含
有化合物としては、アルカリ金属の酸化物、炭酸化物,
水酸化物等がある。
【0062】さらに、セラミック原料粉末としては、金
属元素として少なくともBa、Tiを含有する複合酸化
物であって、これらのモル比による組成式を、BaO・
x(Ti1-a Zra )O2 と表した時、前記x、aが、
3.5≦x≦4.5、0≦a≦0.20を満足する主成
分100重量部に対して、亜鉛含有化合物をZnO換算
で4〜30重量部、硼素含有化合物をB2 3 換算で1
〜20重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金属
炭酸塩換算で1〜10重量部添加含有するものも最適で
ある。セラミック粒子は主にBaO・x(Ti1-a Zr
a )O2 で表されるものであり、焼結助剤は主に硼素含
有化合物とアルカリ金属含有化合物とからなるものであ
る。
【0063】ここで、モル比による組成式を、BaO・
x(Ti1-a Zra )O2 と表した時、3.5≦x≦
4.5としたのは、xが3.5よりも小さい場合には磁
器中にBa4 Ti1330結晶相が析出し、共振周波数の
温度係数τfが+40 ppm/ ℃よりも大きくなるからで
ある。またxが4.5よりも大きい場合には焼結性が低
下するとともに、TiO2 結晶相が形成して、温度係数
τfが+40 ppm/ ℃よりも大きくなるからである。x
はQf値が高いBaTi4 9 結晶相が形成されやすい
という点から、3.8〜4.2であることが望ましい。
【0064】また、Zr量aを0≦a≦0.20の範囲
内としたのは、Tiの一部をZrで置換することによ
り、温度係数の曲がりの改善と比誘電率を低下させるこ
とができるからであり、一方、aが0.20よりも大き
くなるとQf値が低下するからである。TiのZrによ
る置換量aは、高いQf値を得るという観点から0.1
2〜0.15であることが望ましい。
【0065】さらに、主成分100重量部に対して亜鉛
含有化合物をZnO換算で4〜30重量部以下添加含有
させたのは、亜鉛含有化合物が4重量部よりも少ない場
合には共振周波数の温度係数τfが大きくなるととも
に、焼成温度が950℃より大きくなるからであり、3
0重量部よりも多い場合には共振周波数の温度係数τf
が小さくなり、実用的でないからである。亜鉛含有化合
物の含有量は、共振周波数の温度係数τfをより0に近
くするという観点から主成分100重量部に対して8.
5〜13.19重量部添加含有することが望ましい。
【0066】また、本発明では、上記主成分100重量
部に対して、硼素含有化合物をB23 換算で1〜20
重量部、アルカリ金属含有化合物を該アルカリ金属炭酸
塩換算で1〜10重量部添加含有してなるものである
が、このように主成分100重量部に対して、硼素含有
化合物をB2 3 換算で1〜20重量部添加したのは、
2 3 の添加量が1重量部未満の場合には1000℃
でも焼結せず、Agとの同時焼成ができなくなり、逆に
20重量部を越える場合には結晶相が変化し、誘電特性
が劣化するからである。よって、硼素含有化合物の添加
量は、主成分に対してB2 3 換算で1〜20重量部に
特定され、とりわけ誘電体磁器のQ値の観点からは5〜
15重量部が望ましい。硼素含有化合物としては、金属
硼素、B23 、コレマナイト、CaB2 4 等があ
る。
【0067】また、アルカリ金属含有化合物を該アルカ
リ金属炭酸塩換算で1〜10重量部添加したのは、アル
カリ金属含有化合物、例えばリチウム含有化合物の添加
量が1重量部未満の場合には950℃以下では焼結しな
いか、あるいはQf値が低下し、逆に、10重量部を越
える場合には結晶相が変化し、誘電特性が劣化するから
である。よって、アルカリ金属含有化合物の添加量は、
主成分100重量部に対してアルカリ金属炭酸塩換算、
例えばLi2 CO3 換算で1〜10重量部に特定され、
とりわけ誘電体磁器のQ値の観点からは2〜5重量部が
望ましい。
【0068】また、本発明では、アルカリ金属含有化合
物は硼素含有化合物よりも少ない量だけ添加することが
高Q値という点から望ましい。
【0069】セラミック原料粉末としては、金属元素と
して少なくともBa,Zn,Mg,WおよびTaを含有
する複合酸化物であって、これらのモル比による組成式
をaBaO・bZnO・cNb2 5 ・dMgO・eW
3 ・fTa2 5 と表した時、前記a、b、c、d、
e、fが、0.43≦a≦0.68、0.01≦b≦
0.30、0≦c≦0.30、0<d≦0.35、0<
e≦0.35、0<f≦0.35、0.50≦(b+
d)/(c+e+f)≦1.60、a+b+c+d+e
+f=1を満足する主成分100重量部に対して、ホウ
素含有化合物をB23 換算で1〜10重量部、アルカ
リ金属含有化合物をアルカリ金属炭酸塩換算で1〜10
重量部添加含有してなるものを用いることができる。
【0070】さらに、金属元素として希土類元素(L
n),Al,CaおよびTiを含有する複合酸化物であ
って、これらのモル比による組成式をaLn2 x ・b
Al23 ・cCaO・dTiO2 と表した時、a, b,
c, dおよびxの値が、0.056≦a≦0.21
4、0.056≦b≦0.214、0.286≦c≦
0.500、0.230<d<0.470、3≦x≦
4、a+b+c+d=1を満足する主成分100重量部
に対して、ホウ素含有化合物をB2 3 換算で7〜30
重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金属炭酸塩
換算で7〜20重量部添加含有してなるものを用いるこ
とができる。
【0071】上述のセラミック原料粉末の他に、スリッ
プ材の構成材料としては、焼結によって消失される光硬
化可能なモノマー、有機バインダーと、更に、有機溶剤
または水を含んでいる。即ち、スリップ材には、有機バ
インダと、有機溶剤を均質混練して得られた溶剤系のス
リップ材や、有機バインダと、水を均質混練して得られ
た水系のスリップ材がある。尚、有機溶剤や水は主にス
リップの粘度等を調整するものであり、焼成工程の脱バ
インダ過程で完全に消失してしまう。
【0072】スリップ材の光硬化可能なモノマーは、低
温短時間の焼成工程に対応するために、熱分解性に優れ
たものでなくてはならない。光硬化可能なモノマーとし
ては、スリップ材の塗布・乾燥後の露光によって、光重
合される必要があり、遊離ラジカルの形成、連鎖生長付
加重合が可能で、2級もしくは3級炭素を有したモノマ
ーが好ましく、例えば少なくとも1つの重合可能なエチ
レン系基を有するブチルアクリレート等のアルキルアク
リレートおよびそれらに対応するアルキルメタクリレー
トが有効である。また、テトラエチレングリコールジア
クリレート等のポリエチングリコールジアクリレートお
よびそれらに対応するメタクリレートも有効である。光
硬化可能なモノマーは、露光で硬化され、現像で露光以
外部分が容易に除去できるような範囲で添加され、例え
ば、セラミック原料粉末(固形分)に対して5〜15重
量%以下である。
【0073】スリップ材の有機バインダは、光硬化可能
なモノマーと同様に熱分解性の良好なものでなくてはな
らない。同時にスリップの粘性を決めるものである為、
固形分との濡れ性も重視せねばならず、本発明者等の検
討によればアクリル酸もしくはメタクリル酸系重合体の
ようなカルボキシル基、アルコール性水酸基を備えたエ
チレン性不飽和化合物が好ましい。添加量としてはセラ
ミック原料粉末に対して25重量%以下が好ましい。
【0074】スリップ材における光硬化可能なモノマー
及び有機バインダは上述したように熱分解性の良好なも
のでなくてはならないが、具体的には600℃以下で熱
分解が可能であり、好ましくは500℃以下である。熱
分解温度が600℃を越えると、絶縁層内に残存してし
まい、カーボンとしてトラップし、基板を灰色に変色さ
せたり、絶縁層の絶縁抵抗までも低下させてしまう。ま
たボイドとなりデラミネーションを起こすことがある。
【0075】また、スリップ材として、増感剤、光開始
系材料等を必要に応じて添加しても構わない。例えば、
光開始系材料としては、ベンゾフェノン類、アシロイン
エステル類化合物などが挙げられる。尚、本発明の絶縁
層とは誘電体も含む意味である。
【0076】上述のように、セラミック原料粉末、光硬
化可能なモノマー、有機バインダさらに、有機溶剤また
は水とともに混合、混練して、絶縁層となる溶剤系また
は水系スリップ材が構成される。混合・混練方法は従来
より用いられている方法、例えばボールミルによる方法
を用いればよい。スリップ材の薄層化方法は、例えば、
ドクターブレード法(ナイフコート法)、ロールコート
法、印刷法などにより形成され、特に塗布後の絶縁膜の
表面が平坦化することが容易なドクターブレード法など
が好適である。尚、薄層化の方法に応じて所定粘度に調
整される。
【0077】また、内部導体やビアーホール導体となる
導体材料の導電性ペーストは、金、銀および銅の少なく
とも一種を主成分とするもので、金、銀、銅もしくはそ
の合金のうち少なくとも1つの金属材料の粉末と、低融
点ガラス成分と、有機バインダーと及び有機溶剤とを均
質混練したものが使用される。特に、焼成温度が850
〜1050℃であるため、金属材料としては比較的低融
点であり、且つ低抵抗材料が選択され、また、低融点ガ
ラス成分も、絶縁層となる絶縁層成形体(スリップ材を
塗布、乾燥したもの)との焼結挙動を考慮して、その屈
伏点が700℃前後となるものが使用される。
【0078】本発明のセラミック積層体の製造方法は、
まず、支持基板上にスリップ材料を薄層化(以下、単に
塗布という)・乾燥して絶縁層となる絶縁層成形体を形
成する。スリップ材料は、上記したようにセラミック原
料粉末と、光硬化可能なモノマー、有機バインダさら
に、有機溶剤または水を混合、混練したものである。
【0079】塗布方法としては、ドクターブレード法や
ロールコート法、塗布面積を概略支持基板と同一面積と
するスクリーンを用いた印刷法などによって形成され
る。乾燥方法としては、バッチ式乾燥炉、インライン式
乾燥炉を用いて行われ、乾燥条件は120℃以下が望ま
しい。また、急激な乾燥は表面にクラックを発生する可
能性があるため、急加熱は避けることが重要となる。
【0080】ここで、支持基板としては、ガラス基板、
有機フィルム、アルミナセラミックなどが例示できる。
この支持基板は、焼成工程前で取り外されるが、特にア
ルミナセラミックなどの場合には、同時に焼成を行い、
完成品のセラミック積層体の一部を構成するようにして
も構わない。従って、このアルミナ支持基板に、内部導
体や表面配線を形成しておいても構わない。
【0081】次に、支持基板上に形成した絶縁層成形体
にビアホール導体となる貫通穴を形成する。尚、実際に
は、貫通穴の下部は、支持基板などによって閉塞されて
いるが、便宜上貫通穴という。貫通穴の形成方法は露光
・現像を用いて行う。尚、ビアホール導体の形成の不要
な絶縁層成形体については、この貫通穴の形成及びビア
ホール導体となる導電性ペーストの充填を省略する。
【0082】露光処理は、例えば、フォトターゲットを
絶縁基板上に近接または載置して、貫通穴以外の領域
に、低圧、高圧、超高圧の水銀灯系の露光光を照射す
る。これにより、貫通穴以外の領域では、光硬化可能な
モノマーが光重合反応を起こす。
【0083】従って、貫通穴部分のみが現像処理によっ
て除去可能な溶化部となる。尚、実際には、フォトター
ゲットを絶縁層成形体に接触させて露光した方が露光精
度は向上する。また、最適露光時間は絶縁層成形体の厚
み、貫通穴の直径などで決まる。尚、露光装置は所謂写
真製版技術に用いられる一般的なものでよい。
【0084】現像処理は、クロロセン等の溶剤を例えば
スプレー現像法やパドル現像法によって、貫通穴である
露光溶化部に接触させ、現像を行う。その後必要に応じ
て洗浄及び乾燥を行う。
【0085】次に、ビアホール導体となる導体部材を、
導電性ペーストの充填・乾燥によって形成する。導体部
材は、上記したように、金、銀または銅を主成分とする
ものである。充填方法は、例えばスクリーン印刷方法で
行なう。
【0086】次に、導体部材が充填された上記絶縁層成
形体に、内部導体パターンとなる導体部材を、例えばス
クリーン印刷方法で塗布する。内部導体パターンが不要
な場合にはこの工程は省略される。
【0087】以上、スリップ材の塗布・乾燥による絶縁
層成形体の形成、露光・現像による貫通穴の形成、導電
性ペーストの貫通穴への充填によるビアホール導体とな
る導体部材の形成、内部導体パターンの形成で、基本的
に1層分の絶縁層成形体及び内部導体パターンの形成が
終了し、これを所望の回数繰り返すことにより未焼成状
態の積層成形体が完成する。その後、必要に応じてプレ
ス等を行ない形状を整えたり、分割用のスリットを形成
する。
【0088】最後に焼成を行なう。焼成工程は脱バイン
ダ過程と焼成過程からなり、脱バインダ過程(〜600
℃)で絶縁層成形体、内部導体パターン及びビアホール
導体の導体部材の有機成分を消失し、その後、所定雰囲
気、所定温度で絶縁層成形体及び内部導体パターン、ビ
アホール導体となる導体部材を一括的に850〜105
0℃で焼成する。
【0089】このようにして得られたセラミック積層体
は、表面に各種処理を行うこともできる。例えば、表層
に厚膜導体パターンを印刷、焼きつけをおこなったり、
厚膜抵抗体及び厚膜保護膜を印刷、焼きつけをおこなっ
たり、また薄膜導体パターンを形成したり、メッキ被覆
処理ををおこなったり、さらにICチップを含む各種電
子部品の接合を行う。
【0090】尚、表面厚膜導体パターン、厚膜抵抗体及
び厚膜保護膜の形成においては、上述の絶縁層成形体と
内部導体パターンの多層化後に形成された積層成形体に
印刷を行い、未焼成状態のセラミック積層体の焼成工程
で、同時に焼成しても構わない。また、表面厚膜導体パ
ターンの一部、例えば最上層のビアホール導体となる導
体部材と接続する表面ランド電極のみを未焼成状態のセ
ラミック積層体に印刷し、同時に焼成しても構わない。
【0091】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。図1は、
本発明に係るセラミック多層電子部品の断面図である。
図1によれば、本発明に係るセラミック積層体10は、
絶縁層1a〜1e、内部導体2、ビアホール導体3とか
らなり、セラミック積層体10の表面には表面配線4、
厚膜抵抗体5が形成されている。
【0092】絶縁層1a〜1eはセラミックからなり、
その厚みは40〜150μmである。このような複数の
絶縁層1a〜1e間には、内部導体2が配置されてい
る。内部導体2は、金系、銀系、銅系の金属材料、例え
ば銀系導体からなっている。また、異なる絶縁層1a〜
1e間の内部導体2は、絶縁層1a〜1eの厚みを貫く
ビアホール導体3によって接続されているものもあれ
ば、容量結合等で分布定数的に接続されるものもある。
このビアホール導体3も内部導体2と同様に金系、銀
系、銅系の金属材料、例えば銀系導体からなっている。
【0093】セラミック積層体10の表面には、絶縁層
1aのビアホール導体3と接続する表面配線4が形成さ
れており、この表面配線4上には、必要に応じて、厚膜
抵抗体5や厚膜保護膜が形成されたり、メッキ処理され
る。
【0094】このようなセラミック多層電子部品は、図
2及び図3に示される工程を経て製造される。
【0095】先ず、本発明者等は、請求項6記載のセラ
ミック原料粉末の焼結温度や特性を確認した。即ち、先
ず、純度99%以上のMgTiO3 、CaTiO3 の各
原料粉末を表1に示す重量比で秤量し、該原料粉末に媒
体として純水を加えて24時間ボールミルにて混合した
後、該混合物を乾燥し、次いで該乾燥物を1200℃の
温度で大気中1時間仮焼した。得られた仮焼物に、焼結
助剤としてB2 3 粉末およびLi2 CO3 粉末、K2
CO3 粉末を表1に示す割合となるように秤量し、Zr
2 ボールを用いたボールミルにて24時間混合した
後、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%
加えてから造粒し、該造粒物を約1t/cm2 の加圧力
でプレス成形して直径12mm、高さ10mmの円柱状
の成形体を成形した。
【0096】その後、前記成形体を大気中400℃の温
度で4時間加熱して脱バインダー処理し、引き続いて表
1に示す各温度で大気中60分間焼成した。かくして得
られた円柱体の両端面を平面研磨し、誘電体特性評価用
試料を作製した。
【0097】誘電体特性の評価は、前記評価用試料を用
いて誘電体円柱共振器法により、共振周波数を6〜8G
Hzに設定して各試料の比誘電率εrと7GHzにおけ
る1/tanδ、即ちQ値を測定するとともに、−40
〜+85℃の温度範囲における共振周波数の温度係数τ
fを測定した。共振周波数の温度係数τfは、25℃で
の共振周波数を基準にして−40〜20℃の温度係数τ
1 と25〜80℃の温度係数τf2 とを求め、これら
を平均化して求めた。
【0098】
【表1】
【0099】この表1によれば、焼結助剤としてB2
3 粉末およびLi2 CO3 粉末、K2 CO3 粉末を添加
した組成では、比誘電率が17.5以上、7GHzにお
けるQ値が1300以上、共振周波数の温度係数τfが
±50以内の優れた特性を有することを確認した。特
に、No.2〜6、8〜11、13〜17の誘電体磁器組
成物では、1050℃以下の比較的低温で焼成でき、さ
らに、比誘電率εrが19以上、Q値が3000以上、
かつ共振周波数の温度係数τfが±30以内の優れた特
性を有することを確認した。
【0100】また、本発明者等は、請求項7記載のセラ
ミック原料粉末の焼結温度や特性を確認した。即ち、先
ず、純度99%以上のCaCO3 ,ZrO2 の各原料粉
末を表2に示す割合で秤量し、該原料粉末に媒体として
純水を加えて20時間ボールミルにて混合した後、該混
合物を乾燥し、次いで該乾燥物を大気中において120
0℃の温度で2時間仮焼した。
【0101】得られた仮焼物にB2 3 粉末とLi2
3 ,Na2 CO3 ,K2 CO3 などのアルカリ金属含
有化合物粉末を表2に示す割合となるように秤量し、Z
rO2 ボールを用いたボールミルにて20時間混合した
後、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%
加えてから造粒し、該造粒物を約1t/cm2 の加圧力
でプレス成形して円柱状の成形体を成形した。
【0102】その後、前記成形体を大気中、400℃の
温度で4時間加熱して脱バインダー処理し、引き続いて
表2に示す各温度で大気中2時間焼成した。得られた円
柱体の両端面を平面研磨し、直径約8mm、高さ約3.
5〜6mmの円柱状の誘電体特性評価用試料を作製し
た。
【0103】誘電体特性の評価は、前記評価用試料を用
いて誘電体円柱共振器法により、共振周波数を8〜11
GHzで比誘電率εrとQ値を測定するとともに、−4
0〜+85℃の温度範囲における共振周波数の温度係数
τfを測定した。なおQ値は1GHzでのQ値(Q×f
(fは測定周波数))に換算した。これらの結果を表2
に示す。
【0104】尚、共振周波数の温度係数τfは、25℃
での共振周波数を基準にして−40℃および+85℃に
おける共振周波数の温度係数τfを算出した結果、すべ
ての試料の共振周波数の温度係数τfが±40ppm/
℃の範囲内であった。
【0105】
【表2】
【0106】この表2によれば、本発明の誘電体磁器組
成物では、1050℃以下の比較的低温で焼成でき、さ
らに、比誘電率εrが10〜28、Qf値が2000以
上、かつ共振周波数の温度係数τfが±40ppm/℃
以内の優れた特性を有することが判る。
【0107】また、硼素含有化合物の量aおよびアルカ
リ金属含有化合物bが、0≦a≦20、0≦b≦10、
1.5≦a+bを満足する望ましい第1の態様では、1
050℃以下で焼成でき、さらに、比誘電率εrが13
〜28、Qf値が4000以上、かつ共振周波数の温度
係数τfが±40ppm/℃以内の優れた特性を有する
ことが判る。さらに、組成式をxCaO・ZrO2 と表
した時のxが0.95≦x≦1.28、硼素含有化合物
の量aおよびアルカリ金属含有化合物bは、0<a≦1
5、0<b≦7.5、1.5≦a+bを満足する望まし
い第2の態様では、1050℃以下で焼成でき、さら
に、比誘電率εrが13〜28、Qf値が8000以
上、かつ共振周波数の温度係数τfが±40ppm/℃
以内の優れた特性を有することが判る。
【0108】さらにまた、組成式をxCaO・ZrO2
と表した時のxが0.95≦x≦1.28、硼素含有化
合物の量aおよびアルカリ金属含有化合物bは、0.1
≦a≦10、2.5≦b≦7.5を満足する望ましい第
3の態様では、950℃以下で焼成でき、さらに、比誘
電率εrが17〜28、Qf値が13000以上、かつ
共振周波数の温度係数τfが±40ppm/℃以内の優
れた特性を有することが判る。
【0109】さらに、本発明者等は、請求項8記載のセ
ラミック原料粉末の焼結温度や特性を確認した。即ち、
先ず、原料として純度99%以上のBaCO3 ,TiO
2 ,ZrO2 ,ZnOの粉末を用いて、上記した組成式
のx,a,Zn量が表3に示す割合となるように秤量
し、純水を媒体とし、ZrO2 ボールを用いたボ−ルミ
ルにて20時間湿式混合した。次にこの混合物を乾燥
(脱水)し、大気中において1100℃で6時間仮焼し
た。
【0110】この仮焼物にB2 3 およびアルカリ金属
含有化合物を表3に示す割合で添加して、粉砕粒径が
1.0μm以下になるように粉砕し、誘電特性評価用の
試料として直径10mm高さ8mmの円柱状に1ton
/cm2 の圧力でプレス成形し、これを表3に示す温度
で大気中において2時間焼成し、直径8mm、高さ6m
mの円柱状の試料を得た。
【0111】誘電特性の評価は、前記試料を用いて誘電
体円柱共振器法にて周波数6GHzにおける比誘電率と
Q値を測定した。Q値と測定周波数fとの積で表される
値、即ちQf値を表3に記載した。また、−40〜85
℃の温度範囲における共振周波数を測定し、25℃での
共振周波数を基準にして−40℃における共振周波数の
温度係数τfを算出した。これらの結果を表3に記載し
た。
【0112】
【表3】
【0113】この表3から、本発明の誘電体磁器組成物
では、比誘電率が20以上、Qf値が30000〔GH
z〕以上、共振周波数の温度係数τfが±40〔ppm
/℃〕の範囲内で、焼成温度が950℃以下の優れた特
性を有することが判る。
【0114】この後、上記誘電体磁器組成物を用いて、
本発明のセラミック積層体を製造した。先ず、絶縁層1
a〜1eとなるスリップ材を作成する。
【0115】溶剤系スリップ材は、上記したセラミック
原料粉末と、光硬化可能なモノマー、例えばポリオキシ
エチル化トリメチロールプロパントリアクリレートと、
有機バインダ、例えばアルキルメタクリレートと、可塑
剤とを、有機溶剤、例えばエチルカルビトールアセテー
トに混合し、ZrO2 ボールを用いたボールミルで約4
8時間混練して作成する。
【0116】尚、上述の実施例では溶剤系スリップ材を
作成しているが、上述のように親水性の官能基を付加し
た光硬化可能なモノマー、例えば多官能基メタクリレー
トモノマー、有機バインダ、例えばカルボキシル変性ア
ルキルメタクリレートを用いて、イオン交換水で混練し
た水系スリップ材を作成しても構わない。
【0117】導電性ペーストは、低融点で且つ低抵抗の
金属材料である例えば銀粉末と、硼珪酸系低融点ガラ
ス、例えばB2 3 −SiO2 −BaOガラス、CaO
−B23 −SiO2 ガラス、CaO−Al2 3 −B
2 3 −SiO2 ガラスと、有機バインダ、例えばエチ
ルセルロースとを、有機溶剤、例えば2,2,4−トリ
メチル−1,3−ペンタジオ−ルモノイソブチレ−トに
混合しボールミルで均質混練して作成される。
【0118】上述のスリップ材を、用意された支持基板
上に、塗布・乾燥を行い、最下層となる絶縁層成形体1
1eを形成する。
【0119】具体的には、図2(a)に示すように、ま
ず、支持基板33上に、上述のスリップをドクターブレ
ード法によって塗布・乾燥して、絶縁層1a〜1eの最
下層である絶縁層1eとなる絶縁層成形体11eを形成
する。ここで、支持基板33としては、マイラーフイル
ムを用い、焼成工程前に取り外される。塗布後の乾燥条
件は、60〜80℃で20分乾燥であり、薄層化・乾燥
された絶縁層成形体11eの厚みは120μmである。
【0120】この絶縁層成形体11eにはビアホール導
体が形成されないため、直ちに露光処理を行う。具体的
には、露光処理は、超高圧水銀灯(10mJ/cm2
を光源として用いることにより行なう。これにより絶縁
層成形体11eにおいて光重合反応が起こる。尚、40
μm程度の絶縁層成形体11eは、超高圧水銀灯(60
mJ/cm2 )を10〜20秒程度照射すれば露光を行
うことができる。
【0121】次に、絶縁層成形体11eの表面に内部導
体2となる内部導体パターン21の印刷・乾燥を行う。
具体的には、図2(b)に示すように、上述の導電性ペ
ーストを所定の導体パターンが形成可能なスクリーンを
介して、印刷・乾燥することによって形成される。
【0122】次に、下から2層目となる絶縁層を形成す
る。即ち、図2(c)に示すように、絶縁層1dとなる
絶縁層成形体11dを、絶縁層成形体11e上の内部導
体パターン21をすべて被覆するように、絶縁層成形体
11eと同様にスリップを塗布、乾燥して形成する。
【0123】次に、絶縁層成形体11dに貫通穴の形成
を行う。貫通穴の形成は、図2(d)および(e)に示
すように、露光処理、現像処理、洗浄・乾燥処理を行
う。即ち、露光処理は、絶縁層成形体11d上に貫通穴
31が形成される領域が遮光されるようなフォトターゲ
ット41を載置して、超高圧水銀灯(10mJ/c
2)を光源として用いて露光を行なう。これにより、
貫通穴32が形成される領域の絶縁層成形体11dにお
いては、光硬化可能なモノマの光重合反応がおこらず、
貫通穴32が形成される領域以外の絶縁層成形体11d
においては、光重合反応が起こる。ここで光重合反応が
起こった部位を不溶化部xといい、光重合反応が起こら
ない部位を溶化部yという。
【0124】現像処理は、絶縁層成形体11dの溶化部
yを現像液で除去するもので、具体的には1,1,1−
トリクロロエタンをスプレー法で現像を行う。この現像
処理により、絶縁層成形体11dに200μm径の貫通
穴32を形成することができる。その後、絶縁層成形体
11dを現像によって生じる不要なカスなどを洗浄、乾
燥工程により完全に除去する。
【0125】次に、貫通穴32へ導体ペーストの充填・
乾燥して導体部材を形成する。即ち、図2(f)に示す
ように、上述の工程で形成した貫通穴32に上述の導電
性ペーストを充填し、乾燥する。貫通穴32に相当する
部位のみに印刷可能なスクリーンを用いて印刷によっ
て、ビアホール導体3となる導体部材31を形成し、そ
の後、50℃で10分乾燥する。
【0126】次に、図2(b)に示したように、内部導
体となるパターンを印刷・乾燥を行い絶縁層1dと絶縁
層1cとの間に配置される内部導体2をスクリーン印刷
法にて形成し、乾燥を行う。
【0127】次に、図2(a)〜(f)の工程、即ち、
スリップ材の塗布、露光処理、現像処理、貫通穴の形
成、貫通穴へ導体ペーストの充填、内部導体パターンの
形成を繰り返す。このようにして、最上層の絶縁層成形
体11aを形成し、露光・現像処理により貫通穴を形成
し、ビアホール導体3となる導体部材31の印刷充填し
て、図3に示すような積層成形体を作製する。
【0128】続いて、表面配線4となる導体膜を印刷・
乾燥により形成する。これは、各絶縁層成形体11a〜
11e、内部導体2となる内部導体パターン21、ビア
ホール導体3となる導体部材31との一括焼成時に、表
面配線4となる導体膜をも一括的に焼成しようとするも
のである。
【0129】次に、必要に応じて、積層体をプレスで形
状を整え、分割し、支持基板33を取り外す。次に、焼
成を行う。焼成は、脱バインダー工程と、本焼成工程か
らなる。脱バインダー工程は、概ね600℃以下の温度
領域であり、絶縁層成形体11a〜11e及び内部導体
パターン21及びビアホール導体3の導体部材31に含
まれている有機バインダ、光硬化可能なモノマを消失す
る過程であり、本焼成工程は、ピーク温度850〜10
50℃、例えば、930℃で30分ピークの焼成過程で
ある。これにより、5層の絶縁層1a〜1e間に内部導
体2、ビアホール導体3が形成され、さらに、表面配線
4が形成されたセラミック積層体が作製される。その
後、表面処理として、さらに、厚膜抵抗体や厚膜保護膜
の印刷・焼きつけ、メッキ処理を行う。尚、本発明にお
いては、絶縁層1a〜1eの厚みは自由に設定できる。
また絶縁層1eにビアホール導体を形成しても良いし、
また絶縁層1eの下面に面に内部導体を形成しても良
い。
【0130】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、従来の
ように、グリーンシートを形成する必要がないため、製
造が極めて簡略化されるセラミック積層体の製造方法と
なる。
【0131】また、ビアホール工程が露光・現像による
一括処理が可能で、更に複数種類の孔径が任意に設定で
き、その相対位置精度が極めて向上し、従来得ることの
できなかった穴径、例えば厚み50μmの誘電体膜に5
0μmφと500μmφのものが実現でき、小型化が達
成できる。
【0132】また、従来厚み50μmといった薄いグリ
ーンシートはその取り扱いが難しかったが、本発明にお
いては、何ら問題がない。
【0133】さらに、高Q値、共振周波数の温度特性に
優れたセラミック原料粉末を用いることにより、小型で
高性能のセラミック積層電子部品や多層セラミック回路
基板を安価にかつ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミック多層電子部品の断面図
である。
【図2】本発明のセラミック多層電子部品の製造方法を
説明する工程図である。
【図3】本発明の積層成形体を示す断面図である。
【符号の説明】
10・・・セラミック積層体 1a〜1e・・・絶縁層 11a〜11e・・・絶縁層成形体 2・・・内部導体 21・・・内部導体となる内部導体パターン 3・・・ビアホール導体 31・・・ビアホール導体となる導体部材 32・・・貫通穴 4・・・表面配線 5・・・厚膜抵抗体 33・・・支持基板 41・・・フォトターゲット x・・・不溶化部 y・・・溶化部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−15143(JP,A) 特開 平6−69374(JP,A) 特開 昭63−198398(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 3/46 B28B 1/30 B32B 18/00 C04B 35/46

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁層を複数積層してなるセラミック積層
    体の製造方法であって、以下の(a)〜(e)の工程を
    具備することを特徴とするセラミック積層体の製造方
    法。 (a)少なくともセラミック粒子および該セラミック粒
    子を850〜1050℃で焼結せしめる焼結助剤を、前
    記セラミック粒子に対する前記焼結助剤の酸化物換算で
    の重量比率が0.05〜0.5となるように含有するセ
    ラミック原料粉末と、光硬化可能なモノマーとを含有す
    るスリップを作製する工程 (b)前記スリップを薄層化し、乾燥して絶縁層成形体
    を形成する工程 (c)前記絶縁層成形体に露光処理を施し、該絶縁層成
    形体を硬化させる工程 (d)前記(c)工程で得られた絶縁層成形体に対し、
    (b)、(c)の工程を順次繰り返して前記絶縁層成形
    体が複数積層された積層成形体を作製する工程 (e)前記積層成形体を850〜1050℃で焼成し、
    前記絶縁層のQf値を2000以上とする工程
  2. 【請求項2】(d)工程が、(c)工程で得られた絶縁
    層成形体に対し、(b)、(c)の工程を順次繰り返し
    て前記絶縁層成形体が複数積層された積層成形体を作製
    するとともに、少なくとも一つの絶縁層成形体に貫通穴
    を形成し、該貫通穴に金、銀および銅の少なくとも一種
    を主成分とする導電性ペーストを充填してビアホール導
    体を形成する工程であることを特徴とする請求項1記載
    のセラミック積層体の製造方法。
  3. 【請求項3】(d)工程が、(c)工程で得られた絶縁
    層成形体に対し、(b)、(c)の工程を順次繰り返し
    て前記絶縁層成形体が複数積層された積層成形体を作製
    するとともに、少なくとも一つの絶縁層成形体の表面
    に、金、銀および銅の少なくとも一種を主成分とする導
    電性ペーストを塗布して配線パターンを形成する工程で
    あることを特徴とする請求項1記載のセラミック積層体
    の製造方法。
  4. 【請求項4】焼結助剤が硼素含有化合物およびアルカリ
    金属含有化合物を含有する請求項1乃至3のうちいずれ
    かに記載のセラミック積層体の製造方法。
  5. 【請求項5】絶縁層を複数積層してなるセラミック積層
    体の製造方法であって、以下の(a)〜(e)の工程を
    具備するとともに、セラミック原料粉末が、金属元素と
    して少なくともMg,Ti,Caを含有する複合酸化物
    であって、その金属元素酸化物による組成式を(1−
    x)MgTiO3−xCaTiO3(但し、式中xは重量
    比を表し、0.01≦x≦0.15)で表される主成分
    100重量部に対して、硼素含有化合物をB23換算で
    3〜30重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金
    属炭酸塩換算で1〜25重量部添加含有してなることを
    特徴とするセラミック積層体の製造方法。 (a)少なくともセラミック粒子および該セラミック粒
    子を850〜1050℃で焼結せしめる焼結助剤を含有
    するセラミック原料粉末と、光硬化可能なモノマーとを
    含有するスリップを作製する工程 (b)前記スリップを薄層化し、乾燥して絶縁層成形体
    を形成する工程 (c)前記絶縁層成形体に露光処理を施し、該絶縁層成
    形体を硬化させる工程 (d)前記(c)工程で得られた絶縁層成形体に対し、
    (b)、(c)の工程を順次繰り返して前記絶縁層成形
    体が複数積層された積層成形体を作製する工程 (e)前記積層成形体を850〜1050℃で焼成する
    工程
  6. 【請求項6】絶縁層を複数積層してなるセラミック積層
    体の製造方法であって、以下の(a)〜(e)の工程を
    具備するとともに、セラミック原料粉末が、金属元素と
    して少なくともCa,Zrを含有する複合酸化物であっ
    て、これらのモル比による組成式をxCaO・ZrO2
    と表した時、前記xが0.87≦x≦1.36を満足す
    る主成分100重量部に対して、硼素含有化合物をB2
    3換算でa重量部、アルカリ金属含有化合物をアルカ
    リ金属炭酸塩換算でb重量部の範囲で添加含有してな
    り、かつ、前記a,bが0≦a≦30、0≦b≦20、
    1.5≦a+bを満足することを特徴とするセラミック
    積層体の製造方法。 (a)少なくともセラミック粒子および該セラミック粒
    子を850〜1050℃で焼結せしめる焼結助剤を含有
    するセラミック原料粉末と、光硬化可能なモノマーとを
    含有するスリップを作製する工程 (b)前記スリップを薄層化し、乾燥して絶縁層成形体
    を形成する工程 (c)前記絶縁層成形体に露光処理を施し、該絶縁層成
    形体を硬化させる工程 (d)前記(c)工程で得られた絶縁層成形体に対し、
    (b)、(c)の工程を順次繰り返して前記絶縁層成形
    体が複数積層された積層成形体を作製する工程 (e)前記積層成形体を850〜1050℃で焼成する
    工程
  7. 【請求項7】絶縁層を複数積層してなるセラミック積層
    体の製造方法であって、以下の(a)〜(e)の工程を
    具備するとともに、セラミック原料粉末が、金属元素と
    して少なくともBa、Tiを含有する複合酸化物であっ
    て、これらのモル比による組成式を、BaO・x(Ti
    1-aZra)O2と表した時、前記x、aが、3.5≦x
    ≦4.5、0≦a≦0.20を満足する主成分100重
    量部に対して、亜鉛含有化合物をZnO換算で4〜30
    重量部、硼素含有化合物をB23換算で1〜20重量
    部、アルカリ金属含有化合物をアルカリ金属炭酸塩換算
    で1〜10重量部添加含有することを特徴とするセラミ
    ック積層体の製造方法。 (a)少なくともセラミック粒子および該セラミック粒
    子を850〜1050℃で焼結せしめる焼結助剤を含有
    するセラミック原料粉末と、光硬化可能なモノマーとを
    含有するスリップを作製する工程 (b)前記スリップを薄層化し、乾燥して絶縁層成形体
    を形成する工程 (c)前記絶縁層成形体に露光処理を施し、該絶縁層成
    形体を硬化させる工程 (d)前記(c)工程で得られた絶縁層成形体に対し、
    (b)、(c)の工程を順次繰り返して前記絶縁層成形
    体が複数積層された積層成形体を作製する工程 (e)前記積層成形体を850〜1050℃で焼成する
    工程
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