JP5057612B2 - 低温焼成磁器およびこれを用いた配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波やミリ波等の高周波領域で使用される通信用途の低温焼成磁器およびこれを用いた配線基板に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、半導体素子などを搭載するための基板としては、アルミナなどのセラミック基板が用いられているが、最近に至り、アルミナに比較して誘電率が低い点、焼成温度が低い低抵抗の導体、例えばCu、Au、Agでの配線を形成できる点などで優れていることから、特にマイクロ波やミリ波の高周波領域で使用される通信用途の基板として1050℃以下の低温で焼成できる低温焼成磁器が注目されている。
【0003】
従来、かかる低温焼成磁器として、例えば、ホウケイ酸系ガラス等のガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合粉末を成形後、焼成したいわゆるガラスセラミックスが開発されつつある。
【0004】
このようなガラスセラミックスを絶縁基板として用いた配線基板の導体材料としてCu、Au、Agが使用されるが、このうち、Auはコストの点から汎用性に欠け、Agは大気雰囲気での焼成が可能であるものの、Agの絶縁基板内部へのマイグレーションが生じて絶縁抵抗が低下したり、半田濡れ性が悪い等の信頼性において問題があり、コストおよび絶縁基板や半田等との相性のよいCuが導体として好適に用いられている。
【0005】
また、本出願人は特開平9−208298号等において、SiO2−Al2O3−MgO−ZnO−B2O3系のガラス粉末に対してZnO粉末とSiO2粉末を添加、混合して成形後、焼成したガラスセラミックスが1000℃以下で焼成ができ、機械的強度が高く、かつ高周波用途に適した低誘電率、低誘電正接のガラスセラミックスを提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−208298号のZnOの含有量の多いガラスセラミックスを絶縁基板とし、Cuを導体配線層として用いた配線基板の場合、絶縁基板表面の導体配線層にAuメッキを施すと、絶縁基板の表面にもAuが付着して変色したり、斑点が発生して外観が悪く、また、表面の導体配線層間のショートを招き、製品の歩留りが低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、1050℃以下の低温で焼成して緻密化可能であるとともに、Auメッキを施しても磁器表面にAuが付着せず良好な外観を保つ低温焼成磁器、およびこれを絶縁基板として導体配線層の微細配線化が可能な配線基板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対して検討した結果、磁器全量中にZnの酸化物をZnO換算で7〜16重量%含有する低温焼成磁器において、磁器全量に対して、Fe、CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を所定量添加することにより、1050℃以下での低温焼成化が可能となるとともに、磁器にAuメッキを施しても磁器表面にAuの付着がなく良好な外観および絶縁性を維持できることを知見した。
【0009】
すなわち、本発明の低温焼成磁器は、磁器全量中にZnの酸化物をZnO換算で7〜16重量%含有してなるものであって、該磁器全量に対して、Fe、CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を酸化物(FeO、CoOおよびNiO)換算で0.05〜10重量%の割合で含有し、前記磁器の表面の一部に金属層を形成するとともに、該金属層の表面にAuメッキ膜を被着形成してなることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、ガーナイト結晶相を含有してなること、他の結晶相として、クォーツ結晶相、アルミナ結晶相、スピネル結晶相、エンスタタイト結晶相、ウイレマイト結晶相、スラウソナイト結晶相、チタニア結晶相、イルメナイト結晶相、ジルコニア結晶相、セルシアン結晶相の群から選ばれる少なくとも1種を含有することが望ましく、磁器全体に対して非晶質相を20〜70重量%の割合で含有することが望ましい。
【0011】
また、表面の一部に金属層を形成するとともに、該金属層の表面にAuメッキ膜を被着形成してなることが望ましい。
【0012】
さらに、10GHzにおける誘電率が6以下、かつ誘電損失が15×10-4以下であること、L*a*b*表色系における明度指数L*が85以下で表される色からなることが望ましい。
【0013】
また、本発明の配線基板は、上記低温焼成磁器を絶縁基板とし、該絶縁基板の表面および/または内部に導体配線層を形成してなることを特徴とするものである。
【0014】
ここで、前記導体配線層が銅を主体とし、かつ該導体配線層の表面にAuメッキ膜を被着形成してなることが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の低温焼成磁器は、磁器全量中にZnの酸化物をZnO換算で7〜16重量%含有してなるものである。ここで、低温焼成化の点および強度の点では、磁器中のZnの酸化物の含有量はZnO換算で、特に10〜16重量%、さらに12〜16重量%であることが望ましく、また、磁器中には、低温焼成化を図りつつ、高強度化、低誘電損失化する上で、ガーナイト(ZnAl2O4)結晶相を含有することが望ましい。
【0016】
さらに、磁器中には、誘電率の調整、熱膨張係数の調整、誘電損失の低減、強度向上、熱伝導率向上、メッキ液等の薬品に対する耐薬品性を高めるために、クォーツ結晶相、アルミナ結晶相、スピネル結晶相、エンスタタイト結晶相、ウイレマイト結晶相、スラウソナイト結晶相、チタニア結晶相、イルメナイト結晶相、ジルコニア結晶相、セルシアン結晶相の群から選ばれる少なくとも1種の他の結晶相を含有することが望ましい。
【0017】
また、磁器中には、低温焼成化、耐水性および強度向上の点で、磁器全量に対して非晶質相を20〜70重量%、特に20〜60重量%の割合で含有することが望ましく、さらに、磁器内部に存在する該非晶質相の含有量よりも磁器表面に存在する非晶質相の含有量が多く、磁器表面が非晶質相で覆われていることが望ましい。
【0018】
本発明によれば、前記磁器全量に対して、Fe、CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1種の酸化物(以下、特定の酸化物と略す。)を酸化物(FeO、CoOおよびNiO)換算(以下、単に含有量と略す。)で0.05〜10重量%、特に0.05〜5重量%、さらに0.2〜2重量%の割合で含有することを特徴とするものであり、これによって、1050℃以下の低温で焼成して緻密化可能であるとともに、磁器表面に金属層を被着形成してAuメッキを施すような場合でも該磁器の表面にAuが付着せず良好な外観を保つ低温焼成磁器、およびこれを絶縁基板として導体配線層の微細配線化が可能である。
【0019】
すなわち、特定の酸化物の含有量が0.05重量%よりも少ないと、磁器表面にAuメッキを施した場合に磁器表面にAuの付着が生じて変色したり、斑点が生じて、外観不良となったり、磁器表面の絶縁性を損ない、例えば、磁器表面に形成される導体配線層等の導体層間のショートを引き起こす。逆に、特定の酸化物の含有量が10重量%を越えると、1050℃以下の低温で磁器の相対密度を90%以上、特に95%以上に緻密化させることができず、磁器の耐水性、耐薬品性が低下するとともに、磁器の強度が低下する。
【0020】
また、特定の酸化物のうち、磁器の低誘電率化および低誘電損失化を図る上では、Coの酸化物を必須として含有することが望ましく、また、その含有量は0.05〜5重量%であることが望ましい。これによって、得られる磁器は、例えば10GHzにおける誘電率が6以下、特に5以下、誘電損失が15×10-4以下、特に10×10-4以下の優れた高周波特性を有するものとなる。
【0021】
さらに、本発明の磁器は、磁器中に特定の酸化物を含有することから、L*a*b*表色系における明度指数L*がL*≦85で表される色を呈するものであり、これによって、磁器の外観をさらに良好なものとすることができ、例えば、導体層成分が磁器中に拡散(マイグレーション)するような場合においても変色が発生することを防止する効果がある。特に、磁器中にCoOを含有せしめた場合には、磁器がL*≦85で、−5≦a*≦5、b*≦−10の色を呈して良好な外観を有するとともに、導体層成分の拡散した陰(しみ)を有効に目立たなくすることができる。
(製造方法)
また、上記磁器を製造するには、例えば、無機物成分100重量%に対して、ガラス粉末を50〜90重量%とセラミックフィラー粉末を10〜50重量%との割合で混合する方法(ガラス粉末および/またはセラミックフィラー粉末にZnOを含む)や、ZnO粉末を含む所定の酸化物粉末を混合する方法によって原料粉末を調整する。
【0022】
ここで、上記ガラス粉末としては、少なくともSiO2、Al2O3、RO(ただし、RはMg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも1種)を含有することが望ましく、特に、SiO2−Al2O3−RO−ZnO−B2O3系のガラスやSiO2−Al2O3−ZnO−B2O3−RO−ZrO2−TiO2系等の硼珪酸亜鉛ガラスであることが望ましい。なお、後述する脱バインダ性を高める点で、ガラス粉末原料のガラス軟化点は690〜800℃であることが望ましい。
【0023】
また、酸化物粉末の組み合わせとしては、ZnO、TiO2、MgO、SiO2、Al2O3、ZrO2の各酸化物粉末およびZnTiO3、Zn2TiO4、MgTiO3、Mg2TiO4、MgSiO3、MgSiO4、ZnSiO3、Zn2SiO4等のそれらの複合酸化物、さらには焼成過程で酸化物を形成しうる炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩等の形態でも用いることができ、各原料粉末を所定の比率で秤量する。
【0024】
本発明によれば、上記原料粉末に対して、Fe、CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1種の特定の酸化物粉末または焼成過程で酸化物を形成しうる炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩等を添加する。また、酸化物の形態としては、例えばCoの場合、CoOやCo3O4の形態で添加することができるが、中でもCo3O4の形態で添加すると焼成中にCo3O4→3CoO+(1/2)O2の分解反応が生じ、この分解により生じたO2(酸素)によって有機バインダの分解を促進することができるとの効果を有する。
【0025】
また、特定の酸化物はガラス原料中に含有せしめることも可能であるが、添加量の調整が可能である点、上記のように酸化物の添加形態が自由に選択できる点で、酸化物粉末として添加することが望ましい。
【0026】
さらに、これらの原料粉末のうち、ガラス粉末および酸化物粉末は、分散性を高め、焼結性を向上するために平均粒径が10μm以下、特に5μm以下であることが望ましく、また、セラミックフィラー粉末は、焼結性を高め、誘電損失を低減するために、平均粒径が5μm以下、特に0.5〜4.5μmであることが望ましい。
【0027】
次に、上記混合粉末に適宜、メタクリレート樹脂等の有機バインダや分散剤、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の可塑剤、トルエン、酢酸エチル等の溶剤等を添加した後、例えば、プレス成形、冷間一軸プレス成形、押出成形、ドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法等により任意の形状に成形し、酸化性雰囲気中または非酸化性雰囲気中にて脱バインダを行った後、800〜1050℃、特に850〜1000℃、さらに850〜975℃にて0.5時間以上焼成することによって、磁器の相対密度を90%以上に緻密化することができる。
【0028】
また、上記焼成を非酸化物中にて行う場合には、特に水蒸気を含有する窒素ガス等の不活性ガスを流通させた状態で690〜800℃にて脱バインダおよびバインダの分解後に残存する炭素の除去を行うことが望ましい。
(配線基板の製造方法)
一方、上記磁器を絶縁基板とした配線基板を作製するには、前記混合粉末を用いて、所望により適当な有機バインダ、可塑剤、分散剤、溶剤を添加、混合してスラリーを調製し、これをドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法、押出成形法、プレス成形法等の公知の成形法によってシート状に成形する。
【0029】
そして、所望により、該シート状の成形体中にスルーホールを形成し、該スルーホール内に銅、銀、金のうち少なくとも1種を含む金属ペーストを充填する。また、このシート状の成形体の表面には前記金属を含有する金属ペーストを用いて、導体配線層のパターンをスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の公知の印刷法により導体配線層の厚みが5〜30μmとなるように印刷、塗布する。
【0030】
その後、複数のシート状成形体を、ビアホール導体および導体配線層の位置合わせを行いながら積層圧着した後、酸化性雰囲気または非酸化性雰囲気中、800〜1050℃、特に、850〜1000℃、さらに850〜975℃にて焼成することにより配線基板を作製することができる。
【0031】
次に、本発明によれば、表面に形成した配線導体層の表面に、無電解メッキ法によってNiまたはCuメッキ膜を被着形成した後、Auメッキ膜を被着形成する。なお、メッキ前処理として酸性フッ化アンモニウム等の水溶液中に配線基板を浸漬し、導体配線層表面に覆われているガラスを除去してメッキ処理を施すことが望ましい。この時、絶縁基板の表面に覆われているガラスが同時に除去されることから、磁器内部に存在するZnの酸化物の結晶相が露出する。磁器中に特定の酸化物を添加しない場合には、このZnの価数が焼成時の雰囲気等によって不定比となる結果、このZnの酸化物の表面にAuが付着するものと考えられる。本発明によれば、上記Znの酸化物の価数が特定の酸化物の添加により変化することによって絶縁基板表面へのAuの付着が抑制されるものと推定される。
【0032】
一方、この配線基板の表面には、所望により、Si、Ga−As、Si−Ge等の半導体素子やアンテナ、フィルタ等の素子が搭載され、配線基板の導体配線層と信号の伝達が可能なように接続される。具体的な接続方法としては、配線層表面に半田を介して素子を直接実装したり、ワイヤボンディング、TABテープなどにより接続することも可能である。
【0033】
さらに、所望により、素子が搭載された配線基板表面に、絶縁基板と同種の絶縁材料や、その他の絶縁材料、あるいは放熱性が良好な金属等からなるリッドをガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤により接合することにより、素子を気密に封止することができ、これにより素子収納パッケージ等の配線基板を作製することができる。
【0034】
なお、導体配線層パターンの形成方法としては、上述した方法以外に金属箔等の高純度金属をメッキ法や樹脂フィルムを用いた転写法によって形成することも可能である。また、この場合には、絶縁基板と導体配線層の焼成時の収縮挙動を近似させて良好な導体配線層を形成する上で、シート状積層体の少なくとも一方の表面に、該シート状積層体の焼成温度では焼結しない無機粉末を主として含有する拘束シートを積層した状態で焼成することが望ましい。
(配線基板)
次に、上記方法によって得られる配線基板の一例について、その好適例である図1の半導体素子を実装した半導体素子収納用パッケージについての概略断面図を基に説明する。
図1によれば、半導体素子収納用パッケージ(以下、単にパッケージと略す。)1は、上述した低温焼成磁器からなる複数層の絶縁層2a、2bが積層された絶縁基板2の表面および内部に導体配線層3およびビアホール導体4が形成された構成からなり、導体配線層3およびビアホール導体4によって回路網が形成されている。
【0035】
また、導体配線層3およびビアホール導体4は、信号の伝送速度を高め、特に高周波信号の伝送損失を低減するために、銅、銀、金の群から選ばれる少なくとも1種の低抵抗金属、特に銅を主成分とする導体からなることが望ましい。
【0036】
ここで、本発明によれば、絶縁基板2の表面に形成された導体配線層(以下、表面配線層と略す。)3aの表面にAuメッキ膜5が被着形成されており、さらに、表面配線層3aとAuメッキ膜5との間には、下地メッキ膜として、NiまたはCuからなるメッキ膜が形成されているが、かかるAuメッキ膜5を具備するものであっても絶縁基板2表面にAuが付着することなく良好な表面を有するものとなる。
【0037】
さらに、図1によれば、絶縁基板2表面には、Si、Si−Ge、Ga−As等の半導体素子等の素子8が搭載されている。なお、素子8および導体配線層3に高周波信号、特に1GHz以上、さらに20GHz以上の高周波信号を伝送する場合には、高周波信号の伝送損失を低減するために、高周波信号を伝送するための導体配線層3がストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路および誘電体導波管のうちの1種から構成されることが望ましい。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
平均粒径2μmの以下3種のガラス粉末、
ガラスA:SiO2 :44重量%、Al2O3 :29重量%、MgO:11重量%、ZnO:7重量%、B2O3 :9重量%
ガラスB:SiO2:50重量%、Al2O3:25重量%、MgO:9重量%、ZnO:8重量%、B2O3:8重量%
ガラスC:SiO2 :24重量%、Al2O3 :8重量%、ZnO:15重量%、B 2O3 :18重量%、BaO:26重量%、ZrO2 :2重量%、CaO:5重量%、SrO:1重量%、SnO2 :1重量%
に対して、表1に示すセラミック粉末を混合し、これに有機バインダとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で12重量%、可塑剤としてフタル酸ジブチルを6重量%添加し、トルエンおよび酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを作製した。
【0039】
得られたスラリーをドクターブレード法により厚さ0.25mmのグリーンシートに成形した。このシートを8枚加圧積層し60mm□に切断した成形体、及びCu粉末にガラス粉末、セラミック粉末、有機バインダー、溶剤を添加して作製したCuペーストを12mm□のパターンで印刷したシートを最上層として3枚加圧積層し24mm□に切断した成形体2を作製した。
【0040】
成形体中の有機成分(バインダー、可塑剤等)を分解除去するために露点40℃の窒素及び水蒸気の混合雰囲気中で750℃、1時間の熱処理を行い、その後同じ雰囲気中で表1の温度で1時間の焼成を行い、成形体1を焼成した基板1、及び成形体を焼成した表層にCu導体を形成した基板2を得た。
【0041】
基板1については、色を特定するとともに、厚みが1mmになるように表面及び裏面の両面を平面研削し、空洞共振器法により10GHzにおける誘電率および誘電損失(tanδ)を測定した。また、X線回折チャートから結晶相を同定した。さらに、JISR−1601に準じて磁器の3点曲げ強度(表中には強度と記載)を測定した。さらに、磁器中の構成成分をICP分析にて定量し、ZnOの含有量および特定酸化物(FeO、CoOおよびNiO)の含有量を算出した。結果は表1に示した。
【0042】
また、基板2については、形成されたCu導体パターン表面のガラス成分を酸性フッ化アンモニウム水溶液によってエッチングした後、無電解Niメッキ膜を3μm、無電解Auメッキ膜を1μmの厚みで施し、Auメッキ膜を施した後の磁器表面についてAu成分の付着による変色が発生しているかどうかを40倍の実体顕微鏡で観察した。結果は表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果より、磁器全量中のZnO量が7重量%より少ない試料No.1では磁器表面にAu成分の付着は発生しないが、磁器密度が低下して磁器強度が低下した。また、特定酸化物の含有量が0.05重量%より少ない試料No.5、18ではAuメッキによって磁器表面にAu成分の付着がみられた。また、磁器中の特定酸化物の含有量が10重量%を超える試料No.14、22では1050℃以下の焼成によって磁器を緻密化することができなかった。
【0045】
これに対して、本発明に従い、磁器全量中にZnOを7〜16重量%、かつ特定酸化物を0.05〜10重量%の割合で含有せしめた試料No.2〜4、6〜13、15〜17、19〜21、23では、1050℃以下の焼成によって磁器を緻密化して3点曲げ強度170MPa以上となり、かつ磁器表面にAuメッキを施しても磁器表面にAu成分が付着することなく良好な外観を維持するものであった。
【0046】
さらに、CoをCoO換算で0.05〜5重量%添加した試料No.2〜4、6〜11、15〜17、19〜21、23では、いずれも10GHzにおける誘電損失(tanδ)が15×10-4以下の優れた特性を有するものであった。
【0047】
また、表1の試料No.8について、上記磁器1のX線回折ピークより磁器中の非晶質(ガラス)相の含有比率を算出したところ、その含有量は60重量%であった。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の低温焼成磁器によれば、磁器全量中にZnの酸化物をZnO換算で7〜16重量%含有するとともに、磁器全量に対して、Fe、CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を所定量添加することにより、1050℃以下での低温焼成化が可能となるとともに、磁器にAuメッキを施しても磁器表面にAuの付着がなく良好な外観および絶縁性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低温焼成磁器を絶縁基板として用いた半導体素子収納用パッケージ(配線基板)の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 半導体素子収納用パッケージ(配線基板)
2 絶縁基板
2a、2b 絶縁層
3 導体配線層
3a 表面配線層
4 ビアホール導体
5 Auメッキ膜
6 NiまたはCuメッキ膜
8 素子
Claims (8)
- 磁器全量中にZnの酸化物をZnO換算で7〜16重量%含有してなる低温焼成磁器であって、該磁器全量に対して、Fe、CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を酸化物(FeO、CoOおよびNiO)換算で0.05〜10重量%の割合で含有し、前記磁器の表面の一部に金属層を形成するとともに、該金属層の表面にAuメッキ膜を被着形成してなることを特徴とする低温焼成磁器。
- ガーナイト結晶相を含有してなることを特徴とする請求項1記載の低温焼成磁器。
- 他の結晶相として、クォーツ結晶相、アルミナ結晶相、スピネル結晶相、エンスタタイト結晶相、ウイレマイト結晶相、スラウソナイト結晶相、チタニア結晶相、イルメナイト結晶相、ジルコニア結晶相、セルシアン結晶相の群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2記載の低温焼成磁器。
- 前記磁器全量に対して非晶質相を20〜70重量%の割合で含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の低温焼成磁器。
- 10GHzにおける誘電率が6以下、かつ誘電損失が15×10−4以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の低温焼成磁器。
- L*a*b*表色系における明度指数L*が85以下で表される色からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の低温焼成磁器。
- 請求項1乃至6のいずれか記載の低温焼成磁器を絶縁基板とし、該絶縁基板の表面および/または内部に導体配線層を形成してなることを特徴とする配線基板。
- 前記導体配線層が銅を主体とし、かつ該導体配線層の表面にAuメッキ膜を被着形成してなることを特徴とする請求項7記載の配線基板。
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