JP3236257B2 - 熱可塑性エラストマー組成物およびそれを使用した空気入りタイヤ - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物およびそれを使用した空気入りタイヤ

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JP3236257B2
JP3236257B2 JP00502898A JP502898A JP3236257B2 JP 3236257 B2 JP3236257 B2 JP 3236257B2 JP 00502898 A JP00502898 A JP 00502898A JP 502898 A JP502898 A JP 502898A JP 3236257 B2 JP3236257 B2 JP 3236257B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性エラスト
マー組成物、更に詳しくは、ナイロン樹脂とイソブチレ
ンパラメチルスチレン共重合体のハロゲン化物(X−I
PMS)からなる、耐久性に優れ、かつタイヤ内部外
観、耐空気透過性に優れた熱可塑性エラストマー組成
物、およびそれを使用した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】高密度ポリエチレン樹脂とナイロン6又
はナイロン66(HDPE/PA6.66)、ポリエチ
レンテレフタレートと芳香族ナイロン(PET/MXD
6)、及びポリエチレンテレフタレートとビニルアルコ
ール−エチレン共重合体(PET/EVOH)等の熱可
塑性樹脂/熱可塑性樹脂二元系のブレンド物で、成型に
より一方の熱可塑性樹脂が層状として複層化した低気体
透過性能(ガスバリアー性能)を有する組成物及びその
製造法については、秦功夫:高分子、40(4),p.
244(1991)等により既に公知である。そして、
このような系の組成物をタイヤのインナーライナー層に
使用することが、本願出願人により既に出願されている
(特願平7−55929号)。しかしながら、これらの
材料は、熱可塑性樹脂/熱可塑性樹脂ブレンド物である
ため、ガスバリアー性には優れているが、柔軟性がない
ためにタイヤ走行時にフィルムが破壊してしまう。
【0003】また、ゴムと熱可塑性樹脂からなる熱可塑
性エラストマーをタイヤのインナーライナーに使用した
例もあるが(特願平8−183683号)、一般に、耐
久性の優れた柔軟な材料はその耐熱性が低く、タイヤ加
硫温度以下の融点をもっている熱可塑性樹脂をマトリッ
クスに使用した熱可塑性エラストマーでは、ブラダー離
型時、ブラダーへの付着、ブラダーとのこすれ等でタイ
ヤ内面が外観不良となる欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、上記実情
に鑑み、これらの問題点を解消すべく総合的に検討を進
めた結果、柔軟性を維持したまゝ、耐熱性および耐久性
に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供すること、
更には、タイヤの空気透過防止層として該エラストマー
組成物を使用した場合に、柔軟性に優れつつ、その耐熱
性、耐久性にも優れた上、成形ブラダーへの付着がな
く、したがってその表面仕上がりも良好であるような、
当該エラストマー組成物のタイヤにおける空気透過防止
層への利用を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に従えば、融点1
70〜230℃のナイロン樹脂をイソブチレンパラメチ
ルスチレン共重合体のハロゲン化物を含むエラストマー
をゲル化率50〜95%に動的加硫した熱可塑性エラス
トマー組成物が提供される。
【0006】また、本発明に従えば、前記ナイロン樹脂
が、ナイロン11またはナイロン12とナイロン6/6
6共重合体とからなり、その組成比が10/90〜90
/10であること、前記熱可塑性エラストマー組成物中
のナイロン11またはナイロン12とナイロン6/66
共重合体とのブレンド物の分子量分布(Mw /Mn )
が、二軸混練後の樹脂抽出測定による分子量分布でMw
/Mn <10.0、好ましくはMw /Mn <5.0であ
ること、および前記エラストマーを架橋させる架橋剤を
予めエラストマー成分中に練り込んでおくことを特徴と
する熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0007】更に、本発明に従えば、前記熱可塑性エラ
ストマー組成物を空気透過防止層として使用した空気入
りタイヤが提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に従った熱可塑性エラスト
マー組成物としては、融点170〜230℃のナイロン
樹脂に対してイソブチレンパラメチルスチレン共重合体
のハロゲン化物(X−IPMS)を含むエラストマーを
配合して、これをゲル化率50〜95%に動的加硫した
ものが有効に用いられる。本発明による熱可塑性エラス
トマー組成物は、前記ナイロン樹脂の熱可塑性樹脂成分
が連続相を形成し、これに前記X−IPMSを含むエラ
ストマー成分が分散相として均一配合された状態を構成
していることが必要で、更に本発明で特徴的なことは、
このエラストマー成分がゲル化率50〜95%で存在し
ていることであって、それによって従来のこの種の熱可
塑性エラストマー組成物における弱点であった耐熱性、
耐久性の向上を図ったものである。
【0009】こゝで、前記のゲル化率とは、試料を一昼
夜、ソックスレー抽出にてゴムに対する溶媒(本場合に
は、アセトンおよびn−ヘキサン)で抽出し、そして乾
燥残渣を秤量し、更に組成物の知識に基づいて適当な補
正を行うことによって不溶性重合体の量を決定すること
からなる。即ち、補正された初期および最終重量は、最
初の重量からゴム以外の可溶性成分および有機溶媒可溶
性樹脂成分を減ずることによって得られる。全ての不溶
性の顔料、充填剤その他は、初期および最終重量から減
じられる。ゲル化率が50%未満である場合には、高剪
断状態でゴムと樹脂を混練しても、一度分散したゴムが
再び合体して、樹脂中にゴムを微細(数ミクロン粒径)
に分散、固定することができず、フィルム物性が悪化し
てしまう。また、ゲル化率が95%超であると、熱可塑
性エラストマー組成物を動的耐久試験に供した場合に、
エラストマー成分のヤング率が大きくなりすぎるため、
エラストマーを起点に破壊が生じてしまう。このことか
ら、ゲル化率が50〜95%であることが好ましい。
【0010】本発明による熱可塑性エラストマー組成物
では、前記熱可塑性樹脂成分に融点170〜230℃の
ナイロン樹脂が、また、前記エラストマー成分にX−I
PMSを含むゴム成分が選定使用される。本発明に使用
できる、融点170〜230℃のナイロン樹脂には、ナ
イロン6(N6)、ナイロン11(N11)、ナイロン
12(N12)、ナイロン6/66共重合体(N6/6
6)、ナイロン610(N610)およびナイロン61
2(N612)等が含まれる。また、前記エラストマー
成分のX−IPMSと共に使用できるゴム成分には、ジ
エン系ゴムおよびその水添物(例えば、NR、IR、エ
ポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBRおよび低
シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR)、
オレフィン系ゴム(例えば、エチレンプロピレンゴム
(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピ
レンゴム(M−EPM)、IIR、イソブチレンと芳香
族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴ
ム(ACM)、アイオノマー)、含ハロゲンゴム(例え
ば、Br−IIR、Cl−IIR、イソブチレンパラメ
チルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、
クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリ
エチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン
(M−CM))、シリコーンゴム(例えば、メチルビニ
ルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフ
ェニルビニルシリコーンゴム)、含イオウゴム(例え
ば、ポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(例えば、ビニ
リデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系
ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含
フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴ
ム)、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系エラ
ストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラ
ストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラ
ストマー)等を挙げることができる。
【0011】本発明による熱可塑性エラストマー組成物
において、前記融点範囲のナイロン樹脂を熱可塑性樹脂
成分として選定したのは、170℃未満の融点のもので
は、タイヤ加硫時に熱可塑性エラストマー組成物が融解
し、ブラダーに付着してタイヤ内面の外観を悪化させ、
また、230℃を超えるものでは、熱可塑性エラストマ
ーのヤング率が大きくなり、タイヤ走行時に熱可塑性エ
ラストマー組成物の耐久性が低下するからである。ま
た、前記エラストマー成分のX−IPMSに含めること
ができるゴム成分には、好ましくは、エチレン性不飽和
ニトリル−共役ジエン系高飽和共重合体ゴム(HNB
R)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、NBR、ヒドリ
ンゴム、アクリルゴム等が挙げられるが、これらは、相
溶性の大きく異なるナイロンとX−IPMSとの相溶性
を向上させる目的で用いる。このエラストマー成分にお
いて、主成分としてのX−IPMSは、全体のゴム成分
量の30重量%以上を配合することが熱可塑性エラスト
マー組成物の耐空気透過性、耐熱性向上の理由により必
要であり、その余を前記の併用ゴム成分とすることがで
きる。
【0012】本発明の熱可塑性エラストマー組成物にお
ける前記特定のナイロン樹脂に対して、X−IPMSを
含むエラストマー成分は、ナイロン/エラストマー成分
が30/70〜70/30の範囲の重量比で配合するこ
とができ、好ましくは35/65〜50/50の範囲で
ある。
【0013】本発明の好ましい態様によれば、特に前記
ナイロン樹脂成分として、ナイロン11(N11)また
はナイロン12(N12)とナイロン6/66共重合体
(N6/66)とからなり、その組成比(重量比)が1
0/90〜90/10、好ましくは、30/70〜85
/15である熱可塑性樹脂成分を選定使用した熱可塑性
エラストマー組成物とすることができる。かかる熱可塑
性エラストマー組成物は、耐久性にも優れ、かつタイヤ
内部外観および耐空気透過性にも優れ、そしてこれらの
諸特性をバランスよく有する熱可塑性エラストマーが得
られるという点で、特に好ましいものである。また、こ
の熱可塑性エラストマー組成物中のN11またはN12
とN6/66とのブレンド物の分子量分布(Mw /Mn
)が、二軸混練後の樹脂抽出測定による分子量分布で
Mw /Mn <10.0、好ましくはMw /Mn <5.
0、さらに好ましくはMw /Mn <3.0となるような
熱可塑性エラストマー組成物は、上記諸特性に加えて、
更に疲労耐久性に優れた本発明の熱可塑性エラストマー
組成物が得られる。熱可塑性エラストマー組成物中の樹
脂成分(N11またはN12とN6/66のブレンド
物)には、2軸混練時の高温高剪断の条件とエラストマ
ー成分の架橋剤に用いられる成分(例えば、アミン系加
硫促進剤、金属酸化物とハロゲン化物によって生成する
ハロゲン化金属等)によって分子切断が生じる。分子切
断が生じると、樹脂成分の分子量分布は大きくなる傾向
があり、これが10を超える場合には、特に耐久性が悪
化することが見出された。
【0014】本発明による熱可塑性エラストマー組成物
に配合される前記エラストマー成分には、そのエラスト
マーの分散性や耐熱性の改善その他のために一般的にエ
ラストマーに配合される補強剤、充填剤、架橋剤、軟化
剤、老化防止剤、加工助剤などの配合剤が必要量添加さ
れる。このうち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物
では、必要量の架橋剤がエラストマー成分中に加えられ
るが、本発明で必要とするエラストマーのゲル化率50
〜95%を達成するには、このエラストマーを架橋せし
める架橋剤を予めエラストマー成分中に練り込んでおく
方法を採ることが有効である。このような方法によっ
て、従来のように、熱可塑性樹脂成分、エラストマー成
分を溶融混練した後、架橋剤を添加する方法に比して、
架橋剤が熱可塑性樹脂と一部反応して該樹脂に分子切断
等の作用を与えることが少なく、かつ、エラストマー成
分のゲル化率制御も容易で、結果的に熱可塑性樹脂の劣
化が少なく、かつ、エラストマー成分の50〜95%の
加硫が達成され、本発明の熱可塑性エラストマー組成物
の耐久性を高めることが可能となるからである。
【0015】本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製
造方法は、以下の手順で行う。先ず、エラストマー成分
と所定の架橋剤を予め一般のニーダー、バンバリーミキ
サー等を用いて、均一混合状態が得られるまで混練す
る。この際、エラストマー成分には、カーボン、オイ
ル、その他炭酸カルシウム等の充填剤を適当量添加する
ことも可能である。また、この混練の時、材料温度が高
すぎると混練機中でゴム成分が架橋反応を起こしてしま
うため、温度は、120℃以下の低温に抑えて混練する
ことが必要である。このようにして作製した架橋剤含有
エラストマー成分と所定のナイロン樹脂を2軸混練機等
に投入し、溶融混練を行ないながら、ゴム成分を動的架
橋させて、連続相(マトリックス相)を形成するナイロ
ン樹脂中にエラストマー成分を分散相(ドメイン)とし
て分散させる。また、ナイロン樹脂またはエラストマー
成分への各種配合剤(加硫剤は除く)は、上記混練中に
添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが
好ましい。ナイロン樹脂とエラストマー成分の混練に使
用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押
出機、ニーダー、バンバリーミキサー、2軸混練押出機
等が使用できる。なかでもナイロン樹脂とエラストマー
成分の混練およびエラストマー成分の動的加硫には、2
軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以
上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の
条件として、温度は所定のナイロン樹脂が溶融する温度
以上であればよい。また、混練時の剪断温度は500〜
7500sec -1であるのが好ましい。混練全体の時間
は、30秒から10分が好ましい。
【0016】このようにして得られる熱可塑性エラスト
マー組成物は、連続相を形成するナイロン樹脂のマトリ
ックス中に不連続相を形成するエラストマー成分が分散
相(ドメイン)として分散した構造をとる。かかる状態
の分散構造をとることにより、熱可塑の加工が可能とな
り、成形に際してナイロン樹脂と同等の成形加工性を得
ることができるため、通常の樹脂用成形機、即ち押出成
形、またはカレンダー成形によってフィルム化すること
が可能となる。
【0017】また、前記エラストマー成分中に予め配合
される加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)
を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤と
しては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表
面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルフ
ァイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示で
き、例えば、0.5〜4phr (エラストマー成分(ポリ
マー)100重量部当りの重量部)程度用いることがで
きる。また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾ
イルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイ
ド、2,4−ビクロロベンゾイルパーオキサイド、2,
5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘ
キサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パー
オキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜2
0phr 程度用いることができる。更に、フェノール樹脂
系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化
物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとア
ルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示
でき、例えば、1〜20phr 程度用いることができる。
その他として、亜鉛華(5phr 程度)、酸化マグネシウ
ム(4phr 程度)、リサージ(10〜20phr 程度)、
p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキ
シム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジ
ニトロソベンゼン(2〜10phr 程度)、メチレンジア
ニリン(0.2〜10phr 程度)が例示できる。また、
前記加硫剤には、必要に応じて加硫促進剤を添加しても
よい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア
系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド
系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般
的な加硫促進剤を、例えば0.5〜2phr 程度用いるこ
とができる。
【0018】本発明による熱可塑性エラストマー組成物
は、柔軟性に優れつつ、その耐熱性、耐久性にも優れた
上、成形ブラダーへの付着がなく、また空気透過率が低
くて空気漏れ性能も優れているので、これをタイヤにお
ける空気透過防止層に有効な利用が図られる。
【0019】
【実施例】以下、実施例に従って本発明を更に具体的に
説明するが、本発明を以下の実施例に限定するものでな
いことは言うまでもない。
【0020】各例に用いた配合成分には、次の市販品を
用いた。1)樹脂成分 <商品名> <メーカー> N11(ナイロン11):リルサンBMN O (アトケム製) N6/661)(ナイロン6/66共重合体): (東レ製) アミランCM6001 N6/662)(ナイロン6/66共重合体): (東レ製) アミランCM6041 N66(ナイロン66):アミランCM3001N (東レ製) PP(ポリプロピレン):RV421 (トクヤマ) MAH−g−EEA(マレイン酸変性エチレンエチル アクリレート):A1600 (日本石油化学)2)ゴム(エラストマー)成分 Br−IPMS:EXXPRO 89−4 (エクソン化学製) HNBR:Zetpol 1020 (日本ゼオン製) ENR:50% Epoxidized Natural Rubber (Malaysia製) 3)加硫系成分 亜鉛華:亜鉛華3号 (正同化学製) ステアリン酸亜鉛: (正同化学製) ステアリン酸:ビーズステアリン酸NY (日本油脂製) イオウ:粉末イオウ (軽井沢精錬所) TT:Nocceler TT (大内新興化学製) M:Nocceler M (大内新興化学製)
【0021】熱可塑性エラストマー組成物の作製 実施例1〜5、比較例1,3〜5については、表1に示
す配合で、所定のエラストマー成分と加硫系をバンバリ
ーミキサーに投入し、約2分間混練し、120℃で放出
して加硫系入りエラストマー成分を調整し、ゴム用ペレ
タイザーでペレット化した。その後、エラストマー成分
と樹脂を所定の配合にてドライブレンドし、2軸混練機
に投入し、動的加硫して熱可塑性エラストマー組成物を
作製した。この時の混練条件は、温度230℃(比較例
4は、270℃)、剪断速度1000s-1で行なった。
実施例6については、エラストマー成分と樹脂が溶融分
散した後、加硫系を投入した。2軸混練によって作製さ
れた熱可塑性エラストマー組成物は、水冷した後、ペレ
ット化して、次に単軸押出機でTダイを通して、幅35
0mm、厚さ100μmのフィルム化を実施した。
【0022】以下の例において使用した試験法、評価方
法は、次のとおりである。
【0023】1)フィルムのヤング率の試験法 JIS K6251「加硫ゴムの引張試験方法」に準じ
た。 試験片:各例で作成したフィルムサンプルを、フィルム
の押出成形時の樹脂の押出方向に平行にJIS 3号ダ
ンベルで打ち抜いた。 得られた応力〜歪曲線の初期歪領域の曲線に接線を引
き、その接線の傾きよりヤング率を求めた。
【0024】2)フィルムの空気透過係数試験法 JIS K7126「プラスチックフィルム及びシート
の気体透過度試験方法(A法)」に準じた。 試験片:各例で作成したフィルムサンプルを用いた。 試験気体:空気(N2 :O2 =8:2) 試験温度:30℃
【0025】3)40%定歪耐久性試験法 熱可塑性エラストマー組成物フィルムにゴム系セメント
をハケ塗りし、乾燥後、タイヤカーカス用ゴム(カーカ
スなし)と積層させて、180℃で10分間加硫し、2
mm厚のフィルム/ゴム積層体を作製した。これをダンベ
ル形状に打ち抜き、40%の歪をかけながら5Hzの周期
で耐久試験に供した。(500万回で破壊しないものは
打切りとした。)
【0026】4)ゲル化率の測定 2軸混練後のペレット化した熱可塑性エラストマー組成
物をウォーターバス中で8時間アセトンにてソックスレ
ー抽出し、その残渣をさらに8時間n−ヘキサンにてソ
ックスレー抽出する。この操作により、未加硫のエラス
トマー成分は、溶媒で抽出されてくる。アセトンおよび
n−ヘキサン抽出物は、溶媒乾燥後重量を測定し、以下
の式によってゲル化率を決定した。(こゝで、ステアリ
ン酸は、溶媒に抽出されてくるため差し引いた。)
【数1】
【0027】5)分子量分布(Mw /Mn )の測定 上記n−ヘキサン抽出残渣をヘキサフルオロイソプロパ
ノール(以下、HFIPという)で8時間ソックスレー
抽出する。この操作によって、熱可塑性樹脂(ナイロ
ン)が溶解し、抽出されてくる。抽出物を無水トリフル
オロ酢酸にてアセチル化して、GPCで分子量測定を実
施した。得られたデータより、重量平均分子量と数平均
分子量との比から分子量分布(Mw /Mn )を求めた。
【0028】6)タイヤの成形 350mm幅の熱可塑性エラストマーフィルムにゴム系セ
メントを塗布し、これをタイヤ成形用ドラム上に巻き、
その上にカーカス、サイドベルト、トレッド等のタイヤ
部材を積層させ、インフレートさせて、グリーンタイヤ
とした。グリーンタイヤは、加硫機で180℃、10分
間加硫させ、タイヤサイズ165SR13のタイヤに仕
上げた。
【0029】7)タイヤ内部外観 耐熱性の低いものは、タイヤ加硫後フィルムが部分的に
加硫ブラダーにとられたり、もしくは、表面層が破壊
し、ザラザラ状に変質する。このようなものを不合格
(×)とする。また、タイヤ性能には影響しないが商品
性が低下するものを△とする。これら異常なきものを合
格(○)とする。
【0030】8)タイヤ空気漏れ性能試験法 165SR13スチールラジアルタイヤ(リム13×4
1/2−J)を使用して、初期圧力220kPa 、無負
荷条件にて室温21℃で3ケ月間放置して測定間隔4日
毎に圧力を測定した。測定圧力Pt 、初期圧力Po およ
び経過日数tとして、関数: Pt /Po =exp(−αt) に回帰してα値を求める。得られたαを用い、t=30
を下式に代入し、 β=〔1−exp(−αt)〕×100 β値を得る。このβ値を1ケ月当りの圧力低下率(%/
月)とする。
【0031】9)タイヤ耐久試験法 165SR13スチールラジアルタイヤ(リム13×4
1/2−J)を用い、空気圧140kPa で荷重5.5
kNを与え実路上を10000km走行する。走行後に、タ
イヤをリムから外し、タイヤ内面のライナー層を目視観
測し、ライナー層に亀裂、クラック、目視できるしわ、
ライナー層の剥離・浮き上がりがあるものを不合格
(×)、ないものを合格(○)と判定する。
【0032】各例における試験結果を表1に示す。
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】表Iの結果にみられるように、本発明に
従った熱可塑性エラストマー組成物をタイヤの空気透過
防止層に使用した実施例1〜6のものは、いずれも柔軟
性、耐久性に優れ、かつタイヤ内部外観および耐空気透
過性にも優れ、更に、疲労耐久性の点でも優れており、
また、これら諸特性をバランスよく保持していることが
わかる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 77/00 C08L 77/00 (72)発明者 黒田 紀明 神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム 株式会社 平塚製造所内 (72)発明者 川口 剛 神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム 株式会社 平塚製造所内 (72)発明者 原 祐一 神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム 株式会社 平塚製造所内 (72)発明者 川面 哲司 神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム 株式会社 平塚製造所内 (72)発明者 山内 茂 神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム 株式会社 平塚製造所内 (56)参考文献 特開 平8−259741(JP,A) 特開 平9−25370(JP,A) 特開 平10−29407(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 19/00 B60C 1/00 B60C 5/14 C08L 23/22 C08L 25/16 C08L 77/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 融点170〜230℃のナイロン樹脂と
    イソブチレンパラメチルスチレン共重合体のハロゲン化
    物を含むエラストマー成分をゲル化率50〜95%に動
    的加硫した熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 【請求項2】 前記ナイロン樹脂がナイロン11または
    ナイロン12とナイロン6/66共重合体とからなり、
    その組成比が10/90〜90/10である請求項1に
    記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 【請求項3】 前記熱可塑性エラストマー組成物中のナ
    イロン11またはナイロン12とナイロン6/66共重
    合体とのブレンド物の分子量分布(Mw /Mn )が、M
    w /Mn <10.0である請求項2に記載の熱可塑性エ
    ラストマー組成物。
  4. 【請求項4】 前記エラストマー成分を架橋させる架橋
    剤を、予めエラストマー成分中に練り込んでおくことを
    特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑
    性エラストマー組成物の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱
    可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層として使用
    した空気入りタイヤ。
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