JP3234492B2 - アルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極 - Google Patents

アルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極

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JP3234492B2 JP04657696A JP4657696A JP3234492B2 JP 3234492 B2 JP3234492 B2 JP 3234492B2 JP 04657696 A JP04657696 A JP 04657696A JP 4657696 A JP4657696 A JP 4657696A JP 3234492 B2 JP3234492 B2 JP 3234492B2
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    • Y02E60/10Energy storage using batteries

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ蓄電池用
非焼結式ニッケル極に係わり、詳しくは活物質利用率の
高いアルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極を提供するこ
とを目的とした、活物質粉末の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池な
どのアルカリ蓄電池のニッケル極として、ニッケル粉末
を穿孔鋼板等に焼結させて得た焼結基板に活物質(水酸
化ニッケル)を含浸させてなる焼結式ニッケル極がよく
知られている。
【0003】焼結式ニッケル極において活物質の充填密
度を大きくするためには、多孔度の大きい焼結基板を用
いる必要がある。しかし、焼結によるニッケル粒子間の
結合は弱く、焼結基板の多孔度を大きくするとニッケル
粉末が焼結基板から脱落し易くなる。従って、実用上
は、焼結基板の多孔度を80%より大きくすることがで
きず、それゆえ焼結式ニッケル極には、活物質の充填密
度が小さいという問題がある。また、一般にニッケル粉
末の焼結体の孔径は10μm以下と小さいため、活物質
の基板(焼結体)への充填を、煩雑な含浸工程を数回繰
り返し行う必要がある溶液含浸法により行わなければな
らないという問題もある。
【0004】このようなことから、最近、非焼結式ニッ
ケル極が新たに提案されている。非焼結式ニッケル極
は、活物質(水酸化ニッケル)と結合剤溶液(メチルセ
ルロース水溶液など)との混練物(ペースト)を多孔度
の大きい基板(耐アルカリ性金属をめっきした発泡メタ
ルなど)に直接充填することにより作製される。非焼結
式ニッケル極では、多孔度の大きい基板を用いることが
できるので(多孔度が95%以上の基板を用いることが
できる)、活物質の充填密度を大きくすることができる
とともに、活物質の基板への充填を一回的に行うことが
できる。
【0005】しかしながら、非焼結式ニッケル極におい
て活物質の充填密度を大きくするべく多孔度の大きい基
板を用いると、基板の集電能力が焼結式ニッケル極で用
いられる焼結基板に比べて悪いので、焼結式ニッケル極
に比べて導電性が悪く、活物質利用率が低い。
【0006】そこで、非焼結式ニッケル極の導電性を高
めるべく、活物質粉末として、水酸化ニッケル粒子の表
面を水酸化コバルトで被覆した複合体粒子からなる粉末
を用いたり(特開昭62−234867号公報参照)、
水酸化ニッケルを主成分とする粒子の表面をオキシ水酸
化コバルトで被覆した複合体粒子からなる粉末を用いた
り(特開平3−78965号公報参照)することが提案
されている。
【0007】しかしながら、本発明者らが検討したとこ
ろ、これらの改良によっても、活物質利用率の充分高い
非焼結式ニッケル極を得ることは困難であることが分か
った。
【0008】本発明は、以上の事情に鑑みなされたもの
であって、その目的とするところは、活物質利用率の極
めて高いアルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極を提供す
るにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明に係るアルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極
(本発明電極)は、水酸化ニッケル粒子又は水酸化ニッ
ケルを主成分とする粒子の表面に、ナトリウム含有量
0.1〜10重量%のナトリウム含有コバルト化合物か
らなる導電層を形成してなる複合体粒子からなる粉末を
活物質とする。
【0010】水酸化ニッケルを主成分とする粒子として
は、コバルト、亜鉛、カドミウム、カルシウム、マンガ
ン、マグネシウムなどのニッケル極の膨化を抑制する作
用を有する元素を水酸化ニッケルに固溶させたものが例
示される。
【0011】導電層を構成するナトリウム含有コバルト
化合物の化学構造は現在のところ定かでないが、本発明
における活物質粉末が高い比電気伝導率を示すことか
ら、コバルト化合物(オキシ水酸化コバルトなど)とナ
トリウムとの単なる混合物ではなく、コバルト化合物の
結晶中にナトリウムが取り込まれた形の層間化合物では
ないかと推察される。
【0012】本発明における活物質粉末は、例えば、水
酸化ニッケル粒子又は水酸化ニッケルを主成分とする粒
子の表面にコバルト化合物層を形成してなる複合体粒子
からなる粉末を、これに水酸化ナトリウム水溶液を加え
た状態で、50〜200°Cで加熱処理することにより
作製することができる。コバルト化合物層は、例えば、
硫酸コバルト水溶液に、水酸化ニッケル粉末を投入し、
水酸化ナトリウム水溶液を加えて、コバルト化合物を水
酸化ニッケルの粒子表面に化学的に析出させることによ
り形成される。水酸化ニッケル粉末と、酸化コバルト、
水酸化コバルト又は金属コバルトとを混練するメカニカ
ルチャージ法によっても、コバルト化合物層を水酸化ニ
ッケルの粒子表面に形成することができる。上記複合体
粒子からなる粉末に代えて、水酸化ニッケル粒子又は水
酸化ニッケルを主成分とする粒子からなる粉末と、水酸
化コバルト粉末、一酸化コバルト粉末又は金属コバルト
粉末などとの混合粉末を使用してもよいが、この方法で
は導電層(被膜)が形成されにくいので、前者の方法が
好ましい。加熱処理温度が50〜200°Cに規制され
るのは、この範囲を外れると、電導率の高い導電層が形
成されにくくなるからである。これは次の理由によると
考えられる。
【0013】すなわち、本発明における導電層は、例え
ば水酸化コバルトを出発物質に用いた場合、下記の反応
経路により形成される。
【0014】Co(OH)2 ⇔ HCoO2 - ⇔ Co
HO2 ⇒Na含有コバルト化合物(導電層)
【0015】しかるに、加熱処理温度が50°C未満の
場合は、CoHO2 ⇒Na含有コバルト化合物の反応が
充分に進行しにくくなるため、電導率の低いCoHO2
が多く生成する。一方、加熱処理温度が200°Cを越
えた場合は、電導率の低い四酸化三コバルト(Co3
4 )が多く生成する。これらが、加熱処理温度が50〜
200°Cを外れた場合に電導率の高い導電層が形成さ
れにくくなる理由と考えられる。
【0016】加熱処理時間は、水酸化ナトリウム水溶液
の量、濃度、加熱処理温度などによって異なる。一般的
には、0.5〜10時間である。
【0017】ナトリウム含有コバルト化合物のナトリウ
ム含有量は0.1〜10重量%に規制される。ナトリウ
ム含有量がこの範囲を外れると、電導率の充分高い導電
層が形成されなくなり、活物質利用率の極めて高い非焼
結式ニッケル極を得ることができなくなる。
【0018】本発明における活物質粉末を構成する複合
体粒子としては、ナトリウム含有コバルト化合物を、コ
バルト原子換算で1〜10重量%含有するものが好まし
い。ナトリウム含有コバルト化合物の含有量がコバルト
原子換算で1重量%未満の場合は、活物質粉末の導電性
が充分に改善されないために、充分な電極容量が得られ
ない。一方、同含有量がコバルト原子換算で10重量%
を越えた場合は、活物質たる水酸化ニッケルの量が減少
するために、これまた充分な電極容量が得られない。
【0019】本発明における活物質粉末としては、40
0kgf/cm2 で加圧した状態での比電気伝導率が1
×10-5Ω-1・cm-1以上であり、且つ平均粒径が3〜
20μmのものを使用することが好ましい。比電気伝導
率が1×10-5Ω-1・cm-1未満の場合は、活物質利用
率の充分高い非焼結式ニッケル極が得られにくくなり、
また平均粒径が3〜20μmの範囲を外れると、電極容
量が小さくなる。平均粒径が3μm未満の場合に電極容
量が低下するのは、二次凝集が起こり、充填しにくくな
るためと考えられる。また、平均粒径が20μmを越え
た場合に電極容量が低下するのは、活物質粒子間の接触
面積が小さくなるため、活物質利用率が低下するからで
ある。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるも
のではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変
更して実施することが可能なものである。
【0021】(予備実験)水酸化コバルトと、5重量
%、10重量%、15重量%、25重量%、35重量
%、40重量%、45重量%又は50重量%水酸化ナト
リウム水溶液とを、重量比1:10で混合し、80°C
で8時間加熱処理した。加熱処理後、水洗し、60°C
で乾燥して、ナトリウム含有コバルト化合物を作製し
た。これらのナトリウム含有コバルト化合物のナトリウ
ム含有率を原子吸光法により分析したところ、順に0.
05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、
5重量%、10重量%、12重量%、15重量%であっ
た。以下に記すナトリウム含有コバルト化合物のナトリ
ウム含有率は、上記の分析結果に基づき、使用した水酸
化ナトリウム水溶液の濃度から推定した値である。
【0022】(実施例1)硫酸コバルト13.1gを水
に溶かした水溶液1000mlに、水酸化ニッケル粉末
100gを投入し、次いで液のpHが11になるまで1
M水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら滴下し、その
後も攪拌を続け、液のpHが若干低下した時点で1M水
酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下して液のpHを常時1
1に保持して、1時間反応させた。pHの監視は、自動
焦点付きガラス電極を用いた。次いで、沈殿物をろ別
し、水洗して、水酸化ニッケル粒子の表面を水酸化コバ
ルトで被覆してなる複合体粒子からなる粉末を得た。次
いで、この粉末と25重量%水酸化ナトリウム水溶液と
を重量比1:10で混合し、80°Cで8時間加熱処理
した後、水洗し、60°Cで乾燥して、水酸化ニッケル
粒子の表面にナトリウム含有コバルト化合物からなる導
電層を形成してなる複合体粒子からなる活物質粉末を得
た。複合体粒子のナトリウム含有コバルト化合物含有率
を原子吸光法により分析したところ、コバルト原子換算
で5重量%であった。ナトリウム含有コバルト化合物の
ナトリウム含有率は、1重量%(予備実験からの推定
値)である。
【0023】上記の活物質粉末(平均粒径10μm)1
00重量部と、1重量%メチルセルロース水溶液20重
量部とを混練してペーストを調製し、このペーストをニ
ッケルめっきした発泡メタル(多孔度:95%;平均孔
径:200μm)に充填し、乾燥し、加圧成形して、非
焼結式ニッケル極(本発明電極)A1を作製した。
【0024】(比較例1)活物質粉末の作製において、
25重量%水酸化ナトリウム水溶液に代えて8重量%水
酸化リチウム水溶液(飽和溶液)を用いたこと以外は実
施例1と同様にして、非焼結式ニッケル極(比較電極)
B1を作製した。
【0025】(比較例2)活物質粉末の作製において、
25重量%水酸化ナトリウム水溶液に代えて25重量%
水酸化カリウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同
様にして、非焼結式ニッケル極(比較電極)B2を作製
した。
【0026】(比較例3)実施例1の活物質粉末の作製
工程の途中の工程において得た、水酸化ニッケル粒子の
表面を水酸化コバルトで被覆してなる複合体粒子からな
る粉末を、そのまま活物質粉末として用いたこと以外は
実施例1と同様にして、非焼結式ニッケル極(比較電
極)B3を作製した。
【0027】(比較例4)実施例1の活物質粉末の作製
工程の途中の工程において得た、水酸化ニッケル粒子の
表面を水酸化コバルトで被覆してなる複合体粒子からな
る粉末を、40°Cに加熱した30重量%過酸化水素水
と反応させて、表面の水酸化コバルトを酸化してβ−C
oOOHに変えた。活物質粉末として、この粉末を用い
たこと以外は実施例1と同様にして、非焼結式ニッケル
極(比較電極)B4を作製した。
【0028】〔ニッケル−カドミウム蓄電池の組立〕上
記の各非焼結式ニッケル極(正極)と従来公知のペース
ト式カドミウム極(負極)とを用いて、負極の容量が正
極の容量に比べて充分に大きいAAサイズのニッケル−
カドミウム蓄電池を組み立てた。セパレータとしてはポ
リアミド不織布を、また電解液としては30重量%水酸
化カリウム水溶液を用いた。
【0029】〔活物質粉末の比電気伝導率κ〕実施例1
及び比較例1〜4で作製した各活物質粉末の比電気伝導
率κを求めた。図1は、比電気伝導率κを求めるのに使
用した比電気伝導率測定装置Mの要部を示す部分断面図
である。図示の比電気伝導率測定装置Mは、プレスを行
って圧力を加えるための、ラム1a及びプレス基板1
b、導電材料からなり、それぞれ円板状の基部とそれよ
りも径小の円板状の突出部とからなって断面が凸状を呈
した治具2,3、内周面に絶縁層が設けられた円筒体
4、抵抗計5及び絶縁板6などを備える。治具3の突出
部には、筒状体4の内周面の下部が嵌合されている。治
具3の突出部の上面と円筒体4の内周面で形成される空
間の一部には、試料S(活物質粉末)が充填されてい
る。筒状体4の内周面の上部には、治具2の突出部が嵌
合されている。治具2,3には、ラム1a及びプレス基
板1bがそれぞれ上下から当接しており、治具2,3を
介して、試料Sに所定の圧力が加えられるようになって
いる。治具2,3には、試料Sの電気抵抗Rを測定する
ための抵抗計5が接続されている。上記の如き構成の比
電気伝導率測定装置Mと1gの試料Sとを用いて、40
0kgf/cm2 の圧力にて試料Sをプレスしたときの
試料Sの電気抵抗Rを測定し、下式より比電気伝導率κ
を算出した。結果を表1に示す。但し、非焼結式ニッケ
ル極B3に使用した活物質粉末の比電気伝導率κは、電
気抵抗Rが大きすぎて、比電気伝導率κを数値として求
めることができなかった。
【0030】 比電気伝導率κ(Ω-1・cm-1)=L/(A・R) 〔但し、Lは治具2の下面と治具3の上面との距離、A
は治具3の突出部の上面の面積(=治具2の突出部の下
面の面積)である。〕
【0031】〔非焼結式ニッケル極の活物質利用率〕上
記の各ニッケル−カドミウム蓄電池について、25°C
にて0.1Cで160%充電した後、25°Cにて1C
で1.0Vまで放電する工程を1サイクルとする充放電
を10サイクル行い、下式で定義される各非焼結式ニッ
ケル極の10サイクル目の活物質利用率を求めた。結果
を表1に示す。活物質利用率は非焼結式ニッケル極A1
の活物質利用率を100とした指数で示してある。
【0032】活物質利用率(%)={10サイクル目の
放電容量(mAh)/〔(活物質粉末に含まれる水酸化
ニッケルの重量)(g)×288(mAh/g)〕}×
100
【0033】
【表1】
【0034】表1に示すように、非焼結式ニッケル極A
1は、非焼結式ニッケル極B1〜B4に比べて、使用せ
る活物質粉末の比電気伝導率κが高いために、活物質利
用率が高い。
【0035】〈ナトリウム含有コバルト化合物のナトリ
ウム含有率と活物質利用率の関係〉加熱処理時の水酸化
ナトリウム水溶液として、5重量%、10重量%、15
重量%、35重量%、40重量%、45重量%又は50
重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は実施
例1と同様にして、ナトリウム含有コバルト化合物を作
製した。これらのナトリウム含有コバルト化合物のナト
リウム含有率は、順に0.05重量%、0.1重量%、
0.5重量%、5重量%、10重量%、12重量%、1
5重量%であった。次いで、これらのナトリウム含有コ
バルト化合物をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同
様にして、非焼結式ニッケル極A〜Gを作製し、次いで
アルカリ蓄電池を作製した。
【0036】作製したアルカリ蓄電池について、先と同
じ条件の充放電を10サイクル行って、10サイクル目
の非焼結式ニッケル極の活物質利用率を求め、ナトリウ
ム含有率と活物質利用率の関係を調べた。結果を表2及
び図2に示す。図2は、ナトリウム含有コバルト化合物
(導電層)のナトリウム含有率と活物質利用率の関係
を、縦軸に活物質利用率を、また横軸にナトリウム含有
コバルト化合物のナトリウム含有率(重量%)をとって
示したグラフである。なお、図2には、先の実施例1で
作製した非焼結式ニッケル極A1(ナトリウム含有率1
重量%)についての結果も示してある。図2の縦軸の活
物質利用率は、非焼結式ニッケル極A1の活物質利用率
を100とした場合の指数である。
【0037】
【表2】
【0038】表2及び図2に示すように、ナトリウム含
有コバルト化合物のナトリウム含有率が0.1〜10重
量%の場合に、活物質利用率の極めて高い非焼結式ニッ
ケル極が得られることが分かる。
【0039】〈複合体粒子のナトリウム含有コバルト化
合物含有率と活物質利用率の関係〉硫酸コバルト水溶液
の濃度を変えたこと以外は実施例1と同様にして、ナト
リウム含有コバルト化合物(導電層)を、コバルト原子
換算で、0.5重量%、1重量%、10重量%、12重
量%又は15重量%含有する複合体粒子からなる活物質
粉末を作製した。いずれの活物質粉末も、ナトリウム含
有コバルト化合物のナトリウム含有率を、1重量%に調
整した。次いで、これらの活物質粉末をそれぞれ用いた
こと以外は実施例1と同様にして、非焼結式ニッケル極
a〜eを作製し、次いでアルカリ蓄電池を作製した。
【0040】作製したアルカリ蓄電池について、先と同
じ条件の充放電を10サイクル行って、10サイクル目
の非焼結式ニッケル極の活物質利用率を求め、複合体粒
子のナトリウム含有コバルト化合物含有率と活物質利用
率の関係を調べた。結果を表3に示す。表3には、先の
実施例1で作製した非焼結式ニッケル極A1(ナトリウ
ム含有コバルト化合物含有率5重量%)についての結果
も示してある。表3中の活物質利用率は、非焼結式ニッ
ケル極A1の活物質利用率を100とした場合の指数で
ある。
【0041】
【表3】
【0042】表3より、複合体粒子のナトリウム含有コ
バルト化合物含有率が1重量%以上の場合に、活物質利
用率の高い非焼結式ニッケル極が得られることが分か
る。
【0043】図3は、複合体粒子のナトリウム含有コバ
ルト化合物含有率と電池容量の関係を、縦軸に電池容量
を、横軸にナトリウム含有コバルト化合物含有率(重量
%)をとって、示したグラフである。図3中の電池容量
は、非焼結式ニッケル極A1を用いたニッケル−カドミ
ウム蓄電池の電池容量を100とした場合の指数であ
る。
【0044】図3より、複合体粒子のナトリウム含有コ
バルト化合物含有率が、10重量%を越えると、活物質
たる水酸化ニッケルの量が減少するために、電池容量が
急激に低下することが分かる。表3及び図3の結果を総
合すると、活物質利用率が高く、しかも容量の大きい非
焼結式ニッケル極を得るためには、複合体粒子のナトリ
ウム含有コバルト化合物含有率を、コバルト原子換算
で、1〜10重量%とすることが好ましいことが分か
る。
【0045】〈活物質粉末の比電気伝導率κと活物質利
用率の関係〉加熱処理温度を、8時間に代えて1時間、
2時間、4時間、6時間又は10時間としたこと以外
は、実施例1又は比較例1,2と同様にして、活物質粉
末を作製し、これらの活物質粉末の400kgf/cm
2 で加圧した状態での比電気伝導率κを、先の比電気伝
導率測定装置Mを用いて求めた。次いで、これらの活物
質粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、非焼
結式ニッケル極を作製し、次いでニッケル−カドミウム
蓄電池を作製して、先と同様にして10サイクル目の活
物質利用率を求めた。結果を表4に示す。表4には、先
の実施例1で作製した非焼結式ニッケル極A1(活物質
粉末の比電気伝導率1×10-4Ω-1・cm-1)を用いた
ニッケル−カドミウム蓄電池についての結果も示してあ
る。表4中の活物質利用率は、非焼結式ニッケル極A1
を用いたニッケル−カドミウム蓄電池の活物質利用率を
100とした場合の指数である。
【0046】
【表4】
【0047】表4より、ナトリウム含有コバルト化合物
の場合は、比電気伝導率κが1×10-5Ω-1・cm-1
上の場合に、活物質利用率の極めて高い非焼結式ニッケ
ル極が得られることが分かる。
【0048】〈活物質粉末の平均粒径と電極容量の関
係〉種々の平均粒径の水酸化ニッケル粉末を用いたこと
以外は実施例1と同様にして、水酸化ニッケル粒子の表
面にナトリウム含有コバルト化合物からなる導電層を形
成してなる複合体粒子からなり、平均粒径がそれぞれ1
μm、2μm、3μm、5μm、15μm、20μm、
22μm、25μmの活物質粉末を得た。次いで、これ
らの活物質粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にし
て、非焼結式ニッケル極p〜wを作製し、次いでニッケ
ル−カドミウム蓄電池を作製して、先と同様にして10
サイクル目の電池容量を求めた。結果を表5に示す。表
5には、先の実施例1で作製した非焼結式ニッケル極A
1(活物質粉末の平均粒径10μm)を用いたニッケル
−カドミウム蓄電池についての結果も示してある。表5
中の電池容量は、非焼結式ニッケル極A1を用いたニッ
ケル−カドミウム蓄電池の電池容量を100とした場合
の指数である。
【0049】
【表5】
【0050】表5より、活物質粉末の平均粒径が3〜2
0μmの場合に、電極容量の大きい非焼結式ニッケル極
が得られることが分かる。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、活物質利用率の極めて
高いアルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極が提供され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた比電気伝導率測定装置の要部を
示す部分断面図である。
【図2】ナトリウム含有コバルト化合物(導電層)のナ
トリウム含有率と活物質利用率の関係を示したグラフで
ある。
【図3】複合体粒子のナトリウム含有コバルト化合物含
有率と電池容量の関係を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 雅雄 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (72)発明者 渡辺 浩志 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (72)発明者 前田 礼造 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (72)発明者 米津 育郎 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (72)発明者 西尾 晃治 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三洋電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−203516(JP,A) 特開 平9−129224(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/24 - 4/62 H01M 10/24 - 10/34

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水酸化ニッケル粒子又は水酸化ニッケルを
    主成分とする粒子の表面に、ナトリウム含有量0.1〜
    10重量%のナトリウム含有コバルト化合物からなる導
    電層を形成してなる複合体粒子からなる粉末を活物質と
    するアルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極。
  2. 【請求項2】前記粉末が、前記水酸化ニッケル粒子又は
    前記水酸化ニッケルを主成分とする粒子の表面にコバル
    ト化合物層を形成してなる複合体粒子からなる粉末を、
    これに水酸化ナトリウム水溶液を加えた状態で、50〜
    200°Cで加熱処理して作製したものである請求項1
    記載のアルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極。
  3. 【請求項3】前記複合体粒子が、前記ナトリウム含有コ
    バルト化合物を、コバルト原子換算で1〜10重量%含
    有している請求項1記載のアルカリ蓄電池用非焼結式ニ
    ッケル極。
  4. 【請求項4】前記粉末の400kgf/cm2 で加圧し
    た状態での比電気伝導率が1×10-5Ω-1・cm-1以上
    であり、且つ前記粉末の平均粒径が3〜20μmである
    請求項1記載のアルカリ蓄電池用非焼結式ニッケル極。
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