JP3233846B2 - フェノール樹脂硬化物からノボラック化合物を製造する方法 - Google Patents

フェノール樹脂硬化物からノボラック化合物を製造する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般プラスチック
製品としてのフェノール樹脂硬化物を用いてノボラック
化合物を製造する方法、特にフェノール樹脂硬化物を熱
分解し、その熱分解液からノボラック化合物を得る方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】フェノール樹脂硬化物は電気絶縁材料、
積層材料に多く用いられているが、この硬化物は加熱し
ても溶融せず、また、溶剤に対しても溶けないため、こ
れら硬化物の再利用はプラスチック、セメント等への充
填材としての利用に限られている。フェノール樹脂硬化
物はOA機器や電化製品の発達に伴って使用量が増大し
ており、これらの製品サイクルは年々短くなっており、
熱硬化性樹脂の廃棄物に対する有効なリサイクル技術の
開発が大きな社会的要請になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、先に「熱
硬化性樹脂を用いたカーボン焼成体の製造方法」と題す
る発明を完成し、平成6年10月31日付け特許出願
(特願平6−292159)した。この先願の方法によ
れば、フェノール樹脂硬化物を400℃〜800℃で加
熱処理し、取り出した固体(カーボン前駆体)をさらに
処理することにより、電極材料等として利用可能なカー
ボン焼成体を製造することができる。しかしながら、こ
の方法において、前記400℃〜800℃の熱処理時に
カーボン前駆体と同時に熱分解生成物が生じることか
ら、その熱分解生成物の有効利用をも可能にして初め
て、フェノール樹脂硬化物の全的なリサイクル技術が確
立されることになる。
【0004】本発明は、上記の観点において、フェノー
ル樹脂硬化物を加熱処理して得られた熱分解液を原料と
し、これに適当な処理を加えてノボラック化合物を得、
さらに、このノボラック化合物に種々の有機化合物を添
加してフェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂
を製造することにより、熱硬化性樹脂廃棄物の十全な回
収及び再利用の途を開こうとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するため、400℃〜800℃で加熱処理すること
により熱分解液を生成し、この熱分解液に市販のフェノ
ールを5〜50wt%添加し、さらにホルムアルデヒド
と酸触媒を加えて加熱後、蒸留することによりノボラッ
ク化合物を得ることを特徴とする方法を構成したもので
ある。
【0006】本発明はまた、上記のようにして得られた
ノボラック化合物にヘキサミンを添加してフェノール樹
脂硬化物を製造することからなるフェノール樹脂硬化物
の熱分解液を原料とした熱硬化性樹脂の製造方法を構成
したものである。
【0007】本発明はさらに、上記のようにして得られ
たノボラック化合物にエピクロヒドリンを加え、反応さ
せてエポキシ化合物を得、これを熱硬化処理してエポキ
シ樹脂硬化物を製造することからなる、フェノール樹脂
硬化物の熱分解液を原料とした熱硬化性樹脂の製造方法
を構成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】原材料としてのフェノール樹脂硬
化物は樹脂以外にもこれら樹脂と紙、木粉、セラミック
ス、カーボン、ガラス、石綿、金属等との複合物をも含
み、これらを併せて、以下フェノール樹脂硬化物と称す
ることとする。本発明の方法では、フェノール樹脂硬化
物を、まず、400℃〜800℃の温度で加熱処理し、
低沸点分を除去後、熱分解物を得る。次に、得られた熱
分解物にフェノール並びに適量のホルムアルデヒドと酸
触媒を加えて加熱し、加熱後、蒸留することによりノボ
ラック化合物を得る。この際、用いられる酸触媒にはシ
ュウ酸等があげられる。以下に本発明の実施例を示す。
【0009】実施例1 原料として紙フェノール樹脂硬化物(紙含有率50wt
%)を用いて、窒素雰囲気下で600℃、2時間の条件
で加熱し、さらに、100℃、2時間の条件で低沸点分
を除去した後、熱分解液を得た。得られた熱分解液に0
〜50wt%のフェノールを添加し、これを100部と
したものにホルムアルデヒド45部、並びにシュウ酸1
部を加えて100℃に加熱し、50℃で常圧蒸留の後、
160℃、45mmHgの条件下で未反応物を除去した
後、ノボラック化合物を得た。得られた化合物の赤外分
光スペクトルを図1〜図4においてフェノール配合例別
に示す。また、配合例ごとに得られたノボラック化合物
の分子量を表1に示す。
【0010】
【表1】
【0011】実施例2 実施例1の配合例No.2〜No.4で得られたノボラ
ック化合物にヘキサミンを10wt%添加の後、160
℃、2時間加熱し、ノボラックタイプのフェノール樹脂
硬化物を得た。得られたフェノール樹脂硬化物の動的粘
弾性測定装置により測定したガラス転移温度を表2に示
す。
【0012】
【表2】
【0013】表2から明らかな通り、ガラス転移温度は
フェノール添加量に応じて高くなるため、最終製品(こ
の場合は、フェノール樹脂硬化物)の用途等に従って選
択することができる。
【0014】実施例3 実施例1の配合例No.1〜No.3で得られたノボラ
ック化合物に大過剰のエピクロロヒドリンを加えてフラ
スコに入れ、攪拌させながら40%NaOH水溶液をゆ
っくり滴下させ、滴下終了後、還流下で1時間攪拌を続
けた。反応終了後、生成した塩を吸引ろ別し、水洗後、
減圧下で未反応のエピクロロヒドリンを除去し、ノボラ
ックタイプのエポキシ化合物を得た。得られたエポキシ
樹脂にトリエチレンテトラミンを20重量部添加し、1
30℃、20時間の条件でノボラックタイプのエポキシ
樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物の動的
粘弾性測定装置により測定したガラス転移温度を表3に
示す。この方法により得られたエポキシ樹脂硬化物の場
合も、ガラス転移温度はフェノール添加量に応じて高く
なった。
【0015】
【表3】
【0016】
【発明の効果】本発明は、以上述べた通り、フェノール
樹脂硬化物の熱分解液からノボラック化合物を得、この
化合物を種々の熱硬化性樹脂を製造するための主原料と
して用いることができる。この出発原料としてのフェノ
ール樹脂硬化物にはフェノールプラスチック製品の廃棄
物を供することができるため、当該プラスチック製品の
リサイクルに大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の一実施例において、第1の配合
例で生成されたノボラック化合物の赤外線分光スペクト
ルを示すグラフである。
【図2】本発明の方法の一実施例において、第2の配合
例で生成されたノボラック化合物の赤外線分光スペクト
ルを示すグラフである。
【図3】本発明の方法の一実施例において、第3の配合
例で生成されたノボラック化合物の赤外線分光スペクト
ルを示すグラフである。
【図4】本発明の方法の一実施例において、第4の配合
例で生成されたノボラック化合物の赤外線分光スペクト
ルを示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (73)特許権者 394024444 佐藤 昌利 京都府京都市中京区西ノ京東月光町1番 地 (73)特許権者 394024455 中野 達明 滋賀県大津市におの浜1丁目1−57− 919 (72)発明者 北川和男 京都府京都市南区西九条唐橋町41番地 (72)発明者 寒川喜光 滋賀県大津市清風町38番3号 (72)発明者 島村哲朗 京都府京都市伏見区向島二ノ丸町68番地 の61 (72)発明者 佐藤昌利 京都府京都市中京区西ノ京東月光町1番 地 (72)発明者 中野達明 滋賀県大津市におの浜1丁目1−57− 919 (56)参考文献 熱硬化性樹脂、16[4](平成7−12 −10)p.183−189 第44回熱硬化性樹脂講演討論会講演要 旨集(平成6年11月1日,2日開催) p.125−128 第45回熱硬化性樹脂講演討論会講演要 旨集(平成7年10月26日,27日開催) p.49−52 熱硬化性樹脂、4[2](昭和58−6 −10)p.63−68

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェノール樹脂硬化物を400℃〜80
    0℃で加熱処理することにより熱分解液を生成し、この
    熱分解液にフェノールを5〜50wt%添加し、さらに
    ホルムアルデヒドと酸触媒を加えて加熱後、蒸留するこ
    とによりノボラック化合物を得ることを特徴とするフェ
    ノール樹脂硬化物からノボラック化合物を製造する方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法により生成された
    ノボラック化合物にヘキサミンを添加して加熱処理する
    ことによりフェノール樹脂硬化物を製造することを特徴
    とするフェノール樹脂硬化物の熱分解液を原料に用いた
    熱硬化性樹脂の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の方法により生成された
    ノボラック化合物にエピクロロヒドリンを加え反応させ
    てエポキシ化合物を得、硬化処理することによりエポキ
    シ樹脂硬化物を製造することを特徴とするフェノール樹
    脂硬化物の熱分解液を原料に用いた熱硬化性樹脂の製造
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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BR112017008974A2 (pt) * 2014-11-11 2017-12-26 Dow Global Technologies Llc sistema de resina epóxi de cura rápida e temperatura de transição vítrea elevada

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
熱硬化性樹脂、16[4](平成7−12−10)p.183−189
熱硬化性樹脂、4[2](昭和58−6−10)p.63−68
第44回熱硬化性樹脂講演討論会講演要旨集(平成6年11月1日,2日開催)p.125−128
第45回熱硬化性樹脂講演討論会講演要旨集(平成7年10月26日,27日開催)p.49−52

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