JP3218847B2 - 機器用包装材 - Google Patents

機器用包装材

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパルプスラリーを成形原
料とするモールディング成形体からなる機器用包装材に
関し、寸法安定性に優れた性質を有するパルプモールデ
ィング成形体による機器用包装材を提供する。
【0002】
【従来の技術】パルプスラリーを成形原料とするパルプ
モールディング成形体からなる機器用包装材は、成形原
料に古紙を使用し得ること、使用済みのものを古紙原料
として再利用し得ること、焼却による廃棄処分を行なえ
るために後処理が容易であること等の特徴を有してお
り、例えば複写機用のトナーカートリッジやCDプレー
ヤー等の機器用包装材に利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述のパルプスラリー
を成形原料とするパルプモールディング成形体からなる
包装材は、パルプスラリーをモールディング成形し、こ
れを乾燥して得られるものであり、歪みの発生量が大き
いことが欠点になっている。
【0004】このパルプモールディング成形体からなる
包装材に発生する歪みは、機器の包装を自動包装によっ
て行なう際の包装材の連続送りに支障を来し、また、積
み重ねの際に嵩高になるために、輸送や保管のための容
積を必要以上に増大させる等の欠点に繋る。
【0005】これに対して本発明は、歪みの発生量が小
さく、寸法安定性に優れた性質を有するパルプモールデ
ィング成形体からなる機器用包装材を提供することを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、脂肪酸エステ
ル系の非イオン型表面活性剤20〜80重量%と下記の
一般式(1)で表示されるイミダゾリニウム塩からなる
カチオン型表面活性剤80〜20重量%との混合活性剤
を、パルプ100重量部に対して0.5〜5.0重量部
の範囲で含有しているパルプモールディング成形体から
なる機器用包装材とすることにより、前述の課題を解決
することができる。
【0007】
【化2】 [式中、Rは炭素数7〜23の炭化水素基、R1 は炭素
数1〜5の炭化水素基、R2 は炭素数7〜23の炭化水
素基、Xは塩素又は臭素を表示する。]
【0008】前記構成による本発明のパルプモールディ
ング成形体からなる機器用包装材に含有させる表面活性
剤は、編布、織布、不織布等に柔軟な風合いを与えるた
めに通常使用されている市販の柔軟剤であり、脂肪酸エ
ステル系の非イオン型表面活性剤としては、ポリエチレ
ングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステ
ル、脂肪酸モノグリセリド等の公知の表面活性剤を使用
し得る。
【0009】一般にパルプモールディング成形体に表面
活性剤を含有させることにより、パルプ間の水素結合が
阻害される結果、成形体における歪みの発生量が抑えら
れるが、特に、脂肪酸エステル系の非イオン型表面活性
剤20〜80重量%と前述の一般式(1)で表示される
イミダゾリニウム塩からなるカチオン型表面活性剤80
〜20重量%との混合活性剤を、パルプ100重量部に
対して0.5〜5.0重量部の範囲で含有させたとき
に、成形体の強度の低下が少なく、かつ歪みの発生量を
極めて効果的に抑えられることが判明した。
【0010】パルプ100重量部に対しての混合活性剤
の含有量が0.5重量部未満の場合には、表面活性剤の
添加の効果が無く、またパルプ100重量部に対しての
混合活性剤の含有量が5.0重量部を超えると、成形体
の強度の低下が大きくなる。
【0011】パルプモールディング成形体の成形原料に
使用するパルプとしては、省資源の観点から、新聞、雑
誌、段ボール等の古紙を離解した古紙パルプが好適であ
る。
【0012】パルプモールディング成形体に表面活性剤
を含有させる方法は、白水系に添加する方法、あるいは
スプレー装置を用いて添加する方法のいずれの方法でも
良い。
【0013】本発明のパルプモールディング成形体から
なる機器用包装材の成形は、従来のパルプスラリーを成
形原料とするモールディング成形体からなる包装材の成
形方法と同様の方法によって行なうことができる。
【0014】例えば、(1) 成形用型材の型面と略同一形
状の凹凸面を有する金網等の通気性成形型の上に、パル
プスラリーを適宜の厚さに堆積させた後、これを上,下
1対の雌,雄の型材の間に挿入し、さらに、型材を圧締
して成形する方法、
【0015】(2) 微細な透孔群を有する吸着用の雄型ま
たは雌型を、懸濁液からなるパルプスラリー中に浸漬さ
せ、型の内部から吸引して型の表面に成形用原料中の固
形成分を付着させて付着層を形成し、該付着層が所定の
厚さになったときに型を懸濁液から取り出し、しかる後
に、前述の型に対応する雌型または雄型による押圧金型
を接当して成形する方法、
【0016】(3) 微細な透孔群を有する吸着用の雄型
を、懸濁液からなるパルプスラリー中に浸漬させ、型の
内部から吸引して型の表面に成形用原料中の固形成分を
付着させて付着層を形成し、該付着層が所定の厚さにな
ったときに懸濁液を排出し、さらに、雄型に対応する雌
型を雄型に押圧,嵌合させ、雌型から付着層を通して雄
型に風を流通させて付着層を成形する方法、
【0017】(4) 上型と下型とで形成される金型の下型
の上に、繊維成分とバインダー成分とを別々のスプレー
ガンによって吹き付け、所定の厚さの堆積層を形成した
後、上型と下型とを合わせて加圧成形する方法、等の成
形方法を使用することができる。
【0018】なお、得られたパルプモールディング成形
体を更にプレス機による加圧または加熱、加圧に付すこ
とにより、モールディング成形体の歪みを除去する工程
を付加し、寸法安定性においてより優れた性質を得るこ
とができる。
【0019】
【実施例】以下、本発明のパルプモールディング成形体
からなる機器用包装材の具体的な構成を、製造実施例に
基づいて説明する。
【0020】参考例1 新聞古紙を離解して得た1重量%のパルプスラリーに、
該パルプスラリー中のパルプの2.0重量%に相当する
量の市販のペーパー用柔軟剤「脂肪酸エステル系の非イ
オン型表面活性剤50重量%,一般式(1)で表示され
るイミダゾリニウム塩からなるカチオン型表面活性剤5
0重量%:サーファックス8718( (株) :理研グリ
ーン)」からなる混合活性剤を添加し、パルプモールデ
ィング成形原料を調整した。
【0021】得られたパルプスラリーからなる成形原料
500g(絶乾パルプ量:5g)を、試験用のパルプモ
ールド手抄機(径120mm、平型金網金型)のロート
口から投入した後、さらに水500gを投入して撹拌
し、続いて手抄機の吸水バルブを開き、減圧度−500
mmHgで15分間吸引して脱水した。
【0022】次いで、モールド金型からパルプの堆積物
を取り外し、105℃の乾燥機内にて、無テンション状
態で1時間乾燥することにより、円板状のパルプモール
ディング成形体を得た。
【0023】参考例2 参考例1のパルプモールディング成形体の成形工程にお
いて、成形原料であるパルプスラリー中の活性剤の添加
を省略したパルプスラリーを利用し、それ以外の工程は
参考例1の対応する工程と同一の工程により、円板状の
パルプモールディング成形体を得た。
【0024】参考例3 実施例1のパルプモールディング成形体の成形工程にお
いて、成形原料であるパルプスラリー中の表面活性剤と
して、パルプの2.0重量%に相当する量のノニオン系
表面活性剤「日産エカノーベル製:ベロセル598」を
使用し、それ以外の工程は参考例1の対応する工程と同
一の工程により、円板状のパルプモールディング成形体
を得た。
【0025】参考例4 参考例1のパルプモールディング成形体の成形工程にお
いて、成形原料であるパルプスラリー中の表面活性剤と
して、パルプの2.0重量%に相当する量のポリアミド
系カチオン表面活性剤「三洋化成製:サファノールHS
P−1」を使用し、それ以外の工程は参考例1の対応す
る工程と同一の工程により、円板状のパルプモールディ
ング成形体を得た。
【0026】参考例5 参考例1のパルプモールディング成形体の成形工程にお
いて、成形原料であるパルプスラリー中の表面活性剤と
して、パルプの2.0重量%に相当する量のポリアミド
系カチオン表面活性剤「三洋化成製:サファノールHS
P−2」を使用し、それ以外の工程は参考例1の対応す
る工程と同一の工程により、円板状のパルプモールディ
ング成形体を得た。
【0027】実験1 参考例1〜5で得られた各円板状のパルプモールディン
グ成形体を平坦な場所に置き、各モールディング成形体
の端部における反りの大きさ(mm)を測定した。この
測定結果を、ブランクにおける反りを100%としたと
きの反り変化係数(%)、各モールディング成形体の坪
量(g/m2 )、厚さ(mm)及び密度(g/cm3
と共に[表1]に示す。
【0028】
【表1】
【0029】実施例1 新聞古紙を離解して得た1重量%のパルプスラリーに、
該パルプスラリー中のパルプの2.0重量%に相当する
量の市販のペーパー用表面活性剤「脂肪酸エステル系の
非イオン型表面活性剤50重量%,一般式(1)で表示
されるイミダゾリニウム塩からなるカチオン型表面活性
剤50重量%:サーファックス8718( (株) :理研
グリーン)」と、パルプの0.5重量%に相当する量の
サイズ剤「ハーサイズ405(商品名)」と、パルプの
3.5重量%に相当する量の硫酸バンドと、パルプの
0.5重量%に相当する量の耐水化剤「ハーマイドPY
−550(商品名)」とを添加し、パルプモールディン
グ成形体の成形原料を調整した。
【0030】得られたパルプスラリーからなる成形原料
を、複写機用トナーカットリッジ型のパルプモールドテ
スト機に投入した後、撹拌し、続いて、該テスト機の吸
水バルブを開き、減圧度−500mmHgで60秒間吸
引して脱水した。
【0031】次いで、モールド金型からパルプの堆積物
を取り外し、130℃の乾燥機内にて、無テンション状
態で30分間乾燥することにより、[図1]に示される
形状及び標準寸法の複写機用トナーカートリッジの包装
材を得た。
【0032】実施例2 市販のペーパー用表面活性剤「脂肪酸エステル系の非イ
オン型表面活性剤50重量%,一般式(1)で表示され
るイミダゾリニウム塩からなるカチオン型表面活性剤5
0重量%:サーファックス8718( (株) :理研グリ
ーン)」の添加量をパルプの5.0重量%に相当する量
に変え、それ以外の手順は全て実施例1と同様にして、
[図1]に示される形状及び標準寸法の複写機用トナー
カートリッジの包装材を得た。
【0033】比較例1 実施例1のパルプモールディング成形体からなる複写機
用トナーカートリッジの包装材の成形工程において、成
形原料であるパルプスラリー中の表面活性剤の添加を省
略したパルプスラリーを利用し、それ以外の工程は実施
例1の対応する工程と同一の工程により、比較のための
複写機用トナーカートリッジの包装材を得た。
【0034】実験2 実施例及び比較例で得られた各複写機用トナーカートリ
ッジの包装材を、20℃、65%RHの雰囲気中に24
時間放置して調湿した後、[図1]におけるG点での歪
みの大きさ(mm)を測定した。また、各調湿後の複写
機用トナーカートリッジの包装材を8段重ねに積み重ね
たときの高さを(mm)計測した。結果を[表2]に示
す。
【0035】
【表2】
【0036】実験結果から、本発明の実施例品による複
写機用トナーカートリッジの包装材は、歪みの大きさが
小さく、このために入り子形状になっているものを複数
個積み重ねたときの高さの増大が抑えられることが分か
る。
【0037】
【効果】本発明の機器用包装材は、パルプスラリーを成
形原料とするパルプモールディング成形体からなり、脂
肪酸エステル系の非イオン型表面活性剤20〜80重量
%と下記の一般式(1)で表示されるイミダゾリニウム
塩からなるカチオン型表面活性剤80〜20重量%との
混合活性剤を、パルプ100重量部に対して0.5〜
5.0重量部の範囲で含有している。
【0038】
【化3】 [式中、Rは炭素数7〜23の炭化水素基、R1 は炭素
数1〜5の炭化水素基、R2 は炭素数7〜23の炭化水
素基、Xは塩素又は臭素を表示する。]前記構成による
本発明の機器用包装材においては、パルプモールディン
グ成形体中に含有させた混合活性剤によるパルプ間の水
素結合の阻害作用により、歪みの発生量が効果的に抑え
られ、寸法安定性に対して優れた作用を奏する機器用包
装材になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に利用したパルプモールディング成形型
によって得られる複写機用トナーカートリッジの包装材
の形状及び標準寸法を示す斜面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D21J 3/00 - 7/00 D21H 17/07,17/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脂肪酸エステル系の非イオン型表面活
    性剤20〜80重量%と下記の一般式(1)で表示され
    るイミダゾリニウム塩からなるカチオン型表面活性剤8
    0〜20重量%との混合活性剤を、パルプ100重量部
    に対して0.5〜5.0重量部の範囲で含有しているパ
    ルプモールディング成形体からなることを特徴とする機
    器用包装材。 【化1】 [式中、Rは炭素数7〜23の炭化水素基、R1 は炭素
    数1〜5の炭化水素基、R2 は炭素数7〜23の炭化水
    素基、Xは塩素又は臭素を表示する。]
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