JP3216357B2 - 車両用ヒートポンプ式冷暖房装置 - Google Patents

車両用ヒートポンプ式冷暖房装置

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JP3216357B2 JP24550293A JP24550293A JP3216357B2 JP 3216357 B2 JP3216357 B2 JP 3216357B2 JP 24550293 A JP24550293 A JP 24550293A JP 24550293 A JP24550293 A JP 24550293A JP 3216357 B2 JP3216357 B2 JP 3216357B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、コンプレッサの駆動
により冷媒を車室外熱交換器および車室内熱交換器に循
環させる蒸気圧縮サイクルを備えた車両用ヒートポンプ
式冷暖房装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の車両用ヒートポンプ式冷暖房装置
としては、特開平2−290475号公報や実開平2−
130808号公報などに開示されているように、四方
弁で冷媒の流れを暖房運転時と冷媒運転時とで逆転さ
せ、暖房運転時には、車室外熱交換器を吸熱器として使
用すると共に、車室内熱交換器を放熱器として使用し、
冷房運転時には、車室外熱交換器を放熱器として使用す
ると共に、車室内熱交換器を吸熱器として使用するよう
にしたものが知られている。
【0003】具体的には、上記特開平2−290475
号公報に開示された冷暖房装置を、図9に図示して説明
する。つまり、暖房運転時には、四方弁2が実線示のよ
うに切り換えられ、冷媒がコンプレッサ1→四方弁2→
第1車室内熱交換器3→加熱用熱交換器4→第2車室内
熱交換器5→膨張弁6→車室外熱交換器7→四方弁2→
レシーバ8→コンプレッサ1と循環し、第1車室内熱交
換器3がコンプレッサ1から吐出された高温なる冷媒の
熱をブロワファン9で導入された空気に放熱して車室内
暖房用の温風を作り、加熱用熱交換器4がエンジン10
からの廃熱を冷媒に吸熱し、この冷媒の熱を第2車室内
熱交換器5がブロワファン11で導入された空気に放熱
して車室内暖房用の温風を作り、車室外熱交換器7がフ
ァン12で導入された外気の熱を冷媒に吸熱する。冷房
運転時には、四方弁2が点線示のように切り換えられ、
冷媒がコンプレッサ1→車室外熱交換器7→膨張弁6→
第2車室内熱交換器5→第1車室内熱交換器3→四方弁
2→レシーバ8→コンプレッサ1と循環し、車室外熱交
換器7がコンプレッサ1から吐出さたれ高温なる冷媒の
熱を外気に放熱し、第1,第2車室内熱交換器3,5が
ブロワファン9,11で導入された空気の熱を冷媒に放
熱して車室内冷房用の冷風を作る。
【0004】かかる従来例にあっては、四方弁2で冷媒
の流れを暖房運転時と冷媒運転時とで逆転させ、暖房運
転時には、車室外熱交換器7を吸熱器として使用すると
共に、車室内熱交換器3,5を放熱器として使用して車
室内暖房用の温風を作る。又冷房運転時には、車室外熱
交換器7を放熱器として使用すると共に、車室内熱交換
器3,5を吸熱器として使用して車室内冷房用の冷風を
作るようになっている。このような空調装置で外気温が
低い時に暖房運転を行なうと、外気温が低いため車室外
熱交換器7での吸熱量が減少し、コンプレッサ1の仕事
量が一定であると仮定すると、車室外熱交換器7からの
吸熱量とコンプレッサ1の仕事量との合計熱量を放熱す
る車室内熱交換器3,5での放熱量が減少し、暖房能力
が低下する。しかも、降雨時や降雪時などの気候条件で
は、着霜現象が生じ易く、デフロスト運転の回数が増加
して安定した暖房運転が得られなくなる可能性がある。
【0005】また、冷房運転時と暖房運転時とで冷媒流
路長さの長短は生じないので、冷房運転時と暖房運転時
とで作動冷媒量を調節する必要はないが、冷媒の流れ方
向が変わるため、車室外熱交換器7側、車室内熱交換器
3,5側のいずれの配管も高温、高圧に耐えられるよう
管径等を変更する必要があった。
【0006】また、暖房運転時には、エンジン10から
の廃熱を吸熱して車室内暖房用の温風を作るため、ソー
ラーカーや電気自動車のように大きな熱源をモータない
車両には不向きであった。
【0007】さらに、車両の暖房装置に要求される窓晴
れ性を確保するには、暖房運転ではなく冷房運転を行
い、車室内熱交換器3,5で空調風を一度冷却した後、
これをさらにリヒートする必要がある。しかし、電気自
動車のように、エンジン等からの廃熱が得られず、充分
なリヒート熱源が供給できない場合は、暖房能力が不足
してしまい、暖房性能が一時的に確保できなくなる可能
性があった。この場合、電気ヒータ等の他の熱源を設け
てリヒートすることも可能であるが、充分な暖房能力を
確保するためには、多大な消費電力を要するという問題
があった。
【0008】これに対し本願出願人は、特願平3−34
5950号として新たな車両用ヒートポンプ式冷暖房装
置を提案している。この装置は、吸熱用車室内熱交換器
の他に放熱用車室内熱交換器を設け、三方弁で切り換え
るようにしたものである。かかる装置によれば、車室外
の気候条件に左右されず安定した制御で冷暖房能力を向
上することができ、大幅な設計変更を必要とせず、電気
自動車などにも適し、しかも除湿暖房を行なうことがで
きる。
【0009】具体的には図10のようになっており、暖
房運転時には、三方弁32が実線示のように切り換えら
れ、冷媒が、コンプレッサ31→三方弁32→放熱用車
室内熱交換器33→液タンク36→膨張弁34→吸熱用
車室内熱交換器35→コンプレッサ31と循環し、ブロ
ワファンで導入された空気は吸熱用車室内熱交換器35
での熱交換により冷やされ、冷却除湿された後、放熱用
車室内熱交換器33での熱交換により温められ、車室内
暖房用の温風が作られる。
【0010】また、冷房運転時には、三方弁32が点線
示のように切り換えられ、冷媒が、コンプレッサ31→
三方弁32→車室外熱交換器38→逆止弁70→放熱用
車室内熱交換器33→液タンク36→膨張弁34→吸熱
用車室内熱交換器35→コンプレッサ31と循環し、車
室外熱交換器38がコンプレッサ1から吐出された高温
な冷媒の熱を外気に放熱し、ブロワファンで導入された
空気が吸熱用車室内熱交換器35で熱交換されて冷やさ
れ、車室内冷房用の冷風が作られる。
【0011】このように、新たな冷暖房装置では、暖房
運転時に吸熱用車室内熱交換器35の冷却で除湿し、放
熱用車室内熱交換器33でリヒートするため、理論的に
はコンプレッサ入力分の熱量を暖房熱とし、電気ヒータ
等の熱源を必要とせずに除湿暖房運転ができるのであ
る。従って、コンプレッサ31の入力を増加することに
より、充分な除湿暖房運転ができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図10に示
した冷暖房装置では、暖房運転時に車室外熱交換器を回
避して冷凍サイクルを運転しているので、暖房運転開始
時に車室外熱交換器に一時的に溜った冷媒は、暖房時の
冷凍サイクル(暖房サイクル)中に回収することができ
ない。したがって、車室外熱交換器に溜り込んだ冷媒以
外の残りの冷媒によって暖房サイクルを運転することに
なる。しかし、車室外熱交換器に溜り込む冷媒量は各種
条件により変化するため、暖房サイクル中の冷媒量が必
ずしも最適冷媒量の範囲に入るとは限らない。
【0013】例えば、車室外熱交換器にほとんど冷媒が
残留しない場合もあれば、大量の冷媒が残留する場合も
あり、各場合で暖房サイクル中の冷媒量が変動すること
により、最適冷媒量の範囲内に収まらない恐れがある。
【0014】一方、米国特許4,903,495号明細
書には、コンプレッサの吸入側にアキュムレータを設
け、冷暖房能力を向上するために、膨張弁の調整によっ
てアキュームレータへの液溜りを制御し、冷凍サイクル
内部の圧力調整を行うものが示されている。
【0015】しかしこの装置では、膨張弁によってサイ
クルの圧力状態を調整することはできるが、暖房運転開
始時に車室外熱交換器(コンデンサ)に寝込んでしまっ
た冷媒量を考慮して、サイクル中の冷媒量を最適冷媒量
の範囲内に収めることまではできないという問題があ
る。
【0016】そこで、この発明は、車室内に吸熱用車室
内熱交換器と放熱用車室内熱交換器を設けて除湿が可能
な暖房運転を行うと共に、暖房運転時に使用しない車室
外熱交換器の冷媒溜り込み量の多少によらず、適正な作
動冷媒量で暖房運転を行うことのできる車両用ヒートポ
ンプ式冷暖房装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に記載の発明は、冷媒に仕事量を加えるコ
ンプレッサと、このコンプレッサの冷媒吐出側に接続さ
れ、冷媒の熱を外気に放熱する車室外熱交換器と、前記
コンプレッサの冷媒吐出側に接続されて、冷媒の熱を送
風手段によって導入された空気に放熱して温風を作る放
熱用車室内熱交換器と、この放熱用車室内熱交換器の冷
媒流出側に接続されて、冷媒を断熱膨張させる膨張手段
と、この膨張手段の冷媒吐出側と前記コンプレッサの冷
媒吸入側との間に挿入接続され、送風手段によって導入
された空気の熱を前記車室外熱交換器および放熱用車室
内熱交換器の少なくとも一方から前記膨張手段を通して
供給された冷媒に吸熱して冷風を作る吸熱用車室内熱交
換器と、前記コンプレッサの冷媒吐出側と前記車室外熱
交換器および前記放熱用車室内熱交換器の冷媒流入側と
の間に設けられ、コンプレッサから吐出される冷媒を、
冷房運転時に少なくとも前記車室外熱交換器に導入し、
暖房運転時に前記車室外熱交換器を回避させて前記放熱
用車室内熱交換器に導入する冷媒流路切換手段とを備
え、前記膨張手段の冷媒流出側と前記コンプレッサの冷
媒吸入側との間に、前記車室外熱交換器の内容積よりも
大きな内容積を有するアキュムレータを接続し、前記膨
張手段は、暖房運転開始時に、前記吸熱用車室内熱交換
器の作動圧力または作動温度の低下に応じて強制的に開
度を増大することを特徴としている。
【0018】また、請求項2の発明は、請求項1記載の
車両用ヒートポンプ式冷暖房装置において、安定した暖
房高負荷運転時の前記吸熱用車室内熱交換器の作動圧力
または作動温度の少なくとも一つに基づいて、前記膨張
手段の開度を決める前記設定圧力または設定温度が設定
されていることを特徴としている。
【0019】また、請求項3の発明は、請求項1記載の
車両用ヒートポンプ式冷暖房装置において、前記膨張手
段は、所定の特性を持つ温度式膨張弁からなり、この温
度式膨張弁の開度を決める設定温度を、少なくとも+5
℃よりも低い温度範囲内の任意の温度に設定し、前記吸
熱用車室内熱交換器の作動温度が前記設定温度よりも低
下した場合に前記温度式膨張弁が強制的に開かれること
を特徴としている。
【0020】また、請求項4の発明は、請求項1記載の
車両用ヒートポンプ式冷暖房装置において、前記膨張手
段は、所定の特性を持つ温度式膨張弁からなり、この温
度式膨張弁は、強制的に開度を増大する条件と安定した
冷房高負荷運転時のコンプレッサ吸入側冷媒の過熱度が
所定値以下となる条件とから特性が定められたものであ
ることを特徴としている。
【0021】
【作用】請求項1の発明では、暖房運転開始時に、膨張
手段の開度が強制的に増大制御され、膨張手段を通る冷
媒量が増加する。そして、暖房サイクル内の冷媒が低圧
側に多く流れ込むことにより、アキュムレータ内に蓄え
られる。この場合、アキュムレータの内容積は車室外熱
交換器の内容積以上であるから、たとえ車室外熱交換器
の寝込み冷媒量が零であっても、アキュムレータ内に余
剰冷媒がすべて蓄えられる。そして、暖房運転が安定状
態に向かうにつれて吸熱用車室内熱交換器の作動圧力
(または作動温度)が上昇すると、膨張手段の強制的な
制御が解除され、膨張手段を通過する冷媒量が少なくな
って、定常運転時の通過量になる。
【0022】この場合、車室外熱交換器に大量の冷媒が
寝込み、暖房サイクル内の冷媒量が少ない場合には、高
圧側の圧力の上昇が抑えられることで、膨張手段の出入
口での圧力差が小さくなる。そして、サイクルの作動冷
媒量を確保するために低圧側へ流入する冷媒量が減少
し、アキュムレータの冷媒貯蔵量が徐々に減少する方向
に向かい、適正冷媒量の範囲内に入る。逆に、車室外熱
交換器内に寝込んだ冷媒量が少なく、暖房サイクル内の
冷媒量が多い場合には、暖房運転開始後にアキュムレー
タに蓄えた余剰冷媒の量がそのまま保持され続け、それ
によりサイクル内の作動冷媒量が適正化される。
【0023】このように、本発明の冷暖房装置では、暖
房運転開始後のウォームアップ時において、膨張手段を
開いて一旦冷媒をアキュムレータに蓄え、安定状態に近
付くにつれて徐々にサイクルの作動冷媒量を適正化する
ように作用する。従って、運転停止中に車室外熱交換器
内に寝込んだ冷媒量の多少によらず、安定した暖房運転
を行うことができる。
【0024】請求項2の発明では、安定した暖房高負荷
運転時の状態を基準にして膨張手段が制御されるので、
低外気温時のガラスの防曇性確保や吸熱用車室内熱交換
器の凍結防止を満足することができる。
【0025】請求項3の発明では、吸熱用車室内熱交換
器の作動温度が設定温度以下のときに強制的に開度を増
大させる特性を持つ温度式膨張弁を用い、その動作基準
となる設定温度を+5℃より低く設定したので、低外気
温時のガラスの防曇性を確保することができる。
【0026】請求項4の発明では、冷房高負荷運転時に
適正な過熱度を維持しながら運転することができるの
で、コンプレッサの吐出冷媒温度が設定以上に達してサ
イクル保護装置が作動する頻度が減少し、より高回転で
コンプレッサを運転することが可能となり、最大冷房能
力も高まる。
【0027】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面を参照して
説明する。
【0028】図1は、この発明の一実施例の車両用ヒー
トポンプ式冷暖房装置の概略構成図を示す。この冷暖房
装置において、コンプレッサ31は、エンジンルームの
ような車室外に設けられ、電動式コンプレッサや油圧駆
動式コンプレッサのように、入力値を直接変更できるよ
うになっている。このコンプレッサ31の冷媒吐出側に
は、車室外熱交換器38と放熱用車室内熱交換器33と
が流路切換手段としての三方弁32を介して接続されて
いる。車室外熱交換器38は、エンジンルーム等の車室
外に設けられ、コンプレッサ31から吐出される冷媒の
熱を外気に放熱する車室外コンデンサとしての働きをす
る。
【0029】放熱用車室内熱交換器33は、インストル
メントパネルの裏側のような車室内前部に配置された装
置本体としてのダクト39内に設けられ、コンプレッサ
31から吐出される冷媒の熱を、送風手段としてのブロ
ワファン37によって導入された空気に放熱する放熱タ
イプの車室内コンデンサになっている。
【0030】三方弁32は、暖房運転時には、点線示の
ような流路切り換え状態となり、コンプレッサ31の吐
出側を放熱用車室内熱交換器33の冷媒流入側に接続す
る一方、冷房運転時には、実線示のような流路切り換え
状態となり、コンプレッサ31の吐出側を車室外熱交換
器38及び逆止弁70を介して放熱用車室内熱交換器3
3の冷媒流入側に接続し冷媒流路切替え手段を形成して
いる。
【0031】逆止弁70は、車室外熱交換器38側から
放熱用車室内熱交換器33側への冷媒の流れを許容し、
放熱用車室内熱交換器33側から車室外熱交換器38側
への冷媒の流れを阻止するようになっている。
【0032】放熱用車室内熱交換器33の冷媒流側に
は、ダクト39内の上流側に設けられた吸熱用車室内熱
交換器3の冷媒流入側が、液タンク36及び車室外に
設けられた膨張手段として液冷媒を断熱膨張して霧状に
する膨張弁34を介して接続されている。
【0033】吸熱用車室内熱交換器35は、ダクト39
内の放熱用車室内熱交換器33よりも上流側に配置され
ており、ブロワファン37によって導入された空気の熱
を、車室外熱交換器38および放熱用車室内熱交換器3
3の少なくとも一方から膨張弁34を通して供給された
冷媒に吸熱して冷風を作る吸熱タイプのエバポレータに
なっている。
【0034】吸熱用車室内熱交換器35の冷媒流出側と
コンプレッサ31の冷媒吸入側との間には、アキュムレ
ータ91が接続されている。アキュムレータ91は、少
なくとも車室外熱交換器38の内容積よりも大きな内容
積を有し、たとえ冷房運転と暖房運転を切り換えた時に
車室外熱交換器38内の残留冷媒量が零となったとして
も、アキュムレータ91から冷媒が溢れ出すことがない
ものとする。
【0035】前記ダクト39内の吸熱用車室内熱交換器
35よりも上流側には、車室内空気を導入する内気導入
管40と、走行風圧を受けて外気を導入する外気導入管
41とが接続されている。この内気導入管40と外気導
入管41とが分岐する部分には、内気導入管40から導
入された内気と外気導入管から導入された外気とを任意
の比率で供給するように開閉するインテークドア42が
設けられている。インテークドア42は、制御装置43
で駆動される図外のインテークドアアクチュエータによ
り開閉する。
【0036】前記内気導入管40と外気導入管41との
空気導出側(空気流の下流側)と吸熱用車室内熱交換器
35との間には、前記ブロワファン37が配置され、ブ
ロワファンモータ44で回転駆動されるようになってい
る。
【0037】前記放熱用車室内熱交換器33の上流側に
は、エアミックスドア46が設けられている。このエア
ミックスドア46は、制御装置43で駆動される図外の
エアミックスドアアクチュエータにより駆動され、吸熱
用車室内熱交換器35を通過して冷えている空気を、放
熱用車室内熱交換器33を回避して冷えたままの冷風
と、放熱用車室内熱交換器33を通過して暖められた温
風とに分ける比率(冷風と温風との風量配分)を調整す
る。
【0038】エアミックスドア46の開度たるエアミッ
クスドア開度Xdscは、エアミックスドア46が一点
鎖線示の位置となり、冷風と温風との風量配分が冷風1
00%になる時を、エアミックスドア開度Xdsc=0
%(全閉)と設定し、エアミックスドア46が二点鎖線
示の位置となり、冷風と温風との風量配分が温風100
%となる時を、エアミックスドア開度Xdsc=100
%(全開)と設定してある。
【0039】前記ダクト39の放熱用車室内熱交換器3
3よりも下流側には、上記冷風と温風との混合を良くす
ることにより、温度調整された空調風を作る部屋として
のエアミックスチャンバ47が設けられている。エアミ
ックスチャンバ47には、対象乗員の上半身に向けて空
調風を吹き出すベンチレータ吹出口51(51a,51
b,51c,51d)と、対象乗員の足元に向けて空調
風を吹き出すフット吹出口52(52a)と、フロント
ウィンドウに向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口
53(53a)とが連設されている。
【0040】エアミックスチャンバ47内には、ベンチ
レータドア55とフットドア56とデフロスタドア57
とが設けられている。ベンチレータドア55は、制御装
置43で駆動される図外のベンチレータドアアクチュエ
ータにより、ベンチレータ吹出口51を開閉する。フッ
トドア56は、制御装置43で駆動される図外のフット
ドアアクチュエータにより、フット吹出口52を開閉す
る。デフロスタドア57は、制御装置43で駆動される
図外のデフロスタドアアクチュエータにより、デフロス
タ吹出口53を開閉する。
【0041】また、前記エアミックスチャンバ47に
は、内気導入管40に連通する循環通路71が接続され
ている。循環通路71からエアミックスチャンバ47へ
の開口部72には、循環通路71の入口側ドア74が設
けられ、循環通路71と内気導入管40との分岐部73
には、出口側ドア75が設けられている。入口側ドア7
4は、制御装置43で駆動される図外の入口側ドアアク
チュエータにより開口部72を開閉し、出口側ドア75
は、制御装置43で駆動される図外の出口側ドアアクチ
ュエータにより分岐部73を切り換える。すなわち入口
側ドア74および出口側ドア75が開放した状態(出口
側ドア75は内気導入管40を閉じる。)において、エ
アミックスチャンバ47からブロワファン37の上流側
へ空調風が循環する。
【0042】前記制御装置43は、吸熱用車室内熱交換
器吸い込み風温センサ58と、吸熱用車室内熱交換器吹
き出し風温センサ59と、ベンチレータ吹出口風温セン
サ60と、日射量センサ61と、外気温センサ62と、
室温センサ63と、空調設定パネル79に設けられた室
温設定器64(図1では便宜上、信号線で示している)
と、吹出口モードスイッチ65(同)と、ブロワファン
スイッチ66(同)と、冷媒温度センサ67と、放熱用
車室内熱交換器吹き出し風温センサ68などからの熱環
境情報により、エアミックスドア開度Xdscとコンプ
レッサ31の入力値Wcompと吸熱用車室内熱交換器35
を通過する通過風量Veva と目標吹出温度To などの目
標冷暖房条件を演算し、車室内の冷暖房条件が上記演算
された目標冷暖房条件を維持するように、コンプレッサ
31とブロワファンモータ44とエアミックスドアアク
チュエータとベンチレータドアアクチュエータとフット
ドアアクチュエータとデフロスタドアアクチュエータな
どを駆動する。
【0043】次に本実施例における膨張弁34の特性に
ついて説明する。
【0044】本実施例の膨張弁34は温度式膨張弁であ
り、図2はその特性を示している。この図2では、横軸
に温度、縦軸に圧力を取り、冷凍サイクルに使用する冷
媒の飽和特性線と共に、膨張弁34の特性線が示されて
いる。
【0045】図中のの圧力は、暖房高負荷安定運転時
の吸熱用車室内熱交換器35の作動圧力の代表値で、低
外気温時のガラスの防曇性確保と、作動冷媒量の適正化
と、吸熱用車室内熱交換器35の凍結防止とを考慮し
て、吸熱用車室内熱交換器35がほぼ0℃付近で作動す
る時の圧力に設定されている。そして、この設定条件、
つまり設定温度(0℃)及び設定圧力(の圧力)にお
いて、膨張弁34の特性線と使用冷媒の飽和特性線とが
交差することを第1の条件として、膨張弁34の特性が
決められている。
【0046】この設定温度は、本実施例では0℃となっ
ているが、−5℃〜+5℃の間の任意の温度に設定可能
である。もし、この設定温度が約5℃よりも高いとする
と、冷媒が低圧側(吸熱用車室内熱交換器35〜アキュ
ムレータ91)に溜まって吸熱用車室内熱交換器35の
作動温度が上昇するので、低外気温時のガラスの防曇性
を確保することが困難になる。逆に約−5℃よりも低い
とすると、早い段階で膨張弁34の開き気味の設定が解
除されることになるため、暖房運転時に余剰冷媒のアキ
ュムレータ91への回収が十分に行われなくなり、作動
冷媒量の適正化がなされず、サイクルが安定して作動で
きなくなる。
【0047】の圧力は暖房低負荷安定運転時の吸熱用
車室内熱交換器35の作動圧力の代表値である。
【0048】また、の圧力は、冷房高負荷安定運転時
の吸熱用車室内熱交換器35の作動圧力の代表値であ
る。
【0049】本実施例では、吸熱用車室内熱交換器35
がの圧力状態で作動しているときに、コンプレッサ3
1の吸入冷媒の過熱度(コンプレッサ吸入冷媒温度と冷
媒の蒸発温度の差)が設定値(約10℃)よりも小さく
なることを第2番目の条件として、使用する膨張弁34
の特性が決められている。図2において、Tkで示す値
が過熱度に相当する。
【0050】また、の圧力は、冷房低負荷安定運転時
の吸熱用車室内熱交換器35の作動圧力の代表値であ
る。
【0051】本実施例の膨張弁34の特性が以上のよう
に決められていることにより、図2に示すように、両特
性線の交差する点X(設定温度、設定圧力)の左側(温
度が低い側)または下側(圧力が低い側)では、飽和特
性線(飽和蒸気圧)より膨脹弁34の開弁圧力の方が高
くなる。つまり、膨張弁34は冷媒を増やすように開き
気味の設定になる。また、両特性線の交差する点Xの右
側(温度が高い側)または上側(圧力が高い側)では、
飽和特性線(飽和蒸気圧)より膨脹弁34の開弁圧力の
方が低くなる。つまり、膨張弁34は冷媒を減らすよう
に閉じ気味の設定になる。
【0052】すなわち、吸熱用車室内熱交換器35の作
動圧力がの圧力よりも小さい場合には、作動圧力が小
さくなるほど膨張弁3は強制的に開き気味となり、サ
イクルの低圧側(吸熱用車室内熱交換器35〜アキュム
レータ91)に流れ込む冷媒が多くなる。逆に、吸熱用
車室内熱交換器35の作動圧力がの圧力よりも大きい
場合には、作動圧力が大きくなるほど膨張弁3は閉じ
気味となり、サイクルの低圧側に流れ込む冷媒量が少な
くなる。
【0053】次に図1において冷房運転時と暖房運転時
の動作を説明する。
【0054】冷房運転時は、三方弁32が図1の点線示
のように切り換えられ、冷媒が、コンプレッサ31→三
方弁32→車室外熱交換器38→逆止弁70→放熱用車
室内熱交換器33→液タンク36→膨張弁34→吸熱用
車室内熱交換器35→アキュムレータ91→コンプレッ
サ31と循環する。
【0055】そして、車室外熱交換器38と放熱用車室
内熱交換器33とが放熱器として働き、車室外熱交換器
38が、コンプレッサ31から吐出された高温の冷媒の
熱を外気に放熱し、残りの熱を放熱用車室内熱交換器3
3がブロワファン37で導入された空気又は車両走行時
のラム圧によって導入された空気に放熱して温風を作
る。また、吸熱用車室内熱交換器35が吸熱器として働
き、ブロワファン37で導入された空気又は車両走行時
のラム圧によって導入された空気の熱を冷媒に放熱して
冷風を作る。そのため、車室内空気を冷却除湿すると共
に加熱することにより、車室内に適温の空調風を供給す
ることができる。また、冷風と温風とを別々に取り出す
ことで、例えば車室内の上下に温度差を持った空調風を
供給することもできる。
【0056】また、暖房運転時は、三方弁32が実線示
のように切り換えられ、冷媒が、コンプレッサ31→三
方弁32→放熱用車室内熱交換器33→液タンク36→
膨張弁34→吸熱用車室内熱交換器35→アキュムレー
タ91→コンプレッサ31と循環する。そして、放熱用
車室内熱交換器33がコンプレッサ31から吐出された
高温な冷媒の熱を、ブロワファン37で導入された空気
又は車両走行時のラム圧によって導入された空気に放熱
して温風を作り、吸熱用車室内熱交換器35がブロワフ
ァン37で導入された空気又は車両走行時のラム圧によ
って導入された空気の熱を冷媒に吸熱して冷風を作る。
ここで、送風手段で導入する空気の温度は、空気を循環
することにより適当な温度に保持されるので、外気が低
温であっても充分な暖房効果を得ることができる。ま
た、吸熱用車室内熱交換器35で冷却除湿した後、放熱
用車室内熱交換器33で加熱するので、除湿暖房が可能
となり、窓の曇りを防止することができる。また、この
暖房運転時には、車室外熱交換器38は使用しない。こ
のため、外気温が低くて車室外熱交換器3の凍結のお
それがある場合にも、車室外熱交換器3に冷媒を通さ
ないことで、安定的に暖房運転を行うことができる。
【0057】次に、図2の特性を有する膨張弁34を用
いたことによる作用を説明する。
【0058】図3は、図2の特性を有する膨張弁34を
使用した場合の吸熱用車室内熱交換器35の作動圧力の
変化を示している。同図中には、暖房時及び冷房時の吸
熱用車室内熱交換器35の作動圧力変化の実験結果の一
例も示されている。
【0059】車両用ヒートポンプ式冷暖房装置が暖房運
転を開始すると、吸熱用車室内熱交換器35の作動圧力
は一気にの圧力よりも低下する。この時、自身の持つ
特性により膨張弁34は強制的に開き気味となるので、
冷媒配管内の冷媒は、低圧側に多く流れ込むようにな
り、一旦アキュムレータ91内に溜まり込む。そして、
暖房運転が安定状態に向かうにつれて、吸熱用車室内熱
交換器35の作動圧力は上昇するので、膨張弁34は徐
々に開度を小さくする。
【0060】この時、車室外熱交換器38に大量の冷媒
が溜まり、流通する冷媒の量が減少した場合、暖房配管
内の冷媒量が少なくなり、高圧側の圧力上昇が抑えられ
る。このため、膨張弁34の出入口での圧力差がやや小
さくなり、サイクルの作動冷媒量を確保するために低圧
側に流入する冷媒量が減少して、アキュムレータ91内
の冷媒貯蔵量が徐々に減少する方向に向かい、冷媒を補
給することができる。逆に、車室外熱交換器38内に溜
り込んだ冷媒量が少なく、暖房サイクル内の冷媒量が多
い場合には、運転開始後にアキュムレータ91に蓄えた
余剰冷媒をアキュムレータで保持し続けることによっ
て、サイクル内の作動冷媒量を適正化することができ
る。
【0061】このように、本実施例の膨張弁34とアキ
ュムレータ91は、暖房運転開始後のウォームアップ時
において吸熱用車室内熱交換器35の作動圧力がの設
定圧力よりも一気に低下することに伴い、膨張弁34を
開いて一旦冷媒をアキュムレータ91内に蓄え、安定状
態に近付くにつれて、つまり作動圧力がの設定圧力に
近付くにつれて徐々にサイクルの作動冷媒量を適正化す
ることができ、安定した暖房状態が得られる。
【0062】尚、この場合、設定圧力と作動圧力の差に
より、膨張弁34の開度が調整されると述べたが、設定
温度と作動温度の差により、膨張弁34の開度が調整さ
れるようにすることもできる。
【0063】また、車両用ヒートポンプ式冷暖房装置が
安定した暖房運転を行うことができるため、サイクルは
次のように作用する。
【0064】暖房安定運転時の吸熱用車室内熱交換器3
5は、コンプレッサ31の回転数(周波数)が高い高負
荷時に、の圧力付近で作動し、コンプレッサ31の回
転数(周波数)が低い低負荷時には、の圧力付近で作
動する。
【0065】一般に、コンプレッサ31の回転数(周波
数)が高く、暖房高負荷状態で運転している場合には、
コンプレッサに内蔵されたモータへの入力が増加するの
で、コンプレッサ吐出冷媒温度も上昇しやすく、コンプ
レッサ保護機能が作動して、コンプレッサ31を停止せ
ざるを得なくなる。
【0066】ところが、膨張弁34はの圧力付近で作
動しているので、アキュムレータ91等の低圧側に冷媒
が溜まりやすい状態にある。アキュムレータ91に冷媒
が溜まっていれば、コンプレッサ31の内蔵モータを冷
却する冷媒量が多くあるので、コンプレッサ吐出冷媒温
度の上昇を抑えることができ、コンプレッサ保護が作動
することなく、安定してコンプレッサ31を高回転(高
周波数)で運転することができる。
【0067】逆に、コンプレッサ31の回転数(周波
数)が比較的低く、暖房低負荷状態で運転している場合
には、膨張弁34はの圧力付近で作動しているので、
適正な冷媒量を維持しつつ、適度な過熱度をつけてサイ
クルの効率を上げることができる。
【0068】次に、冷房時の作用について説明する。
【0069】冷房時は、車室外熱交換器38を含めたサ
イクル全体を使って運転を行うことになるので、運転開
始後のクールダウン時において、暖房ウォームアップ時
のような膨張弁34とアキュムレータ91による作動冷
媒量の調節は不要である。また、冷房運転時は暖房運転
時に比べ、サイクルの高圧側の作動圧力が低いので、コ
ンプレッサ31の回転数(周波数)が低い冷房低負荷時
において特に配慮すべき問題はなく、冷房高負荷時のコ
ンプレッサ吐出冷媒温度の上昇のみに注意すればよい。
【0070】冷房高負荷時も暖房高負荷時と同じく、コ
ンプレッサ吸入冷媒の過熱度が大きくなると、コンプレ
ッサ吐出温度が上昇してコンプレッサ保護が作動しやす
くなる。本実施例の膨張弁34では、冷房高負荷時にお
いて、適正な過熱度となるように膨張弁34の特性を決
めるているので、冷房高負荷時にコンプレッサ吐出冷媒
温度の上昇が原因でコンプレッサ31を停止することは
ほとんどない。
【0071】次に、本実施例の冷暖房装置による効果を
実証した実験例について説明する。
【0072】図4は暖房運転時の最適冷媒量の評価を行
った結果を示している。吸熱用車室内熱交換器35の入
口空気温度25℃、ブロア電圧7V、コンプレッサ回転
数(周波数)70Hzの条件で、暖房高負荷状態での最
適冷媒量の評価を行ったところ、0.7〜2.0kgの
冷媒量の範囲において、コンプレッサ吐出圧力(Pd)
の上昇が見られなかった。よって、この範囲が暖房時の
最適冷媒量となることがわかった。
【0073】一方、図5は冷房運転時の最適冷媒量の評
価を行った結果を示している。外気温35℃、吸熱用車
室内熱交換器(吸熱器)の入口空気温度35℃、ブロア
電圧10.5V、コンプレッサ回転数(周波数)90H
zの条件で、冷房高負荷状態での最適冷媒量の評価を行
ったところ、0.8〜1.4kgの冷媒量の範囲におい
て、コンプレッサ吐出圧力(Pd)の変化が見られなか
った。よって、この範囲が冷房時の最適冷媒量となるこ
とがわかった。
【0074】この実験例では、暖房運転時に、車室外熱
交換器(コンデンサ)に残留する冷媒量が、約0〜40
0gの範囲で変化する。このコンデンサに残留する冷媒
量は、暖房運転を開始する時の状態、例えば、直前まで
の運転状態や外気温や走行条件等により影響を受けるの
で、常に一定量とすることはできない。したがって、暖
房時にコンデンサに残留する冷媒量が400g程度変化
しても、作動冷媒量が最適な冷媒量の範囲内に入るため
には、暖房時の最適冷媒量の範囲を広くすることが必要
であり、厳密には、暖房運転時と冷房運転時の最適冷媒
量のラップする領域が約400g以上あればよいことが
わかった。
【0075】評価結果によれば、冷房時よりも暖房時の
方が最適冷媒量の範囲が広いので、車室外熱交換器38
に冷媒の寝込みが存在しても、暖房性能に影響を受けな
いことがわかる。
【0076】図6は、車室外熱交換器38での冷媒寝込
み量が暖房性能に影響を及ぼすか否かを確認するため
に、外気温0℃において、5分以上強制的に冷房運転を
行って車室外熱交換器38に冷媒を寝込ませた後に暖房
運転を行った場合の実験結果の一例を示している。
【0077】図6の(a)はコンプレッサ吐出圧力(P
d)とコンプレッサ吸入圧力(Ps)の変化を示し、
(b)は車室内吹出温度の変化を示している。比較のた
めに、直前の冷房運転を行わないで、通常の暖房運転を
行った場合の結果も併せて示している。
【0078】一般に、車室外熱交換器38の寝込み冷媒
量が多くなれば、暖房流路側の冷媒量が減少するので、
作動冷媒量が減少し、コンプレッサ吐出圧力(Pd)が
上昇しなくなり、車室内への吹出温度も上昇しないが、
本実験によれば、強制的な冷房運転の有無によらず、ほ
ぼ同レベルのコンプレッサ吐出圧力(Pd)特性や吹出
温度特性が得られ、暖房能力の低下も見られないことが
わかった。
【0079】このように実験例を見ても本発明を適用す
ることで適切な暖房効果が得られることが立証された。
【0080】次に上記実施例においては、温度式膨張弁
34の持つ自身の特性により弁開度が制御されていたが
第2の実施例として、弁開度を制御する手段を外部制御
方式の例えば電磁式膨弁に適用するものを説明する。
【0081】この実施例は電気的に電磁弁開度を制御す
るものであり、その制御を第7図のフローチャートに基
づいて説明する。
【0082】ステップ901で暖房運転を開始すると、
ステップ902で強制的に膨張弁34を開き気味に設定
する。温度式膨張弁の場合には、図2に示す設定によ
り、自動的に膨張弁34が開き気味に制御される。外部
制御方式の場合は、電気信号等により膨張弁を開き気味
に設定する。これにより、低圧側への冷媒流入量が増加
し、サイクルの低圧側に設けたアキュムレータ91に冷
媒が蓄えられ、暖房運転開始直後に低下した低圧が徐々
に上昇し始める。
【0083】ステップ903では、暖房運転開始直後に
低下した低圧が設定圧力まで上昇したか否かを判断す
る。低圧が設定圧力まで回復した場合には、ステップ9
04に進み、逆に設定圧力まで達していない場合には、
ステップ902に戻り、サイクル低圧部への冷媒流入量
を多くして、アキュムレータ91に冷媒を蓄える。
【0084】ステップ904では、ステップ902にお
いて開き気味に設定した膨張弁34の設定を元に戻す。
【0085】このように制御することによって、車室外
熱交換器38に残留する冷媒量の多少によらず、暖房運
転時の作動冷媒量を最適冷媒量の範囲内に収めることが
できる。この結果、暖房運転時に急激なコンプレッサ吐
出圧力の上昇や暖房能力の低下を招くことなく、安定し
て暖房運転を行うことができる。しかも電磁式の膨
を利用しているため、微妙な開度制御を行なうことがで
き、より制御を最適なものとすることができる。
【0086】図8は、第3の実施例で膨張弁34と並列
に、電磁弁92付きのバイパス路93を設け、電磁弁9
2を図示しない制御手段によって制御するようにしたも
のである。この場合は、膨張弁34と電磁弁92付バイ
パス路93が膨張手段に相当している。この装置では、
暖房運転開始時に、図示しない制御手段が電磁弁92を
開き気味に設定し、膨張弁34を通過していた冷媒の一
部を、バイパス路93を経由して吸熱用車室内熱交換器
35側に直接流し、低圧側に冷媒が多く流れるようにす
る。そして、低圧側の圧力が設定圧力に達したら、電磁
弁92の開き気味の設定を解除するように制御し、低圧
側への冷媒の流入量を抑え気味にする。これにより、上
記同様な作用効果を奏する他、安価に製造することがで
きる。
【0087】また、これ以外に、膨張手段に電熱ヒータ
を設けたり、電動膨張弁を用いたりすることも可能であ
る。冷媒を多く流すとき、電熱ヒータ式の場合は電熱ヒ
ータをONし、電動膨張弁の場合は強制的に開くように
する。これにより、上記同様な作用効果を奏する他、微
妙なコントロールを行なうことができる。
【0088】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1の発
明によれば、暖房運転開始時に、膨張手段の開度を増大
して冷媒をアキュムレータに一旦蓄えるようにしたの
で、車室外熱交換器に寝込んだ冷媒量の多少によらず、
常にサイクル内の冷媒量を適正冷媒量の範囲に収めるこ
とができる。従って、事前の運転条件等によらず、常に
一定の性能で暖房運転を行うことができる。
【0089】請求項2の発明によれば、安定した暖房負
荷運転時の状態を基準に前記の冷媒量の適正化が行われ
るので、低外気温時のガラスの防曇性確保や吸熱用車室
内熱交換器の凍結防止等についても、保証することがで
きる。
【0090】請求項3の発明によれば、+5℃より低い
温度を基準にして、温度式膨張弁により前記の冷媒量の
適正化制御を行うので、低外気温時のガラスの防曇性を
確保することができる。
【0091】請求項4の発明によれば、温度式膨張弁に
より冷房高負荷運転時に適正な過熱度を維持しながら運
転することができるので、できる限り高回転でコンプレ
ッサを運転し、最大冷房能力を高めることができる。ま
た、温度式膨張弁の特性の適正な決定により、前記の冷
媒量の適正化制御と過熱度の制御を行うことができるの
で、冷房時と暖房時とで膨張弁の仕様を切り換えるよう
な必要が全くない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の構成図である。
【図2】同実施例で用いる膨張弁の特性図である。
【図3】同実施例の暖房時と冷房時における吸熱用車室
内熱交換器(吸熱器)の作動圧力の範囲を示す図であ
る。
【図4】同実施例において、暖房時の最適冷媒量の評価
実験を行った結果を示す図である。
【図5】同実施例において、冷房時の最適冷媒量の評価
実験を行った結果を示す図である。
【図6】同実施例において暖房運転を行った場合のコン
プレッサ吐出圧力の変化(a)と室内吹出温度の変化
(b)を示す図である。
【図7】同実施例における膨張弁の制御内容を示すフロ
ーチャートである。
【図8】膨張手段の他の例を示す構成図である。
【図9】従来例に係る冷凍サイクルの構成図である。
【図10】この発明の前提となる車両用ヒートポンプ式
冷暖房装置の冷凍サイクルの構成図である。
【符号の説明】
31 コンプレッサ 32 三方弁(冷媒流路切換手段) 33 放熱用車室内熱交換器 34 膨張弁(膨張手段) 35 吸熱用車室内熱交換器 37 ブロワファン(送風手段) 38 車室外熱交換器 91 アキュームレータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−201243(JP,A) 特開 昭57−33756(JP,A) 特開 昭61−197967(JP,A) 特開 昭61−271116(JP,A) 特開 平4−151324(JP,A) 実開 平2−130808(JP,U) 実開 昭61−94411(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60H 1/32 624 B60H 1/22 611

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】冷媒に仕事量を加えるコンプレッサと、 このコンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒の熱を
    外気に放熱する車室外熱交換器と、 前記コンプレッサの冷媒吐出側に接続され、冷媒の熱を
    送風手段によって導入された空気に放熱して温風を作る
    放熱用車室内熱交換器と、 この放熱用車室内熱交換器の冷媒流出側に接続されて、
    冷媒を断熱膨張させる膨張手段と、 この膨張手段の冷媒吐出側と前記コンプレッサの冷媒吸
    入側との間に挿入接続され、送風手段によって導入され
    た空気の熱を前記車室外熱交換器および放熱用車室内熱
    交換器の少なくとも一方から前記膨張手段を通して供給
    された冷媒に吸熱して冷風を作る吸熱用車室内熱交換器
    と、 前記コンプレッサの冷媒吐出側と前記車室外熱交換器お
    よび前記放熱用車室内熱交換器の冷媒流入側との間に設
    けられ、コンプレッサから吐出される冷媒を、冷房運転
    時に少なくとも前記車室外熱交換器に導入し、暖房運転
    時に前記車室外熱交換器を回避させて前記放熱用車室内
    熱交換器に導入する冷媒流路切換手段とを備え、 前記膨張手段の冷媒流出側と前記コンプレッサの冷媒吸
    入側との間に、前記車室外熱交換器の内容積よりも大き
    な内容積を有するアキュムレータを接続し、 前記膨張手段は、暖房運転開始時に、前記吸熱用車室内
    熱交換器の作動圧力または作動温度の低下に応じて強制
    的に開度を増大することを特徴とする車両用ヒートポン
    プ式冷暖房装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の車両用ヒートポンプ式冷暖
    房装置において、 安定した暖房高負荷運転時の前記吸熱用車室内熱交換器
    の作動圧力または作動温度の少なくとも一つに基づい
    て、前記膨張手段の開度を決める前記設定圧力または設
    定温度が設定されていることを特徴とする車両用ヒート
    ポンプ式冷暖房装置。
  3. 【請求項3】請求項1記載の車両用ヒートポンプ式冷暖
    房装置において、 前記膨張手段は、所定の特性を持つ温度式膨張弁からな
    り、この温度式膨張弁の開度を決める設定温度を、少な
    くとも+5℃よりも低い温度範囲内の任意の温度に設定
    し、前記吸熱用車室内熱交換器の作動温度が前記設定温
    度よりも低下した場合に前記温度式膨張弁が強制的に開
    かれることを特徴とする車両用ヒートポンプ式冷暖房装
    置。
  4. 【請求項4】請求項1記載の車両用ヒートポンプ式冷暖
    房装置において、 前記膨張手段は、所定の特性を持つ温度式膨張弁からな
    り、この温度式膨張弁は、強制的に開度を増大する条件
    と安定した冷房高負荷運転時のコンプレッサ吸入側冷媒
    の過熱度が所定値以下となる条件とから特性が定められ
    たものであることを特徴とする車両用ヒートポンプ式冷
    暖房装置。
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