JP3215818B2 - 斜面安定化工法 - Google Patents

斜面安定化工法

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JP3215818B2
JP3215818B2 JP03813699A JP3813699A JP3215818B2 JP 3215818 B2 JP3215818 B2 JP 3215818B2 JP 03813699 A JP03813699 A JP 03813699A JP 3813699 A JP3813699 A JP 3813699A JP 3215818 B2 JP3215818 B2 JP 3215818B2
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泰弘 山田
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  • Pit Excavations, Shoring, Fill Or Stabilisation Of Slopes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は斜面の安定化を図
る工法に関するものであり、特に型枠組みや難しい配筋
の必要なしに施工が容易であるとともに、斜面の土砂荷
重を全体の構造で受け止めることが可能な斜面安定化工
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】斜面の崩壊を防ぐために、従来様々な工
法が採用されている。斜面に配筋して型枠を組み、コン
クリートを打設して斜面上に格子状に伸びる梁を構築す
る法枠工法などが代表的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記した法枠工法で
は、斜面の地山に沿って配筋し、その鉄筋を囲むように
型枠を組み、型枠にコンクリートを打設して格子状の梁
を構築し、この梁を地山に打設したアンカーによって固
定していた。つまり、型枠を組んでの施工や、構築した
梁をアンカーによって固定するなどの工程も多く、その
施工には工期が長く必要で、崩壊の危険が高く、比較的
施工が困難な斜面での施工には大掛かり過ぎて適しない
ことがあった。また、使用する部材の種類も多く、施工
費も高くなっていた。
【0004】この発明で解決する他の課題は、斜面の土
砂荷重を受ける構造が、一部の斜面の崩れを一部の構造
で押さえてしまうことである。前記した法枠工法にあっ
ても、全体の構造の柔軟性と一体性が充分ではなく、一
部の斜面の崩れによる土砂荷重を、その部分の構造物だ
けで押さえようとするのが従来の斜面安定化構造物の構
造と言える。
【0005】更にこの発明で解決する他の課題は、斜面
と安定化構造物の密着性である。一度構築した斜面安定
化構造物では、斜面と構造物との間に隙間が生じて密着
性が充分でないと、その隙間によって斜面の崩れが生じ
てしまう危険性がある。特に経年変化によって斜面の状
態が変化して、構造物と斜面との密着性が失われてしま
うこともあり、その場合も修正が効かないのが一般的で
あった。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は以上のような
課題を解決するためになされたもので、削孔に端部を挿
入した引張材を斜面上に這わせ、複数の引張材を削孔内
にて拘束部材によって束ねて全体構造を一体化させると
ともに、引張材を緊張可能とすることによって斜面と引
張材を密着させ、土砂荷重を押さえることが可能な斜面
安定化工法を提供することを目的とする。
【0007】
【発明の実施の形態】この発明にかかる斜面の簡易安定
化工法では、引張材を直接斜面表面に這わせるもので、
その引張材としては、PC鋼線やPC鋼より線、高分子
系引張材やポリエチレン繊維などの合成樹脂系引張材な
ど様々な材質の引張材が使用できる。PC鋼線やPC鋼
より線などであれば、これをポリエチレン製のシースの
中に通したり、周囲に樹脂塗装したり樹脂被覆して防錆
処理を施す。
【0008】斜面には適宜間隔を離して複数個の削孔を
地盤に向かって掘削形成する。引張材は中間部を斜面に
沿って這わせ、その両端部分はそれぞれ別個の削孔の中
に挿入する。ひとつの削孔に挿入する引張材は一本とは
限らず、複数本の引張材の端部を挿入する。削孔に挿入
した複数本の引張材は、それぞれその周囲に形成した別
個の削孔内に挿入するようにする。つまりは斜面上に這
わす引張材は、削孔から出て四方八方に伸びるように配
する。各削孔に挿入した複数本の引張材は、削孔の地表
近傍にてベルトやリング状の拘束部材によって束ねる。
拘束部材は円形や多角形の金属製リングなどが使用でき
る。各削孔内にセメントミルクやモルタル、樹脂モルタ
ルなどの硬化材を注入して引張材の端部を削孔内にて定
着する。斜面に沿わした引張材の中間部分によって斜面
の土砂荷重を押さえる。
【0009】各削孔内に挿入した複数本の引張材は拘束
部材によって束ねてあり、それら複数本の引張材は四方
八方に伸びて、別の削孔にて別の引張材と拘束部材によ
って拘束されて連結してある。斜面の一部に崩れが生じ
て一部の引張材に土砂荷重が作用した場合、拘束部材に
よって拘束された他の引張材が一緒に引張られ、斜面全
体に張り巡らせた引張材全体がひとつの網のように一体
化して、荷重を全体で受けるようになる。引張材の中間
部分にコンクリートや樹脂モルタルなどを吹付けてもよ
いが、金網材を被せて、その上に吹付け、或いは打設す
ることもある。
【0010】引張材を緊結材に定着して緊張可能にする
こともある。削孔に端部を挿入する複数本の引張材のう
ち幾本かは、中間部を前もってU字状に折り返し加工し
ておき、その両端部をそれぞれ別個の削孔の中に挿入す
る。他の引張材は一端部を前記削孔の中に挿入して、他
端部を斜面上に伸ばして開放端としておく。折り返した
引張材は鋳物製などの緊結具に引掛け、その他の引張材
の開放端となった端部は、緊結具の固定孔に挿入して、
その端部を緊張してくさびにより定着する。このように
して緊張した引張材を斜面上に這わすようにして斜面の
土砂荷重を押さえるものである。引張材は前記したと同
じように複数本を挿入するのであるが、全てをひとつの
緊結具に掛けたり定着するのではなく、複数の緊結具に
分けて別個に定着することがある。各削孔内に挿入した
複数本の引張材は、削孔の地表近くにて拘束部材によっ
て束ねる。各削孔内に硬化材を注入して引張材端部を定
着する。
【0011】折り返す引張材は、現場での定着・緊張作
業前に予めU字状に加工しておくもので、ひとつの緊結
具に引掛ける複数本を左右に振り分けて、緊結具の左右
端部に引掛けるものである。このようにU字状加工した
引張材を緊結具の左右端部に配するのは、中間部の固定
孔に挿入した引張材をジャッキによって緊張する場合
に、大きな力が緊結具の中間部に作用し、これを左右に
振り分けた折り返した引張材でバランスを保って安定す
るからである。折り返した引張材が中間部に引掛けてあ
って、緊張するくさび定着の引張材が左右端部にある場
合は、引張材を緊張した際の大きな力によって緊結具が
回転してしまって引張材を緊張するのは不可能である。
引張材をジャッキによって緊張することにより、引張材
と斜面との密着性が良好となる。経年により斜面の状況
変化が生じた場合も、再緊張して引張材の弛みを解消で
きる。またこのような緊結具を使用する場合にも、複数
本引張材を埋設するようにモルタルなどの硬化材を吹き
付け、或いは場所打ちによって打設するなども採用でき
る。
【0012】
【実施例】以下、図に示す実施例に基づきこの発明を詳
細に説明する。図1及び図2において示すのはこの発明
のひとつの実施例であって、斜面地山に適宜間隔づつ離
して複数の削孔2を掘削してある。この削孔2の中に引
張材1の端部を挿入してある。引張材1として使用する
のは、PC鋼より線をポリエチレンシースの中に挿入し
たもので、削孔2の中に挿入する両端部はポリエチレン
シースの中に入れずに鋼より線をむき出しにしておく。
この引張材1の両端を別個の削孔2の中に挿入する。ひ
とつの削孔2内に挿入する引張材1は一本と限らず、複
数本の引張材1を挿入して、それらを削孔2内の地表近
傍にて拘束部材3によってひとつに束ねて拘束する。拘
束部材3としては図4に示すような円形リング状の金属
製部材でもよく、或いは図5に示すような多角形状のも
のでもよい。
【0013】各削孔2内に硬化材4であるセメントミル
クを注入して定着する。引張材1の地表に這わした部分
には、図6に示すような断面L型のエキスパンドメタル
やクリンプ金網などの被覆部材5を地表との間に挟むよ
うに取りつけ、これにモルタル14を吹付けて被覆する
ように被せておく。各引張材1は拘束部材3によって全
体が繋がるよう一体化しており、一部の引張材1が土砂
荷重によって引張られたとき、拘束部材3を介して他の
引張材1も引張られて、全体が網のように機能して全体
で荷重を受ける。特に引張材1を主とした柔構造である
ため、柔軟性を発揮して網のように機能することが可能
である。図7に示すのは被覆部材5の他の実施例であ
る。
【0014】図8に示すのは他の実施例であって、地表
に這わした複数本の引張材1間の間隔を、スペーサー部
材6を使用して拡げ、押さえる地表の面積を幅広くしよ
うというものである。この場合にもひとつの削孔2内に
挿入した引張材1は拘束部材3によって拘束する。図9
にはスペーサー部材6の側面図が記載されているが、各
引張材1はスペーサー部材6の溝に嵌められて間隔が保
持されている。
【0015】図10〜図14に示すのは、引張材1を緊
結具7に掛け、ジャッキにて緊張可能とした場合であ
る。引張材1のうち幾本かの引張材1bは、両端を鋼よ
り線むき出したままそれぞれ別個の削孔2bの中に挿入
してある。削孔2bに中に硬化材を注入して定着する。
中間部は前もってU字状に折り返し加工してあり、この
部分はポリエチレンシースを被せたまま斜面表面に沿わ
しておく。その他の引張材1aは一端部のみを削孔2a
の中に挿入し、他端は斜面上に伸ばしてある。各削孔2
の中に配した複数本の引張材1は、その地表近傍にて拘
束部材3によって束ねて一体化しておく。各削孔2の中
に硬化材4を注入して引張材1を定着する。実施例では
図に示すように、上下に対応して四個づつの削孔2a・
2bが掘削されて、上方に位置する削孔2aにはそれぞ
れ一端部のみを挿入して定着した四本の引張材1aが定
着されており、下方に位置する削孔2bには、二本の引
張材1bの両端がそれぞれ別個に挿入されて定着してあ
る。
【0016】上記した引張材1aと引張材1bは緊結具
7に引掛けられ、或いはくさび10によって定着されて
いる。(図13・図14)緊結具7は鋳物製などによっ
て形成された部材で、中間部には貫通する固定孔8が四
個形成されており、左右両端部には引掛け溝9・9が形
成されている。二本の引張材1bは、折り返した部分が
この緊結具7の引掛け溝9・9に引掛けられ、四本の引
張材1aは、むき出しにした端部が緊結具7の固定孔8
にそれぞれ挿入されて、それぞれくさび10によって定
着してある。この四本の引張材1aを、一本づつ緊張す
る一本引きのジャッキ11によって順次緊張する。急斜
面での作業の場合は複数本を同時に緊張するマルチジャ
ッキよりも一本引きのジャッキ11の方が好適である。
引張材1aを緊張することにより引張材1bも緊張され
て、引張材1a・1bの緊張力によって斜面地山の土砂
荷重を押さえることになる。緊張する際に大きな力が緊
結具7に作用するが、この力に対し左右に振り分けた引
張材1b・1bによってバランスを保ち、緊結具7が回
転したり、引張材1bが外れたりしない。
【0017】図10で示すように、以上のような緊結具
7によって上下の引張材1a・1bを緊張する構成を複
数組斜面に配し、斜面の広い表面を引張材1a・1bの
緊張力によって押さえてある。実施例では、複数個の削
孔2a・2bを上下に対応して平行に配列して形成した
が、削孔2a・2bはアトランダムに斜面の適宜位置に
形成して引張材1a・1bの端部を固定してもよい。要
するに、折り返しにした引張材1bと一端を開放端にし
た引張材1aを緊結具7にて緊結可能であれば、削孔2
や引張材1の配置は様々に考えられる。
【0018】その他の実施例として図12に示すよう
に、引張材1はスペーサー12を使用して平行に配する
ことも可能である。この場合も、ひとつの削孔2に挿入
した複数の引張材1は拘束部材3によって束ねて、全体
が一体に繋がるようにする。
【0019】
【発明の効果】この発明は以上のような構成を有し、以
下の効果を得ることが可能である。 型枠を組むことなく、引張材を削孔の中に挿入して定
着、緊張するという作業でよく、迅速な施工が可能で、
施工が難しい急斜面などや緊急を要する現場での施工に
も適している。 施工が簡易であるため、経済的に安価な施工が可能と
なる。 引張材を主とした柔構造であるため、斜面の変化にも
柔軟に対応できる。特にアンボンドシースの中に通すな
どしたアンボンド引張材によって、自由に伸縮が効く柔
構造とすることができる。 ひとつの削孔に挿入した引張材を拘束部材にて束ねて
一体化したため、一部に作用した荷重を、拘束部材を介
して全体の構造で網のように受けることができ、大きな
荷重にも耐え得る柔軟な構造となる。 端部を固定して他端部や中間部を斜面に沿わした引張
材を、緊結具に引掛け或いは定着して緊張し、緊張力に
よって地山の土砂荷重を押さえることにより、地山と引
張材との間にたわみが生じず、確実に斜面を押さえるこ
とが可能となる。 経年変化によって地山と引張材との間に緩みが生じて
も、引張材を再緊張することにより、再度引張材と地山
との密着性を回復できる。 引張材は一方側のみくさび定着にして、他方側の引張
材はU字状加工して緊結具に引掛けることにしたため、
くさび定着した側のみを緊張すれば双方を緊張すること
となり、緊張本数が半分となって施工性は著しく向上す
る。両方をともにくさび定着にすれば一方を緊張してい
るときに他方が外れてしまうが、そのような危険も生じ
ない。 折り返した複数本の引張材を緊結具の左右に振り分け
て引掛けることにより、中間部に固定した引張材をジャ
ッキにより緊張する際、この大きな力に対し左右の引張
材がバランスを保ち、安定した緊張を行うことが可能で
ある。 モルタル又はコンクリートを吹き付け又は打設するこ
とにより、引張材のみよりもより巾広く斜面の地山を押
さえることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を施工した斜面の断面図で
ある。
【図2】図1に示す実施例の正面図である。
【図3】他の実施例の正面図である。
【図4】拘束部材によって引張材を拘束した状態の平面
図である。
【図5】他の拘束部材を使用した実施例の平面図であ
る。
【図6】被覆部材を使用して引張材を被覆した断面図で
ある。
【図7】他の被覆部材を使用して被覆した断面図であ
る。
【図8】スペーサー部材を使用した実施例の平面図であ
る。
【図9】スペーサー部材を使用した場合の断面図であ
る。
【図10】緊結具を使用した実施例の平面図である。
【図11】図10の実施例の断面図である。
【図12】スペーサーを使用した場合の平面図である。
【図13】緊結具の使用状態の斜視図である。
【図14】引張材の緊張状態の平面図である。
【符号の説明】
1 引張材 2 削孔 3 拘束部材 4 硬化材 5 被覆部材 6 スペーサー部材 7 緊結具 8 固定孔 9 引掛け溝 10 くさび 11 ジャッキ 12 スペーサー

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 斜面の地盤に適宜間隔づつ離して削孔を
    形成し、斜面に沿って這わした引張材の両端をそれぞれ
    別個の削孔の中に挿入するようにし、各削孔に挿入した
    複数本の引張材は削孔の地表近傍にて拘束部材によって
    束ね、削孔の中に硬化材を注入して引張材の両端を削孔
    内に定着し、引張材の斜面上に這わした部分によって斜
    面を押さえてなる斜面安定化工法。
  2. 【請求項2】 引張材の斜面上に這わした部分には硬化
    材を吹付け或いは打設したことを特徴とする請求項1記
    載の斜面安定化工法。
  3. 【請求項3】 斜面の地盤に適宜間隔づつ離して削孔を
    形成し、複数本の引張材のうち一部は両端部を別個の削
    孔の中に挿入して中間部を折り返らせ、他の引張材は一
    端部を前記削孔の中に挿入して他端部は斜面に這わせた
    開放端とした後、各削孔内に挿入した複数本の引張材は
    削孔の地表近傍にて拘束部材によって束ね、これら削孔
    内に硬化材を注入して引張材の端部を固定し、前記折り
    返した引張材の中間部を緊結具に引掛け、その他の引張
    材の開放端は緊結具の固定孔に挿入して引張材を緊張し
    てくさびにより定着し、斜面に這わした引張材によって
    斜面地山を押さえてなる斜面安定化工法。
  4. 【請求項4】 引張材の斜面上に這わした部分には硬化
    材を吹付け或いは打設したことを特徴とする請求項3記
    載の斜面安定化工法。
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