JP3215178B2 - 超高磁束密度一方向性電磁鋼板用素材 - Google Patents

超高磁束密度一方向性電磁鋼板用素材

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JP3215178B2
JP3215178B2 JP24070292A JP24070292A JP3215178B2 JP 3215178 B2 JP3215178 B2 JP 3215178B2 JP 24070292 A JP24070292 A JP 24070292A JP 24070292 A JP24070292 A JP 24070292A JP 3215178 B2 JP3215178 B2 JP 3215178B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トランス等の鉄心に用
いられる{110}〈001〉方位即ちゴス方位を高度
に発達させた高磁束密度一方向性電磁鋼板を製造するの
に好適な素材に関する。ここで、素材とは鋼塊、スラブ
或いは熱延板を指す。
【0002】
【従来の技術】一方向性電磁鋼板は、軟磁性材料として
主にトランスその他の電気機器の鉄心材料に使用されて
いるもので、磁気特性としては励磁特性と鉄損特性が良
好でなくてはならない。
【0003】この励磁特性を表す指標として通常磁束密
度B8 (磁場の強さ800A/m における磁束密度)やB
10が用いられ、鉄損特性を表す指標としてW17/50 (5
0Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位重量あたりの
鉄損)やW13/60 等が用いられている。
【0004】一方向性電磁鋼板は製造工程の最終段階の
900℃以上の温度での仕上げ焼鈍工程で2次再結晶を
起こさせ、鋼板面に{110}面、圧延方向に〈00
1〉軸をもったいわゆるゴス組織を発達させることによ
って得られている。そのなかでも磁束密度B8 が1.8
8T以上の優れた励磁特性をもつものは高磁束密度一方
向性電磁鋼板と呼ばれている。高磁束密度一方向性電磁
鋼板の代表的製造方法としては特公昭40−15644
号公報、特公昭51−13469号公報があげられる。
【0005】現在世界的規模で生産されている高磁束密
度一方向性電磁鋼板は上記2特許を基本として生産され
ていると云える。然るに上記特許に基づく製品の磁束密
度B8 は1.88乃至高々1.95T程度であり、3%
Si鋼の飽和磁束密度2.03Tの95%程度の値を示
しているに過ぎない。
【0006】然るに近年省エネルギー、省資源への社会
的要求は益々厳しくなり、一方向性電磁鋼板の鉄損低
減、磁化特性改善への要求も熾烈になってきている。一
方技術的には鉄損低減化の手法としてレーザー照射等の
磁区制御技術が特公昭58−5968号公報、特公昭5
7−2252号公報等により確立され、この方法では更
なる高磁束密度材への要求が鉄損低減への手段として強
くなっている。
【0007】即ち、従来の高磁束密度一方向性電磁鋼板
の磁束密度B8 を更に理想方位に近づける手段の出現が
待たれているのが現状である。
【0008】この目標達成のための手段として本発明者
は特公昭57−1565号公報で従来のAl入り高磁束
密度一方向性電磁鋼板の溶鋼に炭酸塩含有物を添加する
方法を提案した。しかしこの方法は実験室的には実現性
があるが、工業規模では実施されていないのが実状であ
る。
【0009】更に本出願人は特公昭58−50295号
公報で温度勾配焼鈍法を提案した。この方法で初めて安
定して磁束密度B8 が1.95T以上の製品が得られる
ようになった。しかしこの方法は工場サイズのコイルフ
ォームで実施する場合、コイル一端から加熱し、反対端
部は温度勾配をつけるため冷却するという非常に熱エネ
ルギー的損失を伴うため工業生産としては問題点を大き
くはらんでいた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる問題
点を回避し極めて磁束密度の高い超高磁束密度一方向性
電磁鋼板の製造を可能にすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴とするとこ
ろは、次の通りである。 1)重量で、C:0.03〜0.15%、Si:2.5
〜4.0%、Mn:0.02〜0.30%、S:0.0
05〜0.040%、酸可溶性Al:0.010〜0.
065%、N:0.0030〜0.0150%を基本成
分とする一方向性電磁鋼板用素材において、0.002
0.01%のBiを含有せしめることを特徴とする
超高磁束密度一方向性電磁鋼板用素材。
【0012】2)重量で、C:0.03〜0.15%、
Si:2.5〜4.0%、Mn:0.02〜0.30
%、S:0.005〜0.040%、酸可溶性Al:
0.010〜0.065%、N:0.0030〜0.0
150%とSn:0.05〜0.50%を基本成分とす
る一方向性電磁鋼板用素材において、0.0020
0.01%のBiを含有せしめることを特徴とする超高
磁束密度一方向性電磁鋼板用素材。
【0013】3)重量で、C:0.03〜0.15%、
Si:2.5〜4.0%、Mn:0.02〜0.30
%、S:0.005〜0.040%、酸可溶性Al:
0.010〜0.065%、N:0.0030〜0.0
150%、Sn:0.05〜0.50%とCu:0.0
1〜0.10%を基本成分とする一方向性電磁鋼板用素
材において、0.00200.01%のBiを含有せ
しめることを特徴とする超高磁束密度一方向性電磁鋼板
用素材。
【0014】以下本発明の詳細について説明する。本発
明者はいわゆる高磁束密度一方向性電磁鋼板の磁束密度
を更に高めるべく種々の研究を重ねているが、窒化アル
ミニウムを主インヒビターとする一方向性電磁鋼板用の
素材にBiを添加含有せしめることにより現在市販され
ている高磁束密度一方向性電磁鋼板の磁束密度B8
1.93T程度をはるかに超える1.95T以上、2T
にもおよぶ超高磁束密度一方向性電磁鋼板を製造するこ
とに成功した。
【0015】本発明の成分組成の限定理由を説明する。
Cは0.03%未満では熱延に先立つスラブ再加熱時に
異常粒成長し、成品において線状細粒とよばれる2次再
結晶不良を起こすので好ましくない。一方0.15%超
では脱炭焼鈍工程での脱炭が不完全になりやすく、成品
での磁気時効を引き起こすので好ましくない。
【0016】Siは2.5%未満では成品の渦電流損が
増大し、また4.0%超では常温での冷延が困難になり
いずれも好ましくない。
【0017】Mn,Sは硫化マンガン形成により補助的
インヒビターとして作用させるためには上記範囲が必要
である。
【0018】酸可溶性Alは高磁束密度一方向性電磁鋼
板製造のための主要インヒビター構成元素であり、0.
010%未満では量的に不足しインヒビター強度が不足
する。一方0.065%超では析出窒化アルミニウムが
粗大化し、結果としてインヒビター強度を低下させるの
で好ましくない。
【0019】Nも酸可溶性Al同様に主インヒビター構
成元素であり、上記範囲を逸脱するとインヒビターの最
適状態を壊すので好ましくない。
【0020】更にSnについては薄手成品の2次再結晶
を安定化させる元素として有効であり、また2次再結晶
粒径を小さくする作用もあり、0.05%以上の添加が
必要であり、0.50%を超えてもその作用効果が飽和
するのでコストアップの点から0.50%以下に限定す
る。
【0021】CuはSn添加材の皮膜向上元素として有
効であり、0.01%未満では効果が薄く、0.10%
を超えると成品の磁束密度が低下するので好ましくな
い。
【0022】本発明の特徴であるAlNをインヒビター
として機能せしめる製造プロセスによって方向性電磁鋼
板を製造するときのBiの添加含有量は0.0020
0.01%の範囲が有効である。0.0020%未満で
は磁束密度の向上がわずかであり、また0.01%超で
は磁束密度向上の効果が飽和するとともに熱延板の端部
に割れが発生するので上限を0.01%に限定する。
【0023】一方向性電磁鋼板用素材にBiを添加含有
せしめることは特開昭50−72817号公報、特開昭
51−78733号公報、特開昭53−39922号公
報等に記載されているが、これらの特許は何れも必須の
インヒビターとしてS,Seを含有し、且つSb,As
等と同様の作用効果を持つ元素の一つとしての意味であ
り、Sbの代替元素としての位置づけにしか過ぎない。
【0024】更にこれらの特許は本質的にAlをインヒ
ビター元素として含有せず、本発明とはその性格を全く
異にするものと云える。更にBiを含有せしめることは
特開昭51−107499号公報、特開昭63−100
127号公報にも記載されている。
【0025】なるほどこれらの特許では必須のインヒビ
ターとしてAlを含有している点では本発明と同様では
あるが、何れもSb,As等の同一作用元素の位置づけ
で、従ってBi添加含有の実施例の記載もなく、本発明
のようなBiの特異な磁束密度向上作用を窺わせるもの
は全くなく、Bi添加の思想、性格を異にするものと云
える。
【0026】次に製造プロセス条件について説明する。
上記の如く成分を調整した超高磁束密度一方向性電磁鋼
板用素材は通常の如何なる溶解法、造塊法を用いた場合
でも本発明の素材とすることができる。次いでこの電磁
鋼板用素材は通常の熱間圧延により熱延コイルに圧延さ
れる。
【0027】引き続いて1ステージの冷間圧延または中
間焼鈍を含む複数ステージの冷間圧延によって最終板厚
とするが、高磁束密度一方向性電磁鋼板を得ることから
最終冷延の圧延率(1ステージの冷間圧延の場合はその
圧延率)は65〜95%の強圧下が好ましい。最終圧延
以外のステージの圧延率は特に規定しなくてもよい。最
終冷延前には950〜1200℃で30秒〜30分間の
焼鈍を行い、急冷によりAlNの析出制御を行う。最終
成品板厚に圧延した冷延板を続いて通常の方法で脱炭焼
鈍を行う。脱炭焼鈍の条件は特に規定しないが、好まし
くは700〜900℃の温度範囲で30秒〜30分間湿
潤な水素または水素、窒素の混合雰囲気で行うのがよ
い。
【0028】脱炭焼鈍後の鋼板表面には2次再結晶焼鈍
における焼き付き防止およびグラス被膜生成のため通常
の方法で通常の組成の焼鈍分離剤を塗布する。2次再結
晶焼鈍は1000℃以上の温度で5時間以上、水素また
は窒素またはそれらの混合雰囲気で行う。
【0029】引き続き余分の焼鈍分離剤を除去後、コイ
ル巻ぐせを矯正するための連続焼鈍を行い、同時に絶縁
被膜を塗布、焼き付けする。更に必要に応じてレーザー
照射等の磁区細分化処理を施す。磁区細分化の方法は特
に限定する必要はない。
【0030】
【実施例】
(実施例1)C:0.08%、Si:3.05%、M
n:0.08%、S:0.025%、酸可溶性Al:
0.028%、N:0.008%を含有する珪素鋼にB
iを0.0002〜0.05%添加含有せしめた。鋼塊
を1250℃で分塊圧延した後1320℃に再加熱し直
ちに熱延し、2.3mmの熱延板とした。
【0031】熱延板に1100℃の焼鈍を施し、0.3
0mmまで冷延した。引き続き850℃で脱炭焼鈍を行
い、MgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布後1200
℃の仕上げ焼鈍を行った。仕上げ焼鈍後の板に残留する
粉を除粉後60×300mmの磁気測定試料を剪断し、8
50℃で歪取り焼鈍を行って磁気測定に供した。Bi含
有量と製品磁束密度の関係を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】表1より明らかな如くBi添加により従来
法では到底得られないようなB8 が1.95T以上のす
ばらしい製品が得られた。
【0034】(実施例2)実施例1で得られた製品に5
mmピッチでレーザーを照射し、磁区細分化処理を行っ
た。その状態での磁気測定値を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】表2で明らかなようにBi含有材は磁束密
度が極めて高く、従って磁区細分化後の鉄損特性が0.
90W/kg以下の極めて優れた製品が得られ、最良値は
0.7W/kgにも達する。この値は0.30mm厚であるに
もかかわらず通常高磁束密度材の0.23mm製品の磁区
細分化後と同等以上のものである。
【0037】(実施例3)C:0.09%、Si:3.
3%、Mn:0.07%、S:0.025%、酸可溶性
Al:0.027%、N:0.009%、Sn:0.1
5%を含有する珪素鋼にBiを0.01%添加含有せし
めた。以後の工程は実施例1と同様に行った。結果を表
3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】表3に示したようにBi添加により磁束密
度B8 が1.95T以上の極めて優れた特性の製品が得
られた。
【0040】(実施例4)C:0.09%、Si:3.
2%、Mn:0.08%、S:0.026%、酸可溶性
Al:0.026%、N:0.008%、Sn:0.1
5%、Cu:0.07%を含有する珪素鋼にBiを0.
006%添加含有せしめた。冷延板厚を0.23mmとし
たほかは実施例1と同様に工程処理を行った。結果を表
4に示す。
【表4】
【0041】表4に示すようにBi含有材は極めて優れ
た磁束密度の製品が得られることが明らかである。
【0042】(実施例5)実施例4で得られた製品に5
mmピッチでレーザーを照射し、磁区細分化処理を行っ
た。その状態での磁気特性を表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】表5で明らかなようにBi含有材は磁束密
度が極めて高く、従って磁区細分化後の鉄損特性が0.
6W/kgにも達する優れたものが得られる。
【0045】
【発明の効果】本発明のBi含有超高磁束密度一方向性
電磁鋼板用素材を用いると、極めて磁束密度の高い製品
が得られるとともに磁区細分化処理後の鉄損特性も極め
て優れており、工業的に非常に価値の高い有益なものと
云える。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−59045(JP,A) 特開 昭60−59044(JP,A) 特開 平3−10020(JP,A) 特開 平2−125815(JP,A) 特開 昭61−79722(JP,A) 特開 昭61−136627(JP,A) 特開 昭61−204314(JP,A) 特開 平6−88173(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 303 C22C 38/06 H01F 1/16 C21D 8/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量で、 C :0.03〜0.15%、 Si:2.5〜4.0%、 Mn:0.02〜0.30%、 S :0.005〜0.040%、 酸可溶性Al:0.010〜0.065%、 N :0.0030〜0.0150% を含有し更に、 Bi:0.00200.01%、 残部:Feおよび不可避的不純物からなる超高磁束密度
    一方向性電磁鋼板用素材。
  2. 【請求項2】 重量で、 C :0.03〜0.15%、 Si:2.5〜4.0%、 Mn:0.02〜0.30%、 S :0.005〜0.040%、 酸可溶性Al:0.010〜0.065%、 N :0.0030〜0.0150%、 Sn:0.05〜0.50% を含有し更に、 Bi:0.00200.01%、 残部:Feおよび不可避的不純物からなる超高磁束密度
    一方向性電磁鋼板用素材。
  3. 【請求項3】 重量で、 C :0.03〜0.15%、 Si:2.5〜4.0%、 Mn:0.02〜0.30%、 S :0.005〜0.040%、 酸可溶性Al:0.010〜0.065%、 N :0.0030〜0.0150%、 Sn:0.05〜0.50%、 Cu:0.01〜0.10% を含有し更に、 Bi:0.00200.01%、 残部:Feおよび不可避的不純物からなる超高磁束密度
    一方向性電磁鋼板用素材。
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