JP3213937B2 - 重防食被覆鋼矢板の製造方法 - Google Patents

重防食被覆鋼矢板の製造方法

Info

Publication number
JP3213937B2
JP3213937B2 JP35149197A JP35149197A JP3213937B2 JP 3213937 B2 JP3213937 B2 JP 3213937B2 JP 35149197 A JP35149197 A JP 35149197A JP 35149197 A JP35149197 A JP 35149197A JP 3213937 B2 JP3213937 B2 JP 3213937B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
sheet pile
polyolefin layer
layer
anticorrosion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP35149197A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11179845A (ja
Inventor
志郎 宮田
嘉宏 岡野
尚男 北川
敏雄 篠原
義郎 斉藤
貢 房前
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
JFE Engineering Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Engineering Corp filed Critical JFE Engineering Corp
Priority to JP35149197A priority Critical patent/JP3213937B2/ja
Publication of JPH11179845A publication Critical patent/JPH11179845A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3213937B2 publication Critical patent/JP3213937B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィンシ
ートの貼着により鋼矢板表面に重防食被覆を形成した重
防食被覆鋼矢板に関するものであり、更に詳しくは、シ
ートと鋼材との間の長期密着性に優れる重防食被覆鋼矢
板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】海洋、港湾、河川等の岸壁を形成する鋼
矢板は、激しい腐食環境に晒されるため、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂よりなるシ
ートを接着層を介して鋼矢板表面に貼着することにより
防食被覆を行った、いわゆる重防食被覆鋼矢板が使用さ
れることが多くなってきた。
【0003】この重防食被覆鋼矢板は、特開昭59−2
24717号公報あるいは特開昭60−8058号公報
等に開示されているように、素地調整した鋼矢板に、化
成処理層、プライマー層等からなる下地処理層を形成
し、その後変性ポリオレフィン等の接着剤層を介して、
防食ポリオレフィン層を形成したもので、製法として
は、シート状に成形された防食ポリオレフィン層を、予
熱した鋼矢板に対し貼着して製造するという方法が知ら
れている。変性ポリオレフィン層と防食ポリオレフィン
層が一体となったシートを被覆する場合もある。また防
食ポリオレフィン層としてポリエチレンを用いる場合に
は、一般的に架橋ポリエチレンが用いられる(特開昭5
9−224717号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、シート貼着
により製造したポリオレフィン被覆鋼矢板は、打設後海
洋環境に長期間晒された場合、特に海中部において、シ
ートと鋼材の間の密着力が低下することがあり、最悪の
場合は被覆の浮きやめくれ等が発生するという可能性が
ある。
【0005】近年は港湾施設等の設計耐用年数も長期化
し、その間の維持管理費用を低減させることが望まれて
いる現状を考慮すると、重防食被覆鋼矢板の被覆の長期
密着性を一層向上させることは、極めて大きな経済効果
を生みだす、非常に意義のある課題となってくる。
【0006】重防食被覆鋼矢板の海水中における密着力
低下の原因は、高温の鋼矢板に鋼材よりも線膨張係数の
大きなポリオレフィンシートを貼着するという製法上、
ポリオレフィンシートにはかなりの収縮応力が存在し、
これら収縮応力は経時的に緩和するものの、一部は残留
応力として存在し、曲面部分や端部でシートを剥離する
方向に働くということが考えられる。そのほか、長期間
海水にさらされるため、被覆の防食ポリオレフィン層を
透過してくる水分や酸素による接着層や下地処理層の劣
化を来たし、被覆層と鋼材との密着力が低下すると言う
ことも考えられる。
【0007】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、鋼矢板表面にポリオレフィンシー
トを貼着してなる重防食被覆鋼矢板に関し、被覆層の海
水中での長期密着性に優れた重防食被覆鋼矢板を提供す
ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記密着力低下の原因
は、ポリオレフィン被覆鋼矢板の場合、曲面部分がある
鋼矢板の片面にシートを貼着するという特性上、シート
の端部からの環境物質の侵入や、電気防食との併用時の
陰極剥離を招きやすく、またシートの残留応力が特に曲
面部分や端部の密着力低下を促進する方向に働くためで
あると考えられる。
【0009】本発明者は、この密着性低下及び端部剥離
の問題を解決するために、鋭意検討を行った結果、ポリ
オレフィンシートを熱接着後の冷却過程において、貼着
された該ポリオレフィンシート側表面の冷却速度をこれ
と反対側の鋼矢板表面の冷却速度より大きくすることに
より、被覆層の海水中での長期密着性に著しく優れた重
防食被覆鋼矢板が得られることを見いだし、本発明を完
成させるに至った。
【0010】即ち本発明は、下地処理が施された鋼矢板
を加熱して、変性ポリオレフィン層を介して防食ポリオ
レフィン層を被覆する方法において、該防食ポリオレフ
ィン層表面の冷却速度を鋼矢板の反対側の表面の冷却速
度よりも大きくし、かつ該冷却を鋼矢板のウェブ、コー
ナー、フランジ、グリップの順で行い、該防食ポリオレ
フィン層の樹脂が密度0.940g/cm以上の非架
橋ポリエチレンとし、又は該変性ポリオレフィン層の樹
脂がビカット軟化点50℃以上90℃以下の変性ポリエ
チレンとすることを特徴とする重防食被覆鋼矢板の製造
方法に関するものである。
【0011】シート貼着後の冷却過程で、本発明の冷却
方法を採ることにより、シートの長期密着性が向上する
と言うことは全く予期せぬ効果であるが、考えられる一
つの原因として残留応力の低減効果が挙げられる。即
ち、加熱鋼矢板にポリオレフィンシートを融着する際
に、ポリオレフィンシートは融着可能温度まで加熱さ
れ、熱膨張した状態で鋼材と接着する。融着後の冷却過
程では、変性ポリオレフィン層が軟化点に達するまでの
間は、シートの収縮により、鋼材とシートの間にズレが
生じ、変性ポリオレフィン層が固化し、接着力が発生し
出した後の冷却過程では鋼材とポリオレフィンシートの
線膨張率の差に起因する熱応力が残存する。
【0012】本発明にように、ポリオレフィンシート貼
着側の冷却速度が速くなるように冷却した場合、変性ポ
リオレフィン層が固化して接着力が発生し出す段階で
は、既に防食ポリオレフィン層は十分に冷えているた
め、使用温度との温度差に起因する熱応力の発生が少な
くなる。
【0013】従って、本発明のようにポリオレフィンシ
ート側の冷却速度が速くなるように冷却することによ
り、シートの残留応力が小さくなる。
【0014】シートの残留応力が大きいと、特に海水中
で長期に使用されている間、陰極剥離や環境物質の侵入
による端部の密着性低下を著しく促進し、また、鋼矢板
の特に曲面部分での剥離を拡大をする要因になる。従っ
て、残留応力を低下させることで、これらの剥離要因の
大幅な低減につながった結果、本発明の製造方法で製造
した重防食鋼矢板が長期密着性に優れているものと思わ
れる。
【0015】海水中での長期の浸漬の間には防食ポリエ
チレン層を透過してくる水分や酸素によって接着層や下
地処理層が劣化して防食層と鋼材との間の密着力が低下
しやすくなる。防食層に高密度ポリエチレンを用いるこ
とによって水分や酸素の透過量を大巾に減少させること
ができるが、高密度ポリエチレンは弾性率が高く、残留
応力が大きくなる。この残留応力を防食層側から冷却す
ることによって減少させ長期にわたって防食層の密着性
に優れた鋼矢板を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。本発明の重防食被覆鋼矢板は図1に示すよ
うに、鋼矢板1、プライマー層2、変性ポリオレフィン
層3、防食ポリオレフィン層4より構成される。
【0017】本発明に用いる鋼矢板とは、港湾、河川、
埋め立て地等の護岸等に用いられるもので、JIS A
5528に規定されるU型、Z型、I型、およびこれら
に準じる形状のものを用いることが出来る。その寸法に
ついては特に制約はない。本発明において、重防食被覆
は防食を施す必要のある部分に対して行われる。例えば
港湾の護岸用として用いられる場合には、主として海に
面する側に被覆が施されることが多い。重防食被覆を鋼
矢板の両面に施しうることはいうまでもなく、その場合
冷却速度をより大きくする側は新たに設けられて熱せら
れた状態にある防食ポリオレフィン層側である。
【0018】本発明に用いる鋼矢板は、あらかじめ脱
脂、酸洗、ショットブラスト処理、グリットブラスト処
理、サンドブラスト処理等の公知の素地調整を施すこと
により、鋼材表面の油分、スケール等を除去しておくこ
とが望ましい。素地調整のレベルは、例えばスウェーデ
ン規格(SIS)でいえばSa2 1/2程度以上とする
ことが好ましい。この素地調整が不十分であると、重防
食被覆の長期防食性が著しく損なわれる。更に、公知の
クロメート処理等の化成処理を施すことが長期密着性、
防食性の観点から好ましい。
【0019】また、本発明で用いるプライマー層は、エ
ポキシ樹脂系あるいはウレタン樹脂系の有機樹脂系プラ
イマーであって、素地調整を施した鋼矢板表面と変性ポ
リオレフィン層との密着性に優れたものが用いられる。
プライマー層は、エアスプレー、エアレススプレー、刷
毛塗り等の公知の塗装方法で形成され、必要に応じて塗
装後加熱して完全な硬化被膜とすることも行われる。プ
ライマー層の膜厚は10〜200μm程度、特に20〜
100μm程度が好ましい。10μmより薄いと、ポリ
オレフィンシートの鋼材との密着力が小さくなるため、
ポリオレフィンシートが剥離するなどの問題があり、ま
た200μmを越える膜厚であると、プライマー層自体
の残留応力が大きくなり、シートの長期密着性に悪影響
を及ぼす。
【0020】本発明で用いる変性ポリオレフィンは、ポ
リエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂
を、マレイン酸、アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽
和カルボン酸またはその無水物をグラフト反応等で変性
したもので、ポリオレフィン単体に比較して、他の物質
との接着性が著しく改善された樹脂のことを指す。変性
ポリオレフィンはグラフトする官能基の種類や量により
様々な熱的性質のものが知られているが、本発明で用い
られる変性ポリオレフィンのビカット軟化点は、50℃
以上120℃以下であることが好ましい。50℃未満の
軟化点であると、重防食鋼矢板の気中部において、日照
等による温度上昇によりシートの密着性低下を来すので
好ましくなく、また120℃を越えると、鋼矢板の必要
加熱温度が高くなることによるエネルギーコスト増大、
貼付温度上昇に伴う熱応力増大による長期密着性低下を
来すので好ましくない。さらに、90℃を越えるとシー
トの残留応力の増大が問題になりやすい。従って、より
好ましいビカット軟化点は50〜90℃であり、さらに
好ましくは55〜80℃、特に好ましくは55〜70℃
である。
【0021】変性ホリオレフィンのその他の物性では、
メルトインデックスが0.2〜10g/10分程度、好
ましくは0.5〜5g/10分程度、密度0.85〜0.
98g/cm3程度、融点60〜135℃程度、好まし
くは60〜100℃程度のものが適当である。この変性
ポリオレフィン層は防食ポリオレフィン層の接着層とし
て機能するものであり、層厚さは0.1〜1.5mm程
度、好ましくは0.2〜1mm程度が適当である。
【0022】また、本発明で用いられる防食ポリオレフ
ィン層のポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、
中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密
度ポリエチレン、ポリプロピレン等の公知のポリオレフ
ィン、およびエチレン−プロピレンランダムまたはブロ
ック共重合体等の公知のポリオレフィン共重合体であ
る。
【0023】特に好ましいものは、密度が0.940g
/cm3以上のいわゆる高密度ポリエチレンである。耐
環境応力亀裂性や耐衝撃性、靱性を向上する目的でプロ
ピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等のポリオレフィン
系成分を共重合成分としたエチレン共重合体を用いるこ
ともできる。密度の上限は問わないが市販品は通常0.
970g/cm3程度が上限である。特に好ましい密度
は0.940〜0.960g/cm3程度である。メルト
インデックスは0.3g/10分以下のものがよく、好
ましくは0.1〜0.3g/10分程度である。0.3g
/10分を越えると環境応力、亀裂性が低下するので好
ましくない。また、ビカット軟化点は100〜130℃
程度、特に110〜125℃程度のものが好ましい。変
性ポリエチレン層との好ましい軟化点差は10〜70℃
程度である。
【0024】また、ポリエチレンには電子線架橋、シラ
ン架橋、化学架橋等いくつかの架橋方法が知られてお
り、重防食鋼矢板にもこれら架橋ポリエチレンが一般に
用いられるが、本発明においては、これら架橋ポリエチ
レンは使用せず、非架橋のポリエチレンを使用すること
が好ましい。これは、冷却後の応力緩和効果を阻害しな
いためであり、一方、高密度ポリエチレンは十分な機械
的強度を有することから、架橋構造を取る必要がない。
【0025】防食ポリオレフィン層には耐候性等の長期
特性を改善するため、カーボンブラックや着色顔料、酸
化防止剤等の各種添加物を加えることが好ましい。防食
ポリオレフィン層の厚さは1〜6mm程度、特に1〜4
mm程度の範囲であることが、長期密着性、長期防食
性、被覆層の機械的強度の保持の観点から好ましい。ち
なみに重防食鋼矢板の防食ポリオレフィンの規格は2.
0mm以上と定められており、一般的には防食ポリオレ
フィン層の厚さは2.0mm以上であることが多い。
【0026】次に、本発明に基づく重防食被覆鋼矢板の
製造方法説明する。ブラストによりスケールを完全に除
去し、クロメート処理等の化成処理を行う。更にプライ
マー用塗料を、スプレー塗装法その他の方法により塗装
し、放置あるいは加熱する等により硬化させ、プライマ
ー層を形成する。
【0027】このブラスト、化成処理、およびプライマ
ー塗装等の下地処理を行った鋼矢板を加熱炉等の加熱装
置で加熱する。加熱温度はポリオレフィンシートの融着
に必要な温度である必要があり、従って、変性ポリオレ
フィン層の融点以上、好ましくは融点より10〜100
℃程度高い温度であり、通常80〜200℃程度の温度
範囲である。
【0028】加熱した鋼矢板に、変性ポリオレフィン層
を介して、防食ポリオレフィン層を被覆する。この被覆
方法としては、予め変性ポリオレフィン層と防食ポリオ
レフィン層を一体化して成形したポリオレフィンシート
を作成し、この一体化したシートを変性ポリオレフィン
層側が鋼矢板に接するよう、鋼矢板上に供給することが
好ましい。しかしながら、必ずしも一体化してある必要
はなく、事前に変性ポリオレフィン層のみを下地処理を
した鋼矢板上に形成し、その上に防食ポリオレフィン層
のみからなるシートを貼着してもよい。その場合、変性
ポリオレフィン層は溶融押出しコーティング、粉体塗
装、シート貼着等で形成すればよい。また、ポリオレフ
ィンシートを熱接着させるため、変性ポリオレフィン層
は少なくとも溶融状態となっている必要がある。
【0029】また、鋼矢板上に供給されたシートは、ロ
ール等の加圧装置にてシートを鋼矢板に押し付けること
により貼着される。その際、鋼矢板の中央部から曲面部
分、ついで周辺部へと順次加圧することが、シートに気
泡等の混入を防ぎ、効率的にシートを貼着する上で好ま
しい。
【0030】接着終了後の冷却過程で防食ポリオレフィ
ン層表面の冷却速度を鋼矢板の反対側の表面の冷却速度
よりも大きくなるように冷却する。この防食ポリオレフ
ィンシート側の冷却速度を速くするような冷却方法は、
少なくとも鋼矢板の反対側表面温度(℃)が変性ポリオ
レフィン層のビカット軟化点(℃)より低くなるまで継続
することが好ましい。鋼矢板の反対側表面温度が変性ポ
リオレフィン層のビカット軟化点より低くなる前に本発
明の冷却方法を止めると、重防食被覆鋼矢板の長期密着
性の改善効果が少なくなる。一方、ビカット軟化点に達
した後に冷却を継続しても特に問題はないが、長期密着
性の改善効果はあまり変わらなくなる。この反対側表面
温度は厳密には鋼材表面温度である。ただ、冷却手段を
停止しても冷却が直ちに停止するわけではないのでビカ
ット軟化点より0〜10℃程度高いところで冷却を停止
してもある程度の効果が得られる。一方、ビカット軟化
点より0〜20℃程度低くなるまで冷却を継続すること
はより好ましい。表面温度の測定は市販の表面温度測定
器等を利用して行なえばよい。
【0031】冷却手段としては、ポリオレフィンシート
を流水あるいは静止水により冷やす、ポリオレフィンシ
ート上に風を当てることにより冷やす、ポリオレフィン
シート上に、水や揮発性溶剤を含浸したウエスやスポン
ジ等の物体を接触させることにより冷やす、等の方法を
単独で実施する、あるいは複数を組み合わせて実施する
ことが有効であるが、それ以外の方法で冷却しても特に
問題はない。水で冷やす場合にはスプレー等も利用でき
る。
【0032】ポリオレフィンシート側を冷やす際、水や
溶剤等の液体を利用する場合は、シートの加圧部分に液
体がかからない様、液体を流す向きをシート加圧部分と
は反対側にする、あるいは、液体がシート加圧部分に流
れていかない様、鋼矢板の長手方向に傾斜を付ける、等
の方法を採ることが好ましい。冷却はポリオレフィンシ
ートの略全面(搬送しながら行なうときは全巾)に対し
略均一になるように行なうが、鋼矢板の中央部から側縁
部に、すなわち、ウェブ部、コーナー部、フランジ部、
グリップ部の順に順次冷却していくことが好ましい。こ
れによってシートの収縮を中心側に寄らせることができ
残留応力をさらに少なくできる。
【0033】本発明の方法は重防食被覆が片面に設けら
れる場合はもとより、両面であっても片面ずつ貼着する
場合にも適用できることはいうまでもない。
【0034】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0035】U型鋼矢板(有効幅500mm、高さ22
5mm、厚さ24.3mm、長さ6m)の凹面の表面を
SIS Sa2 1/2となるまでサンドブラスト処理
し、使用時に海に接する側の表面にクロメート処理剤を
塗布、焼き付けし、全クロム付着量が500mg/m
のクロメート被膜を形成した。非塗装部分を養生した上
で、表面にエポキシ系プライマーを膜厚40μmとなる
ようにスプレー塗装し、加熱して硬化させた。
【0036】その後、鋼矢板を加熱炉で140℃に加熱
し、高温状態の鋼矢板に、厚さ0.5mmの無水マレイ
ン酸変性ポリエチレン層と防食層として、厚さ2.0m
mの非架橋ポリエチレン層を一体化して成形したシート
を載せ、加圧して融着させた。用いた変性ポリエチレン
層と防食ポリエチレン層の特性は表1に示した。
【0037】シート貼付後、下記の各種の冷却方法で鋼
矢板を冷却した。 ポリエチレン側から水を幅方向ほぼ均一に散布して
冷却(図2) の冷却を、鋼矢板の反対側表面温度が使用した変
性ポリエチレン層のビカット軟化点より低くなるまで実
施、その後ポリエチレン側からと鋼材側からの両方から
水を散布して冷却(図3) ポリエチレン側から水を散布して冷却するに際し、
まず鋼矢板の中央部(ウェブ部)を冷却、その後コーナ
ー部、側面部(フランジ部)、継ぎ手部(グリップ部)
へと順次冷却(図4) の冷却を、鋼矢板の反対側表面温度が使用した変
性ポリエチレン層のビカット軟化点より低くなるまで実
施、その後ポリエチレン側からと鋼材側からの両方から
水を散布して冷却(図5) 鋼矢板側からのみ水を散布して冷却(図6) ポリエチレン側および鋼矢板側を同時に冷却(図
7)
【0038】その後、シートの側端部全体を帯状シーリ
ング材でシールして本発明の重防食被覆鋼矢板を製造し
た。
【0039】この鋼矢板に対し、下記の評価を行った。 (1) 被覆の残留応力調査 冷却後、被覆に変形を与えないようにしながら、被覆の
一部を鋼矢板から剥離させ、剥離前後の寸法差と被覆に
用いたポリエチレンのヤング率から被覆の残留応力を算
出した。
【0040】(2) 温塩水浸漬試験 得られた鋼矢板を適当なサイズに切断し、50℃,3%
の塩水に長期間浸漬し、浸漬後の被覆の接着力を90°
ピール強度法(JIS G 3469)で評価した。また
端部シール部分の被覆端部を強制的に剥離させ、剥離部
分の錆や鉄地の露出等の劣化状況を調査した。
【0041】(3) 塩水噴霧試験 得られた鋼矢板を適当なサイズに切断し、JIS K 5
400に定められた塩水噴霧試験を実施し、端部からの
錆の進行状況を調査した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】この結果より、本発明の冷却方法を取るこ
とにより、被覆の残留応力が著しく低減され、かつ特に
塩水噴霧試験による加速試験の結果より、残留応力が低
減された場合の端部からの劣化進行が極めて小さくなる
ことが分かる。
【0045】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の方法により
製造した重防食被覆鋼矢板は、被覆の残留応力が著しく
低減され、端部からの接着力の劣化、剥離が極めて起こ
りにくい。そのため、重防食被覆鋼矢板の被覆の剥離に
伴う補修費用等の損失を防ぐことが出来、著しい経済的
な効果が見られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の重防食被覆鋼矢板の断面図である。
【図2】 本発明の実施例1、5、6、7の冷却方法の
模式図である。
【図3】 本発明の実施例2の冷却方法の模式図であ
る。
【図4】 本発明の実施例3の冷却方法の模式図であ
る。
【図5】 本発明の実施例4の冷却方法の模式図であ
る。
【図6】 本発明の比較例の冷却方法の模式図である。
【図7】 本発明の比較例の冷却方法の模式図である。
【符号の説明】
1 鋼矢板 2 プライマー層 3 変性ポリオレフィン層 4 防食ポリオレフィン層 5 鋼矢板 6 ポリオレフィンシート 7 シート押さえつけ部位 8 ホース 9 流水 10 大型扇風機 11 風 12 水を含浸したスポンジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 篠原 敏雄 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 斉藤 義郎 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 房前 貢 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−101451(JP,A) 特開 昭58−74336(JP,A) 特開 平6−8368(JP,A) 特公 平7−90584(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下地処理が施された鋼矢板を加熱して、
    変性ポリオレフィン層を介して防食ポリオレフィン層を
    被覆する方法において、該防食ポリオレフィン層表面の
    冷却速度を鋼矢板の反対側の表面の冷却速度よりも大き
    くし、かつ該冷却を鋼矢板のウェブ、コーナー、フラン
    ジ、グリップの順で行うことを特徴とする重防食被覆鋼
    矢板の製造方法。
  2. 【請求項2】 下地処理が施された鋼矢板を加熱して、
    変性ポリオレフィン層を介して防食ポリオレフィン層を
    被覆する方法において、該防食ポリオレフィン層表面の
    冷却速度を鋼矢板の反対側の表面の冷却速度よりも大き
    くし、かつ該防食ポリオレフィン層の樹脂が密度0.9
    40g/cm以上の非架橋ポリエチレンであることを
    特徴とする重防食被覆鋼矢板の製造方法。
  3. 【請求項3】 下地処理が施された鋼矢板を加熱して、
    変性ポリオレフィン層を介して防食ポリオレフィン層を
    被覆する方法において、該防食ポリオレフィン層表面の
    冷却速度を鋼矢板の反対側の表面の冷却速度よりも大き
    くし、かつ該変性ポリオレフィン層の樹脂がビカット軟
    化点50℃以上90℃以下の変性ポリエチレンであるこ
    とを特徴とする重防食被覆鋼矢板の製造方法。
JP35149197A 1997-12-19 1997-12-19 重防食被覆鋼矢板の製造方法 Expired - Fee Related JP3213937B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35149197A JP3213937B2 (ja) 1997-12-19 1997-12-19 重防食被覆鋼矢板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35149197A JP3213937B2 (ja) 1997-12-19 1997-12-19 重防食被覆鋼矢板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11179845A JPH11179845A (ja) 1999-07-06
JP3213937B2 true JP3213937B2 (ja) 2001-10-02

Family

ID=18417664

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP35149197A Expired - Fee Related JP3213937B2 (ja) 1997-12-19 1997-12-19 重防食被覆鋼矢板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3213937B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11179845A (ja) 1999-07-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4295216B2 (ja) 樹脂ライニング鋼管およびその製造方法
JP3213937B2 (ja) 重防食被覆鋼矢板の製造方法
JP3213934B2 (ja) 重防食被覆鋼矢板の製造方法
JP3166909B2 (ja) 重防食被覆鋼矢板
JP3385607B2 (ja) 重防食被覆鋼矢板
JP3166901B2 (ja) 重防食被覆鋼矢板
JP3346308B2 (ja) 重防食被覆鋼矢板の製造方法
JP3213936B2 (ja) 重防食被覆鋼矢板及びその製造方法
JP3111908B2 (ja) ポリエチレン樹脂被覆鋼材
JP2000192267A (ja) 重防食被覆鋼矢板
JPS6372377A (ja) ポリオレフイン樹脂粉体融着被覆鋼材の製造方法
JP3787047B2 (ja) 鋼材用防食塗料組成物
JPH0239975B2 (ja)
JPH11280058A (ja) 重防食被覆鋼矢板・鋼管矢板の連結部カバー及び連結部補修方法
JPS608058A (ja) ポリオレフイン被覆鋼矢板
JP3163908B2 (ja) ポリオレフィン樹脂被覆鋼材
JP2003294174A (ja) 樹脂ライニング鋼管およびその製造方法
JP6705309B2 (ja) 接着耐久性に優れたポリオレフィン被覆鋼材の製造方法
JPH11245334A (ja) 重防食被覆鋼矢板の製造方法
JP6618844B2 (ja) 水路用鋼材およびその製造方法ならびに鋼製水路
JP3356053B2 (ja) 重防食被覆抑え具及び重防食被覆鋼材
JP3322010B2 (ja) 樹脂被覆用クロメート処理剤およびそれを用いたポリオレフィン樹脂被覆鋼材の製造方法
JPH1177898A (ja) 重防食被覆鋼矢板の製造方法および製造装置
JPH11280098A (ja) 重防食被覆鋼材の現地補修方法
Roy et al. Adhesion of maleic-anhydride-grafted polyethylene with steel for improved cathodic disbondment performance

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees