JP3166909B2 - 重防食被覆鋼矢板 - Google Patents

重防食被覆鋼矢板

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JP3166909B2 JP31748497A JP31748497A JP3166909B2 JP 3166909 B2 JP3166909 B2 JP 3166909B2 JP 31748497 A JP31748497 A JP 31748497A JP 31748497 A JP31748497 A JP 31748497A JP 3166909 B2 JP3166909 B2 JP 3166909B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエチレンシー
トの貼着により鋼矢板表面に重防食被覆を形成した重防
食被覆鋼矢板に関するものであり、更に詳しくは、シー
トと鋼材との間の長期密着性に優れる重防食被覆鋼矢板
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】海洋、港湾、河川等の岸壁を形成する鋼
矢板は、激しい腐食環境に晒されるため、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂よりなるシ
ートを接着層を介して鋼矢板表面に貼着することにより
防食被覆を行った、いわゆる重防食被覆鋼矢板が使用さ
れることが多くなってきた。
【0003】この重防食被覆鋼矢板は、特開昭59−2
24717号公報あるいは特開昭60−8058号公報
等に開示されているように、素地調整した鋼矢板に、化
成処理層、プライマー層等からなる下地処理層を形成
し、その後変性ポリオレフィン等の接着剤層を介して、
防食ポリオレフィン層を形成したもので、製法として
は、シート状に成形された防食ポリオレフィン層を、予
熱した鋼矢板に対し貼付して製造するという方法が知ら
れている。変性ポリオレフィン層と防食ポリオレフィン
層が一体となったシートを被覆する場合もある。また防
食ポリオレフィン層としてポリエチレンを用いる場合に
は、一般的に架橋ポリエチレンが用いられる(特開昭5
9−224717号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、シート貼着
により製造したポリエチレン被覆鋼矢板は、打設後海洋
環境に長期間晒された場合、特に海中部において、シー
トと鋼材との間の密着力が低下することがあり、最悪の
場合は被覆の浮きやめくれ等が発生するという可能性が
ある。
【0005】近年は港湾施設等の設計耐用年数も長期化
し、その間の維持管理費用を低減させることが望まれて
いる現状を考慮すると、重防食被覆鋼矢板の被覆の長期
密着性を一層向上させることは、極めて大きな経済効果
を生みだす、非常に意義のある課題となってくる。
【0006】重防食被覆鋼矢板の海水中における密着力
低下の原因は、長期間海水にさらされるため、被覆の防
食ポリエチレン層を透過してくる水分や酸素による接着
層や下地処理層の劣化を来たし、被覆層と鋼材との密着
力が低下すると言うことがまず考えられる。更に、曲面
部分がある鋼矢板の片面にシートを貼着するという特性
上、シートの端部からの環境物質の侵入等による接着層
や下地処理層の劣化等を招きやすいということもあげら
れる。更に、高温の鋼矢板に鋼材よりも線膨張係数の大
きなポリエチレンシートを貼着するという製法上、ポリ
エチレンシートにはかなりの収縮応力が存在し、これら
収縮応力は経時的に緩和するものの、一部は残留応力と
して存在し、曲面部分や端部でシートを剥離する方向に
働くということも考えられる。
【0007】被覆を浸透してくる水分等による劣化を防
ぐため、例えば特開昭61−72127号公報では、ポ
リエチレンの密度と膜厚との関係を所定の関係式の範囲
とすることで、ポリエチレン被覆の透湿度を小さくする
技術が開示されており、ポリエチレンの密度が高いほ
ど、透湿度が小さいとされているが、一般に高密度のポ
リエチレンは高剛性で、貼着後の残留応力が極めて大き
くなり、被覆の密着性に悪影響を及ぼすという問題があ
る。
【0008】また、端部からの水分浸透による劣化対策
として、例えば特開昭60−233232号公報では、
被覆端部に帯状シーリング層を設けているが、帯状シー
リング層を設けても、海水中で劣化・脱落しやすく、十
分なシール効果を達成するのが困難であった。
【0009】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、鋼矢板表面にポリエチレンシート
を貼着してなる重防食被覆鋼矢板であって、被覆層の海
水中での長期密着性に優れた重防食被覆鋼矢板を提供す
ることを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の密着
力低下の原因を取り除き、ポリエチレンシートの海水中
での長期密着性に優れた重防食被覆鋼矢板の開発のた
め、鋭意検討を行った。その結果、下地処理を施した加
熱鋼矢板に変性ポリエチレン層を介して防食ポリエチレ
ンシートを被覆してなる重防食被覆鋼矢板において、特
定の密度の防食ポリエチレン層と特定のビカット軟化点
を有する変性ポリエチレン層を組み合わせることで、被
覆層の海水中での密着性に著しく優れた重防食被覆鋼矢
板が得られることを見出し、遂に本発明を完成させるに
至った。
【0011】即ち本発明は、下地処理を施した鋼矢板の
少なくとも片面に変性ポリオレフィン層を介して防食ポ
リオレフィン層が被覆されている重防食被覆鋼矢板にお
いて、該防食ポリオレフィン層が密度0.940g/c
3以上の非架橋ポリエチレンよりなり、かつ該変性ポ
リオレフィン層がビカット軟化点が50℃以上90℃以
下の変性ポリエチレンよりなることを特徴とする重防食
被覆鋼矢板に関するものである。
【0012】上記の重防食被覆鋼矢板では防食ポリエチ
レン層として、密度が0.940g/cm3以上のポリ
エチレンを用いている。密度が0.940g/cm3
上のポリエチレンは、一般に高密度ポリエチレンと言わ
れ、ポリエチレンの中でも非常に密度が高いタイプであ
る。これらはチーグラー系触媒等の高性能触媒を使用し
て中、低圧重合法により製造され、ポリエチレン分子の
分岐度が極めて小さく、枝分かれの少ない構造を有す
る。この分子構造の特徴により、機械的強度や耐衝撃性
に優れることはもとより、密度が高いことによる水分や
酸素の透過性が非常に小さいという特性を有する。元来
ポリエチレンは耐水分透過性に優れる樹脂であるが、そ
のポリエチレンの中での例えば水分透過性の尺度となる
水蒸気透過量で見た場合、高密度ポリエチレンは低密度
ポリエチレンと比較して1/3〜1/5の透過量にすぎ
ない。このため、高密度ポリエチレンを防食ポリエチレ
ン層とした場合、水分の被覆への浸透速度は低密度ポリ
エチレンに比べて極めて小さくなる。重防食鋼矢板の場
合、通常防食ポリエチレン層の厚みは2.0mm以上で
あるが、この程度の厚みであれば、水分が浸透して鋼面
に到達するのは極めて遅く、また仮に到達したとしても
その量は微少のため、接着層や下地処理層の劣化を起こ
すまでには至らない。
【0013】本発明者らの検討によれば、密度0.94
0g/cm3以上の高密度ポリエチレンを被覆層とする
限り、塩水に浸漬しても被覆層を拡散した水分による接
着層の劣化は観察されず、長期間浸漬しても接着力は初
期値と変化無い。
【0014】また、本発明者らのグループは、すでに十
数年前からポリエチレン被覆重防食鋼材の研究を行って
おり、海洋環境で十年以上暴露した試験材の評価も行っ
ているが、被覆層に密度0.940g/cm3以上の高密
度ポリエチレンを使用した系は、接着力は初期値と全く
変化無く、被覆を浸透した水分による劣化は全く見られ
ていない。
【0015】このことより、防食ポリエチレン層に密度
0.940g/cm3以上の高密度ポリエチレンを使用す
ることで、被覆を透過する水分による接着層や下地処理
層の劣化を抑えることが出来る。
【0016】次に、本発明で変性ポリエチレン層として
ビカット軟化点が50℃以上90℃以下のものを使用し
防食層のポリエチレンに非架橋ポリエチレンを用いた意
義を説明する。
【0017】密度0.940g/cm3以上の高密度ポリ
エチレンは機械的強度が高い反面、弾性率が高いため、
貼着後の冷却課程で鋼材との線膨張率との差に起因する
収縮応力が極めて大きく、その一部は残留応力として長
期間存在するという欠点がある。その結果、高密度ポリ
エチレン被覆は被覆を浸透してくる水分等による悪影響
は効果的に抑えられても、残留応力による端部からの環
境物質の浸透促進効果や、環境応力亀裂の問題等がある
ため、貼着時の残留応力を低減させる対策をとる必要が
ある。
【0018】本発明者らは、ポリエチレン被覆鋼矢板の
貼着時の残留応力が、下記の機構により発生することを
見出した。即ち、防食ポリエチレン層と変性ポリエチレ
ン層を一体化したシートを変性ポリエチレン層側が鋼矢
板に接するように、加熱した鋼矢板に融着させる過程に
おいては、変性ポリエチレン層は溶融し、防食ポリエチ
レン層も融着時の熱により温度上昇し、膨張した状態と
なる。一般に変性ポリエチレン層よりも防食ポリエチレ
ン層の方が軟化点が高く、防食ポリエチレン層は溶融す
ることはない。融着後の冷却課程では、変性ポリエチレ
ン層が軟化点に達するまでの間は、変性ポリエチレン層
は溶融しているため、上層の防食ポリエチレン層の収縮
は自由に行われ、防食ポリエチレン層と鋼材の間にズレ
が生じる。変性ポリエチレン層が固化した後は防食ポリ
エチレン層の収縮は固定され、その後は鋼材とポリエチ
レンシートの線膨張率の差と防食ポリエチレン層のヤン
グ率に起因する残留応力が発生する。残留応力はポリエ
チレン分子間のズレにより一部は応力緩和するが、応力
緩和速度は時間と共に急速に低下し、残留応力の一部は
数年〜数十年に渡って残存することとなる。
【0019】本発明者らが見出した残留応力発生機構に
よれば、残留応力は変性ポリエチレン層の軟化点と、冷
却課程で変性ポリエチレン層が固化した時点での防食ポ
リエチレン層の温度、および発生した残留応力の緩和機
構で決まることは明らかである。即ち、変性ポリエチレ
ン層のビカット軟化点と実使用環境での温度差が小さい
ほど発生する残留応力が小さくなる。また、ポリエチレ
ン分子間に架橋構造を持たない非架橋ポリエチレンの方
が分子間のズレを生じやすく、発生する残留応力の緩和
が起こりやすい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。本発明の重防食被覆鋼矢板は図1に示すよ
うに、鋼矢板1、下地処理層2、変性ポリオレフィン層
3、防食ポリオレフィン層4、端部シール層5より構成
される。
【0021】本発明に用いる鋼矢板とは、港湾、河川、
埋め立て地等の護岸等に用いられるもので、JIS A
5528に規定されるU型、Z型、I型、およびこれら
に準じる形状のものである。その寸法については特に制
約はない。本発明において、重防食被覆は防食を施す必
要のある部分に対して行われる。例えば港湾の護岸用と
して用いられる場合には、主として海に面する側に被覆
が施されることが多いが、重防食被覆を鋼矢板の両面に
施しうることは言うまでもない。また電気防食と併用
し、重防食被覆は海上大気部からL.W.L. −1m程度
の限定された領域に施されることも普通に行われる。
【0022】本発明に用いる鋼矢板は、あらかじめ脱
脂、酸洗、ショットブラスト処理、グリットブラスト処
理、サンドブラスト処理等の公知の素地処理を施すこと
により、鋼材表面の油分、スケール等を除去しておくこ
とが望ましい。素地調整のレベルは、例えばスウェーデ
ン規格(SIS)でいえばSa2 1/2程度以上とする
ことが好ましい。この素地調整が不十分であると、重防
食被覆の長期防食性が著しく損なわれる。更に、公知の
クロメート処理等の化成処理を施すことが長期密着性、
防食性の観点から好ましい。
【0023】また、本発明で用いるプライマー層は、エ
ポキシ樹脂系あるいはウレタン樹脂系の有機樹脂系プラ
イマーであって、素地調整を施した鋼矢板表面と変性ポ
リエチレン層との密着性に優れたものが用いられる。プ
ライマー層は、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛
塗り等の公知の塗装方法で形成され、必要に応じて塗装
後加熱して完全な硬化被膜とすることも行われる。プラ
イマー層の膜厚は10〜200μm程度、特に20〜1
00μm程度が好ましい。10μmより薄いと、ポリエ
チレンシートと鋼材との密着力が小さくなるため、ポリ
エチレンシートが剥離するなどの問題があり、また20
0μmを越える膜厚であると、プライマー層自体の残留
応力が大きくなり、シートの長期密着性に悪影響を及ぼ
す。
【0024】また、本発明で用いる変性ポリエチレン
は、ポリエチレン樹脂を、マレイン酸、アクリル酸、メ
タアクリル酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物を
グラフト反応等で変性したもので、ポリエチレン単体に
比較して、他の物質との接着性が著しく改善された樹脂
のことを指す。変性ポリエチレンはグラフトする官能基
の種類や量により様々な熱的性質のものが知られている
が、本発明で用いられる変性ポリエチレンのビカット軟
化点は、50℃以上90℃以下である。50℃以下の軟
化点であると、重防食鋼矢板の気中部において、日照等
による温度上昇によりシートの密着性低下を来すので好
ましくなく、また90℃以上であると、シートの残留応
力の増大が問題となり、また鋼矢板の必要加熱温度を高
くすることによるエネルギーコスト増大を来すため好ま
しくない。好ましいビカット軟化点は55〜80℃であ
り、特に好ましくは55〜70℃である。本発明者らの
検討では、変性ポリエチレン層のビカット軟化点は90
℃以下なら発生する応力が小さくなることを見出した
が、更に70℃以下のビカット軟化点を有する変性ポリ
エチレンで有れば、極めて小さな残留応力となることが
分かった。但し、軟化点が低すぎると、特に夏場の日照
時に気中部で変性ポリエチレン層が軟化点に達して密着
力の低下を来す危険があるため、本発明では軟化点の下
限を50℃とした。
【0025】変性ポリエチレンのその他の物性は特に制
限されないが、メルトインデックスが0.2〜10g/
10分程度、好ましくは0.5〜5g/10分程度、密
度0.85〜0.98g/cm3程度、融点60〜100
℃程度、好ましくは60〜80℃程度のものが適当であ
る。変性ポリエチレン層の厚さは0.1〜1.5mm程
度、好ましくは0.2〜1mm程度が適当である。
【0026】また、本発明で用いられる防食ポリエチレ
ン層のポリエチレンは、密度が0.940g/cm3
上のいわゆる高密度ポリエチレンである。耐環境応力亀
裂性や耐衝撃性、靱性を向上する目的でプロピレン、ブ
テン−1、ヘキセン−1等のポリオレフィン系成分を共
重合成分としたエチレン共重合体を用いることもでき
る。密度の上限は問わないが市販品は通常0.970g
/cm3程度が上限である。特に好ましい密度は0.9
40〜0.960g/cm3程度である。メルトインデッ
クスは0.3g/10分以下のものがよく、好ましくは
0.1〜0.3g/10分程度である。0.3g/10
分を越えると環境応力、亀裂性が低下するので好ましく
ない。また、ビカット軟化点は100〜130℃程度、
特に110〜125℃程度のものが好ましい。変性ポリ
エチレン層との好ましい軟化点差は10〜70℃程度で
ある。防食ポリエチレン層には耐候性等の長期特性を改
善するため、カーボンブラックや着色顔料、酸化防止剤
等の各種添加物を加えることが好ましい。防食ポリエチ
レン層の厚さは1〜6mm程度、特に1〜4mm程度の
範囲であることが、長期密着性、長期防食性、被覆層の
機械的強度の保持の観点から好ましい。ちなみに重防食
鋼矢板の防食ポリエチレンの規格は2.0mm以上と定
められており、一般的には防食ポリエチレン層の厚さは
2.0mm以上であることが多い。
【0027】また、ポリエチレンには電子線架橋、シラ
ン架橋、化学架橋等いくつかの架橋方法が知られてお
り、重防食鋼矢板にもこれら架橋ポリエチレンが一般に
用いられるが、本発明においては、これら架橋ポリエチ
レンは使用せず、非架橋のポリエチレンを使用する。こ
れは、冷却後の応力緩和効果を阻害しないためであり、
一方、高密度ポリエチレンを使用するので十分な機械的
強度を有することから、架橋構造を取る必要がない。
【0028】重防食被覆の端部には端部シールを設ける
ことが好ましい。この端部シールは湿気硬化型の樹脂組
成物が好ましく、更に好ましくは湿気硬化型のウレタン
樹脂組成物を使用する。湿気硬化型のウレタン樹脂組成
物はトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソ
シアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート等の
ポリイソシアネートをポリエステルポリオール、ポリエ
ーテルポリオール等の多価アルコールと反応させて得た
ウレタン結合と、一部遊離のイソシアネート基を有する
ようなプレポリマーであり、端部シール材として塗布さ
れると、遊離のイソシアネート基同士が空気中の湿気と
反応して尿素結合を形成することにより3次元の無限大
編み目構造を形成して硬化する。このシール層はウレタ
ン結合と尿素結合から構成されるため極めて耐水劣化性
に優れ、海水中でも長期間シール材としての機能を発揮
する。塗布幅は5.0〜30mm程度、好ましくは10
〜20mm程度でよい。
【0029】次に、本発明に基づく重防食被覆鋼矢板の
製造方法説明する。ブラストによりスケールを完全に除
去し、クロメート処理等の化成処理を行う。更にプライ
マー用塗料を、スプレー塗装法その他の方法により塗装
し、放置あるいは加熱する等により硬化させ、プライマ
ー層を形成する。
【0030】このブラスト、化成処理、およびプライマ
ー塗装等の下地処理を行った鋼矢板を加熱炉等の加熱装
置で加熱する。加熱温度はポリエチレンシートの融着に
必要な温度であり、従って、変性ポリエチレン層の融点
以上、好ましくは融点より10〜100℃程度高い温度
であり、通常80〜200℃程度の温度範囲である。
【0031】加熱した鋼矢板に、変性ポリエチレン層を
介して、防食ポリエチレンシートを被覆する。この被覆
方法としては、予め変性ポリエチレン層と防食ポリエチ
レン層を一体化して成形したポリエチレンシートを作製
し、この一体化したシートを変性ポリエチレン層側が鋼
矢板に接するよう、鋼矢板に供給することが好ましい。
しかしながら、必ずしも一体化してある必要はなく、事
前に変性ポリエチレン層のみを下地処理をした鋼矢板上
に形成し、その上に防食ポリエチレン層のみからなるシ
ートを貼着しても良い。その場合変性ポリエチレン層は
溶融押出コーティング、粉体塗装、流動浸漬法、溶射、
シート貼付等で形成すればよい。防食ポリエチレンシー
トを熱接着させるため、変性ポリエチレン層は少なくと
も溶融状態となっている必要がある。
【0032】また、鋼矢板上に供給されたシートは、ロ
ール等の加圧装置にてシートを鋼矢板に押し付けること
により貼着される。その際、鋼矢板の中央部から曲面部
分、ついで周辺部へと順次加圧することが、シートに気
泡等の混入を防ぎ、効率的にシートを貼着する上で好ま
しい。
【0033】融着終了後、シートの余長部分をトリミン
グし、シートを貼着した鋼矢板を冷却する。本発明にお
いては、まずポリエチレン側から冷却することが残留応
力低減の観点から好ましい。冷却は水冷、風冷、その他
の冷媒により冷却するが、ポリエチレン側から水を散布
して冷却するのが最も効率的である。また、この冷却は
少なくとも接着層である変性ポリエチレン層が固化する
まで行うのが残留応力低減効果の観点から好ましい。そ
の後はポリエチレン側と鋼材側の両方から冷却しても残
留応力低減効果は変わらず、しかも、冷却時間短縮が図
れるので好ましい。
【0034】冷却後、端部シール用樹脂組成物、好まし
くは湿気硬化型の樹脂組成物、更に好ましくは湿気硬化
型のウレタン樹脂組成物をシートの端部全てに渡って塗
布し、端部シールを行うことが好ましい。塗布後は湿気
によって硬化するのでそのまま放置すればよい。
【0035】端部シールの形状は図1に示すように、端
部と鋼材の隙間を埋め、シート平面からあまり突出しな
いよう塗布することが好ましい。
【0036】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。U型鋼矢
板(有効幅500mm、高さ225mm、厚さ24.
3、長さ6m)の凹面の表面をSIS Sa2 1/2と
なるまでサンドブラスト処理し、使用時に海に接する側
の表面にクロメート処理剤を塗布、焼き付けし、全クロ
ム付着量が500mg/m2 のクロメート被膜を形成し
た。非塗装部分を養生した上で、表面にエポキシ系プラ
イマーを膜厚40μmとなるようにスプレー塗装し、加
熱して硬化させた。
【0037】その後、鋼矢板を加熱炉で140℃に加熱
し、高温状態の鋼矢板に、厚さ0.5mmの変性ポリエ
チレン層と厚さ2.0mmの防食ポリエチレン層を一体
化して成形したシートを載せ、加圧して融着させた。変
性ポリエチレンは無水マレイン酸変性ポリエチレンであ
る。用いた防食ポリエチレンの密度と変性ポリエチレン
のビカット軟化点は表1に示した。
【0038】冷却は表1に示した方法で行った。その
後、シートの側端部全体を湿気硬化型のウレタン樹脂組
成物にて端部シールすることにより本発明の重防食被覆
鋼矢板を作成した。比較例として他の端部シール材も用
いた。
【0039】この鋼矢板に対し、下記の評価を行った。 (1) 被覆の残留応力調査 冷却後、被覆に変形を与えないようにしながら、被覆の
一部を鋼矢板から剥離させ、剥離前後の寸法差と、被覆
に用いたポリエチレンのヤング率から被覆の残留応力を
算出した。 (2) 温塩水浸漬試験 得られた鋼矢板を適当なサイズに切断し、50℃,3%
の塩水に長期間浸漬し、浸漬後の被覆の接着力を90°
ピール強度法(JIS G 3469)で評価した。また
端部シール部分の被覆端部を強制的に剥離させ、剥離部
分の錆や鉄地の露出等の劣化状況を調査した。 (3) 塩水噴霧試験 得られた鋼矢板を適当なサイズに切断し、JIS K 5
400に定められた塩水噴霧試験を実施し、端部からの
錆の進行状況を調査した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】この加速試験の結果より、0.940g/
cm3以上の高密度ポリエチレンの系は被覆を透過して
くる水分によるピール強度の低下がほとんど見られず、
また、被覆の残留応力を小さくするため低ビカット軟化
点の変性ポリエチレンを使用した系では、特に塩水噴霧
試験のような環境温度に近い温度で実施する試験におい
て、端部からの腐食物質の浸透による端部劣化を抑えら
れることが分かった。また、端部シールとして湿気硬化
型ウレタン樹脂組成物を用いることで、温塩水浸漬試験
や塩水噴霧試験における端部からの劣化を抑えることが
可能となった。またポリエチレン側からの冷却により、
残留応力低減が図れ、端部からの劣化を抑えることが可
能となった。
【0043】本発明者らのグループが実施した鋼矢板の
海洋暴露試験においては、実施例2と比較例4の構成の
鋼矢板を用いた。比較例4の構成の鋼矢板は既に5年経
過段階で、被覆が海中部における端部のコーナー部分を
中心に剥離していた。しかし、実施例2の構成の鋼矢板
は10年経過後も端部シールは完全に残存し、端部から
の劣化の進展は全く見られていなかった。また被覆のピ
ール強度も初期値と同じ30kgf/cm以上であり、
全く劣化していなかった。これは、高密度ポリエチレン
の水分浸透に対する高い遮断効果が発揮されたと共に、
軟化点の低い変性ポリエチレンと優れた耐久性の湿気硬
化型ウレタン樹脂シール材を使用したため、残留応力も
小さく、端部からの水分の浸透も抑えられたものによる
と考えられる。
【0044】上記のように、本発明の方法により作成し
た重防食被覆鋼矢板は、高い水分浸透遮断効果と低残留
応力、および優れた端部シール効果を兼ね備え、各種の
加速試験や海中での長期暴露においても極めて優れた密
着性を示していることが分かった。
【0045】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の重防食被覆
鋼矢板は、加速試験、および海洋環境における暴露試験
において長期密着性に非常に優れた特性を示す。そのた
め、被覆鋼矢板の被覆の長期寿命を著しく伸ばすことが
出来、港湾施設としての維持管理費用の削減や、剥離に
伴う補修費用等の損失を防ぐことが出来、その経済的な
効果は計り知れない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の重防食被覆鋼矢板の断面図(側端部
の拡大図)である。
【符号の説明】
1 鋼矢板 2 下地処理層 3 変性ポリエチレン層 4 防食ポリエチレン層 5 端部シール層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 篠原 敏雄 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 斉藤 義郎 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 房前 貢 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−80028(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08 B05D 7/14 C23F 11/00 E02D 5/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下地処理を施した鋼矢板の少なくとも片
    面に変性ポリオレフィン層を介して防食ポリオレフィン
    層が被覆されている重防食被覆鋼矢板において、該防食
    ポリオレフィン層が密度0.940g/cm3以上の非架
    橋ポリエチレンよりなり、かつ該変性ポリオレフィン層
    がビカット軟化点が50℃以上90℃以下の変性ポリエ
    チレンよりなることを特徴とする重防食被覆鋼矢板
  2. 【請求項2】 非架橋ポリエチレンのメルトインデック
    スが0.3g/10分以下である請求項1記載の重防食
    被覆鋼矢板
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