JP3345321B2 - ポリエステル被覆鋼材 - Google Patents

ポリエステル被覆鋼材

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JP3345321B2 JP29965797A JP29965797A JP3345321B2 JP 3345321 B2 JP3345321 B2 JP 3345321B2 JP 29965797 A JP29965797 A JP 29965797A JP 29965797 A JP29965797 A JP 29965797A JP 3345321 B2 JP3345321 B2 JP 3345321B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は外面に防食被覆を必
要とする鋼管の埋設施工時、あるいは鋼管杭、鋼管矢
板、鋼矢板等の等の港湾・河川の桟橋や護岸などの外面
防食が必要とされる鋼構造物の打設時、もしくは打設後
の捨て石類、その他船舶を含む浮遊物等によって発生す
る衝撃に対して耐衝撃性に優れ、安価に外面防食を可能
としたポリエステル被覆鋼材を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】外面防食が必要とされる鋼管、鋼管杭、
鋼管矢板、鋼矢板等において数十年に及ぶ長期耐久性が
必要とされる場合、電気絶縁性、耐薬品性等の種々の防
食性に優れ、安価な樹脂であるポリエチレン、あるいは
ポリウレタンといった樹脂を被覆材として使用した重防
食被覆鋼材が製造されている。特に数十年に渡る長期防
食性と耐衝撃性を確保するため、厚みとしては数mm程
度に積層した被覆が一般的に用いられる。これらのポリ
エチレン、あるいはポリウレタンといった被覆材料を用
いた重防食被覆鋼材では被覆の防食性には著しく優れる
が、樹脂自体の強度が低いため、樹脂に厚みを持たせて
耐衝撃性を向上させるだけではおのずと限界があり、運
搬、保管、施工時のハンドリングにおける衝突や摩擦な
どによる被覆の傷発生が問題となってきた。このため、
海洋で用いられる鋼管杭等では腐食の激しい海面上の飛
沫帯と干満帯の部分にのみ防食被覆を施し、海中部には
電気防食を行うことで被覆を省略して傷発生を防止して
いる。しかしながら、海中裸管部分の電気防食にはAl
等の犠牲陽極が必要であり、施工後の定期的な電極交換
等の問題があった。
【0003】重防食被覆鋼材に耐衝撃性を持たせる方法
としては、特開平8−300559に示される様に表層
に金属層を設けることによって耐摩耗性と耐衝撃性を向
上させる方法がある。また、特公平7−006595に
提案されるように推進鋼管における重防食被覆ではポリ
エチレンまたはポリウレタン樹脂からなる防食被覆はそ
のままに、ガラス繊維または金属繊維混入のポリエステ
ル、またはガラス繊維または金属繊維混入のエポキシア
クリレート層をその保護被覆として使用する方法が提案
されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】重防食被覆に耐衝撃性
を付与するにはその表層に強度・硬度に優れる耐傷性被
覆層を形成する方法があり、中でも特開平8−3005
59に示される様に表層に金属被覆層を施す方法は効果
的である。しかしながら金属被覆は腐食に弱く、その被
覆工程においては、かしめ等の機械的固定方法や溶接と
いった加工や曲げ工程が必要となり生産効率が悪い。
【0005】さらには、腐食に強い金属被覆材料として
はチタン等の合金を選定する方法もあるが、材料コスト
が高いばかりでなく、加工が更に難しいという問題があ
る。
【0006】一方、特公平7−006595に提案され
るように従来のポリエチレンまたはポリウレタン樹脂か
らなる防食被覆層の上層に、ガラス繊維または金属繊維
混入のポリエステル、またはガラス繊維または金属繊維
混入のエポキシアクリレート層をその保護被覆として使
用する様な耐衝撃性に優れた高硬度の有機樹脂保護被覆
を形成する方法がある。しかしながら、防食被覆に種類
の異なる樹脂を積層するため、その接着が問題となり、
種々の方法が提案されている。これに対しては例えば、
ポリエチレン被覆を防食被覆に用いた場合には、特開平
6−146271に示される様にポリエチレン表層にエ
ンボス加工を施し物理的な凹凸を付けることによって保
護層を被覆可能とする方法がある。また、ポリウレタン
被覆では特開平6−122173に示される様に、その
界面に植毛材を介在ざせることで耐衝撃性を確保する方
法が提案されている。しかしながらいずれの場合も、そ
の物理接着強化のために新たに一つの工程が必要で品質
管理やコスト面での問題が残る。
【0007】上記のように、重防食被覆に耐衝撃性を付
与する種々の方法が提案される一方で、杭等の海洋構造
物では前述の様に重防食被覆が必要とされるのは腐食の
激しい干満帯に近い部分のみであり、従来の防食被覆と
保護被覆を組み合わせた被覆構成では、複雑な生産工程
による高コストのため、腐食の少ない海中部分までを被
覆することは希である。海中部は塗膜がバリヤー性を有
すれば良く、簡易な被覆でも防食が可能であるが、一般
のタールエポキシ等の塗装では耐衝撃性が無いため、捨
て石等に耐える事が出来ず、皮膜欠陥が生じる。また、
埋設鋼管においても鋼材腐食に対して緩やかな環境で
は、衝撃強度を有する安価な防食被覆が求められてい
る。
【0008】本発明は、端部剥離問題の無い鋼管被覆に
おいて、腐食の少ない領域での防食を安価に行うととも
に、従来防食層との組み合わにおいても剪断接着力付与
のための表面処理加工を行う必要の無い耐衝撃性のポリ
エステル防食被覆鋼材を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題を解決する手段として、鋼材表面に10点平均粗さR
zで45μm以上となる粗度を付与し、クロメート処理
を施した後、その上層に長さ5mm以上のガラス繊維を
5〜40vol%の範囲で含有し、かつその組み合わせ
た総添加量が43vol%以下の範囲で顔料を含有した
ポリエステル硬化樹脂による厚さ2〜10mmの保護防
食層を被覆することで耐衝撃性・耐傷性と防食性に優れ
たポリエステル被覆鋼材が得られることを見いだし本発
明に至った。
【0010】すなわち、本発明は第1図の断面図に示す
が如く、ブラスト処理等の下地処理により10点平均粗
さRzで45μm以上となるよう調整した鋼材1の表面
に、クロメート処理層2、長さ5mm以上のガラス繊維
を5〜40vol%の範囲で含有し、かつその組み合わ
せた総添加量が43vol%以下の範囲で顔料を含有し
た顔料を含有したポリエステル硬化樹脂による厚さ2〜
10mmの保護防食層3を被覆したことを特徴とするポ
リエステル被覆鋼材である。
【0011】また、鋼管においては第2図の断面図に示
すがごとく、鋼管4の表面にブラスト処理等の下地処理
により10点平均粗さRzで45μm以上となるよう調
整し、クロメート処理層2、長さ5mm以上のガラス繊
維を5〜40vol%の範囲で含有し、かつその組み合
わせた総添加量が43vol%以下の範囲で顔料を含有
した顔料を含有したポリエステル硬化樹脂による厚さ2
〜10mmの保護防食層3を被覆する。
【0012】鋼管杭等の海洋構造物における利用法の一
つとしては、第3図の被覆鋼管の軸方向断面図に示すが
如く、干満帯から飛沫帯の腐食の激しい長手方向一部の
外面全周にプライマー処理5とポリエチレン又はポリウ
レタンの重防食被覆を施した部分6と、外表面に10点
平均粗さRzで45μm以上である鋼材部分にクロメー
ト処理層2を施した部分の両方の表面に、長さ5mm以
上のガラス繊維を5〜40vol%の範囲で含有し、か
つその組み合わせた総添加量が43vol%以下の範囲
で顔料を含有したポリエステル硬化樹脂による厚さ2〜
10mmの保護防食層3を順次積層したものが利用出来
る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。
【0014】本発明に使用する鋼材とは配管用の鋼管、
あるいは鋼管杭、鋼管矢板、鋼矢板等の海洋、河川で使
用される鋼構造物であり、炭素鋼あるいは、ステンレス
鋼、チタン合金鋼等の合金鋼、またそのクラッド鋼を用
いる。その表面に亜鉛、アルミニウム、ニッケル、銅な
どのメッキ、亜鉛−鉄、亜鉛−アルミニウム、亜鉛−ニ
ッケル、亜鉛−ニッケル−コバルトなどの合金メッキ、
あるいは、これらのメッキ・合金メッキにシリカ、酸化
チタンなどの無機物の微細粒子を分散させた分散メッキ
を施した鋼材でもよい。
【0015】鋼材の下地処理として、サンド、グリッ
ド、ショット等を用いてブラスト処理を行ない表面付着
物の除去と表面粗度を付与する。ポリエステル樹脂は鋼
材への密着性が低いため表面粗度が低いとアンカー効果
が不足し、防食性能が低下する。このため、表面粗度の
指標としては密着性の相関を示す10点平均粗さRzが
45μm以上になるようにする。Rzが45μmに満た
ないと、浸漬後の塗膜と鋼材との密着力が低下しやす
い。
【0016】ブラスト処理の後、クロメート処理を施
し、ポリエステルと鋼材面との密着性を確保する。ポリ
エステルはアルカリに弱い特性を持つため、腐食、ある
いは、陰極防食により生成するアルカリによって剥離が
進行しやすい。このため、ポリエステル防食被覆の下地
処理としては中和、防食作用のあるクロメート処理層が
必須である。クロメート処理剤には、クロム酸を還元剤
を用いて30〜60%の範囲で還元したものに乾式シリ
カ微粒子を全クロム添加量に対して1〜3の比で添加し
たものを用いる。一般に薄板等で用いられている湿式法
で生成されるシリカは密着性が劣るため好ましくない。
また、前記主成分にリン酸及びその化合物を全クロム添
加量に対して0.5〜2.5、シランカップリング剤を
全クロム添加量に対して0.3〜3の範囲で添加したも
のを用いると耐剥離性に優れる。塗布量としては全クロ
ム付着量が100〜1000mg/m2の範囲になるよ
うに塗布する。クロム付着量が100mg/m2に満た
ない場合は耐陰極剥離性能等の防食性が低下し、100
0mg/m2を越えるとクロメート皮膜自体が脆いた
め、密着性が低下する。
【0017】上記の下地処理を行った鋼材表面に、長さ
5mm以上のガラス繊維を5〜40vol%の範囲で含
有し、かつその組み合わせた総添加量が43vol%以
下の範囲で顔料を含有したポリエステル硬化樹脂層を厚
さ2〜10mmで形成する。ポリエステル樹脂層の被覆
にはハンドレイアップ法、スプレーアップ法、コールド
プレス法、フィラメントワインデイング法や型枠による
注入成形等の方法を用いる。本発明で使用するポリエス
テル硬化樹脂とは、分子内にエステル結合と二重結合を
有するものであれば良く、オルソ系、イソ系、ビスフェ
ノール系の不飽和ポリエステル樹脂が使用出来る。また
材料コストの問題はあるが、化学的に安定で末端に二重
結合を持つビニルエステルを使用することも出来る。こ
れらのポリエステル樹脂をスチレンモノマー等の重合性
単量体に溶解したものをケトンパーオキシド、ハイドロ
パーオキシドの様な過酸化物触媒とコバルト系、バナジ
ウム系、マンガン系、アミン系等の促進剤によって硬化
する熱硬化性樹脂を用いる。
【0018】ポリエステル樹脂防食層には長さ5mm以
上のガラス繊維を充填する。長さが5mm以下ではガラ
ス繊維による衝撃強度向上効果が得られない。フィラメ
ントワインデイング法やガラスクロスを用いる場合では
特に長さの上限はないが、スプレーアップ法においてガ
ラス短繊維を用いる場合は、ガラス繊維が長いと塗装塗
膜の脱泡性が低下することから5〜50mmの範囲を中
心に使用することが望ましい。また、その添加量として
は5〜40vol%の範囲で添加する。添加量が5vo
l%に満たない場合、鋼材との接着力や耐衝撃性が低下
する。また、添加量が40vol%を越えると防食性が
低下する。添加する繊維には、価格と樹脂補強効果、防
食性能においてガラス繊維が優れるためこれを用いる。
ガラス以外の無機繊維として炭素繊維や金属繊維では、
導電性のため皮膜の防食性が低下する。一方、有機繊維
は収縮性が高く、単独で添加すると皮膜の物性が低下す
るが、導電性による防食性の低下影響が少ないため、本
発明のガラス繊維との併用であれば添加しても良い。ま
た、繊維と併用して無機充填顔料を用いる。無機充填顔
料は、中性水に対して不溶性で導電性の無い無機微粉末
であればよく、酸化ケイ素、アルミナ、酸化チタン、ケ
イ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、クロム酸化合物、
リン酸化合物、ホウ酸化合物、またはその混合物等が使
用出来る。また、意匠性と耐候性が要求される場合、着
色顔料の添加によってポリエステル樹脂層を着色する。
使用する着色顔料としては、例えばとしてはカドミウム
イエロー、酸化鉄、ポリアゾイエロー、キノフタロンイ
エロー、イソインドリノンイエロー、キナクリドンイエ
ロー、ベンガラレッド、ポリアゾブラウン、アゾレーキ
イエロー、ペリレンレッド、フタロシアニンブルー、フ
タロシアニングリーン、ベンガライエロー、アルミン酸
コバルト、アニリンブラック、カーボンブラック、酸化
チタン、ウルトラマリンブルー、アルミニウム微粉末等
を添加する。鋼材杭等で屋外に用いる場合、不飽和ポリ
エステルの表層部分が紫外線により劣化するので、着色
顔料を0.5%以上添加し、耐候性、防食性を向上させ
て使用する。また、表層ゲルコート塗装を行う場合、そ
の部分にのみ着色顔料を添加すると、経済性に優れる。
これらの顔料は、繊維との組み合わせた総添加量が43
vol%を越えると防食性が低下するため、43vol
%以下(0%は含まない)に調整する。なお、12〜4
3vol%が好ましい。上記組成のポリエステル樹脂層
に防食性と保護層としての機能を持たせるため、2〜1
0mmの皮膜を形成する。厚みが2mmに及ばないと、
耐衝撃性、防食性、耐久性等が低下する。また、厚みが
10mmを越えると経済的でないばかりか、接着力の低
下が生じる。
【0019】以上のポリエステル被覆を図1の断面図に
示すように順次積層することにより耐衝撃性・耐傷性と
防食性に優れたポリエステル被覆鋼材が得られる。
【0020】また、鋼材杭、鋼矢板等で海洋構造物とし
て使用する場合、第2図の鋼管杭の軸方向断面図に示す
様に干満帯から飛沫帯の腐食の多い長手方向一部の外面
にポリエチレン又はポリウレタンの重防食被覆6を施
す。重防食被覆6はブラスト処理、クロメート処理2、
プライマー処理5を行った鋼材の外表面に変性ポリエチ
レン接着剤を介して押し出し被覆したポリエチレン防食
層を積層するか、もしくは、同様の下地処理、プライマ
ー処理を行った後、ポリウレタンのスプレー塗装を行い
形成する。この後、外表面の10点平均粗さがRzで4
5μm以上である鋼材部分にクロメート処理層2を施し
た部分と重防食被覆部分6の両方の表面に、ガラス繊維
と顔料を含有したポリエステル硬化樹脂による保護防食
被覆層3を順次積層する。これにより、ポリステル保護
被覆と接着しない重防食被覆部でも、被覆部と裸管部で
の段差と、裸管部でのポリエステル層と鋼材の接着によ
り打ち込み等で発生する剪断力に対して、表面加工を省
略した製造が可能となる。
【0021】
【実施例】
実施例及び比較例 1 外径200A×長さ5500mm×肉厚5.8mmの鋼
管外面にグリッドブラスト処理を施し、スケール等を除
去して表面に粗度をRzで45μm以上となるように付
与した後、クロム酸還元率55%、シリカ/全クロムの
比が2.0、リン酸/全クロム比が0.5に調整したク
ロム−リン酸−シリカ系のクロメート処理剤を全クロ
ム付着量で150mg/m2となるように塗布乾燥して
下地処理を行った。この後、スプレーアップ法により、
シラン系表面処理を行った2.3kg/km番手のガラ
スロービングを繊維長を変えて切断したものと、炭酸カ
ルシウム充填顔料を添加量を変えて予め混合添加した不
飽和ポリエステル樹脂とを、過酸化物触媒を含有した硬
化剤を加えながらスプレー混合して同時に吹き付け塗装
を行った。これにより、ガラス繊維を添加しない比較例
1−1、ガラス繊維添加量を12vol%として繊維長
を3〜70mmに切断した実施例1−1〜1−5及び比
較例1−2〜3、及びガラス繊維長を12.5mmに切
断して添加量を12vol%とし、充填顔料を17〜4
2vol%の範囲で添加した実施例1−2,1―6〜1
7及び、比較例1−4〜5のポリエステル被覆鋼管を製
造した。覆鋼管を切断加工し、ASTM G14に規定
された落錘衝撃試験により被覆の貫通エネルギーを測定
した。また、防食性の評価方法として温水浸漬後の密着
性評価試験及び陰極剥離試験を行った。温水浸漬試験
は、60℃温水に800時間の浸漬を行った後、ポリエ
ステル防食層に鋼面までの切り込みを入れ、垂直密着力
測定治具を接着剤を介して接着し、プルオフ測定により
垂直密着力を評価した。陰極剥離試験は、電解液に3%
−NaClを用いて、硫酸銅標準電極により1.5Vの
電圧を付加し、60℃の温度で30日間の試験を実施し
た。その後、被覆の初期貫通穴(直径:9mm)からの
4点平均剥離距離を測定し評価を行った。
【0022】スプレーアップ法でのガラス繊維長の影
響、及び添加するガラス繊維と顔料の総添加量の影響を
評価した結果を表1に示す。ガラス繊維長は本発明の範
囲である5mm以上の繊維長において始めて優れた性能
を示す。また、スプレーアップ法では前述の脱泡性の低
下により、その切断長が50mmを越えると徐々に防食
性が低下する傾向にある。また、ポリエステル樹脂に対
して繊維及び充填剤の総添加量が43vol%を越える
と防食性が低下する。
【0023】
【表1】 実施例及び比較例 2 外径200A×長さ5500mm×肉厚5.8mmの鋼
管外面にグリッドブラスト処理を施し、スケール等を除
去して表面に10点平均粗さRzが45μm以上となる
粗度を付与した後、クロム酸還元率30%、シリカ/全
クロムの比が1.5、シランカップリング剤/全クロム
比が0.5に調整したクロメート処理剤を全クロム付
着量で1000mg/m2となるように下地処理を行っ
た。この後、スプレーアップ法により、シラン系の表面
処理を行った2.3kg/km番手のガラスロービング
を5mm長に切断したものを添加量を変えたものと、
0.7vol%の着色顔料を添加したイソ系不飽和ポリ
エステル樹脂と過酸化物触媒を含有した硬化剤をスプレ
ー混合しながら同時に吹き付け塗装を行い、厚さ3mm
のイソ系不飽和ポリエステル防食層を形成した。これに
より、ガラス繊維添加量を0〜50.6vol%の範囲
で添加した実施例2−1〜5及び比較例2−1〜3のポ
リエステル被覆鋼管を製造した。この被覆鋼管を切断加
工し、実施例1と同じ条件で落錘衝撃試験、陰極剥離試
験及び温水浸漬後の密着性評価試験を行った。
【0024】ガラス繊維添加量の影響を評価した結果を
表2に示す。ガラス繊維添加量は本発明の範囲である5
〜40vol%において優れた性能を示す。ポリエステ
ル樹脂に対して繊維の添加量が5vol%に満たない場
合、接着力と樹脂の強度が低下するために各種性能が低
下する。また、添加量が40vol%を越えると防食性
は低下する。
【0025】
【表2】 実施例及び比較例 3 外径200A×長さ5500mm×肉厚5.8mmの鋼
管外面にグリッドブラスト処理を施し、スケール等を除
去して表面に10点平均粗さRzが45μm以上となる
粗度を付与した後、クロム酸還元率40%、シリカ/全
クロムの比が2.5に調整したクロメート処理剤を全
クロム付着量で500mg/m2となるように下地処理
を行った。この後、スプレーアップ法によりシラン系の
表面処理を行った3.5kg/km番手のガラスロービ
ングを25mm長に切断したものを添加量が12vol
%になるように調整したものと、0.7vol%の着色
顔料と充填顔料としてタルクを15vol%添加したビ
スフェノール系不飽和ポリエステル樹脂と過酸化物触媒
を含有した硬化剤をスプレー混合しながら同時に吹き付
け塗装を行い、塗装膜厚を変えて不飽和ポリエステル防
食層を形成した。
【0026】これにより、不飽和ポリエステル防食層の
厚みが0.5〜15mmの範囲の実施例3−1〜4及び
比較例3−1〜3のポリエステル被覆鋼材を製造した。
この被覆鋼管を切断加工し、実施例1と同じ条件で落錘
衝撃試験、陰極剥離試験及び温水浸漬後の密着性評価試
験を行った。
【0027】不飽和ポリエステル防食層の厚みの影響を
評価した結果を表3に示す。表3の結果からポリエステ
ル層は厚みが2mmを越えると防食層としての機能を発
揮することがわかる。また、厚みが厚い程、高い耐衝撃
性を示すが、厚みが10mmを越えると密着性が低下す
る。
【0028】
【表3】 実施例及び比較例 4 外径200A×長さ5500mm×肉厚5.8mmの鋼
管外面にグリッドブラスト処理を施した。このとき、使
用するグリッド粒の種類(粒径)を変更することによ
り、10点平均粗さRzがそれぞれ、39.8、46、
54.7、72.5μmとなる粗度を付与した鋼管を各
1本作成した。この鋼管の長さ方向の半分に、クロメー
ト処理剤を全クロム付着量で150mg/m2となる
ように塗布乾燥し、残りの部分で塗布しない鋼管を作成
した。
【0029】これらの鋼管の外面全てにスプレーアップ
法によりシラン系の表面処理を行った2.3kg/km
番手のガラスロービングを繊維長を12.5mmに切断
して添加量を12vol%に調整したものと、炭酸カル
シウム充填顔料を30vol%の添加量で添加したオル
ソ系不飽和ポリエステル樹脂と過酸化物触媒を含有した
硬化剤をスプレー混合しながら同時に吹き付け塗装を行
い、厚さ3mmの不飽和ポリエステル防食層を形成し、
実施例4−1〜2、比較例4−1〜5のポリエステル防
食被覆鋼材を製造した。この被覆鋼管を切断加工し、実
施例1と同じ条件で落錘衝撃試験、陰極剥離試験及び温
水浸漬後の密着性評価試験を行った。
【0030】結果は表4に示す。
【0031】表4の結果からも明らかなように、表面粗
度を10点平均粗さRzで45μm以上とし、クロメー
ト処理を実施する本願特許の実施例の範囲でのみ、優れ
た密着性と耐陰極剥離性が得られる。
【0032】
【表4】 実施例及び比較例 5 外径200A×長さ5500mm×肉厚5.8mmの鋼
管外面にグリッドブラスト処理を施し、スケール等を除
去して表面に粗度を付与した後、クロメート処理剤を
全クロム付着量で50mg/m2となるように塗布乾燥
後して下地処理を行った。次に酸化チタンを10重量%
添加したアミン系の硬化剤を用いたエポキシプライマー
を30〜60μm膜厚となるようにスプレー塗布し、こ
の鋼材を加熱してプライマーを硬化させた。次いでこの
鋼管を回転搬送し、その表面にTダイから無水マレイン
酸変性ポリエチレン接着剤とカーボンブブラックを2%
配合した低密度ポリエチレンを二層一体で被覆し、ポリ
エチレン接着剤層を厚みで200μmとポリエチレン層
を厚みで2.5mm積層し、比較例5−1の従来公知の
ポリエチレン重防食被覆鋼材を製造した。またこの比較
例5−1の鋼管外面にスプレーアップ法により、シラン
系表面処理を行った2.3kg/km番手のガラスロー
ビングを繊維長を12.5mmに切断して添加量を12
vol%に調整したものと、炭酸カルシウム充填顔料を
30vol%の添加量で添加したオルソ系不飽和ポリエ
ステル樹脂と過酸化物触媒を含有した硬化剤をスプレー
混合しながら同時に吹き付け塗装を行い、厚さ3mmの
不飽和ポリエステル防食層を形成し、比較例5−2のポ
リエステル保護層を持つポリエチレン被覆鋼管を製造し
た。
【0033】また同様の方法で部分的にポリエチレン被
覆を行った部分を数カ所作成した鋼管に、ブラスト処
理、クロメート処理剤を全クロム付着量で150mg
/m2となるように塗布乾燥後して下地処理を行い、比
較例5で用いたスプレーアップ法によりポリエステル保
護防食層の吹き付け塗装を行い、実施例5のポリエステ
ル被覆鋼管を製造した。これらの被覆鋼管を切断加工
し、実施例1と同じ条件で落錘衝撃試験、陰極剥離試験
を行った。一方、比較例5−2と実施例5の被覆鋼管を
鋼管部分とポリエステル保護層を保持した図4に示す状
態で、支持台10でポリエステル被覆を保持し、鋼管押
し込み支持具9を用いて10mm/分の速度で高強度層
と鋼管の剪断押し抜き試験により最大荷重を測定した。
得られた荷重を試験体の外表面被覆面積で割り戻して、
単位面積あたりの剪断接着力を計算した。結果を表5に
示す。
【0034】表5の結果からも明らかなように、従来公
知の比較例5−1のポリエチレン被覆鋼管は耐陰極剥離
性に関しては良好であるが、耐衝撃性が低い。一方、ポ
リエステル保護層を上層に被覆した比較例5−2の被覆
鋼管は耐衝撃性に優れるが、ポリエステル保護層とポリ
エチレン防食層との剪断力が低い。これに対して本発明
の被覆構成を持つ実施例5では、ポリエステル被覆の一
部破壊が生じるまでの十分な剪断強度を持ち、杭の打ち
込み時の被覆のずれ発生の問題が無い。
【0035】
【表5】
【0036】
【発明の効果】本発明のポリエステル被覆鋼材は実施例
からも明らかな様に、表面粗度の付与とクロメート処理
により、鋼材との密着性と防食性をポリエステル保護層
に付与することで防食被覆としての機能を有する。ま
た、従来の重防食被覆鋼材に比較して優れた耐衝撃性を
有することから、施工時や、船舶等の衝突、捨て石によ
る損傷を防止することが出来る。また、被覆工程が少な
く、製造が容易であることから生産効率の優れた安価な
製品を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル被覆鋼材の一部断面を示
す図である。
【図2】本発明のポリエステル被覆鋼管の一部断面を示
す図である。
【図3】本発明のポリエステル被覆重鋼管の軸方向断面
を示す図である。
【図4】ポリエステル被覆層と従来防食被覆層の剪断試
験方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋼材 2 クロメート層 3 ガラス繊維を含有したポリエステル硬化樹脂による
保護防食被覆層 4 鋼管 5 プライマー層 6 ポリエチレン又はポリウレタン防食層 7 海面 8 海底 9 鋼管押し込み支持具 10 ポリエステル被覆支持台
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−5938(JP,A) 特開 昭62−82471(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B05D 7/00 - 7/26

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外面に10点平均粗さRzで45μm
    以上となるように粗度を付与した鋼材に、クロメート処
    理を施した後、その上層に長さ5mm以上のガラス繊維
    を5〜40vol%の範囲で含有し、かつその組み合わ
    せた総添加量が43vol%以下の範囲で顔料を含有し
    たポリエステル硬化樹脂による厚さ2〜10mmの保護
    防食層を被覆したことを特徴とするポリエステル被覆鋼
    材。
  2. 【請求項2】 長手方向一部にポリエチレン又はポリウ
    レタンの重防食被覆を施した部分を持ち、残りの表面に
    10点平均粗さRzで45μm以上となる粗度を付与し
    た後、クロメート処理を行った鋼材に、長さ5mm以上
    のガラス繊維を5〜40vol%の範囲で含有し、かつ
    その組み合わせた総添加量が43vol%以下の範囲で
    顔料を含有したポリエステル硬化樹脂による厚さ2〜1
    0mmの保護防食層を被覆したことを特徴とするポリエ
    ステル被覆鋼材。
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