JP3212764B2 - 動力伝達装置用シール機構 - Google Patents

動力伝達装置用シール機構

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JP3212764B2 JP16173493A JP16173493A JP3212764B2 JP 3212764 B2 JP3212764 B2 JP 3212764B2 JP 16173493 A JP16173493 A JP 16173493A JP 16173493 A JP16173493 A JP 16173493A JP 3212764 B2 JP3212764 B2 JP 3212764B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、接続される回転軸の回
転差に応じて油圧により動力を伝達する動力伝達装置に
関し、詳細にはドリブンギヤ及びリテーナ間の隙間から
の油漏れを防止するためのシール機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】前輪及び後輪をエンジンで駆動する4W
D車では、エンジンの駆動力を前後輪間の回転差に応じ
て前後輪に分配する動力伝達装置が採用されている。こ
の種の装置として、例えば特開平2−270643号公
報に示すようなギヤポンプを用いた油圧式の動力伝達装
置がある。
【0003】この油圧式動力伝達装置は、入力側に配設
したリテーナにピニオンを収容するための凹部を形成
し、該凹部内に設けた軸によりピニオンを回転自在に支
持させ、出力側のケーシングの内面に形成されたリング
ギヤをピニオンに噛合させた構造を有している。そし
て、上記リングギヤ,ピニオン,及びリテーナで油圧発
生室を形成し、前後輪間に生じた回転差に応じて該油圧
発生室内の作動油を昇圧させてトルク伝達を行ってい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような油圧式動力
伝達装置では、油圧発生室内の作動油が油圧の上昇に伴
って油圧発生室外に漏れるのを抑制する必要があり、従
って上記リテーナに形成された凹部の内壁面とピニオン
歯先との隙間をできるだけ小さくする必要がある。この
ため該ピニオンを軸支する軸の精度を上げるのみなら
ず、ピニオン及びリテーナの加工精度をも上げる必要が
生じる。
【0005】ところが、各部品の寸法精度を上げるのに
も限界があり、またそのために特に高圧タイプの装置で
は高価になるという問題もある。
【0006】本発明は、このような実情に鑑みてなされ
たもので、各部品の寸法精度をそれほど上げることなく
油漏れを防止できる動力伝達装置用シール機構を提供す
ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る動力伝達装
置用シール機構は、第1の回転軸が接続されるケーシン
グ内に第2の回転軸が接続されるリテーナを同軸配置
し、該リテーナの周囲に配設されたドリブンギヤを上記
ケーシングの内面に設けられたリングギヤに噛合させ、
上記ケーシング,リングギヤ,ドリブンギヤ及びリテー
ナで形成される油圧発生室内の作動油を第1,第2の回
転軸の回転差に応じて昇圧させることにより動力の伝達
を行う動力伝達装置における上記ドリブンギヤ及びリテ
ーナ間からの油漏れを防止するための動力伝達装置用シ
ール機構において、上記リテーナに凹部を形成するとと
もに、該凹部により上記ドリブンギヤを軸支することな
回転可能に支持したことを特徴としている。
【0008】
【作用】本発明によれば、第1,第2の回転軸の回転差
に応じてリングギヤとドリブンギヤとで作動油が昇圧さ
れ、該油圧により動力が伝達される。このとき昇圧した
作動油によりドリブンギヤがリテーナ側に押され、ドリ
ブンギヤの歯先がリテーナの凹部内壁面に当接し、この
状態でドリブンギヤが回転する。これによりドリブンギ
ヤ及びリテーナ間の隙間からの油漏れが防止できる。し
かも高圧の油圧になるほどドリブンギヤがリテーナに強
く圧接するようになるので、油漏れを効果的に防止でき
る。このように、ドリブンギヤを軸支することなく、リ
テーナの凹部により支持させるようにしたので、各部品
の寸法精度をそれほど上げることなく、ドリブンギヤ歯
先とリテーナ凹部内壁との隙間からの油漏れを防止する
ことができ、しかも伝達トルクを増加できる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて
説明する。図1ないし図5は本発明の一実施例による油
圧式動力伝達装置用シール機構を説明するための図であ
り、図1は四輪駆動車の概略構成図、図2は上記動力伝
達装置の作動油流路を模式的に示す構成図、図3は該動
力伝達装置の断面側面図、図4は図3の要部拡大図、図
5は本実施例の作用効果を説明するための図である。な
お、本実施例では、フロントエンジン・リヤドライブ方
式をベースとした四輪駆動車に適用した場合を例にとっ
て説明する。
【0010】図1において、17は本実施例装置を適用
した四輪駆動車であり、該四輪駆動車17のエンジン1
8にはクラッチを介在させてトランスミッション19が
接続されており、該トランスミッション19にはトラン
スファ20が接続されている。このトランスファ20
は、上記エンジン18からの駆動力をプロペラシャフト
21を介して後輪22に伝達するとともに、伝動軸23
を介して前輪24に伝達するもので、該前輪24と伝動
軸23との間にはフロントディファレンシャル25a
(以下フロントデフと略す)が配設されており、上記後
輪22とプロペラシャフト21との間にはリヤディファ
レンシャル25b(以下リヤデフ)が配設されている。
【0011】上記フロントデフ25aと伝動軸23との
間には、走行条件に応じて上記前輪24への駆動力を増
減し、結果的に前,後輪24,22への駆動力配分比を
制御する油圧式動力伝達装置26が配設されている。
【0012】上記動力伝達装置26は、図2にその全体
構成を模式的に示すように、正,逆主油路27a,27
bからなる主油路27,及びオイルタンク38等を内蔵
するギヤポンプ方式のものである。この動力伝達装置2
6は、ケーシング29の中にリテーナ30を回転自在に
かつ同軸をなすように配設し、該リテーナ30に回転可
能に支持された4個のドリブンギヤ31をケーシング2
9の内面に軸方向移動可能に配設されたリングギヤ32
に噛合させ、該リングギヤ32,上記ドリブンギヤ3
1,上記ケーシング29,及びリテーナ30で油圧発生
室(A〜H)を形成した構造のものである。そして、上
記リテーナ30は上記フロントデフ25aに連結されて
おり、またケーシング29は上記伝動軸23に連結され
ている。これにより上記油圧発生室(A〜H)内の作動
油を上記前,後輪間24,22の回転差に応じて上記ド
リブンギヤ31と上記リングギヤ32とで昇圧させるこ
とにより、伝動軸23とフロントデフ25aとの間で動
力を伝達するようになっている。
【0013】上記動力伝達装置26の具体的構造を示す
図3及び図4において、上記ケーシング29は円盤状の
底壁部29aとこれに固着された有底円筒状の胴部29
bとからなり、該胴部29b内に上記リングギヤ32が
挿入配置されている。
【0014】また、上記リテーナ30は四葉状の本体部
30aと、これにスプライン嵌合した軸部33とから構
成されており、上記本体部30aには上記各ドリブンギ
ヤ31を収容しかつ回転可能に支持し得る4つの凹部3
0cが形成され、また上記軸部33の大径部33e及び
先端部33fはころがり軸受34,35を介して上記ケ
ーシング29に回転可能に支持されている。なお、上記
各ドリブンギヤ31の歯先と凹部30cの内壁面との間
にはそれぞれ微小隙間sが形成されている(図5参
照)。またケーシング29の胴部29bと軸部33の大
径部33eとの間は、耐圧オイルシール36でシールさ
れている。上記軸部33の上記先端部33fが挿入され
た上記底壁部29aの開口29cは、蓋部材37及びシ
ール部材37aで閉塞されている。
【0015】上記軸部33の大径部33eの軸心部に
は、作動油を貯溜し、かつ油温上昇による作動油の体積
増加を吸収し得るオイルタンク38が形成されている。
このオイルタンク38はシリンダ穴38a内にピストン
39を摺動可能に挿入配置し、両者間をピストンリング
40でシールした構造のものである。
【0016】一方、図3において上記ケーシング29内
のドリブンギヤ31より図示右方には、プレッシャプレ
ート41が軸方向移動可能に設けられている。ケーシン
グ底壁部29a内に形成された孔29d内には、該プレ
ッシャプレート41を図示左方に付勢するコイルばね4
2が装着されている。また該プレシャプレート41の背
面側には、上記リテーナ30の本体部30a,ドリブン
ギヤ31,及びリングギヤ32の右端面にシール可能に
摺接するシールプレート43がスラストベアリング43
aを介して配設されている。
【0017】また、上記ケーシング29内のドリブンギ
ヤ31より図示左方には、上記リテーナ30の本体部3
0a,ドリブンギヤ31,及びリングギヤ32の左端面
にシール可能に摺接する可動側板44が軸方向移動可能
に設けられている。該可動側板44には大小2つのピス
トン孔44b,44cが軸方向に並列に形成されてお
り、該両ピストン孔44b,44c内にはピストン46
の大径ピストン部46a,小径ピストン部46bが挿入
されている。上記大径ピストン孔44b,大径ピストン
部46aの底面,先端面で囲まれた空間が一方の油圧作
動室aとなっており、また小径ピストン孔44c,小径
ピストン部46bの底面,先端面で囲まれた空間が他方
の油圧作動室bとなっている。このピストン46は背面
に配設されたスラストベアリング48を介して上記胴部
29bの底面で支持されている。また、ピストン46は
ピン45で上記可動側板44と共に上記リテーナ30の
本体部30aに係止され、該本体部30aと共に回転す
るようになっている。
【0018】また上記ピストン46には、上記作動室
a,bに連通するオリフィス46c,46dが設けられ
ており、また、該油圧作動室a,bからオイルタンク方
向への作動油の流れを阻止するワンウェイバルブ46
e,46fが設けられている。
【0019】ここで、図2に示すように上記正主油路2
7aは、正転側油圧発生室A,C,E,Gを上記本体部
30aの油路30b,油圧作動室b,可動側板44,オ
リフィス46dを介して、上記オイルタンク38に連通
させている。
【0020】また、上記逆主油路27bは、逆転側油圧
発生室B,D,F,Hを上記可動側板44内の油路44
d,油圧作動室a,オリフィス46cを介して、オイル
タンク38に連通させている。
【0021】そして、正副油路50aは、上記ワンウェ
イバルブ46fを介して、オイルタンク38と上記正主
油路27aとを連通させている。また、上記逆副油路5
0bは、上記ワンウェイバルブ46eを介して、オイル
タンク38と逆主油路27bとを連通させている。
【0022】つまり、正転側の油圧発生室A,C,E,
Gの圧力が、該油圧発生室とオイルタンク38との間に
配設したオリフィス46d及びワンウェイバルブ46f
により、上記正側油圧作動室bに、また、逆転側の油圧
発生室B,D,F,Hの圧力が、該油圧発生室とオイル
タンク38との間に配設したオリフィス46c及びワン
ウェイバルブ46eにより、上記逆側油圧作動室aに各
々作用するよう構成されている。
【0023】次に作用効果について説明する。前,後輪
24,22が同じ回転数の場合には、ケーシング29と
リテーナ30とは同じ回転数となり回転差は生じない。
次に、例えば後輪22のスリップ等により後輪回転数が
前輪回転数より高くなり、ケーシング29の回転数がリ
テーナ30より高くなると、リングギヤ32及びドリブ
ンギヤ31はそれぞれ図2,図5矢印a方向に回転す
る。この場合、例えばドリブンギヤ31´に着目する
と、油圧発生室Aが吐出側となり、油圧発生室Hが吸込
側となる。油圧発生室Aから吐出された作動油は、油路
30bから上記正側油圧作動室bに流入する。そして、
該作動油は上記ワンウェイバルブ46fでオイルタンク
38への流れが阻止されるとともに、オリフィス46d
で絞られて昇圧し、その油圧によってトルクが前輪24
へも伝達される。
【0024】またこの場合、相対的に油圧発生室Aが高
圧側,油圧発生室Hが低圧側となるが、このときドリブ
ンギヤ31´は軸支されず単に凹部30c内に支持され
ているだけなので、油圧発生室Aからの油圧の作用によ
りドリブンギヤ31´は、リテーナ本体部30a側に移
動し、該ドリブンギヤ31´の歯先が凹部30cの内壁
面に当接する。これにより微小隙間s(図5)をシール
でき、該隙間sからの油漏れを防止できる。他のドリブ
ンギヤ31と凹部30cとの隙間についても全く同様に
してシールでき、このようにして各ドリブンギヤ歯先と
リテーナ凹部内壁との隙間からの油漏れを防止できる。
【0025】なお、このとき上記油圧によって可動側板
44がドリブンギヤ31,リテーナ本体部30a,及び
リングギヤ32の図示左端面を押圧し、また図示右端面
がシールプレート43を押圧し、これにより油圧発生室
の左,右端面からの油漏れが防止される。
【0026】次に、前,後輪24,22の回転差がさら
に増して高差回転状態になると、それに応じて正側油圧
作動室bも高圧となり、この油圧の作用により各ドリブ
ンギヤ31,31´がリテーナ本体部30a側に移動し
て、その歯先が凹部30cの内壁面に強く圧接する。こ
れにより、高差回転時における微小隙間sからの油漏れ
を効果的に防止できる。従って、高圧タイプのギヤポン
プを用いた装置においても上記隙間からの油漏れを防止
できる。
【0027】なお、上記の場合とは逆に前輪回転数が後
輪回転数よりも高くなった場合には、油圧発生室Hが高
圧側,油圧発生室Aが低圧側となるが、この場合におい
ても各ドリブンギヤ31,31´の歯先が凹部30cの
内壁面に当接するので、同様にして微小隙間sからの油
漏れを防止できる。
【0028】このように本実施例では、各ドリブンギヤ
31,31´を軸支することなく、リテーナ30に形成
した各凹部30cにより回転可能に支持するようにした
ので、ドリブンギヤ歯先と凹部内壁面との間の微小隙間
sからの油漏れを作動油の油圧に応じて効果的に防止す
ることができる。またドリブンギヤ歯先が凹部内壁面に
当接することにより該微小隙間s部分がシールされるこ
とになるため、各部品の寸法精度をそれほど上げること
なく油漏れを防止することができる。さらに、上記のよ
うなギヤポンプを用いた動力伝達装置ではオイルを吐出
するのが目的ではなくポンプの駆動抵抗を利用している
ため、ドリブンギヤ歯先が凹部内壁面に接触することに
よる駆動抵抗の増加はむしろ伝達トルクとして用いるこ
とができる。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明に係る動力伝達装置
用シール機構によれば、リテーナに凹部を形成して該凹
部によりドリブンギヤを軸支することなく回転可能に支
持するようにしたので、各部品の寸法精度をそれほど上
げることなく油漏れを防止でき、また伝達トルクを増加
できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による動力伝達装置用シール
機構が適用された四輪駆動車の概略構成図である。
【図2】上記動力伝達装置の作動油流路を模式的に示す
構成図である。
【図3】上記動力伝達装置の断面側面図(図4のIII-II
I 線断面図)である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】上記実施例の作用効果を説明するための図であ
る。
【符号の説明】
26 動力伝達装置 29 ケーシング 30 リテーナ 30c 凹部 31,31´ ドリブンギヤ 32 リングギヤ A〜H 油圧発生室 s 微小隙間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16D 31/04 B60K 17/348

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の回転軸が接続されるケーシング内
    に第2の回転軸が接続されるリテーナを同軸配置し、該
    リテーナの周囲に配設されたドリブンギヤを上記ケーシ
    ングの内面に設けられたリングギヤに噛合させ、上記ケ
    ーシング,リングギヤ,ドリブンギヤ及びリテーナで形
    成される油圧発生室内の作動油を第1,第2の回転軸の
    回転差に応じて昇圧させることにより動力の伝達を行う
    動力伝達装置における上記ドリブンギヤ及びリテーナ間
    からの油漏れを防止するための動力伝達装置用シール機
    構において、上記リテーナに凹部を形成するとともに、
    該凹部により上記ドリブンギヤを軸支することなく回転
    可能に支持したことを特徴とする動力伝達装置用シール
    機構。
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