JP3209092B2 - 油分水分調整機能紙およびそれを用いた容器 - Google Patents

油分水分調整機能紙およびそれを用いた容器

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油分や水分(水蒸
気)の多い揚げたてのコロッケ、フライドチキン等の調
理済食品を包装するための油分水分調整機能紙とそれを
用いた容器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ファーストフード店やコンビニエ
ンスストア等で販売している揚げたてのコロッケ、フラ
イドチキン等、油分や水分(水蒸気)を放出する食品、
特に加温状態の前記調理済食品を包装する用紙に一般紙
を用いると、食品に含まれる油分や水分(水蒸気)が紙
の各層を透過して紙の内側から外側に滲み出てしまい、
容器が汚れたり、その容器に触れた例えば手や衣服も汚
れてしまうことがある。このため、耐油性、耐水性を
有するポリエチレン等のプラスチック樹脂層を、用紙の
表面に積層する、あるいは用紙の中間層に挟む、耐油
性、耐水性を有するスコッチバン(商品名、住友スリー
エム株式会社製)等の薬剤を各層に漉き込む、一部の
層にのみ耐水性を有するサイズパイン(商品名、荒川化
学工業株式会社製)等の薬剤を漉き込む、等の処理を施
した用紙を用いて調理済食品から発生する油分や水分
(水蒸気)の用紙外側への汚染を防いでいた。
【0003】ところがこれらの耐油性、耐水性付与策
は、新たに樹脂層を設けるので、樹脂層がバリア層と
なって通気性が悪くなり、用紙のリサイクルも困難でコ
スト高となる。耐水剤、耐油剤の組み合わせやそれら
の機能層の選択方法が悪かったため、押罫線部分の耐油
性が悪くなり、用紙端面からの油分のしみ込みによる油
染が発生する等の問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、油分や水分
(水蒸気)の多い揚げたてのコロッケ、フライドチキン
等の調理済食品を包装する用紙に関する上記のような問
題点を除去するためになされたもので、用紙に新たな樹
脂層を積層する等作業工程を増やすことなく、用紙の抄
造工程時に、必要な層にのみ薬剤を加えて抄紙すること
により、耐油性、耐水性を有し、通気性に優れ、かつ、
低コストな油分水分調整機能紙と該機能紙を用いた容器
を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の発明は、
少なくとも無サイズ層、耐水層、撥油層とから成る多層
抄き合わせ紙であって、内層に吸水・吸油性を有する無
サイズ層、中間層に耐水剤を内填した古紙パルプ層から
なる耐水層、外層に撥油剤を内填した撥油層を、それぞ
れ配置したことを特徴とする油分水分調整機能紙であ
る。
【0006】また、第2の発明は、前記無サイズ層と耐
水層の間に撥油層を設け、無サイズ層、撥油層、耐水
層、撥油層が順次配置されていることを特徴とする油分
水分調整機能紙である。
【0007】また、第3の発明は、前記耐水剤としてロ
ジン系樹脂を、前記撥油剤としてパーフルオロアルキル
リン酸塩を、それぞれ用いたことを特徴とする油分水分
調整機能紙である。
【0008】さらにまた、第4の発明は、前記油分水分
調整機能紙を、箱状容器としたことを特徴とする食品用
容器である。
【0009】上記のように本発明の油分水分調整機能紙
は、内層が水分(水滴)や油分、水蒸気を吸収透過する
無サイズ層、中間層が油分や水蒸気は吸収透過するが水
分(水滴)は吸収しにくい耐水層、外層が水蒸気は吸収
透過するが油分をはじく撥油層から構成されている。こ
のため、コロッケ、フライドチキン等の調理直後の食品
を該機能紙に接触した状態で収納すると、食品に付着し
ている水滴は中間層の内層寄りで保持され、また、食品
に付着している油分は撥油層の中間層寄りで保持される
ので、用紙の外表面に水滴や油分が広がることがなく、
外観上きれいな状態で収納できる。 さらに食品から発
生する湯気等の水蒸気は、用紙を透過して外部に抜けて
行き、用紙に水滴として残らないので食品に対して悪影
響を及ぼさない。なお、耐水層に脱色した古紙パルプを
使用すると、耐水層が油分を吸収して古紙パルプが透け
ても外観は見栄えが悪くならない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下実施例により本発明を詳細に
説明する。図1は本発明の油分水分調整機能紙の一実施
例を示す断面図である。
【0011】本発明の油分水分調整機能紙1は、内層1
0、中間層20、外層30を順次抄き合わせた多層構成
の抄き合わせ紙である。
【0012】内層10は、油分、水分、水蒸気を吸収透
過する耐水性を有する無サイズ層であって、バージンパ
ルプ100%からなる層で、単層に限定されるものでは
なく、2層、3層等の複層構成であっても構わない。内
層の吸水度は40〜100g/m2 ・min.、吸油度
は30g/m2 ・min.以上、または40g/m2
15min.以上であることが好ましい。なお、吸水度
および吸油度の測定はコッブ法(JIS P8140)
によった。吸水度が40g/m2 ・min.以下になる
と内容物から出た水分や水蒸気が容器内に溜まり、内容
物がふやけたり、べたついたりする。また、100g/
2 ・min.以上になると吸収される水分や水蒸気が
用紙内に多く保持(保水)された状態となり、用紙内部
がふやけたり、用紙の腰が弱くなったりする。また、吸
油度が30g/m2 ・min.以下、または40g/m
2 ・15min.以下になると、内容物から出た油分が
容器内に溜まり、内容物がべたつく。
【0013】中間層20は、油分、水蒸気は吸収透過
し、水滴は吸収しにくい耐水性を付与された古紙パルプ
を主体とする層であって、2層、3層等の複層で構成さ
れる。耐水性を付与するため、古紙パルプには、耐水剤
として、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂等を添加する。
古紙パルプに脱色した古紙パルプを使用すると、耐水層
が油分を吸収して古紙パルプが透けても外観は見栄えが
悪くならない。中間層の耐水度はステキヒト・サイズ度
で約2000秒以上(JIS P8122による)であ
ることが好ましい。
【0014】外層30は、水蒸気は透過し、油分を遮断
する撥油性を付与された層であって、バージンパルプを
主体とする層で、単層に限定されるものではなく、2
層、3層等の複層構成であっても構わない。撥油性を付
与するため、バージンパルプには、撥油剤としてパーフ
ルオロアルキルリン酸塩、アクリル系樹脂等を添加す
る。外層の耐油度はKIT 9以上(J.TAPPI
No.41による)であることが好ましい。
【0015】この油分水分調整機能紙は、一般に使用さ
れているパルパーや抄紙機を用いて抄紙することが可能
である。
【0016】
【実施例】以下に本発明の実施例をさらに具体的に説明
する。 〈実施例1〉バージンパルプ100%からなる無サイズ
層10を2層、ロジン系樹脂として、サイズパインN−
771(荒川化学工業株式会社製)を内填した脱色古紙
パルプを主体とする耐水層20を4層、パーフルオロア
ルキルリン酸塩として、アサヒガードAG−530(旭
硝子株式会社製)を内填したバージンパルプを主体とす
る撥油層30を2層、をこの順序で1層当たり坪量約5
0g/m2 で抄き合わせ、合計8層からなる坪量400
g/m2 の抄き合わせ紙を一般に使用されている抄紙機
を用いて抄紙し、油分水分調整機能紙1とした(図1参
照)。なお、この油分水分調整機能紙の無サイズ層の吸
水度は40〜100g/m2・min.(コッブ法、J
IS P8140による)、吸油度は30g/m2 ・m
in.以上、または40g/m2 ・15min.以上
(コッブ法、JIS P8140による)であり、耐水
層のステキヒト・サイズ度は約2000秒以上(JIS
P8122による)であり、また、撥油層の耐油度は
KIT 9以上(J.TAPPI No.41による)
であった。
【0017】こうして作製した油分水分調整機能紙で無
サイズ層が内表面を形成するようにして、図3に示す箱
状の容器50を製造し、内部に揚げたてのコロッケを5
個収納して、油の滲み状態、水滴の付着状態を観察し
た。その結果を表1に示す。
【0018】〈実施例2〉バージンパルプ100%から
なる無サイズ層10を1層、パーフルオロアルキルリン
酸塩として、アサヒガードAG−530(旭硝子株式会
社製)を内填したバージンパルプを主体とする撥油層3
0を1層、ロジン系樹脂として、サイズパインN−77
1(荒川化学工業株式会社製)を内填した脱色古紙パル
プを主体とする耐水層20を3層、パーフルオロアルキ
ルリン酸塩として、アサヒガードAG−530(旭硝子
株式会社製)を内填したバージンパルプを主体とする撥
油層30を1層、をこの順序で1層当たり坪量約67g
/m2 で抄き合わせ、合計6層からなる坪量400g/
2 の抄き合わせ紙を一般に使用されている抄紙機を用
いて抄紙し、油分水分調整機能紙2とした(図2参
照)。なお、この油分水分調整機能紙の無サイズ層の吸
水度、吸油度は実施例1と同じでそれぞれ40〜100
g/m2 ・min.、30g/m2 ・min.以上、ま
たは40g/m2 ・15min.以上であり、耐水層の
ステキヒト・サイズ度や撥油層の耐油度は実施例1と同
じでそれぞれ約2000秒以上、KIT 9以上であ
る。
【0019】こうして作製した油分水分調整機能紙で無
サイズ層が内表面を形成するようにして、図3に示す箱
状の容器50を製造し、内部に揚げたてのコロッケを5
個収納して、油の滲み状態、水滴の付着状態を観察し
た。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】本発明の油分水分調整機能紙、およびこ
の油分水分調整機能紙からなる容器は、内容物として加
温状態の調理食品を収納しても油の滲みは、用紙内面の
みで、外側面への油の滲みは認められなかった。同時に
容器の内側への水滴の付着が認められず、内容物が濡れ
て食感を低下させることがなかった。特に、撥油層を外
層と内層の2か所に設けた場合、内容物接触面の用紙内
面が油を吸収した後も、油による用紙の変色がほとんど
無く、非常にきれいであり見た目にも衛生的であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油分水分調整機能紙の一例を示す断面
説明図である。
【図2】本発明の油分水分調整機能紙の別の一例を示す
断面説明図である。
【図3】本発明の容器の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1‥‥油分水分調整機能紙 2‥‥油分水分調整機能紙 10‥‥無サイズ層 20‥‥耐水層 30‥‥撥油層 50‥‥箱状容器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B65D 81/24 B32B 27/00 B32B 29/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも無サイズ層、耐水層、撥油層と
    から成る多層抄き合わせ紙であって、 内層に吸水・吸油性を有する無サイズ層、中間層に耐水
    剤を内填した古紙パルプ層からなる耐水層、外層に撥油
    剤を内填した撥油層を、それぞれ配置したことを特徴と
    する油分水分調整機能紙。
  2. 【請求項2】前記無サイズ層と耐水層の間に撥油層を設
    け、無サイズ層、撥油層、耐水層、撥油層が順次配置さ
    れていることを特徴とする請求項1記載の油分水分調整
    機能紙。
  3. 【請求項3】前記耐水剤としてロジン系樹脂を、前記撥
    油剤としてパーフルオロアルキルリン酸塩を、それぞれ
    用いたことを特徴とする請求項1、2記載の油分水分調
    整機能紙。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3記載の油分水分調整機能
    紙を、箱状容器としたことを特徴とする食品用容器。
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