JP3202738B2 - 破断面の平滑性に優れた熱間鍛造用非調質鋼 - Google Patents

破断面の平滑性に優れた熱間鍛造用非調質鋼

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車や建設機械
部品等、熱間鍛造により一体成形した後、機械加工を施
し、その後、2個以上の部品に破断分離して利用される
破断面の平滑性に優れた熱間鍛造用非調質鋼に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来の技術として、2個以上の部品を接
合することにより一体化して用いられる部品は、熱間鍛
造により個々に成形して機械加工を施した後、接合され
るか、または熱間鍛造により最終形状に一体成形した
後、切断により分離し、機械加工を施した後、接合され
る。
【0003】近年、これらの機械部品は製造コスト低減
を目的とした、省エネルギー化、省工程化を達成するた
めに、熱間鍛造により一体部品として製造した後、2個
以上の部品に強制的に破断分離するという製造方法が考
え出された。しかしながら、強制破断分離された部品は
最終的には破面同士を接合することにより、元の形状に
復帰させるため、破断面は平滑破面になることが要求さ
れる。破断面を平滑破面にする手段としては、低温にて
強制破断分離を行う方法や硬さを上昇させることにより
靭性を低下させる方法が考え出されているが、低温にて
強制破断分離を行う方法は製造コストを上昇させ、かつ
生産性が低下するという問題がある。一方、鋼の硬さを
上昇させることにより靭性を低下させる方法は切削性が
低下するという問題があり、また破断面の平滑性も十分
とは言えない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、化学成分を調整することにより、鋼の硬さ
に関係することなく、25℃以下の強制破断分離におい
て平滑な破断面が得られる、破断面の平滑性に優れた熱
間鍛造用非調質鋼を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意研究
を重ねた結果、BNは粒界に析出することにより、粒界
破壊を促進させる効果があることを見出した。この効果
を発揮させるために、B及びNの添加量を調整し、かつ
Bよりも優先的にNと結合してBNの形成を抑制するA
l及びTiの含有量を極力低減することにより、BNの
形成を促進させ、25℃以下の強制破断分離において9
0%以上の脆性破面率(破断面の全面積に対する脆性破
壊が生じた面積の割合)を有する破断面が形成され、破
断面の平滑性が向上する手段を見出した。
【0006】具体的な手段は、重量パーセントで、 C=0.10〜0.90%、 Si=0.05〜0.50%、 Mn=0.20〜2.50%、 P=0.005〜0.050%、 Cr=0.01〜2.00%、 B=0.0020〜0.0100%、 Al=0.035%以下、 Ti=0.005%未満、 N=0.0050〜0.0200%、 を含有し、残部Fe並びに不可避的不純物元素からなる
ことを特徴とする破断面の平滑性に優れた熱間鍛造用非
調質鋼を製造することである。
【0007】更に、強度を向上する元素として重量パー
セントで、 Mo=0.10〜0.50%、 V=0.01〜0.10%、 Ni=0.01〜0.50%、 のうちから1種または2種以上を含有していることを特
徴とする破断面の平滑性に優れた熱間鍛造用非調質鋼を
製造することである。
【0008】更に、被削性を向上する元素で、かつ、疲
労特性を著しく阻害しない元素として重量パーセント
で、 S=0.005〜0.100%、 Pb=0.01〜0.09%、 Bi=0.04〜0.20%、 Te=0.002〜0.050%、 Zr=0.01〜0.20%、 Ca=0.0001〜0.0100%、 のうちから1種または2種以上を含有していることを特
徴とする破断面の平滑性に優れた熱間鍛造用非調質鋼を
製造することである。
【0009】次に本発明の上記化学成分について、その
限定理由を説明する。 C:0.10〜0.90wt% Cは強度を付与する元素である。その効果を発揮するた
めには、少なくとも0.10wt%以上の添加が必要で
ある。しかしながら、過剰な添加は熱間加工性及び被削
性を劣化させる。これを回避するためには上限を0.9
0wt%に限定する必要がある。
【0010】したがって、Cの添加量は0.10〜0.
90wt%の範囲とした。 Si:0.05〜0.50wt% Siは溶鋼の脱酸用として効果がある。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.05wt%以上の添加が
必要である。しかしながら、過剰な添加は熱間加工性及
び被削性を劣化させる。これを回避するためには上限を
0.50wt%に限定する必要がある。
【0011】したがって、Siの添加量は0.05〜
0.50wt%の範囲とした。 Mn:0.20〜2.50wt% Mnは強度を付与する元素である。その効果を発揮する
ためには、少なくとも0.20wt%以上の添加が必要
である。しかしながら、過剰な添加は被削性を劣化させ
る。これを回避するためには上限を2.50wt%に限
定する必要がある。
【0012】したがって、Mnの添加量は0.20〜
2.50wt%の範囲とした。 P:0.005〜0.050wt% Pはオーステナイト粒界に偏析して粒界を脆弱すること
により脆性破壊を促進させる。その効果を発揮するため
には、少なくとも0.005wt%以上の添加が必要で
ある。しかしながら、過剰な添加は熱間加工性や疲労強
度を低下させる。これを回避するためには上限を0.0
50wt%に限定する必要がある。
【0013】したがって、Pの添加量は0.005〜
0.050wt%の範囲とした。 Cr:0.01〜2.00wt% Crは強度を向上する元素である。その効果を発揮する
ためには、少なくとも0.01wt%以上の添加が必要
である。しかしながら、過剰な添加は被削性を劣化させ
る。これを回避するためには上限を2.00wt%に限
定する必要がある。
【0014】したがって、Crの添加量は0.01〜
2.00wt%の範囲とした。 B:0.0020〜0.0100wt% Bは本発明において最も重要な元素である。すなわち、
BはNと結合してBNを形成し、BNが粒界に析出する
ことにより脆性破壊を促進する。その効果を発揮するた
めには少なくとも0.0020wt%以上の添加が必要
である。しかしながら、過剰な添加は熱間加工性を劣化
させる。これを回避するためには上限を0.0100w
t%に限定する必要がある。
【0015】したがって、Bの添加量は0.0020〜
0.0100wt%の範囲とした。 Al:0.035wt%以下 AlはBよりも優先的にNと結合してAlNを形成し、
脆性破壊を促進するBNの形成を抑制する元素であり、
その含有量は低い方が望ましい。しかしながら、不可避
的不純物として含有しているAlの除去は製造上困難で
ある。
【0016】したがって、Alの含有量は0.035w
t%以下と限定した。 Ti:0.005wt%未満 TiはAlと同様にBよりも優先的にNと結合してTi
Nを形成し、脆性破壊を促進するBNの形成を抑制する
元素であり、その含有量は低い方が望ましい。しかしな
がら、不可避的不純物として含有しているTiの除去は
製造上困難である。
【0017】したがって、Tiの含有量は0.005w
t%未満と限定した。 N:0.0050〜0.0200wt% NはBと結合してBNを形成し、粒界に析出することに
より脆性破壊を促進する。その効果を発揮するためには
少なくとも0.0050wt%以上の添加が必要であ
る。しかしながら、過剰な添加は凝固時の鋼塊表面での
気泡の発生を招く。これを回避するためには上限を0.
0200wt%に限定する必要がある。
【0018】したがって、Nの添加量は0.0050〜
0.0200wt%の範囲とした。 Mo:0.01〜0.50wt% Moは強度を向上する元素である。その効果を発揮する
ためには、少なくとも0.01wt%以上の添加が必要
である。しかしながら、過剰な添加は被削性を劣化させ
る。これを回避するためには上限を0.50wt%以下
に限定する必要がある。
【0019】したがって、Moの添加量は0.01〜
0.50wt%の範囲とした。 V:0.01〜0.10wt% Vは強度を向上する元素である.その効果を発揮するた
めには、少なくとも0.01wt%以上の添加が必要で
ある。しかしながら、過剰な添加は被削性を劣化させ
る。これを回避するためには上限を0.10wt%に限
定する必要がある。
【0020】したがって、Vの添加量は0.01〜0.
10wt%の範囲とした。 Ni:0.01〜0.50wt% Niは強度を向上する元素である。その効果を発揮する
ためには、少なくとも0.01wt%以上の添加が必要
である。しかしながら、過剰な添加は被削性を劣化させ
る。これを回避するためには上限を0.50wt%に限
定する必要がある。
【0021】したがって、Niの添加量は0.01〜
0.50wt%の範囲とした。 S:0.005〜0.100wt% Sは大部分は硫化物系介在物として鋼中に存在し、被削
性の向上に有効な元素である。その効果を発揮するため
には、少なくとも0.005wt%以上の添加が必要で
ある。しかしながら、過剰な添加は熱間加工性及び疲労
強度の低下を招く要因となる。これを回避するためには
上限を0.100wt%に限定する必要がある。
【0022】したがって、Sの添加量は0.005〜
0.100wt%の範囲とした。 Pb:0.01〜0.09wt% PbはSと同様に、被削性の向上に有効な元素である.
その効果を発揮するためには、少なくとも0.01wt
%以上の添加が必要である。しかしながら、過剰な添加
は疲労強度の低下を招く要因となる。また、0.10w
t%以上ではPbの取扱い上、集塵装置、方法等の法的
な規制を受ける。これを回避するためには上限を0.0
9wt%に限定する必要がある。
【0023】したがって、Pbの添加量は0.01〜
0.09wt%の範囲とした。 Bi:0.04〜0.20wt% BiはSやPbと同様に、被削性の向上に有効な元素で
ある。その効果を発揮するためには、少なくとも0.0
4wt%以上の添加が必要である。しかしながら、過剰
な添加は疲労強度の低下を招く。これを回避するために
は上限を0.20wt%に限定する必要がある。
【0024】したがって、Biの添加量は0.04〜
0.20wt%の範囲とした。 Te:0.002〜0.050wt% Teは硫化物系酸化物と母相であるFeの界面エネルギ
ーを増加させ、その形状を紡錘形とし被削性を向上させ
る元素である。その効果を発揮するためには、少なくと
も0.002wt%以上の添加が必要である。しかしな
がら、過剰な添加は熱間加工性を劣化させる。これを回
避するためには上限を0.050wt%に限定する必要
がある。
【0025】したがって、Teの添加量は0.002〜
0.050wt%の範囲とした。 Zr:0.01〜0.20wt% Zrは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.01wt%以上の添加が
必要である。しかしながら、過剰な添加は疲労強度の低
下を招く。これを回避するためには上限を0.20wt
%に限定する必要がある。
【0026】したがって、Zrの添加量は0.01〜
0.20wt%の範囲とした。 Ca:0.0001〜0.0100wt% Caは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.0001wt%以上の添
加が必要である。しかしながら、過剰な添加は疲労強度
の低下を招く。これを回避するためには上限を0.01
00wt%に限定する必要がある。したがって、Caの
添加量は0.0001〜0.0100wt%の範囲とし
た。
【0027】
【発明の実施の形態】数多くの実験による検証を積み重
ねた結果の一例を以下に示す。表1には、破断面の平滑
性を評価するために使用した発明鋼と比較鋼の化学成分
を示す。ここで、発明鋼No.1からNo.は請求項
1に該当する発明鋼、発明鋼No.6からNo.は請
求項2に該当する発明鋼、発明鋼No.からNo.
は請求項3に該当する発明鋼である。発明鋼No.1
からNo.13は実験室における高周波真空溶解炉によ
り溶製し、比較鋼No.AからNo.Fは生産炉である
アーク式電気炉により溶製した。これらの鋼を1200
℃に加熱し、30mmφに鍛伸後、シャルピー衝撃試験
片(JIS4号2mmVノッチ)を作製した。
【0028】
【表1】
【0029】次に25℃の室温においてシャルピー衝撃
試験を行い、その後、試験片の破断面の脆性破面率及び
鋼中においてBN化合物として存在するinsol−B
の含有量を調査した。その結果を表2に示す。発明鋼の
脆性破面率は比較鋼よりも高く、破断面の平滑性が優れ
ていることが確認された。また、鋼中に含有しているB
はBN化合物として粒界に析出して存在するinsol
−Bの状態で存在することが確認された。以上説明した
研究成果から、化学成分を調整することにより、鋼の硬
さに関係することなく、優れた破断面の平滑性が得られ
る具体的な手法が発明された。
【0030】
【表2】
【0031】次に、実施例を挙げて、本発明を詳細に説
明する。表3には、以上の知見を元にして実炉溶製した
発明鋼と比較鋼の化学成分を示す。
【0032】
【表3】
【0033】次にこれらの発明鋼及び比較鋼において、
図1に示す実部品(コネクティングロッド)を熱間鍛造
により成形し、機械加工後、図1に示すA−A’の箇所
にて強制破断分離を行った。表4に強制破断分離を行っ
た図1のA−A’断面の脆性破面率を示す。発明鋼の脆
性破面率は比較鋼よりも高く、破断面の平滑性に優れて
いることが確認された。
【0034】
【表4】
【0035】
【発明の効果】以上のように、本発明により、鋼の硬さ
に関係することなく、25℃以下の強制破断分離におい
て優れた破断面の平滑性を得ることが可能となり、破断
分離を利用して部品を製造する産業界において、製造コ
ストの低減と信頼性の向上に広く貢献することが挙げら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に適用したコネクティングロッ
ドの概略図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−111160(JP,A) 特開 平6−10091(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 1/00 - 45/10

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重パーセントで、 C=0.10〜0.90%、 Si=0.05〜0.50%、 Mn=0.20〜2.50%、 P=0.005〜0.050%、 Cr=0.01〜2.00%、 B=0.0020〜0.0100%、 Al=0.035%以下、 Ti=0.005%未満、 N=0.0050〜0.0200%、 を含有し、残部Fe並びに不可避的不純物元素からなる
    ことを特徴とする破断面の平滑性に優れた熱間鍛造用非
    調質鋼。
  2. 【請求項2】 強度を向上する元素として重量パーセン
    トで、 Mo=0.10〜0.50%、 V=0.01〜0.10%、 Ni=0.01〜0.50%、 のうちから1種または2種以上を含有していることを特
    徴とする請求項1に記載された破断面の平滑性に優れた
    熱間鍛造用非調質鋼。
  3. 【請求項3】 被削性を向上する元素で、かつ、疲労特
    性を著しく阻害しない元素として重量パーセントで、 S=0.005〜0.100%、 Pb=0.01〜0.09%、 Bi=0.04〜0.20%、 Te=0.002〜0.050%、 Zr=0.01〜0.20%、 Ca=0.0001〜0.0100%、 のうちから1種または2種以上を含有していることを特
    徴とする請求項1または請求項2に記載された破断面の
    平滑性に優れた熱間鍛造用非調質鋼。
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