JP3199763B2 - 鎮痛消炎外用貼付剤 - Google Patents

鎮痛消炎外用貼付剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鎮痛消炎外用貼付剤、
さらに詳しくは、エマルジョン型粘着剤中に非相溶性成
分を配合したものを基剤とし、その基剤中にN,N'−ジ
メチルアセトアミドに溶解したピロキシカムを配合して
なる膏体を柔軟な支持体上に戴置してなることを特徴と
する鎮痛消炎外用貼付剤に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決すべき課題】ピロキシカ
ム(化学名: 4−ヒドロキシ−2−メチル−N−(2−ピ
リジル)−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキ
シアミド−1,1−ジオキシド)は非ステロイド系鎮痛消
炎剤であって、現在経口投与剤としてカプセル剤、外用
剤として軟膏が臨床適用されている。しかし、このピロ
キシカムも、他の非ステロイド系鎮痛消炎剤と同様、経
口投与の場合には消化管障害等の副作用が、また軟膏の
場合は投与量の不正確さ、使用の煩雑さ等が問題となっ
ている。このため、ピロキシカムを定量投与でき副作用
を回避できる製剤として外用貼付剤が検討されている。
【0003】外用貼付剤としては、一般に、基剤中に多
量の水分を含むパップ剤および水分を含まないテープ剤
が知られている。パップ剤は多量の水分を含むと共に、
膏体の塗布量も多く、これにピロキシカムを配合する場
合は、充分な薬効を得るために高濃度のピロキシカムを
加える必要があり、製剤中でピロキシカムが再結晶を起
こすおそれがあり、また膏体内でのピロキシカムの移動
性が悪くなるなどの問題があって、ピロキシカムを有効
に利用することが困難である。
【0004】一方、テープ剤は、通常、粘着剤ポリマー
が強固な連続層を形成しており、この層中にピロキシカ
ムを高濃度で配合しても、層中でのピロキシカムの移動
性が悪く、充分な利用率が得られない問題がある。ピロ
キシカムのテープ剤として、ピロキシカムをアルカリ剤
に溶解して基剤中に配合し、ピロキシカムの放出性を改
良することが提案されている(特開昭63−15931
8号)。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ピロキシ
カムのさらに改良された外用貼付剤を得るべく鋭意研究
を重ねた結果、エマルジョン型粘着剤中に非相溶性成分
を配合してなる基剤に、N,N'−ジメチルアセトアミド
に溶解したピロキシカムを配合することにより、ピロキ
シカムの利用性に優れた外用貼付剤が得られることを知
り、本発明を完成した。
【0006】エマルジョン型粘着剤は使用前はポリマー
が界面活性剤に包まれた状態で水中に分散しており、塗
工、乾燥して水分を蒸発させてもポリマーの間隙には界
面活性剤が連続的に残存しているのが特徴である。この
界面活性剤が作っている間隙には粘着剤の粘着物性が保
てる程度に粘着ポリマーと非相溶性の成分を分散させる
ことが可能である。従って、通常の粘着剤中では低レベ
ルであった薬物の移動性が良好になり、薬物利用率を向
上させることができる。
【0007】本発明において用いられるエマルジョン型
粘着剤としては、アクリル系エマルジョン粘着剤、合成
ゴム系エマルジョン粘着剤、天然ゴム系エマルジョン粘
着剤などが挙げられ、これらの中から、所望の膏体の物
性に応じて、適切な粘着物性を持つものを1種または2
種以上組合せて使用することができる。アクリル系エマ
ルジョン粘着剤としてはニカゾール(日本カーバイド工
業)、プライマル(日本アクリル化学)、サイビノール(サ
イデン化学工業)などがある。合成ゴム系エマルジョン
粘着剤としてはラチボンド(シェル石油化学)、アルコン
AM(荒川化学工業)、スタロン(安原油脂工業)などがあ
る。天然ゴム系エマルジョン粘着剤としてはCL(セメ
ダイン株式会社)、ボンド(コニシ株式会社)、HMPB
ラテックス(加商株式会社)などがある。これら粘着剤の
配合量は、膏体成分の50〜95%(重量%、以下同
じ)、好ましくは60〜90%である。
【0008】本発明において用いられる非相溶性成分と
しては、グリセリン、ポリエチレングリコール、1,3
−ブタンジオール、プロピレングリコールなどの多価ア
ルコール類が挙げられ、特にグリセリンが好ましい。こ
れらの多価アルコール類は皮膚に対し適度の保湿効果を
持ち、貼付部位の角質を水和させることにより薬物の経
皮吸収性を高めることができる。これらの多価アルコー
ル類の配合量は膏体重量に対して5〜30%、好ましく
は10〜25%である。5%以下の場合、薬物の移動性
と保湿性を高める作用が期待できず、また30%以上に
なると多価アルコールが粘着剤からしみ出す結果、粘着
力が低下するなど好ましくない。
【0009】ピロキシカムは水および経皮吸収剤として
使用されている通常の溶媒にはほとんど溶解しないた
め、所望の薬効を得るためには溶解剤の使用が必要であ
る。本発明で用いられる溶解剤としてはN,N'−ジメチ
ルアセトアミドが挙げられる。N,N'−ジメチルアセト
アミドの配合量はピロキシカムを溶解させるために膏体
重量に対して1〜20%、好ましくは5〜15%であ
る。また、有効成分のピロキシカムの配合量は膏体重量
に対して0.5〜10%が好ましい。本発明の外用貼付
剤には、さらに、他の成分として、酸化チタン、カオリ
ン、酸化亜鉛等の顔料、ポリビニルアルコール、ポリビ
ニルピロリドン等の水溶性高分子化合物を配合してもよ
く、それにより粘着物性が改良される。
【0010】上記の配合からなる膏体を支持体上に戴置
して目的とする外用貼付剤を得るには、通常、該膏体を
剥離紙上に塗布し、乾燥後、柔軟な支持体と貼り合せた
のち、所望の大きさに裁断する。用いられる支持体とし
ては、通常のものがいずれも採用でき、例えば、ポリウ
レタンフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
塩化ビニル等のフィルム、織布、不織布およびこれらの
ラミネート加工品などが挙げられる。
【0011】
【実施例】本発明の外用貼付剤を以下の実施例、実験例
によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限
定されるものではない。なお、実施例中、部とは重量部
を意味する。
【0012】実施例1 アクリル系エマルジョン型粘着剤(プライマル: 日本ア
クリル化学)59部(固型分換算)に、撹拌しながら、ロ
ジン系エマルジョン樹脂(AM−1002: 荒川化学工
業)5部(固型分換算)、ポリビニルアルコール2部、酸
化チタン3部、グリセリン15部を加え混合撹拌する。
別に、ピロキシカム5部をN,N'−ジメチルアセトアミ
ド10部、クロタミトン1部に加温して溶解させたの
ち、先のエマルジョン混液と合せ、混合撹拌する。この
混合液を乾燥後の重量が100g/m2になるように剥離紙
上に塗布し、乾燥後、ポリウレタンフィルムと貼り合
せ、ついで所望の大きさに裁断して本発明の製剤を得
る。
【0013】実施例2〜4および比較例1〜3 上記実施例1と同様にして、表1に示す成分および配合
量にて製剤を得る。なお、表1には実施例1のものも合
せて示す。
【0014】
【表1】 成分1) 実施例 比較例 1 2 3 4 1 2 3 ピロキシカム 5 5 3 1 5 5 5 N,N−ジメチルアセトアミド 10 10 10 10 10 10 10 グリセリン 15 15 15 15 − − − アクリル系粘着剤 59 − 61 63 81 − 74 ロジン系粘着剤 5 − 5 5 − − 5 合成ゴム系粘着剤 − 20 − − − 252) − 石油樹脂系粘着剤 − 44 − − − 493) − 酸化チタン 3 3 3 3 3 − 3 クロタミトン 1 1 1 1 1 1 1 ポリビニルアルコール 2 2 2 2 − − 2液状ゴム − − − − − 10 − [注] 1)粘着剤はすべて固型分換算量である。 2)スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマ
ー(シェル化学TR−1107)(ホットメルト型粘着
剤) 3)脂環族炭化水素系石油樹脂(荒川化学アルコンM−
100)(ホットメルト型粘着剤)
【0015】なお、実施例1〜4、比較例3について
は、剥離紙上に、乾燥後の重量が100g/m2になるよ
うに塗布、乾燥後、ポリウレタンフィルムと貼り合せて
製剤を得る。比較例1は溶媒に酢酸エチルを用いたアク
リル系粘着剤(溶媒系粘着剤)を使用して同様の操作に
より比較製剤とする。比較例2はピロキシカム、N,N'
−ジメチルアセトアミド、クロタミトン以外の成分を約
150℃に加熱したニーダー中で加熱溶融したのち、ピ
ロキシカム、N,N'−ジメチルアセトアミド、クロタミ
トンの溶液を加え、さらに混合したのち、剥離紙上に1
00g/m2になるように塗布し、冷却後、ポリウレタン
フィルムと貼り合せて比較製剤を得る。
【0016】実験例1 ラット血中濃度測定 体重150g前後のwistar系雄性ラットの除毛腹部に、
3cm×4cmに裁断した製剤を貼付し、6時間、24時間
後に腹部大動脈から採血した。血液を遠心分離し、得ら
れた血漿中のピロキシカム濃度についてHPLCで測定
した。その結果を表2に示す(使用ラット数4匹での平
均値を示す)。
【0017】表2に示されるように、エマルジョン型粘
着剤に非相溶性成分としてグリセリンを配合した製剤は
配合しないものに比較して高い血漿中濃度を示した。
【0018】
【表2】 ラット血漿中濃度 試料 血漿中濃度(μg/ml) 貼付6時間後 貼付24時間後 実施例 1 22.2 ±5.78 10.4 ±7.37 〃 2 18.9 ±4.72 9.8 ±1.19 〃 3 16.1 ±2.79 10.7 ±3.85 〃 4 7.8 ±3.21 6.5 ±2.29 比較例 1 0.48±0.25 1.59±1.01 〃 2 0.19±0.12 0.48±0.52 〃 3 0.28±0.07 0.09±0.01
【0019】実験例2 ラットカラゲニン足蹠浮腫抑制
試験 体重150g前後のラットの片側後肢にマーカーを付
け、カラゲニンを注射して浮腫を起こさせたのち、通常
の方法により足容積を求めた。その後、2時間、4時間
目に、再度足容積を測定し、無処置コントロール群との
比較から抑制率を求めた。その結果を表3に示す(使用
ラット数10匹での平均値を示す)。
【0020】表3に示されるように、本発明の製剤は、
従来の製剤、非相溶性成分を含まない比較例に比べて高
い薬理効果を示した。
【0021】
【表3】 ラットカラゲニン足蹠浮腫抑制試験結果 試料 ピロキシカム 抑制率% 投与量 2時間 4時間 フェルデン軟膏1) 2.5mg 21.2 16.5 比較例 1 4.5 5.7 3.4 実施例 1 4.5 36.0 31.8 〃 3 2.7 27.0 25.3 〃 4 0.9 17.7 15.2実施例1(基剤)2) 0 −6.4 −10.7 1)0.5%ピロキシカム含有。 2)実施例1の処方からピロキシカムを除いて調製。
【0022】
【発明の効果】本発明の鎮痛消炎外用貼付剤は、ピロキ
シカムを高濃度に配合でき、かつその利用率が向上され
るため、副作用を抑えながら高い鎮痛、消炎効果が発揮
される。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリセリン、ポリエチレングリコール、
    1,3−ブタンジオール、およびプロピレングリコール
    から選ばれる1種または2種以上からなる非相溶性成分
    を配合したエマルジョン型粘着基剤に、N,N−ジメチ
    ルアセトアミドに溶解したピロキシカムを配合した膏体
    を支持体上に戴置してなることを特徴とする鎮痛消炎外
    用貼付剤。
  2. 【請求項2】 エマルジョン型粘着基剤が、アクリル系
    エマルジョン粘着剤、合成ゴム系エマルジョン粘着剤、
    および石油樹脂系エマルジョン粘着剤から選ばれる請求
    項1に記載の外用貼付剤。
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