JP3198807B2 - 強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金材およびその製造方法 - Google Patents

強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金材およびその製造方法

Info

Publication number
JP3198807B2
JP3198807B2 JP12754094A JP12754094A JP3198807B2 JP 3198807 B2 JP3198807 B2 JP 3198807B2 JP 12754094 A JP12754094 A JP 12754094A JP 12754094 A JP12754094 A JP 12754094A JP 3198807 B2 JP3198807 B2 JP 3198807B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
nickel
equivalent
age
corrosion resistance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP12754094A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07331368A (ja
Inventor
奨 平野
正晃 五十嵐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=14962544&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP3198807(B2) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP12754094A priority Critical patent/JP3198807B2/ja
Publication of JPH07331368A publication Critical patent/JPH07331368A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3198807B2 publication Critical patent/JP3198807B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、腐食環境下、特に硫化
水素、二酸化炭素および塩素イオンの1種または2種以
上を含む環境下などにおいて、良好な耐食性を有する時
効硬化型ニッケル基合金材に関する。
【0002】
【従来の技術】油井、化学工業および地熱発電などの構
造部材では、高強度で、かつ高耐食性が要求される。こ
こで問題となる腐食は主に、上述の環境下などにおける
孔食、隙間腐食、粒界腐食および応力腐食割れである。
【0003】従来、上記の用途に用いるものであって冷
間加工による強度上昇が図れない厚肉または特殊形状の
金属部材では、時効硬化型合金材が適用されてきた。
【0004】上記合金材のうち、時効硬化型ニッケル基
合金としては、Alloy 718(商品名:ASTM UNS No.N07718
)が最もよく使用されている。しかし、Alloy 718 は、
もともと高温材料として開発されたため、CとNの含有
量が高いものもあり、耐食性は十分とは言えない。
【0005】Alloy 718 について、高温環境での疲労特
性改善を目的として低C材にした報告(例えば、T.Bani
k 他:Proc.Superalloys 718,625 and Various Derivat
ives,TMS(1991),P.913〜924)もあるが、熱処理条件は耐
食性材料として適正化されていない。また、油井環境で
使用される材料を対象とするNACE MR0175 では Alloy71
8 の硬さの上限規制(HRC≦40) は定められているが、熱
処理条件については特に指定がなく、一般に高温用途材
に適用される 775〜800 ℃で6〜8時間の時効処理が施
されている。
【0006】高耐食時効硬化型ニッケル基合金としてAl
loy 725(商品名:UNS No.N07725)、Alloy 625 Plus (商
品名:UNS No.N07716)が知られているが、いずれも耐食
性と組織安定性を高めるため、Ni≧55%、Mo≧7%で高
価となる。
【0007】時効硬化型ニッケル基合金における耐食性
改善法として、Nb単独添加系 (特公昭63−1387号公報)
、Nb−Al複合添加系 (特公平1−14992 号公報) およ
びTi、Nb、Al複合添加系 (特公平5−40011 号公報) が
開示されてるいが、 0.2%耐力が 825MPa(120ksi) 以
上を満足する時効処理条件は、実質的に20時間以上であ
って製造上経済的でない。さらに、特公平5−40011 号
公報に示されるニッケル基合金ではMn添加を必須として
いるが、溶ニッケル合金中や溶鋼中のMnは蒸気圧が高
く、この種の合金の製造に通常適用されるVIM( 真空
誘導溶解 )やVAR( 真空アーク再溶解 )のような真空
溶解においては特別な注意を要する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、硫化
水素などを含む前述の腐食環境下であって、特に従来の
Alloy 718 の耐食性では不十分であるが、高価なAlloy
725 、Alloy 625 Plusを使用するには及ばない腐食環境
下において用いるのに好適であり、しかも大幅な製造コ
ストアップを招かない時効硬化型ニッケル基合金材とそ
の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Alloy 71
8 を基本組成とし、強度と耐食性に及ぼす微量成分と熱
処理条件の影響について研究を行い、大幅な製造コスト
アップなしに耐食性を著しく向上させることが可能な条
件を見いだした。
【0010】本発明の要旨は、下記の (1)および(2) の
時効硬化型ニッケル基合金材と (3)および(4) のその製
造方法にある。
【0011】(1)重量%で、Ni:48〜55%、Cr:17〜25
%、Ti: 0.5〜2.5 %、Nb:4〜6%、Al: 0.3〜0.8
%およびMo単独またはMo+W: 2.5%≦〔Mo+(1/2)
W〕≦5%を含有し、更にB:0〜0.01%およびCu:0
〜2%の1種以上を含み、残部がFeおよび不可避不純物
からなり、不純物中のCは0.01%以下、Nは0.01%以
下、Siは 0.3%以下、Mnは 0.3%以下、Pは 0.015%以
下およびSは 0.005%以下であり、結晶粒界において金
属間化合物および炭化物の生成が防止されている組織を
有する強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金
材。
【0012】(2)上記(1) の成分において、かつ下記式
で求められるTi当量と、下記式で求められるR値と
の関係が下記式またはを満足し、結晶粒界において
金属間化合物および炭化物の生成が防止されている組織
を有する強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合
金材。
【0013】 Ti当量=Ti(%) +0.52Nb(%) ・・・・・・・・・・・・・・・ R= 2.3〔C(%) +N(%) 〕+65〔C(%) +N(%) 〕2 ・・・ Ti当量≦3.5 のとき、R≦(0.02×Ti当量)・・・・・・・・ Ti当量>3.5 のとき、R≦0.07・・・・・・・・・・・・・・ (3)上記(1) の成分の素材ニッケル基合金を、 980〜108
0℃で1分〜2時間加熱保持した後、空冷以上の冷却速
度で室温まで冷却する溶体化処理を施し、次いで680 〜
730℃で5〜10時間加熱保持する時効処理を施し、結晶
粒界において金属間化合物および炭化物の生成が防止さ
れている組織とする強度と耐食性に優れた時効硬化型ニ
ッケル基合金材の製造方法。
【0014】(4)上記(1) の成分と、上記(2) の式で
求められるTi当量とを有する素材ニッケル基合金を、 9
80〜1080℃で1分〜2時間加熱保持した後、空冷以上の
冷却速度で室温まで冷却する溶体化処理を施し、次いで
680〜730 ℃で5〜10時間加熱保持する時効処理を施
し、前記式で求められるR値が前記式またはを満
足し、結晶粒界において金属間化合物および炭化物の生
成が防止されている組織とする強度と耐食性に優れた時
効硬化型ニッケル基合金材の製造方法。
【0015】上記の各ニッケル基合金材とその素材にお
いて、BおよびCuはいずれも無添加でもよい。積極的に
含有させる場合の下限は、Bで0.0005%、Cuで0.01%と
するのが望ましい。
【0016】前記式のR値は抽出残渣中のTi当量を意
味し、以下、RはR〔Ti〕eq. 、Ti当量は〔Ti〕eq. と
記す。
【0017】
【作用】まず、本発明のニッケル基合金材およびその製
造方法の対象となる素材合金の化学組成の限定理由を説
明する。%は重量%を意味する。
【0018】Ni:48〜55% Niは、γ’相やγ”相の構成元素であるばかりでなく、
CrおよびMoとの含有量のバランスによって、σ、μおよ
びLaves 相などの、延性、靱性および耐食性に対して好
ましくない金属間化合物の生成を抑制し、オーステナイ
ト基地を安定化させる効果を有する。これらの効果を得
るにはNi含有量は48%以上とする必要がある。一方、55
%を超えると耐水素割れ性が確保できなくなるため、Ni
含有量の上限は55%とした。
【0019】Cr:17〜25% CrはMoとともに耐食性を向上させる。この効果を得るに
はCr含有量は17%以上とする必要がある。一方、25%を
超えると熱間加工性が低下し、さらにσ、μおよびLave
s 相などの金属間化合物やM23C6 およびM6C などの炭化
物が生成しやすくなり、延性、靱性および耐食性を劣化
させる。
【0020】Ti: 0.4〜2.5 % Tiは主にγ’相として析出し、強度の上昇に寄与する。
Ti含有量が0.4 %未満ではこの効果が不十分である。一
方、2.5 %を超えるとγ’相の粗大化を促進し延性、靱
性を低下させる。
【0021】Nb:4〜6% Nbは、主にγ”相として析出し、強度の上昇に寄与する
とともに耐食性を向上させる。これらの効果はNb含有量
が4%以上で顕著となる。しかし、6%を超えるとσ、
μおよびLaves 相などの、延性、靱性および耐食性に対
して好ましくない金属間化合物が生成しやすくなる。
【0022】Al: 0.3〜0.8 % 脱酸剤として添加する。Alはまた、γ’相やγ”相の析
出を安定化させる。これらの効果はAl含有量が0.3 %未
満では不十分である。一方、0.8 %を超えると酸化物系
の介在物が増加し、耐食性を劣化させる。
【0023】Mo単独またはMo+W: 2.5%≦〔Mo+(1/
2) W〕≦5% MoはCrとの共存によって耐孔食性を向上させるため、必
らず添加しなければならない。この効果はMo含有量が2.
5 %以上で顕著となる。しかし、5%を超えると熱間加
工性が低下し、さらにσ、μおよびLaves 相などの金属
間化合物やM6Cなどの炭化物が生成しやすくなり、延
性、靱性および耐食性を劣化させる。よって、Moを単独
で含有させる場合の範囲は 2.5〜5%とした。
【0024】Moの一部をその2倍量のWで置換しても同
様の効果が得られる。よって、MoとWを複合添加する場
合の範囲は 2.5%≦〔Mo+(1/2) W〕≦5%とした。
【0025】C:0.01%以下 Cは、未固溶炭化物、特にNbCを増加させ、耐孔食性を
劣化させるばかりでなく、TiおよびNbが溶体化ままで析
出してしまうことにより、時効処理によって析出する
γ’相とγ”相の析出量が減少し、十分な硬化が得られ
ない。さらに、時効処理中にM23C6 およびM6C 型炭化物
の粒界析出を促進する。このため、C含有量は0.01%以
下とした。望ましいのは0.007 %以下である。
【0026】N:0.01%以下 Nは、未固溶窒化物、特にTiNを増加させ、耐孔食性を
劣化させるばかりでなく、TiおよびNbが溶体化ままで析
出してしまうことにより、時効処理によって析出する
γ’相とγ”相の析出量が減少し、十分な硬化が得られ
ない。このため、N含有量0.01%以下とした。望ましい
のは0.007 %以下である。
【0027】Si:0.3 %以下 脱酸剤として添加する。しかし、Si含有量が0.3 %を超
えると、σ相などの延性、靱性に対して好ましくない金
属間化合物が粒界に生成しやすくなる。望ましいのは0.
1 %以下である。
【0028】Mn:0.3 %以下 脱硫剤として添加する。しかし、Mn含有量が0.3 %を超
えると、酸化物系、硫化物系の介在物が増加し、耐孔食
性を劣化させる。
【0029】P:0.015 %以下 P含有量が0.015 %を超えると、粒界偏析により熱間加
工性を低下させる。また、耐食性も劣化させるため0.01
5 %以下とした。
【0030】S:0.005 %以下 S含有量が0.005 %を超えると、粒界偏析により熱間加
工性を低下させる。また、耐食性も劣化させるため 0.0
05%以下とした。
【0031】本発明のニッケル基合金材とその素材合金
では、更にBおよびCuの1種または2種を含有させるこ
とができる。いずれも無添加でもよい。
【0032】B:0〜0.01% Bは熱間加工性と靱性を向上させるので、必要に応じて
添加する。この目的で積極的に含有させる場合のB含有
量は、0.0005%以上とするのが望ましい。しかし、0.01
%を超えるとこれらの効果が飽和するため、B含有量の
上限は0.01%とした。
【0033】Cu:0〜2% Cuは耐食性皮膜の形成に寄与するので、必要に応じて添
加する。この目的で積極的に含有させる場合のCu含有量
は0.01%以上とするのが望ましい。しかし、2%を超え
ると強度に寄与するγ’相とγ”相の析出を妨げ、δ相
などの延性、靱性に好ましくない金属間化合物の粒界析
出を促進するため、Cu含有量の上限は2%とした。
【0034】本発明のニッケル基合金材の一つは、上記
の成分と結晶粒界において金属間化合物および炭化物の
生成が防止された組織とを有し、耐食性を向上させたも
のである。
【0035】本発明のニッケル基合金材の他の一つは、
さらに下記式で求められる〔Ti〕eq. と、下記式で
求められるR値、すなわちR〔Ti〕eq. との関係が、下
記式またはを満足するものである。
【0036】 〔Ti〕eq. =Ti(%) +0.52Nb(%) ・・・・・・・・・・・・・・・・ R〔Ti〕eq. =〔C(%) +N(%) 〕+65〔C(%) +N(%) 〕2 ・・・ 〔Ti〕eq. ≦3.5 のとき、R〔Ti〕eq. ≦(0.02×〔Ti〕eq. )・・ 〔Ti〕eq. >3.5 のとき、R〔Ti〕eq. ≦0.07・・・・・・・・・・ ここで、上記式は本発明における〔Ti〕eq. の定義に
相当するものであり、素材段階のニッケル基合金につい
ても同様に適用される。上記式のRは抽出残渣中のも
のであることを意味し、この式は溶体化後における未
固溶炭窒化物量の推定値を示すものでもある。
【0037】上記条件の限定理由を図1〜図5に基づい
て説明する。
【0038】まず、種々のCとNの含有量のニッケル基
合金について、溶体化ままでの未固溶炭窒化物量を推定
するため、抽出残渣を採取し残渣中のTiとNbの量を測定
したところ、表1および図1に示す結果を得た。
【0039】
【表1】
【0040】図1は、溶体化後のR〔Ti〕eq. と〔C〕
+〔N〕との関係を示す図である。
【0041】表1および図1に示すように、1次近似式
と2次近似式を用いてR〔Ti〕eq.と〔C〕+〔N〕と
の関係を回帰計算により求めたところ、図1中に示され
る二つの線を得た。二つの線のうち、フイッティング性
が高い破線で示される2次近似式を採用した。この式が
上記式である。
【0042】さらに、後述する時効処理温度条件を定め
るに先立ち、まず低C、低Nとした効果を確実に発揮さ
せるために後述する式における〔Ti〕eq. とR〔Ti〕
eq.との関係を定めることで、有効Ti、Nb量 (以下、E
〔Ti〕eq. と記す) を確保しておかなければならないの
である。
【0043】図2は、本発明の合金材におけるR〔Ti〕
eq. と〔Ti〕eq. との関係を示す図である。特に〔Ti〕
eq. ≦3.5 の合金では、もともと析出強化量が少ないた
め、同じTi、Nbの含有量であっても、強度(YS)を向
上させる観点から、E〔Ti〕eq. を確保する目的で、介
在物として析出するR〔Ti〕eq. を〔Ti〕eq. の2%以
下にし、一方、〔Ti〕eq. >3.5 の合金では、未固溶炭
窒化物量を抑制し粒界に炭化物が析出しないようにする
目的で、R〔Ti〕eq. ≦0.07とするのがよい。
【0044】すなわち、前記式の〔Ti〕eq. と前記式
で求められる抽出残渣中の推定未固溶炭窒化物量を表
すR〔Ti〕eq. との関係が、特に下記の式およびを
満足する合金に、後述する熱処理を施すことで、優れた
延性、靱性とともに耐食性も付与することができる。
【0045】 〔Ti〕eq. ≦3.5 のとき、R〔Ti〕eq. ≦(0.02×〔Ti〕eq. )・・ 〔Ti〕eq. >3.5 のとき、R〔Ti〕eq. ≦0.07・・・・・・・・・・ さらに、種々のCとNの含有量のニッケル基合金を時効
処理して、その組成毎に2つの試験片をJIS G0578 に規
定されている溶液 (6%FeCl3)中に50℃で24時間浸漬し
た後、孔食発生の有無を観察して図3を得た。
【0046】図3は、孔食発生率に及ぼすR〔Ti〕eq.
と〔C〕+〔N〕との関係を示す図である。図3からわ
かるように、高C、高Nの場合には耐孔食性が劣化す
る。これは未固溶の介在物が増加するためであり、延性
と靱性も低下する。
【0047】図1および図3の結果から、耐孔食性に優
れる合金材を得るという本発明の目的の一つを達成する
ためにも、〔Ti〕eq. とR〔Ti〕eq. との関係を明らか
にする必要があることがわかる。
【0048】図4は、CとNの含有量が異なる2種類の
合金 (後述する実施例、表2の No.1、6の合金) に対
して、 650〜800 ℃×8hACの時効処理を施したとき
の強度(YS)、硬さ、靱性およびASTM A262 Practice
Bによる粒界腐食減量を示す図である。これらの結果に
よれば、CとNの含有量を共に低減させると、γ’相と
γ”相の析出強化に寄与する有効Ti、Nb量 (E〔Ti〕e
q. ) を増加させるので同一条件で時効処理しても強度
(YS)が約100 MPa 程度増加する上に、靱性( 吸収
エネルギー )も飛躍的に向上する。例えば、本発明範囲
の条件では表2の合金No.1は所定の高強度(YS≧825
MPa)と靱性も60J以上を同時に満足し、かつNACEの硬
度上限(HRC≦40)を超えることなく、耐粒界腐食性
も極めて優れている。一方、従来合金(表2の合金No.
6)では、強度、靱性および耐粒界腐食性を同時に満足
するものは得られない。
【0049】上記の有効Ti、Nb量(E〔Ti〕eq. )は、
次式で求められる。
【0050】 E〔Ti〕eq. =〔Ti〕eq. −R〔Ti〕eq. ・・・・・ この強度、靱性および耐粒界腐食性が向上する理由を、
図5に基づいて説明する。
【0051】図5は時効処理条件によるδ相とM6C との
析出領域を示す図である。CとNの含有量を共に低減さ
せ、E〔Ti〕eq. を増加させた場合、δ相と炭化物M6C
の析出曲線は図中の実線となる。この場合、従来の条件
はδ相の析出領域に位置し、粒界にはδ相が容易に析出
することになり、強度、靱性および耐粒界腐食性の点で
良好な結果は得られない。しかし、上記の本発明の条件
を満たす場合には、炭化物M6C とδ相の析出はともに起
こらず、かつ式で求められるE〔Ti〕eq. が増加して
いるため、強度、靱性および耐粒界腐食性の全てを兼ね
備えることが可能となる。
【0052】因みに従来の高C、高Nの合金において
も、本発明で定める条件はδ相とMCの析出域(図5
中の破線)外であるが、E〔Ti〕eq. が低いため、強
度および/または靱性が不十分であり、かつ耐粒界腐食
性も必ずしも良好ではない。
【0053】次に、製造工程と処理条件の限定理由につ
いて説明する。
【0054】素材ニッケル基合金の溶製は、常法に従い
VIM(真空誘導溶解)、VAR(真空アーク再溶解な
どにより行うのが望ましい。その後、必要により熱間鍛
造、熱間加工(圧延、押出しなど)、冷間加工などによ
り製品形状とする。
【0055】本発明の製造方法では、上述の加工後の素
材ニッケル基合金を、 980〜1080℃で1分〜2時間加熱
保持した後、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却する溶
体化処理を施し、次いで 680〜730 ℃で5〜10時間加熱
保持する時効処理を施す。
【0056】溶体化条件:時効処理によりγ’相とγ”
相を有効に析出させるため、適切な溶体化処理が必要で
ある。溶体化温度が 980℃未満ではδ相やLaves 相の析
出の恐れがある。
【0057】一方、1080℃を超えると結晶粒が粗大化
し、延性、靱性を損ねる。
【0058】保持時間は、析出物を完全固溶させ金属間
化合物および炭化物が結晶粒界に存在しないようにする
ため、1分以上が必要である。一方、結晶粒度の目標を
ASTMGS No.≦3とするため、保持時間は2時間以下とし
た。保持後の冷却条件は、空冷以上の冷却速度で室温ま
で冷却して金属間化合物や炭化物が粒界に析出するのを
防止できる条件としなければならない。特に上記析出物
が析出しやすい 980〜730 ℃の間の冷却速度は10℃/分
以上とするのが望ましい。
【0059】時効処理条件:本発明の時効硬化型ニッケ
ル基合金材では、0.2 %耐力が825 MPa(120 ksi)以上
を満足させるのが望ましい。この目標特性を達成するた
め、CとNの含有量を低値に抑制し、析出強化に寄与す
る有効Ti、Nb量を増加させているので、通常予想される
よりも、δ相の粒界析出ノーズが短時間側にシフトして
いる。したがって、図5に示すように、時効処理温度は
析出ノーズの内側となる 775〜800 ℃の高温側を避け、
680〜730 ℃の温度範囲とした。
【0060】時効時間が5時間未満では十分な強度が得
られない。一方、10時間を超えると加熱コストが嵩むば
かりでなく、γ’相とγ”相が粗大化し、延性と靱性を
低下させる。その上、金属間化合物や炭化物が粒界に析
出し、延性、靱性および耐食性を劣化させる。
【0061】
【実施例】
<供試材>表2に示す組成の合金を製造し、熱間鍛伸で
直径50mmφの丸棒にした。
【0062】
【表2】
【0063】<試験法>組織観察では、粒度判定および
透過型電子顕微鏡により粒界析出物の同定を行った。機
械的性質では、直径6mmφ×30mmGLの試験片による室温
引張試験、5mm×10mm−2mmVノッチの試験片による0
℃のシャルピー衝撃試験および硬さ試験(HRC)を行
った。耐食性試験は下記の方法で行い、孔食、粒界腐
食、硫化水素中での応力腐食割れを評価した。
【0064】孔食試験では、JIS G0578 に規定されてい
る溶液 (6%FeCl3)に50℃で24時間浸漬後、孔食発生の
有無を観察した。粒界腐食試験では、ASTM A262 Practi
ce Bに記載されている溶液〔 2.5%Fe2(SO4)3 +50%H2
SO4 〕を沸騰させ 120時間浸漬後、腐食減量を測定し
た。応力腐食割れ試験では、4点曲げ試験片に0.2 %耐
力の100 %の応力を負荷し、25%NaCl+ 0.5%CH3COOH
+8atmH2S+1g/リットルS(硫黄)の溶液に 180℃で
14日間浸漬後、割れの有無を確認した。
【0065】(試験1)1025℃×5分WQで溶体化後 700
℃×8hAC の時効処理を施し、粒界析出物の同定、機械
試験および耐食性試験を行った。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】表3から明らかなように、本発明で定める
条件で製造された合金材は、強度と靱性を損ねることな
く、優れた耐食性を維持できることがわかる。
【0068】(試験2)供試材No.1に表4に示す溶体化
条件と、表5に示す時効処理条件とを適宜組み合わせて
処理した。表6に試験結果を示す。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】表6から明らかなように、本発明で定める
条件で製造された合金材は、強度と靱性を損ねることな
く、優れた耐食性を維持できることがわかる。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、優れた強度、延性、靱
性および耐食性を有する時効硬化型ニッケル基合金材を
得ることができる。この合金材は、特に結晶粒界に金属
間化合物および炭化物が存在していないので高耐食性を
有し、油井、化学工業、地熱発電などの硫化水素、二酸
化炭素および塩素イオンを含む環境下で用いる構造部材
用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】回帰計算で得られた溶体化後のR〔Ti〕eq. と
〔C〕+〔N〕との関係を示す図である。
【図2】本発明の合金材におけるR〔Ti〕eq. と〔Ti〕
eq. との関係を示す図である。
【図3】孔食発生率に及ぼす溶体化後のR〔Ti〕eq. と
〔C〕+〔N〕との関係を示す図である。
【図4】ニッケル基合金材の特性に及ぼす時効処理条件
の影響を示す図である。
【図5】時効処理条件によるδ相とM6C との析出領域を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 641 C22F 1/00 641B 682 682 691 691B 691C (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/00 - 19/05 C22F 1/10

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Ni:48〜55%、Cr:17〜25%、
    Ti: 0.5〜2.5 %、Nb:4〜6%、Al: 0.3〜0.8 %お
    よびMo単独またはMo+W: 2.5%≦〔Mo+(1/2) W〕≦
    5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    不純物中のCは0.01%以下、Nは0.01%以下、Siは 0.3
    %以下、Mnは 0.3%以下、Pは 0.015%以下およびSは
    0.005%以下であり、結晶粒界において金属間化合物お
    よび炭化物の生成が防止されている組織を有することを
    特徴とする強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基
    合金材。
  2. 【請求項2】重量%で、Ni:48〜55%、Cr:17〜25%、
    Ti: 0.5〜2.5 %、Nb:4〜6%、Al: 0.3〜0.8 %お
    よびMo単独またはMo+W: 2.5%≦〔Mo+(1/2) W〕≦
    5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    不純物中のCは0.01%以下、Nは0.01%以下、Siは 0.3
    %以下、Mnは 0.3%以下、Pは 0.015%以下およびSは
    0.005%以下であり、かつ下記式で求められるTi当量
    と、下記式で求められるR値との関係が下記式また
    はを満足し、結晶粒界において金属間化合物および炭
    化物の生成が防止されている組織を有することを特徴と
    する強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金
    材。 Ti当量=Ti(%) +0.52Nb(%) ・・・・・・・・・・・・・・・ R= 2.3〔C(%) +N(%) 〕+65〔C(%) +N(%) 〕2 ・・・ Ti当量≦3.5 のとき、R≦(0.02×Ti当量)・・・・・・・・ Ti当量>3.5 のとき、R≦0.07・・・・・・・・・・・・・・
  3. 【請求項3】合金成分として更に0.0005〜0.01重量%の
    Bを含む請求項1または2に記載の時効硬化型ニッケル
    基合金材
  4. 【請求項4】合金成分として更に0.01〜2%のCuを含む
    請求項1から3までのいずれかに記載の時効硬化型ニッ
    ケル基合金材
  5. 【請求項5】重量%で、Ni:48〜55%、Cr:17〜25%、
    Ti: 0.5〜2.5 %、Nb:4〜6%、Al: 0.3〜0.8 %お
    よびMo単独またはMo+W: 2.5%≦〔Mo+(1/2) W〕≦
    5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    不純物中のCは0.01%以下、Nは0.01%以下、Siは 0.3
    %以下、Mnは 0.3%以下、Pは 0.015%以下およびSは
    0.005%以下である素材ニッケル基合金を、 980〜1080
    ℃で1分〜2時間加熱保持した後、空冷以上の冷却速度
    で室温まで冷却する溶体化処理を施し、次いで680〜730
    ℃で5〜10時間加熱保持する時効処理を施し、結晶粒
    界において金属間化合物および炭化物の生成が防止され
    ている組織とすることを特徴とする強度と耐食性に優れ
    た時効硬化型ニッケル基合金材の製造方法。
  6. 【請求項6】重量%で、Ni:48〜55%、Cr:17〜25%、
    Ti: 0.5〜2.5 %、Nb:4〜6%、Al: 0.3〜0.8 %お
    よびMo単独またはMo+W: 2.5%≦〔Mo+(1/2) W〕≦
    5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    不純物中のCは0.01%以下、Nは0.01%以下、Siは 0.3
    %以下、Mnは 0.3%以下、Pは 0.015%以下およびSは
    0.005%以下であり、かつ下記式で求められるTi当量
    を有する素材ニッケル基合金を、 980〜1080℃で1分〜
    2時間加熱保持した後、空冷以上の冷却速度で室温まで
    冷却する溶体化処理を施し、次いで 680〜730 ℃で5〜
    10時間加熱保持する時効処理を施し、下記式で求めら
    れるR値が下記式またはを満足し、結晶粒界におい
    て金属間化合物および炭化物の生成が防止されている組
    織とすることを特徴とする強度と耐食性に優れた時効硬
    化型ニッケル基合金材の製造方法。 Ti当量=Ti(%) +0.52Nb(%) ・・・・・・・・・・・・・・・ R= 2.3〔C(%) +N(%) 〕+65〔C(%) +N(%) 〕2 ・・・ Ti当量≦3.5 のとき、R≦(0.02×Ti当量)・・・・・・・・ Ti当量>3.5 のとき、R≦0.07・・・・・・・・・・・・・・
  7. 【請求項7】素材ニッケル基合金が合金成分として更に
    0.0005〜0.01重量%のBを含む請求項5または6に記載
    の時効硬化型ニッケル基合金材の製造方法
  8. 【請求項8】素材ニッケル基合金が合金成分として更に
    0.01〜2%のCuを含む請求項5から7までのいずれかに
    記載の時効硬化型ニッケル基合金材の製造方法
JP12754094A 1994-06-09 1994-06-09 強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金材およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3198807B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12754094A JP3198807B2 (ja) 1994-06-09 1994-06-09 強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12754094A JP3198807B2 (ja) 1994-06-09 1994-06-09 強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金材およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07331368A JPH07331368A (ja) 1995-12-19
JP3198807B2 true JP3198807B2 (ja) 2001-08-13

Family

ID=14962544

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12754094A Expired - Fee Related JP3198807B2 (ja) 1994-06-09 1994-06-09 強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3198807B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2132349B1 (en) 2007-03-09 2015-07-08 Federal-Mogul Corporation Metal gasket
RU2010125217A (ru) 2007-11-19 2011-12-27 Хантингтон Эллойз Корпорейшн (Us) Ультравысокопрочный сплав для жестких условий добычи нефти и газа и способ его получения
JP2011157566A (ja) * 2010-01-29 2011-08-18 Global Nuclear Fuel-Japan Co Ltd Ni基合金の製造方法および原子燃料集合体の製造方法
US10253382B2 (en) * 2012-06-11 2019-04-09 Huntington Alloys Corporation High-strength corrosion-resistant tubing for oil and gas completion and drilling applications, and process for manufacturing thereof
JP6249102B2 (ja) 2014-07-23 2017-12-20 株式会社Ihi Ni合金部品の製造方法
CN115449725B (zh) * 2022-08-10 2023-07-11 四川英拓金属材料有限公司 一种提高镍基高温合金材料冲击韧性的热处理方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60110856A (ja) * 1983-11-21 1985-06-17 Sumitomo Metal Ind Ltd 析出強化型ニッケル基合金の製造法
JP2554049B2 (ja) * 1986-01-20 1996-11-13 三菱重工業株式会社 Ni基合金及びその製造法
JPH0633206A (ja) * 1992-07-14 1994-02-08 Toshiba Corp Ni基合金の熱処理方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07331368A (ja) 1995-12-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0132055B1 (en) Precipitation-hardening nickel-base alloy and method of producing same
JP6336367B2 (ja) 過酷なオイル及びガス環境用の超高強度合金及び製造方法
JP6304460B1 (ja) 油井用高強度ステンレス継目無鋼管およびその製造方法
JP2500162B2 (ja) 耐食性に優れた高強度二相ステンレス鋼
JP5225855B2 (ja) オイルパッチ用途のための高強度耐食性合金およびその製造方法
KR20050044557A (ko) 슈퍼 오스테나이트계 스테인레스강
KR20170020483A (ko) 니켈-크롬-철-몰리브데늄 부식 저항성 합금 및 제조 물품 및 그 제조 방법
KR20090078813A (ko) 듀플렉스 스테인리스 강 합금 및 이 합금의 용도
JP3198807B2 (ja) 強度と耐食性に優れた時効硬化型ニッケル基合金材およびその製造方法
JPH0114992B2 (ja)
JPS6199660A (ja) ラインパイプ用高強度溶接鋼管
JP2819906B2 (ja) 室温および高温強度に優れた工具用Ni基合金
JP3470418B2 (ja) 耐海水腐食性と耐硫化水素腐食性に優れた高強度オーステナイト合金
JPH0148345B2 (ja)
JPS631387B2 (ja)
JPH10245656A (ja) 冷鍛性の優れたマルテンサイト系ステンレス鋼
JP3779043B2 (ja) 二相ステンレス鋼
JP5136174B2 (ja) 耐候性、耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト用鋼
JP2833385B2 (ja) 耐食オーステナイト系Fe基合金
JPH05255788A (ja) 耐水素脆化高Ni基合金およびその製造方法
JPS61223155A (ja) 高耐食性Ni基合金およびその製造法
JPH0931604A (ja) ねじり強度特性に優れた高耐食ステンレス鋼
JPS6354766B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090615

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100615

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees