JP3196990B2 - 圧延機におけるミル剛性の調整方法 - Google Patents

圧延機におけるミル剛性の調整方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、一般的には鉄鋼及び
非鉄金属などの板圧延において、ウエッジ,曲がり,蛇
行などを防止するため、圧延ロールにおける左右(駆動
側と作業側)のミル剛性の非対称性を調整する調整方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、板圧延における蛇行や曲がりの
発生原因となる左右の非対称要因には種々あるが、おお
よそ次の四つの要因に大別することができる。そして、
これら各々の要因別に左右非対称性を調整することによ
って、圧延板の曲がりや蛇行,ウエッジの発生を防止
し、幅方向の板厚分布が左右対称である良質の製品を製
造することができる。 (1). ウエッジ,曲がり,温度ムラその他の圧延素材の
左右非対称性 (2). 張力,潤滑,板進路その他の圧延条件の左右非対
称性 (3). 圧延機のロールギャップ設定の左右非対称性 (4). 圧延機のミル剛性特性及びミル伸び特性の左右非
対称性
【0003】発明者の研究によると、前述の4つの要因
のうちの(1) 及び(2) については、例えば通常の材料温
度管理,潤滑装置の保守管理及び適性な板進路ガイド装
置の採用などによって、問題とならない程度に左右非対
称性を抑制することが可能である。前述の(3) の要因の
非対称性を調整するには、キスロール締め込みにより一
定荷重を加え、このときの圧延ロールの左右(駆動側と
作業側)の荷重が零になるように左右の圧下を調整し、
圧延時の左右ロールギャップ差が生じないように左右の
圧下位置を設定する方法が一般に採用されている。この
方法は、「ロールギャップ零調」と呼ばれている。この
方法は、圧延機のミル伸び及びミル剛性が左右対称であ
るときは有効であるが、左右非対称であるときは、荷重
の値により左右のロールギャップ開度に差が生じるた
め、全荷重領域で左右均等となるように圧下位置を設定
することは不可能である。したがって、板圧延における
板の曲がりや蛇行を防止するためには、圧延機のミル伸
び及びミル剛性が左右均等になるように調整することが
極めて重要である。
【0004】圧延機のミル伸び及びミル剛性の左右差を
調整する方法には、以下の二つの方法が提案されてい
る。その一つは、例えば特公昭60−11570号公報
に開示されているように、左右のミル伸びと荷重の関係
を測定しておき、圧延中の荷重に対応して、左右それぞ
れのロールギャップを左右のミル剛性の比に応じた割合
で修正することにより、ミル剛性の左右差を補正する方
法である。他の一つは、例えば特開昭53−83959
号公報に開示されているように、圧延機の左右のミル伸
びと荷重の関係を測定しておき、左右スタンドのいずれ
かミル剛性の大きい方のスタンドの圧下系に適切なバネ
定数のバネを設けて、スタンドの両側のミル剛性を等し
くする方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述の左右のミル剛性
を調整する方法のうち前者は、圧延中の荷重を計測して
左右のロールギャップを修正する一種のフィードバック
方式であるから、圧延条件が変化すると、左右のロール
ギャップのバランスが崩れ、左右のミル剛性が非対称に
なることは避けられない。また、後者の方法はこのよう
な欠点はないが、圧下系にバネを組み込むためにロール
チョックないし加圧板の改造が必要であること、バネを
組み込むことによって全体のミル剛性が低くなり、板厚
精度が低下すること、及び、バネの剛性が加圧板,チョ
ックなどとの表面接触状態の微妙な差異により影響を受
けるため、バネの設計,施工が困難であること、などの
問題があるため実用化が非常に困難である。この発明の
目的は、装置の改造をすることなく、非常に簡単に左右
のミル剛性差を調整することができる調整方法を提供す
ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明によるミル剛性
の調整方法の一つは、前述の目的を達成するため、実圧
延前にキスロール締め込み試験により圧延ロールの駆動
側と作業側のミル伸び及びミル剛性を測定し、互いに接
触している少なくとも一組のロール間において、測定し
た剛性値の大きい側においては、ロールの長さ方向の中
央部から当該側のロール端部までの接触長さを小さく
し、測定した剛性値の小さい側においては、ロールの長
さ方向の中央部から当該側のロール端部までの接触長さ
を大きくするものである。この方法は、ロールシフト機
構を備えている圧延機に適するもので、ミル剛性値の大
きな側から小さい側へ、一つ又は複数のロールをシフト
させることによって実施される。この方法を実施する際
には、上段側と下段側のいずれか一方においてのみロー
ルをシフトさせてもよいし、両側においてロールをシフ
トさせてもよい。両者の相違は、前者の場合には、後者
の場合と比較してロールのシフト量が大きくなるだけで
ある。一回の操作でミル剛性の左右差がなくならないと
きは、ミル剛性の左右差がなくなるまで前述の操作を繰
り返す。
【0007】この発明によるミル剛性の調整方法の他の
一つは、前述の目的を達成するため、実圧延前にキスロ
ール締め込み試験により圧延ロールの駆動側と作業側の
ミル伸び及びミル剛性を測定し、互いに接触している少
なくとも一組のロール間において、ミル剛性値の大きい
側においては、ロールの長さ方向の中央部から当該側の
ロール端部までの接触長さを小さくするものである。こ
の方法は、ロールシフト機構を備えていない圧延機に主
として適するもので、ミル剛性値の大きな側において、
作業ロールと補強ロールのいずれか一方又は双方の端部
を面取り状に切削することによって実施される。一回の
操作でミル剛性の左右差がなくならないときは、左右差
がなくなるまで前述の操作を繰り返す。ロール端部の切
削は、上段側と下段側のいずれかにおいてのみ行っても
よいし上下段両側において行ってもよい。
【0008】
【作用】各サイドにおけるミル剛性を支配する要因に
は、例えば各サイドのスタンドポストそのものの剛性、
加圧板,チョックの形状や接触状態、圧延ロールの撓み
や接触偏平変形などが考えられる。この発明による方法
のように、ミル剛性の大きいスタンド側において、ロー
ルの長さ方向の中央部からロール端部までの接触長さを
小さくするとこにより、各ロール間における接触荷重分
布はロール中央寄りに移動し、これに伴って、このサイ
ドのロールの撓み量や偏平変形量が相対的に増し、左右
のミル剛性の差が相殺される。また、逆サイドでのロー
ル間接触長さを増大させると、上記とは逆の作用によ
り、当該サイドのロール撓み量や変形量が相対的に減じ
て左右のミル剛性差が相殺される。したがって、駆動側
と作業側におけるミル剛性が均衡する方向へ調整され
る。そして、この発明によるミル剛性の調整方法は、少
なくとも一つのロールをミル剛性の大きい側から反対方
向へシフトさせ、あるいは、ミル剛性の大きい側におい
て、少なくとも一つのロールの端部を面取り状に切削す
ることによって達成することができるから、その実施は
極めて簡単であり、しかも装置の改造を要しない。
【0009】
【実施例】以下図面を参照しながら、この発明によるミ
ル剛性の調整方法の好ましい実施例を説明する。図1は
圧延前の圧延機のキスロール締め込み試験の状態を示す
概略正面図、図2は、図1の圧延機の上段側における中
間補強ロールと上段補強ロールとの接触長さを変化させ
た状態の部分正面図、図3は、図1の圧延機の下段側に
おける中間補強ロールと下段補強ロールとの接触長さを
変化させた状態の部分正面図、図4は図1の圧延機によ
るキスロール締め込み試験時の荷重と締込量との関係を
示す線グラフ、図5は左右ミル剛性調整後の荷重と締込
量との関係を示す線グラフ、図6は他の実施例における
圧延機のキスロール締め込み試験の状態を示す概略正面
図、図7は図6の圧延機の作業ロールと補強ロールとの
接触長さを変化させた状態の概略正面図である。
【0010】図1の六段圧延機は図示されていないロー
ルシフト機構を有する構造であり、1,1’は作業ロー
ル、2,2’は中間補強ロール、3,3’は上段補強ロ
ール及び下段補強ロールである。図1の圧延前のキスロ
ール締め込みの状態では、上段の中間補強ロール2が作
業側WS方向へ1Lの長さ、下段の中間補強ロール2’
が駆動側DS方向へ1L’の長さそれぞれシフトさせて
あり、ロールの長さ方向の中央部Oから駆動側DS端部
までのロール1,2,3の接触長さはL、中央部Oから
作業側WS端部までのロール1’,2’,3’の接触長
さはL’である。
【0011】図1のキスロール状態において、図示しな
い圧下装置により締め込み操作を行い、このときの締込
量と各サイドの図示しないハウジングが受ける反力を検
出することにより、各サイドのミル剛性を測定する。図
中の上向きの矢印群はロール間接触荷重の分布状態を例
示している。図4にキスロール締め込み試験のときの各
サイドのミル剛性の相違を示す。この例では、駆動側D
Sのミル剛性が作業側WSよりも大きく、この状態で圧
延した板は、板厚が作業側WSで厚肉になり作業側WS
の方向への蛇行を生じることになる。
【0012】この実施例では、図4で示すミル剛性の左
右非対称性を解消するため、図2のように、上段の中間
ロール2をα(10mm)だけ駆動側DSから逆方向へさ
らにシフトさせて、ロールの中央部Oから駆動側DS端
部までのロール3,2,1相互の接触長さLをαだけ小
さくし、図3のように、下段の中間ロール2’をα(1
0mm)だけ操作側WS方向へさらにシフトさせて、ロー
ルの中央部Oから操作側WS端部までの接触距離L’を
αだけ大きくした。このように、駆動側DSのロール間
接触長さLを小さくし、作業側WSのロール間接触長さ
L’を大きくすると、図の点線で示す上向きの矢印のよ
うに、ロール間の接触荷重分布はDSでは中央寄りに、
WSでは側方寄りにそれぞれ移動するとともに、DSで
はロールの撓み量や偏平変形量が増し、WSではそれら
が減じる。そのため、両サイドにおけるミル剛性差が相
殺されることにより調整される。そして、再度キスロー
ル締め込みを行って両サイドのミル剛性を測定する。そ
の結果が図5に示すように各サイドで均衡した場合に
は、ミル剛性の調整を完了する。
【0013】若し再度のミル剛性の測定で各サイドのミ
ル剛性が均衡しなかった場合には、その結果に応じて中
間ロール2,2’を一定方向へシフトさせ、さらにキス
ロール締め込み試験を行い、両サイドのミル剛性が等し
くなるまで同じ操作を繰り返す。
【0014】この実施例の調整方法では、圧延機の両サ
イドのミル剛性をロールのシフトのみによって調整する
ので、装置の改造を全く要しないで極めて簡単かつ正確
にミル剛性を調整することができる。
【0015】前述の実施例では、キルロール締め込み試
験による各サイドのミル剛性の測定結果に応じて、上下
段の中間ロール2,2’を一定方向へシフトさせたが、
いずれか一方の中間ロール2又は2’のみを、ほぼ2α
だけ作業側WSへシフトさせても同様に実施することが
できる。また、中間ロール2,2’をシフトさせるのに
代えて、作業ロール1又は1’、上段補強ロール3又は
下段補強ロール3’を同様にシフトさせても実施するこ
とができる。
【0016】図6はロールシフト機構を備えていない四
段圧延機であり、ロールの長さ方向中央部Oから両サイ
ドまでのロール間接触長さLとL’は同じである。図6
の状態でキスロール締め込み試験を行い、両サイドD
S,WSのミル剛性を測定した結果、図4のようにWS
よりもDSでミル剛性が大きかったと仮定すると、圧延
した板は前記実施例と同じようにWSへ蛇行する。この
左右ミル剛性の差をなくして等しくするためには、上段
補強ロール3のDS端部における面取り状切削部30を
図7のようにさらに切削ないし研削して、当該切削部3
0の幅wを例えばnαだけ増大させることにより、ロー
ルの長さ方向中央部OからDS端部までのロール1,3
の接触長さLをnαだけ小さくする。
【0017】前述のようにロール1,3間のDSの接触
長さLを小さくすると、DSにおけるロール間の接触荷
重分布は中央O寄りに移動し、DSにおけるロールの撓
み量や偏平変形量が相対的に増大することによって、両
サイドのミル剛性の差が相殺されるため、左右ミル剛性
の差が調整される。
【0018】そして、再度キスロール締め込み試験お行
い、その結果左右のミル剛性差が等しくなっていれば調
整を完了する。左右のミル剛性差が等しくなっていない
で、まだDSでミル剛性が大きければ、ロール3の端部
の切削部30の幅wを増大させるように切削ないし研削
し、キスロール締め込み試験の結果左右のミル剛性差が
なくなるまで同様な操作を繰り返す。また、DSよりも
WSのミル剛性が大きくなった場合は、ロール3のWS
端部における切削部31の幅w’を増大させるべく切削
ないし研削する。
【0019】図6,7の実施例の方法によれば、ロール
の端部を面取り状に切削ないし研削するだけてミル剛性
が調整されるので、装置の改造をほとんど要しないで極
めて簡単にミル剛性を調整することができる。図7の例
では、ロール3のDS端部のみを面取り状に切削した
が、複数のロールのDS端部を切削してもよいし、他の
ロール1,1’又は3’の端部を切削しても同様な効果
を奏する。また、前記実施例における面取り状の切削部
30,31は、ロール端部の肩をテーパ状に切削して形
成したものであるが、ロール間の接触長さL又はL’が
小さくなれば十分であるから、テーパ状でなく円弧状そ
の他の形状に切削ないし研削しても実施することができ
る。
【0020】
【発明の効果】この発明によるミル剛性の調整方法は、
装置の改造を伴わずに極めて簡単かつ正確にミル剛性を
調整することができる。また、圧延条件の変化によって
両サイドのミル剛性の対称性がアンバランスになること
もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延前の圧延機のキスロール締め込み試験の状
態を示す概略正面図である。
【図2】図1の圧延機の上段側における中間補強ロール
と上段補強ロールとの接触長さを変化させた状態の部分
正面図である。
【図3】図1の圧延機の下段側における中間補強ロール
と下段補強ロールとの接触長さを変化させた状態の部分
正面図である。
【図4】図1の圧延機によるキスロール締め込み試験時
の荷重と締込量との関係を示す線グラフである。
【図5】左右ミル剛性調整後の荷重と締込量との関係を
示す線グラフである。
【図6】他の実施例における圧延機のキスロール締め込
み試験の状態を示す概略正面図である。
【図7】図6の圧延機の作業ロールと補強ロールとの接
触長さを変化させた状態の概略正面図である。
【符号の説明】
1,1’ 作業ロール 2,2’ 中間作業ロール 3 上段補強ロール 3’ 下段補強ロール 30,31 面取り状の切削部 L,L’ ロールの長さ方向中心から各サイド端部まで
のロールの接触長さ l,l’ ロールの初期シフト長さ α ロール接触部の調整長さ w,w’ ロール端部の切削部の幅
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−83959(JP,A) 特開 平7−136705(JP,A) 特開 平5−293521(JP,A) 特開 平6−182418(JP,A) 特開 昭60−30508(JP,A) 特開 昭53−15249(JP,A) 特開 昭52−140454(JP,A) 特開 平5−169120(JP,A) 特公 昭60−11570(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 31/18 B21B 37/00 B21B 31/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧延前にキスロール締め込み試験により
    圧延ロールの駆動側と作業側のミル伸び及びミル剛性を
    測定し、互いに接触している少なくとも一組のロール間
    において、測定した剛性値の大きい側においては、ロー
    ルの長さ方向の中央部から当該側のロール端部までの接
    触長さを小さくし、測定した剛性値の小さい側において
    は、ロールの長さ方向の中央部から当該側のロール端部
    までの接触長さを大きくすることにより、駆動側と作業
    側におけるミル伸び及びミル剛性を均衡させるせことを
    特徴とする、圧延機におけるミル剛性の調整方法。
  2. 【請求項2】 実圧延前にキスロール締め込み試験によ
    り圧延ロールの駆動側と作業側のミル伸び及びミル剛性
    を測定し、互いに接触している少なくとも一組のロール
    間において、測定した剛性値の大きい側においては、ロ
    ールの長さ方向の中央部から当該側のロール端部までの
    接触長さを小さくすることにより、駆動側と作業側にお
    けるミル伸び及びミル剛性を均衡させるせことを特徴と
    する、圧延機におけるミル剛性の調整方法。
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