JP3193836B2 - ビニルアセチルサリチル酸系共重合体 - Google Patents

ビニルアセチルサリチル酸系共重合体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、側鎖にアセチルサリチ
ル酸基を有する新規なビニルアセチルサリチル酸系共重
合体に関する。
【0002】
【従来の技術】アセチルサリチル酸は、アスピリンとし
て、解熱・鎮痛剤用医薬の医薬材料として広く用いられ
ている。また、アスピリンに関する研究は多く行われて
おり、近年、アセチルサリチル酸が解熱・鎮痛効果のみ
ならず、血小板凝集制御効果等、従来知られていなかっ
た薬効を有していることが報告されている。
【0003】そこで、このようなアセチルサリチル酸を
医薬材料として幅広く応用するために、アセチルサリチ
ル酸の薬効を自由に制御したり、安定化することが試み
られてきた。しかしながら、従来におけるアセチルサリ
チル酸の薬効の制御は、アセチルサリチル酸をナトリウ
ム塩やアルミニウム塩等としたり、錠剤やカプセル等に
含有させること等によって行われてきたに過ぎず、上記
幅広い医薬材料としてのニーズに充分応えることができ
ないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、既に、
上記アセチルサリチル酸について鋭意研究した結果、ア
セチルサリチル酸ビニルの単独重合体及びアセチルサリ
チル酸ビニルと他のビニルエステルとの共重合体におい
ては、重合体のケン化度を制御することによってアセチ
ルサリチル酸の量を制御することができ、また上記共重
合体の場合には構成モノマー比を調節することによって
もアセチルサリチル酸の量を制御することができ、その
結果重合体のアセチルサリチル酸としての薬効を制御す
ることができるということを見出している。
【0005】しかしながら、上記重合体のけん化を行う
と、アセチルサリチル酸基の一部ではオルト位の酢酸エ
ステル基がケン化され、サリチル酸基に変質するという
問題がある。即ち、サリチル酸も解熱・鎮痛の効果を有
しているため、薬効の制御という点でおおまかには問題
はないが、この重合体のアセチルサリチル酸基量の微細
な制御という点では困難であり、アセチルサリチル酸基
に変質させることなく水溶性を付与させることが望まれ
てきた。
【0006】従って本発明の目的は、ケン化によって薬
効を有するアセチルサリチル酸を生じ、薬効の微細な制
御が可能であり、水溶性を付与させることができる新規
ビニルアセチルサリチル酸系共重合体を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、下記式
(1) :
【化3】 で表される構造単位0.1 〜30モル%と、下記式(2) :
【化4】 で表される構造単位70〜99.9モル%からなることを特徴
とする側鎖にアセチルサリチル酸基を有するビニルアセ
チルサリチル酸系共重合体が提供される。
【0008】本発明の共重合体は、一般に、前記式(1)
で表される構造単位(以下、「ビニルアセチルサリチル
酸単位」と呼ぶことがある)は、0.1 〜30モル%、前記
式(2) で表される構造単位(以下、ビニルピロリドン単
位」と呼ぶことがある)は、70〜99.9モル%の量で含ま
れている。ビニルアセチルサリチル酸単位が多いほど、
この共重合体は親油性となり、薬効の制御が困難とな
る。また、これらの構造単位は、ランダムに連なってい
てもよいし、またブロック状に連なっていてもよい。か
かる共重合体の重合度は、特に限定されるものではない
が、取扱いの容易性からいって、3000以下であることが
好適である。更に好ましくは 200〜2500の範囲に設定す
るとよい。重合度が高すぎると、溶液の粘度が上昇し取
扱いが困難となり、また水に溶解しづらくなる。
【0009】本発明の共重合体は、側鎖にアセチルサリ
チル酸基を有しており、加水分解することにより、薬効
を有するアセチルサリチル酸を生じ、しかも重合後にケ
ン化工程を行っていないため、副生成物としてのサリチ
ル酸基も存在していない。したがって、アセチルサリチ
ル酸基の含有量を微細に制御することが可能であり、医
薬材料としての幅広い応用が可能である。また、加水分
解に際して副生するポリビニルアルコールやポリビニル
ピロリドンが人体に無害であるとともに、アセチルサリ
チル酸基が安定であるため、医薬材料としても安定であ
る。
【0010】製造方法 本発明のビニルアセチルサリチル酸共重合体は、アセチ
ルサリチル酸ビニルとビニルピロリドンとの混合液を、
ラジカル重合開始剤の存在下で、塊状重合法、溶液重合
法、パール重合法、乳化重合法等の公知の重合方法によ
って、容易に製造することができる。ただ工業的に製造
する場合には、メタノール、エタノール、イソプロパノ
ール等のアルコール類、水又は水とアルコールの混合溶
液を用いる溶液重合法が最も適している。
【0011】重合反応を行う際のアセチルサリチル酸ビ
ニル、ビニルピロリドン等の組成や添加方法は、所望す
る物性のアセチルサリチル酸ビニル−ビニルピロリドン
共重合体によって適宜決定することができる。重合仕込
み時におけるアセチルサリチル酸ビニルの割合が全モノ
マー量に対して0.1 〜35モル%、好ましくは0.1 〜20モ
ル%、更に好ましくは0.1 〜15モル%の範囲になるよう
にする。アセチルサリチル酸ビニルの量が多すぎると生
成する共重合体中のアセチルサリチル酸基の含有量が多
くなり、水溶性が低下するため好ましくない。
【0012】重合形式は、回分方式、半連続方式、連続
方式等の公知の方式の中から適宜選択して使用すること
ができる。
【0013】ラジカル重合開始剤は、特に限定されるも
のではなく、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリ
ル等のアゾ化合物、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過
酸化カーボネート等の過酸化物等公知のラジカル重合開
始剤の中から適宜選択して使用することができる。開始
剤効率、重合溶媒への溶解性を考慮すると、過酸化水素
又は2,2'−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始
剤を使用することが好ましい。開始剤の添加量は、全モ
ノマー量に対して、0.01〜 1.0wt%にするとよい。好ま
しくは0.05〜 1.0wt%がよい。
【0014】重合温度は、ラジカル重合開始剤の種類に
応じて適当な温度を適宜選択することができるが、一般
には30℃〜90℃の範囲から選ばれる。更に好ましくは50
℃〜80℃で重合が行われるとよい。
【0015】重合時間は得られる重合体の重合度などに
より異なるが、通常1〜10時間、好ましくは2〜7時間
で重合が行われる。
【0016】目的とする重合体は重合反応が終了した
後、限外ろ過法、再沈澱法、減圧乾燥法等により精製す
ることができる。精製の効率やコストの面から考えると
限外ろ過法を用いることが好ましい。精製方法として限
外ろ過法を採用する場合、用いる限外ろ過膜は非水溶性
のものであれば特に限定はなく、ポリエーテルスルホ
ン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリイミ
ド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレ
ンオキシド等の材質が用いられる。限外ろ過膜の分画分
子量は精製する共重合体の分子量によって、1000〜3000
00の範囲から適宜選択する。分画分子量の選定基準は特
にないが、分画分子量の小さい膜を用いると、精製効
率、ろ過スピード等が低下し、分画分子量が大きすぎる
と共重合体自身が透過してしまうので、精製する共重合
体の分子量に最適の分画分子量を持った限外ろ過膜を用
いることが望ましい。限外ろ過は、重合後の溶液に水を
加えて希釈した水溶液の状態で行う。このときの共重合
体の濃度は特に限定はないが、0.1 〜20wt%の範囲で行
うことが好ましく、更に好ましくは1〜10wt%の範囲で
行う。濃度が希薄すぎると精製効率が低下し、濃度が高
すぎると水溶液の粘度が高くなり限外ろ過できなくな
る。
【0017】アセチルサリチル酸基含有量は、重合時の
仕込組成量によって各構造単位の組成を広範囲に制御す
ることができるので、この重合体を加水分解したときに
放出されるアセチルサリチル酸の量を制御することがで
きることになり、これによってアセチルサリチル酸の薬
効を実質的に広く制御することができる。
【0018】尚、前記式(1) で表される構造単位の割合
が多い場合には該重合体は親油性となり、前記式(2) で
表される構造単位の割合が多い場合には、該重合体は親
水性となる。得られる重合体に水溶性を付与させるため
には、アセチルサリチル酸基の含有量を30モル%以下と
することが必要であり、好ましくは0.1 〜20モル%、更
に好ましくは0.1 〜10モル%に制御する。
【0019】
【実施例】以下本発明を、実施例に従って更に詳述する
が、本発明はこれらによって何等限定されるものではな
い。
【0020】実施例1 攪拌機、温度計、窒素導入口及びコンデンサーを備えた
300mlのセパラブルフラスコに、アセチルサリチル酸ビ
ニル5g、ビニルピロリドン95g及びメタノール 100g
を仕込み、該フラスコ内の空気を窒素に置換した後、2,
2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1 gを添加した。得
られた混合液を、窒素ガスを50ml/minの流速で流しなが
ら、64℃に加熱し、5時間重合反応を行わせた。得られ
た溶液状のポリマーに純水3000mlを加え、分画分子量50
000 のポリエーテルスルホン製の限外ろ過膜を用いて、
濃度一定となるように水を加えながら、ろ過水の残存モ
ノマーが300ppm以下になるまで連続的に精製を行った。
精製終了後濃縮を行い、共重合体の10%水溶液を得た。
収率は70.2%であった。アセチルサリチル酸ビニルとビ
ニルピロリドンの共重合組成比は、 1H-NMR 測定により
求めたところ、前記式(1) で表される構造単位は3.9 モ
ル%、前記式(2) で表される構造単位は96.1モル%であ
った。また、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ
ー(GPC)により測定した結果、重合度は1200であっ
た。
【0021】実施例2 攪拌機、温度計、窒素導入口及びコンデンサーを備えた
300mlのセパラブルフラスコに、アセチルサリチル酸ビ
ニル10g、ビニルピロリドン90g及びメタノール 100g
を仕込み、該フラスコ内の空気を窒素に置換した後、2,
2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1 gを添加した。得
られた混合液を、窒素ガスを50ml/minの流速で流しなが
ら64℃に加熱し、5時間重合反応を行わせた。得られた
溶液状のポリマーを、実施例1の場合と同様にして精製
した。収率は72%であった。得られたポリマーの共重合
組成比を実施例1の場合と同様にして測定したところ、
前記式(1) で表される構造単位は8.5 モル%、前記式
(2) で表される構造単位は91.5モル%であった。重合度
は1300であった。
【0022】比較例1 モノマー仕込組成を以下のように変えた以外は実施例1
と同様な操作で、重合を行った。 アセチルサリチル酸ビニル : 60 g ビニルピロリドン : 40 g 得られた共重合体は、純水の変わりに水−メタノール混
合溶液(体積比1:1)を用いて実施例1と同様に精製
した。収率は68%であった。得られたポリマーの共重合
組成は、前記式(1) で表される構造単位は50モル%、前
記式(2) で表される構造単位は50モル%、重合度は1300
であった。
【0023】比較例2 モノマー仕込組成を以下のように変えた以外は実施例1
と同様な操作で、重合を行った。 アセチルサリチル酸ビニル : 40 g ビニルピロリドン : 60 g 得られた共重合体は、純水の変わりに水−メタノール混
合溶液(体積比1:1)を用いて実施例1と同様に精製
した。収率は70%であった。得られたポリマーの共重合
組成は、前記式(1) で表される構造単位は33モル%、前
記式(2) で表される構造単位は67モル%、重合度は1300
であった。
【0024】各実施例、比較例によって得られた共重合
体の水への溶解性(5重量%水溶液)を以下に示す。 実施例1 : 均一溶解 実施例2 : 均一溶解 比較例1 : 白濁分散状態 比較例2 : 溶解せず
【0025】
【発明の効果】本発明の側鎖にアセチルサリチル酸基を
有する重合体は、加水分解することによって薬効を有す
るアセチルサリチル酸を生じるので、該基の含有率や加
水分解を制御することにより薬効を制御することがで
き、従って、医薬材料として幅広い応用が可能である。
また、加水分解に際して副生するポリビニルアルコール
やポリビニルピロリドンが人体に無害であるとともに、
アセチルサリチル酸基が安定であるため医薬としても安
定である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 26/10 C08F 226/10 C08F 18/10 C08F 218/10 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式(1) : 【化1】 で表される構造単位0.1 〜30モル%と、下記式(2) : 【化2】 で表される構造単位70〜99.9モル%からなることを特徴
    とする側鎖にアセチルサリチル酸基を有するビニルアセ
    チルサリチル酸系共重合体。
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