JP3191841B2 - スペクトル拡散変調及び/又は復調装置 - Google Patents

スペクトル拡散変調及び/又は復調装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスペクトル拡散(以下S
Sと記す)変調及び/又は復調装置に係り、特に、SS
変調装置における1次変調とSS復調装置での1次復調
において、夫々、FM変,復調を含む周波数シフトキー
イング{以下FSK(Frequency ShiftKeying)と記す}
変,復調と、位相シフトキーイング{以下P(Phase)S
Kと記す}変,復調との両方を、容易に切換えて行なえ
るよう構成した、SS変調及び/又は復調装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】SS変調,復調方式を用いた無線伝送や
通信における情報信号の1次変調には、通常FM変調
(情報信号がアナログ信号の場合)やFSK変調(同じ
くデジタルデータの場合)やPSK変調(同)が用いら
れている。そして、1次変調にPSK変調を施したSS
通信は、その1次復調もPSK復調となり、夫々専用の
変調,復調回路で構成される。FSK変調にはその特殊
なケースとしてMSK(Minimum Shift Keying)やG(Gau
ssian filtered)MSKを含むが、かかる1次変調を通
常施して2次変調としてスペクトル拡散した後データ伝
送や無線通信等を行なうSS変調,復調方式は、その特
徴を活かして種々の分野に応用され始めており、最近は
民生機器分野への応用も展開されつつある。
【0003】具体例として、SS変調,復調方式を採用
した無線LANシステムやデジタル携帯電話,又はSS
変調された衛星航法システム用の電波であるGPS(Glo
balPositioning System)衛星電波を受信して使用する
測位(ナビゲーション)システム等においては、夫々専
用の変調回路及び復調回路で行っており、普及の兆しが
見え始めている。
【0004】GPSとは米国国防総省が中心になって開
発された軍事目的の高精度な衛星航法システムである
が、その一部が民間の利用に解放されて移動物体の位置
を検出する測位に利用されている。利用者は3〜4個の
GPS衛星からのSS信号電波を時分割的に受信して、
電波伝搬時間によりGPS衛星から自分(受信装置)ま
での距離を求めることにより、自分の現在位置を知るこ
とができるもので、従来の航法システムに比べて精度や
即時性等多くの利点が有り、その将来性や発展性が期待
され、GPS受信装置の開発が有力各社で進められてい
る。
【0005】かかる民生用のGPS受信装置において
は、GPS衛星から送信される電波のうち、公開されて
いるC/A(Clear and Acquisition)コードなる拡散符
号にて航法メッセージを拡散変調したSS変調信号を受
信して解読している。本発明のSS復調装置はかかるG
PS受信装置としての機能をも備えているので、送信側
であるGPS衛星の構成のうち、民間にて利用できる部
分の構成等について、図2と共に簡単に説明する。
【0006】図2はGPS衛星における変調送信部20
の主要部を示すブロック図であり、C/Aコードの生成
やSS変調等を行っている。まず、基準信号出力用の原
子時計13から出力される周波数10.23MHzの非常に安定
な基準信号を周波数逓倍器(以下「逓倍器」と略記す
る)14に供給してN1 (=154)逓倍し、周波数=1.5754
2GHzのL1 キャリヤを得ている。一方、基準信号を分周
器15にも供給し、ここで 1/N2 (=1/10)に分周した
後C/Aコード発生器16に供給してC/Aコードを発
生させている。従って、C/Aコード発生用クロック信
号のチップ長は1023チップとなる。
【0007】かかるC/AコードはEX−ORゲート1
8において、入力端子In2 より与えられる航法メッセー
ジとの排他的論理和演算(メッセージ変調)を施され、
更に乗算器19において、上記L1 キャリヤとの乗算に
よるキャリヤ変調が行われ、送信アンテナA2 より送信
される。上記航法メッセージの発生用クロック信号は1
0.23MHzを 1/204600に分周した50Hzの周波数となっ
ている。なお、GPS衛星から送信されているP符号変
調波については民間に開放されていないので、その詳細
な説明は省略する。
【0008】以上の説明から明らかなように、GPS衛
星内の変調送信部20においては、L1 キャリヤとC/
Aコード用クロック信号とは同期関係にある。このよう
に同期関係を持たせると、変調時や受信,復調時におい
て、装置を構成する回路素子における不要輻射等による
干渉妨害の影響も軽減できるだけでなく、SS復調にお
いて、回路の構成を簡素化できる可能性が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】周知の如く、SS変
調,復調方式では、特有の同期検出,同期捕捉,及び同
期保持を司る各回路が復調装置側において必要である。
また、それには変調装置側でSS変調の前処理として行
われる1次変調の方式にも関連するため、使用する1次
変調の方式に対応した専用のSS変調及び/又は復調装
置が必要になり、回路を集積化しても夫々専用のICと
ならざるを得ず、汎用性に乏しく、今後の普及の障害と
なっている。
【0010】本発明は、上記従来の問題点に鑑み、1次
変調方式がFM,PM(対アナログ信号)又はFSKや
PSK(対デジタルデータ)であっても、構成の一部乃
至主要部が共用可能な回路を実現して、従来のSS変調
及び/又は復調装置のみならず、GPS受信復調も共用
できる、汎用性の高いSS変調及びSS復調が可能なS
S変調装置及び/又はSS復調装置を提供することを目
的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、入力情報信号変調用の搬送波を発振出力す
る発振器と、発振器の出力信号の周波数を夫々N1 逓倍
及び 1/N2 分周する逓倍器及び分周器と、分周器の出
力信号をクロックとしてPN符号又はC/Aコード等の
拡散符号を発生する拡散符号発生器と、直流バイアスを
供給する電源と、電源側からの信号と拡散符号との論理
和演算を行う演算器と、上記入力情報信号に対する1次
変調がPSK又はFSK(FM変調を含む)のいずれで
あるかに応じて入力情報信号を上記発振器,又は上記電
源と演算器との接続点に供給する切換えスイッチと、演
算器の出力と上記逓倍器の出力とを乗算してスペクトル
拡散する乗算器とを備えてなるスペクトル拡散変調装置
を提供する。
【0012】また、周波数変換用の局部発振信号を出力
する第1の局部発振器と、局部発振信号を周波数逓倍す
る逓倍器と、受信したSS変調波を逓倍された局部発振
信号との乗算により周波数変換して中間周波数SS変調
波を得る周波数変換手段と、中間周波数SS変調波に拡
散符号を乗算することによりこれを逆拡散復調する逆拡
散手段と、得られた逆拡散復調出力のレベルの大小を識
別するレベル識別回路と、逆拡散復調出力であるFSK
変調波(FM変調波を含む)又はPSK変調波を1次復
調して元の情報信号を得る復調手段と、復調手段の出力
中に含まれる雑音のレベルを検出する雑音レベル検出回
路と、逆拡散復調出力信号の種類に応じて、雑音レベル
検出回路又はレベル識別回路のうちいずれか一方の出力
信号を基に制御信号を生成する制御回路と、復調手段を
構成する位相同期ループの出力を1/N1 2 分周した
信号と第1の局部発振器の出力を 1/N2 分周した信号
とを論理演算する演算回路と、正規のクロック周波数に
近似した周波数の信号を出力する第2の局部発振器と、
制御回路から制御信号が供給された際に第2の局部発振
器から演算回路側に接続を切換える第2の切換えスイッ
チと、この切換えスイッチの出力をクロック信号として
拡散符号を生成して上記逆拡散手段に供給する拡散符号
発生器等を備えてなるスペクトル拡散復調装置をも提供
する。
【0013】
【実施例】本発明のSS変調及び/又は復調装置の一実
施例について、図面を参照し乍ら説明する。図1は本発
明のSS変調装置(送信部)10の基本構成を示し、図
3は本発明のSS復調装置(受信部)30の基本構成を
示すブロック図である。通常の通信機においては、かか
るSS変調装置10とSS復調装置30の両方を備えた
SS変調復調装置となっており、アンテナA1,3 等の
兼用も行われるが、個別に設計することも可能であり、
実際の交信は当然異なる通信機間で行われるので、以
下、SS変調装置10とSS復調装置30を夫々個別に
説明する。
【0014】先ず、図1のSS変調装置10について説
明するに、これは低出力インピーダンスの増幅器2,方
式選択用の切換えスイッチ(以下「スイッチ」と略記す
る)Sw1,発振器の代表例としての電圧制御発振器(V
CXO)4,DC電源E1 を含む直流バイアス供給器
5,逓倍器6,分周器7,拡散符号発生器(PNG)
8,(排他的)論理和演算を行う演算器であるEX−O
Rゲート9,乗算器11及びLPF(低域濾波器)12
等を備え、これらを図示の如く結線することにより構成
される。
【0015】以上の構成要素のうち、逓倍器6,分周器
7,PNG8,EX−ORゲート9及び乗算器11は、
前記図2における変調送信部20の逓倍器14,分周器
15,C/Aコード発生器16,EX−ORゲート18
及び乗算器19と夫々同等の働きをするので、その詳細
説明を省略する。但し、GPS衛星からの電波を妨害し
ないよう、PNG8においてはC/Aコード以外の拡散
(PN)符号が生成される。なお、スイッチSw1及びS
S復調装置30におけるスイッチSw2〜Sw4は用途に応
じて人為的に切換えられ、接点aはFM,FSK(MS
Kを含む)用、接点bはPSK用である。
【0016】次に、SS変調装置10の変調動作につい
て、先ず始めに1次変調としてFSK(FM変調を含
む)変調を施す場合について、図1と共に説明する。そ
の場合スイッチSw1は図示の如く接点aに接続されるの
で、入力端子In1 からのアナログ信号又はデジタルデー
タ等の情報信号は、増幅器2及びスイッチSw1を介し
て、電圧制御発振器4に供給される。従って、電圧制御
発振器4では特定周波数の搬送波を情報信号により変調
したFSK変調信号(アナログ信号ならFM変調信号)
が得られる。
【0017】かかる変調信号は逓倍器6に供給されてN
1 逓倍される一方、分周器7にも供給され、ここで 1/
2 に分周されてクロック信号として拡散符号発生器8
に供給される。このクロック信号を基に生成された拡散
符号はEX−ORゲート9に供給されるが、EX−OR
ゲート9の他方の入力端子には直流バイアス供給器5か
らの直流電圧が印加されているだけなので、拡散符号は
ここでは位相反転するのみで、LPF12を介して乗算
器11に供給される。従って、乗算器11では上記N1
逓倍されたFSK変調信号(又はFM変調信号)との乗
算によるSS変調が行われ、送信アンテナA1 よりSS
変調波として送出される。
【0018】なお、拡散符号発生用のクロック信号は、
情報信号によりFSK(FM)変調された搬送波(電圧
制御発振器出力)を基に得ているので、クロック信号及
び拡散符号の周期もそれに応じて変化するが、乗算器1
1に供給される拡散符号とFSK(FM)変調信号とは
互いに同期関係にあるので、支障なくSS動作が行なえ
るのである。
【0019】次に1次変調としてPSK(又はPM)変
調を施す場合について説明する。この場合スイッチSw1
は接点bに接続され、これにより、電圧制御発振器4へ
は入力信号が供給されないため、電圧制御発振器4から
は単に搬送波が基準信号として出力され、逓倍器6にて
1 逓倍されて乗算器11へ供給されると共に、分周器
7にて 1/N2 に分周されてクロック信号(周期は不
変)として拡散符号発生器8に供給され、ここで拡散符
号を発生してEX−ORゲート9の一方の入力端子に出
力する。
【0020】ところで、直流電圧供給回路5は増幅器2
の低い出力インピーダンスの影響を受けるために無能化
されるので、情報信号はそのままEX−ORゲート9の
他方の入力端子に供給されて、ここで上記拡散符号との
排他的論理和演算によるSS変調(1次変調されていな
い所謂直接拡散)が行われる。得られたSS変調信号は
LPF12を介して乗算器11に供給され、ここで上記
1 逓倍された基準信号(搬送波)との乗算による搬送
波変調が行われ、1次変調も施したSS変調波として送
信アンテナA1 より出力される。
【0021】以上のように、本発明のSS変調装置10
では、FSK変調とPSK変調とを1個のスイッチSw1
で切換えて実施することができる。また、キャリヤ(搬
送波)と拡散符号用クロック信号とは前記の如く同期関
係にあり、又、GPS衛星内の変調部においてもキャリ
ヤとC/Aコード用クロック信号とは同期関係にある。
このように同期関係を持たせると、変調時及び後述の受
信復調において、回路の不要輻射等による干渉妨害の影
響も軽減できるだけでなく、SS復調用の回路構成を簡
素化できる可能性が生じる。
【0022】次に、本発明のSS復調装置30の構成及
び復調動作について、図3を参照し乍ら簡潔に説明す
る。図中、24,26は受信アンテナA3 で受信された
SS変調波を中間周波数スペクトル拡散変調波に変換す
る変換手段(ミキサー)、48は拡散符号発生器であ
り、図2に示したGPS衛星における変調送信部20か
らの電波を受信する際には(特殊な)拡散符号の一種で
あるC/Aコードを発生し、図1に示した他機のSS変
調装置10からの電波を受信する際にはPN符号を発生
するよう構成されている。また、位相比較器36,LF
(ループフィルタ)37及びVCO(電圧制御発振器)
38により、位相同期ループ(PLL回路)35が形成
されている。更に、この位相同期ループ35を含んで破
線で囲んだ部分が、逆拡散復調出力であるFSK変調波
(FM変調波を含む)又はPSK変調波を1次復調する
復調手段(1次復調回路)40の構成となる。
【0023】ところで、第1の逓倍器29の逓倍数N1a
と第2の逓倍器21の逓倍数N1bとは、N1a+N1b=N
1 (SS変調装置10の逓倍器6における逓倍数)なる
関係にある。また、スイッチSw2〜Sw4は受信信号の1
次変調がFM,FSK(MSKやGMSKを含む)の場
合は接点aに、PSKの場合は接点bに接続される。従
って、スイッチSw2〜Sw4を1個の連動スイッチで構成
すれば便利である。なお、スペクトル拡散同期捕捉用制
御信号を得る手段として、レベル識別回路52,雑音レ
ベル検出回路53,制御回路54,及び切換えスイッチ
Sw1等が設けられるが、その他の詳細な構成要素につい
ては、以下の動作説明と共に明記する。
【0024】受信アンテナA3 で受信されたSS変調波
は、BPF22,RFアンプ(中間周波増幅器)23を
介して第1の周波数変換用ミキサー(乗算器)24に供
給される。一方、局部発振器(TCXO)28より出力
される局部発振信号は、逓倍器29及び逓倍器21によ
り夫々N1a逓倍及びN1b逓倍されて、ミキサー24及び
26に夫々供給されているので、ミキサー24ではSS
変調波の第1の周波数変換が行われて第1の中間周波信
号が得られる。SS変調波におけるキャリヤ周波数が1.
5GHz以上ならば、この中間周波信号の周波数は数百(200
〜600)MHz 程度となる。
【0025】この中間周波信号は、BPF25を介して
第2の周波数変換用のミキサー26に供給され、ここで
上記逓倍器21の出力(N1b逓倍局部発振信号)との乗
算による第2の周波数変換が行われて第2の中間周波信
号が得られる。かかる第2の中間周波信号は逆拡散用の
乗算器31に供給され、ここで拡散符号発生器48から
の拡散符号{GPS衛星電波の受信の際にはC/Aコー
ド符号,その他はPN符号}による逆拡散復調が行われ
る。得られた逆拡散復調出力(1次変調波)は、BPF
32,増幅器(AGCアンプ又はリミッタアンプ)33
を介して、1次復調たるFSK復調やPSK復調を行う
ために乗算器34等へ供給される。
【0026】ここで、送信側における1次変調がFM,
FSK変調の場合は、スイッチSw2〜Sw4は前記の如く
接点aに接続される。従って、乗算器34にはDC電源
(直流バイアス電圧源)E2 よりDC電圧が印加される
ので、逆拡散復調出力であるFSK(又はFM)変調波
は、そのまま位相同期ループ35内の位相比較器(乗算
器)36へ供給される。一般に位相同期ループはFM変
調波やFSK変調波の復調用として用いられ、その場合
は位相比較器36の誤差出力をループフィルタ(LF)
37を介して復調出力として得ているが、本発明の構成
では、VCO38の出力とFM(又はFSK)変調波と
の位相比較を乗算器39で行うことにより復調してい
る。従って、乗算器39よりLPF47を介して復調情
報が得られ、出力端子Out1より出力される。
【0027】一方、1次変調がPSK変調の場合は、ス
イッチSw2〜Sw4は接点bに接続されるので、乗算器3
4においてはLPF47からの復調情報と増幅器33か
らのPSK変調波との乗算が行われ、その出力は位相変
化情報の消滅した信号となる。かかる乗算出力は乗算器
36(位相同期ループ35)に供給されるが、位相同期
ループ35はトラッキングフィルタとして機能するの
で、VCO38の出力はノイズや情報の漏れ成分の少な
い高品質の再生キャリヤ信号となる。この再生キャリヤ
信号の位相を移相回路51で90°(π/2ラジアン)シフ
トした後、乗算器39で入力PSK変調波との乗算によ
る同期復調を行い、LPF47を介して出力端子Out1よ
り復調情報として出力するわけである。
【0028】次に、逆拡散復調用の拡散符号の発生に必
要なクロック信号の生成原理について説明する。本発明
のSS復調装置30においては、前記の如くミキサー2
4,26において、周波数変換を(2度も)行っている
ので、前述したキャリヤと拡散符号用クロック信号との
同期関係は喪失してしまう。そこで、この喪失現象を回
避するために、SS復調装置30においては次のような
工夫をしている。
【0029】まず、上記ミキサー24,26における周
波数変換の為に、局部発振器28からの局部発振信号を
夫々逓倍器29,21で周波数逓倍しているが、その各
逓倍数N1a,N1bと前記SS側の変調装置10での逓倍
数N1 との間に、N1 =N1a+N1bなる関係を持たせて
いる。また、SS変調装置10における拡散符号用クロ
ック信号の周波数fk 及びキャリヤ周波数fc と逓倍数
1a,N1bとの間に、fc =N1 2 k なる関係を持
たせている。そこで、局部発振信号をfo とすると、復
調用1次変調波のキャリヤ周波数fi は、次式のように
なる。 fi =fc −N1 fo =N1 2 k −N1 fo ………………………… (1)
【0030】従って、クロック信号fk を再生するに
は、キャリヤ周波数を 1/N1 2 に分周して得られた
分周出力と局部発振信号の 1/N2 にした分周局部発振
信号周波数との和の周波数を検出すればよいことにな
る。即ち、再生クロック信号周波数をfk'とすると、 fk'={1/(N1 2 )}×(N1 2 k −N1 fo)+(fo /N2 ) =fk −(fo /N2 )+(fo /N2 ) =fk ………………………… (2) となって、同期関係の喪失しないクロック信号を再生で
きる。
【0031】実際の回路構成では、VCO38の出力を
分周器41で 1/N1 2 に分周して、fk −(fo /
2 )を得ている。又、局部発振信号を分周器43に供
給して 1/N2 に分周することにより、fo /N2 を得
ている。従って、分周器41及び43の出力をEX−O
Rゲート42(加算器でも良い)に供給して和の周波数
を取り、更にBPF44と増幅器45を介してクロック
信号を再生している。従って、変調時のクロック信号f
k と等しいクロック信号fk'が、出力端子Out2より得ら
れるわけである。
【0032】次に、SS同期に必須の同期検出と同期捕
捉について説明する。装置本体の電源ON後、始めはス
イッチSw5は発振器46側に接続されており、その発振
信号の周波数fsはfk ±Δfに選ばれている。従っ
て、この発振信号をクロックとして拡散符号を生成して
おり、周波数fsをスライディングさせる(微調整す
る)ことにより拡散符号長を変化させ、逆拡散出力にお
いてレベルの低い(殆ど0)非相関期間の中でレベルが
急に大きくなる相関点がバースト状になって生じるの
で、その一瞬の相関点(相関部分の中心)を素早く検出
する必要がある。
【0033】本発明では、1次変調波の復調において、
FM復調やFSK復調の場合は相関点では復調出力中の
雑音が極小になることに着目して、雑音レベル検出回路
53に供給して行っている。又、PSK復調の場合は、
逆拡散出力が相関点ではレベルが極大になることに着目
して、そのレベルをレベル識別回路52で行うことによ
り相関点を検出し、同期捕捉を行っている。得られた検
出信号はスイッチSw3を介して制御回路54へ供給さ
れ、ここで制御信号に変換されてスイッチSw5を切換え
て、増幅器45からのクロック信号が拡散符号発生器4
8に供給されることにより、SS同期が正常になって保
持される。
【0034】ところで、前記GPS衛星電波を受信して
測位情報を計算するためにはCPU(図示せず)等が必
要になるが、そのCPUとのやり取りに必要な情報信号
の授受を行なうために、出力端子Out2,Out3や入力端子
In5 が利用される。即ち、再生原子時計周波数を得るに
は端子Out2の出力信号の周波数を逓倍器(図示せず)に
より10倍にすればよく、また、C/Aコードは当然端
子Out3より出力し、各々のGPS衛星に固有のC/Aコ
ードと等価な拡散符号を選択したい場合は端子In5 より
制御信号を供給するわけである。
【0035】このように、かかる構成の復調装置30に
おいても、FSK復調とPSK復調とを3個のスイッチ
Sw2〜Sw4(又は1個の連動スイッチ)で切換えるだけ
で容易に実施することができ、TCXO28,逓倍器2
1,29;BPF22,25,27,32;乗算器2
4,26,31;LPF47,49及びPLL35等、
多くの回路が共用されたことになる。
【0036】以上が本発明のSS変調装置10及びSS
復調装置30の基本的な動作原理の説明であるが、次
に、SS変調装置10において、情報信号としてデジタ
ル信号よりなるデータを取り扱う場合のより具体的な動
作等について、図4と共に簡単に説明する。図4は変形
例としてのSS変調装置10′のブロック図を示し、1は
データ処理部、63は分周器であり、その他図1に示し
た基本構成と同一構成要素には同一符号を付して、その
詳細な説明を省略する。
【0037】この図4から明らかなように、PNG8で
の拡散符号生成用のクロック信号を、分周器63で1/N
3 に分周してデータ処理部1に供給することにより、デ
ータ用のクロック信号と拡散符号とに同期関係を持たせ
ている。特に、PSK変調波をSS変調する場合、拡散
符号長とデータの1ビット期間を等しくするか、又は拡
散符号長に対してデータの1ビット幅を整数倍にし乍ら
データと拡散符号用クロック信号とが同期関係を保つよ
うにすると、周知の如く復調情報出力に生じる拡散成分
の漏れ成分を低減できるという効果が生ずる。
【0038】本発明装置では図4のように構成すること
により、PSK変調のみならずFSK(又はFM)変調
においてもデータの1ビット幅と拡散符号長とを同期関
係を持たせて関連づけることができ、復調情報出力中の
拡散成分の漏れを少なくしている。実際の構成例では、
例えば拡散符号長が 127チップの場合は分周器63の分
周数N3 は127(又はその正数倍)となる。
【0039】更に図5は、本発明のSS変調装置の更に
他の変形例10″のブロック図である。図中3はエンコー
ダ(又はA/D変換器)、64は分周器である。この図
から推察できるように、入力端子In4 からの情報信号と
して音声等のアナログ信号が供給される場合の信号の取
扱いを示している。即ちエンコーダ3にて入力信号をデ
ィジタル(符号)化するが、その符号化用クロック信号
と拡散符号との間に同期関係を持たせている。例えば拡
散符号長が 127チップの場合は、分周器64における分
周数N4 はN2 ×127(又はその正数倍)となる。
【0040】最後に、SS復調装置の変形例として、情
報信号の復号化における具体的動作を行なえる回路構成
について、図6の主要ブロック図と共に簡単に説明す
る。図中65は分周器{SS変調装置10′の分周器63
の分周数と同じ}、67はデコーダ(又はデータ処理
部)、61は情報信号のみを伝送するLPFであり、そ
の他前記図3に示したSS復調装置30と同一構成要素
には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0041】図示の如く、拡散符号発生用のクロック信
号を分周器65にて1/N3 に分周し、これをデコーダ6
7に供給することにより、LPF47からの復調出力に
対して、復号化(D/A変換)や、SS変調装置10′の
データ処理部1に対応したデータ処理等の動作を行わせ
ている。
【0042】以上の説明においては、受信アンテナA3
で受信されたSS変調波を周波数変換して中間周波数ス
ペクトル拡散変調波に変換する手段として、2つのミキ
サー(乗算器)24と26を用い、各乗算器24,26
に変換用信号を供給する手段として、局部発振器(TC
XO)28からの局部発振信号を夫々N1a逓倍及びN1b
逓倍する第1,第2の逓倍器29,21を用いるものと
した。このように構成することにより、一層確実な変換
が可能となるが、N1aやN1bが比較的小さな整数である
場合には、N1a+N1b=N1 (SS変調装置10の逓倍
器6における逓倍数)なる逓倍数の逓倍器を1個だけ使
用することもでき、その場合、周波数変換用のミキサー
も1個で済み、BPF25は不要となる。また逆に、逓
倍器とミキサーを3個以上備えて構成することも、理論
的には可能である。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、SS変調装置は1次変
調としてFM変調やFSK変調(MSK変調,GMSK
変調を含む)とPSK変調の双方を、スイッチで簡単に
切換えて夫々変調でき、また、SS復調装置においても
1次復調としてFM復調,FSK復調とPSK復調の双
方の1次復調をスイッチで容易に切換えて実施できるの
みならず、GPS衛星電波の受信復調にも使用できるた
め、幅広い用途が拓ける特長を持つ。又、各変調方式の
回路が共通使用できるため、応用範囲の広い集積回路を
実現できる。
【0044】又、本発明の装置は、特にSS復調装置の
回路構成を簡素化できるため、集積回路化しなくても民
生分野の応用においては十分満足できる等、大きな効果
が得られる。更に、具体的な性能面で、デジタル符号化
情報信号の場合でも1次変調方式に関係なく、デジタル
符号化用クロック信号と拡散符号との間に同期関係を持
たせることができ、更にまた、拡散符号長にデジタル符
号1ビット長を等しいか又は整数倍とすることにより、
復調情報に生じる拡散成分の漏れを最少にできる等の、
様々な優れた特長を持つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のSS変調装置の基本的構成例を示すブ
ロック構成図である。
【図2】本発明のSS復調装置に送信し得るGPS衛星
における変調送信部の主要部を示すブロック構成図であ
る。
【図3】本発明のSS復調装置の基本的構成例を示すブ
ロック構成図である。
【図4】本発明のSS変調装置の変形例を示すブロック
構成図である。
【図5】本発明のSS変調装置の他の変形例を示すブロ
ック構成図である。
【図6】本発明のSS復調装置の変形例の主要部を示す
ブロック構成図である。
【符号の説明】
1…データ処理部、2,23,33,45…増幅器、3
…エンコーダ、38,4…電圧制御発振器、5…直流バ
イアス供給器、6,21,29…逓倍器、7,41,4
3…分周器、8,48…拡散符号発生器、9,42…E
X−ORゲート、10…SS変調装置、11,24,2
6,31,34,36,39…乗算器、12,47,4
9…LPF(低域濾波器)、20…GPS衛星の変調送
信部、22,25,27,32,44…BPF(帯域濾
波器)、28,46…局部発振器、30…SS復調装
置、35…位相同期ループ、37…ループフィルタ、4
0…1次復調回路、51…移相回路、52…レベル識別
回路、53…雑音レベル検出回路、54…制御回路、6
3〜65…分周器、67…デコーダ(データ処理部)、
1 〜A3 …アンテナ、E1,2 …DC電源、Sw1〜S
w5…切換えスイッチ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−190055(JP,A) 特開 昭58−38053(JP,A) 特開 平7−143198(JP,A) 特開 平7−115444(JP,A) 特開 平7−95122(JP,A) 電子情報通信学会技術研究報告SST 94−74(1994−12−17),石垣行信,汎 用性を考慮したスペクトル拡散システ ム,p.43−48 電子情報通信学会技術研究報告SST 92−68(1993−1−26),石垣行信,角 度変調を用いたDS−SS方式の実用性 について,p.7−12 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04J 13/00 - 13/06 H04B 1/69 - 1/713 H04L 27/00 - 27/38

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力情報信号変調用の搬送波を発振出力
    する発振器と、該発振器の出力信号の周波数を夫々N1
    逓倍及び 1/N2 分周する逓倍器及び分周器と、該分周
    器の出力信号をクロックとしてPN符号又はC/Aコー
    ド等の拡散符号を発生する拡散符号発生器と、直流バイ
    アスを供給する電源と、該電源側からの信号と上記拡散
    符号との論理和演算を行う演算器と、上記入力情報信号
    に対する1次変調がPSK又はFSK(FM変調を含
    む)のいずれであるかに応じて該入力情報信号を上記発
    振器又は上記電源側に供給する切換えスイッチと、該演
    算器の出力と上記逓倍器の出力とを乗算してスペクトル
    拡散する手段とを備えて、1次変調として複数種類の変
    調を行えるよう構成したことを特徴とする、スペクトル
    拡散変調装置。
  2. 【請求項2】 入力情報信号がデジタルデータである場
    合、上記分周器の出力信号を上記拡散符号発生器におけ
    る拡散符号長に関連した整数に更に周波数分周する第2
    の分周器と、該第2の分周器の出力信号をクロックとし
    て上記デジタルデータに所定の信号処理を施すデータ処
    理部とを更に備えた、請求項1記載のスペクトル拡散変
    調装置。
  3. 【請求項3】 入力情報信号がアナログ信号である場
    合、上記発振器の出力信号を上記拡散符号発生器におけ
    る拡散符号長に関連した整数に更に周波数分周する第2
    の分周器と、該第2の分周器の出力信号を符号化用のク
    ロックとして上記アナログ信号をデジタル信号に変換す
    るエンコーダとを更に備えた、請求項1記載のスペクト
    ル拡散変調装置。
  4. 【請求項4】 局部発振信号出力用の第1の局部発振器
    と、該局部発振信号を周波数逓倍する逓倍器と、受信し
    たスペクトル拡散変調波を該逓倍器出力との乗算により
    周波数変換して中間周波数スペクトル拡散変調波を得る
    周波数変換手段と、該中間周波数スペクトル拡散変調波
    に拡散符号を乗算して逆拡散復調する逆拡散手段と、得
    られた逆拡散復調出力信号のレベルを識別するレベル識
    別回路と、逆拡散復調出力信号であるFSK(FMを含
    む)変調波又はPSK変調波を復調して元の情報信号を
    得る1次復調手段と、該1次復調手段の出力中に含まれ
    る雑音のレベルを検出する雑音レベル検出回路と、上記
    逆拡散復調出力信号の種類に応じて該雑音レベル検出回
    路又は上記レベル識別回路のうちいずれかの出力を基に
    制御信号を生成する制御回路と、上記1次復調手段を構
    成する位相同期ループの出力を 1/N1 2 分周した信
    号と上記局部発振信号を 1/N2 分周した信号とを論理
    演算する演算回路と、正規のクロックに近似した周波数
    の信号を出力する第2の局部発振器と、上記制御回路か
    ら制御信号が供給された際に該第2の局部発振器から上
    記演算回路側に接続を切換える切換えスイッチと、該切
    換えスイッチの出力をクロック信号として拡散符号を生
    成して上記逆拡散手段に供給する拡散符号発生器などを
    備えることにより、受信したスペクトル拡散変調波の1
    次変調がFSK変調(FM変調を含む)又はPSK変調
    のいずれであっても、確実に復調して元の情報信号を得
    るようにしたスペクトル拡散復調装置。
  5. 【請求項5】 逆拡散復調出力であるFSK(FMを含
    む)変調波又はPSK変調波を1次復調する復調手段
    は、逆拡散復調出力であるFSK(FMを含む)変調波
    又はPSK変調波が供給される第1,第2の乗算器と、
    該第1の乗算器からの乗算出力を基に位相同期出力を得
    る位相同期ループと、上記逆拡散復調出力信号における
    変調の種類に応じて、該位相同期出力又はこれを所定量
    位相シフトした信号のいずれかを選択する第2の切換え
    スイッチと、該第2の切換えスイッチからの出力信号と
    上記被変調信号とを乗算して1次復調する第3の乗算器
    と、該第3の乗算器の出力より必要な周波数成分のみを
    伝送する低域濾波器と、一定電圧を供給する電源と、上
    記逆拡散復調出力信号における変調の種類に応じて該一
    定電圧又は該低域濾波器出力のうちいずれか一方を上記
    第1の乗算器に供給する第3の切換えスイッチとを備え
    て、複数種類の復調を行なえるよう構成したものであ
    る、請求項4記載のスペクトル拡散復調装置。
  6. 【請求項6】 逆拡散復調出力信号を1次復調する復調
    手段により得られた信号に対して、変調送信側における
    元の情報信号がアナログ信号の場合には該復調手段の出
    力を復号化(D/A変換器)し、所定の信号処理を施さ
    れたデジタルデータである場合には該信号処理に対応し
    たデータ処理を施すデータ処理部と、 該データ処理部に対して前記演算回路からの出力信号の
    周波数を所定量分周する分周器とを更に備えたことを特
    徴とする、請求項4又は請求項5に記載のスペクトル拡
    散復調装置。
  7. 【請求項7】 受信したスペクトル拡散変調波を周波数
    変換して中間周波数スペクトル拡散変調波を得る手段と
    して、n(nは整数)個のミキサーと、各々の逓倍数の
    総和がN1 となるn個の逓倍器とを備え、これらの逓倍
    器により前記第1の局部発振器の出力を夫々周波数逓倍
    して上記各ミキサーに供給するよう構成したことを特徴
    とする、請求項4乃至請求項6のういずれか1項に記載
    のスペクトル拡散復調装置。
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