JP3189347B2 - 樹脂用金型と樹脂用金型の製造方法および樹脂の成形方法 - Google Patents

樹脂用金型と樹脂用金型の製造方法および樹脂の成形方法

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JP3189347B2 JP35626091A JP35626091A JP3189347B2 JP 3189347 B2 JP3189347 B2 JP 3189347B2 JP 35626091 A JP35626091 A JP 35626091A JP 35626091 A JP35626091 A JP 35626091A JP 3189347 B2 JP3189347 B2 JP 3189347B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、離型性に優れた硬質皮
膜を表面に形成した、樹脂等の粘着性の高い材料をモ−
ルド成形あるいはブロ−成型する際に用いられる金型に
関する。金型というのは良く知られているように、2つ
またはそれ以上の部材からなりこれらは閉じられた空間
を形成し内部に流動性のある材料を導入して加圧加熱ま
たは冷却して材料を内部空間の形状通りに成型するもの
である。本発明は金型と金型の製造方法に関するもので
ある。図面は樹脂用金型を示すものとして描かれてい
る。これら図面は基材と表層部の構成を略示するのに重
点が置かれている。実際の金型の形状に正確に対応する
訳ではない。
【0002】
【従来の技術】樹脂等の粘着性の高い材料を金型に閉じ
込めて成形する、いわゆるモ−ルド成形等においては、
金型材料として、従来から鋼が主に用いられている。最
近では、加工性のよいアルミ合金製金型や銅合金製金型
も用いられている。樹脂等の成形金型は離型性がよいこ
とと、耐摩耗性が高いことの両方が要求される。従来の
金属表面が露呈した金型は耐摩耗性、離型性の両方の点
で不十分である。とくに硬度を増すためにフィラ−等硬
質粒子を含む樹脂などの場合は高い耐摩耗性が必要であ
る。樹脂に充填する硬質粒子に対する金型の耐摩耗性向
上を目的として、上記金型の材料の表面に硬質皮膜を形
成したものが製作されている。例えば、湿式法(電解
メッキあるいは無電解メッキ等)による硬質クロムメッ
キやニッケルメッキ等の硬質金属膜や(図5)、乾式
法(CVD法やPVD法等)による窒化チタン、炭化チ
タンあるいは窒化クロム等の硬質セラミック膜(図
6)、を前記金属基材の上に被覆したものである。ここ
で図面は基材と皮膜を示すための概略図で、実際の金型
に形状寸法等が対応しているものではない。上記の硬質
皮膜を表面に形成した金型は硬度が高く耐摩耗性に優れ
る。しかしながら、これらの材料はいずれも上記樹脂と
の離型性がきわめて悪い。離型性を補う為にシリコンス
プレ−等の離型剤を塗布してから用いることが一般的と
なっている。離型剤なしでは殆ど利用できない。
【0003】ところが、例えばモ−ルド成形の作業能率
改善や、製品の品質安定化に対しては、離型剤塗布作業
は決して好ましいものではない。これは、成形の度に金
型に離型剤を塗布する必要があるため、その度に成形作
業を中断しなければならないこと、及び離型剤の塗布ム
ラにより、被成形品の表面状態にムラが生じる等の理由
による。また、離型剤を使っていても、長期間使用する
うちに、金型の隅等の樹脂の流れの悪い場所に、樹脂の
みならず、変質した離型剤までもが残留し、しばしば成
形作業を中断して金型の掃除を行う必要がある。このよ
うな理由から、作業現場からは、離型剤の要らない金型
材料を望む声が絶えない。さて、金型の離型性を向上さ
せる方法としては、ポリテトラフルオロエチレン(以
下、PTFEと略す)に代表される弗素含有高分子材料
の薄膜をこれらの金型の表面に形成する方法が公知であ
る。これらを被覆した金型(図7)は離型性に優れる。
PTFEは、弗素と炭素のみからなる高分子材料であ
り、弗素と炭素との間に分極率の小さい共有結合が存在
する。このため分子間凝集力が低く、表面自由エネルギ
−が著しく低くなるという特質を持つ。この結果、摩擦
係数が低く、水や油をはじくという特異な性質を発現す
る。この性質が優れた離型性を金型に与えるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、PTFEの
欠点は、それ自身の硬さがきわめて低く、容易に傷がつ
く(耐摩耗性に劣る)という点である。金型を被覆する
保護膜として用いる時にも、この欠点が露呈し、長期間
安心して使えるものではなかった。そこで登場したの
が、PTFEの微粒子を硬質クロムやニッケル等の金属
皮膜中に分散させた、いわゆる複合メッキ(分散メッキ
とも呼ぶ)をした金型(図8)である。この結果PTF
Eの離型性を活かしながら、硬質金属皮膜で耐摩耗性を
確保することが可能になった。しかしながら、これらの
PTFEを含む硬質メッキ皮膜のビッカ−ス硬度はたか
だか100kg/mm2 程度である。金型に被覆した場
合、離型性の点では十分であるが、耐摩耗性では未だ不
十分である。特に硬質粒子を含む樹脂を成形するのに用
いられる場合は充填材である硬質粒子との摩擦に耐えな
ければならないので、金型成形面などの樹脂と接触する
面のビッカ−ス硬度として2000kg/mm2 以上が
必要である。PTFEを分散した硬質メッキ膜も耐摩耗
性の点では、決して満足できるものではなかった。
【0005】樹脂成形用金型以外の分野で、弗素と炭素
を含む被覆を設け表面の性質を改善するようにした工夫
は幾つもある。特公平2−29749はプラスチックや
金属の表面にダイヤモンド膜を形成しさらにダイヤモン
ド膜の最表面を弗化処理したものを提案している。弗化
処理したダイヤモンド膜は、耐薬品性、疎水性、耐摩耗
性、潤滑性に優れている。この被覆をしたものは、プラ
スチックの場合は磁気テ−プ、フィルム、セラミックの
場合は人工骨、瓦、金属の場合は液中で使用する機械材
料、摺動材に使えるとしている。これは最表面において
全ての炭素原子について弗素との結合C−Fを形成する
ものでありPTFEよりも疎水性に優れているとある。
最表面での弗素の含有量は100%に近い。これは液中
で使用する機械部品を作るためのもので、疎水性の向上
に力点が置かれた発明である。樹脂成形用金型に関する
工夫ではない。
【0006】特開昭61−30671は工具や機構部品
の表面に水素と弗素を含む硬質カ−ボン膜を提案してい
る。硬質カ−ボン膜に水素を含ませると摩擦係数が低下
し、弗素を含ませると耐湿性が向上すると述べている。
これは軸受、歯車、シ−ル、螺子等への応用を考えてい
る。摩擦係数の低いことが重要である。主に水素を不純
物として含有し水素の作用により摩擦係数は真空中でも
0.01という優れた値を示したとある。水素の含有量
は3%以上である。弗素は耐湿性が必要な場合に添加す
るものであって水素に比べ副次的なものである。これも
樹脂成形用金型に関するものではない。
【0007】特開平2−250968は弗素化硬質カ−
ボン膜を被覆した機械部材を提案している。ビデオヘッ
ド、ビデオポ−ル、モ−タ回転軸、ベアリングなど機械
部材の上に150℃以下の低温で硬質カ−ボン膜を形成
する。これは炭素の他に水素を含む。そこでこれを、弗
素化合物のプラズマで処理しC−H結合の一部をC−F
結合に置き換えたものである。これも水素の方が有力で
あり、最外表面でのC−H/C−Fの比は2〜10であ
る。硬質カ−ボン膜の不純物としては第1に水素であ
り、弗素はその1/10〜1/3である。機構部品であ
るので耐摩耗性の減少が目的である。離型性等は問題に
ならず樹脂成形用金型への応用は考えていない。このよ
うに硬質カ−ボン膜に水素と弗素を含ませた被覆材は既
に機械部品の表面被覆に用いられている。耐摩耗性や疎
水性を高揚するためである。何れも水素がより大量に含
まれる不純物である。樹脂成形用金型への応用を考えた
ものはなく離型性は問題にならない。
【0008】
【課題を解決するための手段】[本発明の基本形] 本
発明は、PTFEの持つ離型性と、セラミック皮膜の持
つ耐摩耗性を合わせ持つ、高離型性硬質皮膜を形成され
た、樹脂用金型を提供しようとするものである。高離型
性硬質皮膜としては、その少なくとも最表面がダイヤモ
ンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜であり、該ダイヤ
モンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜中に、添加成分
として弗素を1〜20原子%含むことを特徴とする。図
1に本発明の金型の構成を示す。ここで、弗素は皮膜の
中に一様に含まれていても良いし、最外表面だけに含ま
せても良い。図1の上方に皮膜での弗素の分布例を示
す。アは一様な分布で、イは最外表面のみで高い分布を
示す。ここで硬質カ−ボン膜という言葉とダイヤモンド
状炭素膜という言葉は同義語として使っている。同じも
のを両方の呼び名で呼んでいるからである。
【0009】[中間層の形成] また一般に金型の材料
(鋼などの金属)の硬度は該ダイヤモンド状炭素膜ある
いは硬質カ−ボン膜の硬度に比べてはるかに低い。この
ため金型の樹脂に触れる面(以下、成形面と略す)に直
接硬質カ−ボン膜またはダイヤモンド状炭素膜をコーテ
ィングしても、十分な密着性及び耐久性が得られない場
合が多い。このようなときは、母材表面に窒化、炭化、
ほう化等の拡散硬化処理を施したり、上記湿式法による
硬質金属皮膜を形成したり、あるいは上記乾式法による
硬質セラミック皮膜を形成したりして、中間層を形成す
る。この中間層の上に、ダイヤモンド状炭素膜あるいは
硬質カ−ボン膜を形成し、該ダイヤモンド状炭素膜ある
いは硬質カ−ボン膜の全体、あるいは直接樹脂に接する
最表面層のみに弗素を添加する。図2に中間層を設けた
ものの構成を示す。こうすることにより耐摩耗性を改善
しながら優れた離型性を付与することができる。
【0010】
【作用】[離型性の生ずる原因] PTFEの持つ優れ
た離型性は、既に述べたように、PTFEを構成する元
素が炭素及び弗素のみであることに起因する。また、テ
トラフルオロエチレンと他の弗素系ポリマ−との共重合
体の代表であるPFA(テトラフルオロエチレン−パ−
フルオロアルキルビニルエ−テル(モノマ−の化学式:
CF =CFOC )共重合体)やFEP(テ
トラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン
(同:CF =CFCF )共重合体)も、炭素と弗
素(前者のみ酸素を含有する)からなり、PTFEと同
様に、優れた離型性を示す。また、ポリテトラフルオロ
エチレン(モノマ−の化学式:CF =CF )とポ
リエチレン(同:CH =CH )との共重合体であ
るETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)はPT
FEよりも離型性がやや劣る。これは、化合物中あるい
は共重合体中での弗素の含有率によって離型性の制御が
可能であるためと考えられる。すなわち、炭素と水素と
弗素の存在比率を制御することによって、離型性を自由
に制御することが可能である。以上述べた弗素系ポリマ
−の特徴を検討する中から、本発明者らは、炭素と弗
素、水素のみからなる化合物を合成すれば、上記弗素系
ポリマ−と同様の特性を得ることができると考えた。ま
た、PFAの例からわかるように、若干の酸素の混入
は、離型性に大きく影響しないと考えた。
【0011】[発明思想] そこで、炭素と水素を主成
分とするダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜
に弗素を添加し、樹脂成形金型に適用することで、離型
性と耐摩耗性に優れた金型を実現するに至った。また、
本発明者らは、該ダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ
−ボン膜に離型性を付与するためには、皮膜中の弗素の
組成比を、1〜20原子%とする必要があることを見い
だした。組成比が1%以下であると、弗素添加の効果が
ほとんど現れず優れた離型性が得られない。逆に組成比
が20%を越えると、皮膜の硬度が著しく低下し、耐摩
耗性が損なわれる。このために弗素の比率が1〜20原
子%に限定される。
【0012】[中間層の形成と役割] しかし現実に
は、金型の成形面に直接該ダイヤモンド状炭素膜あるい
は硬質カ−ボン膜を被覆しても、不慮の当て傷や、樹脂
中にしばしば見られる硬質の異物による引っかき傷に対
しては、充分な耐久性が得られない。そこで、実際に金
型に適用するに当たって、すでに述べたような中間層を
形成し、下地の硬度を充分に上げた上に該ダイヤモンド
状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜を被覆すれば、該ダイ
ヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜の優れた離型
性を長期間にわたって引き出すことが可能であることを
見いだした。これは、金型の成形面の硬度(通常ビッカ
−ス硬度で400〜800kg/mm )が該ダイヤ
モンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜の硬度(ビッカ
−ス硬度で2000kg/mm 以上)に比べて極端
に低いことに起因し、局部的な応力がかかった時に、金
型の成形面の金属が変形し、被覆された膜がこのような
変形に追従できずに破壊し剥離するために起こる現象で
ある。
【0013】硬質の中間層を設けることによりこのよう
な膜の剥離破壊を防ぐことができる。中間層として、 (a)窒化、炭化、ほう化等の拡散硬化処理(硬度9
00〜1500kg/mm )(図2(a))、 (b)湿式メッキ法によるクロムCrやニッケルNi等
の硬質金属皮膜(硬度500〜1200kg/mm
)(図2(b))、 (c)乾式法(PVD法やCVD法)による窒化チタン
TiNや炭化チタンTiC、窒化クロムCrN等の硬質
セラミック皮膜(硬度1500〜3000kg/mm
)(図2(c)) 等の硬質皮膜を、いずれか単独であるいは複合させて形
成し、局部的な応力に耐えられる下地を形成しこの上に
本発明の硬質カ−ボン膜を形成すれば、この現象は防止
できる。局部的な応力が加えられたとしても、中間層が
硬くて変形を許さないので、最表面の硬質カ−ボン膜が
変形せず剥離しないのである。
【0014】[ダイヤモンド状炭素膜、硬質カ−ボン膜
の形成] ダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン
膜の形成方法としては、高周波あるいは直流電力によ
るグロ−放電プラズマを用いたプラズマCVD(化学的
気相析出)法炭化水素ガスのイオンビ−ムを用いたイ
オンビ−ム蒸着法、固体炭素の昇華・析出を利用した
イオンプレ−ティング等のPVD(物理的気相析出)
法、がすでに知られている。いずれの方法も、本発明に
よる樹脂金型へのダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ
−ボン膜の形成に利用できる。但し、該ダイヤモンド状
炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜に弗素を添加するため
に、いずれの方法においても、合成の雰囲気に四フッ化
炭素(CF4 )や三フッ化窒素(NF3 )等の弗素を含
有した気体原料を導入することが必要である。
【0015】[中間層とダイヤモンド状炭素膜の連続的
形成] 一方、中間層を効果的に利用するためには、中
間層の形成と該ダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−
ボン膜の形成を、途中で真空を破ることなく、連続的に
行うことが好ましい。即ち、前記の(c)の場合(図2
(c))、公知のプラズマCVD法により中間層となる
窒化チタン等の硬質セラミック皮膜を形成したあと、直
ちに原料ガスを入れ替え、引き続いてプラズマCVD法
によりダイヤモンド状炭素膜を形成する。こうすれば、
中間層と該ダイヤモンド状炭素膜との界面に不純物等の
吸着が起こらず、優れた密着性が得られる。同様に前記
の(c)の場合で公知のPVD法により中間層の形成を
行う場合も同様に、中間層形成後に原料ガスを入れ替
え、プラズマCVD法等により該ダイヤモンド状炭素膜
の形成を行えばよい。また、前記の(a)に示すように
拡散硬化処理によって金型母材の表面硬度を上げれば、
不慮の当て傷等に対する耐久性が向上する。この場合に
おいても、拡散硬化処理であるイオン窒化と中間層とな
る硬質セラミック皮膜形成、該ダイヤモンド状炭素膜あ
るいは硬質カ−ボン膜形成の3つの表面処理工程を、途
中で真空を破ることなく連続的に行う。こうすれば各層
の境界面に不純物等が吸着せず、優れた密着性が得られ
るため好ましい。
【0016】
【実施例】[実施例1(樹脂に対する離型性)] 本発明による高離型性硬質皮膜について、樹脂に対する
離型性を評価した。試験片としては、樹脂成形金型の代
表的な材料であるSKD11を用い、樹脂としては、接
着性に富むエポキシ樹脂(2液を混合するタイプ)を用
いた。試験方法として、試験片表面に混合された樹脂を
塗布し、150℃、30分間樹脂を硬化させたあと、試
験片から樹脂を引き剥がしたときの、試験片表面への樹
脂の残留率(残留面積/塗布面積)を比較した。本発明
による弗素添加ダイヤモンド状炭素膜を被覆した試験片
の作成方法は、次の通りである。まず、基材であるS4
5C材(以下、被処理材と略す)の被覆する面を所定の
面粗度まで研磨仕上げする。0.5μm以下の平均粗さ
が好ましい。この被処理材を有機溶剤や、洗剤、水等を
用いて洗浄し、表面に無機あるいは有機のいかなる汚れ
も残留しないようにする。洗浄された被処理物を、図3
に示されるダイヤモンド状炭素膜の形成装置の中の、電
極2に取り付ける。真空容器1の中を真空排気装置3に
よって10−5Torrまで排気し、その後、ガス供給
系4から、真空容器1内にアルゴンガス(Ar)を0.
1Torrの真空度になるまで導入する。次に電極2に
接続された直流電源5を用い、電極2にマイナス100
0Vの直流電圧を印加して放電を発生させ、被処理材6
の表面をイオンクリ−ニングする。
【0017】イオンクリ−ニングを30分間行った後、
ガス供給系4から真空容器1内にメタンガス(CH
)を導入する。メタンガス導入に際しては、アルゴ
ンガス流量を徐々に減らしながらメタンガス流量を徐々
に増やし、真空容器内部の放電を止めずに行う。メタン
ガス導入と同時にダイヤモンド状炭素膜の形成が始ま
る。約1分間かけて、アルゴンガスからメタンガスへと
ガスを完全に切り替えてから、15分間ダイヤモンド状
炭素膜の形成を行う。所定の時間が経過したら、ガス供
給系4から四フッ化炭素ガス(CF )を導入し、す
でに導入しているメタンガスとの混合雰囲気中で、弗素
添加ダイヤモンド状炭素膜の形成をさらに15分間続け
る。メタンガスと四弗化炭素ガスとの流量比は、目標と
する弗素の添加量に応じて変化させるが、本実施例にお
いては、同流量比を10:1(CH :CF =1
0:1)として行った。
【0018】この様にして、直流グロ−放電によるプラ
ズマCVD法により、全体厚さが約1μmのダイヤモン
ド状炭素膜を得た(図4a)。比較のために、弗素添加
を行わずに30分間ダイヤモンド状炭素膜のみを形成し
た試験片(図4b)も作成した。また、比較のために、
従来から金型の保護膜として用いられている塗布法によ
るPTFE膜(図4f)、湿式メッキ法による硬質クロ
ム膜(図4c)、PVD法による窒化チタン膜(図4
d)をそれぞれ形成した試験片、及び表面処理を全く行
わないS45C材(図4e)についても、同じ評価を行
った。結果を表1に示す。なお、表中で、ダイヤモンド
状炭素膜を、「DLC膜」と略した。
【0019】
【表1】
【0020】表からもわかるように、弗素を含まない皮
膜は、弗素添加を行わなかったダイヤモンド状炭素膜も
含めて、いずれも離型性に乏しく、試験片に樹脂の一部
が残留する。これに対して本発明による弗素添加したダ
イヤモンド状炭素膜は、試験片に樹脂が全く残留せず、
PTFE膜並の優れた離型性を有することが確認でき
た。
【0021】[実施例2(耐摩耗性の試験)] 本発明による高離型性硬質皮膜について、樹脂成形金型
における耐久性試験を実施した。試験片としては、SK
D11からなる6個取りのモ−ルド金型のキャビティ部
を全て入れ子とし、実施例1と同様の6種類の表面処理
(うち1種類は無処理)をそれぞれの入れ子に施したも
のを用いた。樹脂としては、耐摩耗性と離型性を同時に
評価するために、フィラ−としてシリカ(SiO
を30重量%含んだエポキシ樹脂を用いた。なお、本実
験では、従来通り離型剤を使用した。以上述べた試験用
金型及び樹脂を用い、1万ショット使用後の金型の摩耗
量(ゲ−ト部の寸法変化量)、キャビティ内部への樹脂
の残留状態等をそれぞれ評価した。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2からもわかるように、本発明による弗
素添加されたダイヤモンド状炭素膜(表中F−DLC)
は摩耗量が0.4μmであり樹脂が残留していない。本
発明の金型が耐摩耗性と離型性を兼ね備えていることが
確認できた。一方、離型性では問題のないPTFE膜
は、硬度が低いために早期に皮膜が失われ、著しく摩耗
してしまう。このため樹脂も一部残留する。耐摩耗性で
は問題のない弗素添加なしのダイヤモンド状炭素膜(表
中DLC)及びTiN膜については、離型性の点で問題
があり、樹脂が残留し、頻繁に金型の掃除が必要である
ことなどが確認できた。
【0024】
【発明の効果】以上述べた様に、本発明により見いださ
れた、弗素添加されたダイヤモンド状炭素膜あるいは硬
質カ−ボン膜を形成された樹脂用金型は、PTFE等の
弗素含有高分子材料に匹敵する離型性と、ダイヤモンド
なみの耐摩耗性をあわせ持っている。長期間にわたって
優れた離型性を維持できる金型を実現でき、成形品の品
質維持・向上の観点から、きわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂のための金型の構造を略示する断
面図。
【図2】基材とダイヤモンド状炭素膜の間に中間層を設
けた本発明の金型の構造を略示する断面図。
【図3】実施例において用いられたダイヤモンド状炭素
膜の形成装置の概略図である。
【図4】樹脂に対する離型性、耐摩耗性を試験するため
の試験片の概略の構造を示す断面図。
【図5】基材の上に硬質Cr、Niメッキをした従来例
に係る金型の概略断面図。
【図6】基材の上に硬質のセラミックを被覆した従来例
に係る金型の概略断面図。
【図7】基材の上にPTFEを被覆した従来例に係る金
型の概略断面図。
【図8】基材の上にPTFEを分散した硬質金属のメッ
キをした金型の概略断面図。
【符号の説明】
1 真空容器 2 電極 3 真空排気装置 4 ガス供給系 5 直流電源 6 被処理材
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 33/00 - 33/76 C23C 14/06

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼やアルミ合金、銅合金等の表面に硬質
    皮膜を形成してなる樹脂用金型において、硬質皮膜の少
    なくとも最表面が弗素を1〜20原子%含むダイヤモン
    ド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜であることを特徴と
    する樹脂用金型。
  2. 【請求項2】 鋼やアルミ合金、銅合金を基材とし、こ
    の上に硬質皮膜よりなる中間層を設け、さらに中間層の
    上に弗素を1〜20原子%含むダイヤモンド状炭素膜あ
    るいは硬質カ−ボン膜よりなる表面層を形成したことを
    特徴とする樹脂用金型。
  3. 【請求項3】 鋼やアルミ合金、銅合金を基材とし、こ
    の上に炭化、窒化、ほう化による拡散硬化処理膜を設
    け、さらにこの硬化処理膜の上に弗素を1〜20原子%
    含むダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜より
    なる表面層を形成したことを特徴とする樹脂用金型。
  4. 【請求項4】 鋼やアルミ合金、銅合金を基材とし、こ
    の上にクロムメッキあるいはニッケルメッキの中間層を
    設け、さらにこの中間層の上に弗素を1〜20原子%含
    むダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜よりな
    る表面層を形成したことを特徴とする樹脂用金型。
  5. 【請求項5】 鋼やアルミ合金、銅合金を基材とし、こ
    の上にTi、Zr、V、Cr、W、Siもしくはそれら
    の窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分よりな
    る中間層を設け、さらに中間層の上に弗素を1〜20原
    子%含むダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜
    よりなる表面層を形成したことを特徴とする樹脂用金
    型。
  6. 【請求項6】 鋼やアルミ合金、銅合金を基材とし、こ
    の上にTi、Zr、V、Cr、W、Siもしくはそれら
    の窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分よりな
    る中間層を設け、さらに中間層の上に弗素を1〜20原
    子%含むダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カ−ボン膜
    よりなる表面層を形成することとし、これらの中間層及
    び表面層の形成を、途中で真空を破ることなく連続して
    プラズマCVD法あるいはイオンプレ−ティング法によ
    り実施することを特徴とする樹脂用金型の製造方法。
  7. 【請求項7】 鋼やアルミ合金、銅合金を基材とし、こ
    の上に弗素を1〜20原子%含むダイヤモンド状炭素膜
    あるいは硬質カ−ボン膜よりなる表面層を形成した金型
    に、離型剤を塗付することなく、樹脂材料を充填して成
    形することを特徴とする樹脂の成形方法。
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